説明

電動機

【課題】冷却用空間内を流れる流体の偏流を抑制することができる冷却構造を備えた電動機を提供する。
【解決手段】ケース13の内部に周方向の略全体にわたって形成され、流体を流通可能な冷却用空間50は、流体が流入する入口60を有する第1冷却部51と、この第1冷却部51よりもケース13の軸方向の一方側に位置する第2冷却部52と、入口60に対してケース13の半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、第1冷却部51内の流体が合流するとともに第1冷却部51と第2冷却部52とを連通する第1合流部61と、この第1合流部61に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、第2冷却部52内の流体が合流する第2合流部62とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械、農業機械、工作機械などの産業機械、自動車などの自走車両には電動機が用いられている。このような産業機械では大電流が電動機に供給されるので、電動機はそのときの発熱を抑えるための冷却構造を備えている。例えば、特許文献1には、ケースの外周部分に周方向に沿って冷却水を循環させる冷却構造に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−259326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電動機では、冷却水を循環させる冷却用空間をケースの外周部分における周方向の全体にわたって形成してはいるが、冷却用空間内を流れる冷却水はそのときの成り行きで流れるので、冷却用空間内において冷却水の流れに偏りが生じる。このように偏流が生じる冷却構造においては冷却効果が必ずしも十分ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却用空間内を流れる流体の偏流を抑制することができる冷却構造を備えた電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動機は、ロータ(17)およびステータ(19)を収容する筒状のケース(13)を備えている。前記ケース(13)は、その内部に周方向の略全体にわたって形成され、流体を流通可能な冷却用空間(50)を備えている。前記冷却用空間(50)は、前記流体が流入する入口(60)を有し、周方向の略全体にわたって前記流体を流通可能な第1冷却部(51)と、この第1冷却部(51)よりも前記ケース(13)の軸方向の一方側に位置し、周方向の略全体にわたって流体を流通可能な第2冷却部(52)と、前記入口(60)に対して前記ケース(13)の半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、前記第1冷却部(51)内の前記流体が合流するとともに前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)とを連通する第1合流部(61)と、この第1合流部(61)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、前記第2冷却部(52)内の前記流体が合流する第2合流部(62)と、を含んでいる。
【0007】
この構成では、入口(60)から第1冷却部(51)内に流入した流体は、第1冷却部(51)の周方向の一方側と他方側に分岐して第1冷却部(51)を流れ、入口(60)に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられた第1合流部(61)を通って合流して第2冷却部(52)に流入し、再び第2冷却部(52)の周方向の一方側と他方側に分岐して第2冷却部(52)を流れ、第1合流部(61)に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられた第2合流部(62)において再び合流することになる。
【0008】
しかも、第1合流部(61)は入口(60)に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられ、第2合流部(62)は第1合流部(61)に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられている。したがって、周方向の一方側と他方側の通路の長さがほぼ同程度となっている。したがって、第1冷却部(51)の周方向の一方側および他方側をそれぞれ流れるときの流体が受ける抵抗差を小さくし、第2冷却部(52)の周方向の一方側および他方側をそれぞれ流れるときの流体が受ける抵抗差を小さくすることができる。これにより、第1冷却部(51)および第2冷却部(52)において、周方向の一方側と他方側に分岐する流体の割合をほぼ同程度に制御することができる。
【0009】
このように本構成では、冷却用空間(50)を軸方向に分割しつつ冷却用空間(50)の周方向の略全体にわたって流体を強制的に流す冷却構造を採用することにより、冷却用空間(50)内を流れる流体における軸方向および周方向の両方の流れを制御することができる。これにより、冷却用空間(50)内の偏流を効果的に抑制することができるので、冷却効果を高めて電動機の発熱による電動機の温度上昇を抑制することができる。
【0010】
前記第2合流部(62)は、前記冷却用空間(50)内の前記流体を外部に排出するために前記ケース(13)に設けられた出口である。
【0011】
この構成では、入口(60)と出口とを近接した位置に設けることができるので、流体用の配管を入口(60)および出口に配設しやすくなる。また、例えば軸方向が略水平になるように電動機を配置して使用する場合には入口(60)と出口をともに上方に配置することができるので、冷却用空間(50)内に溜まることのある空気を排出しやすくなる。
【0012】
前記冷却用空間(50)は、前記第1合流部(61)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域で、かつ、前記入口(60)と前記出口との間の位置に、前記第1合流部(61)よりも開口面積が小さく、前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)を連通する空気抜き用の連通部(25)を有しており、前記入口(60)、前記出口及び前記連通部(25)が上になる姿勢で配置されており、前記第1冷却部(51)内の空気が、前記連通部(25)によって前記流体の前記出口側に案内され、前記第2冷却部(52)内を流れる流体とともに前記出口から排出される。
【0013】
この構成では、第2合流部(62)が出口であることに加え、さらに前記連通部(25)を有しているので、上記したように軸方向が水平になるように電動機を配置し、入口(60)と出口をともに上方に配置した状態で使用する場合に、第1冷却部(51)内に溜まった空気を、連通部(25)を通じて第2冷却部(52)側に移動させて出口から排出させることが容易になる。また、連通部(25)は第1合流部(61)よりも開口面積が小さいので、連通部(25)を通る際に流体が受ける抵抗は第1合流部(61)を通る際に受ける抵抗よりも大きくなる。これにより、流体が連通部(25)を通じて第1冷却部(51)から第2冷却部(52)に近道して流れるのを抑制し、流体の大部分を第1冷却部(51)の周方向の一方側と他方側に沿って流すことができるので、冷却効果が低下するのを抑制できる。
