説明

電動パワーステアリング装置

【課題】エンド当ての衝撃を十分に緩和するとともに、十分なアシスト力を付与することができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】マイコン41は、操舵角θsがそのステアリングエンド近傍の所定操舵角以上である場合に、該操舵角θsの増大に応じて制限角速度が小さくなるように該制限角速度を演算する操舵角速度制限部61を備えた。そして、操舵角速度制限部61は、操舵角速度ωsが制限角速度よりも大きいときに、モータ回転角速度ωmを抑制すべく、q軸電圧指令値Vq*を補正するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のパワーステアリング装置には、モータを駆動源とした電動パワーステアリング装置(EPS)がある。通常、こうしたEPSにおいては、電流制御の実行により、その発生するトルクが制御される。具体的には、制御系に付与するアシスト力の制御目標値として電流指令値が演算され、続いて当該電流指令値に実電流値を追従させるべく、その偏差に応じた電圧指令値が演算される。そして、当該電圧指令値に示される電圧をモータに印加すべく駆動回路を動作させるためのモータ制御信号が生成される。なお、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御におけるデュ−ティ比の調整で行われる。
【0003】
ところで、ステアリング装置においては、その転舵輪の可動範囲が定められており、転舵輪がこの可動範囲の限界位置を超えるようなステアリングの操舵ができない構成とされている。例えば、ラック&ピニオン式の操舵機構を採用した構成では、ラックハウジングにラック軸の端部が当接して該ラック軸の移動が機械的に拘束されるようにすることで、転舵輪の可動範囲が定められている。
【0004】
このため、ステアリングの操作が許容される最大舵角(ステアリングエンド)近傍まで同ステアリングが操舵されている状態、すなわち転舵輪がその可動限界付近まで転舵されている状態において、速い操舵角速度で切り込み操舵を行うと、ラック軸がラックハウジングに衝突して操舵系に衝撃が加わることになる。そして、このような所謂エンド当てによる衝撃により、ステアリングに操舵方向と逆方向の反力が作用することで操舵フィーリングが悪化したり、打音が発生したりするという問題が生じる。
【0005】
そこで、特許文献1には、ステアリングの操舵角及び操舵角速度に基づいて電流指令値を低減し、アシスト力を小さくすることにより、エンド当ての衝撃を緩和するようにしたEPSが開示されている。具体的には、例えば操舵角がステアリングエンド近傍にあり、操舵角速度が速い場合には電流指令値(アシスト力)を大きく低減し、運転者が速い操舵角速度でステアリングを操作できないようにすることでエンド当ての衝撃を緩和している。一方、転舵輪がステアリングエンド近傍にあっても、操舵角速度が遅い場合には電流指令値の低減量を小さくして、アシスト力への影響が少なくなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−18865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、EPSにおいては、より優れた操舵フィーリングの実現が望まれている。しかしながら、上記特許文献1の構成ではアシスト力を低減するものであるため、ステアリングを操舵する(転舵輪を転舵させる)際の負荷によっては、エンド当ての衝撃を十分に緩和できない、若しくは十分なアシスト力を付与することができないことがあった。
【0008】
具体的には、例えば車両が低μ路を走行している場合等、ステアリングを操舵する際の負荷が低い状態では、電流指令値を低減したとしても、同電流指令値に対応したアシスト力で速い操舵が可能な場合がある。このような場合には操舵角速度を十分に抑制することができず、エンド当ての衝撃を十分に緩和できない。一方、ステアリングを操舵する際の負荷が低い状態においてエンド当ての衝撃を十分に緩和できるように電流指令値を低減すると、車両が高μ路を走行している場合等、ステアリングを操舵する際の負荷が高い状況においてアシスト力が不足する虞がある。このように、上記従来の構成では、ステアリングを操舵する際の負荷が低い状態においてエンド当ての衝撃を十分に緩和するとともに、ステアリングを操舵する際の負荷が高い状況において十分なアシスト力を付与することは困難であり、この点においてなお改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、エンド当ての衝撃を十分に緩和するとともに、十分なアシスト力を付与することができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、モータを駆動源として操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、前記モータに対する駆動電力の供給を通じて前記操舵力補助装置の作動を