説明

電動リニアアクチュエータ

【課題】部品点数を削減し、簡素な構造による軽量化と共に、組立工数を軽減して低コスト化を図った電動リニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】減速機構6とボールねじ機構8がブラケット2に組み付けられ、このブラケット2にカップ状のカバー21が着脱可能に装着され、このカバー21が、熱可塑性の合成樹脂で射出成形によって形成され、開口端部に径方向に突出した係止部22を備えると共に、ブラケットに環状溝23が形成され、この環状溝23にカバー21の係止部22が係止され、当該カバー21が弾性変形した状態で装着され、少なくともボールねじ機構8が外部から密封されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般産業用の電動機、自動車等の駆動部に使用されるボールねじ機構を備えた電動リニアアクチュエータ、詳しくは、自動車のトランスミッションやパーキングブレーキ等で、電動モータからの回転入力を、ボールねじ機構を介して駆動軸の直線運動に変換する電動リニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種駆動部に使用される電動リニアアクチュエータにおいて、電動モータの回転運動を軸方向の直線運動に変換する機構として、台形ねじあるいはラックアンドピニオン等の歯車機構が一般的に使用されている。これらの変換機構は、滑り接触部を伴うため動力損失が大きく、電動モータの大型化や消費電力の増大を余儀なくされている。そのため、より効率的なアクチュエータとしてボールねじ機構が採用されるようになってきた。
【0003】
従来の電動リニアアクチュエータとしては、例えば、ハウジングに支持された電動モータにより、ボールねじを構成するボールねじ軸を回転駆動自在とし、このボールねじ軸を回転駆動することによってナットに結合された出力部材を軸方向に変位可能としている。ボールねじ機構は、摩擦が非常に低く、出力部材側に作用するスラスト荷重によって簡単にボールねじ軸が回転してしまうので、電動モータが停止時に出力部材を位置保持する必要がある。
【0004】
そこで、例えば、電動モータにブレーキ手段を設けたり、あるいは伝達手段としてウオームギアのような低効率なものを設けることがなされているが、その代表的なものとして、図4に示すような電動リニアアクチュエータが知られている。この電動リニアアクチュエータ50は、回転運動を直線運動に変換するボールねじ51を備えたアクチュエータ本体52と、電動モータ53の回転運動をアクチュエータ本体52に伝達する歯車減速機構54と、歯車減速機構54を構成する第1歯車55に係合してアクチュエータ本体52を位置保持する位置保持機構56とを備えている。
【0005】
ボールねじ51は、外周面に螺旋状のねじ溝57aが形成され、出力軸としてのねじ軸57と、このねじ軸57に外嵌され、内周面に螺旋状のねじ溝58aが形成されたナット58と、対向する両ねじ溝57a、58aによって形成された転動路に転動自在に収容された多数のボール59とを備えている。
【0006】
アクチュエータ本体52は、ハウジング60の内周に、ナット58が一対の玉軸受61、62を介して回転自在に支持されると共に、ねじ軸57が、ハウジング60に対して相対回転不能で、かつ軸方向に移動自在に支持されている。そして、ナット58が歯車減速機構54を介して回転駆動されることにより、ねじ軸57が直線運動に変換される。
【0007】
歯車減速機構54は、電動モータ53のモータ軸53aに固定された小径の平歯車からなる第1歯車55と、この第1歯車55に噛合し、ナット58の外周に一体に形成された大径の平歯車からなる第2歯車63とから構成されている。
【0008】
位置保持機構56は、第1歯車55に対して係脱自在に設けられているロック部材としてのシャフト64と、このシャフト64を第1歯車55に対して係脱する方向に駆動する駆動手段としてのソレノイド65とを備えている。シャフト64は棒状をなし、ソレノイド65によって直線駆動され、その先端部が受部66に係脱するようになっている。このように、ソレノイド65を制御することにより、シャフト64が第1歯車55に係合して回転が阻止されるので、振動荷重が作用した場合においても、係合面が滑ることなく安定してアクチュエータ本体52のねじ軸57を位置保持することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−156416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
然しながら、こうした従来の電動リニアアクチュエータ50では、その使用箇所によっては、外部から泥水やオイルの浸入や、内部に充填されたグリース飛散防止のため、ボールねじ51等の駆動部品は、ハウジング60に内蔵されている。特に、この種の第1歯車55と第2歯車63の二段以上の歯車で構成された歯車減速機構54を備えた電動リニアアクチュエータ50では、組立性の面から、二分割のハウジング60構造になっている。
【0011】
この場合、加工コストアップだけでなく、ハウジング60の締結による部品点数増加や組立工数増加によるコストアップ、あるいは、ハウジング60の質量アップ等の課題がある。
【0012】
