説明

電動モータの電子制御装置

【課題】装置全体の小型化を図りつつコストを低減できる電子制御装置を提供する。
【解決手段】パワー電子回路とフィルタ電子回路のそれぞれの配電パターンを、樹脂材によってモールドされたバスバー組立体13に一体に形成すると共に、バスバー組立体に電動モータの駆動電流を検出する第2シャント抵抗器18を設けると共に、該第2シャント抵抗器の一辺部18bに伝熱部材22の一側片22bを接合すると共に、該伝熱部材の底辺部22aに、ヒートシンクであるアルミニウム合金材のハウジング本体3に一体に設けられた突起部9の上端部9a上面を、放熱シート10を介して接触させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動パワーステアリング装置に用いられる電動モータを駆動制御するための電子制御装置(ECU)に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される従来の電動モータの電子制御装置の一つとして、以下の特許文献1に記載されたものが提供されている。
【0003】
この従来技術は、電動パワーステアリング装置に用いられる電動モータの駆動を制御する電子制御装置であって、この電子制御装置は、ハウジング本体とカバー部材との間に収容配置されて、電流検出抵抗(シャント抵抗器)やブリッジ回路などが配線パターンに実装された金属基板と、前記マイコンや駆動回路などが実装された制御基板及びコイルやモータリレーとなどが実装された絶縁プリント基板と、を備えている。
【0004】
そして、前記金属基板と絶縁プリント基板とを、互いに所定隙間を介して重合状態に配置し、前記シャント抵抗器や半導体スイッチ素子などの発熱量を、金属基板を介して放熱するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−304203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の電子制御装置は、前記シャント抵抗器などのヒートシンクとして製品コストの高い前記金属基板を利用しているため、電子制御装置全体のコストの高騰が余儀なくされている。
【0007】
本発明は、前記従来の電子制御装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、装置全体の小型化を図りつつコストの低減化が図れる電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電動モータに電力を供給するパワー電子回路と、通電時の電磁ノイズを除去するフィルタ電子回路と、前記電動モータの駆動を制御する制御回路と、を放熱材のハウジングに保持してなる電動モータの電子制御装置であって、前記パワー電子回路とフィルタ電子回路のそれぞれの配電パターンを、樹脂材によってモールドされたバスバー組立体に一体に形成すると共に、前記バスバー組立体の外面に、前記電動モータの駆動電流を検出する電流検出抵抗器を設け、
該電流検出抵抗器を、伝熱部材を介して放熱材に接触させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パワー電子回路とフィルタ電子回路の配電パターンをバスバー組立体に一体に形成したことによって装置全体の小型化が図れると共に、電流検出抵抗器の発熱を、従来の金属基板ではなく、既存の放熱材を利用して放熱させるようにしたため、コストの低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電子制御装置の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態の電子制御装置の要部を拡大断面して示す斜視図である。
【図3】同電子制御装置の要部を拡大断面して示す側面図である。
【図4】本実施形態に供される第2シャント抵抗器の斜視図である。
【図5】本実施形態における放熱効果と放熱手段を有さない場合のシャント抵抗器の温度変化を示す特性図である。
【図6】第2実施形態における電子制御装置の要部を拡大断面して示す斜視図である。
【図7】本実施形態に供されるカバー部材を底面側から示す斜視図である。
【図8】第3実施形態における電子制御装置の要部を拡大断面して示す斜視図である。
【図9】第4実施形態における電子制御装置の要部を拡大断面して示す斜視図である。
