説明

電動絞り装置

【課題】円滑な作動を保証できるのは勿論、構造が単純で、組立が簡単にでき、しかも組立剛性が高く、コンパクト化が可能な電動絞り装置を提供する。
【解決手段】絞り羽根を駆動するアクチュエータのロータ540は、樹脂製のロータ軸541と、永久磁石545と、ロータ軸に一体成形された駆動レバー542と、を有する。アクチュエータのステータは、樹脂製のコイルボビン511と、その外周に巻回されたコイル591、592と、コイルボビンの外周に嵌合された円筒状のヨークと、を有する。コイルボビンは、ロータの軸方向に2分割された上ボビン520と下ボビン530の結合体により構成され、コイルボビンの内部にロータが収容され、上ボビンと下ボビンの各軸受孔522、532にロータ軸の両軸端541a、541bが回転自在に嵌合されている。コイルは、ロータを収容した状態のコイルボビンの外周にロータの軸線方向と略平行な面内で巻回され、上ボビンと下ボビンの合わせ目に確保された窓部538より駆動レバーの先端が外部に導出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラ等の撮影装置に装備される電動絞り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電動絞り装置として、特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載の電動絞り装置は、光路を形成する開口部を有した絞り基板と、絞り基板の一方の板面に配設され該板面に沿って直線スライドすることで前記光路を絞り調節する絞り羽根と、絞り基板の他方の板面に固定され、前記光路を絞り調節するために絞り羽根を駆動するアクチュエータと、を備えている。
【0003】
この場合のアクチュエータは、ロータとステータとからなり、ステータは、ロータの中心軸を含む平面で半割りにされ且つ合体することで両者間にロータを回転自在に収容するコイルボビンと、コイルボビンの外周に巻回されたコイルと、コイルボビンの外周に装着された円筒状のヨークと、から構成されている。ロータは、ロータ軸の外周に、直径方向に着磁された永久磁石を一体に設けたものである。
【0004】
ロータ軸の一端は、コイルボビンの外部に突出しており、絞り基板の一方の板面側にまで突出したその突出端に、絞り羽根の駆動レバーが固定され、その駆動レバーに設けた駆動ピンが絞り羽根に係合している。そして、ロータの回転により、駆動レバー及び駆動ピンを介して、絞り羽根が直線スライドさせられ、それにより、前記光路が絞り調節されるようになっている。
【0005】
ところで、この電動絞り装置では、ロータ軸と絞り羽根の駆動レバーとが別体になっており、組み立ての際にロータ軸の先端を駆動レバーの軸孔に嵌着しなくてはならない。しかもその際、永久磁石の磁極方向と、絞り羽根の駆動レバーの方向とを精密に位置合わせし、その上で、滑らず、抜けないように、ロータ軸の先端を絞り羽根駆動レバーの軸孔に嵌着しなくてはならない。そのため、部品点数が増加する上に、組み付けが非常に面倒であり、生産効率の悪化の原因になるという問題があった。
【0006】
そこで、そのような問題のない電動絞り装置が、特許文献2に提案されている。この電動絞り装置では、ロータ軸と絞り羽根駆動レバーとが一体に形成されており、絞り基板の一方の板面側にアクチュエータと駆動レバーとが配置されている。また、この電動絞り装置でも、コイルボビンが半割構造になっており、半割ボビンの両者を合体させることでロータを回転自在に挟むようにしている。
【0007】
また、特許文献3に記載の電動絞り装置では、ロータ軸と絞り羽根駆動レバーを一体に形成すると共に、コイルボビンも半割にしないで一体に形成し、ロ字状のコイルボビンの側面開口からロータをコイルボビンの中に嵌め込むようにしている。
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第2502005号公報
【特許文献2】特開平10−254022号公報
【特許文献3】特開平11−183962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2に記載の電動絞り装置は、コイルボビンをロータの中心軸を含む平面で半割りにし、半割ボビンを合体することで、両者間にロータを回転自在に収容する