本発明は、こうした従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、部品点数を削減し、簡素な構造による軽量化と共に、組立工数を軽減して低コスト化を図った電動リニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、円板状のブラケットと、このブラケットに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ブラケットに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ブラケットに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記減速機構とボールねじ機構が前記ブラケットに組み付けられると共に、このブラケットにカップ状のカバーが着脱可能に装着され、前記ボールねじ機構が当該カバーによって外部から密封されている。
【0014】
このように、円板状のブラケットと、このブラケットに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、ブラケットに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、駆動軸と同軸状に一体化されて外周にナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、ブラケットに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、減速機構とボールねじ機構がブラケットに組み付けられると共に、このブラケットにカップ状のカバーが着脱可能に装着され、ボールねじ機構が当該カバーによって外部から密封されているので、ボールねじ機構の内部に充填されたグリースの外部への漏洩と、外部から泥水やオイル等が浸入するのを確実に防止することができ、駆動部品が二分割されたハウジングに装着されている従来に比べ、ハウジングの締結による部品点数増加や組立工数増加によるコストアップ、あるいは、ハウジングの質量アップを抑えることができ、部品点数を削減し、簡素な構造による軽量化と共に、組立工数を軽減して低コスト化を図った電動リニアアクチュエータを提供することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明のように、前記電動モータが前記カバーによって外部から密封されていても良い。
【0016】
好ましくは、請求項3に記載の発明のように、前記カバーが、熱可塑性の合成樹脂で射出成形によって形成され、開口端部に径方向に突出した係止部を備えると共に、前記ブラケットに環状溝が形成され、この環状溝に前記カバーの係止部が係止され、当該カバーが弾性変形した状態で装着されていれば、カバーをワンタッチでブラケットに装着することができ、部品点数増加や組立工数増加によるコストアップ、あるいは、ハウジングの質量アップを抑えることができ、部品点数を削減し、簡素な構造による軽量化と共に、組立工数を軽減して低コスト化を図ることができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明のように、前記係止部が、周方向に少なくとも3個形成されていれば、所望の引抜耐力を確保することができ、カバーの着脱性が向上する。
【0018】
また、請求項5に記載の発明のように、前記ブラケットが、前記減速機構を構成する入力歯車を収容する第1の取付穴と、前記ボールねじ機構を構成するナットを収容する第2の取付穴を備え、この第2の取付穴に前記支持軸受が装着されていれば、軽量・コンパクト化を図ることができる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明のように、前記ブラケットの両端面が平坦に形成され、一方の端面が相手取付部品の取付面となり、密着した状態で接合されると共に、他方の端面に前記カバーが装着されていれば、構造が簡素になって軽量化を図ることができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明のように、前記ブラケットがアルミ合金で形成されていれば、軽量化を図ることができる。
【0021】
また、請求項8に記載の発明のように、前記電動モータとボールねじ機構の組立挿入方向が同じ方向に設定されていれば、組立作業を簡便化することができ、組立作業性を向上させることができる。
【0022】
また、請求項9に記載の発明のように、前記ナットの外周にキーを介して前記減速機構を構成する出力歯車が一体に固定されると共に、前記ナットの一端部にフランジが形成され、このフランジと前記出力歯車によって前記支持軸受が挟持された状態で外嵌固定されていれば、ナットを単一の支持軸受によってブラケットに対して、回転自在に、かつ軸方向移動不可に安定して支承することができる。
【0023】
好ましくは、請求項10に記載の発明のように、前記ナットのフランジの位置が前記入力歯車と電動モータのサブアッシーと同じ方向に設定されていれば、電動モータとボールねじ機構の組立挿入方向を同じ方向にすることができ、組立作業を簡便化することができる。
【0024】
