説明

電動車両用バッテリの取り付け構造

【課題】車体フロアに対するバッテリの取り付け面精度を高めて、バッテリの取り付けを自動化し易くし、バッテリの支持姿勢を安定させる。
【解決手段】バッテリ2を車体フロア5に取り付けるためのロック機構22を、左側のフロントサイドメンバ7およびリヤサイドメンバ11間のサイドメンバ結合部7a、および右側のフロントサイドメンバ8およびリヤサイドメンバ12間のサイドメンバ結合部8aよりも前方に6個、後方に2個、設ける。前側における6個のロック機構22は、そのうちの4個を、バッテリ2の前側における車幅方向両側にそれぞれ2個ずつ配置し、残りの2個を、バッテリ2の前端に配置し、後側における2個のロック機構22は、バッテリ2の後側における車幅方向両側に配置する。よってバッテリ2は、高強度な車体フロア5の前側部分に対する取り付け強度分担割合を、低強度な車体フロア5の後側部分に対する取り付け強度分担割合よりも高くされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド車両のように電動モータを搭載した電動車両において、
電動モータ用のバッテリを車体フロアに対し取り付けるための取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車両のような電動車両にあっては、電動モータ用に大容量で大型のバッテリ(多数のバッテリを相互に接続してユニット化したもの)が必要である。
【0003】
かかるバッテリは大型であるだけでなく、重く(例えば、電気自動車の場合400kg程度)、車体に着脱自在または永続的に取り付けるとき、車体の重心が高くなって不安定になるのを回避する工夫、および車幅方向の車両重量バランスをとる工夫が必要である。
そのため、大型で重いバッテリを車体に取り付けるに当たっては、このバッテリを車体フロアの下側に配して、またバッテリの車幅方向中央がほぼ車体の車幅方向中程に位置するよう配して取り付けるのが一般的である。
【0004】
かようにバッテリを車体フロアの下側に取り付ける場合、バッテリの厚さ(車両上下方向寸法)を大きくすることができないことから、また、バッテリの車幅方向における寸法(バッテリの幅)も、バッテリが車幅を越えてはみ出すのを許容し得ないことから、
電動車両の要求が満足されるようバッテリの大容量化を実現しようとすると、バッテリの車両前後方向における寸法(バッテリの長さ)が大きくなるのを避けられない。
【0005】
かように大容量化のため長大となったバッテリを車体フロアの下側に配して取り付ける技術としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが提案されている。
この提案技術は、バッテリを車幅方向両側における多数の箇所で車体フロアに取り付けるよう構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−150841号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上記従来の提案技術は、バッテリの多数の車体フロア取り付け点を、バッテリの車幅方向両側においてそれぞれ等分配置するものであるため、以下のような問題を生ずる。
【0008】
つまり車体フロアは、車幅方向両側に左右フロントサイドメンバおよび左右リヤサイドメンバを具え、左右フロントサイドメンバの車両前後方向後端にそれぞれ左右リヤサイドメンバの車両前後方向前端を結合して成る左右サイドメンバを主たる車体フロア骨格部材とするが、
左フロントサイドメンバと左リヤサイドメンバとの間における左側の前後サイドメンバ結合部、および、右フロントサイドメンバと右リヤサイドメンバとの間における右側の前後サイドメンバ結合部を挟んで、これら左右の前後サイドメンバ結合部より前方の車体フロア前側部分の強度は乗員保護の観点から、前後サイドメンバ結合部より後方の車体フロア後側部分の強度よりも大きくなるよう構成する。
ちなみに、車体フロア後側部分の強度を大きくしない理由は、車体フロア後側部分を必要以上に大きくすることで車体重量が増すのを回避するためである。
【0009】
前記したごとく大容量化のため長大となったバッテリを車体フロアの下側に配して取り付けると、バッテリが高強度な車体フロア前側部分および低強度な車体フロア後側部分の双方に跨って車両前後方向に延在することになる。
ところで前記した提案技術のように、バッテリの車体フロア取り付け点を、バッテリの車幅方向両側においてそれぞれ等分配置するのでは、
当該車体フロア取り付け点の配置に当たり、車体フロア前側部分および車体フロア後側部分間における強度差についての考慮がなされていない。
【0010】
そのため、低強度な車体フロア後側部分に対するバッテリの取り付け強度分担割合が、高強度な車体フロア前側部分に対するバッテリの取り付け強度分担割合よりも大きくなることがある。
この場合、低強度な車体フロア後側部分が、車両上下方向における変形に弱いことから、車体フロアに対するバッテリの取り付け面精度を確保し難くなって、バッテリの取り付けを自動化するときの妨げになるだけでなく、バッテリに変形荷重が加わったり、バッテリの支持姿勢が不安定になるなどの弊害も及ぶ。
【0011】
本発明は、車体フロア前側部分および車体フロア後側部分に対するバッテリの取り付け強度分担割合を適切にすることで、バッテリの取り付け面精度を確保し易くし、これにより上記の問題を解消し得るようにした、電動車両用バッテリの取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、本発明による電動車両用バッテリの取り付け構造は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の要旨構成の基礎前提となる電動車両を説明するに、これは、
車幅方向両側に左右フロントサイドメンバおよび左右リヤサイドメンバを具え、左右フロントサイドメンバの車両前後方向後端にそれぞれ左右リヤサイドメンバの車両前後方向前端を結合して成る左右サイドメンバを骨格部材とする車体フロアの下側に、左右フロントサイドメンバおよび左右リヤサイドメンバに跨って車両前後方向に延在するバッテリを取り付けたものである。
【0013】
本発明は、かかる電動車両に用いるバッテリの取り付け構造を、特に以下のような構成とした点に特徴づけられる。
つまり、上記左右フロントサイドメンバおよび左右リヤサイドメンバ間の前後サイドメンバ結合部を挟んで、該前後サイドメンバ結合部よりも車両前後方向前側におけるバッテリの車体フロア取り付け点数を、上記前後サイドメンバ結合部よりも車両前後方向後側におけるバッテリの車体フロア取り付け点数より多くしたものである。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明の電動車両用バッテリの取り付け構造にあっては、以下の作用効果が奏し得られる。
【0015】
つまり、前後サイドメンバ結合部よりも前側におけるバッテリの車体フロア取り付け点数を、後側におけるバッテリの車体フロア取り付け点数より多くしたことで、