【0014】
第1冷却部(51)と第2冷却部(52)を設ける手段としては、例えば外筒部(23)を2つの部材で構成し、一方の部材を用いて内筒部(21)とともに第1冷却部(51)を形成し、他方の部材を用いて内筒部(21)とともに第2冷却部(52)を形成するようにしてもよいが、次のような構成であるのが好ましい。
【0015】
すなわち、前記ケース(13)は、前記ロータ(17)および前記ステータ(19)を収容する筒状の内筒部(21)と、この内筒部(21)の外側に配置されるとともに前記内筒部(21)に固定されて前記内筒部(21)との間に前記冷却用空間(50)を形成する筒状の外筒部(23)と、前記内筒部(21)と前記外筒部(23)との間に前記周方向に沿って設けられ、前記冷却用空間(50)を前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)に分割する仕切り(81)と、を備えているのが好ましい。
【0016】
この構成のように内筒部(21)と外筒部(23)との間に周方向に沿って仕切り(81)を設けることにより冷却用空間(50)を第1冷却部(51)と第2冷却部(52)に分割するようにすれば、外筒部(23)を別部材ではなく一つの部材により構成することができる。これにより、外筒部(23)の構造を簡略化できる。
【0017】
前記仕切り(81)は、前記入口(60)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に、前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)を連通し、前記第1合流部(61)の一部または全部を構成する開口部(71)を有しているのが好ましい。
【0018】
この構成では、仕切り(81)に設けられた開口部(71)が第1合流部(61)の一部または全部を構成している。このように内筒部(21)と外筒部(23)との間に上記のような仕切り(81)が設けられている場合には、仕切り(81)に開口部(71)を形成するという簡単な構造を採用するだけで第1合流部の一部または全部を構成することができるので、製造工程を簡略化できる。
【0019】
前記外筒部(23)は前記内筒部(21)と別体で構成されているときには、例えば外筒部(23)と内筒部(21)の間に上記した仕切りを形成する場合、内筒部(21)の外面などに後述する凹凸部を形成する場合などにおいて加工が容易になる。
【0020】
前記内筒部(21)は、その外面に周方向の略全体にわって設けられた凹凸部(27)を有しているときには、流体と内筒部(21)との接触面積を増大させて冷却効率を向上させることができる。
【0021】
前記凹凸部(27)が前記周方向に延びる複数の溝(27)であるときには、溝(27)の形成方向は冷却部における流体の流れる方向に沿った方向となるので、凹凸部(27)が流体を周方向に流れやすく案内して流体を円滑に流すことができる。
【0022】
前記流体が絶縁性の油であるときには、水などの流体を使用した場合と比較して漏電などのおそれを低減できる。
【0023】
電動機が油圧機器に用いられる場合には、前記絶縁性の油が前記油圧機器の作動油であるのが好ましい。
【0024】
この構成では、絶縁性の油が油圧機器の作動油であるので、作動油の一部を冷却用空間(50)に流入する流体として用いることができる。これにより、油圧機器の配管構造、タンク構造などを簡略化できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、冷却用空間を軸方向に分割して複数の冷却部を設けるとともに冷却用空間の周方向の略全体にわたって流体を強制的に流す冷却構造を採用することにより、冷却用空間内を流れる流体における軸方向および周方向の両方の流れを制御することができる。これにより、冷却用空間内の偏流を効果的に抑制することができるので、冷却効果を高めて電動機の発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態の電動機をシャフトの軸方向に切断した断面図である。
【図2】第1実施形態の内筒部、外筒部およびステータを示し、これらを軸方向に切断した断面図である。
【図3】(a)は、第1実施形態の電動機を入口側から見たときの内筒部の構造を示す斜視図であり、(b)は、この電動機を入口に対して半径方向に対向する側から見たときの内筒部の構造を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の電動機におけるケース、ステータなどの構造を示す斜視図である。
【図5】第1実施形態の電動機における冷却用空間の形状を示す斜視図である。
【図6】(a)は、第2形態の電動機を入口側から見たときの内筒部の構造を示す斜視図であり、(b)は、この電動機を入口に対して半径方向に対向する側から見たときの内筒部の構造を示す斜視図である。
【図7】(a)は、第3形態の電動機を入口側から見たときの内筒部の構造を示す斜視図であり、(b)は、この電動機を入口に対して半径方向に対向する側から見たときの内筒部の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態にかかる電動機11は、ケース13と、このケース13の軸方向に沿ってケース13に回転可能に支持されたシャフト15と、このシャフト15に取り付けられた円柱状のロータ17と、このロータ17に対向するステータ19とを備えている。
【0029】
図1および図2に示すように、ケース13は、筒状の内筒部21と、この内筒部21の外面を覆う筒状の外筒部23と、内筒部21における軸方向の両側の開口部をそれぞれ塞ぐ円盤部29および円盤部31とを含む。これらの内筒部21、外筒部23、円盤部29および円盤部31は別体で作製された後、一体化されている。
【0030】
円盤部29は内筒部21の第1方向D1側の開口部に嵌合されており、図略のボルトにより内筒部21の端部に固定されている。この円盤部29の内面には、シャフト15の一端部が配置される凹部が形成されている。この凹部の内周面とシャフト15の外周面との間には軸受け33が介在している。
【0031】
なお、図1のようにシャフト15の一端部が凹部内に配置される形態の他、例えば円盤部29にシャフト15を挿通可能な図略の貫通穴が設けられ、この貫通穴にシャフト15の一端部が挿通された形態であってもよい。この形態の場合には、シャフト15の両端部において回転運動を出力するようにできる。また、この形態の場合には、シャフト15の一方の端部を回転運動の入力側とし、他方の端部を回転運動の出力側とすることにより、出力側の回転運動を入力側がアシストするようにもできる。
【0032】
円盤部31は内筒部21の第2方向D2側の開口部に嵌合されており、図略のボルトにより内筒部21の端部に固定されている。この円盤部31の中央にはシャフト15の他端部が挿通される貫通口が形成されている。この貫通口の内周面とシャフト15の外周面との間には軸受け35が介在している。このようにしてシャフト15は回転可能に円盤部29,31に支持されている。なお、シャフト15の第2方向D2側の端部および円盤部31は、油圧機械などの産業機械の本体に取り付けられる。