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、電流制御の実行によりモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段と、前記モータ制御信号に基づいて前記モータに前記駆動電力を供給する駆動回路とを備えてなり、前記モータ制御信号出力手段は、前記電流制御において演算される電流指令値に基づいて電圧指令値を演算し、該電圧指令値に示される電圧を前記モータに印加すべく前記モータ制御信号を生成する電動パワーステアリング装置において、ステアリングに生じた操舵角を検出する操舵角検出手段と、前記ステアリングの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、前記操舵角に応じて許容される前記操舵角速度の上限としての制限角速度を演算する制限角速度演算手段とを備え、前記制限角速度演算手段は、前記操舵角がその最大舵角近傍の所定操舵角以上である場合に、該操舵角の増大に基づいて前記制限角速度が小さくなるように演算するものであり、前記モータ制御信号出力手段は角速度制限手段を備え、該角速度制限手段は前記操舵角速度が前記制限角速度よりも大きいときに、前記モータの回転角速度を抑制すべく、前記電圧指令値を補正することを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、ステアリングの操舵角速度が制限角速度よりも大きいときには、電圧指令値が補正されて、モータの回転角速度が抑制されるため、ステアリングの操舵角速度を抑制できる。そして、制限角速度は、操舵角がステアリングエンド近傍の所定操舵角以上である場合には、操舵角の増大に基づいて小さくなるように演算されるため、ステアリングエンド近傍では操舵角速度が十分に抑制され、エンド当ての衝撃を十分に緩和できる。なお、電圧指令値の絶対値を減少補正し、印加電圧を低減することにより、モータの回転角速度が抑制される。また、電圧指令値の符号を反転させて補正し、モータを逆回転させる電圧を印可することにより、モータの回転角速度が抑制される。
【0012】
このように上記構成では、モータの回転角速度を制御して操舵角速度を抑制するため、アシスト力の制御目標値として演算される電流指令値を低減補正する場合と異なり、ステアリングを操舵する際の負荷が小さい場合であっても、操舵角速度を抑制してエンド当ての衝撃を十分に緩和できる。また、電流指令値(アシスト力)を低減しないため、ステアリングを操舵する際の負荷が大きい場合であっても、十分なアシスト力を操舵系に付与できる。従って、ステアリングを操舵する際の負荷が低い状態においてエンド当ての衝撃を十分に緩和するとともに、ステアリングを操舵する際の負荷が高い状況において十分なアシスト力を付与することができ、より優れた操舵フィーリングを実現することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、前記角速度制限手段は、前記ステアリングの操舵状態が前記操舵角の絶対値を増大させる切り込み状態であるときに、前記電圧指令値を補正することを要旨とする。
【0014】
エンド当てによる衝撃が問題となるのは、ステアリングの操舵状態が操舵角の絶対値を増大させる切り込み状態の場合である。すなわち、操舵角がステアリングエンド近傍にあり、速い操舵角速度でステアリングを操舵する場合であっても、例えば操舵角の絶対値を減少させる切り戻し操舵を行う場合には、エンド当てが生じない。さらに、ステアリングの切り戻し時に電圧指令値を補正すると、操舵角速度が抑制されることで、操舵フィーリングの悪化を招く虞がある。
【0015】
この点、上記構成によれば、ステアリングの操舵状態が切り込み状態である場合に、電圧指令値が補正されるため、エンド当てが問題となる場合にのみ操舵角速度を抑制して操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置において、前記角速度制限手段は、前記電圧指令値に該電圧指令値の符号と逆符号の補償電圧値を重畳することにより、該電圧指令値を補正することを要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、モータの回転角速度を減速させるように、電圧指令値の符号と逆符号の補償電圧値を重畳することにより該電圧指令値を補正するため、例えば所定の補償量(ゲイン)を電圧指令値に乗算して補正する場合と異なり、電圧指令値の大きさによってその補正量が変化しないため、容易に適切な補償電圧値(補正量)を演算できる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、前記角速度制限手段は、前記操舵角速度と前記制限角速度との差分に基づいて前記補償電圧値を演算することを要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、操舵角速度と制限角速度との差分に基づいて補償電圧値を演算するため、操舵角速度の大きさに応じて適切な補償電圧値が演算されて、好適にエンド当ての衝撃を緩和できる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記角速度制限手段は、前記電圧指令値を補正した補正電圧指令値の絶対値の最小値をゼロとすることを要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、角速度制限手段により補正された補正電圧指令値の絶対値の最小値がゼロであるため、電圧指令値を補正しても符号が反転せず、モータを逆回転させるような電圧が印加されない。