説明

電動パワーステアリング装置

【課題】小型で高い減速比が得られる減速機を用いることにより、搭載スペースを小さくすることが可能な電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング装置201は、ピニオンシャフト6の回転軸Loを中心に回転可能に支持された第一部材20と、外周面に外歯歯車71が形成された軸部材70と、外歯歯車71と噛み合う内歯歯車41が内周面に形成された環状部材30と、ハウジングHに固定された円盤部材50と、環状部材30の自転成分のみを円盤部材50に伝達する伝達機構を備える。外歯歯車71は、内歯歯車41と歯数が異なる。第一部材20には、環状部材の中心が回転軸Loから所定の距離になる位置に環状部材30を収容する収容孔21が形成される。環状部材30は、第一部材20に対して相対回転可能な状態で収容孔に収容される。モータ160は、第一部材20の外周面のアウタロータ142と、ステータ141を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールの操舵トルクに応じてモータを回転させ、減速機構を介して操舵系にモータの回転力を伝達させることにより、操舵系に操舵補助力を付与して操舵操作を補助するものである。操舵補助力は、モータの回転力を減速機により減速(増力)することで得ており、減速機構には、ウォーム減速機構が広く用いられている。例えば、特許文献1に記載されたウォーム減速機は、ウォームとウォームホイールとが互いに直交する軸心を有して支持され、ウォームホイールの外周のウォーム歯にウォームを歯合させて構成されている。このウォームを駆動するモータは、ウォームホイールを支持するギヤハウジングの外側に、ウォームホイールの接線方向に突出して取り付けられるので、大きな搭載スペースを必要としている。
【0003】
電動パワーステアリング装置において、減速機およびモータをピニオンシャフトに設けたものは、ピニオンアシスト方式と呼ばれる。ピニオンアシスト方式の電動パワーステアリング装置は、搭載スペースが限定される小型車等にも使用されるため、搭載スペースを小さくして、搭載位置の自由度を高くすることが要求されている。搭載スペースを小さくするには、小型で高い減速比を得ることができる減速機を用いるとともに、減速機を駆動するモータの取付部位を突出させないことが有効である。
【0004】
高い減速比を得ることができる減速機として、例えば、特許文献2,3には、遊星歯車機構を利用した減速機が開示されている。これらの減速機では、遊星歯車を所定の回転軸の周りに公転させ、遊星歯車の外歯歯車と当該外歯歯車に噛み合う内歯歯車との歯数差に応じた遊星歯車の自転成分のみを伝達機構により出力している。このような構成により、特許文献2,3の減速機は、一段で高い減速比を得ることができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−149573号公報
【特許文献2】特開2002−266955号公報
【特許文献3】特開2009−047214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
遊星歯車を公転運動させるために、特許文献2,3の減速機では、入力軸部材に形成された偏心部において軸受を介して遊星歯車を支持している。この軸受のように、所定の回転軸を中心に回転する入力軸部材と公転運動する遊星歯車との間には、駆動力の伝達の際に比較的大きな負荷が加えられることになる。そのため、両部材の間に介在する軸受に十分な強度を確保するために、例えば軸受の外径を大径化し単位面積あたりの負荷を軽減することが考えられる。
【0007】
しかしながら、軸受などの減速機の構成部材を大径化すると、これに伴って他の部材の寸法も拡大する必要が生じ、これにより減速機全体が大型化し、搭載スペースを小さくすることができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、小型で高い減速比が得られる減速機を用いることにより、搭載スペースを小さくすることが可能な電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために提供される請求項1に記載の発明は、モータと、軸方向に移動可能に設けられたラック軸と、前記モータの回転を減速する減速機と、前記モータ及び前記減速機を収容するハウジングと、前記ラック軸に形成されたラック歯と歯合するピニオンシャフトと、を備え、前記減速機は、前記ハウジング内において前記ピニオンシャフトの回転軸を中心に回転可能に支持された筒状の第一部材と、前記回転軸を中心に前記ピニオンシャフトと一体回転可能な状態で前記第一部材の内部に配置され、外周面に外歯歯車が形成された軸部材と、前記軸部材が貫通した状態で前記第一部材の内部に配置され、前記外歯歯車と噛み合う内歯歯車が内周面に形成された環状部材と、前記ハウジングに対して相対回転不能な状態で配置された第二部材と、前記環状部材の自転成分のみを前記第二部材に伝達する伝達機構と、を備え、前記外歯歯車は、前記内歯歯車と歯数が異なり、前記第一部材には、前記環状部材の中心が前記回転軸から所定の距離になる位置に前記環状部材を収容する収容孔が形成され、前記環状部材は、前記第一部材に対して相対回転可能な状態で前記収容孔に収容され、前記モータは、前記第一部材の外周面に嵌合する円筒形状のアウタロータと、前記アウタロータの径方向外側に対向して配置された円筒形状のステータと、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成からなる第一の発明に係る電動パワーステアリング装置において、減速機は、第一部材に駆動力を入力して回転させると、第一部材の収容孔に収容された環状部材が、第一部材の回転に伴って回転軸の周りを公転することになる。また、公転する環状部材は、伝達機構によって自転成分のみを第二部材に伝達している。ここで、環状部材の自転成分を伝達される第二部材がハウジングに対して相対回転不能な状態で配置されているので、環状部材は公転する際に自転を規制されることになる。そして、環状部材の内歯歯車と噛み合う外歯歯車が形成された軸部材が、両歯車の歯数差に基づく回転数で回転軸の周りに回転されて駆動力を出力する。このように減速機は、自転を規制された状態で公転する環状部材の公転成分を変速して出力することで高い減速比を得ることができる。