高強度な車体フロア前側部分に対するバッテリの取り付け強度分担割合が、低強度な車体フロア後側部分に対するバッテリの取り付け強度分担割合よりも大きくなる。
このため、バッテリの取り付け面精度を確保し易くなって、バッテリの取り付けを容易に自動化することができると共に、バッテリに変形荷重が加わるという弊害もなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のバッテリ取り付け構造を適用可能な電気自動車の車体に対するバッテリの配置例を示す、車両の左前方上方から見た斜視図である。
【図2】図1の電気自動車を車両上方から見て示すバッテリ配置例の平面図である。
【図3】図1の電気自動車を車両側方から見て示すバッテリ配置例の側面図である。
【図4】図1に示す電気自動車の車体フロア構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施例になるバッテリ取り付け構造を具えた電気自動車を車両下方から見て示す底面図である。
【図6】図5に示す電気自動車におけるバッテリガイド手段を、車体フロアの下方から見て示す斜視図である。
【図7】図6のバッテリガイド手段を、同図のVII-VII線上で断面とし、矢の方向に見て示す断面図である。
【図8】図6,7に示すバッテリガイド手段の分解斜視図である。
【図9】図5に示した電気自動車におけるねじ式ロック機構をアンロック位置で示す、ロックナット側から見た全体斜視図である。
【図10】図5に示した電気自動車におけるねじ式ロック機構をロック位置で示す、ロックナット側から見た全体斜視図である。
【図11】図5に示した電気自動車におけるねじ式ロック機構のロックナット強制連れ回し部を分解して示す、ねじ式ロック機構の要部分解斜視図である。
【図12】図11におけるロックナット強制連れ回し部を拡大して示す拡大詳細分解斜視図である。
【図13】図9〜12におけるねじ式ロック機構のロック時におけるロックナット強制連れ回し動作を説明するための斜視図で、 (a)は、ねじ式ロック機構をロックナット強制連れ回し前のアンロック位置で示す斜視図、 (b)は、ねじ式ロック機構をロックナット強制連れ回し後のロック位置で示す斜視図である。
【図14】図9〜12におけるねじ式ロック機構のロックナット強制連れ回し動作を説明するための正面図で、 (a)は、ねじ式ロック機構を図13(b)と同じロックナット強制連れ回し後のロック位置で示す正面図、 (b)は、ねじ式ロック機構をロックナット強制連れ回し後、ロックナットがねじ込み方向にストロークされた状態で示す正面図である。
【図15】図9〜12におけるねじ式ロック機構が図14(a)の状態から同図(b)の状態へ移行する時において、ロックナット強制連れ回し部材がロックナット強制連れ回し力を解放する場合の動作を説明するための説明図で、 (a)は、ロックナット強制連れ回し部材がロックナット強制連れ回し力を解放する前の状態を示す動作説明図、 (b)は、ロックナット強制連れ回し部材がロックナット強制連れ回し力を解放した時の状態を示す動作説明図である。
【図16】図9〜12におけるねじ式ロック機構のロック解除動作を説明するための正面図で、 (a)は、ねじ式ロック機構をロック解除開始前の状態で示す正面図、 (b)は、ねじ式ロック機構をロック解除開始直後の状態で示す正面である。
【図17】図9〜12におけるねじ式ロック機構のロック解除時におけるロックナット強制連れ回し動作を説明するための斜視図で、 (a)は、ねじ式ロック機構をロックナット強制連れ回し前のロック位置で示す斜視図、 (b)は、ねじ式ロック機構をロックナット強制連れ回し後のアンロック位置で示す斜視図である。
【図18】図9〜12におけるねじ式ロック機構が図16(a)の状態から同図(b)の状態へ移行する時において、ロックナット強制連れ回し部材がロックナット強制連れ回し力を発生し得るようになる場合の動作を説明するための説明図で、 (a)は、ロックナット強制連れ回し部材がロックナット強制連れ回し力を発生し得るようになる前の状態を示す動作説明図、 (b)は、ロックナット強制連れ回し部材がロックナット強制連れ回し力を発生し得るようになった時の状態を示す動作説明図である。
【図19】図5に示した電気自動車におけるコネクタユニットを、車体フロアトンネル部と直交する面で断面として示す縦断正面図である。
【図20】図19に示したコネクタユニットを、同図のXX-XX線上で断面とし、矢の方向に見て示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す一実施例に基づき詳細に説明する。
<全体構成>
図1〜3は、本発明のバッテリ取り付け構造を適用可能な電気自動車の車体に対するバッテリの配置例を示し、
図1は、車両の左前方上方から見て示す斜視図、図2は、車両の上方から見て示す平面図、図3は、車両の左側方から見て示す側面図である。
これらの図において、1は、電動車両である電気自動車の車体、2は、電動モータ(図示せず)用のバッテリをそれぞれ示す。
【0018】
図示の電気自動車は、上記の電動モータ(図示せず)を動力源として車両前方のモータルーム内に搭載し、この電動モータにより左右前輪3L,3Rを駆動して走行可能なものとする。
なお図1〜3では、従動輪としての左右後輪をそれぞれ4L,4Rにより示した。
【0019】
電気自動車は、電動モータ用に大容量で大型のバッテリ2を必要とし、このバッテリ2は通常、多数のバッテリシェルを相互に接続して1ユニットに構成する。
従ってバッテリ2は、大型であるだけでなく、重く(例えば400kg程度)、車体1に対し着脱自在または永続的に取り付けるとき、車体の重心が高くなって走行不安定になるのを回避する工夫、および車幅方向の車両重量バランスをとる工夫が、安全上も肝要である。
【0020】
そのため、大型で重いバッテリ2を車体1に取り付けるに当たっては、このバッテリ2を図1〜3に示すごとく車体フロア5の下側に配して、またバッテリ2の車幅方向中央がほぼ車体の車幅方向中程に位置するよう配して取り付けるのが良い。
なお図1〜3における6は、車体フロア5の車幅方向中程で車両前後方向に延在する車体フロアトンネル部(トンネル部材)である。
【0021】
以下、車体フロア5を図4,5に基づき概略説明する。
図4は、車体フロア5を車両の左斜め上方から見て示す斜視図、図5は、車体フロア5を、その下側にバッテリ2が取り付けられた状態で、車両の下方から見て示す底面図である。
【0022】
車体フロア5は、図4に明示するごとく車幅方向中程で車両前後方向に延在する中高形状のトンネル部を提供するトンネル部材6と、
図4,5に明示するごとく車幅方向両側にあってトンネル部材6に対しほぼ平行となるよう車両前後方向に延在する左右フロントサイドメンバ7,8と、
同じく図4,5に明示する通り、これら左右フロントサイドメンバ7,8の車幅方向外側に沿うよう車両前後方向に延在する左右サイドシル9,10と、
図5に明示するごとく、左右フロントサイドメンバ7,8の車両前後方向後端にそれぞれ前後サイドメンバ結合部7a,8aを介し結合されて、ここから車両前後方向後方へ延在する左右リヤサイドメンバ11,12と、
