説明

電動過給機

【課題】簡易な構造で配線を短くして損失を低減し、冷却効果を高めて温度上昇を抑え、性能を改善する。
【解決手段】タービン装置3及びコンプレッサ装置4の間に同軸に設置され、ステータ23からの配線24が半径方向にハウジング5の外周部に引き出されその端部に接続部25が設けられた電動機2と、上記ハウジングの外周部に対して断熱手段7を介して設置され、上記接続部との接続手段61、上記電動機を駆動する制御回路62、及びこの制御回路に対して上記断熱手段とは反対側に設けられた放熱部63を有する制御装置6とを備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの排ガスを利用した過給機に電動機が内蔵された電動過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排ガスを利用した過給機において、効率の落ちる低速回転時の過給力を補助するために電動機を内蔵した電動過給機が提案されている。かかる電動過給機として、モータを電気的に制御する装置を、ドーナツ型もしくはU字型に構成し、電動過給機のコンプレッサ吐出側に、断熱材を介して固定するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−46479号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の電動過給機においては、モータと制御装置間の配線がコンプレッサ内を経由するため、空気が漏れないように密閉を保つ必要があり構造が複雑となる。また、電動過給機の回転数は10万〜20万rpmにも達してその制御も高周波で行われるため、上記のようにコンプレッサ部分を経由するとその分だけ配線が長くなり、配線インダクタンスが増加して損失が増大する。また、制御装置においては、半導体素子やコンデンサなどの発熱による温度上昇が著しくなり、素子の寿命を保証できる時間が短くなるため、電流を抑制して性能を下げなければならない電動過給機固有の問題があった。また、高速回転に対応して、インバータ駆動のキャリア周波数を、例えば通常のインバータ機器の数倍以上のスイッチング周波数に高める必要があるため、スイッチング損失が増大する問題があった。
【0005】
この発明は上記のような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、構造が簡素で配線を短くすることができ、しかも冷却効果を高めて温度上昇が抑えられ、損失が低減された電動過給機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電動過給機は、タービン装置及びコンプレッサ装置の間に同軸に設置され、ステータからの配線が半径方向にハウジングの外周部に引き出されその端部に接続部が設けられた電動機と、上記ハウジングの外周部に対して断熱手段を介して設置され、上記接続部との接続手段、上記電動機を駆動する制御回路、及びこの制御回路に対して上記断熱手段とは反対側に設けられた放熱部を有する制御装置とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明においては、ステータからの配線を半径方向に引き出す一方、制御装置をハウジング外周部に対して断熱手段を介して設置するようにしたので、電動機と制御装置間の配線を短くすることが容易にできる。このため、配線インダクタンスの増加による損失が低減され、しかもレイアウト的に容易に冷却効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電動過給機の要部構成を模式的に示す断面図。
【図2】図1に示す電動過給機の第1の変形例の要部構成を模式的に示す断面図。
【図3】図1に示す電動過給機の第2の変形例の要部構成を模式的に示す断面図。
【図4】図1に示す電動過給機に冷却手段を備えたときの冷却経路を概略的に示す冷却経路図。
【図5】図4に示す冷却手段の第1の変形例を示す冷却経路図。
【図6】図4に示す冷却手段の第2の変形例を示す冷却経路図。
【図7】図4に示す冷却手段の第3の変形例を示す冷却経路図。
【図8】本発明の実施の形態2に係る電動過給機の要部構成を模式的に示す断面図。