そのため、角速度制限手段により電圧指令値が補正されても、操舵力補助装置からのアシスト力が付与されない状態となるにとどまり、運転者が操舵力補助装置から反力(操舵方向と反対方向の力)を受けることを防止して、優れた操舵フィーリングを得ることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記角速度制限手段は、前記操舵角と前記制限角速度との関係を示したマップを備え、該マップに基づいて前記制限角速度を演算することを要旨とする。
【0023】
上記構成によれば、角速度制限手段は、マップに基づいて制限角速度を演算するため、該制限角速度を容易に演算できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、エンド当ての衝撃を十分に緩和するとともに、十分なアシスト力を付与することが可能な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの電気的構成を示す制御ブロック図。
【図3】操舵角と制限角速度との関係を示すグラフ。
【図4】操舵角速度制限部による補正q軸電圧指令値演算の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト8、インターミディエイトシャフト9、及びピニオンシャフト10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角が変更されるようになっている。
【0027】
また、EPS1は、モータ21を駆動源として操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ22と、該EPSアクチュエータ22の作動を制御する制御手段としてのECU23とを備えている。
【0028】
EPSアクチュエータ22は、所謂コラム型のEPSアクチュエータとして構成されている。具体的には、EPSアクチュエータ22の駆動源であるモータ21は、減速機構24を介してコラムシャフト8と駆動連結されている。この減速機構24は、コラムシャフト8に連結されたホイールギア25と、モータ21に連結されたウォームギア26とを噛合することにより構成されている。また、モータ21は、ブラシレスモータであり、ECU23から三相(U,V,W)の駆動電力の供給を受けることにより回転する。そして、ECU23は、このモータ21が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
【0029】
一方、ECU23には、車速センサ31及びトルクセンサ32、及び操舵角検出手段としてのステアリングセンサ(操舵角センサ)33が接続されている。そして、ECU23は、これら各センサにより検出される車速SPD、操舵トルクτ及び操舵角θsに基づいて、EPSアクチュエータ22の作動、即ちパワーアシスト制御を実行する。
【0030】
次に、本実施形態のEPSの電気的構成について説明する。
図2に示すように、ECU23は、モータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段としてのマイコン41と、モータ制御信号に基づいてモータ21に三相の駆動電力を供給する駆動回路42とを備えている。
【0031】
なお、駆動回路42は、直列に接続された一対のスイッチング素子(FET)を基本単位(アーム)として各相に対応する3つのアームを並列接続してなる周知のPWMインバータであり、マイコン41の出力するモータ制御信号は、駆動回路42を構成する各スイッチング素子のオンduty比を規定するものとなっている。そして、モータ制御信号が各スイッチング素子のゲート端子に印加され、同モータ制御信号に応答して各スイッチング素子がオン/オフすることにより、車載電源(図示略)の電圧が三相の駆動電力に変換されてモータ21に供給されるようになっている。
【0032】
ECU23には、モータ21に通電される各相電流値Iu,Iv,Iwを検出するための電流センサ43u,43v,43w、及びモータ21のモータ回転角θmを検出するための回転角センサ45が接続されている。そして、マイコン41は、これら各センサの出力信号に基づき検出されたモータ21の各相電流値Iu,Iv,Iw及びモータ回転角θm、並びに上記操舵トルクτ、車速SPD及び操舵角θsに基づいて駆動回路42にモータ制御信号を出力する。
【0033】
