説明

電動給液ポンプ

【課題】給液効率に優れ、安心して使用可能な非固定式の電動給液ポンプを提供する。
【解決手段】電動機6によって駆動される液送インペラ5を内蔵した吸液管2と、吸液管の上端付近の側面に連結された吐出ホース3と、吸液管の上端に接続され、吸液管内と外気とを連通させる気体通路とを備えた電動給液ポンプ1において、前記気体通路に、外気から吸液管内への流入を許容し、その逆方向の流れを阻止する弁8が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリ容器から液体を小出しするのに用いる電動給液ポンプに関し、特にポリ容器から石油ファンヒータなどのカートリッジタンクに灯油を給油するのに好適に用いられるポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電動給液ポンプは、下端に液送インペラを内蔵した吸液管と、吸液管の上端付近の側面に連結された吐出ホースと、吸液管の上端に固定されたグリップとを備えている。吸液管は通常、液送インペラとともに出力軸がインペラに直結した電動機、及び電池と電動機を接続する配線を内蔵している。また、グリップは通常、電池ケースを兼ねている。そして、グリップと吸液管との接続部には、電動機停止後もサイホン現象により給液が継続するのを断つために、空気取り入れ口が設けられている。
【0003】
このような電動給液ポンプを使用するときは、吸液管をポリ容器に、吐出ホースをカートリッジタンクにそれぞれ入れ、グリップの外面に取り付けられたスイッチをオンする。これにより、電動機が液相インペラを駆動し、吸液管よりポリ容器内の液体が汲み上げられてその大部分が吐出ホースより吐き出され、一部が空気取り入れ口より出て吸液管の外周面を伝ってポリ容器に戻される。給液終了後は、スイッチをオフすることにより又は液面センサからの検知信号に基づいて自動的にオフとなることにより、電動機が停止し、空気取り入れ口から外気が導入される。その結果、吸液管内の残液は自重でポリ容器に戻り、吐出ホース内の残液はカートリッジタンクに落下する。
【0004】
ところで、近年に汎用されているポリ容器は、安定性向上のために背が低い形状を有しており、その開口部が従来の電動給液ポンプの空気取り入れ口よりも低い位置にある。このため、吸液管の外周面を伝って落下する液がポリ容器の外に流れ出すことの無いように、給液中は吸液管とポリ容器の開口部とを非接触に保つ煩わしさがあった。そこで、この煩わしさを回避するために、空気取り入れ口を覆うとともに吸液管の上部を包囲するカバーを取り付けたり、吸液管の外周面に空気取り入れ口に連なる溝を軸方向に設けて戻り液を溝に集約させたりする技術が提案されている(特許文献1)。また、同じ目的で、ポリ容器の開口部と嵌合する栓が空気取り入れ口の上部に取り付けられた固定式のポンプも提案されている。
【特許文献1】特開2001−165084
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれにしても従来の電動給液ポンプにおいては、汲み上げられた液体の一部が前記のように空気取り入れ口よりポリ容器に戻されることから、その分だけ電池エネルギーを無駄に消費していることになる。また、カバーや溝を設けたタイプの場合、給液中に漏れているように見えて不安感を覚えさせる。固定式の場合は、高さの異なる複数のポリ容器に対応できない。
それ故、この発明の課題は、給液効率に優れ、安心して使用可能な非固定式の電動給液ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その課題を解決するために、この発明の電動給液ポンプは、
電動機によって駆動される液送インペラを内蔵した吸液管と、吸液管の上端付近の側面に連結された吐出ホースと、吸液管内と外気とを連通させる気体通路とを備えた電動給液ポンプにおいて、
前記気体通路に、外気から吸液管内への流入を許容し、その逆方向の流れを阻止する弁が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、給液中は、液体の汲み上げに伴って吸液管内の気圧が外気と同等以上に維持されていることから、弁が閉じられている。従って、汲み上げられた液体のほとんど全部が吐出ホースより吐き出される。一方、給液を終了して電動機への通電を停止すると、吸液管内及び吐出ホース内の液体はそれぞれ自重で落下しようとする。そのため、吸液管内の気圧は瞬間的に低下するが、すぐに弁が開いて外気を取り入れる。従って、サイホン現象が生じることはない。なお、気体通路は、吸液管と一体的に形成されていても良いし、別体形成されたものであっても良い。また、グリップが給液管の上に固定されている場合は、グリップ内に気体通路を一体的にあるいは別体で形成しても良い。
【0007】
好ましい構成は、前記気体通路が、吸液管を出て水平ないし上に向かい、続いて下降する方向転換部を有するとともに、その下降路に前記弁が設けられているものである。電動給液ポンプは、通常吸液管を立てて使用されることから、この構成によれば、弁バネなどの押さえ部材が無くても給液中は吸液管内の圧力と弁体の自重で閉じることができ、構造が簡単だからである。従って、例えば前記弁として、下方に向かって径が小さくなる弁座と、その弁座に置かれた球状の弁体とからなるものであってよい。
前記気体通路における吸液管との接続部は、吸液管の軸線に対して吐出ホースと反対側の偏芯位置に形成されていると好ましい。給液中に液体が勢い余って気体通路に流れ込む事態が最小限に止められるからである。