【図9】本発明の実施の形態3に係る電動過給機の要部構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る電動過給機の要部構成を模式的に示す図である。図において、電動過給機100は、共通の回転軸1の中央部に設けられた電動機2と、回転軸1の一側部に連結されたタービン装置3と、回転軸1の他側部に連結されたコンプレッサ装置4と、ハウジング5の外周部に固定された電動機2を制御する制御装置6を備えている。上記タービン装置3は回転軸1に固定されたタービンインペラ31と、タービンインペラ31の周りを包囲するように形成されたタービンハウジング32を備えている。タービンインペラ31は、タービンハウジング32に誘導された図示していない内燃機関(エンジン)の排ガスの風力によって回転する。
【0010】
上記コンプレッサ装置4は、タービンインペラ31と共通の回転軸1に固定されたコンプレッサインペラ41と、コンプレッサインペラ41の周りを包囲するように形成されたコンプレッサハウジング42を備え、タービンインペラ31の回転力ないしは後述する電動機2の回転力によって回転して空気を圧縮し、内燃機関へ過給する。
上記電動機2は、共通の回転軸1に固定されたモータロータ21と、モータロータ21の周囲を囲むように配設され、図示省略しているステータコイルを有するステータ23と、ステータ23を保持するモータハウジング22を備え、ステータ23から半径方向に図の下方向にモータハウジング22を貫通して引き出された配線24及びこの配線24の先端部に設けられた制御装置6との電気的な接続部25を有する。
【0011】
上記制御装置6は電力源であるバッテリー(図示省略)から供給された直流電力を交流電力に変換し、電動機2のステータ23に交流電力を印加することにより回転軸1を回転させて図示していない内燃機関に対する燃焼用空気の過給を補助するもので、図1の例では、タービンハウジング32とコンプレッサハウジング42の外周部の鉛直下部に対して断熱手段7を介して固定されている。なお、タービンハウジング32、コンプレッサハウジング42、及びモータハウジング22は、全体が一体的に形成された成型物であっても良く、複数の成形物が連結され一体化されたものであっても差し支えなく、特に区別の必要が無い場合ここでは便宜上、包括して単にハウジング5と呼ぶ。
【0012】
制御装置6は上記電動機2に設けられた接続部25との接続手段61、電動機2を駆動する制御回路62、及びこの制御回路62に対して断熱手段7とは反対側に設けられた放熱部63を備えている。詳細図示を省略している制御回路62は電力用半導体などを有する電力回路(図示しない)を含み、特に発熱の大きい電力回路のデバイスなどが放熱部63に接続される。なお、制御回路62は外箱(図示しない)に収容されており、その材質は、耐熱性、及び放熱性に優れる金属でもよく、また、断熱手段7として例えば液冷方式などの強制冷却方式を採用した場合には放熱性が高められることにより、必要耐熱性を下げることができるため、樹脂材でも良い。なお、ハウジング5は動作中に高温となるので、制御装置6はハウジング5の下側に設置することで、ハウジング5の熱が対流により制御装置6に伝わり、制御装置6の温度が上昇するのを抑制できる。
【0013】
上記ステータ23からの配線24は、ステータ23の軸方向の端部に配線の終端を配設することが、ステータコアの構成上最も小型化できる。そのため、配線24はステータ23の軸方向の端部を含む平面部に収めることが、最も小型化でき好ましい。配線24は電動機2のモータハウジング22を貫通し、接続部25はモータハウジング22の外側に引き出された配線24の先端部に設けられている。なお、配線24を、電動機2とコンプレッサ装置4の間から突出させることは、ハウジング5の中で比較的温度が低い箇所であるため好ましい。
【0014】
接続部25は、接続手段61との接続機構に応じて構成や方式を適宜選択し得るものである。例えば該接続部25は配線24の端部自体、あるいは端部をリング状に加工したもの、接続機構を雌雄のコネクタとした場合は配線24の端部に接続されたコネクタの一方などから構成され、さらに配線24の端部を保持し、あるいはコネクタを構成する絶縁物などを含む。そして該接続部25は、制御装置6を取付けるときに該制御装置6の接続手段61に対して、電気的、機械的に接続される。
【0015】
