電力変換装置
【課題】高調波抑制フィルタ無しに高調波成分が小さい電圧電流波形を出力することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る電力変換装置は、1以上のスイッチングユニット12を直列に接続したマルチレベルレグ13aと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子Q1を直列に接続したオンオフレグ14aとが直列接続された相アーム11aと、前記相アームを構成する各スイッチング素子を制御する制御部15とを具備し、前記相アームの最端部スイッチングユニット12aにおける直流側端部aが直流電源(C5、Vdc)の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグ14aの直流側端部bが前記直流電源の正負他方側に接続され、前記マルチレベルレグ13aと前記オンオフレグ11aの接続点が交流端子Tacとして交流電源Vsに接続されている。
【解決手段】実施形態に係る電力変換装置は、1以上のスイッチングユニット12を直列に接続したマルチレベルレグ13aと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子Q1を直列に接続したオンオフレグ14aとが直列接続された相アーム11aと、前記相アームを構成する各スイッチング素子を制御する制御部15とを具備し、前記相アームの最端部スイッチングユニット12aにおける直流側端部aが直流電源(C5、Vdc)の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグ14aの直流側端部bが前記直流電源の正負他方側に接続され、前記マルチレベルレグ13aと前記オンオフレグ11aの接続点が交流端子Tacとして交流電源Vsに接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流を交流、または交流を直流に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統の交流を直流に変換するコンバータや、直流を交流に変換してモータ駆動に用いる電力変換装置には、図11に示すような3相2レベルコンバータ、3相2レベルインバータが適用されてきた。3相2レベルインバータは、直流から3相交流を出力する電力変換装置を構成する上で、必要最小限の半導体スイッチング素子6個で構成されるため、小型低コスト化を図ることが出来る。
【0003】
3相2レベルインバータの出力電圧波形は、入力直流電圧をVdcとしたとき、各相ごとに、+Vdc/2と、−Vdc/2の2値の切替をPWM(パルス幅変調)で行うので、擬似的な交流波形となっている。高耐圧のスイッチング素子を使用する高電圧モータドライブ用インバータ及び長距離海底ケーブルのように直流で伝送された電力を交流に変換する電力系統接続用インバータ等では、スイッチング高調波低減のために、3相交流出力にリアクトルやコンデンサで構成されたフィルタが挿入される。このような電力変換装置では、電力系統に流れ出す高調波成分を他の機器に悪影響を及ぼさないレベルまで低減するために、このフィルタ容量が大きくなっており、コスト上昇と重量増加を招いていた。
【0004】
更に、文献で発表されている回路方式では、図12のように、電力系統、配電系統電圧に、従来一般的に用いられているトランスによる電圧降圧なしに、直接接続することの出来る電力変換装置の研究開発も進められている。この電力変換装置は例えばCVCF(constant voltage constant frequency)インバータとして動作する。
【0005】
これが実用化されると、重量・体積が大きく、システム全体に占めるコストも比較的大きいトランスが不用になるほかに、出力電圧・電流波形が多レベル化により正弦波に近づくため、高調波フィルタが不要になるメリットも享受することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2009年cigre論文予稿集Paper401(Multilevel Voltage-Sourced Converters for HVDC and FACTS Applications:Siemens AG
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような回路方式は、各スイッチングユニットの構成要素である直流コンデンサの電圧値を一定に制御するために、直流電源を還流させる還流電流を常時流すことが原理的に必要である。3相を同一の直流電源に接続しているので、各相の直流電圧合成値がわずかでも異なると、相間に過大な短絡電流が流れてしまい機器を破壊してしまう危険がある。これを防止するために、各相にバッファリアクトルを挿入し、短絡電流が過大にならないように制限を加えている。このようなバッファリアクトルは装置の大型化、高コスト化を招く。
【0008】
実施形態は、高調波抑制フィルタ無しに高調波成分が小さい電圧電流波形を出力することができるとともに、バッファリアクトルのような高コスト・大型のリアクトルが不要な小型の電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る電力変換装置は、直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグと、前記レグに並列に接続されたコンデンサを含む回路要素がスイッチングユニットとして構成され、1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグとが直列接続された相アームと、前記相アームを構成する各スイッチング素子を制御する制御部とを具備し、前記相アームの最端部スイッチングユニットにおける直流側端部が直流電源の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグの直流側端部が前記直流電源の正負他方側に接続され、前記マルチレベルレグと前記オンオフレグの接続点が交流端子として交流電源に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電力変換装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】直流電圧発生動作を説明する図である。
【図3】コンデンサ電圧一定制御を示す図である。
【図4】電力変換装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【図5】第3実施形態の構成を示す図である。
【図6】第3実施形態の動作を示す図である。
【図7】第3実施形態の変形例の構成を示す図である。
【図8】図7に示す装置の動作を示す図である。
【図9】電力変換装置の第4実施形態の構成を示す図である。
【図10】電力変換装置の第5実施形態の構成を示す図である。
【図11】従来の電力変換装置の構成を示す図である。
【図12】従来の電力変換装置の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は電力変換装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【0013】
第1実施形態に係る電力変換装置は、例えば単相50Hzの交流電力を、絶縁トランスを介して直流電力に変換、または直流電力を単相50Hzの交流電力に変換し絶縁トランスを介して出力する。交流/直流変換と直流/交流変換は、電力変換装置の制御方法に依存して変更できる。電力変換装置の直流側(端子Tdc)は、バッテリ等の直流電源又はコンデンサに接続され、交流側(端子Tac)は例えばトランスを介して商用交流電源に接続されるか又は交流出力電源端子となる。これは本実施例及び後述する他の実施例についても同様に言える。第1実施形態に係る電力変換装置を交流電力を直流電力に変換する電力変換器(コンバータ)として説明する。
【0014】
図1に示す電力変換装置は、自己消弧能力を持つスイッチング素子Q1とダイオードD1を逆並列接続した回路を直列に接続したレグ10に、コンデンサC1を並列に接続してなるチョッパブリッジ単位変換器がスイッチングユニット12aとして構成されている。N個のスイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグ(U_multi)13aと、自己消弧能力を持つスイッチング素子をN個直列接続したオンオフレグ(U_onoff)14aとを直列接続して相アーム11aが構成される。相アーム11bも同様に構成される。図1の例ではN=2の例について示している。Nは装置の定格電圧及び各回路要素の定格電圧に応じて決定される。
【0015】
マルチレベルレグ13aとオンオフレグ14aの接続点とマルチレベルレグ13bとオンオフレグ14bの接続点は、トランスTr1の2次側にリアクトルL1を介して接続される。トランスTr1の1次側には50Hz交流電源電圧Vsが供給される。相アーム11a、11bは、リアクトルL2を介してコンデンサに並列接続され、直流電源電圧Vdcを発生する。
【0016】
制御部15は、上位機器から入力される直流電源電圧指令Vdcと、トランスTr1の2次側電圧Vpの検出値と、内部で発生した交流電圧指令Vuに基づいて、相アーム11a、11bを構成する各スイッチング素子に対するゲート指令を生成する。
【0017】
次に、第1実施形態における制御部15の制御動作を詳細に説明する。
【0018】
交流電圧指令Vuは50Hzの正弦波電圧で以下の式で表される。
Vu=V0×sin(ω・t) (1)
ここで、ωは50Hzの角周波数、V0は振幅最大値、tは時間である。
