電動車両用バッテリパック
【課題】 バッテリケースの冷却通路に冷却空気を供給する吸入ダクトの圧損を最小限に抑えながら、冷却空気に含まれる水を効率的に除去できるようにする。
【解決手段】 冷却空気吸入口48aから吸入ダクト48に吸入された冷却空気は、上流側吸気通路54および下流側吸気通路55を経てバッテリケースの冷却通路に供給される。冷却空気吸入口48aから上流側吸気通路54に吸入された冷却空気の一部は、下流側吸気通路55に向かって上り傾斜に配置された底壁52aに接触して含まれる水を捕捉され、かつ前記冷却空気の残部は縦壁52cに接触して含まれる水を捕捉された状態で下流側吸気通路55に流入する。このように、冷却空気に含まれる水を底壁52aおよび縦壁52cにより効果的に捕捉しながら、底壁52aに形成した切欠き52bにより下流側吸気通路55の開口面積を増加させることで、圧損の発生を最小限に抑えることができる。
【解決手段】 冷却空気吸入口48aから吸入ダクト48に吸入された冷却空気は、上流側吸気通路54および下流側吸気通路55を経てバッテリケースの冷却通路に供給される。冷却空気吸入口48aから上流側吸気通路54に吸入された冷却空気の一部は、下流側吸気通路55に向かって上り傾斜に配置された底壁52aに接触して含まれる水を捕捉され、かつ前記冷却空気の残部は縦壁52cに接触して含まれる水を捕捉された状態で下流側吸気通路55に流入する。このように、冷却空気に含まれる水を底壁52aおよび縦壁52cにより効果的に捕捉しながら、底壁52aに形成した切欠き52bにより下流側吸気通路55の開口面積を増加させることで、圧損の発生を最小限に抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリを収納して車室の外部に配置されるバッテリケースと、前記バッテリケースの内部に形成された冷却通路に冷却空気を吸入する吸入ダクトとを備える電動車両用バッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
吸気ダクト、バッテリケース、第1排気ダクト、換気ファンおよび第2排気ダクトを直列に接続し、換気ファンを駆動することで吸気ダクトから吸い込んだ車室内の空気をバッテリケースに供給してバッテリを冷却し、バッテリケースから出た排気を第1排気ダクト、換気ファンおよび第2排気ダクトを介して排出するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4547747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリケースの内部に吸入される冷却空気に水が含まれていると、その水がバッテリケースの内部に侵入してバッテリに付着し、バッテリどうしが短絡したり、バッテリと車体とが地絡したりする可能性があるため、冷却空気に含まれる水をできる限り除去する必要がある。しかしながら、冷却空気の流通経路に水を除去するためのフィルタ等を配置すると、流通経路における圧損が増加して充分な量の冷却空気をバッテリケースに供給することが難しくなる問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、バッテリケースの冷却通路に冷却空気を供給する吸入ダクトの圧損を最小限に抑えながら、冷却空気に含まれる水を効率的に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、複数のバッテリを収納して車室の外部に配置されるバッテリケースと、前記バッテリケースの内部に形成された冷却通路に冷却空気を吸入する吸入ダクトとを備える電動車両用バッテリパックであって、前記吸入ダクトは、冷却空気吸入口から水平方向に延びる上流側吸気通路と、前記上流側吸気通路から下向きに延びて前記冷却通路に連通する下流側吸気通路とからなり、前記上流側吸気通路の底壁は前記下流側吸気通路に向かって上り傾斜に配置され、前記底壁の幅方向中央部には上流側から下流側に向かって拡幅して前記下流側吸気通路の上流側に連通する切欠きが形成され、前記切欠きには上向きに起立する縦壁が立設されることを特徴とする電動車両用バッテリパックが提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記下流側吸気通路の前記冷却空気吸入口に対向する側壁には、上下方向に延びるリブが前記冷却空気吸入口に向けて突設されることを特徴とする電動車両用バッテリパックが提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記底壁の下端には水抜き孔が形成されることを特徴とする電動車両用バッテリパックが提案される。
【0009】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記上流側吸気通路内の前記縦壁の上端よりも低い位置に、前記吸入ダクトに吸入された冷却空気の温度を検出する温度センサが設けられることを特徴とする電動車両用バッテリパックが提案される。
【0010】
尚、実施の形態のバッテリモジュール42は本発明のバッテリに対応する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、複数のバッテリを収納して車室の外部に配置されるバッテリケースの内部に形成された冷却通路に冷却空気を吸入する吸入ダクトが、冷却空気吸入口から水平方向に延びる上流側吸気通路と、上流側吸気通路から下向きに延びて冷却通路に連通する下流側吸気通路とからなるため、冷却空気は上流側吸気通路および下流側吸気通路を経てバッテリケースの冷却通路に供給される。冷却空気吸入口から上流側吸気通路に吸入された冷却空気の一部は、下流側吸気通路に向かって上り傾斜に配置された底壁に接触して含まれる水を捕捉された状態で下流側吸気通路に流入し、前記冷却空気の残部は縦壁に接触して含まれる水を捕捉された状態で下流側吸気通路に流入する。このように、冷却空気に含まれる水を底壁および縦壁により効果的に捕捉しながら、底壁に形成した切欠きにより下流側吸気通路の開口面積を増加させることで、圧損の発生を最小限に抑えることができる。
【0012】
また請求項2の構成によれば、下流側吸気通路の冷却空気吸入口に対向する側壁に、上下方向に延びるリブを冷却空気吸入口に向けて突設したので、上流側吸気通路から方向を変えて下流側吸気通路に流入する冷却空気の流れを整流して圧損を更に低減することができる。
【0013】
また請求項3の構成によれば、底壁の下端に水抜き孔を形成したので、底壁や縦壁に接触して捕捉された水を水抜き孔を介して吸入ダクトの外部に排出することができる。
【0014】
また請求項4の構成によれば、上流側吸気通路内の縦壁の上端よりも低い位置に、吸入ダクトに吸入された冷却空気の温度を検出する温度センサを設けたので、冷却空気の循環を停止した状態で、バッテリにより温められて軽くなった冷却空気が逆流して吸入ダクトの上部に滞留しても、滞留する高温の冷却空気を避けた位置に配置した温度センサで正しい温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電気自動車の側面図。