上記接続部25と接続手段61との接続機構や接続方式などは特に限定されるものではなく、例えば嵌合式でもよく、ねじ止め式などでも良い。また、接続部25は接続機構の一部または全部を構成していても良い。例えば、配線24の端部自体が接続部25を構成し、あるいは接続部25と接続手段61とによって一つの接続機構を構成するようにしても良い。また、接続手段61として端子台(図示省略)を設ける一方、配線24の接続部を貫通穴によって構成し、該貫通穴に挿通されるねじ(図示省略)で接続手段61を構成する端子台にねじ止めしても良い。なお、この例ではねじ止めによって構成したが、接続機構は例えば雄雌のコネクタで構成しても良い。また、接続部25と接続手段61の構成を逆にしても良い。
【0016】
また、上記断熱手段7として好ましく用いることができるものとしては、例えばセラミックや、熱伝導率があまり高くない鉄などの金属にセラミック皮膜を溶射したものや、グラスウールを成形した素材などを挙げられることができるが、これらのみに限定されるものではない。また、上記放熱部63の材質は、一般的なアルミや銅などの熱の良導体が好ましく用いられる。また、空冷でも良いし、小型化のために液冷にしても良い。また、モータロータ21(電動機2)を、コンプレッサインペラ41側にオフセットして配置することは、高温となるタービンインペラ31に対する熱抵抗を大きくし、受熱量を減らすことができるので好ましい。
【0017】
また、配線24、接続部25や、接続手段61から制御装置6に伝わるハウジング5からの熱伝導を低減するために、配線24、接続部25や、接続手段61に用いられる金属関係の材質を、熱伝導率が銅よりも低い、例えばアルミや鉄にすることは好ましい。
なお、図2に示す実施の形態1の第1の変形例は、制御装置6の取付位置を、ハウジング5の中でも、温度がより低くなり易いコンプレッサハウジング42の側に寄せて設置したものである。
【0018】
また、図3に示す実施の形態1の第2の変形例は、モータハウジング22の外径をタービンハウジング32、あるいはコンプレッサハウジング42と同等以上になるように拡大して、制御装置6を電動機2により近付ける一方、配線24をコンプレッサ装置4に対向する側に設けるようにしたものである。上記第2の変形例では、モータロータ21の径が拡大されることで配線24の長さを一層短くすることができ、損失をより低減することができる。
【0019】
また、制御装置6の接続手段61を構成する配線611は、制御回路62部分の壁面にインサート成形し、そのインサート成形部分にねじ穴を切って接続しても良い。その場合には、電動機2の配線24の接続部25を構成する導体端部を直接ねじ止めすることにより、簡易に接続することができる。すなわち、この配置によって、制御装置6におけるタービンからの熱干渉を小さくしながら、配線24、611のインダクタンスを最小限とすることができる。
【0020】
さらに、図4〜図7は、制御装置6部分の温度上昇を確実に許容温度内に抑制するために、冷却手段8として液体を循環させて強制冷却する手法を用い、放熱部63、ハウジング5及び電動機2を必須の冷却対象として冷却するようにした場合の構成例を複数示している。なお、用いる液体は、水でも油でも良い。また、冷却手段8は例えばヒートパイプと冷却ファンを用いる方式などであっても良い。
図4は冷却手段8を、ラジエータ81、循環ポンプ82、放熱部63、ハウジング5、電動機2、及びそれら各部を記載順に液体が通流するように直列に接続する循環路80によって構成したものである。
【0021】
上記ラジエータ81及び循環ポンプ82は、ここでは、一般的な水冷式のエンジンを搭載した車両に具備されているものをそのまま流用し、循環路80にバイパスさせるように構成されている(図示省略)。なお、ラジエータ81及び循環ポンプ82は別途用意しても良い。また、冷却対象である放熱部63、ハウジング5、及び電動機2には、冷却液を通流させるための流路が必要となるが、それらは従来の例えば液体を通流させる一般的な金属パイプをろう付け等の接合手段により冷却対象物に対して機械的、熱的に結合させる方式や、放熱部63等に液体を通流させる流路を形成する方式などから適宜選択して用いることができる。ここでは、特に限定されるものではないので、便宜上通流構造や冷却構造は図示省略し、循環路80に介装された冷却対象物をブロックで示している。
【0022】