【0011】
また、減速機は、環状部材の中心が回転軸から所定の距離になる位置に環状部材を支持することにより、第一部材の回転に伴って環状部材が公転運動する構成としている。そして、本発明では、従来のように入力軸部材に偏心部を有する構成とは異なり、軸部材や環状部材の外側に位置する第一部材に形成された収容孔によって環状部材を偏心して支持している。これにより、第一部材が環状部材を支持する部位を装置の外側に位置させることができるので、駆動力の伝達の際に比較的大きな負荷が加えられる当該部位の強度を十分に確保できる。よって、第一部材と環状部材との間に軸受を介在させる構成においても、この軸受の単位面積あたりの負荷を軽減することができる。
【0012】
従って、この減速機は、高い減速比を得られるとともに、十分な強度を確保できるので、減速機全体を小型化することができる。また、減速機を駆動するモータは、第一部材に固定されたアウタロータと、アウタロータの径方向外側に対向して配置されたステータにより構成されているので、モータの取付部位が突出しない。このように小型で高い減速比の減速機と、取付部位が突出しないモータを用いることより、電動パワーステアリング装置の搭載スペースを小さくすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールが固定されるとともに、ラックアンドピニオン機構を介して前記ラック軸に連結されるステアリングシャフトと、を備え、前記ピニオンシャフトは、前記ステアリングシャフトの一部であることを特徴とする。
【0014】
本発明の電動パワーステアリング装置は、減速機およびモータをラックアンドピニオン機構側に配置することで、搭載スペースを小さくすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、ステアリングホイールと、前記ステアリングホイールが固定されるとともに、第1のラックアンドピニオン機構を介して前記ラック軸に連結されるステアリングシャフトと、を備え、前記ピニオンシャフトは、前記第1のラックアンドピニオン機構とは別に、前記ラック軸と第2のラックアンドピニオン機構を構成することを特徴とする。
【0016】
本発明の電動パワーステアリング装置は、ピニオンシャフトが第1のラックアンドピニオン機構とは別に、ラック軸と第2のラックアンドピニオン機構を構成しているので、減速機およびモータを第2のラックアンドピニオン機構側に配置することで、搭載スペースを小さくすることができる。また、第2のラックアンドピニオン機構には、ステアリングシャフトが直接的に連結されないため、ハウジングは、ステアリングシャフトを挿通する挿通孔を不要とした簡単な構成とすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項において、前記第二部材は、前記回転軸の軸方向において前記環状部材と並んで配置され、前記伝達機構は、前記環状部材および前記第二部材の一方に形成されたピンと、前記環状部材および前記第二部材の他方に形成され、前記ピンが挿入される挿入孔と、を備え、前記挿入孔の形状は、前記環状部材が前記回転軸の周りを公転した場合の前記ピンの軌跡の外接円と同一であることを特徴とする。
【0018】
このような構成によると、伝達機構は、ピンと挿入孔が係合することにより環状部材と第二部材を連結している。そして、挿入孔の形状は、環状部材が回転軸の周りを公転した場合に、挿入孔が形成された部材に対するピンの軌跡の外接円と同一となるように形成される。これにより、環状部材が回転軸の周りを公転すると、環状部材の公転成分を許容するとともに、環状部材の自転成分と第二部材が連動することになる。つまり、第二部材がハウジングに対して回転不能な状態の場合には環状部材は自転を規制され、第二部材がハウジングに対して回転可能な状態の場合には環状部材の自転と第二部材の回転が同期することになる。よって、減速機は、伝達機構により環状部材の自転成分のみを第二部材に確実に伝達することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項において、前記環状部材を複数備え、前記第一部材には、複数の前記環状部材の中心がそれぞれ異なって配置されるように複数の前記収容孔が形成されることを特徴とする。
【0020】
このような構成によると、内歯歯車を有する環状部材と、この内歯歯車と噛み合う外歯歯車を形成された軸部材との間で、駆動力を伝達する際の負荷を分散させることができる。従って、減速機は、機械的に伝達可能な最大駆動力を向上させることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項5において、複数の前記収容孔は、収容される複数の前記環状部材の中心が前記回転軸を中心とした回転方向に等間隔となるように形成されることを特徴とする。
