説明

電動パワーステアリング制御装置

【課題】運転者の意思を適切に反映したアシスト制御を可能にする
【解決手段】EPSシステム1では、目標アシストトルク演算部20が、トルクセンサにて検出された操舵トルクTsに基づき、操舵トルクに応じた値の目標アシストトルクを示す目標電流を演算し、モータ駆動回路50が、演算された目標電流に基づいてモータ6を駆動させる。また、操舵角センサが操舵角θsを検出するとともに、微分器62が操舵角速度ωsを演算し、さらに操舵状態量演算部22が、操舵角θsと操舵角速度ωsとに基づいて、操舵状態量を演算する。そして目標アシストトルク演算部20は、演算された操舵状態量に基づき、目標アシストトルクを示す目標電流を変更する。したがって、操舵トルクTsだけではなく操舵角速度ωsによっても目標アシストトルクを変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者による車両のハンドル操作をモータにて補助する電動パワーステアリング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者によるハンドル操作により生じる操舵トルクに基づいて、ハンドルの操作を補助するためのアシスト量を演算するとともに、操舵角に基づいて、操舵角が大きいほどアシスト量が大きくなるように、アシスト量を調整するための調整ゲインを設定することにより、運転者がハンドルを大きく操作する(すなわち、操舵角が大きい)ときの運転者の負担を軽減することができる電動パワーステアリング制御装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−43742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両の操舵状態は、操舵角だけではなく、操舵トルクおよび操舵角の回転速度(操舵角速度)によっても変化する。このため、特許文献1に記載の技術のように、操舵角のみによってアシスト量を調整すると、運転者の意思を適切に反映しない不自然な操舵感が生じることがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、運転者の意思を適切に反映したアシスト制御を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、車両のハンドルに連結されてハンドルとともに回転する入力軸と、入力軸の回転を車両の操舵輪に伝達することにより操舵輪を操舵させる入力伝達手段と、入力軸に加えられる軸回転方向のトルクである操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、ハンドルの操作による操舵輪の操舵時にハンドルの操作を補助するためのアシストトルクを入力軸または入力伝達手段に与えるためのモータとを備えた電動パワーステアリングシステムに設けられ、モータを制御することによりアシストトルクを制御する電動パワーステアリング制御装置である。
【0007】
また、請求項1に記載の電動パワーステアリング制御装置では、アシスト量演算手段が、操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基づき、操舵トルクに応じた値のアシストトルクを示すアシスト量を演算し、モータ駆動手段が、アシスト量演算手段により演算されたアシスト量に基づいてモータを駆動させる。また操舵角速度検出手段が、ハンドルの操舵角の回転速度である操舵角速度を検出し、さらに操舵状態量演算手段が、少なくとも、操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクと、操舵角速度検出手段により検出された操舵角速度とに基づいて、車両の操舵状態を示す操舵状態量を演算する。そしてアシスト量演算手段は、操舵状態量演算手段により演算された操舵状態量に基づき、アシスト量を変更する。
【0008】
このように構成された電動パワーステアリング制御装置では、操舵トルクと操舵角速度とに基づいて演算された操舵状態量に基づいてアシスト量を変更するため、操舵トルクだけではなく操舵角速度によってもアシストトルクを変更することができ、運転者の意思をより適切に反映したアシスト制御の実現が可能となる。
【0009】
例えば、操舵角速度の増加に応じてアシスト量を増加させるようにアシスト量演算手段が設定されている場合には、運転者がハンドルを或るハンドル角度で保持している状態からハンドルを速く切り始めると、アシストトルクを急激に増大させることが可能になる。