詳述すると、マイコン41は、操舵系に付与するアシスト力の制御目標値として電流指令値を演算する電流指令値演算部46と、上記駆動回路42の作動を制御するためのモータ制御信号を生成するモータ制御信号生成部47とを備えている。
【0034】
電流指令値演算部46は、上記トルクセンサ32及び車速センサ31により検出された操舵トルクτ及び車速SPDに基づいて、d/q座標系におけるq軸電流指令値Iq*を演算する。また、モータ制御信号生成部47には、電流指令値演算部46の出力するq軸電流指令値Iq*とともに、各電流センサ43u,43v,43wにより検出された各相電流値Iu,Iv,Iw、及び回転角センサ45により検出されたモータ回転角θmが入力される。なお、本実施形態では、d軸電流指令値Id*については、モータ制御信号生成部47内において「Id*=0」が演算される。そして、モータ制御信号生成部47は、これら各相電流値Iu,Iv,Iw、及びモータ回転角θm(電気角)に基づいて、d/q座標系における電流フィードバック制御を実行することによりモータ制御信号を生成する。
【0035】
詳述すると、モータ制御信号生成部47において、各相電流値Iu,Iv,Iwは、モータ回転角θmとともに3相/2相変換部51に入力される。そして、各相電流値Iu,Iv,Iwは、この3相/2相変換部51においてd/q座標系のd軸電流値Id及びq軸電流値Iqに変換される。
【0036】
また、モータ制御信号生成部47に入力されたq軸電流指令値Iq*は、上記q軸電流値Iqとともに減算器52qに入力される。一方、d軸電流指令値Id*は、d軸電流値Idとともに減算器52dに入力される。そして、これら減算器52d,52qにおいて、それぞれd軸電流偏差ΔId及びq軸電流偏差ΔIqが演算される。このように演算されたd軸電流偏差ΔId及びq軸電流偏差ΔIqは、それぞれ対応するF/B制御部53d,53qに入力される。
【0037】
そして、これら各F/B制御部53d,53qにおいて、その制御目標値であるd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に実電流であるd軸電流値Id及びq軸電流値Iqを追従させためのフィードバック制御が行われる。具体的には、F/B制御部53d,53qは、入力されたd軸電流偏差ΔId及びq軸電流偏差ΔIqに所定のF/Bゲイン(PIゲイン)を乗ずることにより、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を演算する。
【0038】
本実施形態では、q軸電圧指令値Vq*は、後述する操舵角速度制限部61に入力され、同操舵角速度制限部61において補正q軸電圧指令値Vq**が演算される。なお、q軸電圧指令値Vq*が電圧指令値に相当し、補正q軸電圧指令値Vq**が補正電圧指令値に相当する。そして、補正q軸電圧指令値Vq**は、d軸電圧指令値Vd*及びモータ回転角θmとともに2相/3相変換部55に入力され、同2相/3相変換部55において三相の相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に変換される。
【0039】
続いて、2相/3相変換部55において演算された各相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*は、PWM変換部56に入力される。このPWM変換部56では、該各相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に対応するduty指令値が生成されるとともに、これら各duty指令値に示されるオンduty比を有するモータ制御信号が生成される。そして、マイコン41は、このようにして生成されたモータ制御信号を、駆動回路42を構成する各スイッチング素子(のゲート端子)に出力することにより、同駆動回路42の作動、即ちモータ21への駆動電力の供給を制御する。
【0040】
(操舵角速度抑制処理)
次に、本実施形態の操舵角速度制限部による操舵角速度抑制処理について詳細に説明する。
【0041】
上述のように、ステアリング2がその最大舵角(ステアリングエンド)近傍まで操舵されている状態、すなわち転舵輪12がその可動限界付近まで転舵されている状態において、速い操舵角速度で操舵角θsの絶対値を増大させる切り込み操舵を行うと、ラック軸5がラックハウジング(図示略)に衝突して操舵系に衝撃が加わることになる。そこで、このような所謂エンド当てによる衝撃を緩和すべく、ステアリング2に生じた操舵角及びその操舵角速度に基づいて電流指令値を補正することが考えられる。しかしながら、この構成ではステアリング2を操舵する(転舵輪12を転舵させる)際の負荷によっては、エンド当ての衝撃を十分に緩和できない、若しくは十分なアシスト力を付与することができない虞がある。
【0042】
そこで、本実施形態のマイコン41に設けられた操舵角速度制限部61は、ステアリング2の操舵角速度ωsが、操舵角θsに応じて許容される操舵角速度ωsの上限(操舵角θsにおいてエンド当てによる衝撃を十分に緩和できる最大の操舵角速度ωs)としての制限角速度ωlimよりも大きいときに、モータ回転角速度ωmを抑制すべく、q軸電圧指令値Vq*を補正する。