構造を採用しているので、コイルボビンを合体して、例えばテープにより止めた上で、ヨークに嵌める必要があり、組立が簡単にできなかった。また、半割構造体をテープやヨークで締め付けるだけであるから、あまり組立剛性のアップを期待できなかった。また、コイルボビンが半割構造である場合、少なくとも一方の軸受孔の内周面に周方向に不連続な箇所が存在することになるため、合わせ状態が悪いと、作動の不安定を招く可能性があった。また、コイルの外側に駆動レバーを配置している関係で、アクチュエータの軸方向寸法が長くなりやすいという問題もあった。
【0010】
また、特許文献3に記載の電動絞り装置は、ロ字形のコイルボビンにロータを側方から組み付けるようにしているが、ロータ軸の一方の軸端を支持する軸受部材をコイルボビンと別体に製作して、後からロータと一緒に嵌める必要があるので、組立が面倒である上に、構造が複雑で、組立剛性もあまり高くできないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮し、円滑な作動を保証できるのは勿論、構造が単純で、組立が簡単にでき、しかも組立剛性が高く、コンパクト化が可能な電動絞り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明の電動絞り装置は、光路を形成する開口部を有した絞り基板と、この絞り基板の板面に沿って直線スライドすることで前記光路を絞り調節する絞り羽根と、前記絞り基板に固定され、前記光路を絞り調節するために前記絞り羽根を駆動するアクチュエータと、を備え、前記アクチュエータのロータは、樹脂製のロータ軸と、該ロータ軸に固定された永久磁石と、前記ロータ軸の一端に一体成形され且つ前記絞り羽根と係合する駆動ピンを先端に備えた駆動レバーと、を有し、前記アクチュエータのステータは、樹脂製のコイルボビンと、該コイルボビンの外周に巻回されたコイルと、該コイルが巻回された前記コイルボビンの外周に嵌合された円筒状のヨークと、を有し、前記コイルボビンは、前記ロータの軸方向に2分割された上ボビンと下ボビンの結合体により構成され、該コイルボビンの内部に前記ロータが収容されると共に、該コイルボビンを構成する前記上ボビンと下ボビンの各軸受孔に前記ロータ軸の両軸端が回転自在に嵌合され、前記コイルは、前記ロータを収容した状態のコイルボビンの外周に前記ロータの軸線方向と略平行な面内で巻回され、前記上ボビンと下ボビンの合わせ目に確保された窓部より前記駆動レバーの先端が外部に導出されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電動絞り装置であって、前記絞り基板に、アクチュエータ受座が設けられると共にヨーク係止爪が設けられ、前記コイルボビンの下端外周部に、前記アクチュエータ受座に乗る固定突片が突設され、前記ヨークを前記ヨーク係止爪で係止することにより、該ヨークと前記アクチュエータ受座との間に前記コイルボビンの固定突片を挟持したことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電動絞り装置であって、前記絞り基板の前記アクチュエータの取付部の近傍に、前記コイルに接続された電線のクランプ部が一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、ロータを支持するコイルボビンを、特許文献1、2に記載の技術のようにロータの中心軸線を含む平面で半割りにして合体させるのではなく、ロータの軸方向に2分割した上ボビンと下ボビンの結合体により構成しているので、ロータ軸を回転自在に支持する軸受孔を半割りせずにすみ、完全な円形の軸受孔にロータ軸の軸端を嵌めることができる。従って、全周に不連続箇所のない滑らかな軸受面でロータ軸を回転支持することができ、作動の安定化を図ることができる。また、各軸受孔にロータ軸の軸
端を嵌めて上ボビンと下ボビンの両者を組み合わせればよいので、精度の揃った組立が簡単にできる。
【0016】
また、ロータの軸線方向と略平行な面内でコイルを巻回しているので、ロータの軸線方向に2分割されたボビンをコイルで締め付けることができ、剛性アップを図ることができる。また、上ボビンと下ボビンの合わせ目に確保した窓部より、ロータ軸に一体成形した駆動レバーの先端を外部に導出しているので、アクチュエータの軸方向寸法のコンパクト化を図ることができ、絞り装置全体の薄型化が図れる。
【0017】
請求項2の発明によれば、アクチュエータの外周に位置するヨークを絞り基板に固定することで、内部のコイルボビンをヨークと絞り基板との間に挟持しているので、絞り基板とコイルボビンとヨークの一体性が高まり、振動等に対して強くなる。また、ヨークばかりでなく、コイルボビンの支持の安定性も高まるので、作動の円滑化が図れる。また、ヨークの内側のコイルボビンを直接爪で係止するのではないから、爪とコイルボビンを係合するために余分な寸法を確保する必要がなく、構造のコンパクト化が図れる。