【0033】
内筒部21の内面にはステータ19が周方向に沿って配設されている。このステータ19は、ロータ17の外周面と所定の隙間をあけてこの外周面と対向して配置されている。ステータ19は内筒部21の内面に熱的に接触するように取り付けられたコア19aとこのコア19aに巻回された巻線19bとを有している。
【0034】
図3(a),(b)に示すように、内筒部21は、流体の流路となる冷却用空間50を外筒部23とともに形成する胴部40と、この胴部40の第2方向D2側の端部に設けられたフランジ部41とを有している。このフランジ部41は、貫通穴43aを有する挿通部43と、電動機11に電力を供給する導線が挿通される貫通穴45a(図2参照)を有する配線部45とを有している。図4に示すように、内筒部21は、外筒部23の外面に設けられたナット部46のねじ穴と挿通部43の貫通穴43aとの位置を合わせた状態でボルト44を貫通穴43aに挿通しナット部46のねじ穴に螺合することによって外筒部23と連結される。配線部45の側部には配線部45の開口を塞ぐ平板47がねじ止めされている。
【0035】
図3(a),(b)に示すように、胴部40は、第1方向D1側の端部に設けられた外縁部37と、第2方向D2側の端部に設けられた外縁部39と、これらの外縁部37,39の間に設けられた仕切り81とを有している。外縁部37、外縁部39および仕切り81は、外筒部23の内面と周方向に沿って対向する対向面37a,39a,81aをそれぞれ有している。本実施形態では、これらの対向面37a,39a,81aの外径はほぼ同程度に調整されている。ただし、これらの対向面37a,39a,81aの外径は必ずしも同程度でなくてもよい。すなわち、対向面37aと外筒部23の内面との間が後述する下方側の溝49に配置されるOリングによりシールされ、対向面39aと外筒部23の内面との間が上方側の溝49に配置されるOリングによりシールされ、かつ、後述する第1冷却部51と第2冷却部52との間で流体の流れが仕切り81によってある程度制限されればよい。これらの条件を満たせば、例えば、対向面37a,39a,81aの外径がそれぞれ異なっていてもよく、外筒部23の内面が湾曲または軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0036】
図2および図4に示すように、外筒部23は、内筒部21の胴部40の外面を覆う円筒状の部材である。この外筒部23は、胴部40の外面を覆うとともにこの外面に対して所定の間隔をあけて配置されることにより胴部40との間に流体を流通可能な冷却用空間50を形成している。外筒部23の外面には冷却用空間50と連通する流体の入口60と出口62とが設けられている。
【0037】
外縁部37と仕切り81との間には、これらよりも外径の小さい第1凹部91が周方向に沿って形成されており、外縁部39と仕切り81との間には、これらよりも外径の小さい第2凹部92が周方向に沿って形成されている。これにより、外筒部23が内筒部21の外面を覆うように配置されると、外縁部37,39および仕切り81の対向面37a,39a,81aに外筒部23の内面が対向する一方で、第1凹部91および第2凹部92は外筒部23の内面との間にはそれぞれ空間が形成される。これらの空間は、冷却用空間50の一部を構成する第1冷却部51および第2冷却部52となる。このようにして冷却用空間50は、第1冷却部51と第2冷却部52とに軸方向に分割されている。
【0038】
また、外縁部37と第1凹部91との間には、周方向に沿ってOリング用の溝49が形成されており、外縁部39と第2凹部92との間には、周方向に沿ってOリング用の溝49が形成されている。これらの溝49にはそれぞれ図略のOリングが配置される。これにより、外筒部23と内筒部21の外縁部37,39との間の水密性が高められている。
【0039】
第1凹部91および第2凹部92には、半径方向の内方に凹む複数の溝27(第1実施形態では5つの溝27)が周方向に沿ってそれぞれ形成されている。各溝27は、互いに略平行であり、周方向の略全体にわたって形成されている。
【0040】
第1冷却部51は、各溝27の壁面を構成する環状の突起により半径方向の内方側の空間が複数に仕切られている一方で、半径方向の外方側の空間において連通している。また、第2冷却部52は、第1冷却部51と同様に、各溝27の壁面を構成する環状の突起により半径方向の内方側の空間が複数に仕切られている一方で、半径方向の外方側の空間は軸方向に連通している。このような構成を採用することによって、第1冷却部51および第2冷却部52において、半径方向の内方側では流体と内筒部21の外面との接触面積を増大させる一方で、半径方向の外方側では流体の流通抵抗が増大するのを抑制できる。これにより、冷却効率を向上させるとともに流体が流れる際の圧力損失を低減できる。
【0041】
図3(b)に示すように、仕切り81は、入口60に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置する開口部71を有している。この開口部71は、仕切り81の一部を切削加工して形成した半径方向の内側に凹む凹部である。開口部71は、外筒部23の内面とともに第1合流部61を構成する(図5参照)。
【0042】
この第1合流部61は、冷却用空間50の一部であり、入口60に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、第1冷却部51と第2冷却部52とを連通している。
【0043】
ここで、本実施形態において「入口60に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域」とは、具体的には次のことを意味している。まず、この領域の軸方向の位置は、第1冷却部51と第2冷却部52との間にある。次に、この領域の周方向の位置は次の通りいくつかの形態が例示できる。この周方向の位置の一例としては、冷却用空間50を平面視したとき(冷却用空間50をシャフト15の軸方向に向かって見たとき)に、円筒状の第1冷却部51の軸上の位置(シャフト15の回転軸上の位置)を中心として入口60に対して180°回転した対向位置を含み、この対向位置から周方向に所定の幅を持った領域が挙げられる。第1実施形態はこのタイプである。
【0044】
また、前記周方向の位置の他の例としては、前記対向位置を必ずしも含まなくてよく、前記対向位置から周方向の一方側と他方側にほぼ等距離の位置にある互いに離れた二つの領域を含んでいる。また、前記周方向の位置のさらに他の例としては、上記二つの例を組み合わせた領域が挙げられる。
【0045】
また、第1冷却部51内の流体の偏流を抑制する効果を高める観点から、第1合流部61の周方向の位置は、入口60の中心と前記対向位置とを結ぶ直線に対してほぼ線対称となるような形態であるのが好ましい。また、第1合流部61が周方向の一方側と他方側に延設される範囲は、偏流抑制の観点から、前記対向位置から±45°の領域に含まれているのがより好ましい。
【0046】