【0022】
このような構成によると、複数の収容孔の内周面に支持される各環状部材は、回転軸を中心とした回転の周方向に等間隔で配置されることになる。つまり、減速機が2つの環状部材を備える場合には180(deg)間隔、3つの環状部材を備える場合には120(deg)間隔で各環状部材が配置されるように第一部材に収容孔が形成される。これにより、第一部材の回転に伴って、回転軸から偏心して配置された環状部材の公転運動により生じる回転バランスの不均衡を互いに打ち消すことができる。よって、減速機全体として振動を抑制し、より安定して動作させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小型で高い減速比が得られる減速機を用いることにより、搭載スペースを小さくすることが可能な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態を示す電動パワーステアリング装置の概略構成図。
【図2】本発明の第一実施形態を示す電動パワーステアリング装置の側面図である。
【図3】図2の減速機およびモータ部分の軸方向断面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態を示す電動パワーステアリング装置の概略構成図。
【図6】本発明の第二実施形態を示す電動パワーステアリング装置の側面図である。
【図7】図5の減速機およびモータ部分の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態の電動パワーステアリング装置の構成を図面を参照して説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置201は、ステアリングホイール9と、ステアリングシャフト8と、ピニオンシャフト6と、操舵機構3,4と、ラック軸5と、減速機160と、モータ140と、トルクセンサ7と、制御装置13と、により構成されている。
【0026】
ステアリングシャフト8は、ステアリングホイール9が固定されるとともに、ステアリングシャフト9の一部であるピニオンシャフト6が、操舵機構3,4を介して、ラック軸5に連結されている。ピニオンシャフト6は、ラック軸5に形成されたラック歯5aと歯合している。操舵機構3,4は、いわゆるラックアンドピニオン機構であり、ラック軸5が軸方向に移動することにより、ラック軸5の両端に連結されたタイロッド3a,4aを介して車輪1,2を操舵する。ラック軸5は、軸方向に移動可能にギヤハウジング(図示せず)に支持されており、ラック歯5aが形成されている。減速機160の入力軸は、トルクセンサ7を介して、ステアリングシャフト8に連結している。減速機160の出力軸は、ピニオンシャフト6に連結している。モータ140は、減速機160に駆動力を入力する。トルクセンサ7は、制御装置13と電気的に接続されており、ステアリングシャフト8に伝達された操舵トルクを検出し、制御装置13に対して操舵トルクに応じた検出信号を送信可能となっている。モータ140は、制御装置13に対して電気的に接続されており、制御装置13からの駆動信号に応じて駆動力を出力可能となっている。
【0027】
次に、上記した電動パワーステアリング装置201の具体例を説明する。
図2に示すように、電動パワーステアリング装置201は、車両の左右方向に延在して配設されたギヤハウジング131を備えている。ギヤハウジング131には、ラック軸5がギヤハウジング131の長手方向に軸方向に移動可能に収容され、ラック軸5の両端には、タイロッド3a,4a(図1参照)を介して車輪1,2(図1参照)が連結されるようになっている。
【0028】
ギヤハウジング131には、ステアリングホイール9(図1参照)によって回転されるピニオンシャフト6がラック軸5と交差する軸線の回りに回転可能に支持され、ラック歯5a(図1参照)と歯合している。また、ギヤハウジング131には、ラック軸5をピニオンシャフト6に向けて押圧するサポートヨーク手段133が設けられ、このサポートヨーク手段133によってラック軸5とピニオンシャフト6との歯合いを適正に維持するようにしている。
【0029】
そして、ギヤハウジング131には、減速機160とモータ140とが一体的に取付けられている。ハウジングHには、モータ140と減速機160が収納される。モータ140は、電源装置及び電源ケーブル(図示せず)により、電力供給がおこなわれる。
【0030】
次に、電動パワーステアリング装置201の詳細構成について説明する。
図3に示すように、入力軸15の一方端には、ステアリングシャフト8(図1参照)を連結しており、他方端は減速機160の歯車軸70を連結している。さらに、歯車軸70には出力軸17およびピニオンシャフト6を連結している。この歯車軸70および出力軸17とピニオンシャフト6とは、同軸に連結されている。また、入力軸15には、トーションバー16が挿通され、ハウジングHの側面にはトルクセンサ7が取り付けられて、制御装置13(図1参照)と電気的に接続している。
【0031】
モータ140は、ステータ141とアウタロータ142とから構成され、減速機160とともに、ハウジングHの内側に収容されるように配置されている。ステータ141は、円筒状に形成され、コイルが巻回されている。ステータ141は、ピニオンシャフト6の回転軸Loに同軸的に配置され、ハウジングHの内周面に固定されている。
【0032】