【0018】
請求項3の発明によれば、絞り基板に直接コイルにつながる電線をクランプすることができるので、電線の配索性がよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の電動絞り装置の構成を示す分解斜視図、図2は同電動絞り装置の絞り基板の構成を示す斜視図、図3は同絞り基板の構成を示す平面図、図4は同電動絞り装置のアクチュエータの構成を示す分解斜視図、図5は同アクチュエータの本体ユニットの構成を示す分解斜視図、図6は同本体ユニットのコイル巻回前の状態であるボビンユニットの外観を示す斜視図、図7は同ボビンユニットの反対側の外観を示す斜視図、図8は同ボビンユニットの縦断面図である。
【0020】
図9は同ボビンユニットにコイルを巻回するに当たり一定の方向性をもってボビンユニットを整列させる方法の説明用の斜視図、図10は適正な方向性をもって整列しないボビンユニットを排除する場合の方法の説明用の斜視図、図11は適正に整列させたボビンユニットをチャッキングするチャック装置の前方から見た斜視図、図12は同チャック装置とボビンユニットの関係を示す斜視図、図13は同チャック装置でボビンユニットを把持した状態を示す斜視図、図14は同チャック装置で把持した複数のボビンユニットをコイル巻回装置に装着した状態を示す斜視図、図15(a)は同ボビンユニットのコイル巻回溝の構成を示す断面図、(b)はコイル巻回溝にコイルを巻回した状態を示す断面図、図16は本実施形態の電動絞り装置の完成状態を示す斜視図、図17は同完成状態におけるアクチュエータ取付部を特定の2つの平面で切って示す概略縦断面図、図18は同部分を別の平面で切って示す概略縦断面図、図19は図16と反対側に電線ユニットを引き出した例を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、この電動絞り装置は、樹脂成形品よりなる長方形板状の絞り基板100と、この絞り基板100の図中下面(一方の板面上)に互いに重ね合わせられた状態でスライド自在に組み付けられる一対の絞り羽根200、300と、絞り基板100の下面に絞り羽根200、300を組み付けた上で、絞り基板100の下面に絞り羽根200、300を覆うように被せられる羽根カバー400と、絞り基板100の上面の長手方向一端部に組み付けられる絞り駆動装置としてのアクチュエータ500と、アクチュエータ500につながる電線ユニット600と、からなる。
【0022】
絞り基板100には、絞り羽根200、300のスライドする平板状のスライドベース
部101が設けられ、そのスライドベース部101の長手方向の一端部にアクチュエータ取付部102が設けられている。スライドベース部101には、光路を形成する開口部103が設けられ、スライドベース部101の絞り羽根配置側には、絞り羽根200、300をガイドするガイドピン(符号省略)と、羽根カバー400の係合爪104とが設けられている。
【0023】
また、羽根カバー400には、光路を形成する開口部401と、絞り基板100の係合爪104に係合する被係合部402と、絞り基板100のアクチュエータ取付部102の下面を覆う保護板部405と、保護板部405の周縁部に形成された風通しスリット406と、絞り基板100のアクチュエータ取付部102の係合部141(図3参照)に係合する被係合部407と、が設けられている。
【0024】
また、各絞り羽根200、300には、絞り開口を形成するための切欠状または孔状の透孔部201、301が設けられている。そして、絞り基板100上で絞り羽根200、300を長手方向に直線スライドさせることにより、前記の光路を絞り調節することができるようになっている。
【0025】
また、絞り羽根200、300の絞り開口を形成する透孔部201、301には、絞り最小のときにフィルタ機能を発揮するようにフィルタ(例えば、NDフィルタ)205、305が貼り付けられている。また、絞り羽根200、300の側縁部の近傍には、各側縁部と平行に長溝202、302が設けられている。そして、これら長溝202、302を絞り基板100のガイドピン(符号省略)に嵌めることで、絞り羽根200、300が絞り基板100の長手方向に沿って直線スライド自在に保持されている。
【0026】