【図10】第5実施形態における電子制御装置の要部を拡大断面して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動モータの電子制御装置を自動車の電動パワーステアリング装置に適用した実施形態を図面に基づいて詳述する。
〔第1実施形態〕
まず、前記電動パワーステアリング装置は、具体的に図示しないが、車両のステアリングホイールに対して補助トルクを出力する電動モータである電動モータと、該電動モータからの回転力がウォーム機構などの減速機構を介して伝達されるピニオンギアと、前記電動モータのモータケーシングの上端部に設けられて、電動モータの駆動を制御する電子制御装置と、前記電動モータを駆動するための電流を供給する図外のバッテリーと、ステアリングホイールの操舵トルクを検出する図外のトルクセンサなどを備えている。
【0012】
前記電動モータは、三相交流型のブラシレスモータであって、電機子巻き線と、回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサなどを有している。
【0013】
電子制御装置は、図1に示すように、前記モータケーシングを囲繞するように配置されたハウジング1と、該ハウジング1に保持された電子制御部品2と、を備えている。
【0014】
前記ハウジング1は、図1に示すように、放熱材(ヒートシンク)であるハウジング本体3と、該ハウジング本体3の上部に組み付けられた前記電子制御部品2を上方から被嵌するカバー部材4と、を備えている。
【0015】
前記ハウジング本体3は、アルミニウム合金材によって異形ボックス状に一体に形成され、上面側の凹溝3aの底面所定位置に、内部にモータ軸が下方向から挿通される円筒部5が上方へ突設されていると共に、該円筒部5の側部に、後述するコンデンサなどの比較的大きな電子部品を収容配置する収容凹部6が形成されている。また、ハウジング本体3のフランジ状の上端外周部3bの円周方向所定位置に5つのボス部などを介して雌ねじ孔7がそれぞれ形成されている。さらに、前記上端外周部3bの雌ねじ孔7よりも内側上面に、図外の環状シール部材が嵌着固定される嵌着溝8が周方向に連続して形成されている。
【0016】
また、前記凹溝3aの底面所定位置、つまり後述する伝熱部材22が対向配置される箇所に角柱状の突起部9が一体に突設されている。この突起部9は、ハウジング本体3をアルミ鋳造する際に一緒に成形され、ほぼ正方形状の上端部9aの上面には絶縁部材である放熱シート10が接着固定されている。この各放熱シート10は、シリコン材などによって板状に形成されている。また、前記凹溝3aの隅部に形成された4つのボス部3cには、図外の固定用ビスが螺着する4つの雌ねじ孔11が形成されている。
【0017】
前記カバー部材4は、同じく放熱材のアルミニウム合金材によって、ハウジング本体3の外形に沿った異形な薄皿状に形成され、フランジ状の下端外周部4aの周方向位置に図外の固定用ボルトが挿通する6つのボルト挿通孔12が貫通形成されている。この各ボルト挿通孔12に挿通された図外のボルトが前記雌ねじ孔7に螺着することによってハウジング本体3にカバー部材4が結合されるようになっている。
【0018】
また、このカバー部材4の上壁には、前記ハウジング本体3の円筒部5が挿通される挿通孔4bが貫通形成されていると共に、圧力調整用のゴム栓体が嵌着固定される呼吸用孔4cが貫通形成されている。カバー部材4の外周部下面4dは、周方向へ連続した平坦面状に形成されて、前記ハウジング本体3の嵌着溝8に嵌着されるシール部材を上方から押圧して圧縮変形させるようになっている。
【0019】
前記ハウジング本体3とカバー部材4との間に配置された電子制御部品2は、前記電動モータのステータに電力を供給するためのパワー電子回路とラジオ(電磁)ノイズを除去するためのフィルタ電子回路のそれぞれの配電パターンを一体的に設けたバスバー組立体13と、前記電動モータの駆動を制御するための制御基板14と、を備えている。
【0020】
前記バスバー組立体13は、合成樹脂材によるモールディングによってブロック板状に形成され、図1に示すように、外形が前記ハウジング本体3やカバー部材4の側部形状に沿ってほぼ矩形状に形成されている。また、図2及び図3に示すように、前記ハウジング本体3の凹溝3aの上方位置にバスバー組立体13を載置した際に、該凹溝3aの底面とバスバー組立体13の下面13aとの間に、所定幅の空間部15が形成されるようになっている。
【0021】