【0043】
詳述すると、この操舵角速度制限部61には、上記q軸電圧指令値Vq*に加え、ステアリングセンサ33により検出される操舵角θs、及びステアリング2の操舵角速度ωsが入力される。なお、本実施形態では、マイコン41は、回転角センサ45により検出されるモータ回転角θmの微分値(モータ回転角速度ωm)をステアリング2の操舵角速度ωsに変換する回転角速度変換部62を備えている。そして、この回転角速度変換部62において変換された操舵角速度ωsが操舵角速度制限部61に入力されるようになっている。すなわち、本実施形態では、回転角センサ45及び回転角速度変換部62により操舵角速度検出手段が構成される。
【0044】
そして、操舵角速度制限部61は、操舵角θsに基づいて制限角速度ωlimを演算するとともに、操舵角速度ωsが制限角速度ωlimよりも大きく、且つステアリング2の操舵状態が切り込み状態である場合には、q軸電圧指令値Vq*を補正するようにしている。なお、操舵角速度ωsが制限角速度ωlim以下である場合、及び操舵状態が切り込み状態でない場合には補正q軸電圧指令値Vq**の値をq軸電圧指令値Vq*の値とする、すなわちq軸電圧指令値Vq*を補正しない。従って、本実施形態では、操舵角速度制限部61が制限角速度演算手段及び角速度制限手段として機能する。
【0045】
具体的には、操舵角速度制限部61は、操舵角θsの絶対値と制限角速度ωlimとの関係を示す制限角速度マップ63を備えており、該マップ63に基づいて制限角速度ωlimを演算する。図3に示すように、制限角速度マップ63は、操舵角速度ωsが制限角速度ωlimであればエンド当てによる衝撃が十分に緩和されるように、操舵角θsがステアリングエンド近傍の所定操舵角θsth以上である場合に、該操舵角θsの増大に比例して制限角速度ωlimが小さくなるように設定されている。
【0046】
なお、本実施形態では、所定操舵角θsthは、例えば一般の運転者が操舵可能な最大の操舵角速度ωsでステアリング2を操舵している場合において、同所定操舵角θsthからステアリングエンドに至るまでの間に、その操舵角速度ωsをエンド当てによる衝撃が十分に緩和される角速度まで抑制できるような値に設定されている。また、操舵角θsが所定操舵角θsth未満である場合には、操舵角速度ωsの制限が行われることを防止すべく、制限角速度ωlimは、一般の運転者が操舵可能な最大の操舵角速度ωsに設定されている。
【0047】
また、操舵角速度制限部61は、q軸電圧指令値Vq*の符号と逆符号の補償電圧値αをq軸電圧指令値Vq*に重畳することにより、モータ回転角速度ωmが減速するように該q軸電圧指令値Vq*を補正する。なお、q軸電圧指令値Vq*の符号は、該q軸電圧指令値Vq*に示される電圧により、モータ21を回転させる方向を示す。より具体的には、操舵角速度制限部61は、操舵角速度ωsの絶対値から制限角速度ωlimを減算した値に所定の係数Kを乗じた値を補償電圧値α(=K×(|ωp|―ωlim))として演算する。そして、q軸電圧指令値Vq*の符号に応じて、その絶対値が減少するように補償電圧値αをq軸電圧指令値Vq*に加算又は減算する。
【0048】
さらに、本実施形態の操舵角速度制限部61は、補正q軸電圧指令値Vq**の絶対値の最小値がゼロとなるようにしている。換言すれば、q軸電圧指令値Vq*を補正しても、その符号が反転せず、q軸電圧指令値Vq*と補正q軸電圧指令値Vq**の符号が一致し、モータ21が逆回転させる電圧を印加しないようにしている。
【0049】
次に、本実施形態の操舵角速度制限部による補正q軸電圧指令値演算の処理手順を図4に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、操舵角速度制限部61は、車両状態量として操舵角θs、操舵角速度ωs及びq軸電圧指令値Vq*を取得すると(ステップ101)、操舵角θs及び操舵角速度ωsの符号が同一であるか否かにより、操舵状態が切り込み状態であるか否かを判定する(ステップ102)。そして、操舵角θs及び操舵角速度ωsの符号が同一である場合には、操舵状態が切り込み状態であると判定して(ステップ102:YES)、ステップ103に移行する。なお、操舵角θs及び操舵角速度ωsの符号はステアリング2の操舵方向を示す。
【0050】
操舵角速度制限部61は、ステップ103において、操舵角θs及び操舵角速度ωsの絶対値(|θs|,|ωs|)を演算し、続いて制限角速度マップ63を参照して操舵角θsの絶対値に応じた制限角速度ωlimを演算する(ステップ104)。そして、操舵角速度ωsの絶対値から制限角速度ωlimを減算した値がゼロよりも大きいか否か、すなわち操舵角速度ωsの絶対値が制限角速度ωlimよりも大きいか否かを判定し(ステップ105)、操舵角速度ωsが制限角速度ωlimよりも大きい場合には(ステップ105:YES)、補償電圧値αを演算する(ステップ106:α=K×(|ωp|―ωlim))。
【0051】