絞り羽根200、300を駆動するための要素としては、まず、各絞り羽根200、300の長手方向の端部に、それぞれ絞り羽根200、300のスライド方向と直交する横溝204、304が設けられている。一方、絞り基板100のアクチュエータ取付部102に取り付けられるアクチュエータ500には、駆動レバー542が設けられている。この駆動レバー542は、両先端に絞り基板100側に突き出た駆動ピン543を有するもので、その中心部がアクチュエータ500のロータ軸(後述)に一体化されている。各駆動ピン543には、それぞれ絞り羽根200、300の長手方向の端部に設けた横溝204、304が係合しており、これにより、アクチュエータ500を回転駆動すると、駆動ピン543の回動により2枚の絞り羽根200、300が互いに反対方向に直線スライドして、光路の絞り調節が行われるようになっている。
【0027】
次に図2、図3を参照しながら、絞り基板100のアクチュエータ取付部102について説明する。アクチュエータ取付部102には、略円形のアクチュエータ装着孔121が貫通している。アクチュエータ装着孔121の周縁の一部(スライドベース101の反対側)には、アクチュエータ500の挿入を案内する円弧状のガイド壁122が立設され、その下端には、前述した羽根カバー400を係止するための係合部141が形成されている。
【0028】
また、アクチュエータ装着孔121の周縁上の、周方向にほぼ等しい間隔をおいた4箇所(スライドベース101側の2箇所とその反対側の2箇所)には、上からアクチュエータ500を乗せることのできる突片状のアクチュエータ受座123が設けられ、各アクチュエータ受座123には、アクチュエータ500側のピン(図6の符号535aで示すピン)を挿入する係合孔123aが設けられている。
【0029】
また、アクチュエータ装着孔121の周縁上で、アクチュエータ受座123と干渉せず且つアクチュエータ装着孔121の中心を挟んで対向する2箇所には、アクチュエータ5
00をロックするための一対のロック爪(ヨーク係止爪)130が立設されている。ロック爪130の上部内面側には、上面が案内斜面となったフック131が設けられている。また、各ロック爪130の両側には、一対のガイド柱125が立設されている。これらガイド柱125は、後述するアクチュエータ500のヨーク570の外周を案内する案内面125aと、ロック爪130に向けてヨーク570の下端の鍔部573を案内する案内面125bとを有している。
【0030】
また、アクチュエータ取付部102の両側部には、電線クランプ部150が設けられている。この電線クランプ部150は、垂直アーム151と湾曲アーム152とからなる略C字形のもので、垂直アーム151と湾曲アーム152の先端間の隙間153から、両アーム151、152の撓みを利用して電線を湾曲アーム152の内側に挿入することにより、抜けないように電線を保持する機能を発揮する。垂直アーム151には、電線の挿入を容易にする案内斜面151aが設けられ、湾曲アーム152の先端内面側には抜け止め突起152aが設けられている。
【0031】
次にアクチュエータ500について、図4〜図8を参照しながら説明する。
このアクチュエータ500は、図4に示すように、所定の角度範囲を回動するロータ形式のもので、ロータ540と、ステータ(コイルボビン511、コイル591、592及びヨーク570を中心とするもので、ステータとしての符号は省略)と、回路基板580と、非通電時にロータ540の位置を吸着保持する磁性片590と、を有する。この磁性片590は、絞り羽根200、300が最大絞り位置(絞り切り位置)と最小絞り位置(全開位置)の中間位置になるように駆動レバー542を操作したとき、ロータ540の永久磁石545のN極とS極から等距離の位置に配されており、N極またはS極との間に吸引力を発生し、それによりロータに回転付勢力を与える機能を有する。
【0032】
ロータ540は、樹脂製のロータ軸541と、ロータ軸541に固定された永久磁石545と、ロータ軸541の下端に一体成形され且つ絞り羽根200、300と係合する駆動ピン543を先端に備えた駆動レバー542と、を有している。永久磁石545は、直径方向にN極とS極に分極された円筒状のもので、ロータ軸541はその中心部を貫通している。駆動レバー542は、ロータ軸541の回転中心から180度反対方向に延びるもので、ロータ軸541の回転中心より等距離の位置に、互いに円周方向に180度離間した関係で一対の駆動ピン543が設けられている。この場合、永久磁石545の磁極N、Sの方向と駆動レバー542の延びる方向は一致しており、その一致を容易にするために、ロータ軸541と永久磁石545には、互いに嵌まり合うことで周方向の位置決めを行う凹部546と凸部545aが設けられている。