【0010】
すなわち、ハンドルをゆっくり切る場合よりも速く切る場合のほうがハンドルを楽に操作することができ、ハンドルを速く切りたいという運転者の意思を適切に制御に反映することができる。
【0011】
また、請求項1に記載の電動パワーステアリング制御装置において、請求項2に記載のように、操舵角検出手段が、ハンドルの操舵角を検出し、操舵状態量演算手段は、操舵トルクと操舵角速度に加え、さらに、操舵角検出手段により検出された操舵角に基づいて、操舵状態量を演算するようにするとよい。
【0012】
このように構成された電動パワーステアリング制御装置では、さらに、ハンドルの操舵角によってもアシストトルクを変更することができ、運転者の意思をより適切に反映したアシスト制御の実現が可能となる。
【0013】
例えば、操舵角の増加に応じてアシスト量を増加させるようにアシスト量演算手段が設定されている場合には、操舵角に応じて大きくなるアシストトルクが与えられるので、運転者がハンドルを緩やかに切り増ししていく場合には、操舵角の増加に応じてアシストトルクを徐々に増大させることが可能になり、ハンドルを切り増ししていくほど、ハンドルを楽に操作することができる。
【0014】
また、操舵状態量演算手段により演算される操舵状態量は、操舵トルクと操舵角と操舵角速度に基づく限り種々の演算方法を採用可能であるが、操舵状態量演算手段は、例えば、請求項3に記載のように、予め設定されている第1調整ゲインと操舵トルクと操舵角との乗算値と、予め設定されている第2調整ゲインと操舵トルクと操舵角速度との乗算値とを加算した値を操舵状態量として演算するようにしてもよいし、請求項4に記載のように、予め設定されている第1調整ゲインと操舵トルクとの乗算値と、予め設定されている第2調整ゲインと操舵角との乗算値と、予め設定されている第3調整ゲインと操舵角速度との乗算値とを加算した値を操舵状態量として演算するようにしてもよいし、請求項5に記載のように、予め設定されている第1調整ゲインと操舵トルクとの乗算値と、予め設定されている第2調整ゲインと操舵角と操舵角速度との乗算値とを加算した値を操舵状態量として演算するようにしてもよい。
【0015】
このように構成された電動パワーステアリング制御装置によれば、操舵トルクと操舵角と操舵角速度の加算および乗算のみにより簡便に操舵状態量の演算を行うことができるので、操舵状態量の演算のための処理負荷の増加を必要最小限に抑制することができる。
【0016】
また、車両の速度を検出する車両速度検出手段を備えている場合には、請求項3または請求項5に記載の電動パワーステアリング制御装置において、請求項6に記載のように、操舵状態量演算手段が、第1調整ゲインおよび第2調整ゲインの少なくとも一方を、車両速度検出手段により検出された車両の速度に応じて演算するようにしてもよいし、請求項4に記載の電動パワーステアリング制御装置において、請求項7に記載のように、操舵状態量演算手段が、第1調整ゲイン、第2調整ゲイン、および第3調整ゲインの少なくとも一方を、車両速度検出手段により検出された車両の速度に応じて演算するようにしてもよい。
【0017】
このように構成された電動パワーステアリング制御装置によれば、車両速度に応じて操舵状態量が変更されるため、車両速度に応じたより適切なアシスト量を演算でき、車両速度が考慮された適切な特性とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】EPSシステム1の概略構成を示す構成図である。
【図2】EPSECU15の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
図1は、本発明が適用された実施形態の電動パワーステアリングシステム1の概略構成を示す構成図である。
【0020】
電動パワーステアリングシステム1(以下、EPS(Electric Power Steering)システム1という)は、運転者によるハンドル2の操作をモータ6によってアシスト(補助)するものである。ハンドル2は、ステアリングシャフト3の一端に固定され、ステアリングシャフト3の他端にはトルクセンサ4が接続されており、このトルクセンサ4の他端には、インターミディエイトシャフト5が接続されている。
【0021】
トルクセンサ4は、操舵トルクを検出するためのセンサである。具体的には、ステアリングシャフト3とインターミディエイトシャフト5とを連結するトーションバーを有し、このトーションバーのねじれ角に基づいてそのトーションバーに加えられているトルクを検出する。