トンネル部材6および左右フロントサイドメンバ7,8間を結合するよう車幅方向に延在する橋絡部材15,16とを、主たる車体フロア骨格部材として具える。
【0023】
車体フロア5の組み立てに際しては、先ず車体組み立て治具(図示せず)により車体骨格部材6〜12,15,16間の相互位置決めを行うが、その際、これら車体骨格部材6〜12,15,16に設けた基準位置としてのロケートホール(図5に、左右フロントサイドメンバ7,8のロケートホール7b,8bで示す)に車体組み立て治具の対応する位置決めピンを挿入して車体骨格部材6〜12,15,16の相互位置決めを行う。
【0024】
次に、この相互位置決め状態を保って車体骨格部材6〜12,15,16間を溶接などにより相互に結合する。
そして、車体フロア骨格部材6〜12,15,16間の隙間を塞ぐよう図4のごとく、フロントフロアパネル13およびリヤフロアパネル14を取り付けることにより、車体フロア5を高精度に組み立てる。
なお、かかる高精度な組み立てを実現するために、組み立て時の基準位置となるロケートホール(図5に、左右フロントサイドメンバ7,8のロケートホール7b,8bで示す)は、対を成すもの同士が車幅方向両側に位置するよう配置する。
【0025】
図1〜3につき前述したごとくバッテリ2を車体フロア5の下側に配して、またバッテリ2の車幅方向中央がほぼ車体の車幅方向中程に位置するよう配して取り付けるに際しては、
バッテリ2を車体フロア5に対し図5に示すごとき前後方向相対位置に位置させ、これによりバッテリ5の大部分を後で詳述するごとく、車体後側部分よりも強度的に優れており、且つバッテリ取り付け精度の維持に有利な、車体前側部分を構成するトンネル部材6、左右フロントサイドメンバ7,8および橋絡部材15,16によって支持し得るようになす。
【0026】
なおバッテリ2は図5に示すごとく、バッテリフレーム2a内に多数のバッテリシェル(図示せず)を収納し、これら多数のバッテリシェル相互に電気接続して1ユニットに構成し、電動モータ用として十分な大容量化を実現したものとする。
かかるバッテリ2を上記の通り車体フロア5の下側に配して取り付けに当たり、本実施例においては当該バッテリ2を、図5に示したガイド手段21による車両上下方向案内下に上昇させて、最終的に図1〜3および図5に示すごとき車体フロア5の下側における取り付け位置となし、この位置においてバッテリ2をねじ式ロック機構22により車体フロア5の下側にロックして取り付けるものとする。
【0027】
一方でバッテリ2は上記の車体取り付け時に、電動モータなど車体側電装系に対し電気接続する必要があり、この電気接続を司るコネクタ構造が不可欠である。
そこで本実施例においては図5に示すごとく、上記の車体側電装系に接続された車体側のコネクタ部材、およびバッテリ2に接続されたバッテリ側のコネクタ部材より成るコネクタユニット23を設ける。
【0028】
なお上記のようにバッテリ2を、ガイド手段21による車両上下方向案内下に上昇させた後、このバッテリ2をねじ式ロック機構22で車体フロア5の下側に取り付ける場合、
車体側のコネクタ部材およびバッテリ側のコネクタ部材より成るコネクタユニット23は、バッテリ2の上昇ストローク中にバッテリ側のコネクタ部材が車体側のコネクタ部材に電気接続状態に嵌合されるよう構成、配置するのが、バッテリ2の取り付けを自動化する上で大いに有利である。
【0029】
<ガイド手段>
バッテリ2を車体取り付けに際し上昇させる間、車両上下方向に案内するためのガイド手段21を詳述する。
このガイド手段21は、上昇中のバッテリ2を、車体フロア5の下面における下向きバッテリ収納空所に対し整列した車両前後方向位置および車幅方向位置に位置決めしておくもので、図6〜8につき後述するロケートピンなどにより構成する。
【0030】
かかるロケートピンなどで構成されるガイド手段21は、上記したその設置目的に照らして当然ながら、2個一組として設ける必要がある。
そしてガイド手段21は、バッテリ2を車体フロア5の下面における下向きバッテリ収納空所に対し高精度に整列させるものでないと、バッテリ2が上昇ストローク中にバッテリ収納空所の開口縁と干渉し、最悪の場合バッテリ2が取り付け不能になる。
【0031】
バッテリ2を車体フロア5の下面における下向きバッテリ収納空所に対し高精度に整列させるためには、その用をなすべく設ける2個一組のバッテリガイド手段21を、前記車体フロア組み立て時の高精度な基準位置であった車体前側部分の車幅方向両側における2個一組のロケートホール(例えば図5に示すフロントサイドメンバ7,8のロケートホールを7b,8b)の近くに配置する必要がある。
【0032】
その理由は、以下のためである。
バッテリガイド手段21と車体フロア5のロケートホール(例えば図5に示すフロントサイドメンバ7,8のロケートホールを7b,8b)との距離が遠いほど、バッテリガイド手段21の設置箇所における車体フロア組み立て誤差の累積値が大きくなって、バッテリガイド手段21が車体フロア5に対し大きな相対位置ずれを持つようになり、その分だけバッテリ収納空所に対するバッテリ2の整列精度が低下する。
しかし、バッテリガイド手段21を車体フロアロケートホールの近くに配置すれば、上記車体組み立て誤差の累積値が小さく、車体フロア5に対するバッテリガイド手段21の相対位置ずれも小さくて、バッテリ収納空所に対するバッテリの整列精度が高くなる。
【0033】
かかる理由から、2個一組のバッテリガイド手段21は、車体フロア組み立て時の高精度基準位置であった車体前側部分の車幅方向両側における2個一組の車体フロアロケートホール7b,8bの近くに配置すれば、
2個一組のバッテリガイド手段21がバッテリ2を車体フロア5の下面における下向きバッテリ収納空所に対し高精度に整列させ得て、
バッテリ2が上昇ストローク中にバッテリ収納空所の開口縁と干渉する不都合を回避することができる。
【0034】
かように2個一組のバッテリガイド手段21を、同じく2個一組の車体フロア5のロケートホール7b,8bの近くに配置させるに際し本実施例においては、
これらロケートホール7b,8bが車体フロア5の前側部分において車幅方向両側に位置することから、バッテリガイド手段21を図5に示すごとく、バッテリ2の前端に近い箇所でその車幅方向両側に設置する。
【0035】
かように配置するバッテリガイド手段21はそれぞれ、図6〜8に明示する構成のロケートピンにより構成する。
つまり、バッテリ2のバッテリフレーム2aにブラケット24を介してロケートピン本体25を設け、このロケートピン本体25をブラケット24から上方へ突出させる。
バッテリ2の上昇中、ロケートピン本体25が貫入するロケートスリーブ26をフロントサイドメンバ7(8)に設ける。
【0036】
かかるバッテリガイド手段21によれば、バッテリ2の上昇中、これに設けたロケートピン本体25が図6,7に示すごとく、フロントサイドメンバ7(8)に設けたロケートスリーブ26内に貫入し、上昇中のバッテリ2を車両前後方向および車幅方向に拘束する。