なお、ハウジング5及び電動機2は温度上昇が著しく、液冷の必要性が高いために循環路80の下流側に設けるようにしたものである。この場合、循環路80を構成する循環経路は上限温度が低い順にすることが好ましく、放熱部63、ハウジング5、及び電動機2の順番とすることで、不必要に放熱性を高める必要性がなくなるため経済的である。また、電動機2の冷却部が複数に分かれている場合は、ハウジング5と電動機2の冷却部を交互に通って冷却すれば良い。但し、エンジンルーム内の搭載上の制約によっては、必ずしもこの順番にすることが必要ではないが、ラジエータ81をより大型化するなどの必要性が生じる。さらに、放熱部63とハウジング5及び電動機2の冷却方式を車両搭載のものと同一にし、循環路80のラジエータ81や循環ポンプ82を兼用することにより、ラジエータ81や循環ポンプ82などの冷却装置を増やすことなく、冷却効果を高めて小型化することができる。
【0023】
図5に示す冷却手段の第1の変形例は、小型化のために図4の構成に断熱手段7を加えたものである。図4の場合と同様に、断熱手段7と放熱部63、ハウジング5の冷却方式を同一にし、循環路80を統一することにより、さらに冷却効果を高めて小型化することができる。また、ハウジング5との一体化によりさらに小型化することができる。この場合も、循環路80の冷却経路は上限温度が低い順にすることが好ましく、図5の概略図に示すように、放熱部63、断熱手段7、ハウジング5、及び電動機2の順番が好ましい。
【0024】
図6に示す冷却手段の第2の変形例は、図5の構成における断熱手段7に変えて、接続手段61、配線611、接続部25、配線24を液冷することにより、制御回路62部分への伝熱をより低減するようにしたものである。この場合において、冷却経路は上限温度が低い側から通った方がよく、図6に示すように、放熱部63、制御装置6の接続手段61及び配線611、電動機2の接続部25及び配線24、ハウジング5及び電動機2の順番が好ましい。
【0025】
一方、図7に示す冷却手段の第3の変形例は、図5の構成に加えて、接続手段61、配線611、接続部25、及び配線24を液冷することにより、制御回路62部分への伝熱をより低減するようにしたものである。この場合において、冷却経路は、図7に示すように、放熱部63、断熱手段7、制御装置6の接続手段61及び配線611、電動機2の接続部25及び配線24、ハウジング5及び電動機2の順番とすることが好ましい。配線611や24の冷却方法としては、冷却水の配管を絶縁物で構成し配線に接して沿わせるか、配線に貫通孔を設け、その貫通孔に冷却水を通しても良い。なお、本発明者らの実施した試験によれば冷却水を貫通孔に通す方が冷却性能が高まることが確認された。
【0026】
上記のように構成された実施の形態1においては、ステータ23からの配線24を半径方向に図1の下方向(鉛直下方向)に突出させ、その端部に設けられた接続部25に対向するように制御装置6の接続手段61を設置させることにより、電動機2の配線24はモータハウジング22を貫通する部分のみ介すため、簡易な構造で容易に配線長を短くすることができる。このため、高周波においても配線インダクタンスや抵抗を低減でき、損失を低減することができる。電動過給機で問題となる高キャリア周波数でのスイッチングにおいて、この配線長の低減により、インダクタンスが低減される。その結果スイッチング時のサージ電圧が低減され、スイッチングロスを低減できるため、損失低減上非常に有効である。
【0027】
また、電動機2を駆動する制御装置6をハウジング5の外周部に対して高耐熱、低熱伝導材で構成した断熱手段7を介して設けるようにしたので、ハウジング5からの熱伝導を低減できる。しかも、制御装置6の、断熱手段7とは反対側に高熱伝導材で構成した放熱部63を備えたことにより、放熱性を高めることができるため、制御装置6の温度上昇を抑えることができる。このため、制御装置6に搭載されたスイッチング素子など半導体素子(図示しない)の温度上昇が抑制されるので、寿命を保証できる時間を長くすることができる。
【0028】
また、制御装置6を、ハウジング5の温度が低いコンプレッサ装置4側の外周部に偏倚させて断熱手段7を介して設置したので、冷却効果をさらに高めることができる。
また、電動機2からの配線24と接続部25、及び接続手段61の設置位置を電動機2よりコンプレッサ装置4側に設けるようにしたので、温度上昇が抑制され冷却効果を高めることができる。
また、電動機2からの配線24と接続部25、及び接続手段61の何れか、もしくはすべてを少なくとも銅よりも低熱伝導材としたので、ハウジング5の熱を制御装置6に伝え難くできる。
【0029】