【0033】
アクチュエータ500のステータは、樹脂製のコイルボビン511と、コイルボビン511の外周に巻回された駆動用と制動用のコイル591、592と、コイル591、592が巻回された状態でコイルボビン511の外周に嵌合された円筒状のヨーク570と、からなる。ヨーク570は、円筒周壁571の下端572外周に、円周方向に180度離間させて一対の鍔部573を突設したものである。
【0034】
コイルボビン511は、ロータ540の軸方向に2分割された上ボビン(ボビン半体)520と下ボビン(ボビン半体)530の結合体として構成されており、コイルボビン511の内部にロータ540が収容され、上ボビン520と下ボビン530の各軸受孔522、532に、ロータ軸541の上下軸端541b、541aが回転自在に嵌合されている。
【0035】
上ボビン520は、軸受孔522を有する上端壁521と、略円筒状の周壁部524、525と、コイル巻回溝528を2つに仕切る仕切壁527と、を有する。径の大きな周
壁部525は、ヨーク570の円筒壁571の内周面に嵌合する部分であり、円周上の4箇所に間隔をおいて配置されている。一方、径の小さな周壁部524は、径の大きな周壁部525の間の凹んだ部分として形成されている。仕切壁527の両側も径の小さい周壁部524として形成されており、この部分が、径の大きい周壁部525と仕切壁527とで挟まれたコイル巻回溝528となっている。
【0036】
また、仕切壁527と直交する位置に一対配置されている径の小さな周壁部524の片方には、図7に示すように、その上端部と正面中央部に、後述するチャッキング時の位置決め用の切欠部524aと凹部524bが設けられている。また、径の大きな周壁部525には、図6に示すように、チャッキング時にチャック爪(図11〜図13の符号952で示すもの)を係合させる凹部526が設けられている。従って、チャック爪を係合する凹部526は、コイル巻回溝528を挟んだ両側にそれぞれ一対ずつ配備されていることになる。また、チャッキング時の位置決め用の切欠部524aと凹部524bを設けた側と反対側の径の小さな周壁部524の下端には、コイルボビン511の方向性を検出するための位置出し突片529が設けられている。この突片529は、整列装置でコイルボビン511の向きを揃えるときに利用する。
【0037】
また、4箇所に配置された径の大きな周壁部525の上端面には、扇形の基板受面523が設けられており、各基板受面523には、端子ピン561の差込孔523aが設けられている。アクチュエータ500の組立段階においては、図4に示すように、基板受面523に回路基板580が載せられ、差込孔523aに圧入されて各コイル591、592の両端に導通された端子ピン561が、回路基板580の絶縁基板581のスルーホール583に半田付けされることで、コイル591、592の両端と各導体パターン582とが相互に接続される。そして、図16に示すように、先端にコネクタ603を有した電線ユニット600の各電線601の基端602を導体パターン582の各ランドに半田付けすることにより、各電線601と各端子ピン561とが1対1で接続される。
【0038】
また、下ボビン530は、軸受孔532を有する下端壁531と、下端壁531の周縁部に立設された、上ボビン520との嵌合用の一対の円弧壁534と、下端壁531の外側に半径方向外方へ向けて突設された固定突片535と、固定突片535の下面に突設された差込ピン535aと、固定突片535の近傍に上向きに突設された上ボビン520との嵌合用ピン533と、円弧壁534と円弧壁534の間に確保された、駆動レバー542導出用の窓部538と、を有している。
【0039】
以上の構成の上ボビン520と下ボビン530を合体させることにより、内部にロータ540を収容し得る略中空円柱形状のコイルボビン511が構成され、上下ボビン520、530の合体の際に、ロータ軸541の上下軸端541b、541aを上下ボビン520、530の各軸受孔522、532に嵌合させることにより、図6〜図8に示す、ロータ540を内部に回転自在に収容したボビンユニット512が構成される。このボビンユニット512の段階で、上ボビン520と下ボビン530の合わせ目に確保された窓部538より駆動レバー542の先端が外部に導出されている。また、コイルボビン511の外面に、ロータ540の軸線方向と略平行な面内でコイル591、592を巻回し得るコイル巻回溝528が形成されている。また、この段階で、端子ピン561が装着されている。
