説明

電動シリンダ

【課題】必要な最大推力を維持しながらロッドの動作時間による生産効率の低下を抑制する電動シリンダを提供する。
【解決手段】本電動シリンダ1は、ボールねじ軸6に設けた、リードが互い相違する小リードねじ部10及び大リードねじ部11と、シリンダ本体2内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、小リードねじ部10に各ボールを介して螺合可能な第1ピストン12と、シリンダ本体2内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、大リードねじ部11に各ボールを介して螺合可能な第2ピストン13と、第1ピストン12と第2ピストン13との間に配置されたコイルスプリング14と、第1ピストン12に連結され、先端部がシリンダ本体2の底部から突出するロッド15とを備えたので、必要な最大推力を維持しながらロッドの動作時間による生産効率の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動シリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の生産工場では、部品を保持するときのクランプ機構や位置決めのために電動シリンダが使用される。
従来の電動シリンダとして特許文献1には、電動機と、該電動機の回転軸部に伝導部材を介して連結されるボールねじと、該ボールねじに螺合したボールナットと、該ボールナットに固定されたロッドとから構成され、電動機の回転軸部の回転によりボールねじが回転すると、ねじ機構によりボールナットと共にロッドが直線運動する電動シリンダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−289755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常のクランプ設備等で使用される電動シリンダでは、ロッドが最も前進した位置にて最大の推力が必要になるが、そこに至るまではその最大の推力は必要ない場合が多く見受けられる。
そこで、上述した特許文献1に記載の電動シリンダにおいても、ロッドが最も前進した位置における必要な最大推力を維持するために、ボールねじのリードを比較的に短めに設定して、モータ性能の選定が行われている。この結果、ボールねじに、ロッドの全進退範囲に亘って比較的短めのリードを有するねじ部が形成されることで、ロッドの動作時間(進退する時間)が遅くなり、生産効率が悪化する。そのため、ロッドの動作時間を短縮するためにボールねじのねじ部のリードを長めに設定すると、今度はロッドが最も前進した位置での必要な最大推力を維持するためにモータ性能を高めに設定する必要があり、コスト面で不利となる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、必要な最大推力を維持しながらロッドの動作時間による生産効率の低下を抑制する電動シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の電動シリンダは、有底筒状のシリンダ本体と、電動モータからの回転力が伝達され、前記シリンダ本体内に延びるボールねじ軸と、該ボールねじ軸に設けた、リードが互い相違する小リードねじ部及び大リードねじ部と、前記シリンダ本体内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、前記ボールねじ軸の小リードねじ部にボールを介して螺合可能な第1ピストンと、前記シリンダ本体内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、前記ボールねじ軸の大リードねじ部にボールを介して螺合可能な第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に配置された弾性部材と、前記第1ピストンに連結され、先端部が前記シリンダ本体の底部から突出するロッドと、を備えたことを特徴としている。
これにより、必要な最大推力を維持しながらロッドの動作時間による生産効率の低下を抑制することができる。
なお、本発明の電動シリンダの各種態様およびそれらの作用については、以下の発明の態様の項において詳しく説明する。
【0007】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。なお、各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付して、必要に応じて他の項を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施の形態等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要件を付加した態様も、また、各項の態様から構成要件を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)乃至(3)の各々が、請求項1乃至3の各々に相当する。
【0008】
(1)有底筒状のシリンダ本体と、電動モータからの回転力が伝達され、前記シリンダ本体内に延びるボールねじ軸と、該ボールねじ軸に設けた、リードが互い相違する小リードねじ部及び大リードねじ部と、前記シリンダ本体内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、前記ボールねじ軸の小リードねじ部にボールを介して螺合可能な第1ピストンと、前記シリンダ本体内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、前記ボールねじ軸の大リードねじ部にボールを介して螺合可能な第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に配置された弾性部材と、前記第1ピストンに連結され、先端部が前記シリンダ本体の底部から突出するロッドと、を備えたことを特徴とする電動シリンダ。