よってガイド手段21は、バッテリ2を車体フロア5の下面における下向きバッテリ収納空所に対し高精度に整列させた状態で車両上下方向に案内し、バッテリ2が上昇ストローク中にバッテリ収納空所の開口縁と干渉する不都合を回避することができる。
【0037】
また本実施例においては、バッテリガイド手段21を図5に示すごとく、バッテリ2の前端に近い箇所でその車幅方向両側に設けることにより、車体フロア5の組み立て時高精度基準位置であった車体フロア前側部分のロケートホール7b,8bに近接配置したため、
バッテリ2を車体フロア5の下面における下向きバッテリ収納空所に対し一層高精度に整列させておくことができ、上記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0038】
<ねじ式ロック機構の構成>
上記したロケートピン式バッテリガイド手段21による案内下で図1〜3および図5に示すごとき車体フロア5の下側における取り付け位置まで上昇させたバッテリ2を車体フロア5の下側にロックして取り付けるためのねじ式ロック機構22を以下に詳述する。
【0039】
このねじ式ロック機構22を本実施例においては、図5に示すように左側フロントサイドメンバ7と左側リヤサイドメンバ11との左側前後サイドメンバ結合部7a、および右側フロントサイドメンバ8と右側リヤサイドメンバ12との右側前後サイドメンバ結合部8aよりも車両前後方向前方には6個、これら左右のサイドメンバ結合部7a,8aよりも車両前後方向後方には2個、それぞれ設ける。
【0040】
前側における6個のねじ式ロック機構22は、そのうちの4個を、バッテリ2(バッテリフレーム2a)の前側における車幅方向両側にそれぞれ2個ずつ配置して、バッテリ2の前側における車幅方向両側をフロントサイドメンバ7,8に取り付けるようになし、
残りの2個を、バッテリ2(バッテリフレーム2a)の車両前後方向前端に車幅方向へ相互離間させて配置し、バッテリ2の前端をフロントサイドメンバ7,8およびトンネル部材6間の橋絡部材15,16に取り付けるようになす。
後側における2個のねじ式ロック機構22は、バッテリ2(バッテリフレーム2a)の車両前後方向後側における車幅方向両側にそれぞれ配置して、バッテリ2の後側における車幅方向両側をリヤサイドメンバ11,12に取り付けるようになす。
【0041】
ここで、ねじ式ロック機構22を左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aより前方に多く(6個)配置し、左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aより後方に少なく(2個)配置した理由を説明する。
【0042】
本実施例のようにバッテリ2を車体フロア5の下側に取り付ける場合、バッテリ2の厚さ(車両上下方向寸法)を、同方向における確保スペースの関係で、あまり大きくすることができないことから、また、バッテリ2の車幅方向における寸法(バッテリ2の幅)も、バッテリ2が車幅を越えてはみ出すのを許容し得ないことから、
電動車両の要求が満足されるようバッテリ2の大容量化を実現しようとすると、バッテリ2の車両前後方向における寸法(バッテリ2の長さ)が必然的に大きくなる。
【0043】
かように大容量化のため長大となったバッテリ2を車体フロア5の下側に配して取り付けると、図5に示すようにバッテリ2が、左フロントサイドメンバ7と左リヤサイドメンバ11との間における左側の前後サイドメンバ結合部7a、および、右フロントサイドメンバ8と右リヤサイドメンバ12との間における右側の前後サイドメンバ結合部8a分の双方に跨って車両前後方向に延在することになる。
【0044】
ところで、左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aを挟んで、これよりも前方における車体フロア5の前側部分には、乗員保護の目的などに叶うよう十分な強度を持たせてあるが、左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aよりも後方における車体フロア5の後側部分は、車体フロア前側部分ほどの強度が要求されないことから、車体軽量化のために車体フロア前側部分よりも低強度に構成されている。
【0045】
従来のように、かかる車体フロア前側部分および車体フロア後側部分間における強度差を考慮することなく、バッテリ2の車体フロア5に対する取り付け点を、バッテリ2の車幅方向両側においてそれぞれ等分配置するのでは、
低強度な車体フロア後側部分に対するバッテリ2の取り付け強度分担割合が、高強度な車体フロア前側部分に対するバッテリ2の取り付け強度分担割合と同じになったり、これよりも大きくなることがある。
【0046】
このように低強度な車体フロア後側部分に対するバッテリ2の取り付け強度分担割合が、高強度な車体フロア前側部分に対するバッテリ2の取り付け強度分担割合以上になると、
低強度な車体フロア後側部分が、車両上下方向における変形に弱いことから、車体フロア5に対するバッテリ2の取り付け面精度を確保し難くなって、バッテリ2の取り付けを自動化するときの妨げになるだけでなく、バッテリ2に変形荷重が加わったり、バッテリ2の支持姿勢が不安定になるなどの弊害も及ぶ。
【0047】
そこで本実施例においてはバッテリ2の取り付け強度を、低強度な車体フロア後側部分よりも、高強度な車体フロア5の前側部分で多く分担させるようにし、これにより、車体フロア5に対するバッテリ2の取り付け面精度を確保し易くなって、バッテリ2の取り付けを容易に自動化し得るようになすと共に、バッテリ2に変形荷重が加わったり、バッテリ2の支持姿勢が不安定になるなどの問題を生ずることのないようになす。
【0048】
そのため本実施例においては、車体フロア5に対するバッテリ2の取り付けを司るねじ式ロック機構22を図5につき上述した通り、左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aより前方に多く(6個)配置し、左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aより後方に少なく(2個)配置する。
これによりバッテリ2は、左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aより前方における6個のねじ式ロック機構22で高強度な車体フロア5の前側部分に取り付け、左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aより後方における2個のねじ式ロック機構22で低強度な車体フロア5の後側部分に取り付けることとなる。
【0049】
8個のねじ式ロック機構22は全て同様な構成とするため、バッテリ2(バッテリフレーム2a)の前端部において車幅方向両側に配置したねじ式ロック機構22につき、その詳細構造を以下に説明する。
図9,10はそれぞれ、ねじ式ロック機構22の全体構造を示し、図9は、このねじ式ロック機構22をアンロック状態で、また図10は、このねじ式ロック機構22をロック状態でそれぞれ示す。