【図2】車体フレームおよびバッテリパックの斜視図。
【図3】バッテリパックの斜視図。
【図4】図1の4方向矢視図
【図5】図4の5−5線断面図。
【図6】図4の6−6線断面図。
【図7】図4の要部拡大図。
【図8】図7の8−8線断面図。
【図9】図7の9方向矢視図。
【図10】図9の10方向矢視図。
【図11】図3に対応する作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、電気自動車の車体フレーム11は、車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム12,12と、フロアフレーム12,12の前端から上方に屈曲しながら前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム13,13と、フロアフレーム12,12の後端から上方に屈曲しながら後方に延びる左右一対のリヤサイドフレーム14,14と、フロアフレーム12,12の車幅方向外側に配置された左右一対のサイドシル15,15と、サイドシル15,15の前端をフロアフレーム12,12の前端に接続する左右一対のフロントアウトリガー16,16と、サイドシル15,15の後端をフロアフレーム12,12の後端に接続する左右一対のリヤアウトリガー17,17と、左右一対のフロントサイドフレーム13,13の前端部間を車幅方向に接続するフロントバンパービーム18と、左右一対のフロアフレーム12,12の前端部間を車幅方向に接続するフロントクロスメンバ19と、左右一対のフロアフレーム12,12の前後方向中間部間を車幅方向に接続するミドルクロスメンバ20と、左右一対のリヤサイドフレーム14,14の前後方向中間部間を車幅方向に接続するリヤクロスメンバ21と、左右一対のリヤサイドフレーム14,14の後端部間を車幅方向に接続するリヤバンパービーム22とを備える。
【0018】
電気自動車の走行用駆動源であるモータ・ジェネレータ23の電源となるバッテリパック31は車体フレーム11の下面側から吊り下げ支持される。即ち、バッテリパック31の下面には車幅方向に延びるフロント吊り下げビーム32、ミドル吊り下げビーム33およびリヤ吊り下げビーム34が固定されており、フロント吊り下げビーム32の両端が左右一対のフロアフレーム12,12の前部に固定され、ミドル吊り下げビーム33の両端が左右一対のフロアフレーム12,12の後部に固定され、リヤ吊り下げビーム34の両端が左右一対のリヤサイドフレーム14,14の前部から垂下する支持部材35,35の下端に固定される。またバッテリパック31の前端の車幅方向中央部が前部ブラケット36を介してフロントクロスメンバ19に支持されるとともに、バッテリパック31の後端の車幅方向中央部が後部ブラケット37を介してリヤクロスメンバ21に支持される。更に、バッテリパック31は、フロント吊り下げビーム32およびミドル吊り下げビーム33の中間位置において、ミドルクロスメンバ20の下面に支持される。
【0019】
バッテリパック31を車体フレーム11に支持した状態で、バッテリパック31の上面は、車室25の下部にフロアパネル26を介して対向する。即ち、本実施の形態のバッテリパック31は、車室25の外部に配置される。
【0020】
図3および図4に示すように、バッテリパック31は、金属製のバッテリトレー38と、バッテリトレー38に上方から重ね合わされた合成樹脂製のバッテリカバー39とを備える。バッテリトレー38の周縁部とバッテリカバー39の周縁部とは、シール部材40(図3参照)を挟んで多数のボルト41…で締結されており、従ってバッテリパック31の内部は基本的に密閉された空間となる。バッテリトレー38の上面には、複数のバッテリセルを直列に積層したバッテリモジュール42…が複数個搭載される。バッテリトレー38およびバッテリカバー39は、本発明のバッテリケース24を構成する。
【0021】
バッテリトレー38は、アッパープレート43とロアプレート44とを結合したもので(図5および図6参照)、それらの間に冷却空気が流れる冷却通路が形成されており、アッパープレート43の上面に接触するバッテリモジュール42…との間で熱交換を行い、充放電により発熱するバッテリモジュール42…を冷却する。バッテリトレー38の冷却通路は所定の箇所で分岐して一対の排出ダクト49,49に接続される(図3参照)。
【0022】
バッテリパック31の後部に設けられた冷却装置46は、車幅方向中央部に配置された吸入ダクト48と、吸入ダクト48の車幅方向両側に配置された左右一対の排出ダクト49,49とを備える。吸入ダクト48の下端はバッテリトレー38の後端に接続され、左右の排出ダクト49,49の下端はバッテリトレー38の後端に接続される。吸入ダクト48の上部前面には、その内部にバッテリパック31の外部の空気を冷却空気として吸入するための冷却空気吸入口48aが前向きに開口する。また排出ダクト49,49の内部にはそれぞれ電動の冷却ファン47,47が収納されており、熱交換後の冷却空気を排出するための冷却空気排出口49a,49aが、各冷却ファン47,47の外周に臨むように形成される。左右の冷却空気排出口49a,49aは、後向きかつ車幅方向外向きに開口する(図3、図4、図7の矢印A参照)。
【0023】
従って、冷却ファン47,47を駆動すると、吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aから吸入された冷却空気はバッテリトレー38の内部に供給され、バッテリトレー38の内部を流れる間にバッテリモジュール42…との間で熱交換を行った後、排出ダクト49,49の冷却ファン47,47を通過して冷却空気排出口49a,49aから排出される。
【0024】
次に、図4〜図10を参照して冷却装置46の構造を詳細に説明する。
【0025】
図7〜図10に示すように、冷却装置46の吸入ダクト48は、バッテリカバー39の後部から上向きに突出する凸部39a(図8参照)の後方に設けられるもので、バッテリカバー39の上面に4本のボルト51…で固定されるロア部材52と、ロア部材52の上端開口部を覆うように結合されるアッパー部材53とを備えており、アッパー部材53の前面に冷却空気吸入口48aが開口する。冷却空気吸入口48aの位置は、バッテリパック31の後部上方に位置するとともに、バッテリカバー39の凸部39aの後方に位置している。
【0026】
吸入ダクト48の内部は、冷却空気吸入口48aから後方に延びる上流側吸入通路54と、上流側吸入通路54の後端から下向きに延びてバッテリトレー38に連なる下流側吸入通路55とを備える。上流側吸入通路54はアッパー部材53の内部に区画され、下流側吸入通路55はロア部材52の内部に区画される。
【0027】