(1)項の電動シリンダでは、ロッドの前進する初期状態から中間状態までは、電動モータが作動すると、ボールねじ軸の大リードねじ部と第2ピストンとの螺合により、第2ピストンが前進すると共にその推進力は弾性部材を経由して第1ピストンに伝達され、第1ピストンと共にロッドが前進するようになる。このロッドの前進はボールねじ軸の大リードねじ部と第2ピストンとの螺合により達成されるので、ロッドの動作時間を従来よりも短縮することが可能になる。その後、ボールねじ軸の大リードねじ部と第2ピストンとの螺合状態から、ボールねじ軸の小リードねじ部と第1ピストンとの螺合状態へ移行する際、両方の螺合状態が維持される時間帯があるが、この時の第2ピストンの第1ピストンに対する移動距離の差は弾性部材にて吸収することができる。その後最終的には、ボールねじ軸の小リードねじ部と第1ピストンとの螺合により第1ピストン及びロッドを前進させるので、ロッドが最大限前進した位置において、必要な最大の推進力を維持することができる。
【0009】
(2)前記小リードねじ部の軸径は、前記大リードねじ部の軸径よりも大径であることを特徴とする(1)項に記載の電動シリンダ。
(2)項の電動シリンダでは、第1ピストンの内部(雌ねじ部内)にボールねじ軸の大リードねじ部を挿通させることができるので、電動シリンダの全体をコンパクトにすることができる。
【0010】
(3)前記小リードねじ部は、前記大リードねじ部よりも前記ボールねじ軸の先端側に設けられることを特徴とする(1)項または(2)項に記載の電動シリンダ。
(3)項の電動シリンダでは、ロッドが最大で前進した位置において、必要な最大の推進力を維持することができる。
【0011】
(4)前記第1ピストンから複数のピンが前記第2ピストン側に突設され、該複数のピンは、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に配置された前記弾性部材であるコイルスプリング内をそれぞれ挿通して、前記第2ピストンを挿通し各ナットに固定されることを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれかに記載の電動シリンダ。
(4)項の電動シリンダでは、コイルスプリングにより第2ピストンからの推進力を確実に第1ピストンに伝達することができると共に、第2ピストンの第1ピストンに対する移動距離の差をコイルスプリングにより容易に吸収することができる。
【0012】
(5)前記ロッドが動作する前の初期状態では、前記シリンダ本体内のボールねじ軸は、その大リードねじ部が前記第2ピストンに螺合すると共に、前記第1ピストンの内部を挿通して、前記ロッドの基端面から軸方向に沿って設けた凹部内に収容されることを特徴とする(1)項〜(4)項のいずれかに記載の電動シリンダ。
(5)項の電動シリンダでは、電動シリンダの全体をさらにコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、必要な最大推力を維持しながらロッドの動作時間による生産効率の低下を抑制する電動シリンダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る電動シリンダを示す断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図3は、図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】図4は、本電動シリンダのロッドが前進する様子を段階的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る電動シリンダ1は、図1に示すように、有底筒状のシリンダ本体2と、該シリンダ本体2の開口端部(図中右端)を塞ぐエンドブロック3に固定される電動モータ4と、該電動モータ4からの回転軸(図示略)とカップリング5を介して接続されシリンダ本体2内に延びるボールねじ軸6と、該ボールねじ軸6に設けた、リードが互い相違する小リードねじ部10及び大リードねじ部11と、シリンダ本体2内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、ボールねじ軸6の小リードねじ部10に複数のボール(図示略)を介して螺合可能な第1ピストン12と、シリンダ本体2内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、ボールねじ軸6の大リードねじ部11に複数のボール(図示略)を介して螺合可能な第2ピストン13と、第1ピストン12と第2ピストン13との間に配置される弾性部材であるコイルスプリング14と、第1ピストン12に連結され、先端部がシリンダ本体2のヘッドブロック19(底部)の貫通孔22から外部に突出するロッド15とを備えている。
なお、説明の便宜上、図中左側を前側として、図中右側を後側として適宜説明する。
【0016】
シリンダ本体2は、筒体18と、該筒体18の前端開口を塞ぐ円板状のヘッドブロック19とから構成される。筒体18の内周面は平面視8角形に形成される(図2及び図3参照)。該ヘッドブロック19の外周面に設けた雄ねじ部20と、筒体18の前端内周面に設けた雌ねじ部21とを螺合して、筒体18の前端開口がヘッドブロック19により閉鎖される。該ヘッドブロック19には、ロッド15が挿通する貫通孔22が設けられる。ヘッドブロック19の貫通孔22とロッド15との間には環状のスクレーパ23及び環状のブッシュ24が備えられている。スクレーパ23がブッシュ24よりも前側に備えられる。また、ヘッドブロック19の後面、すなわち筒体18内に臨む面には軸方向に沿う凹部25が形成され、該凹部25内の外周にリング状の前進ストッパ26が設けられる。該前進ストッパ26により第1ピストン12の前進限が規定される。