【0022】
モータ6は、ハンドル2の操舵力をアシスト(補助)するものであり、その回転軸の先端にウォームギアが設けられ、このウォームギアが、インターミディエイトシャフト5に設けられたウォームホイールと噛み合っている。これにより、モータ6の回転がインターミディエイトシャフト5に伝達される。逆に、ハンドル2の操作や路面からの反力(路面反力)によってインターミディエイトシャフト5が回転されると、その回転がモータ6に伝達されてモータ6も回転されることになる。
【0023】
インターミディエイトシャフト5における、トルクセンサ4が接続された一端とは反対側の他端は、ステアリングギアボックス7に接続されている。ステアリングギアボックス7は、図示しないラックとピニオンギアからなるギア機構にて構成されており、インターミディエイトシャフト5の他端に設けられたピニオンギアに、ラックの歯が噛み合っている。そのため、運転者がハンドル2を回すと、インターミディエイトシャフト5が回転(すなわち、ピニオンギアが回転)し、これによりラックが左右に移動する。ラックの両端にはそれぞれタイロッド8が取り付けられており、ラックとともにタイロッド8が左右の往復運動を行う。これにより、タイロッド8がその先のナックルアーム9を引っ張ったり押したりすることで、タイヤ10の向きが変わる。
【0024】
また、車両における所定の部位には、ハンドル2の操舵角θsを検出する操舵角センサ11と、車両速度Vを検出する車速センサ12が設けられている。
このような構成により、運転者がハンドル2を回転させると、その回転がステアリングシャフト3、トルクセンサ4、およびインターミディエイトシャフト5を介してステアリングギアボックス7に伝達される。そして、ステアリングギアボックス7内で、インターミディエイトシャフト5の回転がタイロッド8の左右移動に変換され、タイロッド8が動くことによって、左右の両タイヤ10が操舵される。
【0025】
電動パワーステアリングECU(Electric Power Steering Electronic Control Unit)15(以下、EPSECU15という)は、図示しない車載バッテリからの電力によって動作し、トルクセンサ4にて検出された操舵トルクTs、および操舵角センサ11にて検出された操舵角θsに基づいて、モータ6に流すべき電流値を示す電流指令を生成する。そして、その電流指令に応じた駆動電圧Vdをモータ6へ印加することにより、ドライバーがハンドル2を回す力(延いては両タイヤ10を操舵する力)をアシストするためのアシストトルクをモータ6に発生させる。
【0026】
EPSECU15は、直接的にはモータ6へ印加する駆動電圧Vdを制御することによりモータ6を制御するものであるが、モータ6を制御することで結果としてそのモータ6により駆動されるEPSメカ70を制御するものであると言え、よってEPSECU15の制御対象はこのEPSメカ70であるとも言える。なお、EPSメカ70は、図1に示したシステム構成図のうちEPSECU15およびモータ6を除く機構全体、すなわち、ハンドル2から各タイヤ10に至る、ハンドル2の操舵力が伝達される機構全体を示す。
【0027】
次に、EPSECU15の内部構成(制御機構)について、図2のブロック図を用いて説明する。図2において、モータ6およびEPSメカ70を除く、目標アシストトルク演算部20からモータ駆動回路50に至る各ブロックが、EPSECU15により実現されるものである。なお、EPSECU15により実現される各ブロックのうち、モータ駆動回路50を除く各部は、実際には、EPSECU15が備える図示しないCPUが所定の制御プログラムを実行することによって実現されるものである。つまり、図2における目標アシストトルク演算部20から電流制御部40に至る各ブロックは、CPUによって実現される各種機能を機能ブロック毎に分けて図示したものである。ただし、これら各ブロックがソフトウェアにて実現されることはあくまでも一例であり、例えばロジック回路等のハードウェアにて実現するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0028】
ECU15は、図2に示すように、操舵トルクTsおよび操舵角θsに基づいて目標アシストトルク(目標電流)を演算する目標アシストトルク演算部20と、その目標アシストトルク演算部20により演算された目標電流とモータ6に実際に流れる実電流Imとの差である電流偏差を演算する偏差演算器30と、その電流偏差および実電流Imに基づいて、モータ6に通電すべき電流量を示す電流指令を演算する電流制御部40と、その電流指令に応じた電流をモータ6に流す(実際には駆動電圧Vdをモータ6に印加する)ためのモータ駆動回路50とを備えている。