前記バスバー組立体13の4隅部には、前記4本の固定用ビスが挿通される4つのビス挿通孔16が貫通形成されており、この各ビス挿通孔16に挿通された固定用ビスが前記雌ねじ孔11に螺着することによって、バスバー組立体13がハウジング本体3に固定されるようになっている。
【0022】
さらに、バスバー組立体13の凹状の下面13a側には、図示しないが、複数の半導体スイッチ素子を保持する矩形状の嵌合溝が形成されていると共に、底面の隅部には、複数のアルミ電解コンデンサの上端部を保持する筒状部が一体に形成されている。
【0023】
前記バスバー組立体13の前端部には、バッテリーと接続される図外の電源コネクタと、前記電動モータに電力を供給するモータコネクタと、前記トルクセンサやレゾルバ、CAN通信、I/Oなどの各種信号の伝達経路となる信号コネクタが一体に設けられている。
【0024】
また、バスバー組立体13の下面13aには、前記パワー電子回路の構成部品である複数の半導体スイッチ素子(MOS−FET)や、フィルタ電子回路の構成部品である複数のアルミ電解コンデンサ及びノーマルコイル、コモンコイル、複数のセラミックコンデンサが実装されている。
【0025】
さらに、下面13aには、電源電流検出用の第1シャント抵抗器が実装されていると共に、図2及び図3に示すように、モータ駆動電流の検出U相、V相を検出する第2シャント抵抗器18がそれぞれ設けられている。また、同じく下面13a側には、内部車両のイグニッションスイッチのオン、オフによってオン、オフされるモータリレーや電源用リレーが実装されており、前記モータリレーは、モータの異常時にFS対応でオフすることが可能である。一方、前記電源用リレーは、制御回路が異常時にFS対応でオフすることが可能である。
【0026】
さらに、前記バスバー組立体13の外面である上面13bには、前記電源コネクタに接続された電源負極側バスバーや、電源正極側バスバーなどの配電パターンが形成されている。また、バスバー組立体13の内部には、モータへの出力用バスバーや電源正極側バスバーなどの多くの配電パターン19が埋設状態に形成されている。
【0027】
また、前記電源コネクタやモータコネクタ及び信号コネクタに接続された複数の直流端子、直流電力から作られた交流電力を出力するための複数の交流端子、さらには前記モータリレーや半導体スイッチ素子(FET)を駆動するための制御信号用の接続端子20や、モータの三相端子(UVW各層)のいずれか接続される接続端子21などの複数の接続端子がバスバー組立体13の上面13bから突出している。
【0028】
前記各半導体スイッチ素子は、バスバー組立体13の下面13aに形成された前記各嵌合溝内に嵌合保持されていると共に、それぞれ側面から突出した接続端子が上方へ折曲形成されて、バスバー組立体13に貫通形成された端子接続孔を貫通して上方へ延出している。
【0029】
なお、各半導体スイッチ素子は、上端部が前記各嵌合溝に嵌合され一方、下面側が図外の放熱シートを介して前記ハウジング本体3の内面に当接している。
【0030】
また、前記モータ駆動電流の検出U相、V相を検出する第2シャント抵抗器18は、図2〜図4に示すように、ほぼコ字形状に折曲形成されて、底辺側の矩形板状の抵抗器本体18aと、該抵抗器本体18aの両側縁から立ち上がった伝熱部である両側辺18b、18cと、該両側辺18b、18cの各側端部から上方へ延設された接続端子18d、18dとから主として構成されている。
【0031】
前記第2シャント抵抗器18は、抵抗器本体18aの下面がバスバー組立体13の上面に当接配置されていると共に、一側辺18bの外面が、モータ駆動電流が通るほぼL字形状の銅製の導電片27の外面に接合され、前記他側辺18cの外面が伝熱部材22に接合されている。
【0032】
また、前記各接続端子18d、18dは、前記制御基板14の対応する接続端子孔14aに挿通されて、該各接続端子孔14aに半田付けにより固定されるようになっている。
【0033】
前記伝熱部材22は、銅材によってほぼコ字形状に折曲形成されて、底辺部22aと該底辺部22aの両側縁から立ち上がった両辺部22b、22cとからなり、その幅が前記第2シャント抵抗器18の幅とほぼ同じ大きさに設定されている。また、前記一辺部22bの外面が前記第2シャント抵抗器18の他側辺18cの外面に溶接などによって接合されていると共に、前記底辺部22aの底面が前記ハウジング本体3の突起部9の上面に前記放熱シート10を介して当接している。
【0034】