なお、上記した第1合流部61の配設領域に関する意味内容は、後述する第2〜4合流部についても同様である。すなわち、第1合流部61の上記説明における「入口60に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域」を、第2合流部62の場合には「第1合流部61に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域」と読み替え、第3合流部63の場合には「第2合流部62に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域」と読み替え、第4合流部64の場合には「第3合流部63に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域」と読み替える。
【0047】
図3(a)、図4および図5に示すように、冷却用空間50は、第1合流部61に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置する第2合流部62を有している。この第2合流部62は、第1実施形態では流体を外部に排出するための出口62として機能する。第2冷却部52内を周方向の一方側と他方側に分かれて流れてくる流体が、この出口62において合流する。この出口62は、入口60と周方向の同じ側に位置し、入口60と軸方向に並ぶ位置にある。
【0048】
また、図3(a)に示すように、仕切り81は、周方向の位置が入口60に近く、かつ、入口60と出口62との間の位置に開口部25aを有している。この開口部25aは、仕切り81の一部を切削加工して形成した半径方向の内側に凹む凹部である。この開口部25aは、外筒部23の内面とともに空気抜き用の連通部25を構成する(図5参照)。この連通部25は、冷却用空間50の一部であり、第1冷却部51と第2冷却部52とを連通させている。
【0049】
開口部71の周方向の開口長さは、用いる流体の粘度、流体の供給量などに応じて適宜設定すればよく特に限定されるものではないが、少なくとも開口部25aよりも大きくなるように設定される。すなわち、第1合流部61の開口面積は、第1冷却部51の周方向の一方側と他方側を通って流れる流体が合流して第2冷却部52側に円滑に流れるように流体にかかる抵抗などを考慮して設定される。一方、連通部25の開口面積は、第1冷却部51に滞留する空気を第2冷却部52側に移動させることができ、かつ、入口60から供給された流体が連通部25を通って第2冷却部52側に流れるのを極力抑えることができる程度に第1合流部61よりも十分に小さい値に設定されるのが好ましい。
【0050】
流体としては、水を用いることもできるが、例えば絶縁性の油を用いることによって漏電のおそれを低減することができる。絶縁性の油としては、電動機11が油圧機器に用いられるものである場合には、この油圧機器の作動油であるのが好ましい。
【0051】
次に、第1実施形態の電動機11の動作について説明する。まず、電動機11に電力を供給すると、ロータ17とステータ19との間に磁力が発生してシャフト15が回転する。この電動機11の駆動に伴って主にロータ17およびステータ19が発熱する。この発熱による電動機11の温度上昇を抑制するために、例えば冷却用の流体としての作動油が入口60を通じて冷却用空間50に供給される。
【0052】
入口60から供給された流体は、第1冷却部51の周方向の一方側と他方側に分岐して第1冷却部51内を流れる。本実施形態では、第1合流部61が前記対向位置に設けられているので、第1冷却部51の周方向の一方側と他方側に分岐して流れる流体の割合がほぼ均等になる。
【0053】
これらの分岐した流体は、第1合流部61において合流して第2冷却部52に流入する。このように分岐した流体を一旦合流させたうえで第2冷却部52に流入させることにより、第1合流部61を通過する際に均一に混合された流体を第2冷却部52に送ることができる。これにより、第2冷却部52における冷却効果のばらつきを低減できる。
【0054】
第2冷却部52に流入した流体は、第2冷却部52の周方向の一方側と他方側に再び分岐して第2冷却部52内を流れる。これらの分岐した流体は、第2合流部(出口)62において再び合流し、この出口62から外部に排出される。出口62は、第1合流部61に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられているので、第2冷却部52の周方向の一方側と他方側に分岐して流れる流体の割合がほぼ均等になる。なお、排出された流体は、必要に応じて冷却した後、冷却用として循環させて再利用してもよい。
【0055】
以上説明したように、第1実施形態によれば、冷却用空間50は、前記流体が流入する入口60を有するとともに周方向の略全体にわたって前記流体を流通可能な第1冷却部51と、この第1冷却部51よりも前記ケース13の軸方向の一方側に位置し、周方向の略全体にわたって流体を流通可能な第2冷却部52とを含んでいる。さらに、冷却用空間50は、前記入口60に対して前記ケース13の半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置する第1合流部61と、この第1合流部61に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置する第2合流部62とを含んでいる。このように第1実施形態では、冷却用空間50を軸方向に分割しつつ冷却用空間50の周方向の略全体にわたって流体を強制的に流す冷却構造を採用することにより、冷却用空間50内を流れる流体における軸方向および周方向の両方の流れを制御することができる。これにより、冷却用空間50内の偏流を効果的に抑制することができるので、冷却効果を高めて電動機の発熱を抑制することができる。
【0056】
また、第1実施形態では、第2合流部62は、前記冷却用空間50内の前記流体を外部に排出するために前記ケース13に設けられた出口であるので、出口が入口60と周方向の同じ側に位置している。これにより、入口60と出口とを近接した位置に設けることができる。これにより、流体用の配管を配設しやすくなる。また、例えば軸方向が略水平になるように電動機を配置して使用する場合には入口60と出口62をともに上方に配置することができるので、冷却用空間50内に溜まることのある空気を排出しやすくなる。
【0057】
また、第1実施形態では、前記冷却用空間50は、前記第1合流部61に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域で、かつ、前記入口60と前記出口62との間の位置に、前記第1合流部61よりも開口面積が小さく、前記第1冷却部51と前記第2冷却部52を連通する空気抜き用の連通部25を有しているので、上記したように軸方向が水平になるように電動機を配置し、入口60と出口62をともに上方に配置した状態で使用する場合に、第1冷却部51内に溜まった空気を、連通部25を通じて第2冷却部52側に移動させて出口から排出させることが容易になる。また、連通部25は第1合流部61よりも開口面積が小さいので、連通部25を通る際に流体が受ける抵抗は第1合流部61を通る際に受ける抵抗よりも大きくなる。これにより、流体が連通部25を通じて第1冷却部51から第2冷却部52に近道して流れるのを抑制し、流体の大部分を第1冷却部51の周方向の一方側と他方側に沿って流すことができるので、冷却効果が低下するのを抑制できる。