アウタロータ142は、外輪20の外周面に固定されている。アウタロータ142は、ステータ141の径方向内側に所定のギャップを介して、ステータ141の内周面に対向するようにかつ同軸的に、ステータ141に対して相対回転可能に配置されている。つまり、ステータ141のコイルに電力を供給することにより、アウタロータ142がステータ141に対して回転軸Loを中心に、外輪20とともに回転する。
【0033】
減速機160は、外輪20の内部に配置され、外輪20に固定されたアウタロータ142から入力されたモータ140の回転を減速して、歯車軸70および出力軸17に出力する。出力軸17に連結されたピニオンシャフト6は、ラック軸5に形成されたラック歯5aと歯合している。
【0034】
次に、減速機160の構成について説明する。
減速機160は、主として、ハウジングHと、歯車機構10と、入力軸15と、出力軸17とから構成される。歯車機構10は、外輪20(本発明の「第一部材」に相当する)と、第一環状部材30と、第二環状部材40と、円盤部材50(本発明の「第二部材」に相当する)と、歯車軸70(本発明の「軸部材」に相当する)と、ピン支持部材81と、軸受91,92,93,94とから構成される。ハウジングHは、図3に示すように、回転軸Loを中心として同軸上に配置された入力軸15および出力軸17を間接的に回転可能に支持し、変速を行う歯車機構10を収容する。
【0035】
減速機160の駆動源は、アウタロータ142を有するモータ140であり、減速を行う歯車機構10の外側に位置する外輪20にアウタロータ142を直接的に固定している。外輪20は、モータ140が駆動することで回転し、減速機160の外側から歯車機構10に駆動力を入力する。
【0036】
入力軸15は、歯車機構10に回転を入力する入力部材である。この入力軸15は、減速機160の一方側(図3の下側)に配置され、他方側の端部が歯車機構10の歯車軸70に連結されている。また、入力軸15は、歯車機構10のピン支持部材81の内周面81bに設けられた軸受94を介して、ハウジングHに対して回転軸Loの周りに相対回転可能に支持されている。
【0037】
出力軸17は、歯車機構10により減速された回転を出力する出力部材である。この出力軸17は、減速機160の他方側(図3の上側)に配置され、一方側の端部が歯車機構10の歯車軸70に連結されている。また、出力軸17は、歯車機構10の円盤部材50の内周面50bに設けられた軸受92を介して、ハウジングHに対して回転軸Loの周りに相対回転可能に支持されている。
【0038】
外輪20は、円筒状に形成され、外周部にアウタロータ142を固定しており、モータ140が駆動することで回転し、駆動力を入力する入力部材である。外輪20は、内周側に配置された軸受91,93を介して、ハウジングH内において回転軸Loを中心に回転可能に支持されている。また、この外輪20は、内周面に第一収容孔21および第二収容孔22が形成されている。第一収容孔21は、回転軸Loから所定の距離だけ偏心した第一偏心軸Laを中心とする円筒状の内周面により形成されている。同様に、第二収容孔22は、回転軸Loから所定の距離だけ偏心し、且つ第一偏心軸Laとは異なる第二偏心軸Lbを中心とする円筒状の内周面により形成されている。
【0039】
また、第一収容孔21と第二収容孔22は、回転軸Loに対する偏心方向が互いに逆方向となるように形成されている。つまり、第一収容孔21と第二収容孔22は、回転軸Loを中心とした回転方向に等間隔となるように、180(deg)間隔で形成されている。また、本実施形態において第一収容孔21および第二収容孔22は、外輪20の内周面に直接的に形成するものとしたが、外輪20の内周面にそれぞれ嵌め込んで固定される別部材によって構成されるものとしてもよい。
【0040】
第一環状部材30は、環状に形成され、歯車軸70が貫通した状態で外輪20の内部に配置される遊星歯車である。この第一環状部材30は、軸受を介して外輪20の第一収容孔21に収容され、外輪20に対して相対回転可能な状態で支持されている。つまり、第一収容孔21は、第一環状部材30の中心が回転軸Loから所定の距離となる位置に第一環状部材30を収容している。このような構成により、回転軸Loに対する第一環状部材30の第一偏心軸Laの距離が一定に維持され、第一環状部材30は外輪20の回転に伴って公転運動することになる。
【0041】
また、第一環状部材30は、図3に示すように、内周面に形成された内歯歯車31と、第一環状部材30の両端面を回転軸Lo方向に貫通するように形成された挿入孔32が形成されている。挿入孔32は、円盤部材50に形成されたピン51が挿入されるピン孔である。本実施形態において、図4に示すように、6箇所に形成された挿入孔32が第一環状部材30の周方向に等間隔となるように配置されている。また、挿入孔32の形状は、第一環状部材30が回転軸Loの周りを公転した場合に、第一環状部材30に対するピン51の軌跡の外接円と同一となるように形成されている。より詳細には、挿入孔32の内径は、転がり軸受52を含むピン51の直径と、第一環状部材30の偏心量(回転軸Loと第一偏心軸Laの離間距離)との和にほぼ等しくなるように設定されている。
【0042】
第二環状部材40は、上述した第一環状部材30と同形の遊星歯車であるため詳細な説明を省略する。また、第二環状部材40の内歯歯車41、挿入孔42および第二偏心軸Lbは、第一環状部材30の内歯歯車31、挿入孔32および第一偏心軸Laにそれぞれ対応する。そして、第二環状部材40は、外輪20の第二収容孔22に収容される。つまり、第二収容孔22は、第二環状部材40の中心が回転軸Loから所定の距離となる位置に第二環状部材40を収容している。ここで、第一収容孔21と第二収容孔22は、回転軸Loを中心とした回転方向に等間隔で形成されている。従って、これらに収容される第一環状部材30および第二環状部材40は、外輪20が回転した際に、それぞれの自転軸(第一偏心軸Laおよび第二偏心軸Lb)が回転軸Loに対象の位置を常に維持された状態で回転軸Loの周りを公転する回転することになる。