そして図11,12はそれぞれ、図9,10に示すねじ式ロック機構22の要部を分解して示す斜視図である。
【0050】
図9,10に全体を示すねじ式ロック機構22は、車体フロア5(フロントサイドメンバ7,8)に固着したロックプレート27との共働によりバッテリ2を車体フロア5の下側取り付け位置に着脱自在にロックするもので、
そのためロックプレート27には、矩形開口27aを穿設すると共に、その中央に配して円形開口27bを穿設する。
ロックプレート27を車体フロア5に固着するに際しては、ロックプレート27の四隅における隅角孔27cに挿通したボルトなどの緊締手段により、ロックプレート27を対応する側のフロントサイドメンバ7(8)に取着する。
【0051】
ねじ式ロック機構22は、バッテリ2(バッテリフレーム2a)に取着したロックベース31と、これに取り付けたボルト32と、これに螺合したロックナット33とを主たる構成要素とする。
ボルト32は、ロックベース31に回転自在に挿通すると共に、図9〜11におけるボルト32の下端に一体成形したボルトヘッド(図示せず)で、図9〜11の上方へ抜け止めする。
【0052】
上記のごとくロックベース31に抜け止めして回転自在に設けたボルト32は、上記抜け止め端部と反対側の端部にロックナット33を螺合して具える。
このロックナット33は、そのねじ込み方向に見て矩形など四角形断面のナットとし、その中央に、ボルト32へねじ込むための雌ねじを有する構成とする。
【0053】
そして図9〜11に示すように、ロックベース31の中心円形ボス部31aには、ロックナット33の回転を図9に示す弛緩方向制限位置であるアンロック位置、および、図10,11に示す緊締方向制限位置であるロック位置間に制限する2個のストッパ31b,31cを設ける。
【0054】
ロックプレート27に設けた矩形孔27aおよび円形孔27bのうち、前者の矩形孔27aは、図9に示すアンロック位置にあるロックナット33の通過を、その通過方向と直交する全方向に正確に位置決めした状態で許容するものとし、後者の円形孔27bは、ロックベース31に設けた中心円形ボス部31aの嵌合を許容するものとする。
ただし円形孔27bの直径は、図10,11に示すロック位置にあるロックナット33の通過を許容しない大きさとする。
【0055】
なおロックナット33には、その挿入通過方向先端の長辺側隅角をそれぞれ面取りしてテーパ面33aを、また短辺側隅角をそれぞれ面取りしてテーパ面33bを形成する。
これらテーパ面33a,33bはそれぞれ以下のように機能する。
【0056】
つまり、バッテリガイド手段21は前記したごとく、バッテリ2をその上昇ストローク中、横方向に位置決めして、バッテリ収納空所に対し整列させるが、この整列だけでは、コネクタユニット23を構成する車体側コネクタ部材およびバッテリ側コネクタ部材の嵌合部を相互に正しく芯だしすることができない。
かかる芯だし不良があると、両コネクタ部材の相互嵌合部に、嵌合方向を横切る方向の横負荷を掛けてコネクタユニット23の耐久性を低下させるだけでなく、コネクタ部材の相互嵌合部に部分的に隙間を生じさせてスパークが発生する原因となる。
【0057】
ところで本実施例においては、ロックナット33をロックプレート27の矩形孔27aに挿入方向へ通過させようとするとき、ロックナット33のテーパ面33a,33bが矩形孔27aの開口縁に衝接して当該矩形孔27aの開口縁との共働により、ロックナット33をロックプレート27の矩形孔27a内に導きつつこの矩形孔27a内に嵌合させる。
【0058】
このとき、ロックナット33がロックプレート27の矩形孔27a内に隙間無く密に嵌合されることから、バッテリ2を、コネクタユニット23のバッテリ側コネクタ部材が車体側コネクタ部材に対し正確に芯だしされるよう位置決めすることができ、
両コネクタ部材の相互嵌合部に、嵌合方向を横切る方向の横負荷が作用することがなく、コネクタユニット23の耐久性が低下したり、コネクタ部材の相互嵌合部に部分的に隙間が生じてスパークが発生するという問題を回避することができる。
【0059】
従って、ロックナット33のテーパ面33a,33b、および、これらと共働するロックプレート27の矩形孔27a(その開口縁)は、コネクタユニット23のバッテリ側コネクタ部材と車体側コネクタ部材とが相互に芯だしされるようバッテリ2を車体フロア5に対し水平方向に位置決めする位置決め部の用をなし、
結果として、コネクタユニット23のバッテリ側コネクタ部材および車体側コネクタ部材間を芯だしするためのコネクタ部材芯だし手段を構成する。
【0060】
次に図11,12をも参照しつつ、ボルト32の緊締方向(本実施例では右ねじとする)回転時および弛緩方向回転時に、ロックナット33を同方向へ強制的に連れ回して、図10,11に示す緊締方向制限位置(ロック位置)および図9に示す弛緩方向制限位置(アンロック位置)に回転させるためのロックナット連れ回し機構を詳述する。
【0061】
図11,12に明示するごとく、ロックナット33をねじ込むボルト32の先端部外周に複数個の軸線方向溝32aを円周方向等間隔に形成することにより、当該ボルト32の先端部を非円形断面形状となす。
かかるボルト32の先端部に図9,10のごとくに嵌着してロックナット強制連れ回し部材34を設ける。
【0062】
このロックナット強制連れ回し部材34は、板状部材34aと、これに一体成形した2個の脚部34bとで構成する。
板状部材34aの中心に、ボルト32の上記先端部非円形断面形状に対応する非円形孔34dを穿ち、この非円形孔34dをボルト32の先端部に摺動自在に嵌合することにより、ロックナット強制連れ回し部材34をボルト32の先端部に回転係合させて軸線方向スライド可能に設ける。
【0063】
ロックナット強制連れ回し部材34は、ボルト32の先端部に遊嵌したバネ35などの弾性手段でロックナット33に向け附勢し、このため、ロックナット強制連れ回し部材34から遠いバネ35の端部が着座するバネ座36をボルト32の先端部に係着して設ける。
バネ35などの弾性手段でロックナット33に向け附勢されるロックナット強制連れ回し部材34の脚部34bにそれぞれ、ロックナット33の前記した長辺側テーパ面33aとの共働により以下のカム作用を生起する平坦カム面34cを設定する。
【0064】
ロックナット強制連れ回し部材側平坦カム面34cは、ボルト32の回転時にこれと一体回転するロックナット強制連れ回し部材34が平坦カム面34cをバネ35の弾力でロックナット長辺側テーパ面33aに押圧されることにより、ロックナット33を連れ回し得るよう傾斜させるが、以下の作用も可能になるような傾斜角とする。
つまり、ロックナット33がストッパ31bまたは31cにより対応方向制限位置に抑止された後は、ロックナット強制連れ回し部材34が平坦カム面34cにおいてロックナット長辺側テーパ面33aを乗り越えつつ、また、この乗り越えに伴ってバネ35を圧縮しつつロックナット33から遠ざかる方向へストロークしながら、ロックナット33に対し相対回転してロックナット連れ回し力を解放し得るよう、ロックナット強制連れ回し部材側平坦カム面34cの傾斜角を決定する。