ロア部材52の上面には、上流側吸入通路54および下流側吸入通路55を仕切る底壁52aが一体に形成されており、底壁52aは前から後に向けて次第に高くなるように傾斜している。底壁52aの車幅方向中間部は、後から前に向けてU字状ないしはV字状に延びる切欠き52bが形成されており、この切欠き52bの縁から縦壁52cが上向きに立設される。縦壁52cの上端とアッパー部材53の天井部との間には、冷却空気が通過可能な空間が確保される。冷却空気吸入口48aに対向するロア部材52の後側の側壁52dには、下流側吸入通路55の内部を上下方向に延びる2枚のリブ52e,52eが前向きに突設されており、これらのリブ52e,52eの下端はバッテリトレー38との接続部まで延びている。冷却空気吸入口48aの下方に位置する底壁52aの下端には、上流側吸入通路54を吸入ダクト48の外部に連通させる水抜き孔52fが形成される。
【0028】
また吸入ダクト48の上流側吸入通路54には、吸い込まれた冷却空気の温度を検出するための温度センサ50が設けられる。温度センサ50の位置は、縦壁52cの上端よりも低い位置に設定される。
【0029】
図4〜図7に示すように、冷却装置46の排出ダクト49,49は、バッテリトレー38の後端から上向きに立ち上がる上流側排出通路56,56と、上流側排出通路56,56の上端から車幅方向内側に連なる下流側排出通路57,57とを備えており、下流側排出通路57,57の直下に冷却ファン47,47が配置される。冷却ファン47,47の外周を渦巻き形のファンケーシング58,58が取り囲んでおり、その外端に冷却空気排出口49a,49aが開口する。
【0030】
左右の冷却ファン47,47のファンケーシング58,58には互換可能な同一部材が使用されており、従って平面視(図7参照)で、左右のファンケーシング58,58は車体中心線に対して非対称になっている。前述したように、左右の冷却ファン47,47の冷却空気排出口49a,49aは、矢印Aで示すように共に後向きかつ車幅方向外向きに冷却空気を排出するため、冷却空気排出口49a,49aに直交する法線Nは、ファンケーシング58,58の接線Tに対して角度θだけ傾斜している。
【0031】
冷却空気は、冷却空気排出口49a,49aが成す面に対して直角に流出するため、冷却空気排出口49a,49aに直交する法線Nをファンケーシング58,58の接線Tに対して角度θだけ傾斜させたことにより、左右のファンケーシング58,58に互換可能な同一部材を使用して部品の種類の削減を図りながら。左右の冷却空気排出口49a,49aから略左右対称な方向に冷却空気を排出することができる。
【0032】
後輪を懸架するサスペンション装置59,59(図4参照)は、例えばH型トーションビーム式サスペンションで構成されており、左右のトレーリングアーム部60,60と、それらを車幅方向に接続するトーションビーム部61と、トレーリングアーム部60,60の後端をリヤサイドフレーム14,14の下面に支持する左右のサスペンションスプリング62,62および左右のサスペンションダンパー63,63とを備える。
【0033】
左右のファンケーシング58,58の冷却空気排出口49a,49aからの冷却空気の排出方向(矢印A参照)は、平面視でサスペンション装置59,59の一部(実施の形態ではサスペンションダンパー63,63)とオーバーラップしている。冷却空気排出口49a,49aからの冷却空気の排出方向Aを上述した方向に設定することで、冷却空気を車体との干渉を最小限に抑えながらサスペンション装置59,59の空間を通して車外にスムーズに排出することができる。
【0034】
バッテリケース24の後部上面に排出ダクト49,49を冷却ファン47,47と共に支持する支持フレーム64は、パイプ材を逆U字状に屈曲して両端をバッテリカバー39の左右上面に立設した第1フレーム64aと、第1フレーム64aの右端側に接続されて後方および左方に延びるL字状の第2フレーム64bと、第2フレーム64bの左端側と第1フレーム64aの中間部とを前後方向に接続するI字状の第3フレーム64cとを備える。
【0035】
支持フレーム64は、第1フレーム64aに固定された4個の取付ブラケット65a〜65dと、第2フレーム64bに固定された3個の取付ブラケット65e〜65gと、第3フレーム64cに固定された1個の取付ブラケット65hとを備える(図7参照)。左側の排出ダクト49は、第1フレーム64aの2個の取付ブラケット65a,65bにそれぞれボルト66,66で締結され、左側の排出ダクト49および左側の冷却ファン47は、第2フレーム64bの取付ブラケット65gおよび第3フレーム64cの取付ブラケット65hにそれぞれボルト67,67で共締めされる。
【0036】
また右側の排出ダクト49は、第1フレーム64aの取付ブラケット65dおよび第2フレーム64bの取付ブラケット65eにそれぞれボルト68,68で締結され、右側の排出ダクト49および右側の冷却ファン47は、第1フレーム64aの取付ブラケット65cおよび第2フレーム64bの取付ブラケット65fにそれぞれボルト69,69で共締めされる。
【0037】
このように、排出ダクト49,49および冷却ファン47,47を共通のボルト67,67,69,69で支持フレームに共締めしたので、冷却装置46の小型化および部品点数の削減が可能になる。
【0038】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0039】
バッテリパック31のバッテリケース24内に収納したバッテリモジュール42…は充放電により発熱するため、冷却装置46によりバッテリトレー38の内部に供給される冷却空気で冷却される。即ち、冷却ファン47,47を駆動すると、バッテリケース24の上面およびフロアパネル26の下面間の空気が冷却空気として吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aから吸入され、吸入ダクト48の上流側吸入通路54および下流側吸入通路55を経てバッテリトレー38の内部に供給される。
【0040】
図3に示すように、バッテリトレー38の内部に供給された冷却空気は、所定の箇所で分岐して一対の排出ダクト49,49へと流れる間に、バッテリトレー38のアッパープレート43とバッテリモジュール42…の底面との間で熱交換を行うことで、バッテリモジュール42…を冷却する。排出ダクト49,49に流入した冷却空気は、上流側排出通路56,56、下流側排出通路57,57、冷却ファン47,47を通過し、ファンケーシング58,58の冷却空気排出口49a,49aから排出される。
【0041】
このとき、仮に左右一方の冷却ファン47が故障して作動不能になっても、図11に示すように、他方の冷却ファン47の作動により、吸入ダクト48→冷却通路→他方の排出ダクト49→他方の冷却ファン47の経路で冷却空気を流通させるとともに、一方の排出ダクト49→冷却通路→他方の排出ダクト49→他方の冷却ファン47の経路で冷却空気を流通させることで、バッテリケース24内の全てのバッテリモジュール42…を冷却することができる。
【0042】
またバッテリパック31を車室25の下方に搭載し、吸入ダクト48および排出ダクト49,49をバッテリケース24および車室25間に挟まれる位置に配置したので、パイプ状のダクト等のような他部材を接続してバッテリケース24の前方側または後方側から冷却空気の吸入あるいは排出を行う場合に比べて、冷却空気の吸入経路および排出経路をバッテリケース24の上面に納めることが可能になる。その結果、バッテリケース24の前方側および後方側に配置された部品とバッテリケース24とが干渉し難くなり、バッテリケース24のレイアウトが容易になるだけでなく、パイプ状のダクト等をバッテリケース24に連結する必要がないため、その連結部におけるシールが不要になって部品点数が削減される。