【0040】
そして、このボビンユニット512にコイル591、592を巻回することで、ヨーク570に挿入する前段階の本体ユニット510が構成され、更にヨーク570に本体ユニット512を挿入して、本体ユニット512の上端に回路基板580を半田付けすることで、アクチュエータ500が構成されている。
【0041】
次にアクチュエータ500の組立手順を説明する。
前述のように、上ボビン520と下ボビン530を合体させることにより、コイルボビン511を構成することができる。その際、ロータ軸541の上下軸端541b、541aを、上下ボビン520、530の各軸受孔522、532に嵌合させながら、上ボビン520と下ボビン530を合体させることにより、図6〜図8に示すように、ロータ540を回転自在に内蔵したボビンユニット512を構成する。その段階で、端子ピン561を差込孔523aに圧入しておく。
【0042】
次に、ボビンユニット512のコイル巻回溝528にコイル591、592を巻回することで、本体ユニット510を構成する。それに当たり、まず、ボビンユニット512の方向を揃えるために、ボビンユニット512を整列装置に載せる。図9、図10は、整列装置900の要部を示すもので、図中左奥から右手前に向けて振動等によりボビンユニット512が搬送されてくる。
【0043】
整列装置900には、垂直な背面板901の前側に、下レール902と上レール903が設けられており、ボビンユニット512は、下レール902にコイル巻回溝528がスライド可能に嵌まることで、一定の姿勢で移動してくる。背面板901には、ボビンユニット512の位置出し突片529の嵌まるスライド溝905が設けられており、ボビンユニット512の背面側にその位置出し突片529がある場合は、そのスライド溝905に位置出し突片529が嵌まりながらボビンユニット512が移動してくる。
【0044】
なお、上レール903は、入口側903aから出口側903bにボビンユニット512が移動するに従い、徐々にコイル巻回溝528が上レール903に嵌まるような経路で形成されている。また、上レール903にコイル巻回溝528が確実に嵌まる位置の下レール902側には、適正な向きでないボビンユニット512を下に排除する落とし穴904が設けられている。背面板901のスライド溝905に位置出し突片529が嵌まっている場合は、スライド溝905と上レール903に支持されることで、ボビンユニット512は落とし穴904から落下しないが、スライド溝905に位置出し突片529が嵌まっていない場合は、係合箇所が上レール903のみとなるため、下レール902に形成された落とし穴904からボビンユニット512が落下する。
【0045】
従って、図10に示すように、位置出し突片529が正面を向いているときは、ボビンユニット512は途中で落下し、背面を向いているときは、最後まで搬送されることになる。つまり、後者が適正の向きとして、最後まで一定の姿勢で搬送されることになる。従って、この整列装置900を利用することにより、大量生産する場合にも、一定の方向性を持ってボビンユニット512をハンドリングすることができるようになる。
【0046】
図11、図12は、コイルの巻線を行うためのハンドリング用のチャック装置の構成図を示している。このチャック装置950は、ロッド951と、ロッド951の先端に設けられた一対のチャック爪952と、位置決め用の突片953と、位置決め凸部954と、を有している。
【0047】
巻線を行うに際しては、まず、前述の整列装置900でボビンユニット512の方向を揃え、同じ向きに揃えたボビンユニット512を、チャック爪952で把持する。つまり、図12、図13に示すように、コイルボビン511の外周部に設けられた2つの凹部526に、一対のチャック爪952を係合することで、ボビンユニット512を把持する。この場合のチャック装置950は、巻線機960に多数個装備されており、一列にボビンユニット512を並べることができる。そして、チャック爪952で把持した状態でボビンユニット512を回転させながら、図15に示すように、コイル巻回溝528にコイル591、592を巻回することで、本体ユニット510を構成する。この場合、コイル5
91、592は、ボビンユニット512の外周にロータ540の軸線方向と略平行な面内で巻回されることになる。
【0048】