【0019】
図2は、直流電圧発生動作を説明する図である。
オンオフレグ14a、14bのオンとオフの切替は、交流出力電圧指令Vuの正負符号に応じて以下の条件分岐で決定する。
【0020】
[1] Vu>0のとき
オンオフレグ14aのスイッチング素子は全てオフ
オンオフレグ14bのスイッチング素子は全てオン
[2] Vu<0のとき
オンオフレグ14aのスイッチング素子は全てオン
オンオフレグ14bのスイッチング素子は全てオフ
マルチレベルレグ13a、13bに対する電圧指令VU_multi1、VU_multi2は、交流電圧指令Vuに応じて以下の条件分岐で決定され、一般的な三角波比較PWM(Pulse Width Modulation)に基づくチョッパスイッチング動作または1パルススイッチングにより、平均電圧が指令値通りになるように出力される。
【0021】
[1] Vu>0のとき
VU_multi1=Vdc−Vu (2)
VU_multi2=VCcontrol2 (3)
ここで、Vdcは直流電源電圧指令である。
図2(b)〜2(d)は、電圧指令Vuが正の半波のとき(図中Tpの期間)の電圧、電流、電力波形を示す図である。
【0022】
図2(b)のように、マルチレベルレグ13aに対する電圧指令VU_multi1は、直流電圧指令Vdcから交流電圧指令Vuを減算した値となる。図2(c)はこの時流れる電流Iaを示し、I0は電流Iaの最大値である。電流Iaはマルチレベルレグ13aのコンデンサC1、C2、及び直流電源電圧が発生するC5を通る。この時、マルチレベルレグ13aのコンデンサC1、C2は充電される。図2(d)はコンデンサC1、C2の充電電力Pc1を示す。ここで、図2(d)の電力Pc1を示すハッチング部の面積をAとする。
【0023】
[2] Vu<0のとき
VU_multi1=VCcontrol1 (4)
VU_multi2=Vdc+Vu (5)
図2(f)〜2(g)は、電圧指令Vuが負の半波のときの(図中Tnの期間)電圧、電流、電力波形を示す図である。
【0024】
図2(f)のように、マルチレベルレグ13bに対する電圧指令VU_multi2は、上記VU_multi1のように、直流電圧指令Vdcから交流電圧指令Vuを減算した値となる。図2(g)はこの時流れる電流Ibを示す。電流Ibはマルチレベルレグ13bのコンデンサC3、C4、及びC5を通る。この時、マルチレベルレグ13bのコンデンサC3、C4は充電される。図2(h)はコンデンサC3、C4の充電電力Pc2を示す。ここで、図2(h)の電力Pc2を示すハッチング部の面積をBとする。
【0025】
以上のような動作を繰り返すと、コンデンサC1〜C4は充電され続け、各コンデンサ電圧は過電圧となり、動作継続が不可能となる。そこで本実施形態では、制御部15は電力変換装置の動作中、各コンデンサC1〜C4の電圧平均値が一定値を維持するよう、各相アームのスイッッチング素子を制御する。このような制御をここではコンデンサ電圧一定制御という。
【0026】
前述の電圧指令VCcontrol1は、マルチレベルレグ13aのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される電圧指令で、後述の演算式で演算される。同様に電圧指令VCcontrol2は、マルチレベルレグ13bのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される電圧指令である。
【0027】
図3はコンデンサ電圧一定制御を示す図である。
【0028】
制御部15は、マルチレベルレグ13a、13bを構成するコンデンサC1〜C4の各コンデンサ電圧の平均値が、指令値VCrefに追従するように、マルチレベルレグの電圧指令VCcontrol1、VCcontrol2を次式のように決定する。
【0029】
VCcontrol1=Vdc+G(s)×(VCref−VC1) (6)
VCcontrol2=Vdc+G(s)×(VCref−VC2) (7)
ここで、G(s)は制御ゲイン、sはラプラス演算子であって、例えば比例積分制御の演算子である。指令値VCrefは、スイッチング素子等の耐圧に応じて予め設定された固定値である。VC1はコンデンサC1、C2のコンデンサ電圧Vca、Vcbの平均値であって、このコンデンサ電圧Vca、Vcbは測定により得られる検出値である。VC2はコンデンサC3、C4のコンデンサ電圧Vcc、Vcdの平均値であって、このコンデンサ電圧Vcc、Vcdは測定により得られる検出値である。
【0030】
図3(e)〜3(f)は、電圧指令Vuが負の半波の時(図中Tnの期間)のコンデンサ電圧一定制御を示す図である。
【0031】
上式(6)に示す電圧指令VCcontrol1に対応するゲート指令をマルチレベルレグ13aを構成するスイッチング素子に供給することで、図3(e)、3(g)に示すような電流Idが流れ、コンデンサC1、C2は放電される。この時の放電電力Pc1は図3(h)のハッチング部A’として示されている。このように、上式(6)に示す電圧指令VCcontrol1をマルチレベルレグ13aに与えることで、前述したように、電圧指令Vuが正の半波の時にコンデンサC1、C2に充電された電力を示すハッチング部Aの面積と、放電電力を示すハッチング部A’の面積は同一となる。すなわち、コンデンサC1、C2の充電電力と放電電力は同一となり、従ってコンデンサC1、C2の平均電圧は一定値を維持する。
【0032】
図3(a)〜3(d)は、電圧指令Vuが正の半波の時(図中Tpの期間)のコンデンサ電圧一定制御を示す図である。
【0033】
マルチレベルレグ13bについても同様に、上式(7)に示す電圧指令VCcontrol2に対応するゲート指令をマルチレベルレグ13bを構成するスイッチング素子に供給することで、図3(a)、3(c)に示すような電流Icが流れ、コンデンサC3、C4は放電される。この時の放電電力Pc2は図3(d)のハッチング部B’として示されている。このように、上式(7)に示す電圧指令VCcontrol2をマルチレベルレグ13bに与えることで、前述したように、電圧指令Vuが負の半波の時にコンデンサC1、C2に充電される電力を示すハッチング部Bの面積と、放電電力を示すハッチング部B’の面積は同一となる。すなわち、コンデンサC3、C4の充電電力と放電電力は同一となり、従ってコンデンサC3、C4の平均電圧は一定値を維持する。
【0034】
以上のように本実施形態に係る装置は、直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、自己消弧能力を持つスイッチング素子Q1を直列に2個接続したレグ10と、前記レグに並列に接続されたコンデンサC1を含む回路要素がスイッチングユニット12aとして構成され、1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグ13aと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグ14aとが直列接続された相アーム11aと、前記相アームを構成する各スイッチング素子を制御する制御部15とを具備し、前記相アームの最端部スイッチングユニット12aにおける直流側端部aが直流電源(C5、Vdc)の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグ14aの直流側端部bが前記直流電源の正負他方側に接続され、前記マルチレベルレグ13aと前記オンオフレグ11aの接続点が交流端子Tacとして交流電源Vsに接続されている。
【0035】
また、相アーム11が2回路並列に前記直流電源に接続され、前記制御部15は、交流電圧指令の正負符号に応じて、前記オンオフレグ14のスイッチング素子を各相アーム11ごとに交互にオンオフ切替を行い、一方のオンオフレグをオフとした時に、2回路の相アーム11a、11bにおけるマルチレベルレグ13とオンオフレグ14の接続点間の電圧差が交流電圧指令Vuに一致するように、当該オフとしたオンオフレグ14と同一相アーム11を構成するマルチレベルレグ13のスイッチング素子を制御する。
【0036】
更に制御部15は、一方のオンオフレグ14をオンとした時に、当該オンとしたオンオフレグと同一相アーム11を構成するスイッチングユニット12のコンデンサ電圧が、予め設定した電圧指令値に追従するような充放電電流が当該コンデンサに流れるように、当該スイッチングユニット12のスイッチング素子を制御する。
【0037】
本実施形態によれば、従来のように大型の高調波抑制フィルタを用いることなく低高調波の電圧電流波形を出力することができる。また従来のように、直流循環電流を流さなくともスイッチングユニットのコンデンサ電圧の平均値を一定に制御することが可能になり、バッファリアクトルのような高コスト・大型のリアクトルを用いることなく、小型の電力変換器を提供することが可能になる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0039】
図4は電力変換装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【0040】
この電力変換装置は、電力系統で一般的な3相交流(R相、S相、T相)を、トランスTr2を介して変換器(1)〜(3)に入力し、直流に変換するコンバータを示す。トランスTr2の一次側は3相スター結線またはデルタ結線として、二次側を単相×3の合計6線に分割し、各相について図1に示す電力変換装置が変換器として設けられる。変換器(1)〜(3)の出力端を互いに並列に接続した上で直流電源(コンデンサC6)に接続する。
【0041】