【0043】
しかも吸入ダクト48および排出ダクト49,49を車幅方向に見て少なくとも一部がオーバーラップするように配置したので、吸入ダクト48および排出ダクト49,49をコンパクトに纏めるとともに、吸入ダクト48および排出ダクト49,49が、車幅方向に延びる段部を有するフロアパネル26や、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ21等と干渉し難くし、バッテリパック31の車体へのレイアウトを容易にすることができる。更に、車幅方向の中央に配置された吸入ダクト48の車幅方向両側にそれぞれ排出ダクト49,49を配置したので、埃や水を撥ね上げる車輪と吸入ダクト48との間に排出ダクト49,49を位置させることで、冷却空気吸入口48aから冷却空気と共に埃や水が吸い込まれ難くすることができる。
【0044】
また吸入ダクト48をバッテリカバー39の後端上部に配置するとともに、バッテリカバー39に車室25側に向かって上向きに突出する凸部39aを設け、吸入ダクト48をバッテリカバー39の凸部39aの後方に配置したので、車両の走行中に車体前方側から飛散して来る埃や水をバッテリカバー39の凸部39aで遮り、冷却空気吸入口48aからバッテリカバー39の内部に吸い込まれ難くすることができる。
【0045】
また吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aは車体前方を向いて開口し、排出ダクト49,49の冷却空気排出口49a,49aは車体後方を向いて開口するので、冷却空気排出口49a,49aから排出された熱交換後の温度上昇した冷却空気が冷却空気吸入口48aから再びバッテリトレー38内に吸い込まれ難くし、冷却空気の再循環によるバッテリモジュール42…の冷却効率の低下を防止することができる。特に、冷却空気排出口49a,49aは車体後方かつ車幅方向外側を向いて開口するので、冷却空気排出口49a,49aから排出した冷却空気を車体の左右両側面に沿って流れる走行風で後方に押し流してバッテリパック31の近傍に滞留し難くすることができる。
【0046】
また吸入ダクト48は、その特殊な形状によって冷却空気に含まれる水を効果的に分離してバッテリトレー38の内部への侵入を防止することができる。即ち、吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aの下部から上流側吸入通路54に吸入された冷却空気は、上り傾斜の底壁52aに沿って上昇する過程で下流側に向かって拡開する縦壁52cによって左右に分岐し、底壁52aおよび縦壁52cとの接触により水が分離された後、底壁52aの下流端から下向きに偏向して下流側吸入通路55に流入する。冷却空気から分離された水は縦壁52cおよび底壁52aに沿って重力で流下し、その下方の水抜き孔52fから吸入ダクト48の外部に排出される。
【0047】
吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aの上部から上流側吸入通路54に吸入された冷却空気は、縦壁52cの上端を通り超した後に下向きに偏向し、底壁52aの切欠き52bを通過して下流側吸入通路55に流入する。このようにして下流側吸入通路55に流入した冷却空気は、側壁52dに設けた2枚のリブ52e,52eによって整流されながら下向きに流れ、バッテリトレー38の冷却通路に流入する。
【0048】
以上のように、吸入ダクト48の内部に設けた底壁52aおよび縦壁52cによって冷却空気中の水を効率的に捕捉してバッテリトレー38の内部への侵入を防止しながら、底壁52aおよび縦壁52cを設けたことによる冷却空気の圧損の増加を、底壁52aに切欠き52bを設けて流路断面積を増加させることで最小限に抑え、水の分離および圧損の低減を効果的に両立させることができる。
【0049】
ところで、吸入ダクト48の内部に設けられた温度センサ50は冷却空気の温度(吸気温度)を検出し、図示せぬバッテリ温度センサで検出したバッテリ温度が吸気温度以上になると冷却ファン47,47が駆動され、バッテリ温度が吸気温度未満になると冷却ファン47,47が停止するようになっている。冷却ファン47,47が停止した状態では、バッテリトレー38の内部の高温で低比重の冷却空気が吸入ダクト48の内部を上方に逆流し、吸入ダクト48のアッパー部材53の天井付近に滞留する可能性がある。
【0050】
このとき、仮に温度センサ50が吸入ダクト48のアッパー部材53の天井付近に設けられていると、温度センサ50は吸気温度を正しく検出せず、滞留した高温の空気の温度を検出するため、バッテリ温度が上昇しても冷却ファン47,47が速やかに駆動されない可能性がある。しかしながら本実施の形態によれば、温度センサ50が吸入ダクト48の縦壁52cの上端よりも低い位置に設けられているため、吸気温度の誤検出を未然に防止することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0052】
例えば、実施の形態では吸入ダクト48をロア部材52およびアッパー部材53で構成しているが、吸入ダクト48をどのような部材で構成するかは任意である。
【符号の説明】
【0053】
24 バッテリケース
25 車室
42 バッテリモジュール(バッテリ)
48 吸入ダクト
48a 冷却空気吸入口
50 温度センサ
52a 底壁
52b 切欠き
52c 縦壁
52d 側壁
52e リブ
52f 水抜き孔
54 上流側吸気通路
55 下流側吸気通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリを収納して車室の外部に配置されるバッテリケースと、前記バッテリケースの内部に形成された冷却通路に冷却空気を吸入する吸入ダクトとを備える電動車両用バッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