【0008】
更に、吸液管と吐出ホースとは直接連結されていてもよいし、二股の連結管などを介して間接的に連結されていても良い。前記気体通路は、好ましくは連結管の上端に突き出すように形成された筒状のソケット、及びこのソケットと嵌合する前記弁からなる。これにより弁を吸液管や吐出管などとは別体で成形し、着脱自在とすることができるからである。この場合、通常は前記弁が樹脂製の弁室及び球状の金属製弁体とからなる。そして、特に好ましくは弁室が前記ソケットと嵌合するジョイント、小孔を介してジョイントに通じる筒状の弁室本体、弁室本体の下面に形成され下方に向かって径が小さくなる弁座、及び帯状のヒンジで弁室本体と連結されて弁室本体の上面を塞ぐ蓋とからなる。
【発明の効果】
【0009】
給液中に液体が気体通路より流出しないので、給液効率に優れるうえ、吸液管の外周面を伝って流れ落ちることもないので、安心して給液することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
−実施形態1−
以下、この発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。図1(a)は、この発明の電動給液ポンプ(以下、「ポンプ」という。)を示す一部破断正面図である。
ポンプ1は、硬質プラスチックからなる円筒状の吸液管2と、可撓性を有する吐出ホース3と、グリップ4とを備える。吸液管2の下端には液送インペラ5及びこれを駆動するために出力軸がインペラ5に直結した電動機6が内蔵されている。吐出ホース3は、吸液管2の上端付近の側面に連結され、前記の可撓性を持たせるために長さ方向に間欠的にもしくは全体に蛇腹状に成形されている。吐出ホース3の先端には液面センサが取り付けられていても良い。グリップ4は、作業者がポンプ1使用時にそれを握ってポンプ1の姿勢を保つためのものであるが、その上部が電池ケースを兼ねている。グリップ4内の電池7は、吸液管2内の図略の配線を介して電動機6と電気的に接続している。
【0011】
グリップ4は、その下部が吸液管2と吐出ホース3を互いの上端部で連結する継ぎ手をも兼ねており、吐出ホース3は、グリップ4を介してもしくはグリップ4によって吸液管2の上端付近の側面に連結されている。吸液管2の側面には図1(b)に図1(a)のB部拡大図として示すように、吐出ホース3の接続位置と対向する位置に通気孔21が形成されている。通気孔21の直径は、吐出ホース3のそれよりも十分に小さく、例えば1/4程度であり、しかもその中心は吐出ホース3のそれよりも高い位置にある。
【0012】
一方、グリップ4の下部は、通気孔21よりも下方の適宜の高さまで吸液管2を包囲しており、その下端部内周面は通気孔21とほぼ同じ周方向位置に切り欠き41が形成されている他は吸液管2の外周面に密接している。そして、グリップ4の内周面と吸液管2の外周面とで囲まれる空間は、切り欠き41に始まり通気孔21で終わる気体通路となる。通気孔21と切り欠き41との間には、下方に向かって径が小さくなる縦断面視逆八の字ないし円錐台状の弁座81と、その弁座81に置かれた球状の弁体82とからなる弁8が設けられている。弁体82は金属などの比重の大きい材質からなる。弁8は、ポンプ1が立ち姿勢にあるときは弁体82の自重により閉じている。従って、切り欠き41から入ってくる気体の通過を許容するが、衝撃を加えない限りその逆方向の流れを阻止する。
【0013】
ポンプ1を例えばポリ容器からカートリッジタンクに灯油を小出しするために使用するときは、吸液管2をポリ容器に、吐出ホース3をカートリッジタンクにそれぞれ入れ、図略のスイッチをオンする。これにより、電動機6が液送インペラ5を駆動し、図1(a)の矢印で流れ方向を示すように吸液管2よりポリ容器内の灯油が汲み上げられて吐出ホース3より吐き出される。吸液管2内の空気は、給液開始当初、灯油に先立って吐出ホース3より吐き出されるとともに、一部は通気孔21を通って弁体82を弁座81に押しつける。このため、給油中は弁8より上方の気体通路内の気圧は外気と同等もしくはそれ以上に保たれる。従って、通気孔21が十分小さいことも作用して灯油が通気孔21を通過することは滅多になく、万一通過しても弁8で止められる。
【0014】
給油を終了して電動機6への通電を停止すると、吸液管2内及び吐出ホース3内の液体は図2(a)の矢印で示すようにそれぞれ自重で落下しようとする。そのため、吸液管2内の気圧は瞬間的に低下するが、図2(b)に図2(a)のB部拡大図として示すようにすぐに弁体82が僅かに浮いて弁8を開き、外気を取り入れる。従って、ポリ容器内の液面がカートリッジタンク内の液面よりも高くてもサイホン現象が生じることはなく、吐出ホース3内の残液が吐き出された時点で給油が止まる。
【0015】
−実施形態2−
この実施形態は、弁をポンプに対して着脱自在とした例である。図3はこの実施形態に係る電動給液ポンプの要部を示す縦断面図、図4はこのポンプに装着される弁室を示し、(a)は斜視図、(b)は別の方向から眺めた斜視図、図5は同じ弁室を示し、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が底面図、(d)が左側面図、(e)が右側面図である。