【0065】
バネ35などの弾性手段でロックナット33に向け附勢されるロックナット強制連れ回し部材34のストローク限界位置は、ボルト32の先端部外周に設けた軸線方向溝32aの長さにより規定する。
軸線方向溝32aの長さを決定するに際しては、ボルト32の緊締方向回転によりロックナット33が図10,11のロック位置にされて緊締方向ストロークを開始した後ただちに、ロックナット強制連れ回し部材34が上記のストローク限界位置となってここに止まり、ロックナット33が更に緊締方向ストロークを行うとき、ロックナット33がロックナット強制連れ回し部材34の脚部34bから離れるよう、軸線方向溝32aの長さを決定する。
【0066】
<ねじ式ロック機構の作用>
上記の構成になるねじ式ロック機構22は、ロックベース31を前記した通りバッテリ2(バッテリフレーム2a)に取着してバッテリ2の側に設け、ロックプレート27を車体フロア5に取着して車体側に設けることにより実用し、
バッテリ2を車体フロア5の下側における下向き開口付きバッテリ収納空所内に着脱自在に収納してロックするに際し、ねじ式ロック機構22はロックプレート27との共働により以下のように当該ロック機能を果たす。
【0067】
先ず、バッテリ取り付け時のロック作用を図13〜15に基づき説明する。
バッテリ2の取り付けに際しては、ボルト32の図13(a)に矢印で示す弛緩方向への回転によりロックナット33が、後で詳述するようにロックナット連れ回し部材34により連れ回されて、ストッパ31bにより図9および図13(a)に示す弛緩方向制限位置(アンロック位置)されている。
【0068】
ここでバッテリ2を車体フロア5の下面における下向き開口付きバッテリ収納空所内に上昇させると、ロックナット33がテーパ面33a,33bとロックプレート矩形孔27aとの前記した共働により、ロックプレート矩形孔27aに対し芯だしされつつ、図9および図13(a)に示すごとくロックプレート矩形孔27aに通過すると共に、ロックベース31の中心円形ボス部31aがロックプレート円形孔27bに陥入して、ロックナット33がバッテリ収納空所内に位置し、ロックベース31がロックプレート27の外部露出下面に着座する。
【0069】
この状態でボルト32をナットランナなどにより図13(b)に矢印で示す緊締方向に回転させると、ボルト32と共に回転するロックナット強制連れ回し部材34が平坦カム面34cおよびテーパ面33aを介してロックナット33を連れ回し、このロックナット33をストッパ31cとの衝接により、図10、図13(b)および図14(a)に示す緊締方向制限位置(ロック位置)となす。
しかし、ロックナット33はこの緊締方向制限位置(ロック位置)を越えてロックナット強制連れ回し部材34により連れ回されることがなく、図10、図13(b)および図14(a)に示すごとく当該回転位置に止まる。
【0070】
ところでロックナット強制連れ回し部材34は、図15(a)の状態から同図(b)に示すように、平坦カム面34cにおいてバネ35に抗しロックナット長辺側テーパ面33aを乗り越えつつ、また、この乗り越えに伴ってバネ35を圧縮しつつロックナット33から遠ざかる方向にストロークしながら、ロックナット33に対し相対回転し得てロックナット連れ回し力を解放することができる。
【0071】
このため、ロックナット強制連れ回し部材34の存在によってもボルト32は緊締方向への更なる回転を妨げられない。
ボルト32を更に緊締方向へ回転をさせると、ロックナット33は図14(b)に示すごとく、緊締方向制限位置(ロック位置)を保って同図の矢印方向へねじ込まれ、同図に示す下限位置のロックナット強制連れ回し部材34(脚部34b)から離れつつ、ロックベース31に接近する方向へストロークする。
これによりロックナット33およびロックベース31は、両者間にロックプレート27を挟圧し、バッテリ2をバッテリ収納空所内に収納した位置にロックして保持することができる。
【0072】
次に、バッテリ取り外し時のアンロック作用を図16〜18に基づき説明する。
バッテリ2をバッテリ収納空所から取り出すためロック解除するに際しては、上記したロック状態においてボルト32をナットランナなどで図16(a)に矢印で示す弛緩方向へ回転させる。
【0073】
当初はロックナット33が図16(a)に示すように、図14(b)と同じロック用ねじ込みストローク位置にあって、下限位置のロックナット強制連れ回し部材34(脚部34b)から離れているため、ボルト32と共に弛緩方向に回転されるロックナット強制連れ回し部材34は、ロックナット33に対し同方向へ相対回転可能であり、ボルト32の上記弛緩方向回転を何ら妨げない。
【0074】
かかるボルト32の弛緩方向回転は、ロックナット33をして図16(b) および図17(b)に矢印で示す緩み方向へストロークさせ、直ちに図18 (a)に示すごとく下限位置のロックナット強制連れ回し部材34(脚部34b)に接触させる。
しかし図18 (a)に示す接触状態では未だ、ロックナット強制連れ回し部材34(脚部34b)がロックナット33のねじ込み方向後端面上に乗っていて、ロックナット連れ回し力を発生し得ないため、ロックナット強制連れ回し部材34(脚部34b)はボルト32と共にロックナット33に対し弛緩方向へ相対回転する。
【0075】
かかる相対回転によりロックナット強制連れ回し部材34は図18(b)に示すごとく、脚部34bの平坦カム面34cがロックナット長辺側テーパ面33aと対向する回転位置となる。
この時バネ35がロックナット強制連れ回し部材34を図18(b)の矢印方向に附勢して、ロックナット強制連れ回し部材34を、その平坦カム面34cがロックナット長辺側テーパ面33aに対向したストローク位置となす。
以上により図16(b) および図17(a)に示すごとく、ロック時と同じ緊締方向制限位置のままのロックナット33と、ロックナット強制連れ回し部材34とは、テーパ面33aおよび平坦カム面34cの共働により回転係合された状態となる。
【0076】
この状態でボルト32を更に弛緩方向に回転させると、ボルト32と共に回転するロックナット強制連れ回し部材34が平坦カム面34cおよびテーパ面33aを介してロックナット33を連れ回し、このロックナット33を図17(b)に示すごとくストッパ31bと衝接する弛緩方向制限位置(アンロック位置)まで強制回転させる。
しかし、ロックナット33はこの弛緩方向制限位置(アンロック位置)を越えてロックナット強制連れ回し部材34により連れ回されることがなく、図17(b)に示すごとく当該回転位置に止まる。
【0077】
ところでロックナット強制連れ回し部材34は、図18(b)の状態から同図(a)に示すように、平坦カム面34cにおいてバネ35に抗しロックナット長辺側テーパ面33aを乗り越えつつ、また、この乗り越えに伴ってバネ35を圧縮しつつロックナット33から遠ざかる方向へストロークしながら、ロックナット33に対し相対回転し得てロックナット連れ回し力を解放することができる。
【0078】