また、請求項11に記載の発明のように、前記支持軸受が4点接触玉軸受で構成されていれば、軸方向のガタを可及的に規制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る電動リニアアクチュエータは、円板状のブラケットと、このブラケットに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ブラケットに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ブラケットに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記減速機構とボールねじ機構が前記ブラケットに組み付けられると共に、このブラケットにカップ状のカバーが着脱可能に装着され、前記ボールねじ機構が当該カバーによって外部から密封されているので、ボールねじ機構の内部に充填されたグリースの外部への漏洩と、外部から泥水やオイル等が浸入するのを確実に防止することができ、駆動部品が二分割されたハウジングに装着されている従来に比べ、ハウジングの締結による部品点数増加や組立工数増加によるコストアップ、あるいは、ハウジングの質量アップを抑えることができ、部品点数を削減し、簡素な構造による軽量化と共に、組立工数を軽減して低コスト化を図った電動リニアアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本発明に係る電動リニアアクチュエータの第1の実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)の樹脂カバーの装着部を示す要部拡大図である。
【図2】図1のボールねじ機構を示す縦断面図である。
【図3】(a)は、本発明に係る電動リニアアクチュエータの第2の実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)の樹脂カバーの装着部を示す要部拡大図である。
【図4】従来の電動リニアアクチュエータを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
アルミ合金製の円板状のブラケットと、このブラケットに取り付けられた電動モータと、この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、このボールねじ機構が、前記ブラケットに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ブラケットに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、前記減速機構とボールねじ機構が前記ブラケットに組み付けられ、このブラケットにカップ状のカバーが着脱可能に装着され、このカバーが、熱可塑性の合成樹脂で射出成形によって形成され、開口端部に径方向に突出した係止部を備えると共に、前記ブラケットに環状溝が形成され、この環状溝に前記カバーの係止部が係止され、当該カバーが弾性変形した状態で装着され、少なくとも前記ボールねじ機構が外部から密封されている。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る電動リニアアクチュエータの第1の実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)の樹脂カバーの装着部を示す要部拡大図、図2は、図1のボールねじ機構を示す縦断面図である。
【0029】
この電動リニアアクチュエータ1は、図1(a)に示すように、A6063TEやADC12等のアルミ合金からなるブラケット2と、このブラケット2に取り付けられた電動モータ3と、この電動モータ3のモータ軸3aに取付けられた入力歯車4と、この入力歯車4に噛合する出力歯車5とからなる減速機構6と、この減速機構6を介して電動モータ3の回転運動を駆動軸7の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構8を備えている。
【0030】
ブラケット2は円板状に形成され、入力歯車4を収容する第1の取付穴2aと、ボールねじ機構8を構成するナット12を収容する第2の取付穴2bを備えている。第1の取付穴2aには電動モータ3が取り付けられると共に、第2の取付穴2bには、ナット12を回転自在に支承する支持軸受28が装着されている。ブラケット2の両端面は平坦に形成され、一方の端面2cは相手取付部品9の取付面となり、密着した状態で接合されている。
【0031】
電動モータ3のモータ軸3aは、その端部に平歯車からなる入力歯車3が圧入により相対回転不能に取り付けられ、平歯車からなる出力歯車5に噛合している。この出力歯車5は、後述するボールねじ機構8を構成するナット12にキー13を介して一体に固定されている。
【0032】
駆動軸7は、ボールねじ機構8を構成するねじ軸10と一体に構成され、相手取付部品9に装着されたオイルシール11により、回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されている。電動モータ3の回転トルクは、入力歯車4から出力歯車5によって減速されてナット12に伝達され、ボールねじ機構8によって駆動軸7の直線運動に変換される。
【0033】
ボールねじ機構8は、図2に拡大して示すように、ねじ軸10と、このねじ軸10にボール14を介して外挿されたナット12とを備えている。ねじ軸10は、外周に螺旋状のねじ溝10aが形成されている。一方、ナット12は、ねじ軸10に外挿されると共に、内周にねじ軸10のねじ溝10aに対応する螺旋状のねじ溝12aが形成されている。そして、これらねじ溝10a、12aとの間に多数のボール14が転動自在に収容されている。ナット12は、外周にキー溝15が形成され、このキー溝15に係止されたキー13を介して出力歯車5が一体に固定されると共に、止め輪16によって軸方向に位置決めされている。
【0034】
また、ナット12の一端部にはフランジ17が形成され、このフランジ17と出力歯車5によって挟持された状態で支持軸受18が外嵌固定されている。支持軸受18は、ブラケット2の第2の取付穴2bに装着され、止め輪19によって軸方向に位置決め固定されている。この支持軸受18を介して、ナット12がブラケット2に対して、回転自在に、かつ軸方向移動不可に支承されている(図1(a)参照)。支持軸受18は、密封型の深溝玉軸受でも良いが、ここでは、軸方向のガタを可及的に規制することができる4点接触玉軸受が好ましい。20は、ナット12のねじ溝12aを連結して循環部材を構成する駒部材で、この駒部材20によって多数のボール14が無限循環することができる。