【0043】
円盤部材50は、図3に示すように、回転軸Loの軸方向において第一環状部材30および第二環状部材40と並んで配置されている。また、円盤部材50は、ハウジングHににより固定され、ハウジングHに対して相対回転不能な状態で配置されている。この円盤部材50は、一方側(図3の下側)の端面50aから第一環状部材30および第二環状部材40に向かって回転軸Loの軸方向に突出するピン51と、転がり軸受52を有する。本実施形態において、図4に示すように、6本のピン51が円盤部材50の周方向に等間隔となるように端面50aに固定されている。円盤部材50は、円筒状の外周面50cが形成され、この外周面50cの外側に設けられた軸受93を介して外輪20を回転可能に支持している。また、円盤部材50は、円筒状の内周面50bが形成され、この内周面50bの内側に設けられた軸受92を介して出力軸17を回転可能に支持している。
【0044】
また、円盤部材50は、円柱状のピン51の外側に円筒状の転がり軸受62を回転可能な状態で外挿している。ピン51は、第一環状部材30の挿入孔32および第二環状部材40の挿入孔42に挿入される。そして、転がり軸受52が挿入孔32,42とピン51との間に介在し、転がり軸受52の外周面の一部分がこれら各挿入孔32,42の内周面と当接する。このように、ピン51は、転がり軸受52を介して各挿入孔32,42と係合している。
【0045】
このような構成からなる円盤部材50は、外輪20の回転に伴い第一、第二環状部材30,40が公転運動すると、第一、第二環状部材30,40の各挿入孔32,42の内周面からピン51および転がり軸受52を介して負荷を受ける。この時、各挿入孔32,42に対する転がり軸受52を含むピン51の外径の寸法関係に基づいて、第一、第二環状部材30,40の公転運動のうち自転成分のみによる負荷が円盤部材50に伝達される。ここで、本実施形態において、円盤部材50がハウジングHに固定されていることから、第一、第二環状部材30,40は自転を規制されることになる。このように、ピン51および挿入孔32,42は、公転運動する第一、第二環状部材30,40の自転成分のみを円盤部材50に伝達する伝達機構を構成している。
【0046】
歯車軸70は、軸状に形成され、図3に示すように、外歯歯車71を有する太陽歯車であって、回転軸Loを中心に回転可能な状態で外輪20の内部に配置されている。また、この歯車軸70は、端部に出力軸17を連結され、駆動力を出力する出力部材である。外歯歯車71は、歯車軸70の外周面に形成され、第一環状部材30および第二環状部材40の内周側を貫通し、内歯歯車31および内歯歯車41と噛み合っている。また、歯車軸70の外歯歯車71の歯数は、内歯歯車31,41の歯数よりも少なくなるように設定されるとともに、第一、第二環状部材30,40が回転軸Loに対して偏心して配置されていることから、外歯歯車71は、その一部のみが内歯歯車31,41と噛み合っている。
【0047】
ピン支持部材81は、図3に示すように、ハウジングHにより固定され、ハウジングHに対して相対回転不能な状態で配置された円盤状の部材である。このピン支持部材81は、第一、第二環状部材30,40と回転軸Loの軸方向に並んで配置されている。ピン支持部材81は、円筒状の外周面81cが形成され、この外周面81cの外側に設けられた軸受91を介して外輪20を回転可能に支持している。また、ピン支持部材81は、円筒状の内周面81bが形成され、この内周面81bの内側に設けられた軸受94を介して入力軸15を回転可能に支持している。
【0048】
また、ピン支持部材81は、端面81aに複数のピン51と同数のピン孔が形成され、第一、第二環状部材30,40の挿入孔32,42を貫通したピン51の端部と圧入または隙間嵌めにより連結される。このような構成により、ピン支持部材81は、円盤部材50とともに、円盤部材50に固定された6本のピン51を支持する。
【0049】
また、ピン支持部材81は、端面81aに挿通孔が形成され、挿通孔を貫通する入力軸15の一方端とステアリングシャフトが連結される。
【0050】
続いて、本実施形態の減速機160の動作について説明する。先ず、モータ140を作動させると、モータ140のアウタロータ142が固定された外輪20が回転する。外輪20が回転すると、外輪20は回転軸Loを中心として回転する。そうすると、外輪20に形成された第一収容孔21および第二収容孔22にそれぞれ収容された第一環状部材30および第二環状部材40が、外輪20の回転に伴い回転軸Loの周りを公転する。
【0051】
ここで、公転運動する第一環状部材30の各挿入孔32は、円盤部材50のピン51が挿入され、転がり軸受52を介してピン51と係合している。第一環状部材30は、円盤部材50がハウジングHに固定されているため、ピン51により第一偏心軸Laの周りに自転することを規制されることになる。つまり、第一環状部材30は、外輪20の回転に伴い、第一偏心軸Laに対して配置された位相を維持した状態で、回転軸Loの周りを公転することになる。第二環状部材40の動作についても同様である。
【0052】