【0017】
シリンダ本体2の筒体18の後端開口(図中右端)は、エンドブロック3により閉鎖されている。エンドブロック3の前部外周面に設けた雄ねじ部27と、筒体18の後端内周面に設けた雌ねじ部28とが螺合されて、筒体18の後端開口がエンドブロック3により閉鎖される。エンドブロック3には、軸方向に貫通して延びる小径開口部29及び大径開口部30が形成される。小径開口部29が大径開口部30よりも前側、すなわちシリンダ本体2の内部寄りに形成される。エンドブロック3の後面に電動モータ4の本体が複数のボルト31により固定される。
【0018】
ボールねじ軸6は、シリンダ本体2(円筒18)内を延び、エンドブロック3の小径開口部29及び大径開口部30内に延びている。該ボールねじ軸6の後端(図中右端)と電動モータ4からの回転軸(図示略)とはエンドブロック3の大径開口部30内でカップリング5により接続される。また、ボールねじ軸6はエンドブロック3の小径開口部29内に軸受32により回転自在に支持される。なお、軸受32は、エンドブロック3のシリンダ本体2内に臨む面にボルト33により固定される断面L字状で環状に延びるベアリング押さえ部材34と、ボールねじ軸6に螺合されるベアリング押さえナット35とによりエンドブロック3の小径開口部29に支持される。軸受32のシリンダ本体2内へ臨む面でベアリング押さえ部材34の内側には、ボールねじ軸6が挿通する挿通孔36を有する後退ストッパブロック40が備えられる。該後退ストッパブロック40により第2ピストン13の後退限が規定される。なお、ボールねじ軸6の先端部分は、ロッド15に設けられた凹部54内に収容される。
【0019】
ボールねじ軸6には、リードの相違する小リードねじ部10及び大リードねじ部11が形成される。すなわち、小リードねじ部10は、大リードねじ部11よりもそのリードが短く設定されている。小リードねじ部10及び大リードねじ部11は共に一条ねじである。また、ボールねじ軸6の先端に小リードねじ部10が形成され、該小リードねじ部10から基端側に間隔を開けた位置に大リードねじ部11が形成される。小リードねじ部10の軸径は、大リードねじ部11の軸径より大径に形成される。小リードねじ部10と大リードねじ部11との間の軸部の軸径は、小リードねじ部10の軸径よりも小径に形成される。また、小リードねじ部10の長さは大リードねじ部11の長さより大幅に短く形成される。
【0020】
第1ピストン12は、図1及び図2に示すように、外形が平面視8角形で、シリンダ本体2の筒体18内に軸方向に摺動自在に、且つ回転不能に支持される第1筒体41と、該第1筒体41内に複数のボルト60により固定され、ボールねじ軸6の小リードねじ部10に各ボールを介して螺合される雌ねじ部43を有する第1ボールナット42とから構成される。第1筒体41の前面には突設部44が設けられ、該突設部44の内周面にロッド15の基端がネジ結合で接続される。
【0021】
一方、第2ピストン13は、図1及び図3に示すように、外形が平面視8角形で、シリンダ本体2の筒体18内に軸方向に摺動自在に、且つ回転不能に支持される第2筒体47と、該第2筒体47内に複数のボルト60により固定され、ボールねじ軸6の大リードねじ部11に各ボールを介して螺合される雌ねじ部49を有する第2ボールナット48とから構成される。
そして、シリンダ本体2の筒体18内に第1ピストン12及び第2ピストン13が配置されると、筒体18の内周面と、第1及び第2ピストン12、13の外形とは互いに平面視8角形に形成されているため、第1及び第2ピストン12、13の、シリンダ本体2の筒体18に対する回転が規制される。
【0022】
第1ピストン12の第1筒体41の後面には2本のピン51、51が径方向で対向した位置にねじ込まれている。該各ピン51は、第2ピストン13の第2筒体47の対応する各貫通孔52に挿通され、各ピン51の端部にナット53がそれぞれねじ込まれている。また、第1ピストン12の第1筒体41と第2ピストン13の第2筒体47との間の各ピン51の周りにはそれぞれコイルスプリング14が設けられている。各コイルスプリング14により第1ピストン12と第2ピストン13とは互いに遠退する方向に付勢されている。
【0023】
ロッド15は、その基端(後端)が第1ピストン12の第1筒体41に設けた突設部44の内周面にネジ結合で接続され、その先端がシリンダ本体2のヘッドブロック19の貫通孔22から外部に突出している。該ロッド15には、その基端面(後端面)から軸方向に沿う所定深さの凹部54が形成される。初期状態では、ロッド15の凹部54内にボールねじ軸6が収容されるようになる。
【0024】
次に、本発明の実施の形態に係る電動シリンダ1の作用を図4に基づいて説明する。
図4(a)は電動モータ4が作動していない初期状態を示す。
該初期状態では、第2ピストン13の第2ボールナット48の後面が後退ストッパブロック40に当接された状態で、ボールねじ軸6に設けられた大リードねじ部11の後側範囲に第2ピストン13の第2ボールナット48が各ボールを介して螺合され、ボールねじ軸6の先端が第1ピストン12の第1ボールナット42内を挿通すると共にロッド15に設けた凹部54内に収容された状態となる。また、第1ピストン12と第2ピストン13との間の各コイルスプリング14は伸びた状態である。
なお、この初期状態では、ボールねじ軸6の小リードねじ部10と第1ピストン12の第1ボールナット42とは螺合されていない状態であるが、第1ボールナット42の雌ねじ部43内の複数のボールはリテーナ(図示略)により保持されており、落下することはない。
【0025】