【0035】
各ねじ溝10a、12aの断面形状は、サーキュラアーク形状であってもゴシックアーク形状であっても良いが、ここではボール14との接触角が大きくとれ、アキシアルすきまが小さく設定できるゴシックアーク形状に形成されている。これにより、軸方向荷重に対する剛性が高くなり、かつ振動の発生を抑制することができる。
【0036】
ナット12はSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、真空浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。これにより、熱処理後のスケール除去のためのバフ加工等を省略することができ、低コスト化を図ることができる。一方、ねじ軸10はS55C等の中炭素鋼あるいはSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、高周波焼入れ、あるいは浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0037】
また、本実施形態では、入力歯車4と電動モータ3のサブアッシーとナット12のフランジ17の位置を同じ方向に揃えることにより、電動モータ3とボールねじ機構8の組立挿入方向を同じ方向にし、組立作業を簡便化することができ、組立作業性を向上させることができる。
【0038】
ここで、図1(a)に示すように、ボールねじ機構8と電動モータ3等の駆動部品は全てブラケット2に組み付けられていると共に、これら駆動部品は、樹脂カバー21によって密封されている。この樹脂カバー21は、GF(グラス繊維)等の繊維状強化材が所定量充填されたPA(ポリアミド)66等の熱可塑性の合成樹脂で射出成形によって形成され、開口端部に内径側に突出した係止部22を備えている。なお、この係止部22は、全周に形成される環状突起に限らず、周方向に少なくとも3個形成されていれば良い。これにより、所望の引抜耐力を確保することができると共に、樹脂カバー21の着脱性が向上する。
【0039】
図1(b)に拡大して示すように、ブラケット2の外径面には環状溝23が形成され、この環状溝23に樹脂カバー21の係止部22が弾性変形した状態、所謂スナップフィット構造によって装着されている。このように、本実施形態では、駆動部品が円板状のブラッケト2に全て装着されていると共に、このブラケット2にカップ状の樹脂カバー21が着脱可能に装着され、駆動部品がこの樹脂カバー21によって外部から密封されているため、内部に充填されたグリースの外部への漏洩と、外部から泥水やオイル等が浸入するのを確実に防止することができる。さらに、樹脂カバー21をワンタッチでブラケット2に装着することができるため、駆動部品が二分割されたハウジングに装着されている従来に比べ、ハウジングの締結による部品点数増加や組立工数増加によるコストアップ、あるいは、ハウジングの質量アップを抑えることができ、部品点数を削減し、簡素な構造による軽量化と共に、組立工数を軽減して低コスト化を図った電動リニアアクチュエータを提供することができる。
【実施例2】
【0040】
図3(a)は、本発明に係る電動リニアアクチュエータの第2の実施形態を示す縦断面図、(b)は、(a)の樹脂カバーの装着部を示す要部拡大図である。なお、この実施形態は、前述したものと基本的には、樹脂カバーの構成が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
この電動リニアアクチュエータ24は、図3(a)に示すように、アルミ合金からなるブラケット25と、このブラケット25に取り付けられた電動モータ3と、この電動モータ3のモータ軸3aに取付けられた入力歯車4と、この入力歯車4に噛合する出力歯車5からなる減速機構6と、この減速機構6を介して電動モータの回転運動を駆動軸7の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構8とを備えている。
【0042】
ブラケット25は円板状に形成され、入力歯車4を収容する第1の取付穴2aと、ボールねじ機構8を構成するナット12を収容する第2の取付穴25aを備えている。この第2の取付穴25aには、ブラケット25に対してナット12を回転自在に支承する支持軸受18が装着されている。
【0043】
ここで、ボールねじ機構8と電動モータ3等の駆動部品は全てブラケット25に組み付けられていると共に、これら駆動部品のうちボールねじ機構8が、樹脂カバー26によって密封されている。この樹脂カバー26は、GF等の繊維状強化材が所定量充填されたPA66等の熱可塑性の合成樹脂で射出成形によって形成され、開口端部に外径側に突出した環状の係止部27を備えている。
【0044】
図3(b)に拡大して示すように、ブラケット25の第2の取付穴25aには環状溝28が形成され、この環状溝28に樹脂カバー26の係止部27が弾性変形した状態で装着されている。このように、本実施形態では、駆動部品が円板状のブラッケト25に全て装着されていると共に、ボールねじ機構8が樹脂カバー26によって外部から密封されているため、内部に充填されたグリースの外部への漏洩と、外部から泥水やオイル等が浸入するのを確実に防止することができる。さらに、樹脂カバー26をワンタッチでブラケット25に装着することができるため、前述した実施形態と同様、駆動部品が二分割されたハウジングに装着されている従来に比べ、ハウジングの締結による部品点数増加や組立工数増加によるコストアップ、あるいは、ハウジングの質量アップを抑えることができ、部品点数を削減し、簡素な構造による軽量化と共に、組立工数を軽減して低コスト化を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る電動リニアアクチュエータは、一般産業用の電動機、自動車等の駆動部に使用され、電動モータからの回転入力を、ボールねじ機構を介して駆動軸の直線運動に変換するボールねじ機構を備えた電動リニアアクチュエータに適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1、24 電動リニアアクチュエータ