続いて、操舵角速度制限部61は、q軸電圧指令値Vq*がゼロ以上であるか否かを判定し(ステップ107)、q軸電圧指令値Vq*がゼロ以上である場合には(ステップ107:YES)、q軸電圧指令値Vq*から補償電圧値αを減算することにより、演算値Vq*_aを演算する(ステップ108:Vq*_a=Vq*−α)。そして、演算値Vq*_aがゼロ以上であるか否かを判定し(ステップ109)、演算値Vq*_aがゼロ以上である場合には(ステップ109:YES)、補正q軸電圧指令値Vq**の値として演算値Vq*_aの値を演算する(ステップ:110:Vq**=Vq*_a)。これに対し、演算値Vq*_aがゼロ未満である場合には(ステップ109:NO)、補正q軸電圧指令値Vq**としてゼロを演算する(ステップ111:Vq**=0)。
【0052】
一方、操舵角速度制限部61は、q軸電圧指令値Vq*がゼロ未満である場合には(ステップ107:NO)、q軸電圧指令値Vq*に補償電圧値αを加算することにより、演算値Vq*_aを演算する(ステップ112:Vq*_a=Vq*+α)。そして、演算値Vq*_aがゼロ以下であるか否かを判定し(ステップ113)、演算値Vq*_aがゼロ以下である場合には(ステップ113:YES)、補正q軸電圧指令値Vq**の値として演算値Vq*_aの値を演算する(ステップ:114:Vq**=Vq*_a)。これに対し、演算値Vq*_aがゼロよりも大きい場合には(ステップ113:NO)、補正q軸電圧指令値Vq**としてゼロを演算する(ステップ115:Vq**=0)。
【0053】
なお、操舵角速度制限部61は、操舵角θs及び操舵角速度ωsの符号が異なる場合、すなわち操舵状態が切り込み状態でない場合には(ステップ102:NO)、補正q軸電圧指令値Vq**の値としてq軸電圧指令値Vq*の値を演算し(ステップ116)、q軸電圧指令値Vq*を補正しない。また、操舵角速度ωsが制限角速度ωlim以下である場合には(ステップ105:NO)、同様にステップ116に移行し、q軸電圧指令値Vq*を補正しない。
【0054】
上記のように操舵角速度制限部61により、q軸電圧指令値Vq*の絶対値が減少するように補正された補正q軸電圧指令値Vq**に基づいてモータ制御信号が生成されると、モータ21への印加電圧が低減する。ここで、モータ回転角速度ωmは、該モータ21への印加電圧に比例するため、q軸電圧指令値Vq*を上記のように補正することにより、モータ回転角速度ωmが遅くなる。そして、上記のようにモータ21は減速機構24を介してステアリングシャフト3に連結されているため、モータ回転角速度ωmが遅くなることにより、ステアリング2の操舵角速度ωsが抑制される。
【0055】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)マイコン41は、操舵角θsがそのステアリングエンド近傍の所定操舵角θsth以上である場合に、該操舵角θsの増大に応じて制限角速度ωlimが小さくなるように該制限角速度ωlimを演算する操舵角速度制限部61を備えた。そして、操舵角速度制限部61は、操舵角速度ωsが制限角速度ωlimよりも大きいときに、モータ回転角速度ωmを抑制すべく、q軸電圧指令値Vq*を補正するようにした。
【0056】
上記構成によれば、ステアリング2の操舵角速度ωsが制限角速度ωlimよりも大きいときには、q軸電圧指令値Vq*が補正されて、モータ回転角速度ωmが抑制されるため、ステアリング2の操舵角速度ωsを抑制できる。そして、制限角速度ωlimは、操舵角θsがステアリングエンド近傍の所定操舵角θsth以上である場合には、操舵角θsの増大に基づいて小さくなるように演算されるため、ステアリングエンド近傍では操舵角速度ωsが十分に抑制され、エンド当ての衝撃を十分に緩和できる。
【0057】
このように上記構成では、モータ回転角速度ωmを制御して操舵角速度ωsを抑制するため、アシスト力の制御目標値として演算されるq軸電流指令値Iq*を低減補正する場合と異なり、ステアリング2を操舵する際の負荷が小さい場合であっても、操舵角速度ωsを抑制してエンド当ての衝撃を十分に緩和できる。また、q軸電流指令値Iq*(アシスト力)を低減しないため、ステアリング2を操舵する際の負荷が大きい場合であっても、十分なアシスト力を操舵系に付与できる。従って、ステアリング2を操舵する際の負荷が低い状態においてエンド当ての衝撃を十分に緩和するとともに、ステアリング2を操舵する際の負荷が高い状況において十分なアシスト力を付与することができ、より優れた操舵フィーリングを実現することができる。
【0058】
(2)操舵角速度制限部61は、ステアリング2の操舵状態が操舵角θsの絶対値を増大させる切り込み状態である場合に、q軸電圧指令値Vq*を補正するようにした。