すなわち、本実施形態に係る電力変換装置は、相アーム11が6回路並列に直流電源(C6)に接続され、交流端子が3相交流を3つの単相交流に分割する変圧器Tr2の単相交流側に接続され、直流と3相交流との電力変換を行う。
【0042】
本構成を用いることにより、3相交流から直流への電力変換においても、第1実施形態と同一の効果を得ることが可能になる。
【0043】
[第3実施形態]
図5は第3実施形態の構成を示す図である。
【0044】
第3実施形態に係る電力変換装置は、第2実施形態のような3相トランスを用いずに3相50Hzの電源を直流に電力変換する電力変換器である。
【0045】
UVWの各相アームの構成は第1実施形態と同様である。制御部15は、各相アームのマルチレベルレグ20a(U_multi)、20b(V_multi)、20c(W_multi)に対する電圧指令VU_multi、VV_multi、VW_multiと、オンオフレグ21a(U_onoff)、21b(V_onoff)、21c(W_onoff)に対するオンオフ指令を、3相電圧指令Vu、Vv、Vwの大小比較の結果に基づき、以下の条件分岐で算出する。
【0046】
図6は本実施形態の動作を示す図であり、図6(a)は三相電圧指令Vu、Vu、Vw、図6(b)はマルチレベルレグ20a、20b、20cに対する電圧指令VU_multi、VV_multi、VW_multi、図6(c)はオンオフレグ21a、21b、21cに対するオンオフ指令を示す。
【0047】
3相電圧指令Vu、Vv、Vwの中で最小値の相電圧をMIN(Vu、Vv、Vw)と定義する。このとき、制御部15は、以下の条件分岐で各相の出力電圧指令を演算する。
【0048】
[1] Vu=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、つまり電圧指令Vuが最も小さいとき(図6に示す期間T3)、オンオフレグ21a(U_onoff)をオンに設定し、マルチレベルレグ20a(U_multi)に対する電圧指令VU_multiを以下のように算出する。
【0049】
VU_multi=VCcontrolU (8)
VV_multi=Vdc−(Vv−MIN(Vu、Vv、Vw)) (9)
VW_multi=Vdc−(Vw−MIN(Vu、Vv、Vw)) (10)
ここで、Vdcは、直流電源電圧指令であり、式(8)のVCcontrolUは、マルチレベルレグ20a(U_multi)のコンデンサ電圧一定制御の結果出力される電圧指令で、後述の演算式で演算する。
【0050】
式(9)の(Vv−MIN(Vu、Vv、Vw))は、図6(a)に示すVv−Vuであり、図6(b)に示すような値をとる。図6(b)ではこのVv−VuがVV_multi0として表されている。式(9)のVV_multiは、直流電源電圧指令VdcからVV_multi0を減算した値である。
【0051】
同様に、式(10)の(Vw−MIN(Vu、Vv、Vw))は、図6(a)に示すVw−Vuであり、図6(b)に示すような値をとる。図6(b)ではこのVw−VuがVW_multi0として表されている。式(10)のVW_multiは、直流電源電圧指令VdcからVW_multi0を減算した値である。
【0052】
制御部15は、コンデンサ電圧一定制御において、マルチレベルレグ20a(U_multi)を構成するのコンデンサC7、C8のコンデンサ電圧の平均値が、指令値VCrefに追従するようにマルチレベルレグ20aに対する電圧指令VCcontrolU(上記第1実施形態におけるVCcontrol1またはVCcontrol2)を以下のように決定する。
【0053】
VCcontrolU=Vdc+G(s)×(VCref−VCU) (11)
ここで、G(s)は制御ゲイン、sはラプラス演算子であって、例えば比例積分制御の演算子である。
【0054】
同様に制御部15は、期間T1、T2において、以下のようにマルチレベルレグ20b、20cに対する電圧指令VV_multi、VW_multi、オンオフレグ21b、21cに対するオンオフ指令を決定する。
【0055】
[2] Vv=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、
VU_multi=Vdc−(Vu−MIN(Vu、Vv、Vw)) (12)
VV_multi=VCcontrolV (13)
VW_multi=Vdc−(Vw−MIN(Vu、Vv、Vw)) (14)
[3] Vw=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、
VU_multi=Vdc−(Vu−MIN(Vu、Vv、Vw)) (15)
VV_multi=Vdc−(Vv−MIN(Vu、Vv、Vw)) (16)
VW_multi=VCcontrolW (17)
同様に、電圧指令VCcontrolV、VCcontrolWが、それぞれV_multiレグ、W_multiレグのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される。
【0056】
VCcontrolV=Vdc+G(s)×(VCref−VCV) (18)
VCcontrolW=Vdc+G(s)×(VCref−VCW) (19)
以上のように本実施形態に係る電力変換装置は、相アームが3回路並列に直流電源(C5、Vdc)に接続され、前記3回路の交流端子Tacが3相交流電源U、V、Wに接続され、制御部15は、3相電圧指令のうち最も値が小さい相の相アームを構成するオンオフレグ21のスイッチング素子をオンにし、残り2相のオンオフレグ21のスイッチング素子をオフにした上で、前記残り2相の交流電圧指令相互の差電圧に基づいて、当該2相の相アームを構成するマルチレベルレグ20のスイッチング素子を制御する。
【0057】
以上の構成により、高調波抑制フィルタを用いずに低高調波の電圧電流波形を出力することができるとともに、直流循環電流を流さなくともスイッチングユニットのコンデンサ電圧の平均値を一定に制御することが可能になる。従って、バッファリアクトルのような高コスト・大型のリアクトルを使用せずに、3相交流と直流との電力変換をするための、小型の電力変換器を提供することが可能になる。
【0058】
次に、第3実施形態の変形例を説明する。
図7はこの変形例の構成を示す図である。図7の構成では、マルチレベルレグ20とオンオフレグ21の配置が図5の配置と比べ逆になっている。
【0059】
この場合、制御部15による制御論理も逆になる。制御部15は、各相アームのマルチレベルレグ20a、20b、20cに対する電圧指令VU_multi、VV_multi、VW_multiと、オンオフレグ21a、21b、21cに対するオンオフ指令を、3相電圧指令Vu、Vv、Vwの大小比較の結果に基づき、以下の条件分岐で算出する。
【0060】
図8は本実施形態の動作を示す図であり、図8(a)は三相電圧指令Vu、Vu、Vw、図6(b)はマルチレベルレグ20a、20b、20cに対する電圧指令VU_multi、VV_multi、VW_multiを示す。
【0061】
3相電圧指令Vu、Vv、Vwの中で最大値の相電圧をMAX(Vu、Vv、Vw)と定義する。このとき制御部15は、以下の条件分岐で各相の出力電圧指令を演算する。
【0062】
[1] Vu=MAX(Vu、Vv、Vw)のとき、つまり電圧指令Vuが最も大きいとき、オンオフレグ21aをオンに設定し、マルチレベルレグ20aに対する電圧指令VU_multiを以下のように算出する。
【0063】
VU_multi=VCcontrolU (20)
VV_multi=Vdc-(MAX(Vu、Vv、Vw)−Vv) (21)
VW_multi=Vdc−(MAX(Vu、Vv、Vw)-Vw) (22)
ここで、Vdcは、直流電源電圧指令であり、式(20)のVCcontrolUは、マルチレベルレグ20aのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される電圧指令である。
【0064】
制御部15は、コンデンサ電圧一定制御において、マルチレベルレグ20aを構成するのコンデンサC7、C8のコンデンサ電圧の平均値が、指令値VCrefに追従するようにマルチレベルレグ20aに対する電圧指令VCcontrolUを以下のように決定する。
【0065】
VCcontrolU=Vdc+G(s)×(VCref−VCU) (23)
ここで、G(s)は制御ゲイン、sはラプラス演算子であって、例えば比例積分制御の演算子である。
【0066】
同様に制御部15は、電圧指令Vvが最大のとき及び電圧指令Vwが最大のとき、以下のようにマルチレベルレグ20b、20cに対する電圧指令VV_multi、VW_multi、オンオフレグ21b、21cに対するオンオフ指令を決定する。
【0067】
[2] Vv=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、オンオフレグ21bをオン、
VU_multi=Vdc−(Vu−MIN(Vu、Vv、Vw)) (24)
VV_multi=VCcontrolV (25)
VW_multi=Vdc−(Vw−MIN(Vu、Vv、Vw)) (26)
[3] Vw=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、 オンオフレグ21cをオン、
VU_multi=Vdc−(Vu−MIN(Vu、Vv、Vw)) (27)
VV_multi=Vdc−(Vv−MIN(Vu、Vv、Vw)) (28)
VW_multi=VCcontrolW (29)
同様に、電圧指令VCcontrolV、VCcontrolWが、それぞれV_multiレグ、W_multiレグのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される。