吸気ダクト、バッテリケース、第1排気ダクト、換気ファンおよび第2排気ダクトを直列に接続し、換気ファンを駆動することで吸気ダクトから吸い込んだ車室内の空気をバッテリケースに供給してバッテリを冷却し、バッテリケースから出た排気を第1排気ダクト、換気ファンおよび第2排気ダクトを介して排出するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4547747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリケースの内部に吸入される冷却空気に水が含まれていると、その水がバッテリケースの内部に侵入してバッテリに付着し、バッテリどうしが短絡したり、バッテリと車体とが地絡したりする可能性があるため、冷却空気に含まれる水をできる限り除去する必要がある。しかしながら、冷却空気の流通経路に水を除去するためのフィルタ等を配置すると、流通経路における圧損が増加して充分な量の冷却空気をバッテリケースに供給することが難しくなる問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、バッテリケースの冷却通路に冷却空気を供給する吸入ダクトの圧損を最小限に抑えながら、冷却空気に含まれる水を効率的に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、複数のバッテリを収納して車室の外部に配置されるバッテリケースと、前記バッテリケースの内部に形成された冷却通路に冷却空気を吸入する吸入ダクトとを備える電動車両用バッテリパックであって、前記吸入ダクトは、冷却空気吸入口から水平方向に延びる上流側吸気通路と、前記上流側吸気通路から下向きに延びて前記冷却通路に連通する下流側吸気通路とからなり、前記上流側吸気通路の底壁は前記下流側吸気通路に向かって上り傾斜に配置され、前記底壁の幅方向中央部には上流側から下流側に向かって拡幅して前記下流側吸気通路の上流側に連通する切欠きが形成され、前記切欠きには上向きに起立する縦壁が立設されることを特徴とする電動車両用バッテリパックが提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記下流側吸気通路の前記冷却空気吸入口に対向する側壁には、上下方向に延びるリブが前記冷却空気吸入口に向けて突設されることを特徴とする電動車両用バッテリパックが提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記底壁の下端には水抜き孔が形成されることを特徴とする電動車両用バッテリパックが提案される。
【0009】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記上流側吸気通路内の前記縦壁の上端よりも低い位置に、前記吸入ダクトに吸入された冷却空気の温度を検出する温度センサが設けられることを特徴とする電動車両用バッテリパックが提案される。
【0010】
尚、実施の形態のバッテリモジュール42は本発明のバッテリに対応する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、複数のバッテリを収納して車室の外部に配置されるバッテリケースの内部に形成された冷却通路に冷却空気を吸入する吸入ダクトが、冷却空気吸入口から水平方向に延びる上流側吸気通路と、上流側吸気通路から下向きに延びて冷却通路に連通する下流側吸気通路とからなるため、冷却空気は上流側吸気通路および下流側吸気通路を経てバッテリケースの冷却通路に供給される。冷却空気吸入口から上流側吸気通路に吸入された冷却空気の一部は、下流側吸気通路に向かって上り傾斜に配置された底壁に接触して含まれる水を捕捉された状態で下流側吸気通路に流入し、前記冷却空気の残部は縦壁に接触して含まれる水を捕捉された状態で下流側吸気通路に流入する。このように、冷却空気に含まれる水を底壁および縦壁により効果的に捕捉しながら、底壁に形成した切欠きにより下流側吸気通路の開口面積を増加させることで、圧損の発生を最小限に抑えることができる。
【0012】
また請求項2の構成によれば、下流側吸気通路の冷却空気吸入口に対向する側壁に、上下方向に延びるリブを冷却空気吸入口に向けて突設したので、上流側吸気通路から方向を変えて下流側吸気通路に流入する冷却空気の流れを整流して圧損を更に低減することができる。
【0013】
また請求項3の構成によれば、底壁の下端に水抜き孔を形成したので、底壁や縦壁に接触して捕捉された水を水抜き孔を介して吸入ダクトの外部に排出することができる。
【0014】
また請求項4の構成によれば、上流側吸気通路内の縦壁の上端よりも低い位置に、吸入ダクトに吸入された冷却空気の温度を検出する温度センサを設けたので、冷却空気の循環を停止した状態で、バッテリにより温められて軽くなった冷却空気が逆流して吸入ダクトの上部に滞留しても、滞留する高温の冷却空気を避けた位置に配置した温度センサで正しい温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電気自動車の側面図。
【図2】車体フレームおよびバッテリパックの斜視図。
【図3】バッテリパックの斜視図。
【図4】図1の4方向矢視図
【図5】図4の5−5線断面図。
【図6】図4の6−6線断面図。
【図7】図4の要部拡大図。
【図8】図7の8−8線断面図。
【図9】図7の9方向矢視図。
【図10】図9の10方向矢視図。
【図11】図3に対応する作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図11に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、電気自動車の車体フレーム11は、車体前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム12,12と、フロアフレーム12,12の前端から上方に屈曲しながら前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム13,13と、フロアフレーム12,12の後端から上方に屈曲しながら後方に延びる左右一対のリヤサイドフレーム14,14と、フロアフレーム12,12の車幅方向外側に配置された左右一対のサイドシル15,15と、サイドシル15,15の前端をフロアフレーム12,12の前端に接続する左右一対のフロントアウトリガー16,16と、サイドシル15,15の後端をフロアフレーム12,12の後端に接続する左右一対のリヤアウトリガー17,17と、左右一対のフロントサイドフレーム13,13の前端部間を車幅方向に接続するフロントバンパービーム18と、左右一対のフロアフレーム12,12の前端部間を車幅方向に接続するフロントクロスメンバ19と、左右一対のフロアフレーム12,12の前後方向中間部間を車幅方向に接続するミドルクロスメンバ20と、左右一対のリヤサイドフレーム14,14の前後方向中間部間を車幅方向に接続するリヤクロスメンバ21と、左右一対のリヤサイドフレーム14,14の後端部間を車幅方向に接続するリヤバンパービーム22とを備える。
【0018】
電気自動車の走行用駆動源であるモータ・ジェネレータ23の電源となるバッテリパック31は車体フレーム11の下面側から吊り下げ支持される。即ち、バッテリパック31の下面には車幅方向に延びるフロント吊り下げビーム32、ミドル吊り下げビーム33およびリヤ吊り下げビーム34が固定されており、フロント吊り下げビーム32の両端が左右一対のフロアフレーム12,12の前部に固定され、ミドル吊り下げビーム33の両端が左右一対のフロアフレーム12,12の後部に固定され、リヤ吊り下げビーム34の両端が左右一対のリヤサイドフレーム14,14の前部から垂下する支持部材35,35の下端に固定される。またバッテリパック31の前端の車幅方向中央部が前部ブラケット36を介してフロントクロスメンバ19に支持されるとともに、バッテリパック31の後端の車幅方向中央部が後部ブラケット37を介してリヤクロスメンバ21に支持される。更に、バッテリパック31は、フロント吊り下げビーム32およびミドル吊り下げビーム33の中間位置において、ミドルクロスメンバ20の下面に支持される。