電動給液ポンプは、硬質プラスチック製連結管11及び弁18を備える。連結管11は、電池収納部14、吸液管用ソケット12、及び吐出ホース用ソケット13からなる。ソケット12とソケット13とは併せて逆L字形をなすように互いに連通しており、ソケット12及びソケット13にはそれぞれ図略の吸液管の上端及び吐出ホースの上端が液密に接続されている。電池収納部14は、円筒状をなし、ソケット12の上端すなわちソケット13の外周面に一体的に形成されている。電池収納部14の中には、上向きに突き出すように筒状の弁用ソケット15が形成されている。ソケット15は、小孔を介してソケット12及びソケット13と連通している。
【0016】
弁18は、連結管11とは別体成形された樹脂製の弁室19及び球状の金属製弁体10とからなる。弁室19は、前記ソケット15の内周面と気密に嵌合するジョイント19a、小孔19bを介してジョイント19aに通じる筒状の弁室本体19c、弁室本体19cの下面に形成され下方に向かって径が小さくなる弁座19d、及び帯状のヒンジ19eで弁室本体19cと連結されて弁室本体19cの上面を塞ぐ蓋19fとからなる。弁室19は、平面視においてジョイント19aの中心と弁座19dの中心を通過する直線を軸として対称形状をなす。弁18は、蓋19fを開けた状態でジョイント19aをソケット15に圧入し、弁体10を弁座19dに置いた後、蓋19fを閉めることにより、連結管11に装着される。弁室本体19cの内周面には、前記対称軸を間において両側の位置より径方向に突き出たストッパー19g、19hが形成されており、蓋19fの沈みすぎを防止している。
【0017】
この実施形態のポンプを使用するときも実施形態1におけると同様に吸液管より液体が汲み上げられて吐出ホースより吐き出される(図3矢印)。給液を終了して電動機への通電を停止すると、吸液管内、吐出ホース内及び連結管11内の液体は図6の矢印で示すように連結管11内で分岐してそれぞれ自重で落下しようとする。そのため、連結管11内の気圧は瞬間的に低下するが、図6に示すようにすぐに弁体10が僅かに浮いて弁18を開き、外気を取り入れる。従って、移送先の液面が移送元の液面より高くてもサイホン現象が生じることはなく、吐出ホース内の残液が吐き出された時点で給油が止まる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の電動給液ポンプを示し、(a)は一部破断正面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【図2】上記電動給液ポンプの給液終了直後を示し、(a)は一部破断正面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【図3】実施形態2に係る電動給液ポンプの要部を示す縦断面図である。
【図4】上記ポンプに装着される弁を示し、(a)は斜視図、(b)は別の方向から眺めた斜視図である。
【図5】上記弁を示し、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が底面図、(d)が左側面図、(e)が右側面図である。
【図6】上記電動給液ポンプの給液終了直後の要部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 電動給液ポンプ
2 吸液管
3 吐出ホース
4 グリップ
5 液送インペラ
6 電動機
7 電池
8、18 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機によって駆動される液送インペラを内蔵した吸液管と、吸液管の上端付近の側面に連結された吐出ホースと、吸液管内と外気とを連通させる気体通路とを備えた電動給液ポンプにおいて、
前記気体通路に、外気から吸液管内への流入を許容し、その逆方向の流れを阻止する弁が設けられていることを特徴とする電動給液ポンプ。
【請求項2】
前記気体通路が、吸液管を出て水平ないし上に向かい、続いて下降する方向転換部を有するとともに、その下降路に前記弁が設けられている請求項1に記載の電動給液ポンプ。
【請求項3】
前記弁が、下方に向かって径が小さくなる弁座と、その弁座に置かれた球状の弁体とからなる請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記気体通路における吸液管との接続部は、吸液管の軸線に対して吐出ホースと反対側の偏芯位置に形成されている請求項1に記載のポンプ。
【請求項5】
更に、吸液管と吐出ホースを連結する連結管を備え、前記気体通路が、連結管に上向きに突き出すように形成された筒状のソケット、及びこのソケットと嵌合する前記弁からなる請求項1に記載のポンプ。
【請求項6】
前記弁が樹脂製の弁室及び球状の金属製弁体とからなり、弁室が前記ソケットと嵌合するジョイント、小孔を介してジョイントに通じる筒状の弁室本体、弁室本体の下面に形成され下方に向かって径が小さくなる弁座、及び帯状のヒンジで弁室本体と連結されて弁室本体の上面を塞ぐ蓋とからなる請求項5に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−327336(P2007−327336A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151081(P2006−151081)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(394001087)株式会社京都プラテック (4)
【Fターム(参考)】