2、25 ブラケット
2a 第1の取付穴
2b、25a 第2の取付穴
3 電動モータ
3a モータ軸
4 入力歯車
5 出力歯車
6 減速機構
7 駆動軸
8 ボールねじ機構
9 相手取付部材
10 ねじ軸
10a、12a ねじ溝
11 オイルシール
12 ナット
13 キー
14 ボール
15 キー溝
16、19 止め輪
17 フランジ
18 支持軸受
20 駒部材
21、26 樹脂カバー
22、27 係止部
23、28 環状溝
50 電動リニアアクチュエータ
51 ボールねじ
52 アクチュエータ本体
53 電動モータ
53a モータ軸
54 歯車減速機構
55 第1歯車
56 位置保持機構
57 ねじ軸
57a、58a ねじ溝
58 ナット
59 ボール
60 ハウジング
61、62 玉軸受
63 第2歯車
64 シャフト
65 ソレノイド
66 受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状のブラケットと、
このブラケットに取り付けられた電動モータと、
この電動モータの回転力をモータ軸を介して伝達する減速機構と、
この減速機構を介して前記電動モータの回転運動を駆動軸の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構とを備え、
このボールねじ機構が、前記ブラケットに装着された支持軸受を介して回転可能に、かつ軸方向移動不可に支持され、内周に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、
このナットに多数のボールを介して内挿され、前記駆動軸と同軸状に一体化されて外周に前記ナットのねじ溝に対応する螺旋状のねじ溝が形成され、前記ブラケットに対して回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されたねじ軸とで構成された電動リニアアクチュエータにおいて、
前記減速機構とボールねじ機構が前記ブラケットに組み付けられると共に、このブラケットにカップ状のカバーが前記ブラケットに着脱可能に装着され、前記ボールねじ機構が当該カバーによって外部から密封されていることを特徴とする電動リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記電動モータが前記カバーによって外部から密封されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記カバーが、熱可塑性の合成樹脂で射出成形によって形成され、開口端部に径方向に突出した係止部を備えると共に、前記ブラケットに環状溝が形成され、この環状溝に前記カバーの係止部が係止され、当該カバーが弾性変形した状態で装着されている請求項1または2に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記係止部が、周方向に少なくとも3個形成されている請求項3に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ブラケットが、前記減速機構を構成する入力歯車を収容する第1の取付穴と、前記ボールねじ機構を構成するナットを収容する第2の取付穴を備え、この第2の取付穴に前記支持軸受が装着されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記ブラケットの両端面が平坦に形成され、一方の端面が相手取付部品の取付面となり、密着した状態で接合されると共に、他方の端面に前記カバーが装着されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記ブラケットがアルミ合金で形成されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記電動モータとボールねじ機構の組立挿入方向が同じ方向に設定されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記ナットの外周にキーを介して前記減速機構を構成する出力歯車が一体に固定されると共に、前記ナットの一端部にフランジが形成され、このフランジと前記出力歯車によって前記支持軸受が挟持された状態で外嵌固定されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項10】
前記ナットのフランジの位置が前記入力歯車と電動モータのサブアッシーと同じ方向に設定されている請求項9に記載の電動リニアアクチュエータ。
【請求項11】
前記支持軸受が4点接触玉軸受で構成されている請求項1に記載の電動リニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−38846(P2013−38846A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170944(P2011−170944)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】