このため、ロックナット強制連れ回し部材34の存在によってもボルト32は弛緩方向への更なる回転を妨げられない。
ボルト32を弛緩方向へ更に回転をさせると、ロックナット33は図17(b)の弛緩方向制限位置(アンロック位置)を保って同図の矢印方向へ緩みストロークを行い、バネ35を圧縮しつつロックナット強制連れ回し部材34(脚部34b)を同方向へ変位させながら、ロックベース31から遠ざかる方向へストロークする。
【0079】
これにより、ロックナット33およびロックベース31によるロックプレート27の挟圧力(ロック)が解除され、ロックナット33をロックプレート27の矩形孔27aに通過させつつ、またロックベース31の中心円形ボス部31aをロックプレート27の円形孔27bから抜きながら、バッテリ2をバッテリ収納空所内から取り外すことができる。
【0080】
<コネクタユニット>
なお、バッテリ2は車体側電装系との間の電気接続を司るコネクタ構造が不可欠であり、そのため本実施例においては図5につき前述したごとくコネクタユニット23を設ける。
このコネクタユニット23は、図19,20に示すように、車体側電装系に接続された車体側のコネクタ部材41と、バッテリ2に接続されたバッテリ側のコネクタ部材42とで構成する。
【0081】
ところで本実施例のように、バッテリ2を、前記したロケートピン式バッテリガイド手段21による案内下で図1〜3および図5に示すごとき車体フロア5の下側における取り付け位置まで上昇させ、この位置でバッテリ2を上記したねじ式ロック機構22により車体フロア5の下側におけるバッテリ収納空所内にロックして取り付ける場合、
車体側のコネクタ部材41およびバッテリ側のコネクタ部材42より成るコネクタユニット23は、バッテリ2の上昇ストローク中にバッテリ側コネクタ部材42が車体側コネクタ部材41に電気接続状態に嵌合されるよう構成、配置するのが、バッテリ2の取り付けを自動化する上で大いに有利であり、本実施例においてもコネクタユニット23を、図19,20につき後述するごとく、そのように構成する。
【0082】
しかして、コネクタユニット23が、2個一組のバッテリガイド手段21(図5参照)の双方から遠く離れているときは勿論のこと、これらバッテリガイド手段23のうちの一方のみから遠く離れているときも、
前記した車体組み立て誤差の累積により、コネクタユニット23を成すバッテリ側コネクタ部材42と、車体側コネクタ部材41との相対位置ずれが発生して、バッテリ側コネクタ部材42と車体側コネクタ部材41との相互嵌合部に芯ずれを生ずる。
【0083】
かかるバッテリ側コネクタ部材42および車体側コネクタ部材41間の芯ずれは、両コネクタ部材41,42の相互嵌合部に、嵌合方向を横切る方向の横負荷を掛けてコネクタユニット23の耐久性を低下させるだけでなく、コネクタ部材41,42の相互嵌合部に部分的に隙間を生じさせてスパークの発生原因となる。
【0084】
そこで本実施例においては、バッテリ側コネクタ部材42および車体側コネクタ部材41により構成されるコネクタユニット23を図5に示すように、バッテリ2の車幅方向両側に設けたバッテリガイド手段21の双方に対し近い位置、つまり、これらバッテリガイド手段21から等距離の中間位置に配置する。
【0085】
かかる配置のコネクタユニット23は、バッテリガイド手段21の双方に対し近く、車体側コネクタ部材41およびバッテリ側コネクタ部材42の位置が車体組み立て誤差の累積による影響を最小限にされて高精度である。
従ってこれらコネクタ部材41,42の相互嵌合部における芯ずれを殆どなくすことができ、両コネクタ部材41,42の相互嵌合部に、嵌合方向を横切る方向の横負荷が作用することが無く、コネクタユニット23の耐久性が低下したり、コネクタ部材41,42の相互嵌合部に部分的に隙間が生じてスパークが発生するという問題を解消することができる。
【0086】
なお上記の趣旨に照らせば、コネクタユニット23は車体フロア5の車幅方向中程に配置することになる。
ところで車体フロア5の車幅方向中程には、車体フロア5の強度確保と、車体側電装系のワイヤハーネス配索用などのため、トンネル部材6が設けられ、車両前後方向に延在する中高形状のトンネル部が設定されている。
そのため本実施例においてはコネクタユニット23を、図5,19,20に示すように車体フロア5の車幅方向中程で車両前後方向に延在する中高形状のトンネル部材6(トンネル部)内に配置する。
【0087】
この配置に当たっては、図5に明示するごとく車体フロア5のトンネル部材6(トンネル部)と、バッテリ2(バッテリフレーム2a)の前端面とが交差する箇所のトンネル部材6(トンネル部)内にコネクタユニット23を配置するのが良い。
【0088】
そして図19,20に示すごとく、コネクタユニット23を構成する車体側コネクタ部材41およびバッテリ側コネクタ部材42のうち、車体側コネクタ部材41は上記の箇所において車体フロア5のトンネル部材6(トンネル部)内にブラケット43を介し取り付け、バッテリ側コネクタ部材42は上記の箇所においてバッテリ2(バッテリフレーム2a)の前端面にブラケット44を介し取り付ける。
【0089】
なお、車体側コネクタ部材41およびバッテリ側コネクタ部材42は、バッテリ2の上昇ストローク中に(好ましくは上昇ストローク端で)電気接続状態に相互嵌合されるような取り付け位置とするのは勿論であるが、
ねじ式ロック機構22によるバッテリ2の取り付け後、下側におけるバッテリ側コネクタ部材42がトンネル部材6(トンネル部)から下方へ張り出すことのないよう車体側コネクタ部材41およびバッテリ側コネクタ部材42の取り付けレベルを決定するのが良い。
【0090】
<実施例の効果>
上記した本実施例のバッテリ取り付け構造によれば、バッテリ2を車体フロア5の下側にロックして取り付けるためのねじ式ロック機構22を、図5に示すように左側前後サイドメンバ結合部7aおよび右側前後サイドメンバ結合部8aよりも車両前後方向前方には6個、これら左右の前後サイドメンバ結合部7a,8aよりも車両前後方向後方には2個、それぞれ設け、前後サイドメンバ結合部7a,8aより前方におけるバッテリ2の車体取り付け点数(6個)を、これら前後サイドメンバ結合部7a,8aより後方におけるバッテリ2の車体取り付け点数(2個)よりも多くしたため、以下の作用効果が奏し得られる。
【0091】
つまり上記の構成によれば、車体フロア5に対するバッテリ2の取り付け強度を、前後サイドメンバ結合部7a,8aより後方の低強度な車体フロア後側部分よりも、前後サイドメンバ結合部7a,8aより前方の高強度な車体フロア5の前側部分で多く分担させることとなる。
かかるバッテリ2の前後取り付け強度分担割合により、高強度な車体フロア5の前側部分が車体フロア5に対するバッテリ2の取り付け面精度を高めることができ、この高い取り付け面精度によってバッテリ2の取り付けを容易に自動化し得ると共に、バッテリ2に変形荷重が加わったり、バッテリ2の支持姿勢が不安定になるなどの問題を回避することができる。
【0092】