【0058】
また、第1実施形態では、前記ケース13は、前記ロータ17および前記ステータ19を収容する筒状の内筒部21と、この内筒部21の外側に配置されるとともに前記内筒部21に固定されて前記内筒部21との間に前記冷却用空間50を形成する筒状の外筒部23と、前記内筒部21と前記外筒部23との間に前記周方向に沿って設けられ、前記冷却用空間50を前記第1冷却部51と前記第2冷却部52に分割する仕切り81と、を備えているので、第1冷却部51と第2冷却部52を形成する外筒部23は別部材ではなく一つの部材により構成することができる。これにより、外筒部の構造を簡略化できる。
【0059】
また、第1実施形態では、前記仕切り81は、前記入口60に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に、前記第1冷却部51と前記第2冷却部52を連通し、前記第1合流部61の一部を構成する開口部71を有している。このように内筒部21と外筒部23との間に上記のような仕切り81が設けられている場合には、仕切り81に開口部71を形成するという簡単な構造を採用するだけで第1合流部の一部または全部を構成することができるので、製造工程を簡略化できる。
【0060】
また、第1実施形態では、前記外筒部23は前記内筒部21と別体で構成されているので、外筒部23と内筒部21の間に上記した仕切りを形成する場合に加工が容易になる。また、外筒部23が内筒部21と別体で構成されているので、外筒部23または内筒部21に凹凸部などを前もって形成した後、外筒部23を内筒部21に固定することができるので、凹凸部の加工が容易になる。特に、凹凸部が内筒部21の外面に設けられている場合には、外筒部23の内面に凹凸部を形成するのと比較してさらに加工が容易になる。また、外筒部23と内筒部21が別体であることにより、内筒部21に対する外筒部23の相対位置を任意に設定できるので、多様なニーズに対応することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、前記内筒部21は、その外面に周方向の略全体にわって設けられた複数の溝27を有しているので、流体と内筒部21との接触面積を増大させて冷却効率を向上させることができる。また、第1実施形態では、複数の溝27が前記周方向に延びるように形成されているので、溝27の形成方向が冷却部における流体の流れる方向に沿った方向となるので、溝27が流体を周方向に流れやすく案内して流体を円滑に流すことができる。
【0062】
また、第1実施形態では、前記流体が絶縁性の油である場合には、水などの流体を使用した場合と比較して漏電などのおそれを低減できる。また、電動機が油圧機器に用いられる場合には、前記絶縁性の油が前記油圧機器の作動油であると、作動油の一部を冷却用空間50に流入する流体として用いることができる。これにより、油圧機器の配管構造、タンク構造などを簡略化できる。
【0063】
<第2形態>
図6は第2形態にかかる電動機11の内筒部21を示す斜視図である。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0064】
この第2形態では、冷却用空間50は、第3冷却部53と、第3合流部63と、第2仕切り82とをさらに有している点で第1実施形態とは異なっている。なお、図6(a),(b)では、外筒部23の図示は省略しているが、外縁部39と第2仕切り82との間に設けられた第3凹部93と、外筒部23の内面とにより囲まれる空間が第3冷却部53となる(図6(a),(b)の一点鎖線の矢印53で示す領域)。
【0065】
第3冷却部53は、第2冷却部52よりも内筒部21の軸方向の第2方向D2側に位置し、周方向の略全体にわたって流体を流通可能である。第3合流部63は流体の出口である。この出口63は、外筒部23の外面に設けられた筒状の管(図示略)により構成されている。この出口63は、第2合流部62に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置している。すなわち、出口63は入口60と周方向の反対側に位置している。第3冷却部53内の流体は出口63において合流し、外部に排出される。
【0066】
また、第2合流部62は、第1実施形態のように出口として機能するのではなく、第2冷却部52と第3冷却部53とを連通して第2冷却部52の流体を第3冷却部53に流入させる役割を果たす。この第2合流部62は、第2仕切り82に形成された半径方向内側に凹む凹部からなる開口部72と、外筒部23の外面とにより構成されている。
【0067】
第2仕切り82は、第1仕切り81の開口部25aに対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に、開口部25aを有している。この開口部25aは外筒部23の外面とともに空気抜き用の連通部(図示略)となる。
【0068】
この第2形態では、冷却用空間50が、第3冷却部53と第3合流部63とをさらに有しているので、仕切り間の距離が短くなって各冷却部の軸方向の高さが小さくなる。このように冷却用空間50を軸方向にさらに細分化することができる。これにより、各冷却部において軸方向の偏流が抑制できるので、冷却用空間50内の偏流をより効果的に抑制することができる。
【0069】
<第3形態>
図7は第3形態にかかる電動機11の内筒部21を示す斜視図である。なお、ここでは第1実施形態および第2形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
この第3形態では、冷却用空間50は、第4冷却部54と、第4合流部64と、第3仕切り83とをさらに有している点で第1実施形態および第2形態とは異なっている。なお、図7(a),(b)では、外筒部23の図示は省略しているが、外縁部39と第3仕切り83との間に設けられた第4凹部94と、外筒部23の内面とにより囲まれる空間が第4冷却部54となる(図7(a),(b)の一点鎖線の矢印54で示す領域)。
【0071】
第4冷却部54は、第3冷却部53よりも内筒部21の軸方向の第2方向D2側に位置し、周方向の略全体にわたって流体を流通可能である。第4合流部64は流体の出口である。この出口64は、第3合流部63に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置している。第4冷却部54内の流体は出口64において合流し、外部に排出される。
【0072】
また、第3合流部63は、第2形態のように出口として機能するのではなく、第3冷却部53と第4冷却部54とを連通して第3冷却部53の流体を第4冷却部54に流入させる役割を果たす。この第3合流部63は、第3仕切り83に形成された半径方向内側に凹む凹部からなる開口部73と、外筒部23の外面とにより構成されている。
【0073】
第3仕切り83は、第1仕切り81の開口部25aと軸方向のほぼ同じ位置に開口部25aを有している。この開口部25aは外筒部23の外面とともに空気抜き用の連通部(図示略)となる。
【0074】