【0068】
VCcontrolV=Vdc+G(s)×(VCref−VCV) (30)
VCcontrolW=Vdc+G(s)×(VCref−VCW) (31)
以上のように本実施形態に係る電力変換装置は、相アームが3回路並列に直流電源(C5、Vdc)に接続され、前記3回路の交流端子Tacが3相交流電源U、V、Wに接続され、制御部15は、3相電圧指令のうち最も値が大きい相の相アームを構成するオンオフレグ21のスイッチング素子をオンにし、残り2相のオンオフレグ21のスイッチング素子をオフにした上で、前記残り2相の交流電圧指令相互の差電圧に基づいて、当該2相の相アームを構成するマルチレベルレグ20のスイッチング素子を制御する。
【0069】
以上のように構成した場合も、上記第2実施例の電力変換装置と同様な効果を奏することができる。
【0070】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
【0071】
図9は電力変換装置の第4実施形態の構成を示す図である。
【0072】
この電力変換装置は、前述した図1の第1実施形態と同一の直流電圧Vdcを図1の交流電圧Vuより大きな交流電圧に変換、あるいは図1と同一の交流電圧Vuを図1の直流電圧Vdcより小さな直流電圧に変換する電力変換装置である。
【0073】
図9に示す電力変換装置は、自己消弧能力を持つスイッチング素子Q1とダイオードD1を逆並列接続した回路を直列に接続したレグ22と、同様に構成したレグ23をコンデンサC1に並列に接続して、スイッチングユニット16aとして構成されている。N個のスイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグ17aと、自己消弧能力を持つスイッチング素子をN個直列接続したオンオフレグ18aとを直列接続して相アーム19aが構成される。相アーム19bも同様に構成される。図9の例ではN=2の例について示している。Nは装置の定格電圧及び各回路要素の定格電圧に応じて決定される。
【0074】
マルチレベルレグ17aとオンオフレグ18aの接続点と、マルチレベルレグ17bとオンオフレグ18bの接続点は、トランスTr1の2次側にリアクトルL1を介して接続される。トランスTr1の1次側は交流電源Vsに接続される。相アーム19a、19bは、リアクトルL2を介してコンデンサに並列接続され、直流電源Vdc(コンデンサC5)に接続される。
【0075】
例えばスイッチングユニット16aと16bの接続点dと、マルチレベルレグ17aとオンオフレグ18aの接続点eには、交流中点cに対して正負両極性の電圧を、スイッチング素子のゲート制御により発生することが可能である。
【0076】
以上のように本実施形態に係る電力変換装置は、直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグの2回路20、21がコンデンサC1に並列接続された回路要素がスイッチングユニット16aとして構成され、1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグ17aと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグ18aとが直列接続された相アーム19aを具備し、前記相アーム19aの最端部スイッチングユニット16aにおける直流側端部aが直流電源(C5、Vdc)の正負一方の側、前記相アーム19aの最端部オンオフレグ18aの直流側端部bが前記直流電源の正負他方側に接続され、前記相アーム19aのマルチレベルレグ17aとオンオフレグ18aの接続点が交流端子として交流電源Vsに接続される。
【0077】
この電力変換装置は、例えばソーラパネルを電源として発生される直流電圧Vdcを、ピーク電圧がVdcより高い交流電圧に変換するような用途に適している。
【0078】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。
【0079】
図10は電力変換装置の第5実施形態の構成を示す図である。
【0080】
この電力変換装置は、図5の第3実施形態の構成に加えて、短絡電流を早期に抑制するDCbreakレグ24が直流電源とマルチレベルレグの間にリアクトルL2を介して接続される。DCbreakレグ24は、図9のマルチレベルレグ17aと同様に構成されている。
【0081】
DCbreakレグ24は、通常動作時には、コンデンサC1、C2をバイパスするように各スイッチング素子のオンオフ状態を設定して動作し、コンデンサ電圧があらかじめ設定した一定値以下となった場合には、コンデンサC1、C2を充電する方向に電流が流れる経路を構成するようにスイッチング素子のオンオフ状態を切り替えて、コンデンサ電圧を一定値に維持する。
【0082】
直流電源から電力変換器に流れる電流があらかじめ設定した一定値を超過したら、それ以上に電流が増加しないように、電流が流れているのと極性が逆の電圧が、直流電源と変換器レグとの間に印加されるようにスイッチング素子のオンオフを切り替えて、電流を抑制する。
【0083】
以上の構成及び制御切替を行うことにより、直流電源側での正負短絡事故が発生した場合においても、短絡電流を早期に抑制することが可能になり、インバータ回路の素子破壊や電線の焼損などの事故の拡大を防ぐことが可能になる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10、22、23…レグ、11a、11b、19a、19b…相アーム、12a〜12d、16a、16b…スイッチングユニット、13a、13b、20a〜20c…マルチレベルレグ、14a、14b、21a〜21c…オンオフレグ、15…制御部、Tr1、Tr2…トランス。
【技術分野】
【0001】
本発明は直流を交流、または交流を直流に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統の交流を直流に変換するコンバータや、直流を交流に変換してモータ駆動に用いる電力変換装置には、図11に示すような3相2レベルコンバータ、3相2レベルインバータが適用されてきた。3相2レベルインバータは、直流から3相交流を出力する電力変換装置を構成する上で、必要最小限の半導体スイッチング素子6個で構成されるため、小型低コスト化を図ることが出来る。
【0003】
3相2レベルインバータの出力電圧波形は、入力直流電圧をVdcとしたとき、各相ごとに、+Vdc/2と、−Vdc/2の2値の切替をPWM(パルス幅変調)で行うので、擬似的な交流波形となっている。高耐圧のスイッチング素子を使用する高電圧モータドライブ用インバータ及び長距離海底ケーブルのように直流で伝送された電力を交流に変換する電力系統接続用インバータ等では、スイッチング高調波低減のために、3相交流出力にリアクトルやコンデンサで構成されたフィルタが挿入される。このような電力変換装置では、電力系統に流れ出す高調波成分を他の機器に悪影響を及ぼさないレベルまで低減するために、このフィルタ容量が大きくなっており、コスト上昇と重量増加を招いていた。
【0004】
更に、文献で発表されている回路方式では、図12のように、電力系統、配電系統電圧に、従来一般的に用いられているトランスによる電圧降圧なしに、直接接続することの出来る電力変換装置の研究開発も進められている。この電力変換装置は例えばCVCF(constant voltage constant frequency)インバータとして動作する。
【0005】
これが実用化されると、重量・体積が大きく、システム全体に占めるコストも比較的大きいトランスが不用になるほかに、出力電圧・電流波形が多レベル化により正弦波に近づくため、高調波フィルタが不要になるメリットも享受することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2009年cigre論文予稿集Paper401(Multilevel Voltage-Sourced Converters for HVDC and FACTS Applications:Siemens AG
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような回路方式は、各スイッチングユニットの構成要素である直流コンデンサの電圧値を一定に制御するために、直流電源を還流させる還流電流を常時流すことが原理的に必要である。3相を同一の直流電源に接続しているので、各相の直流電圧合成値がわずかでも異なると、相間に過大な短絡電流が流れてしまい機器を破壊してしまう危険がある。これを防止するために、各相にバッファリアクトルを挿入し、短絡電流が過大にならないように制限を加えている。このようなバッファリアクトルは装置の大型化、高コスト化を招く。
【0008】
実施形態は、高調波抑制フィルタ無しに高調波成分が小さい電圧電流波形を出力することができるとともに、バッファリアクトルのような高コスト・大型のリアクトルが不要な小型の電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る電力変換装置は、直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグと、前記レグに並列に接続されたコンデンサを含む回路要素がスイッチングユニットとして構成され、1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグとが直列接続された相アームと、前記相アームを構成する各スイッチング素子を制御する制御部とを具備し、前記相アームの最端部スイッチングユニットにおける直流側端部が直流電源の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグの直流側端部が前記直流電源の正負他方側に接続され、前記マルチレベルレグと前記オンオフレグの接続点が交流端子として交流電源に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電力変換装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】直流電圧発生動作を説明する図である。