【0029】
なお、図示は省略したものの、モータ駆動回路50の内部またはモータ駆動回路50からモータ6に至る通電経路中には、実電流Imを検出するための検出素子を含む検出回路が備えられており、その検出回路によって実電流Imが検出される。
【0030】
また目標アシストトルク演算部20は、制御系(制御機構)全体を安定化させるために操舵トルクTsに対して位相補償をかける位相補償器21と、操舵トルクTsおよび操舵角θsに基づいて操舵状態量を演算する操舵状態量演算部22と、上記目標アシストトルクのベースとなるベースアシストトルクを操舵状態量に基づいて演算するベースアシスト演算部23と、位相補償器21による位相補償後の値(位相補償トルク)に、ベースアシスト演算部23によるベースアシストトルクを乗じることで、最終的な目標アシストトルク(目標電流)を演算する乗算器24とを備えている。
【0031】
なおベースアシスト演算部23は、実際には、操舵状態量に対するアシストトルクゲインが一対一で対応付けられたアシストマップ23mを有し、そのマップをもとに、線形補間によって、入力された操舵状態量に対するベースアシストトルクを演算する。なお本実施形態では、操舵状態量が大きくなるほどアシストトルクゲインも大きくなるマップが設定されている。
【0032】
そして操舵状態量演算部22は、操舵トルクTsに操舵角θsを乗じた値を出力する乗算器61と、操舵角θsの時間変化に基づいて操舵角速度ωsを演算する微分器62と、操舵トルクTsに操舵角速度ωsを乗じた値を出力する乗算器63と、乗算器61からの出力値を所定の調整ゲインαで増幅して出力する増幅器64と、乗算器63からの出力値を所定の調整ゲインβで増幅して出力する増幅器65と、増幅器64からの出力値と増幅器65からの出力値とを加算することにより操舵状態量を演算する加算器66とを備えている。したがって操舵状態量演算部22は、(α×Ts×θs+β×Ts×ωs)で表される操舵状態量を出力する。
【0033】
なお、増幅器64,65はそれぞれ、車両速度Vに対して調整ゲインα,βが一対一で対応付けられたマップを有し、そのマップをもとに、入力された車両速度Vに対する調整ゲインα,βを演算する。
【0034】
電流制御部40は、偏差演算器30により演算された電流偏差に基づき、その電流偏差が0となるように、すなわち実電流Imが目標電流に一致するように、モータ6への通電をフィードバック制御するための通電指令を生成する。具体的には、比例・積分の各要素を備えたPI制御器である電流制御器41を備え、この電流制御器41が、入力された電流偏差に対して比例演算および積分演算等を行うことで、電流指令を演算する。なお、電流制御器41には、電流偏差の他に実電流Imも入力され、実電流Imも考慮しつつ電流指令値を演算する。この電流指令は、実際にはモータ6に印加する駆動電圧を示すものであり、この電流指令に従ってモータ駆動回路50がモータ6への通電を行うことで、電流指令が示す電流がモータ6に流れる。
【0035】
このように構成されたEPSシステム1では、目標アシストトルク演算部20が、トルクセンサ4にて検出された操舵トルクTsに基づき、操舵トルクに応じた値の目標アシストトルクを示す目標電流を演算し、モータ駆動回路50が、演算された目標電流に基づいてモータ6を駆動させる。また、操舵角センサ11が操舵角θsを検出するとともに、微分器62が操舵角速度ωsを演算し、さらに操舵状態量演算部22が、操舵トルクTsと操舵角θsと操舵角速度ωsとに基づいて、操舵状態量を演算する。そして目標アシストトルク演算部20は、演算された操舵状態量に基づき、目標アシストトルクを示す目標電流を変更する。
【0036】
したがって、操舵トルクTsと操舵角速度ωsとに基づいて演算された操舵状態量に基づいて目標アシストトルク(目標電流)を変更するため、操舵トルクTsだけではなく操舵角速度ωsによっても目標アシストトルクを変更することができ、運転者の意思をより適切に反映したアシスト制御の実現が可能となる。
【0037】
本実施形態では、(α×Ts×θs+β×Ts×ωs)を操舵状態量として演算するとともに、操舵状態量が大きくなるほどアシストトルクゲインも大きくなるアシストマップ23mが用いられているため、操舵角速度ωsの増加に応じて目標アシストトルクを増加させることができる。このため、運転者がハンドル2を或るハンドル角度で保持している状態からハンドル2を速く切り始めると、目標アシストトルクを急激に増大させることが可能になる。すなわち、ハンドル2をゆっくり切る場合よりも速く切る場合のほうがハンドル2を楽に操作することができるため、ハンドル2を速く切りたいという運転者の意思を適切に制御に反映することができる。