この第3形態では、冷却用空間50が、第4冷却部54と第4合流部64とをさらに有しているので、仕切り間の距離がさらに短くなって各冷却部の軸方向の高さがより小さくなる。このように冷却用空間50を軸方向にさらに一段と細分化することができる。これにより、各冷却部において軸方向の偏流が抑制できるので、冷却用空間50内の偏流をさらに効果的に抑制することができる。
【0075】
また、第3形態では、出口64が入口60と周方向の同じ側に位置しているので、入口60と出口64とを近接した位置に設けることができる。これにより、流体用の配管を配設しやすくなる。また、例えば軸方向が略水平になるように電動機を配置して使用する場合には入口60と出口64をともに上方に配置することができるので、冷却用空間50内に溜まることのある空気を排出しやすくなる。
【0076】
<他の実施形態>
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、上記第1実施形態では、仕切りに設けられた開口部としての凹部と外筒部の内面とにより第1合流部が構成されている場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば第1合流部は、仕切りに開口部としての貫通口を設けることにより構成することもできる。他の第2〜4合流部についても同様である。
【0077】
また、上記第3形態では、冷却用空間50が第1冷却部、第2冷却部、第3冷却部および第4冷却部に分割されている場合を例示したが、さらに細分化してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、内筒部の外面に周方向に沿って仕切りが形成されている形態を例示したが、仕切りは、内筒部の外面ではなく外筒部の内面に周方向に沿って形成されていてもよく、また、内筒部および外筒部とは別の部材で構成されていてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、冷却用空間を形成する内筒部と外筒部が別体である場合を例に挙げて説明したが、これらの内筒部と外筒部は、別体ではなく一体の部材であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、内筒部の外面に周方向の略全体にわたって互いに略平行な複数の溝が設けられている場合を例示したが、このような凹凸部としては、例えば螺旋状の溝、複数の突起、複数のディンプルなどが内筒部の外面または外筒部の内面に設けられていてもよい。また、冷却用空間内における流体の偏流を抑制するという観点では、上記のような凹凸部は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0081】
なお、上述した前記電動機には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0082】
前記電動機は、ロータ(17)およびステータ(19)を収容する筒状のケース(13)を備えている。前記ケース(13)は、その内部に周方向の略全体にわたって形成され、流体を流通可能な冷却用空間(50)を備えている。前記冷却用空間(50)は、前記流体が流入する入口(60)を有し、周方向の略全体にわたって前記流体を流通可能な第1冷却部(51)と、この第1冷却部(51)よりも前記ケース(13)の軸方向の一方側に位置し、周方向の略全体にわたって流体を流通可能な第2冷却部(52)と、前記入口(60)に対して前記ケース(13)の半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、前記第1冷却部(51)内の前記流体が合流するとともに前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)とを連通する第1合流部(61)と、この第1合流部(61)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、前記第2冷却部(52)内の前記流体が合流する第2合流部(62)と、を含んでいる。
【0083】
この構成では、入口(60)から第1冷却部(51)内に流入した流体は、第1冷却部(51)の周方向の一方側と他方側に分岐して第1冷却部(51)を流れ、入口(60)に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられた第1合流部(61)を通って合流して第2冷却部(52)に流入し、再び第2冷却部(52)の周方向の一方側と他方側に分岐して第2冷却部(52)を流れ、第1合流部(61)に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられた第2合流部(62)において再び合流することになる。
【0084】
しかも、第1合流部(61)は入口(60)に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられ、第2合流部(62)は第1合流部(61)に対して半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に設けられている。したがって、周方向の一方側と他方側の通路の長さがほぼ同程度となっている。したがって、第1冷却部(51)の周方向の一方側および他方側をそれぞれ流れるときの流体が受ける抵抗差を小さくし、第2冷却部(52)の周方向の一方側および他方側をそれぞれ流れるときの流体が受ける抵抗差を小さくすることができる。これにより、第1冷却部(51)および第2冷却部(52)において、周方向の一方側と他方側に分岐する流体の割合をほぼ同程度に制御することができる。
【0085】
このように本構成では、冷却用空間(50)を軸方向に分割しつつ冷却用空間(50)の周方向の略全体にわたって流体を強制的に流す冷却構造を採用することにより、冷却用空間(50)内を流れる流体における軸方向および周方向の両方の流れを制御することができる。これにより、冷却用空間(50)内の偏流を効果的に抑制することができるので、冷却効果を高めて電動機の発熱による電動機の温度上昇を抑制することができる。
【0086】
前記第2合流部(62)は、前記冷却用空間(50)内の前記流体を外部に排出するために前記ケース(13)に設けられた出口であってもよい。
【0087】
この構成では、入口(60)と出口とを近接した位置に設けることができるので、流体用の配管を入口(60)および出口に配設しやすくなる。また、例えば軸方向が略水平になるように電動機を配置して使用する場合には入口(60)と出口をともに上方に配置することができるので、冷却用空間(50)内に溜まることのある空気を排出しやすくなる。
【0088】
前記冷却用空間(50)は、前記第1合流部(61)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域で、かつ、前記入口(60)と前記出口との間の位置に、前記第1合流部(61)よりも開口面積が小さく、前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)を連通する空気抜き用の連通部(25)を有しているのが好ましい。
【0089】