さらに、前記バスバー組立体13の上面13bの四隅部には、前記制御基板14を支持する4本のスナップフィット構造の係止片23が互いに所定間隔をもって立設されている。この各係止片23は、バスバー組立体13と同じ樹脂材によって細長い板状に形成されて、上端部の内側には制御基板の両側縁を弾性的に係止する係止爪23aがそれぞれ形成されている。
【0035】
前記制御基板14は、合成樹脂材によってほぼ正方形状の薄板状に形成され、両側縁が前記各係止爪23aで弾性的に係止固定された際に、前記バスバー組立体13の上面13bとの間にそれぞれの電子部品が干渉しない程度の僅かな隙間を有するようになっている。
【0036】
この制御基板14は、マイクロコンピュータを含む複数の電子部品が実装されていると共に、上面に制御回路の一部である配電パターンが形成されている。そして、前記電動モータの駆動回路であるインバータの駆動を制御するための制御信号がこの制御基板14で作られるようになっている。また、この制御基板14の一側部や他側部にそれぞれ形成された複数の接続端子孔14aには、バスバー組立体13の前記第2シャント抵抗器18の各接続端子18d、18dの他に他の電子部品の各接続端子20が半田付けによって接続されている。
【0037】
〔組付手順〕
以下、電子制御装置の組付手順について説明する。まず、予め前記パワー電子回路とフィルタ電子回路の配電パターンをモジュール化して前記バスバー組立体13を一体的に形成すると共に、該バスバー組立体13に前記電解コンデンサや第1シャント抵抗及び第2シャント抵抗器18、半導体スイッチ素子などの複数の電子部品を実装しておく。また、前記制御基板14の配電パターンや各種の電子部品を実装しておく。
【0038】
具体的には、前記バスバー組立体13に対して前記コモンコイルなどをTIG溶接などの溶接手法によって固定すると共に、各アルミ電解コンデンサを、接着剤を介して前記筒状部に嵌合固定する。また、各半導体スイッチ素子を嵌合溝内に嵌合保持させ、また、第2シャンク抵抗器18の一側辺18bを導電片27の一側に立ち上がり折曲片27aに接合させると共に、他側辺18cを、前記伝熱部材22の一辺部22bの外面に接合させるなど、各種の電子部品を固定する。
【0039】
その後、前記バスバー組立体13を、ハウジング本体3の凹溝3aのボス部3c上面に位置決めしながら載置する。このとき、図2及び図3に示すように、前記伝熱部材22の底辺部22aの底面を突起部9の上端部9a上面の放熱シート10の上面に当接配置する。
【0040】
同時に、バスバー組立体13の各半導体スイッチ素子側を前記各放熱シートに位置決めしつつ当接させると共に、前記各アルミ電解コンデンサや電源用リレーなどを、前記収容凹部6や空間部15を利用してハウジング本体3の上面3aに所定隙間をもって対向配置させる。これによって、バスバー組立体13の位置決めが行われる。
【0041】
その後、前記ハウジング本体3の各ボス部3c上に固定用ビスによってバスバー組立体13をハウジング本体3に固定する。これによって、ハウジング本体3にバスバー組立体13を組み付けることができると共に、前記伝熱部材22を放熱シート10上面に確実に当接させることができる。
【0042】
なお、同時に、前記各半導体スイッチ素子をバスバー組立体13の嵌合溝の底面と放熱シートとの間で挟持状態に安定かつ確実に保持することができる。
【0043】
次に、前記制御基板14をバスバー組立体13の上方から前記各係止片23に位置決めしながらこれに沿って下方へ押し込む。これによって、各係止片23aが、外方へ弾性変形しつつ制御基板14の両側縁が各係止爪23aに係止した時点で原状位置に弾性復帰してそれぞれに係止すると共に、バスバー組立体13に対して重合状態に配置される。
【0044】
このとき、前記バスバー組立体13の各接続端子18d、20…は、制御基板14の各端子接続孔14aに挿通されている。その後、前記各端子接続孔14aから突出した各接続端子18d、20を半田付けによって前記各端子接続孔14aに接続する。
【0045】
続いて、前記バスバー組立体13の嵌着溝8内に予め環状シール部材を嵌着保持しておき、その後、カバー部材4を位置決めしつつ前記シール部材を介して被せ、前記4本の固定ボルトを、カバー部材4の各ボルト挿通孔12を挿通させると共に、ハウジング本体3の各雌ねじ孔7を介して共締め固定する。
【0046】
これによって、ハウジング本体3とカバー部材4との間に、バスバー組立体13と制御基板14を内部に収容した電子制御装置のユニット体の組み付けが完了する。