また、前側における6個のねじ式ロック機構22のうち、バッテリ2(バッテリフレーム2a)の前側における車幅方向両側に配置した2個ずつのねじ式ロック機構22で、バッテリ2の前側における車幅方向両側を対応する側のフロントサイドメンバ7,8に取り付けるようにしたため、
この取り付けが車体フロア5の骨格部材である頑丈なフロントサイドメンバ7,8への取り付けとなって、上記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0093】
更に、前側における6個のねじ式ロック機構22のうち、残りの2個を、バッテリ2(バッテリフレーム2a)の車両前後方向前端に車幅方向へ相互離間させて配置し、バッテリ2の前端をフロントサイドメンバ7,8およびトンネル部材6間の橋絡部材15,16に取り付けるようにしたため、以下の作用効果が得られる。
つまり、バッテリ2の前端におけるこれら2個のねじ式ロック機構22が、バッテリ2(バッテリフレーム2a)の前部分の車幅方向両側に2個ずつ配置した4個のねじ式ロック機構22によるバッテリ2の車体フロア前側部分への取り付け強度を補佐して、高強度な車体フロア前側部分に対するバッテリ2の取り付け強度分担割合を更に高めるよう機能し、前記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0094】
そして、バッテリ2の前端における2個のねじ式ロック機構22による取り付けも、車体フロア5の骨格部材である頑丈なフロントサイドメンバ7,8およびトンネル部材6間の橋絡部材15,16への取り付けであって、前記の作用効果を一層顕著なものにすることができる。
【0095】
<その他の実施例>
なお図示の実施例では、ねじ式ロック機構22によるバッテリ2の車体フロア取り付け点を、合計8個とし、前後サイドメンバ結合部7a, 8aよりも前方に6個、前後サイドメンバ結合部7a,8aよりも後方に2個、それぞれ配置したが、ねじ式ロック機構22によるバッテリ2の車体フロア取り付け点の合計数は任意でよく、要は、前後サイドメンバ結合部7a, 8aより前方におけるバッテリ2の車体フロア取り付け点数を、前後サイドメンバ結合部7a,8aより後方におけるバッテリ2の車体フロア取り付け点数よりも多くすれば、前記した作用効果を達成することができる。
【0096】
また図示例では、バッテリ2の前部分の車幅方向両側にねじ式ロック機構22を設けて、ここにバッテリ2の車体フロア取り付け点を設定すると共に、バッテリ2の前端にねじ式ロック機構22を設けて、ここにもバッテリ2の車体フロア取り付け点を設定したが、
必ずしもバッテリ2の前部分の車幅方向両側と、バッテリ2の前端との双方にねじ式ロック機構22を設ける必要はなく、バッテリ2の取り付け強度要求を勘案し、いずれか一方のみにねじ式ロック機構22を設けてバッテリ2の車体フロア取り付け点を設定することも可能である。
【0097】
更に図示例ではバッテリ2が、多数のバッテリシェルを相互に接続して1ユニットに構成したものである場合に付き説明したが、
バッテリ2が、その他バッテリモジュールと称せられるようなものなど、如何なる型式のものである場合も、前記した本発明の着想を適用して同様な作用効果を奏し得るのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0098】
1 車体
2 バッテリ
2a バッテリフレーム
3L,3R 左右前輪(駆動輪)
4L,4R 左右後輪
5 車体フロア
6 トンネル部材
7,8 左右フロントサイドメンバ
7a,8a 左右の前後サイドメンバ結合部
7b,8b ロケートホール
9,10 左右サイドシル
11,12 左右リヤサイドメンバ
13 フロントフロアパネル
14 リヤフロアパネル
15,16 橋絡部材
21 バッテリガイド手段
22 ねじ式ロック機構
23 コネクタユニット
24 ブラケット
25 ロケートピン本体
26 ロケートスリーブ
27 ロックプレート
27a 矩形開口
27b 円形開口
31 ロックベース
31b,31c ストッパ
32 ボルト
33 ロックナット
33a ロックナット長辺側テーパ面
33b ロックナット短辺側テーパ面
34 ロックナット強制連れ回し部材
34a 板状部材
34b 脚部
34c 平坦カム面
35 バネ
36 バネ座
41 車体側コネクタ部材
42 バッテリ側コネクタ部材
43,44 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向両側に左右フロントサイドメンバおよび左右リヤサイドメンバを具え、左右フロントサイドメンバの車両前後方向後端にそれぞれ左右リヤサイドメンバの車両前後方向前端を結合して成る左右サイドメンバを骨格部材とする車体フロアの下側に、前記左右フロントサイドメンバおよび左右リヤサイドメンバに跨って車両前後方向に延在するバッテリを取り付けた電動車両において、
前記左右フロントサイドメンバおよび左右リヤサイドメンバ間の前後サイドメンバ結合部を挟んで、該前後サイドメンバ結合部よりも車両前後方向前側におけるバッテリの車体フロア取り付け点数を、前記前後サイドメンバ結合部よりも車両前後方向後側におけるバッテリの車体フロア取り付け点数より多くしたことを特徴とする電動車両用バッテリの取り付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両用バッテリの取り付け構造において、
前記バッテリの車幅方向両側における車体フロア取り付け点では、バッテリを、対応する側におけるフロントサイドメンバおよびリヤサイドメンバに取り付けたことを特徴とする電動車両用バッテリの取り付け構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載された電動車両用バッテリの取り付け構造において、
前記前後サイドメンバ結合部よりも車両前後方向前側におけるバッテリの車体フロア取り付け点のうち、少なくとも1個の取り付け点をバッテリの車両前後方向前端に配置したことを特徴とする電動車両用バッテリの取り付け構造。
【請求項4】
前記左右フロントサイドメンバ間に、車幅方向中程で車両前後方向へ延在するトンネル部材を具え、該トンネル部材と左右フロントサイドメンバの間にそれぞれ延在する左右橋絡部材を介しトンネル部材を左右フロントサイドメンバに結合することにより、トンネル部材も車体フロア骨格部材として用いる、請求項3に記載された電動車両用バッテリの取り付け構造において、
バッテリの車両前後方向前端に配置する前記少なくとも1個の取り付け点を2個の取り付け点とし、
これら2個の取り付け点では、バッテリを、対応する側における前記左右橋絡部材に取り付けたことを特徴とする電動車両用バッテリの取り付け構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−126452(P2011−126452A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287749(P2009−287749)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】