この構成では、第2合流部(62)が出口であることに加え、さらに前記連通部(25)を有しているので、上記したように軸方向が水平になるように電動機を配置し、入口(60)と出口をともに上方に配置した状態で使用する場合に、第1冷却部(51)内に溜まった空気を、連通部(25)を通じて第2冷却部(52)側に移動させて出口から排出させることが容易になる。また、連通部(25)は第1合流部(61)よりも開口面積が小さいので、連通部(25)を通る際に流体が受ける抵抗は第1合流部(61)を通る際に受ける抵抗よりも大きくなる。これにより、流体が連通部(25)を通じて第1冷却部(51)から第2冷却部(52)に近道して流れるのを抑制し、流体の大部分を第1冷却部(51)の周方向の一方側と他方側に沿って流すことができるので、冷却効果が低下するのを抑制できる。
【0090】
前記冷却用空間(50)は、前記第2冷却部(52)よりも前記ケース(13)の軸方向の一方側に位置し、周方向の略全体にわたって流体を流通可能な第3冷却部(53)と、前記第2合流部(62)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、前記第3冷却部(53)内の前記流体が合流する第3合流部(63)と、をさらに有し、前記第2合流部(62)が前記第2冷却部(52)と前記第3冷却部(53)とを連通していてもよい。
【0091】
この構成では、冷却用空間(50)が、上記したような第3冷却部(53)と第3合流部(63)とをさらに有しているので、冷却用空間(50)を軸方向にさらに細分化することができる。これにより、冷却用空間(50)内の偏流をより効果的に抑制することができる。
【0092】
前記第3合流部(63)は、前記冷却用空間(50)内の前記流体を外部に排出するために前記ケース(13)に設けられた出口であってもよい。
【0093】
前記冷却用空間(50)は、前記第3冷却部(53)よりも前記ケース(13)の軸方向の一方側に位置し、周方向の略全体にわたって流体を流通可能な第4冷却部(54)と、前記第3合流部(63)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、前記第4冷却部(54)内の前記流体が合流する第4合流部(64)と、をさらに有し、前記第3合流部(63)が前記第3冷却部(53)と前記第4冷却部(54)とを連通していてもよい。
【0094】
この構成では、冷却用空間(50)が、第4冷却部(54)と第4合流部(64)とをさらに有しているので、冷却用空間(50)を軸方向にさらに一段と細分化することができる。これにより、冷却用空間(50)内の偏流をさらに効果的に抑制することができる。
【0095】
前記第4合流部(64)は、前記冷却用空間(50)内の前記流体を外部に排出するために前記ケース(13)に設けられた出口であってもよい。
【0096】
この構成では、入口(60)と出口とを近接した位置に設けることができるので、流体用の配管を入口(60)および出口に配設しやすくなる。また、例えば軸方向が略水平になるように電動機を配置して使用する場合には入口(60)と出口をともに上方に配置することができるので、冷却用空間(50)内に溜まることのある空気を排出しやすくなる。
【0097】
第1冷却部(51)と第2冷却部(52)を設ける手段としては、例えば外筒部(23)を2つの部材で構成し、一方の部材を用いて内筒部(21)とともに第1冷却部(51)を形成し、他方の部材を用いて内筒部(21)とともに第2冷却部(52)を形成するようにしてもよいが、次のような構成であるのが好ましい。
【0098】
すなわち、前記ケース(13)は、前記ロータ(17)および前記ステータ(19)を収容する筒状の内筒部(21)と、この内筒部(21)の外側に配置されるとともに前記内筒部(21)に固定されて前記内筒部(21)との間に前記冷却用空間(50)を形成する筒状の外筒部(23)と、前記内筒部(21)と前記外筒部(23)との間に前記周方向に沿って設けられ、前記冷却用空間(50)を前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)に分割する仕切り(81)と、を備えているのが好ましい。
【0099】
この構成のように内筒部(21)と外筒部(23)との間に周方向に沿って仕切り(81)を設けることにより冷却用空間(50)を第1冷却部(51)と第2冷却部(52)に分割するようにすれば、外筒部(23)を別部材ではなく一つの部材により構成することができる。これにより、外筒部(23)の構造を簡略化できる。
【0100】
前記仕切り(81)は、前記入口(60)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に、前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)を連通し、前記第1合流部(61)の一部または全部を構成する開口部(71)を有しているのが好ましい。
【0101】
この構成では、仕切り(81)に設けられた開口部(71)が第1合流部(61)の一部または全部を構成している。このように内筒部(21)と外筒部(23)との間に上記のような仕切り(81)が設けられている場合には、仕切り(81)に開口部(71)を形成するという簡単な構造を採用するだけで第1合流部の一部または全部を構成することができるので、製造工程を簡略化できる。
【0102】
前記ケース(13)は、前記ロータ(17)および前記ステータ(19)を収容する筒状の内筒部(21)と、この内筒部(21)の外面を覆うとともにこの外面に対して所定の間隔をあけて配置されることにより前記内筒部(21)との間に前記冷却用空間(50)を形成する筒状の外筒部(23)と、前記内筒部(21)と前記外筒部(23)との間に前記周方向に沿って設けられ、前記冷却用空間(50)を前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)に分割する第1仕切り(81)と、前記内筒部(21)と前記外筒部(23)との間に前記周方向に沿って設けられ、前記冷却用空間(50)を前記第2冷却部(52)と前記第3冷却部(53)に分割する第2仕切り(82)と、前記内筒部(21)と前記外筒部(23)との間に前記周方向に沿って設けられ、前記冷却用空間(50)を前記第3冷却部(53)と前記第4冷却部(54)に分割する第3仕切り(83)と、を備えている。
【0103】
この構成では、内筒部(21)と外筒部(23)との間に周方向に沿った仕切り(81)を複数設けることにより冷却用空間(50)を複数の冷却部に分割できる。このようにすれば、外筒部(23)を別部材ではなく一つの部材により構成することができ、外筒部(23)の構造を簡略化できる。
【0104】
前記第1仕切り(81)は、前記入口(60)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に、前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)を連通し、前記第1合流部(61)の一部または全部を構成する第1開口部(71)を有している。前記第2仕切り(82)は、前記第1合流部(61)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に、前記第2冷却部(52)と前記第3冷却部(53)を連通し、前記第2合流部(62)の一部または全部を構成する第2開口部(72)を有している。前記第3仕切り(83)は、前記第2合流部(62)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に、前記第3冷却部(53)と前記第4冷却部(54)を連通し、前記第3合流部(63)の一部または全部を構成する第3開口部(73)を有している。