次いで、チャック装置950から本体ユニット510を取り外し、図4に示すように、その外周に円筒状のヨーク570を嵌め、回路基板580や電線ユニット600を装着して、アクチュエータ500を構成する。そして、このアクチュエータ500を、図16に示すように、絞り基板100のアクチュエータ取付部102に上から装着することで、実施形態の電動絞り装置を完成させる。なお、電線ユニット600の電線601は、図16に示すように、開口部103からアクチュエータ500を見て右側に引き出すこともできるし、図19に示すように、左側に引き出すこともできる。いずれの場合も、電線601を、絞り基板100上に設けた電線クランプ部150に上から挿入するだけで、確実にクランプすることができる。
【0049】
このようにアクチュエータ500を絞り基板100のアクチュエータ取付部102に装着した際、図17、図18に示すように、アクチュエータ500のコイルボビン511に設けた4つの固定突片535が、絞り基板100に設けた4つのアクチュエータ受座123の上面に乗り、固定突片535の下面のピン535aが、アクチュエータ受座123の係合孔123aに係合され、それにより、アクチュエータ500が位置決めされる。また同時に、ヨーク570の下端の鍔部573が絞り基板100側のヨーク係止爪130に係合ロックされることにより、ヨーク570とアクチュエータ受座123との間にコイルボビン511の固定突片535が挟持され、これにより、確実強固にアクチュエータ500が絞り基板100に固定されることになる。この状態で、アクチュエータ500の駆動レバー542の2つの駆動ピン543は、各位絞り羽根200、300の横溝204、304に係合される。
【0050】
以上のように、本実施形態の電動絞り装置によれば、ロータ540を支持するコイルボビン511を、特許文献1、2に記載の技術のようにロータの中心軸線を含む平面で半割りにして合体させるのではなく、ロータ540の軸方向に2分割した上ボビン520と下ボビン530の結合体により構成しているので、ロータ軸541を回転自在に支持する軸受孔522、532を半割りせずにすみ、完全な円形の軸受孔522、532にロータ軸541の軸端541a、541bを嵌めることができる。従って、全周に不連続箇所のない滑らかな軸受面でロータ軸541を回転支持することができ、作動の安定化を図ることができる。
【0051】
また、各軸受孔522、532にロータ軸541の軸端541a、541bを嵌めて上ボビン520と下ボビン530の両者を組み合わせればよいので、精度の揃った組立が簡単にできる。また、ロータ540の軸線方向と略平行な面内でコイル591、592を巻回しているので、ロータ540の軸線方向に2分割されたボビン511をコイル591、592で締め付けることができ、組立品の剛性アップを図ることができる。また、上ボビン520と下ボビン530の合わせ目に確保した窓部538より、ロータ軸541に一体成形した駆動レバー542の先端を外部に導出しているので、アクチュエータ500の軸方向寸法のコンパクト化を図ることができ、絞り装置全体の薄型化が図れる。
【0052】
また、アクチュエータ500の外周に位置するヨーク570を絞り基板100にヨーク係止爪130で固定することで、内部のコイルボビン511をヨーク570と絞り基板100との間に挟持しているので、絞り基板100とコイルボビン511とヨーク570の一体性が高まり、振動等に対して強くなる。また、ヨーク570ばかりでなく、コイルボビン511の支持の安定性も高まるので、作動の円滑化が図れる。また、ヨーク570の内側のコイルボビン511を直接爪で係止するのではないから、爪とコイルボビンを係合するために余分な寸法を確保する必要がなく、構造のコンパクト化が図れる。また、絞り
基板100に直接コイル591、592につながる電線601をクランプすることができるので、電線601の配索性がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態の電動絞り装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】同装置における絞り基板の構成を示す斜視図である。
【図3】同絞り基板の構成を示す平面図である。
【図4】同電動絞り装置のアクチュエータの構成を示す分解斜視図である。
【図5】同アクチュエータの本体ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図6】同本体ユニットのコイル巻回前の状態であるボビンユニットの外観を示す斜視図である。