また、第一環状部材30の内歯歯車31は、噛み合う歯車軸70の外歯歯車71と歯数が異なるため、周方向の一部のみが外歯歯車71と噛み合っている。そして、上述したように第一環状部材30が回転軸Loの周りを公転すると、歯車軸70は、内歯歯車31と外歯歯車71の歯数差に基づく回転数で入力軸15の回転方向と同方向に自転する。このように、本実施形態の減速機160では、第一、第二環状部材30,40の自転成分と連動する円盤部材50がハウジングHに固定されているため、両部材は自転を規制される。そして、第一、第二環状部材30,40の公転成分が内歯歯車31,41と外歯歯車71の歯数差に基づいて減速され、歯車軸70と連結された出力軸17から駆動力が出力される。
【0053】
上述したように、本実施形態の減速機160は、外輪20から入力された回転を歯車機構10により減速し、出力軸17から出力するものである。このような減速機160における各歯車の歯数と減速比は、以下のような関係となる。ここで、第一、第二環状部材30,40の内歯歯車31,41の歯数をZ1、歯車軸70の外歯歯車71の歯数をZ2とする。この時、減速装置1の減速比R1は、(数1)により算出される。ここで、例えば、内歯歯車31,41の歯数Z1を101、外歯歯車71の歯数Z2を100に設定すると、減速装置1の減速比R1は、1/100となり、一段で大きな減速比を得られる。
【0054】
(数1)
R1=(Z1−Z2)/Z2
R1:減速比
Z1:内歯歯車31,41の歯数
Z2:外歯歯車71の歯数
【0055】
本発明の減速機160によると、自転を規制された状態で公転する第一、第二環状部材30,40の公転成分を、内歯歯車31,41と外歯歯車71の歯数差(Z1−Z2)に基づく回転数に減速するので、一段で大きな減速比を得ることができる。また、減速機160は、回転軸Loに対して偏心して支持される第一、第二環状部材30,40を外側から支持している。これにより、外輪20が第一、第二環状部材30,40を支持する部位を減速機160の外側に位置させることができるので、駆動力の伝達の際に比較的大きな負荷が加えられる当該部位の強度を十分に確保できる。よって、第一、第二収容孔21,22と第一、第二環状部材30,40との間に介在させた軸受の単位面積あたりの負荷を軽減することができる。
【0056】
また、減速機160は、第一、第二環状部材30,40の挿入孔32,42と、円盤部材50のピン51とにより、第一、第二環状部材30,40の自転成分と円盤部材50を連動させる伝達機構を構成している。この伝達機構は、第一環状部材30が回転軸Loの周りを公転すると、第一環状部材30の公転成分を許容するとともに、第一環状部材30の自転を規制する。これにより、減速機160は、伝達機構により第一、第二環状部材30,40の自転成分のみを円盤部材50に伝達し、歯車機構10をより確実に動作させることができる。
【0057】
また、減速機160は、環状部材30,40を複数備えることから、内歯歯車31,41を有する第一、第二環状部材30,40と、この内歯歯車31,41と噛み合う外歯歯車71を有する歯車軸70との間で、駆動力を伝達する際の負荷を分散させることができる。従って、減速機160は、機械的に伝達可能な最大駆動力を向上させることができる。
【0058】
さらに、外輪20における複数の第一、第二収容孔21,22は、それぞれの偏心軸Laおよび偏心軸Lbが回転軸Loを中心とした回転方向に等間隔となるように形成される構成としている。このような構成によると、外輪20に支持される第一、第二環状部材30,40は、回転軸Loを中心とした回転の周方向に等間隔で配置されることになる。つまり、2つの第一、第二環状部材30,40は、180(deg)間隔で配置される。これにより、外輪20の回転に伴って、回転軸Loから偏心して配置された第一、第二環状部材30,40の公転運動により生じる回転バランスの不均衡を互いに打ち消すことができる。よって、減速機160は、振動を抑制し、歯車機構10をより安定して動作させることができる。
【0059】
減速機160は、円盤部材50のピン51を支持するピン支持部材81を備える構成としている。ここで、減速機160は、挿入孔32,42およびピン51により構成される伝達機構によって、第一、第二環状部材30,40の自転成分と円盤部材50を同期させることで第一、第二環状部材30,40の自転を規制している。そのため、減速機160の駆動状態においては複数のピン51には回転軸Loの周方向に強い負荷が加えられることがある。そこで、上記のようにピン支持部材81を備える構成とすると、円盤部材50の複数のピン51は、その両端部を円盤部材50およびピン支持部材81により両持ちで支持されることになり、互いの間隔を保持される。これにより、複数のピン51に加えられる負荷が所定のピン51に偏ることを防止し、駆動状態を安定化させることができる。
【0060】
このように構成される電動パワーステアリング装置201の動作を説明する。
図1に示すように、運転者がステアリングホイール9を操作すると、ステアリングホイール9に連結されたステアリングシャフト8が回転する。このステアリングシャフト8の回転は、連結する入力軸15に伝達される。一方、トルクセンサ7がステアリングシャフト8の操舵トルクを検出し、制御装置13に検出信号を送信する。制御装置13は、この検出信号に応じて、モータ140を作動させる。
【0061】