ここで、エンド当てによる衝撃が問題となるのは、ステアリング2の操舵状態が切り込み状態の場合である。すなわち、操舵角θsがステアリングエンド近傍にあり、速い操舵角速度ωsでステアリング2を操舵する場合であっても、例えば操舵角θsの絶対値を減少させる切り戻し操舵を行う場合には、エンド当てが生じない。さらに、ステアリング2の切り戻し時にq軸電圧指令値Vq*を補正すると、操舵角速度ωsが抑制されることで、操舵フィーリングの悪化を招く虞がある。この点、上記構成によれば、ステアリング2の操舵状態が切り込み状態である場合に、q軸電圧指令値が補正されるため、エンド当てが問題となる場合にのみ操舵角速度ωsを抑制して操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0059】
(3)操舵角速度制限部61は、q軸電圧指令値Vq*に該q軸電圧指令値Vq*の符号と逆符号の補償電圧値αを重畳することにより、q軸電圧指令値Vq*を補正するようにした。上記構成によれば、例えば所定の補償量(ゲイン)をq軸電圧指令値Vq*に乗算して補正する場合と異なり、q軸電圧指令値Vq*の大きさによって補正量が変化しないため、容易に適切な補償電圧値α(補正量)を演算できる。
【0060】
(4)操舵角速度制限部61は、操舵角速度ωsと制限角速度ωlimとの差分に基づいて補償電圧値αを演算するため、操舵角速度ωsの大きさに応じてq軸電圧指令値Vq*が適切に補償電圧値αが演算されて、好適にエンド当ての衝撃を緩和できる。
【0061】
(5)操舵角速度制限部61は、q軸電圧指令値Vq*を補正した補正q軸電圧指令値Vq**の絶対値の最小値をゼロとしたため、q軸電圧指令値Vq*を補正しても符号が反転せず、モータ21を逆回転させるような電圧が印加されない。そのため、q軸電圧指令値Vq*が補正されても、EPSアクチュエータ22からのアシスト力が付与されない状態となるにとどまり、運転者がEPSアクチュエータ22から反力(操舵方向と反対方向の力)を受けることを防止して、優れた操舵フィーリングを得ることができる。
【0062】
(6)操舵角速度制限部61は、操舵角θsと制限角速度ωlimとの関係を示した制限角速度マップ63を備え、該マップ63に基づいて制限角速度ωlimを演算するため、制限角速度ωlimを容易に演算できる。
【0063】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、ステアリング2に生じた操舵角θsをステアリングセンサ33により検出したが、これに限らず、例えばステアリング中立位置及び回転角センサ45により検出されるモータ回転角θmに基づいて操舵角θsを推定するようにしてもよい。また、ピニオンシャフト10のピニオン角θpをステアリング2に生じた操舵角θsとして検出するようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、回転角速度変換部62が回転角センサ45により検出されるモータ回転角θmの微分値(モータ回転角速度ωm)をステアリング2の操舵角速度ωsに変換することにより同操舵角速度を検出した。しかし、これに限らず、例えばステアリングセンサ33により検出される操舵角θsを微分して操舵角速度ωsを検出する等、その他の態様で操舵角速度ωsを検出するようにしてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、操舵角速度制限部61は、ステアリング2の操舵状態が切り込み状態である場合に、q軸電圧指令値Vq*の値を変更するようにしたが、これに限らず、ステアリング2の操舵状態にかかわらず、q軸電圧指令値Vq*の値を変更するようにしてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、操舵角速度ωsと制限角速度ωlimとの差分に基づいて補償電圧値α(=K×(|ωp|―ωlim))を演算したが、これに限らず、例えば補償電圧値αを予め設定された所定値とする等、その他の態様で演算するようにしてもよい。
【0067】
・上記実施形態では、操舵角速度制限部61は、補正q軸電圧指令値Vq**の絶対値の最小値がゼロとなるようにしたが、これに限らず、q軸電圧指令値Vq*を補正した結果、符号が反転し、q軸電圧指令値Vq*と補正q軸電圧指令値Vq**の符号が逆になるようにしてもよい。この場合には、モータ21を逆回転させる電圧を印可することにより、モータ回転角速度ωmが抑制されることになる。
【0068】
・上記実施形態では、q軸電圧指令値Vq*に該q軸電圧指令値Vq*の符号と逆符号の補償電圧値αを重畳することにより、該q軸電圧指令値Vq*を補正した。しかし、これに限らず、例えばq軸電圧指令値Vq*に「1」未満(ゼロ以下をも含む)の補償量(ゲイン)を乗算することにより、q軸電圧指令値Vq*を補正するようにしてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、制限角速度マップ63を、操舵角θsがステアリングエンド近傍の所定操舵角θsth以上である場合に、該操舵角θsの増大に比例して制限角速度ωlimが小さくなるように設定したが、これに限らず、例えば操舵角θsの増大に基づいてステップ状に制限角速度ωlimを小さくする等、その他の態様で設定してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、操舵角速度制限部61は、制限角速度マップ63に基づいて制限角速度ωlimを演算したが、他の構成でも良い。例えば、操舵角θsの絶対値と制限角速度ωlimとの関係を関数式などで近似できれば、関数式を用いて算出してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、電流センサ43u,43v,43wの3つの電流センサを用いることとしたが、これに限らず、2つの電流センサ(例えば電流センサ43u,43v)を用いて各相電流値Iu,Iv,Iwを検出するようにしてもよい。