【0019】
バッテリパック31を車体フレーム11に支持した状態で、バッテリパック31の上面は、車室25の下部にフロアパネル26を介して対向する。即ち、本実施の形態のバッテリパック31は、車室25の外部に配置される。
【0020】
図3および図4に示すように、バッテリパック31は、金属製のバッテリトレー38と、バッテリトレー38に上方から重ね合わされた合成樹脂製のバッテリカバー39とを備える。バッテリトレー38の周縁部とバッテリカバー39の周縁部とは、シール部材40(図3参照)を挟んで多数のボルト41…で締結されており、従ってバッテリパック31の内部は基本的に密閉された空間となる。バッテリトレー38の上面には、複数のバッテリセルを直列に積層したバッテリモジュール42…が複数個搭載される。バッテリトレー38およびバッテリカバー39は、本発明のバッテリケース24を構成する。
【0021】
バッテリトレー38は、アッパープレート43とロアプレート44とを結合したもので(図5および図6参照)、それらの間に冷却空気が流れる冷却通路が形成されており、アッパープレート43の上面に接触するバッテリモジュール42…との間で熱交換を行い、充放電により発熱するバッテリモジュール42…を冷却する。バッテリトレー38の冷却通路は所定の箇所で分岐して一対の排出ダクト49,49に接続される(図3参照)。
【0022】
バッテリパック31の後部に設けられた冷却装置46は、車幅方向中央部に配置された吸入ダクト48と、吸入ダクト48の車幅方向両側に配置された左右一対の排出ダクト49,49とを備える。吸入ダクト48の下端はバッテリトレー38の後端に接続され、左右の排出ダクト49,49の下端はバッテリトレー38の後端に接続される。吸入ダクト48の上部前面には、その内部にバッテリパック31の外部の空気を冷却空気として吸入するための冷却空気吸入口48aが前向きに開口する。また排出ダクト49,49の内部にはそれぞれ電動の冷却ファン47,47が収納されており、熱交換後の冷却空気を排出するための冷却空気排出口49a,49aが、各冷却ファン47,47の外周に臨むように形成される。左右の冷却空気排出口49a,49aは、後向きかつ車幅方向外向きに開口する(図3、図4、図7の矢印A参照)。
【0023】
従って、冷却ファン47,47を駆動すると、吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aから吸入された冷却空気はバッテリトレー38の内部に供給され、バッテリトレー38の内部を流れる間にバッテリモジュール42…との間で熱交換を行った後、排出ダクト49,49の冷却ファン47,47を通過して冷却空気排出口49a,49aから排出される。
【0024】
次に、図4〜図10を参照して冷却装置46の構造を詳細に説明する。
【0025】
図7〜図10に示すように、冷却装置46の吸入ダクト48は、バッテリカバー39の後部から上向きに突出する凸部39a(図8参照)の後方に設けられるもので、バッテリカバー39の上面に4本のボルト51…で固定されるロア部材52と、ロア部材52の上端開口部を覆うように結合されるアッパー部材53とを備えており、アッパー部材53の前面に冷却空気吸入口48aが開口する。冷却空気吸入口48aの位置は、バッテリパック31の後部上方に位置するとともに、バッテリカバー39の凸部39aの後方に位置している。
【0026】
吸入ダクト48の内部は、冷却空気吸入口48aから後方に延びる上流側吸入通路54と、上流側吸入通路54の後端から下向きに延びてバッテリトレー38に連なる下流側吸入通路55とを備える。上流側吸入通路54はアッパー部材53の内部に区画され、下流側吸入通路55はロア部材52の内部に区画される。
【0027】
ロア部材52の上面には、上流側吸入通路54および下流側吸入通路55を仕切る底壁52aが一体に形成されており、底壁52aは前から後に向けて次第に高くなるように傾斜している。底壁52aの車幅方向中間部は、後から前に向けてU字状ないしはV字状に延びる切欠き52bが形成されており、この切欠き52bの縁から縦壁52cが上向きに立設される。縦壁52cの上端とアッパー部材53の天井部との間には、冷却空気が通過可能な空間が確保される。冷却空気吸入口48aに対向するロア部材52の後側の側壁52dには、下流側吸入通路55の内部を上下方向に延びる2枚のリブ52e,52eが前向きに突設されており、これらのリブ52e,52eの下端はバッテリトレー38との接続部まで延びている。冷却空気吸入口48aの下方に位置する底壁52aの下端には、上流側吸入通路54を吸入ダクト48の外部に連通させる水抜き孔52fが形成される。
【0028】
また吸入ダクト48の上流側吸入通路54には、吸い込まれた冷却空気の温度を検出するための温度センサ50が設けられる。温度センサ50の位置は、縦壁52cの上端よりも低い位置に設定される。
【0029】
図4〜図7に示すように、冷却装置46の排出ダクト49,49は、バッテリトレー38の後端から上向きに立ち上がる上流側排出通路56,56と、上流側排出通路56,56の上端から車幅方向内側に連なる下流側排出通路57,57とを備えており、下流側排出通路57,57の直下に冷却ファン47,47が配置される。冷却ファン47,47の外周を渦巻き形のファンケーシング58,58が取り囲んでおり、その外端に冷却空気排出口49a,49aが開口する。
【0030】
左右の冷却ファン47,47のファンケーシング58,58には互換可能な同一部材が使用されており、従って平面視(図7参照)で、左右のファンケーシング58,58は車体中心線に対して非対称になっている。前述したように、左右の冷却ファン47,47の冷却空気排出口49a,49aは、矢印Aで示すように共に後向きかつ車幅方向外向きに冷却空気を排出するため、冷却空気排出口49a,49aに直交する法線Nは、ファンケーシング58,58の接線Tに対して角度θだけ傾斜している。
【0031】
冷却空気は、冷却空気排出口49a,49aが成す面に対して直角に流出するため、冷却空気排出口49a,49aに直交する法線Nをファンケーシング58,58の接線Tに対して角度θだけ傾斜させたことにより、左右のファンケーシング58,58に互換可能な同一部材を使用して部品の種類の削減を図りながら。左右の冷却空気排出口49a,49aから略左右対称な方向に冷却空気を排出することができる。
【0032】
後輪を懸架するサスペンション装置59,59(図4参照)は、例えばH型トーションビーム式サスペンションで構成されており、左右のトレーリングアーム部60,60と、それらを車幅方向に接続するトーションビーム部61と、トレーリングアーム部60,60の後端をリヤサイドフレーム14,14の下面に支持する左右のサスペンションスプリング62,62および左右のサスペンションダンパー63,63とを備える。
【0033】