図3に示すように、モータ140を作動させると、モータ140のアウタロータ142が固定された外輪20が回転する。減速機160は、入力軸15に入力された回転と、外輪20の回転を歯車機構10により減速(増力)した回転を、出力軸17から出力する。これにより、ステアリングシャフト8の回転が、出力軸17に連結するピニオンシャフト6に伝達される。そして、ピニオンシャフト6が、歯合するラック歯5aにより、ラック軸5を軸方向に移動させ、ラック軸5の両端に連結されたタイロッドを介して車輪を操舵する。
【0062】
[第二実施形態]
本実施形態は、ステアリングホイールが固定され、ステアリングシャフトの一部である第1のピニオンシャフトを介してラック軸と連結する第1のラックアンドピニオン機構と、操舵補助力を付与する第2のピニオンシャフトを介してラック軸と連結する第2のラックアンドピニオン機構と、を備えるデュアルピニオンタイプの電動パワーステアリング装置に、本発明を適用した例である。
【0063】
以下、本発明の第二実施形態の電動パワーステアリング装置の構成を図面を参照して説明する。
図5に示すように、電動パワーステアリング装置301は、ステアリングホイール9と、ステアリングシャフト8と、第1ピニオンシャフト6aと、第2ピニオンシャフト6bと、操舵機構3,4と、ラック軸5と、減速機160と、モータ140と、トルクセンサ7と、により構成されている。
【0064】
ステアリングシャフト8は、一方端にステアリングホイール9が固定され、他方端にス第1ピニオンシャフト6aが連結している。ステアリングシャフト8は、トルクセンサ7を備えている。また、第1ピニオンシャフト6aを介して、ラック軸5に連結されている。ラック軸5は、軸方向に移動可能にギヤハウジング(図示せず)に支持されており、図5における左方の領域には第1ラック歯5bが形成され、右方の領域には第2ラック歯5cが形成されている。操舵機構3,4は、第1のラックアンドピニオン機構と、第2のラックアンドピニオン機構とから構成される。それぞれのラックアンドピニオン機構により、ラック軸5を軸方向に同方向に移動させることにより、ラック軸5の両端に連結されたタイロッド3a,4aを介して車輪1,2を操舵する。第1のラックアンドピニオン機構は、第1ピニオンシャフト6aと、第1ピニオンシャフト6aと歯合する第1ラック歯5bとから構成されている。第2のラックアンドピニオン機構は、第2ピニオンシャフト6bと、第2ピニオンシャフト6bと歯合する第2ラック歯5cとから構成されている。減速機160の出力軸は、第2ピニオンシャフト6bを介して、ラック軸5に連結されている。モータ140は、減速機160に駆動力を入力する。トルクセンサ7は、制御装置13と電気的に接続されており、ステアリングシャフト8に伝達された操舵トルクを検出し、制御装置13に対して操舵トルクに応じた検出信号を送信可能となっている。モータ140は、制御装置13に対して電気的に接続されており、制御装置13からの駆動信号に応じて駆動力を出力可能となっている。
【0065】
次に、上記した電動パワーステアリング装置301の具体例を説明する。
図6に示すように、電動パワーステアリング装置201は、車両の左右方向に延在して配設されたギヤハウジング131を備えている。ギヤハウジング131には、ラック軸5がギヤハウジング131の長手方向に軸方向に移動可能に収容され、ラック軸5の両端には、タイロッド3a,4a(図1参照)を介して車輪1,2(図5参照)が連結されるようになっている。
【0066】
ギヤハウジング131には、ステアリングホイール9(図5参照)によって回転されるピニオンシャフト6がラック軸5と交差する軸線の回りに回転可能に支持され、第2ピニオンシャフト6bはラック軸5に形成された第1ラック歯5b(図14参照)に噛合されている。また、ギヤハウジング131には、ラック軸5を第1,第2ピニオンシャフト6a,6bに向けて押圧するサポートヨーク手段132,133が設けられ、このサポートヨーク手段132,133によってラック軸5と第1,第2ピニオンシャフト6a,6bとの噛合いを適正に維持するようにしている。
【0067】
そして、ギヤハウジング131には、減速機160とモータ140とが一体的に取付けられている。ハウジングHには、モータ140と減速機160が収納される。モータ140は、電源装置及び電源ケーブル(図示せず)により、電力供給がおこなわれる。
【0068】
次に、電動パワーステアリング装置301の詳細構成について説明する。
図7に示すように、減速機160の歯車機構である歯車軸70と、ステアリングシャフトの入力軸は連結されないため、ハウジングHを構成するピン支持部材81に挿通孔は設けられていない。その他の構成については、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
図5に示すように、運転者がステアリングホイール9を操作すると、ステアリングホイール9に連結されたステアリングシャフト8が回転する。このステアリングシャフト8の回転は、連結する第1ピニオンシャフト6aに伝達される。一方、トルクセンサ7がステアリングシャフト8の操舵トルクを検出し、制御装置13に検出信号を送信する。制御装置13は、この検出信号に応じて、モータ140を作動させる。
【0070】
図7に示すように、モータ140を作動させると、モータ140のアウタロータ142が固定された外輪20が回転する。減速機160は、外輪20の回転を歯車機構10により減速(増力)した回転を、出力軸17から出力する。この出力軸17の回転は、連結する第2ピニオンシャフト6bに伝達される。そして、第1ピニオンシャフト6aが、歯合するラック歯5bにより、ラック軸5を軸方向に移動させるとともに、第2ピニオンシャフト6bが、歯合するラック歯5cにより、ラック軸5を軸方向に同方向に移動させ、ラック軸5の両端に連結されたタイロッドを介して車輪を操舵する。