【図3】コンデンサ電圧一定制御を示す図である。
【図4】電力変換装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【図5】第3実施形態の構成を示す図である。
【図6】第3実施形態の動作を示す図である。
【図7】第3実施形態の変形例の構成を示す図である。
【図8】図7に示す装置の動作を示す図である。
【図9】電力変換装置の第4実施形態の構成を示す図である。
【図10】電力変換装置の第5実施形態の構成を示す図である。
【図11】従来の電力変換装置の構成を示す図である。
【図12】従来の電力変換装置の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は電力変換装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【0013】
第1実施形態に係る電力変換装置は、例えば単相50Hzの交流電力を、絶縁トランスを介して直流電力に変換、または直流電力を単相50Hzの交流電力に変換し絶縁トランスを介して出力する。交流/直流変換と直流/交流変換は、電力変換装置の制御方法に依存して変更できる。電力変換装置の直流側(端子Tdc)は、バッテリ等の直流電源又はコンデンサに接続され、交流側(端子Tac)は例えばトランスを介して商用交流電源に接続されるか又は交流出力電源端子となる。これは本実施例及び後述する他の実施例についても同様に言える。第1実施形態に係る電力変換装置を交流電力を直流電力に変換する電力変換器(コンバータ)として説明する。
【0014】
図1に示す電力変換装置は、自己消弧能力を持つスイッチング素子Q1とダイオードD1を逆並列接続した回路を直列に接続したレグ10に、コンデンサC1を並列に接続してなるチョッパブリッジ単位変換器がスイッチングユニット12aとして構成されている。N個のスイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグ(U_multi)13aと、自己消弧能力を持つスイッチング素子をN個直列接続したオンオフレグ(U_onoff)14aとを直列接続して相アーム11aが構成される。相アーム11bも同様に構成される。図1の例ではN=2の例について示している。Nは装置の定格電圧及び各回路要素の定格電圧に応じて決定される。
【0015】
マルチレベルレグ13aとオンオフレグ14aの接続点とマルチレベルレグ13bとオンオフレグ14bの接続点は、トランスTr1の2次側にリアクトルL1を介して接続される。トランスTr1の1次側には50Hz交流電源電圧Vsが供給される。相アーム11a、11bは、リアクトルL2を介してコンデンサに並列接続され、直流電源電圧Vdcを発生する。
【0016】
制御部15は、上位機器から入力される直流電源電圧指令Vdcと、トランスTr1の2次側電圧Vpの検出値と、内部で発生した交流電圧指令Vuに基づいて、相アーム11a、11bを構成する各スイッチング素子に対するゲート指令を生成する。
【0017】
次に、第1実施形態における制御部15の制御動作を詳細に説明する。
【0018】
交流電圧指令Vuは50Hzの正弦波電圧で以下の式で表される。
Vu=V0×sin(ω・t) (1)
ここで、ωは50Hzの角周波数、V0は振幅最大値、tは時間である。
【0019】
図2は、直流電圧発生動作を説明する図である。
オンオフレグ14a、14bのオンとオフの切替は、交流出力電圧指令Vuの正負符号に応じて以下の条件分岐で決定する。
【0020】
[1] Vu>0のとき
オンオフレグ14aのスイッチング素子は全てオフ
オンオフレグ14bのスイッチング素子は全てオン
[2] Vu<0のとき
オンオフレグ14aのスイッチング素子は全てオン
オンオフレグ14bのスイッチング素子は全てオフ
マルチレベルレグ13a、13bに対する電圧指令VU_multi1、VU_multi2は、交流電圧指令Vuに応じて以下の条件分岐で決定され、一般的な三角波比較PWM(Pulse Width Modulation)に基づくチョッパスイッチング動作または1パルススイッチングにより、平均電圧が指令値通りになるように出力される。
【0021】
[1] Vu>0のとき
VU_multi1=Vdc−Vu (2)
VU_multi2=VCcontrol2 (3)
ここで、Vdcは直流電源電圧指令である。
図2(b)〜2(d)は、電圧指令Vuが正の半波のとき(図中Tpの期間)の電圧、電流、電力波形を示す図である。
【0022】
図2(b)のように、マルチレベルレグ13aに対する電圧指令VU_multi1は、直流電圧指令Vdcから交流電圧指令Vuを減算した値となる。図2(c)はこの時流れる電流Iaを示し、I0は電流Iaの最大値である。電流Iaはマルチレベルレグ13aのコンデンサC1、C2、及び直流電源電圧が発生するC5を通る。この時、マルチレベルレグ13aのコンデンサC1、C2は充電される。図2(d)はコンデンサC1、C2の充電電力Pc1を示す。ここで、図2(d)の電力Pc1を示すハッチング部の面積をAとする。
【0023】
[2] Vu<0のとき
VU_multi1=VCcontrol1 (4)
VU_multi2=Vdc+Vu (5)
図2(f)〜2(g)は、電圧指令Vuが負の半波のときの(図中Tnの期間)電圧、電流、電力波形を示す図である。
【0024】
図2(f)のように、マルチレベルレグ13bに対する電圧指令VU_multi2は、上記VU_multi1のように、直流電圧指令Vdcから交流電圧指令Vuを減算した値となる。図2(g)はこの時流れる電流Ibを示す。電流Ibはマルチレベルレグ13bのコンデンサC3、C4、及びC5を通る。この時、マルチレベルレグ13bのコンデンサC3、C4は充電される。図2(h)はコンデンサC3、C4の充電電力Pc2を示す。ここで、図2(h)の電力Pc2を示すハッチング部の面積をBとする。
【0025】
以上のような動作を繰り返すと、コンデンサC1〜C4は充電され続け、各コンデンサ電圧は過電圧となり、動作継続が不可能となる。そこで本実施形態では、制御部15は電力変換装置の動作中、各コンデンサC1〜C4の電圧平均値が一定値を維持するよう、各相アームのスイッッチング素子を制御する。このような制御をここではコンデンサ電圧一定制御という。
【0026】
前述の電圧指令VCcontrol1は、マルチレベルレグ13aのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される電圧指令で、後述の演算式で演算される。同様に電圧指令VCcontrol2は、マルチレベルレグ13bのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される電圧指令である。
【0027】
図3はコンデンサ電圧一定制御を示す図である。
【0028】
制御部15は、マルチレベルレグ13a、13bを構成するコンデンサC1〜C4の各コンデンサ電圧の平均値が、指令値VCrefに追従するように、マルチレベルレグの電圧指令VCcontrol1、VCcontrol2を次式のように決定する。
【0029】
VCcontrol1=Vdc+G(s)×(VCref−VC1) (6)
VCcontrol2=Vdc+G(s)×(VCref−VC2) (7)
ここで、G(s)は制御ゲイン、sはラプラス演算子であって、例えば比例積分制御の演算子である。指令値VCrefは、スイッチング素子等の耐圧に応じて予め設定された固定値である。VC1はコンデンサC1、C2のコンデンサ電圧Vca、Vcbの平均値であって、このコンデンサ電圧Vca、Vcbは測定により得られる検出値である。VC2はコンデンサC3、C4のコンデンサ電圧Vcc、Vcdの平均値であって、このコンデンサ電圧Vcc、Vcdは測定により得られる検出値である。
【0030】
図3(e)〜3(f)は、電圧指令Vuが負の半波の時(図中Tnの期間)のコンデンサ電圧一定制御を示す図である。
【0031】
上式(6)に示す電圧指令VCcontrol1に対応するゲート指令をマルチレベルレグ13aを構成するスイッチング素子に供給することで、図3(e)、3(g)に示すような電流Idが流れ、コンデンサC1、C2は放電される。この時の放電電力Pc1は図3(h)のハッチング部A’として示されている。このように、上式(6)に示す電圧指令VCcontrol1をマルチレベルレグ13aに与えることで、前述したように、電圧指令Vuが正の半波の時にコンデンサC1、C2に充電された電力を示すハッチング部Aの面積と、放電電力を示すハッチング部A’の面積は同一となる。すなわち、コンデンサC1、C2の充電電力と放電電力は同一となり、従ってコンデンサC1、C2の平均電圧は一定値を維持する。
【0032】
図3(a)〜3(d)は、電圧指令Vuが正の半波の時(図中Tpの期間)のコンデンサ電圧一定制御を示す図である。
【0033】