左右のファンケーシング58,58の冷却空気排出口49a,49aからの冷却空気の排出方向(矢印A参照)は、平面視でサスペンション装置59,59の一部(実施の形態ではサスペンションダンパー63,63)とオーバーラップしている。冷却空気排出口49a,49aからの冷却空気の排出方向Aを上述した方向に設定することで、冷却空気を車体との干渉を最小限に抑えながらサスペンション装置59,59の空間を通して車外にスムーズに排出することができる。
【0034】
バッテリケース24の後部上面に排出ダクト49,49を冷却ファン47,47と共に支持する支持フレーム64は、パイプ材を逆U字状に屈曲して両端をバッテリカバー39の左右上面に立設した第1フレーム64aと、第1フレーム64aの右端側に接続されて後方および左方に延びるL字状の第2フレーム64bと、第2フレーム64bの左端側と第1フレーム64aの中間部とを前後方向に接続するI字状の第3フレーム64cとを備える。
【0035】
支持フレーム64は、第1フレーム64aに固定された4個の取付ブラケット65a〜65dと、第2フレーム64bに固定された3個の取付ブラケット65e〜65gと、第3フレーム64cに固定された1個の取付ブラケット65hとを備える(図7参照)。左側の排出ダクト49は、第1フレーム64aの2個の取付ブラケット65a,65bにそれぞれボルト66,66で締結され、左側の排出ダクト49および左側の冷却ファン47は、第2フレーム64bの取付ブラケット65gおよび第3フレーム64cの取付ブラケット65hにそれぞれボルト67,67で共締めされる。
【0036】
また右側の排出ダクト49は、第1フレーム64aの取付ブラケット65dおよび第2フレーム64bの取付ブラケット65eにそれぞれボルト68,68で締結され、右側の排出ダクト49および右側の冷却ファン47は、第1フレーム64aの取付ブラケット65cおよび第2フレーム64bの取付ブラケット65fにそれぞれボルト69,69で共締めされる。
【0037】
このように、排出ダクト49,49および冷却ファン47,47を共通のボルト67,67,69,69で支持フレームに共締めしたので、冷却装置46の小型化および部品点数の削減が可能になる。
【0038】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0039】
バッテリパック31のバッテリケース24内に収納したバッテリモジュール42…は充放電により発熱するため、冷却装置46によりバッテリトレー38の内部に供給される冷却空気で冷却される。即ち、冷却ファン47,47を駆動すると、バッテリケース24の上面およびフロアパネル26の下面間の空気が冷却空気として吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aから吸入され、吸入ダクト48の上流側吸入通路54および下流側吸入通路55を経てバッテリトレー38の内部に供給される。
【0040】
図3に示すように、バッテリトレー38の内部に供給された冷却空気は、所定の箇所で分岐して一対の排出ダクト49,49へと流れる間に、バッテリトレー38のアッパープレート43とバッテリモジュール42…の底面との間で熱交換を行うことで、バッテリモジュール42…を冷却する。排出ダクト49,49に流入した冷却空気は、上流側排出通路56,56、下流側排出通路57,57、冷却ファン47,47を通過し、ファンケーシング58,58の冷却空気排出口49a,49aから排出される。
【0041】
このとき、仮に左右一方の冷却ファン47が故障して作動不能になっても、図11に示すように、他方の冷却ファン47の作動により、吸入ダクト48→冷却通路→他方の排出ダクト49→他方の冷却ファン47の経路で冷却空気を流通させるとともに、一方の排出ダクト49→冷却通路→他方の排出ダクト49→他方の冷却ファン47の経路で冷却空気を流通させることで、バッテリケース24内の全てのバッテリモジュール42…を冷却することができる。
【0042】
またバッテリパック31を車室25の下方に搭載し、吸入ダクト48および排出ダクト49,49をバッテリケース24および車室25間に挟まれる位置に配置したので、パイプ状のダクト等のような他部材を接続してバッテリケース24の前方側または後方側から冷却空気の吸入あるいは排出を行う場合に比べて、冷却空気の吸入経路および排出経路をバッテリケース24の上面に納めることが可能になる。その結果、バッテリケース24の前方側および後方側に配置された部品とバッテリケース24とが干渉し難くなり、バッテリケース24のレイアウトが容易になるだけでなく、パイプ状のダクト等をバッテリケース24に連結する必要がないため、その連結部におけるシールが不要になって部品点数が削減される。
【0043】
しかも吸入ダクト48および排出ダクト49,49を車幅方向に見て少なくとも一部がオーバーラップするように配置したので、吸入ダクト48および排出ダクト49,49をコンパクトに纏めるとともに、吸入ダクト48および排出ダクト49,49が、車幅方向に延びる段部を有するフロアパネル26や、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ21等と干渉し難くし、バッテリパック31の車体へのレイアウトを容易にすることができる。更に、車幅方向の中央に配置された吸入ダクト48の車幅方向両側にそれぞれ排出ダクト49,49を配置したので、埃や水を撥ね上げる車輪と吸入ダクト48との間に排出ダクト49,49を位置させることで、冷却空気吸入口48aから冷却空気と共に埃や水が吸い込まれ難くすることができる。
【0044】
また吸入ダクト48をバッテリカバー39の後端上部に配置するとともに、バッテリカバー39に車室25側に向かって上向きに突出する凸部39aを設け、吸入ダクト48をバッテリカバー39の凸部39aの後方に配置したので、車両の走行中に車体前方側から飛散して来る埃や水をバッテリカバー39の凸部39aで遮り、冷却空気吸入口48aからバッテリカバー39の内部に吸い込まれ難くすることができる。
【0045】
また吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aは車体前方を向いて開口し、排出ダクト49,49の冷却空気排出口49a,49aは車体後方を向いて開口するので、冷却空気排出口49a,49aから排出された熱交換後の温度上昇した冷却空気が冷却空気吸入口48aから再びバッテリトレー38内に吸い込まれ難くし、冷却空気の再循環によるバッテリモジュール42…の冷却効率の低下を防止することができる。特に、冷却空気排出口49a,49aは車体後方かつ車幅方向外側を向いて開口するので、冷却空気排出口49a,49aから排出した冷却空気を車体の左右両側面に沿って流れる走行風で後方に押し流してバッテリパック31の近傍に滞留し難くすることができる。
【0046】