【0047】
以上のように、本実施形態では、パワー電子回路とフィルタ電子回路の配電パターンなどを一体的にモジュール化して薄型のバスバー組立体13として構成したため、電子制御装置の上下方向の高さを十分に小さくすることが可能になり、装置全体の小型化(薄型化)が図れると共に、軽量化も図れる。また、装置の小型化に伴ってエンジンルーム内でのレイアウトの自由度が向上すると共に、他の機器や配管との干渉を回避できる。
【0048】
すなわち、前記電動モータとこれを制御する電子制御装置が搭載配置されるエンジンルーム内には、搭載位置の周辺に他の作動装置や各種配管などが配設されていることから、これらとの干渉を回避するために、前記電子制御装置の搭載スペースが制限されてしまう。
【0049】
そこで、本実施形態の電子制御装置では、前述のように、装置全体の小型化(薄型化)が図れることから、エンジンルーム内でのレイアウトの自由度の向上などが図れる。
【0050】
また、本実施形態では、前記第2シャント抵抗器18の発熱を、前記伝達部材22を介して放熱材であるハウジング本体3に伝達させることができるので、従来技術にように高価な金属基板を廃止して、つまり、従来技術のように高価な金属基板を廃止して既存のハウジング本体3をヒートシンクとして利用するようにしたため、コストの低減化が図れる。
【0051】
また、前記金属基板を廃止することによって、従来技術にように金属基板の接続端子と他の基板の接続端子とを接続するための中継端子などの部品も不要になることから、この点でもコストの低減化が図れる。
【0052】
さらに、前記第2シャント抵抗器18の発熱を、ハウジング本体3に伝達できるので、放熱性を向上させることができる。このため、前記第2シャント抵抗器18の熱による電流検出精度の低下を抑制することができる。
【0053】
すなわち、第2シャント抵抗器18の発熱は、図5の2つの折れ線グラフで示すように、前記ハウジング本体3による放熱が無い場合をみると、小四角の連続線で示すように、前記電動モータの駆動開始時点から約130秒経過後には約70℃まで上昇してしまう。
【0054】
これに対して、本実施形態にように、ハウジング本体3をヒートシンクとして利用して放熱させた場合は、小三角の連続線で示すように、駆動後、直ちに約10℃まで上昇するが、その後の大きな上昇がなく約130秒経過しても約20℃までしか上昇しないことがわかった。このように、第2シャント抵抗器18の発熱を、ハウジング本体3をヒートシンクとして利用して放熱させることによって効果的な放熱性が得られることから、前記第2シャント抵抗18の電流検出精度の低下を確実に抑制することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態では、第2シャント抵抗器18の外面と他辺部18cの外面を前記伝熱部材22と接合したことにより、第2シャント抵抗器18の抵抗器本体18aに伝熱部材22が直接接触しないので、該抵抗器本体18aの抵抗値が変化して電流検出機能の低下を抑制することが可能になる。
【0056】
前記抵抗器本体18aの抵抗値が変化する1つの原因としては、シャント抵抗器18を放熱材に放熱する場合、放熱材(本実施形態では伝熱部材22あるいはハウジング本体3が相当)は導電性のある金属材料が使用されることが多く、放熱材と前記抵抗器本体18aの間を絶縁するために絶縁部材を介する必要があることが挙げられる。
【0057】
前記絶縁部材の材料は、多少の水分を吸着するものが多く、水分を吸着することによって前記抵抗器本体18aと絶縁材料の間の水分量(湿度)が変化することが前記抵抗器本体18aの抵抗値変化、すなわち、電流検出精度の低下の原因と考えられる。
【0058】
本実施形態では、前述のように、前記第2シャント抵抗器18の両側辺部18b、18cの一方と前記伝熱部材22とを接触させたことにより、前記抵抗器本体18aに直接接触することがないため、伝熱部材22との接触が前記抵抗器本体18aの抵抗値に影響を与えるのを回避することができ、この結果、電流検出精度の低下を抑制することができる。
【0059】
また、軸方向に長いアルミ電解コンデンサなどを、ハウジング本体3の収容凹部6内に収容したことから、前記装置の薄型化を促進できる。
【0060】
また、バスバー組立体13や制御基板14の形状が単純な矩形状であり、ハウジング本体3やカバー部材4も比較的単純な形状であるから、少数の固定ボルトによる固定工数も少なくて済み、該固定作業も容易になる。