マルチレベルレグ13bについても同様に、上式(7)に示す電圧指令VCcontrol2に対応するゲート指令をマルチレベルレグ13bを構成するスイッチング素子に供給することで、図3(a)、3(c)に示すような電流Icが流れ、コンデンサC3、C4は放電される。この時の放電電力Pc2は図3(d)のハッチング部B’として示されている。このように、上式(7)に示す電圧指令VCcontrol2をマルチレベルレグ13bに与えることで、前述したように、電圧指令Vuが負の半波の時にコンデンサC1、C2に充電される電力を示すハッチング部Bの面積と、放電電力を示すハッチング部B’の面積は同一となる。すなわち、コンデンサC3、C4の充電電力と放電電力は同一となり、従ってコンデンサC3、C4の平均電圧は一定値を維持する。
【0034】
以上のように本実施形態に係る装置は、直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、自己消弧能力を持つスイッチング素子Q1を直列に2個接続したレグ10と、前記レグに並列に接続されたコンデンサC1を含む回路要素がスイッチングユニット12aとして構成され、1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグ13aと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグ14aとが直列接続された相アーム11aと、前記相アームを構成する各スイッチング素子を制御する制御部15とを具備し、前記相アームの最端部スイッチングユニット12aにおける直流側端部aが直流電源(C5、Vdc)の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグ14aの直流側端部bが前記直流電源の正負他方側に接続され、前記マルチレベルレグ13aと前記オンオフレグ11aの接続点が交流端子Tacとして交流電源Vsに接続されている。
【0035】
また、相アーム11が2回路並列に前記直流電源に接続され、前記制御部15は、交流電圧指令の正負符号に応じて、前記オンオフレグ14のスイッチング素子を各相アーム11ごとに交互にオンオフ切替を行い、一方のオンオフレグをオフとした時に、2回路の相アーム11a、11bにおけるマルチレベルレグ13とオンオフレグ14の接続点間の電圧差が交流電圧指令Vuに一致するように、当該オフとしたオンオフレグ14と同一相アーム11を構成するマルチレベルレグ13のスイッチング素子を制御する。
【0036】
更に制御部15は、一方のオンオフレグ14をオンとした時に、当該オンとしたオンオフレグと同一相アーム11を構成するスイッチングユニット12のコンデンサ電圧が、予め設定した電圧指令値に追従するような充放電電流が当該コンデンサに流れるように、当該スイッチングユニット12のスイッチング素子を制御する。
【0037】
本実施形態によれば、従来のように大型の高調波抑制フィルタを用いることなく低高調波の電圧電流波形を出力することができる。また従来のように、直流循環電流を流さなくともスイッチングユニットのコンデンサ電圧の平均値を一定に制御することが可能になり、バッファリアクトルのような高コスト・大型のリアクトルを用いることなく、小型の電力変換器を提供することが可能になる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0039】
図4は電力変換装置の第2実施形態の構成を示す図である。
【0040】
この電力変換装置は、電力系統で一般的な3相交流(R相、S相、T相)を、トランスTr2を介して変換器(1)〜(3)に入力し、直流に変換するコンバータを示す。トランスTr2の一次側は3相スター結線またはデルタ結線として、二次側を単相×3の合計6線に分割し、各相について図1に示す電力変換装置が変換器として設けられる。変換器(1)〜(3)の出力端を互いに並列に接続した上で直流電源(コンデンサC6)に接続する。
【0041】
すなわち、本実施形態に係る電力変換装置は、相アーム11が6回路並列に直流電源(C6)に接続され、交流端子が3相交流を3つの単相交流に分割する変圧器Tr2の単相交流側に接続され、直流と3相交流との電力変換を行う。
【0042】
本構成を用いることにより、3相交流から直流への電力変換においても、第1実施形態と同一の効果を得ることが可能になる。
【0043】
[第3実施形態]
図5は第3実施形態の構成を示す図である。
【0044】
第3実施形態に係る電力変換装置は、第2実施形態のような3相トランスを用いずに3相50Hzの電源を直流に電力変換する電力変換器である。
【0045】
UVWの各相アームの構成は第1実施形態と同様である。制御部15は、各相アームのマルチレベルレグ20a(U_multi)、20b(V_multi)、20c(W_multi)に対する電圧指令VU_multi、VV_multi、VW_multiと、オンオフレグ21a(U_onoff)、21b(V_onoff)、21c(W_onoff)に対するオンオフ指令を、3相電圧指令Vu、Vv、Vwの大小比較の結果に基づき、以下の条件分岐で算出する。
【0046】
図6は本実施形態の動作を示す図であり、図6(a)は三相電圧指令Vu、Vu、Vw、図6(b)はマルチレベルレグ20a、20b、20cに対する電圧指令VU_multi、VV_multi、VW_multi、図6(c)はオンオフレグ21a、21b、21cに対するオンオフ指令を示す。
【0047】
3相電圧指令Vu、Vv、Vwの中で最小値の相電圧をMIN(Vu、Vv、Vw)と定義する。このとき、制御部15は、以下の条件分岐で各相の出力電圧指令を演算する。
【0048】
[1] Vu=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、つまり電圧指令Vuが最も小さいとき(図6に示す期間T3)、オンオフレグ21a(U_onoff)をオンに設定し、マルチレベルレグ20a(U_multi)に対する電圧指令VU_multiを以下のように算出する。
【0049】
VU_multi=VCcontrolU (8)
VV_multi=Vdc−(Vv−MIN(Vu、Vv、Vw)) (9)
VW_multi=Vdc−(Vw−MIN(Vu、Vv、Vw)) (10)
ここで、Vdcは、直流電源電圧指令であり、式(8)のVCcontrolUは、マルチレベルレグ20a(U_multi)のコンデンサ電圧一定制御の結果出力される電圧指令で、後述の演算式で演算する。
【0050】
式(9)の(Vv−MIN(Vu、Vv、Vw))は、図6(a)に示すVv−Vuであり、図6(b)に示すような値をとる。図6(b)ではこのVv−VuがVV_multi0として表されている。式(9)のVV_multiは、直流電源電圧指令VdcからVV_multi0を減算した値である。
【0051】
同様に、式(10)の(Vw−MIN(Vu、Vv、Vw))は、図6(a)に示すVw−Vuであり、図6(b)に示すような値をとる。図6(b)ではこのVw−VuがVW_multi0として表されている。式(10)のVW_multiは、直流電源電圧指令VdcからVW_multi0を減算した値である。
【0052】
制御部15は、コンデンサ電圧一定制御において、マルチレベルレグ20a(U_multi)を構成するのコンデンサC7、C8のコンデンサ電圧の平均値が、指令値VCrefに追従するようにマルチレベルレグ20aに対する電圧指令VCcontrolU(上記第1実施形態におけるVCcontrol1またはVCcontrol2)を以下のように決定する。
【0053】
VCcontrolU=Vdc+G(s)×(VCref−VCU) (11)
ここで、G(s)は制御ゲイン、sはラプラス演算子であって、例えば比例積分制御の演算子である。
【0054】
同様に制御部15は、期間T1、T2において、以下のようにマルチレベルレグ20b、20cに対する電圧指令VV_multi、VW_multi、オンオフレグ21b、21cに対するオンオフ指令を決定する。
【0055】
[2] Vv=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、
VU_multi=Vdc−(Vu−MIN(Vu、Vv、Vw)) (12)
VV_multi=VCcontrolV (13)
VW_multi=Vdc−(Vw−MIN(Vu、Vv、Vw)) (14)
[3] Vw=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、
VU_multi=Vdc−(Vu−MIN(Vu、Vv、Vw)) (15)
VV_multi=Vdc−(Vv−MIN(Vu、Vv、Vw)) (16)
VW_multi=VCcontrolW (17)
同様に、電圧指令VCcontrolV、VCcontrolWが、それぞれV_multiレグ、W_multiレグのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される。
【0056】
VCcontrolV=Vdc+G(s)×(VCref−VCV) (18)
VCcontrolW=Vdc+G(s)×(VCref−VCW) (19)
以上のように本実施形態に係る電力変換装置は、相アームが3回路並列に直流電源(C5、Vdc)に接続され、前記3回路の交流端子Tacが3相交流電源U、V、Wに接続され、制御部15は、3相電圧指令のうち最も値が小さい相の相アームを構成するオンオフレグ21のスイッチング素子をオンにし、残り2相のオンオフレグ21のスイッチング素子をオフにした上で、前記残り2相の交流電圧指令相互の差電圧に基づいて、当該2相の相アームを構成するマルチレベルレグ20のスイッチング素子を制御する。
【0057】