【0072】
・上記実施形態では、EPSアクチュエータ22の駆動源であるモータ21には、ブラシレスモータを用いることとした。しかし、これに限らず、ブラシレス付き直流モータを用いるものに適用してもよい。
【0073】
・上記実施形態では、本発明を所謂コラム型のEPS1に具体化したが、本発明は、所謂ピニオン型やラックアシスト型のEPSに適用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、2…ステアリング、21…モータ、22…EPSアクチュエータ、23…EPS、33…ステアリングセンサ、41…マイコン、42…駆動回路、45…回転角センサ、46…電流指令値演算部、47…モータ制御信号生成部、61…操舵角速度制限部、62…回転角速度変換部、63…制限角速度マップ、Vd*…d軸電圧指令値、Vq*…q軸電圧指令値、Vq**…補正q軸電圧指令値、Vq*_a…演算値、α…補償電圧値、θs…操舵角、ωs…操舵角速度、ωlim…制限角速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動源として操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、前記モータに対する駆動電力の供給を通じて前記操舵力補助装置の作動を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、電流制御の実行によりモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力手段と、前記モータ制御信号に基づいて前記モータに前記駆動電力を供給する駆動回路とを備えてなり、前記モータ制御信号出力手段は、前記電流制御において演算される電流指令値に基づいて電圧指令値を演算し、該電圧指令値に示される電圧を前記モータに印加すべく前記モータ制御信号を生成する電動パワーステアリング装置において、
ステアリングに生じた操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記ステアリングの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、
前記操舵角に応じて許容される前記操舵角速度の上限としての制限角速度を演算する制限角速度演算手段とを備え、
前記制限角速度演算手段は、前記操舵角がその最大舵角近傍の所定操舵角以上である場合に、該操舵角の増大に基づいて前記制限角速度が小さくなるように演算するものであり、
前記モータ制御信号出力手段は角速度制限手段を備え、該角速度制限手段は前記操舵角速度が前記制限角速度よりも大きいときに、前記モータの回転角速度を抑制すべく、前記電圧指令値を補正することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記角速度制限手段は、前記ステアリングの操舵状態が前記操舵角の絶対値を増大させる切り込み状態であるときに、前記電圧指令値を補正することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記角速度制限手段は、前記電圧指令値に該電圧指令値の符号と逆符号の補償電圧値を重畳することにより、該電圧指令値を補正することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記角速度制限手段は、前記操舵角速度と前記制限角速度との差分に基づいて前記補償電圧値を演算することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記角速度制限手段は、前記電圧指令値を補正した補正電圧指令値の絶対値の最小値をゼロとすることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記角速度制限手段は、前記操舵角と前記制限角速度との関係を示したマップを備え、該マップに基づいて前記制限角速度を演算することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−168168(P2011−168168A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33746(P2010−33746)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】