【0038】
これにより、「ハンドル2を保舵しているときには、しっかりとした手応えがあり、ハンドル2を速く切りたいと思ったときにはスッと切れる」というアシスト制御を実現することができる。
【0039】
さらに、ハンドル2を切っている状態からハンドル2を止めようとする場合には、操舵角速度ωsが低下し、目標アシストトルクが減少していくため、運転者の意思をより適切に反映して、ハンドル2を止め易くなる。
【0040】
また、操舵トルクTsと操舵角速度ωsに加え、さらに、操舵角θsに基づいて、操舵状態量を演算する。さらに、本実施形態では、(α×Ts×θs+β×Ts×ωs)を操舵状態量として演算するとともに、操舵状態量が大きくなるほどアシストトルクゲインも大きくなるアシストマップ23mが用いられている。そして、運転者がハンドル2を緩やかに切り増ししていく場合には、操舵角速度ωsが小さく、操舵角θsが徐々に大きくなる。このため、操舵状態量における操舵角速度ωsの寄与が小さく、操舵角θsの増加に応じて徐々に目標アシストトルクが増加し、ハンドル2を切り増ししていくほど、ハンドル2を楽に操作することができる。
【0041】
また、目標アシストトルク演算部20内の増幅器64,65はそれぞれ、調整ゲインα,βを車両速度Vに応じて演算する。これにより、車両速度Vに応じて操舵状態量が変更されるため、車両速度Vに応じたより適切なベースアシストトルクを演算でき、車両速度Vが考慮された適切な特性とすることが可能となる。
【0042】
例えば、速い操舵や大舵角の操舵を行う場面が多い低速域において、より調整ゲインα,βを大きく設定することで、急操舵や大操舵時の負担を軽減できる。また、速い操舵や大舵角の操舵を行う場面が少ない高速域においては調整ゲインα,βを小さく設定することで、アシストトルクの増加を抑制することができ、しっかりとした手応えによって操舵を安定させることができる。
【0043】
以上説明した実施形態において、ステアリングシャフト3は本発明における入力軸、タイヤ10は本発明における操舵輪、インターミディエイトシャフト5とステアリングギアボックス7とタイロッド8とナックルアーム9は本発明における入力伝達手段、トルクセンサ4は本発明における操舵トルク検出手段、EPSECU15は本発明における電動パワーステアリング制御装置、目標アシストトルク演算部20は本発明におけるアシスト量演算手段、モータ駆動回路50は本発明におけるモータ駆動手段、操舵角センサ11は本発明における操舵角検出手段、微分器62は本発明における操舵角速度検出手段、操舵状態量演算部22は本発明における操舵状態量演算手段、車速センサ12は本発明における車両速度検出手段である。
【0044】
また、目標アシストトルクは本発明におけるアシストトルク、目標電流は本発明におけるアシスト量、調整ゲインαは本発明における第1調整ゲイン、調整ゲインβは本発明における第2調整ゲインである。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態においては、(α×Ts×θs+β×Ts×ωs)で表される操舵状態量を出力するものを示したが、例えば、(α×Ts+β×θs+γ×ωs)または(α×Ts+β×θs×ωs)で表される操舵状態量を出力するようにしてもよい。なおγは、調整ゲインであり、本発明における第3調整ゲインである。また、調整ゲインα,β,γの少なくとも一方を、車速センサ12により検出された車両速度Vに応じて演算するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…電動パワーステアリングシステム、2…ハンドル、3…ステアリングシャフト、4…トルクセンサ、5…インターミディエイトシャフト、6…モータ、7…ステアリングギアボックス、8…タイロッド、9…ナックルアーム、10…タイヤ、11…操舵角センサ、12…車速センサ、20…目標アシストトルク演算部、21…位相補償器、22…操舵状態量演算部、23…ベースアシスト演算部、23m…アシストマップ、24…乗算器、30…偏差演算器、40…電流制御部、41…電流制御器、50…モータ駆動回路、61,63…乗算器、62…微分器、64,65…増幅器、66…加算器、70…EPSメカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のハンドルに連結されて該ハンドルとともに回転する入力軸と、