【0105】
この構成では、各仕切り(81,82,83)に設けられた各開口部(71,72,73)が第1〜3合流部(61,62,63)の一部または全部を構成している。このように内筒部(21)と外筒部(23)との間に上記のような仕切り(81,82,83)が設けられている場合には、仕切り(81,82,83)に開口部(71,72,73)を形成するという簡単な構造を採用するだけで第1〜3合流部(61,62,63)の一部または全部を構成することができるので、製造工程を簡略化できる。
【0106】
前記外筒部(23)は前記内筒部(21)と別体で構成されているときには、例えば外筒部(23)と内筒部(21)の間に上記した仕切りを形成する場合、内筒部(21)の外面などに後述する凹凸部を形成する場合などにおいて加工が容易になる。
【0107】
前記内筒部(21)は、その外面に周方向の略全体にわって設けられた凹凸部(27)を有しているときには、流体と内筒部(21)との接触面積を増大させて冷却効率を向上させることができる。
【0108】
前記凹凸部(27)が前記周方向に延びる複数の溝(27)であるときには、溝(27)の形成方向は冷却部における流体の流れる方向に沿った方向となるので、凹凸部(27)が流体を周方向に流れやすく案内して流体を円滑に流すことができる。
【0109】
前記流体が絶縁性の油であるときには、水などの流体を使用した場合と比較して漏電などのおそれを低減できる。
【0110】
電動機が油圧機器に用いられる場合には、前記絶縁性の油が前記油圧機器の作動油であるのが好ましい。
【0111】
この構成では、絶縁性の油が油圧機器の作動油であるので、作動油の一部を冷却用空間(50)に流入する流体として用いることができる。これにより、油圧機器の配管構造、タンク構造などを簡略化できる。
【符号の説明】
【0112】
11 電動機
13 ケース
17 ロータ
19 ステータ
21 内筒部
23 外筒部
25 空気抜き用連通部
27 溝
50 冷却用空間
51 第1冷却部
52 第2冷却部
53 第3冷却部
54 第4冷却部
60 入口
61 第1合流部
62 出口(第2合流部)
63 出口(第3合流部)
64 出口(第4合流部)
71 開口部(第1開口部)
72 第2開口部
73 第3開口部
81 仕切り(第1仕切り)
82 第2仕切り
83 第3仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(17)およびステータ(19)を収容する筒状のケース(13)を備えた電動機であって、
前記ケース(13)は、その内部に周方向の略全体にわたって形成され、流体を流通可能な冷却用空間(50)を備え、
前記冷却用空間(50)は、
前記流体が流入する入口(60)を有し、周方向の略全体にわたって前記流体を流通可能な第1冷却部(51)と、
この第1冷却部(51)よりも前記ケース(13)の軸方向の一方側に位置し、周方向の略全体にわたって流体を流通可能な第2冷却部(52)と、
前記入口(60)に対して前記ケース(13)の半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、前記第1冷却部(51)内の前記流体が合流するとともに前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)とを連通する第1合流部(61)と、
この第1合流部(61)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に位置し、前記第2冷却部(52)内の前記流体が合流する第2合流部(62)と、を含み、
前記第2合流部(62)は、前記冷却用空間(50)内の前記流体を外部に排出するために前記ケース(13)に設けられた出口であり、
前記冷却用空間(50)は、前記第1合流部(61)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域で、かつ、前記入口(60)と前記出口との間の位置に、前記第1合流部(61)よりも開口面積が小さく、前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)を連通する空気抜き用の連通部(25)を有しており、
前記入口(60)、前記出口及び前記連通部(25)が上になる姿勢で配置されており、前記第1冷却部(51)内の空気が、前記連通部(25)によって前記流体の前記出口側に案内され、前記第2冷却部(52)内を流れる流体とともに前記出口から排出される、電動機。
【請求項2】
前記ケース(13)は、
前記ロータ(17)および前記ステータ(19)を収容する筒状の内筒部(21)と、
この内筒部(21)の外側に配置されるとともに前記内筒部(21)に固定されて前記内筒部(21)との間に前記冷却用空間(50)を形成する筒状の外筒部(23)と、
前記内筒部(21)と前記外筒部(23)との間に前記周方向に沿って設けられ、前記冷却用空間(50)を前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)に分割する仕切り(81)と、を備えている、請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記仕切り(81)は、前記入口(60)に対して前記半径方向に対向する側における周方向の所定範囲の領域に、前記第1合流部(61)の一部または全部を構成し、前記第1冷却部(51)と前記第2冷却部(52)を連通する開口部(71)を有している、請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
前記外筒部(23)は前記内筒部(21)と別体で構成されている、請求項2又は3に記載の電動機。
【請求項5】
前記内筒部(21)は、その外面に周方向の略全体にわって設けられた凹凸部(27)を有している、請求項4に記載の電動機。
【請求項6】
前記凹凸部(27)が前記周方向に延びる複数の溝(27)である、請求項5に記載の電動機。
【請求項7】
前記流体が絶縁性の油である、請求項1〜6のいずれかに記載の電動機。
【請求項8】
油圧機器に用いられる電動機であって、
前記絶縁性の油が前記油圧機器の作動油である、請求項7に記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−42661(P2013−42661A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258321(P2012−258321)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2009−51297(P2009−51297)の分割
【原出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】