以上の構成により、高調波抑制フィルタを用いずに低高調波の電圧電流波形を出力することができるとともに、直流循環電流を流さなくともスイッチングユニットのコンデンサ電圧の平均値を一定に制御することが可能になる。従って、バッファリアクトルのような高コスト・大型のリアクトルを使用せずに、3相交流と直流との電力変換をするための、小型の電力変換器を提供することが可能になる。
【0058】
次に、第3実施形態の変形例を説明する。
図7はこの変形例の構成を示す図である。図7の構成では、マルチレベルレグ20とオンオフレグ21の配置が図5の配置と比べ逆になっている。
【0059】
この場合、制御部15による制御論理も逆になる。制御部15は、各相アームのマルチレベルレグ20a、20b、20cに対する電圧指令VU_multi、VV_multi、VW_multiと、オンオフレグ21a、21b、21cに対するオンオフ指令を、3相電圧指令Vu、Vv、Vwの大小比較の結果に基づき、以下の条件分岐で算出する。
【0060】
図8は本実施形態の動作を示す図であり、図8(a)は三相電圧指令Vu、Vu、Vw、図6(b)はマルチレベルレグ20a、20b、20cに対する電圧指令VU_multi、VV_multi、VW_multiを示す。
【0061】
3相電圧指令Vu、Vv、Vwの中で最大値の相電圧をMAX(Vu、Vv、Vw)と定義する。このとき制御部15は、以下の条件分岐で各相の出力電圧指令を演算する。
【0062】
[1] Vu=MAX(Vu、Vv、Vw)のとき、つまり電圧指令Vuが最も大きいとき、オンオフレグ21aをオンに設定し、マルチレベルレグ20aに対する電圧指令VU_multiを以下のように算出する。
【0063】
VU_multi=VCcontrolU (20)
VV_multi=Vdc-(MAX(Vu、Vv、Vw)−Vv) (21)
VW_multi=Vdc−(MAX(Vu、Vv、Vw)-Vw) (22)
ここで、Vdcは、直流電源電圧指令であり、式(20)のVCcontrolUは、マルチレベルレグ20aのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される電圧指令である。
【0064】
制御部15は、コンデンサ電圧一定制御において、マルチレベルレグ20aを構成するのコンデンサC7、C8のコンデンサ電圧の平均値が、指令値VCrefに追従するようにマルチレベルレグ20aに対する電圧指令VCcontrolUを以下のように決定する。
【0065】
VCcontrolU=Vdc+G(s)×(VCref−VCU) (23)
ここで、G(s)は制御ゲイン、sはラプラス演算子であって、例えば比例積分制御の演算子である。
【0066】
同様に制御部15は、電圧指令Vvが最大のとき及び電圧指令Vwが最大のとき、以下のようにマルチレベルレグ20b、20cに対する電圧指令VV_multi、VW_multi、オンオフレグ21b、21cに対するオンオフ指令を決定する。
【0067】
[2] Vv=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、オンオフレグ21bをオン、
VU_multi=Vdc−(Vu−MIN(Vu、Vv、Vw)) (24)
VV_multi=VCcontrolV (25)
VW_multi=Vdc−(Vw−MIN(Vu、Vv、Vw)) (26)
[3] Vw=MIN(Vu、Vv、Vw)のとき、 オンオフレグ21cをオン、
VU_multi=Vdc−(Vu−MIN(Vu、Vv、Vw)) (27)
VV_multi=Vdc−(Vv−MIN(Vu、Vv、Vw)) (28)
VW_multi=VCcontrolW (29)
同様に、電圧指令VCcontrolV、VCcontrolWが、それぞれV_multiレグ、W_multiレグのコンデンサ電圧一定制御の結果出力される。
【0068】
VCcontrolV=Vdc+G(s)×(VCref−VCV) (30)
VCcontrolW=Vdc+G(s)×(VCref−VCW) (31)
以上のように本実施形態に係る電力変換装置は、相アームが3回路並列に直流電源(C5、Vdc)に接続され、前記3回路の交流端子Tacが3相交流電源U、V、Wに接続され、制御部15は、3相電圧指令のうち最も値が大きい相の相アームを構成するオンオフレグ21のスイッチング素子をオンにし、残り2相のオンオフレグ21のスイッチング素子をオフにした上で、前記残り2相の交流電圧指令相互の差電圧に基づいて、当該2相の相アームを構成するマルチレベルレグ20のスイッチング素子を制御する。
【0069】
以上のように構成した場合も、上記第2実施例の電力変換装置と同様な効果を奏することができる。
【0070】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
【0071】
図9は電力変換装置の第4実施形態の構成を示す図である。
【0072】
この電力変換装置は、前述した図1の第1実施形態と同一の直流電圧Vdcを図1の交流電圧Vuより大きな交流電圧に変換、あるいは図1と同一の交流電圧Vuを図1の直流電圧Vdcより小さな直流電圧に変換する電力変換装置である。
【0073】
図9に示す電力変換装置は、自己消弧能力を持つスイッチング素子Q1とダイオードD1を逆並列接続した回路を直列に接続したレグ22と、同様に構成したレグ23をコンデンサC1に並列に接続して、スイッチングユニット16aとして構成されている。N個のスイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグ17aと、自己消弧能力を持つスイッチング素子をN個直列接続したオンオフレグ18aとを直列接続して相アーム19aが構成される。相アーム19bも同様に構成される。図9の例ではN=2の例について示している。Nは装置の定格電圧及び各回路要素の定格電圧に応じて決定される。
【0074】
マルチレベルレグ17aとオンオフレグ18aの接続点と、マルチレベルレグ17bとオンオフレグ18bの接続点は、トランスTr1の2次側にリアクトルL1を介して接続される。トランスTr1の1次側は交流電源Vsに接続される。相アーム19a、19bは、リアクトルL2を介してコンデンサに並列接続され、直流電源Vdc(コンデンサC5)に接続される。
【0075】
例えばスイッチングユニット16aと16bの接続点dと、マルチレベルレグ17aとオンオフレグ18aの接続点eには、交流中点cに対して正負両極性の電圧を、スイッチング素子のゲート制御により発生することが可能である。
【0076】
以上のように本実施形態に係る電力変換装置は、直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグの2回路20、21がコンデンサC1に並列接続された回路要素がスイッチングユニット16aとして構成され、1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグ17aと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグ18aとが直列接続された相アーム19aを具備し、前記相アーム19aの最端部スイッチングユニット16aにおける直流側端部aが直流電源(C5、Vdc)の正負一方の側、前記相アーム19aの最端部オンオフレグ18aの直流側端部bが前記直流電源の正負他方側に接続され、前記相アーム19aのマルチレベルレグ17aとオンオフレグ18aの接続点が交流端子として交流電源Vsに接続される。
【0077】
この電力変換装置は、例えばソーラパネルを電源として発生される直流電圧Vdcを、ピーク電圧がVdcより高い交流電圧に変換するような用途に適している。
【0078】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。
【0079】
図10は電力変換装置の第5実施形態の構成を示す図である。
【0080】
この電力変換装置は、図5の第3実施形態の構成に加えて、短絡電流を早期に抑制するDCbreakレグ24が直流電源とマルチレベルレグの間にリアクトルL2を介して接続される。DCbreakレグ24は、図9のマルチレベルレグ17aと同様に構成されている。
【0081】
DCbreakレグ24は、通常動作時には、コンデンサC1、C2をバイパスするように各スイッチング素子のオンオフ状態を設定して動作し、コンデンサ電圧があらかじめ設定した一定値以下となった場合には、コンデンサC1、C2を充電する方向に電流が流れる経路を構成するようにスイッチング素子のオンオフ状態を切り替えて、コンデンサ電圧を一定値に維持する。
【0082】
直流電源から電力変換器に流れる電流があらかじめ設定した一定値を超過したら、それ以上に電流が増加しないように、電流が流れているのと極性が逆の電圧が、直流電源と変換器レグとの間に印加されるようにスイッチング素子のオンオフを切り替えて、電流を抑制する。
【0083】
以上の構成及び制御切替を行うことにより、直流電源側での正負短絡事故が発生した場合においても、短絡電流を早期に抑制することが可能になり、インバータ回路の素子破壊や電線の焼損などの事故の拡大を防ぐことが可能になる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10、22、23…レグ、11a、11b、19a、19b…相アーム、12a〜12d、16a、16b…スイッチングユニット、13a、13b、20a〜20c…マルチレベルレグ、14a、14b、21a〜21c…オンオフレグ、15…制御部、Tr1、Tr2…トランス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、