【図7】同ボビンユニットの反対側の外観を示す斜視図である。
【図8】同ボビンユニットの縦断面図である。
【図9】同ボビンユニットにコイルを巻回するに当たり一定の方向性をもってボビンユニットを整列させる方法の説明用の斜視図である。
【図10】適正な方向性をもって整列していないボビンユニットを排除する場合の方法の説明用の斜視図である。
【図11】適正な方向性を持って整列させたボビンユニットをチャッキングするチャック装置の前方から見た斜視図である。
【図12】同チャック装置とボビンユニットの関係を示す斜視図である。
【図13】同チャック装置でボビンユニットを把持した状態を示す斜視図である。
【図14】同チャック装置で把持したボビンユニットを複数コイル巻回装置に装着した状態を示す斜視図である。
【図15】(a)は同ボビンユニットのコイル巻回溝の構成を示す断面図、(b)はコイル巻回溝にコイルを巻回した状態を示す断面図である。
【図16】本実施形態の電動絞り装置の完成状態を示す斜視図である。
【図17】同完成状態におけるアクチュエータ取付部を特定の2平面で切って示す概略縦断面図である。
【図18】同部分を別の平面で切って示す概略縦断面図である。
【図19】図16と別の方向に電線を引き出した場合を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
100 絞り基板
103 開口部
123 アクチュエータ受座
130 ロック爪(ヨーク係止爪)
200,300 絞り羽根
500 アクチュエータ
511 コイルボビン
540 ロータ
541 ロータ軸
541a,541b 軸端
545 永久磁石
543 駆動ピン
542 駆動レバー
591,592 コイル
570 ヨーク
520 上ボビン(分割ボビン)
522,532 軸受孔
530 下ボビン(分割ボビン)
538 窓部
535 固定突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路を形成する開口部を有した絞り基板と、この絞り基板の板面に沿って直線スライドすることで前記光路を絞り調節する絞り羽根と、前記絞り基板に固定され、前記光路を絞り調節するために前記絞り羽根を駆動するアクチュエータと、を備え、
前記アクチュエータのロータは、樹脂製のロータ軸と、該ロータ軸に固定された永久磁石と、前記ロータ軸の一端に一体成形され且つ前記絞り羽根と係合する駆動ピンを先端に備えた駆動レバーと、を有し、
前記アクチュエータのステータは、樹脂製のコイルボビンと、該コイルボビンの外周に巻回されたコイルと、該コイルが巻回された前記コイルボビンの外周に嵌合された円筒状のヨークと、を有し、
前記コイルボビンは、前記ロータの軸方向に2分割された上ボビンと下ボビンの結合体により構成され、
該コイルボビンの内部に前記ロータが収容されると共に、該コイルボビンを構成する前記上ボビンと下ボビンの各軸受孔に前記ロータ軸の両軸端が回転自在に嵌合され、
前記コイルは、前記ロータを収容した状態のコイルボビンの外周に前記ロータの軸線方向と略平行な面内で巻回され、
前記上ボビンと下ボビンの合わせ目に確保された窓部より前記駆動レバーの先端が外部に導出されていることを特徴とする電動絞り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動絞り装置であって、
前記絞り基板に、アクチュエータ受座が設けられると共にヨーク係止爪が設けられ、
前記コイルボビンの下端外周部に、前記アクチュエータ受座に乗る固定突片が突設され、
前記ヨークを前記ヨーク係止爪で係止することにより、該ヨークと前記アクチュエータ受座との間に前記コイルボビンの固定突片を挟持したことを特徴とする電動絞り装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動絞り装置であって、
前記絞り基板の前記アクチュエータの取付部の近傍に、前記コイルに接続された電線のクランプ部が一体に形成されていることを特徴とする電動絞り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2008−185975(P2008−185975A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21758(P2007−21758)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000231590)日本精密測器株式会社 (64)
【Fターム(参考)】