次に、電動モータ4が作動されると、ボールねじ軸6が回転することにより、第2ピストン13はその回転が規制されているために前進し、各コイルスプリング14の付勢力によって第2ピストン13からの推進力が第1ピストン12に伝達されて、第1ピストン12と共にロッド15が前進し始める。
次に、電動モータ4の作動を継続すると、図4(b)に示すように、ボールねじ軸6の小リードねじ部10と第1ピストン12の第1ボールナット42とが各ボールを介して螺合し始める。この時、まだ、ボールねじ軸6の大リードねじ部11と第2ピストン13の第2ボールナット48との螺合状態は維持されている。
【0026】
次に、図4(b)及び(c)に示すように、ボールねじ軸6の大リードねじ部11と第2ピストン13の第2ボールナット48との螺合状態から、ボールねじ軸6の小リードねじ部10と第1ピストン12の第1ボールナット42との螺合状態に移行する際、両方の螺合状態が維持される時間帯が発生するが、この状態では、第2ピストン13が第1ピストン12よりも電動モータ4の回転数に対する移動量が大きいために、各コイルスプリング14が圧縮される。
最終的に、図4(c)に示すように、ボールねじ軸6の小リードねじ部10と第1ピストン12の第1ボールナット42との螺合状態が完全となり、第1ピストン12が前進ストッパ26によりその前進が規制された時点で、ボールねじ軸6の大リードねじ部11と第2ピストン13の第2ボールナット48との螺合状態が解除される。そして、電動シリンダ1のロッド15の推進力が最大になる。
このように、本実施の形態では、初期状態(図4(a)の状態)から中間位置(図4(b)の状態)までのロッド15の前進速度が、中間位置(図4(b)の状態)から最大前進位置(図4(c)の状態)までのロッド15の前進速度よりも速くなり、ロッド15の前進速度を2段階に分けることができる。
【0027】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る電動シリンダ1では、特に、ボールねじ軸6に設けた、リードが互い相違する小リードねじ部10及び大リードねじ部11と、シリンダ本体2内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、小リードねじ部10に各ボールを介して螺合可能な第1ピストン12と、シリンダ本体2内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、大リードねじ部11に各ボールを介して螺合可能な第2ピストン13と、第1ピストン12と第2ピストン13との間に配置されるコイルスプリング14と、第1ピストン12に連結され、先端部がシリンダ本体2のヘッドブロック19の貫通孔22から外部に突出するロッド15とを備えている。
【0028】
これにより、ロッド15が前進し始めて(図4(a)の状態)から中間位置(図4(b)の状態)に至るまでの間は、ボールねじ軸6の大リードねじ部11と第2ピストン13の第2ボールナット48との螺合によりロッド15を前進させるので、ロッド15の動作時間(前進する時間)を従来よりも短縮することができる。また、中間位置(図4(b)の状態)からロッド15が最大で前進した位置(図4(c)の状態)に至るまでの間は、ボールねじ軸6の小リードねじ部10と第1ピストン12の第1ボールナット42との螺合によりロッド15を前進させるので、ロッド15が最大限前進した位置における必要な最大の推力を維持することができる。
そして、本発明の実施の形態に係る電動シリンダ1を採用することにより、必要な最大推力を維持しながらロッド15の動作時間による生産効率の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 電動シリンダ,2 シリンダ本体,4 電動モータ,6 ボールねじ軸,10 小リードねじ部,11 大リードねじ部,12 第1ピストン,13 第2ピストン,14 コイルスプリング(弾性部材),15 ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のシリンダ本体と、
電動モータからの回転力が伝達され、前記シリンダ本体内に延びるボールねじ軸と、
該ボールねじ軸に設けた、リードが互い相違する小リードねじ部及び大リードねじ部と、
前記シリンダ本体内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、前記ボールねじ軸の小リードねじ部にボールを介して螺合可能な第1ピストンと、
前記シリンダ本体内に軸方向に移動自在に、且つ回転不能に配置され、前記ボールねじ軸の大リードねじ部にボールを介して螺合可能な第2ピストンと、
前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に配置された弾性部材と、
前記第1ピストンに連結され、先端部が前記シリンダ本体の底部から突出するロッドと、
を備えたことを特徴とする電動シリンダ。
【請求項2】
前記小リードねじ部の軸径は、前記大リードねじ部の軸径よりも大径であることを特徴とする請求項1に記載の電動シリンダ。
【請求項3】
前記小リードねじ部は、前記大リードねじ部よりも前記ボールねじ軸の先端側に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の電動シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−170284(P2012−170284A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30836(P2011−30836)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】