【0061】
前記制御基板14を、バスバー組立体13に対して各係止片23を利用してワンタッチで係止させることができるので、この組み付け作業も容易である。
【0062】
また、本実施形態では、ハウジング本体3の突起部9の上面に放熱グリスを充填することなく、放熱シート10を用いたため、これらの接着作業が容易である。
〔第2実施形態〕
図6及び図7は第2実施形態を示し、バスバー組立体13の第2シャント抵抗器18や伝熱部材22などの配置構成は第1実施形態と同じであるが、ヒートシンクをハウジング本体3に代えてカバー部材4としたものである。
【0063】
すなわち、放熱材としてのアルミニウム合金材からなるカバー部材4は、図7に示すように、下面4dの前記伝熱部材22と対応した所定位置に角柱状のカバー側突起部24が一体に設けられていると共に、該カバー側突起部24の下面に放熱シート25が接着されている。
【0064】
前記カバー側突起部24は、カバー部材4の鋳造時に一体に設けられ、下端部24aの幅W長さが前記伝熱部材22の両辺部22b、22c間の隙間長さよりも短く形成されて、両辺部22b、22cの間に嵌入できるようになっている。
【0065】
そして、図6に示すように、前述した構成部品の組付時において、カバー部材4を前記ハウジング本体3に被せた状態で、前記カバー側突起部24の下端部24a下面に予め接着された放熱シート25の下面が前記伝熱部材22の底辺部22aの上面に当接するようになっている。
【0066】
したがって、この第2実施形態も前述した第1実施形態と同様な作用効果が得られるが、特に、上側のカバー部材4をヒートシンクとして利用したことから、伝熱部材22を介して第2シャント抵抗器18からの伝熱性が向上する。この結果、第2シャント抵抗器18の放熱効率が向上する。
〔第3実施形態〕
図8は第3実施形態を示し、基本構造は第1実施形態と同じであるが異なるところは、前記ハウジング本体3の突起部9を、伝熱部材22の他辺部22cの外側面に位置するようにハウジング本体3に一体に設けたものである。
【0067】
前記突起部9は、角柱状に形成されてハウジング本体3の凹溝3a上面から立設されていると共に一側面に放熱シート10が上下方向に沿って接着されている。
【0068】
そして、バスバー組立体13をハウジング本体3に組み付けた際に、前記放熱シート10が伝熱部材22の他辺部22cの外側面に側方から当接するようになっている。
【0069】
したがって、この第3実施形態によれば、第1実施形態と同様な作用効果が得られることは勿論のこと、突起部9の放熱シート10が伝熱部材22の他辺部22cの外側面側から当接するので、その位置決めが比較的容易になる。
〔第4実施形態〕
図9は第4実施形態を示し、第1実施形態の構成を前提して、突起部9の側方位置にさらに第2突起部26を、前記ハウジング本体3に一体に設けたものである。
【0070】
この第2突起部26は、同じく角柱状に形成されて、ハウジング本体3の前記第2シャント抵抗器18の一側辺18bに接合された銅製の前記導電片としての第2伝熱部材27の下面に対応した位置に突設されていると共に、上端部26aの上面には第2放熱シート28が接着されている。
【0071】
そして、バスバー組立体13をハウジング本体3に組み付けした際に、第1放熱シート10が第1伝熱部材22の下面に当接すると同時に、前記第2放熱シート28が第2伝熱部材27の底辺部27aの下面に当接するようになっている。
【0072】
したがって、この実施形態では、第2シャント抵抗器18の発熱を、第1、第2突起部9、26の2つの部位を利用して両側からハウジング本体3に二重に伝達させることができるので、第2シャント抵抗器18の発熱をさらに効果的に放熱させることが可能になる。
〔第5実施形態〕
図10は第5実施形態を示し、前記第2実施形態の構造を前提して、第4実施形態の第2突起部26を組み合わせたものである。
【0073】
つまり、ハウジング本体3とカバー部材4の両方をヒートシンクとして利用したもので、カバー側突起部24とハウジング本体3側の第2突起部26によって第1伝熱部材22と第2伝熱部材27を上下方向から当接させるようになっており、前記各実施形態の符番を利用して具体的な説明は省略する。
【0074】