また吸入ダクト48は、その特殊な形状によって冷却空気に含まれる水を効果的に分離してバッテリトレー38の内部への侵入を防止することができる。即ち、吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aの下部から上流側吸入通路54に吸入された冷却空気は、上り傾斜の底壁52aに沿って上昇する過程で下流側に向かって拡開する縦壁52cによって左右に分岐し、底壁52aおよび縦壁52cとの接触により水が分離された後、底壁52aの下流端から下向きに偏向して下流側吸入通路55に流入する。冷却空気から分離された水は縦壁52cおよび底壁52aに沿って重力で流下し、その下方の水抜き孔52fから吸入ダクト48の外部に排出される。
【0047】
吸入ダクト48の冷却空気吸入口48aの上部から上流側吸入通路54に吸入された冷却空気は、縦壁52cの上端を通り超した後に下向きに偏向し、底壁52aの切欠き52bを通過して下流側吸入通路55に流入する。このようにして下流側吸入通路55に流入した冷却空気は、側壁52dに設けた2枚のリブ52e,52eによって整流されながら下向きに流れ、バッテリトレー38の冷却通路に流入する。
【0048】
以上のように、吸入ダクト48の内部に設けた底壁52aおよび縦壁52cによって冷却空気中の水を効率的に捕捉してバッテリトレー38の内部への侵入を防止しながら、底壁52aおよび縦壁52cを設けたことによる冷却空気の圧損の増加を、底壁52aに切欠き52bを設けて流路断面積を増加させることで最小限に抑え、水の分離および圧損の低減を効果的に両立させることができる。
【0049】
ところで、吸入ダクト48の内部に設けられた温度センサ50は冷却空気の温度(吸気温度)を検出し、図示せぬバッテリ温度センサで検出したバッテリ温度が吸気温度以上になると冷却ファン47,47が駆動され、バッテリ温度が吸気温度未満になると冷却ファン47,47が停止するようになっている。冷却ファン47,47が停止した状態では、バッテリトレー38の内部の高温で低比重の冷却空気が吸入ダクト48の内部を上方に逆流し、吸入ダクト48のアッパー部材53の天井付近に滞留する可能性がある。
【0050】
このとき、仮に温度センサ50が吸入ダクト48のアッパー部材53の天井付近に設けられていると、温度センサ50は吸気温度を正しく検出せず、滞留した高温の空気の温度を検出するため、バッテリ温度が上昇しても冷却ファン47,47が速やかに駆動されない可能性がある。しかしながら本実施の形態によれば、温度センサ50が吸入ダクト48の縦壁52cの上端よりも低い位置に設けられているため、吸気温度の誤検出を未然に防止することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0052】
例えば、実施の形態では吸入ダクト48をロア部材52およびアッパー部材53で構成しているが、吸入ダクト48をどのような部材で構成するかは任意である。
【符号の説明】
【0053】
24 バッテリケース
25 車室
42 バッテリモジュール(バッテリ)
48 吸入ダクト
48a 冷却空気吸入口
50 温度センサ
52a 底壁
52b 切欠き
52c 縦壁
52d 側壁
52e リブ
52f 水抜き孔
54 上流側吸気通路
55 下流側吸気通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリ(42)を収納して車室(25)の外部に配置されるバッテリケース(24)と、前記バッテリケース(24)の内部に形成された冷却通路に冷却空気を吸入する吸入ダクト(48)とを備える電動車両用バッテリパックであって、
前記吸入ダクト(48)は、冷却空気吸入口(48a)から水平方向に延びる上流側吸気通路(54)と、前記上流側吸気通路(54)から下向きに延びて前記冷却通路に連通する下流側吸気通路(55)とからなり、前記上流側吸気通路(54)の底壁(52a)は前記下流側吸気通路(55)に向かって上り傾斜に配置され、前記底壁(52a)の幅方向中央部には上流側から下流側に向かって拡幅して前記下流側吸気通路(55)の上流側に連通する切欠き(52b)が形成され、前記切欠き(52b)には上向きに起立する縦壁(52c)が立設されることを特徴とする電動車両用バッテリパック。
【請求項2】
前記下流側吸気通路(55)の前記冷却空気吸入口(48a)に対向する側壁(52d)には、上下方向に延びるリブ(52e)が前記冷却空気吸入口(48a)に向けて突設されることを特徴とする、請求項1に記載の電動車両用バッテリパック。
【請求項3】
前記底壁(52a)の下端には水抜き孔(52f)が形成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電動車両用バッテリパック。
【請求項4】
前記上流側吸気通路(54)内の前記縦壁(52c)の上端よりも低い位置に、前記吸入ダクト(48)に吸入された冷却空気の温度を検出する温度センサ(50)が設けられることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電動車両用バッテリパック。
【請求項1】
複数のバッテリ(42)を収納して車室(25)の外部に配置されるバッテリケース(24)と、前記バッテリケース(24)の内部に形成された冷却通路に冷却空気を吸入する吸入ダクト(48)とを備える電動車両用バッテリパックであって、
前記吸入ダクト(48)は、冷却空気吸入口(48a)から水平方向に延びる上流側吸気通路(54)と、前記上流側吸気通路(54)から下向きに延びて前記冷却通路に連通する下流側吸気通路(55)とからなり、前記上流側吸気通路(54)の底壁(52a)は前記下流側吸気通路(55)に向かって上り傾斜に配置され、前記底壁(52a)の幅方向中央部には上流側から下流側に向かって拡幅して前記下流側吸気通路(55)の上流側に連通する切欠き(52b)が形成され、前記切欠き(52b)には上向きに起立する縦壁(52c)が立設されることを特徴とする電動車両用バッテリパック。
【請求項2】
前記下流側吸気通路(55)の前記冷却空気吸入口(48a)に対向する側壁(52d)には、上下方向に延びるリブ(52e)が前記冷却空気吸入口(48a)に向けて突設されることを特徴とする、請求項1に記載の電動車両用バッテリパック。
【請求項3】
前記底壁(52a)の下端には水抜き孔(52f)が形成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電動車両用バッテリパック。
【請求項4】
前記上流側吸気通路(54)内の前記縦壁(52c)の上端よりも低い位置に、前記吸入ダクト(48)に吸入された冷却空気の温度を検出する温度センサ(50)が設けられることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電動車両用バッテリパック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−103599(P2013−103599A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248437(P2011−248437)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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