【0071】
上記実施形態においては、電動パワーステアリング装置を、第1ピニオンシャフト及び第2ピニオンシャフトと、それらと歯合する第1ラック歯及び第2ラック歯がそれぞれ形成されたラック軸とから構成される操舵機構に適用した場合について説明した。この他に、第1ピニオンシャフト及び第2ピニオンシャフトと、これらと歯合する第1ラック歯及び第2ラック歯が一体的に形成されたラック歯を有するラック軸とから構成される操舵機構に適用することもできる。これらにおいても上記と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0072】
1,2:車輪、 3,4:操舵機構、 3a,4a:タイロッド、
5:ラック軸、 5a:ラック歯、 5b:第1ラック歯、 5c:第2ラック歯、
6:ピニオンシャフト、 6a:第1ピニオンシャフト、 6b:第2ピニオンシャフト、
7:トルクセンサ、 8:ステアリングシャフト、 9:ステアリングホイール、
10:歯車機構、
13:制御装置、 15:入力軸、 16:トーションバー、 17:出力軸、
20:外輪、 21:第一収容孔、 22:第二収容孔、
30:第一環状部材、 31:内歯歯車、 32:挿入孔、
40:第二環状部材、 41:内歯歯車、 42:挿入孔、
50:円盤部材、 50a:端面、 50b:内周面、 50c:外周面、
51:ピン、 52:転がり軸受、
70:歯車軸、 71:外歯歯車、
81:ピン支持部材、 81a:端面、 81b:内周面、 81c:外周面、
91〜96:軸受、
131:ギヤハウジング、 132,133:サポートヨーク手段、
140:モータ、 141:ステータ、 142:アウタロータ、
160:減速機、
201,301:電動パワーステアリング装置、
Lo:回転軸、
La:第一偏心軸、
Lb:第二偏心軸、
H:ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
軸方向に移動可能に設けられたラック軸と、
前記モータの回転を減速する減速機と、
前記モータ及び前記減速機を収容するハウジングと、
前記ラック軸に形成されたラック歯と歯合するピニオンシャフトと、を備え、
前記減速機は、
前記ハウジング内において前記ピニオンシャフトの回転軸を中心に回転可能に支持された筒状の第一部材と、
前記回転軸を中心に前記ピニオンシャフトと一体回転可能な状態で前記第一部材の内部に配置され、外周面に外歯歯車が形成された軸部材と、
前記軸部材が貫通した状態で前記第一部材の内部に配置され、前記外歯歯車と噛み合う内歯歯車が内周面に形成された環状部材と、
前記ハウジングに対して相対回転不能な状態で配置された第二部材と、
前記環状部材の自転成分のみを前記第二部材に伝達する伝達機構と、を備え、
前記外歯歯車は、前記内歯歯車と歯数が異なり、
前記第一部材には、前記環状部材の中心が前記回転軸から所定の距離になる位置に前記環状部材を収容する収容孔が形成され、
前記環状部材は、前記第一部材に対して相対回転可能な状態で前記収容孔に収容され、
前記モータは、
前記第一部材の外周面に嵌合する円筒形状のアウタロータと、
前記アウタロータの径方向外側に対向して配置された円筒形状のステータと、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールが固定されるとともに、ラックアンドピニオン機構を介して前記ラック軸に連結されるステアリングシャフトと、を備え、
前記ピニオンシャフトは、前記ステアリングシャフトの一部であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1において、
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールが固定されるとともに、第1のラックアンドピニオン機構を介して前記ラック軸に連結されるステアリングシャフトと、を備え、
前記ピニオンシャフトは、前記第1のラックアンドピニオン機構とは別に、前記ラック軸と第2のラックアンドピニオン機構を構成することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記第二部材は、前記回転軸の軸方向において前記環状部材と並んで配置され、
前記伝達機構は、
前記環状部材および前記第二部材の一方に形成されたピンと、
前記環状部材および前記第二部材の他方に形成され、前記ピンが挿入される挿入孔と、を備え、
前記挿入孔の形状は、前記環状部材が前記回転軸の周りを公転した場合の前記ピンの軌跡の外接円と同一であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記環状部材を複数備え、
前記第一部材には、複数の前記環状部材の中心がそれぞれ異なって配置されるように複数の前記収容孔が形成されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項5において、
複数の前記収容孔は、収容される複数の前記環状部材の中心が前記回転軸を中心とした回転方向に等間隔となるように形成されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52765(P2013−52765A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192465(P2011−192465)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】