また、放熱部63、ハウジング5、及び電動機2に液冷式の冷却手段8を付設(図4)し、または、それに断熱手段7を加えたものに液冷式の冷却手段8を付設(図5)し、または、図4のものに制御装置6の接続手段61、配線611、電動機2の接続部25、及び配線24を加えたものに液冷式の冷却手段8を付設(図6)し、あるいは、図6のものに更に断熱手段7を加えたものに液冷式の冷却手段8を付設(図7)したので、制御装置6の温度上昇が更に確実に抑制されるので、信頼性が一層向上する。
【0030】
また、冷却手段8は、回路内にラジエータ81及び循環ポンプ82を介挿して一つの循環路80によって直列に接続したことにより、冷却経路の車両設備との統一化を図ることができ、ラジエータ81や循環ポンプ82などの装置数が減り、小型化、低コスト化ができる。
また、冷却経路を、放熱部63、ハウジング5のように、許容温度上限の低い側から順に冷却するようにしたので、効率よく冷却できる。
また、制御装置6をハウジング5の中心より鉛直下側に配設するようにしたので、より温度の高いハウジング5の熱が自然対流により制御装置6に伝わることを防げるため、冷却効果を高めることができる。
【0031】
実施の形態2.
図8は本発明の実施の形態2に係る電動過給機の要部構成を模式的に示す図である。図において、電動過給機100はツインタービン化され、2つのハウジング5A、5Bが回転軸1A、1Bを平行に並設されている。制御装置6は、2つのハウジング5A、5Bの外周部に跨って鉛直下方部に断熱手段7を介して固定され、該制御装置6と2つのハウジング5A、5Bとで、二等辺三角形の位置となるように左右対称的に配設されている。なお、各ハウジング5A、5Bの内部には、タービンインペラ、電動機2、及びコンプレッサインペラが、図1〜図3に示すものと同様に設けられている。また、ステータ23A、23Bからの配線24は、ハウジング5A、5Bの下部からそれぞれ相手側方向に斜め下方向に引き出され、その先端部に、一体化された接続部25が設けられている。その他の構成は実施の形態1と略同様である。
【0032】
上記のように構成された実施の形態2においては、電動過給機をツインタービン化することによりハウジングが2つとなり、熱も分散されるのでハウジング5A、5Bの温度上昇が低減されるため、ハウジング5A、5Bからの伝熱による制御装置6の温度上昇を低減することができる。特に、制御装置6と2つのハウジング5A、5Bを二等辺三角形の位置にした例を示したが、インダクタンスを最小限にし、かつ制御装置6からの放熱性を確保しながら、最も小型化できた。但し、エンジンルーム内の制約などによっては必ずしも二等辺三角形の位置になくても良い。また、図8では制御装置6を1つに統一して2つのハウジング5A、5Bの外周底部に跨って固定したが、制御装置6をタービン毎に取り付けても良い。
【0033】
また、各タービンのサイズを互いに異なるものとしても良い。この場合、低速時に稼動するタービンと高速時に稼動するタービンに分けて、それぞれの回転領域で効率的に過給を行うことができる。すなわち、慣性モーメントの小さいタービンが先に過給圧を高め、後から慣性モーメントの大きいタービンの過給圧が立ち上がるなどの特性が得られ、結果として過給圧の立ち上がり特性が向上するなどの効果も得られる。
【0034】
さらに低速時の効率を改善するため、低速時に稼動するタービンのみを電動過給機にすることにより、サイズを小さくすることができる。さらに、高速時には、低速時に稼動するタービンへの排ガスの供給を停止し、高速時に稼動するタービンのみを稼動することにより、低速時に稼動するタービンのハウジングの温度上昇を低減することもできる。なお、ハウジング5の数、即ちタービンの数は3つ以上でも良い。また、図4〜図7に例示された冷却手段8を設けることができることは、実施の形態1と同様である。
【0035】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3に係る電動過給機の要部構成を模式的に示す図である。図において、電動機2の配線24は1相毎に120°の等角度でステータ23から放射状に突出され、接続部25は、該配線24に対応してハウジング5の外周部に等角度で3箇所に分散して設けられている。また、制御装置6も1相毎に対応して構成することで3分割され、ハウジング5上の接続部25に対応した位置に断熱手段7を介すように設置され、接続手段61によって電気的、機械的に接続部25に接続されている。また、断熱手段7はハウジング5の外周部に直接固定しても良いし、接続部25を介して固定しても良い。なお、配線24の突出方向の1つを、真上方向としたが、真下方向となるように上下を反転させた構成としても良い。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0036】