前記入力軸の回転を前記車両の操舵輪に伝達することにより該操舵輪を操舵させる入力伝達手段と、
前記入力軸に加えられる軸回転方向のトルクである操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記ハンドルの操舵時に該ハンドルの操作を補助するためのアシストトルクを前記入力軸または前記入力伝達手段に与えるためのモータと
を備えた電動パワーステアリングシステムに設けられ、前記モータを制御することにより前記アシストトルクを制御する電動パワーステアリング制御装置であって、
前記操舵トルク検出手段により検出された前記操舵トルクに基づき、該操舵トルクに応じた値の前記アシストトルクを示すアシスト量を演算するアシスト量演算手段と、
前記アシスト量演算手段により演算された前記アシスト量に基づいて前記モータを駆動させるモータ駆動手段と、
前記ハンドルの操舵角の回転速度である操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、
少なくとも、前記操舵トルク検出手段により検出された前記操舵トルクと、前記操舵角速度検出手段により検出された前記操舵角速度とに基づいて、前記車両の操舵状態を示す操舵状態量を演算する操舵状態量演算手段とを備え、
前記アシスト量演算手段は、
前記操舵状態量演算手段により演算された前記操舵状態量に基づき、前記アシスト量を変更する
ことを特徴とする電動パワーステアリング制御装置。
【請求項2】
前記ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段を備え、
前記操舵状態量演算手段は、
前記操舵トルクと前記操舵角速度に加え、さらに、前記操舵角検出手段により検出された前記操舵角に基づいて、前記操舵状態量を演算する
ことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング制御装置。
【請求項3】
前記操舵状態量演算手段は、
予め設定されている第1調整ゲインと前記操舵トルクと前記操舵角との乗算値と、予め設定されている第2調整ゲインと前記操舵トルクと前記操舵角速度との乗算値とを加算した値を前記操舵状態量として演算する
ことを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング制御装置。
【請求項4】
前記操舵状態量演算手段は、
予め設定されている第1調整ゲインと前記操舵トルクとの乗算値と、予め設定されている第2調整ゲインと前記操舵角との乗算値と、予め設定されている第3調整ゲインと前記操舵角速度との乗算値とを加算した値を前記操舵状態量として演算する
ことを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング制御装置。
【請求項5】
前記操舵状態量演算手段は、
予め設定されている第1調整ゲインと前記操舵トルクとの乗算値と、予め設定されている第2調整ゲインと前記操舵角と前記操舵角速度との乗算値とを加算した値を前記操舵状態量として演算する
ことを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング制御装置。
【請求項6】
前記車両の速度を検出する車両速度検出手段を備え、
前記操舵状態量演算手段は、
前記第1調整ゲインおよび前記第2調整ゲインの少なくとも一方を、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度に応じて演算する
ことを特徴とする請求項3または請求項5に記載の電動パワーステアリング制御装置。
【請求項7】
前記車両の速度を検出する車両速度検出手段を備え、
前記操舵状態量演算手段は、
前記第1調整ゲイン、前記第2調整ゲイン、および前記第3調整ゲインの少なくとも一方を、前記車両速度検出手段により検出された前記車両の速度に応じて演算する
ことを特徴とする請求項4に記載の電動パワーステアリング制御装置。

【図2】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−112119(P2013−112119A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259279(P2011−259279)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】