自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグと、前記レグに並列に接続されたコンデンサを含む回路要素がスイッチングユニットとして構成され、
1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグとが直列接続された相アームと、
前記相アームを構成する各スイッチング素子を制御する制御部とを具備し、
前記相アームの最端部スイッチングユニットにおける直流側端部が直流電源の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグの直流側端部が前記直流電源の正負他方側に接続され、前記マルチレベルレグと前記オンオフレグの接続点が交流端子として交流電源に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記相アームが6回路並列に直流電源に接続され、前記交流端子が3相交流を3つの単相交流に分割する変圧器の単相交流側に接続され、直流と3相交流との電力変換を行うことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記相アームが2回路並列に前記直流電源に接続され、
前記制御部は、
交流電圧指令の正負符号に応じて、前記オンオフレグのスイッチング素子を各相アームごとに交互にオンオフ切替を行い、
一方のオンオフレグをオフとした時に、前記2回路の相アームにおけるマルチレベルレグとオンオフレグの接続点間の電圧差が交流電圧指令に一致するように、当該オフとしたオンオフレグと同一相アームを構成するマルチレベルレグのスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、一方のオンオフレグをオンとした時に、当該オンとしたオンオフレグと同一相アームを構成するスイッチングユニットのコンデンサ電圧が、予め設定した電圧指令値に追従するような充放電電流が当該コンデンサに流れるように、当該スイッチングユニットのスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記相アームが3回路並列に前記直流電源に接続され、前記3回路の交流端子が3相交流電源に接続され、
前記制御部は、3相電圧指令のうち最も値が小さい相の相アームを構成するオンオフレグのスイッチング素子をオンにし、残り2相のオンオフレグのスイッチング素子をオフにした上で、前記残り2相の交流電圧指令相互の差電圧に基づいて、当該2相の相アームを構成するマルチレベルレグのスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記相アームが3回路並列に前記直流電源に接続され、前記3回路の交流端子が3相交流電源に接続され、
前記制御部は、3相電圧指令のうち最も値が大きい相の相アームを構成するオンオフレグのスイッチング素子をオンにして、残り2相のオンオフレグのスイッチング素子をオフにした上で、前記残り2相の交流電圧指令相互の差電圧に基づいて、当該2相の相アームを構成するマルチレベルレグのスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記3回路並列に接続された相アームの相互接続点の一方と前記直流電源との間に直流電流制限レグが接続され、前記直流電流制限レグは、自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグの2回路が共にコンデンサに並列接続された回路要素を含み、当該回路要素が複数直列に接続されていることを特徴とする請求項5記載の電力変換装置。
【請求項8】
直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、
自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグの2回路がコンデンサに並列接続された回路要素がスイッチングユニットとして構成され、
1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグとが直列接続された相アームを具備し、
前記相アームの最端部スイッチングユニットにおける直流側端部が直流電源の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグの直流側端部が前記直流電源の正負他方側に接続され、前記相アームのマルチレベルレグとオンオフレグの接続点が交流端子として交流電源に接続された構成を特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、
自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグと、前記レグに並列に接続されたコンデンサを含む回路要素がスイッチングユニットとして構成され、
1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグとが直列接続された相アームと、
前記相アームを構成する各スイッチング素子を制御する制御部とを具備し、
前記相アームの最端部スイッチングユニットにおける直流側端部が直流電源の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグの直流側端部が前記直流電源の正負他方側に接続され、前記マルチレベルレグと前記オンオフレグの接続点が交流端子として交流電源に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記相アームが6回路並列に直流電源に接続され、前記交流端子が3相交流を3つの単相交流に分割する変圧器の単相交流側に接続され、直流と3相交流との電力変換を行うことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記相アームが2回路並列に前記直流電源に接続され、
前記制御部は、
交流電圧指令の正負符号に応じて、前記オンオフレグのスイッチング素子を各相アームごとに交互にオンオフ切替を行い、
一方のオンオフレグをオフとした時に、前記2回路の相アームにおけるマルチレベルレグとオンオフレグの接続点間の電圧差が交流電圧指令に一致するように、当該オフとしたオンオフレグと同一相アームを構成するマルチレベルレグのスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、一方のオンオフレグをオンとした時に、当該オンとしたオンオフレグと同一相アームを構成するスイッチングユニットのコンデンサ電圧が、予め設定した電圧指令値に追従するような充放電電流が当該コンデンサに流れるように、当該スイッチングユニットのスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記相アームが3回路並列に前記直流電源に接続され、前記3回路の交流端子が3相交流電源に接続され、
前記制御部は、3相電圧指令のうち最も値が小さい相の相アームを構成するオンオフレグのスイッチング素子をオンにし、残り2相のオンオフレグのスイッチング素子をオフにした上で、前記残り2相の交流電圧指令相互の差電圧に基づいて、当該2相の相アームを構成するマルチレベルレグのスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記相アームが3回路並列に前記直流電源に接続され、前記3回路の交流端子が3相交流電源に接続され、
前記制御部は、3相電圧指令のうち最も値が大きい相の相アームを構成するオンオフレグのスイッチング素子をオンにして、残り2相のオンオフレグのスイッチング素子をオフにした上で、前記残り2相の交流電圧指令相互の差電圧に基づいて、当該2相の相アームを構成するマルチレベルレグのスイッチング素子を制御することを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記3回路並列に接続された相アームの相互接続点の一方と前記直流電源との間に直流電流制限レグが接続され、前記直流電流制限レグは、自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグの2回路が共にコンデンサに並列接続された回路要素を含み、当該回路要素が複数直列に接続されていることを特徴とする請求項5記載の電力変換装置。
【請求項8】
直流から交流または交流から直流へ電力を変換する電力変換装置であって、
自己消弧能力を持つスイッチング素子を直列に2個接続したレグの2回路がコンデンサに並列接続された回路要素がスイッチングユニットとして構成され、
1以上の前記スイッチングユニットを直列に接続したマルチレベルレグと、自己消弧能力を持つ1以上のスイッチング素子を直列に接続したオンオフレグとが直列接続された相アームを具備し、
前記相アームの最端部スイッチングユニットにおける直流側端部が直流電源の正負一方の側、前記相アームの最端部オンオフレグの直流側端部が前記直流電源の正負他方側に接続され、前記相アームのマルチレベルレグとオンオフレグの接続点が交流端子として交流電源に接続された構成を特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−81309(P2013−81309A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220302(P2011−220302)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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