上記のように構成された実施の形態3においては、ステータ23からの配線24を相毎に120°の等角度でステータ23から放射状に突出させ、制御装置6も相毎に対応して構成することで3分割して、ハウジング5上の対応した位置に設けるようにしたことにより、配線24、611の長さをより一層短くできるので、損失をさらに低減することができる。また、放熱部63も分散配置されるので熱干渉が少なくなり、より小型の放熱器でも十分な放熱性を確保することができるので、放熱器サイズも小型化できる。
【符号の説明】
【0037】
1 回転軸、 2 電動機、 21 モータロータ、 22 モータハウジング、 23 ステータ、 24 配線、 25 接続部、 3 タービン装置、 31 タービンインペラ、 32 タービンハウジング、 4 コンプレッサ装置、 41 コンプレッサインペラ、 42 コンプレッサハウジング、 5、5A、5B ハウジング、 6 制御装置、 61 接続手段、 611 配線、 62 制御回路、 63 放熱部、 7 断熱手段、 8 冷却手段、 80 循環路、 81 ラジエータ、 82 循環ポンプ、 100 電動過給機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン装置及びコンプレッサ装置の間に同軸に設置され、ステータからの配線が半径方向にハウジングの外周部に引き出されその端部に接続部が設けられた電動機と、上記ハウジングの外周部に対して断熱手段を介して設置され、上記接続部との接続手段、上記電動機を駆動する制御回路、及びこの制御回路に対して上記断熱手段とは反対側に設けられた放熱部を有する制御装置とを備えたことを特徴とする電動過給機。
【請求項2】
上記断熱手段は、上記コンプレッサ装置の外周部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動過給機。
【請求項3】
上記配線及び接続部、並びに上記接続手段の回転軸方向の位置は、上記電動機における上記コンプレッサ装置の側に寄せて設けられてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動過給機。
【請求項4】
上記タービン装置、上記電動機、及び上記コンプレッサ装置を複数組備えてなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の電動過給機。
【請求項5】
上記制御装置は、上記ハウジングの鉛直下部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の電動過給機。
【請求項6】
上記ステータからの配線及び接続部は、配線長が最短となるように周方向に複数に分散して配置され、上記制御装置は、上記接続部に対応して周方向に分散して設置されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の電動過給機。
【請求項7】
上記放熱部及び上記ハウジングは、循環する液体によって冷却する冷却手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の電動過給機。
【請求項8】
上記断熱部、上記配線、上記接続部、及び上記接続手段の少なくとも一つが上記冷却手段による冷却回路に挿入されてなることを特徴とする請求項7に記載の電動過給機。
【請求項9】
上記冷却手段による冷却対象物は、ラジエータを経た冷却液の通流方向に、許容温度の低い順に配列されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の電動過給機。
【請求項10】
上記ステータからの配線及び接続部、並びに上記制御装置の接続手段の少なくとも一つを銅よりも低熱伝導材によって構成したことを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の電動過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−190694(P2011−190694A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55191(P2010−55191)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】