したがって、この実施形態によれば、第2シャント抵抗器18の発熱を、カバー側突起部24とハウジング本体3側の第2突起部26と各放熱シート25、28を介してハウジング本体3とカバー部材4の両方から放熱させることができる。これによって、第2シャント抵抗器18の放熱効率がさらに向上する。他の作用効果は、前述した第1実施形態と同様である。
【0075】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、電流検出抵抗器の対象を第2シャント抵抗器18としたが、第1シャント抵抗器であってもよい。
【0076】
また、前記第2シャント抵抗器18に対して各突起部9、24、26を、各放熱シート10、25、28を介して直接的に接触させることも可能である。
【0077】
さらに、例えば、ハウジング1やバスバー組立体13の形状や構造を任意に変更することも可能である。また、電動パワーステアリング装置以外の駆動機器類の駆動制御装置に適用することも可能である。
【0078】
また、前記ハウジング本体3やカバー部材4の一方を放熱材ではない合成樹脂材によって形成することも可能である。
【0079】
なお、前記各実施形態では、バスバー組立体13の上面13b上に前記シャント抵抗器18を配置したが、下面13aを外面として、ここに配置することも可能である。
【0080】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕前記放熱材であるハウジング本体あるいはカバー部材の内面に突起部を一体に設け、該突起部の先端を、前記伝熱部材と絶縁部材を介して前記電流検出抵抗器に当接させたことを特徴とする請求項3に記載の電動モータの電子制御装置。
【0081】
この発明によれば、電流検出抵抗器で発生した熱は、突起部を介してハウジングあるいはカバー部材に伝達されることから、電流検出抵抗器を吸熱することができる。この結果、電流検出抵抗器からの放熱効果が大きくなる。
〔請求項b〕前記ハウジングとカバー部材の対向内面にそれぞれ突起部を一体に設け、該両突起部の対向する先端面を、各絶縁部材を介して前記各伝熱部材に当接させたことを特徴とする請求項3に記載の電動モータの電子制御装置。
【0082】
この発明によれば、前記伝熱部材を、対向する突起部によって互いに当接させるようにしたため、電流検出抵抗器の放熱効率をさらに向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0083】
1…ハウジング
2…電子制御部品
3…ハウジング本体
3a…凹溝
4…カバー部材
9,24,26…突起部
10、25、28…放熱シート(絶縁部材)
13…バスバー組立体
14…制御基板(制御回路)
15…空間部
18…第2シャント抵抗器
19…配電パターン
20、21…接続端子
22、27…伝熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータに電力を供給するパワー電子回路と、通電時の電磁ノイズを除去するフィルタ電子回路と、前記電動モータの駆動を制御する制御回路と、を備えた電動モータの電子制御装置であって、
前記パワー電子回路とフィルタ電子回路のそれぞれの配電パターンを、樹脂材によってモールドされたバスバー組立体に一体に形成すると共に、
前記バスバー組立体の外面に、前記電動モータの駆動電流を検出する電流検出抵抗器を設け、
該電流検出抵抗器を、伝熱部材を介して放熱材に接触させたことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記電流検出抵抗器は、抵抗器本体と該抵抗器本体に一体的に結合された立ち上がり伝熱部とを有し、該伝熱部に前記伝熱部材を接触させたことを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記電流検出抵抗器は、抵抗器本体と該抵抗器本体に一体的に結合された立ち上がり伝熱部とを有し、該伝熱部に前記伝熱部材を接触させると共に、該伝熱部材を、絶縁部材を介して前記放熱材に接触させたことを特徴とする請求項1に記載の電動モータの電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−210068(P2012−210068A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73861(P2011−73861)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】