説明

電圧制御型発振器とこれを用いた電子機器

【課題】数種類の周波数から所望の発振周波数が得られ、逓倍回路、差動型変換回路を不要とし、ジッタの少ない小型化、低コスト化が図られた電圧制御型発振器を得ることを目的とする。
【解決手段】電圧制御型発振器は、外部からの制御電圧により入力信号の位相を所定量ずらして出力する電圧制御移相回路と、それぞれ所定の共振周波数で共振する複数のSAW共振子と、外部からの制御信号により複数のSAW共振子のいずれか1つを選択する切り換え手段と、選択されたSAW共振子からの所定の共振周波数を選択する周波数選択手段と、所定の共振周波数の共振信号を増幅する発振用差動増幅器と、発振用差動増幅器からの出力信号を入力する帰還バッファ用差動増幅器とを備え、電圧制御移相回路と、選択されたSAW共振子と、周波数選択手段と、発振用差動増幅器と、帰還バッファ用差動増幅器とにより正帰還発振ループを形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電圧制御型発振器とこれを用いた電子機器に関し、詳しくは、複数のSAW共振子を搭載し制御信号により複数のSAW共振子のいずれか1つを選択して、制御電圧に基づいて発振周波数が変化する電圧制御型発振器と、これを用いた電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話などの通信機器では、発振器からのクロック信号に基づいて通信データの送受信が行われる。そして、通信ネットワークのブロードバンド化が進み、市場の要求も400MHzを超える高周波帯に移り、この高周波帯おいてデータの送受信が行われるようになっている。近年の通信機器を始めとする電子機器においては、通信速度の高速化の要請から高周波発振器に対して、高周波帯域で周波数安定度が高いこと、通信機器の実用温度範囲において温度補償されていること、さらに、高周波発振器から出力されるクロック信号のジッタが少ないことが望まれている。特に、近年、急成長を見せているギガビット帯を使用したイーサネット(登録商標)やファイバーチャンネル等の高速ネットワーク市場において、高周波発振器のジッタに起因する通信エラーの発生を防止するため、ジッタが極めて少なく高安定化された高周波発振器が要求されている。
【0003】
又、現在、実用化されている10Gbit/sの光ファイバ通信システム、例えば、米国のSONET(Synchronous Optical NETwork)方式がある。この10Gbit/sの光ファイバ通信システムおいては、送受信されるデータ構造等の違いからいくつかの周波数が使用され、600MHzの帯域では近接した4つの周波数が存在し、それぞれに応じた高周波発振器が必要である。この周波数の違いは、主に、伝送路上で発生する誤りデータの有無を識別するための誤り訂正機能により付加される送信データのビット数の差異や方式上における送受信データの構成の差異によるものである。具体的には、622.08MHz,644.53125MHz,666.51429MHz,669.32658MHzの周波数がある。
【0004】
ところで、従来の電圧制御型発振器(Voltage ControlledOscillator)としては、図20、又は、図21に示したものが知られている。
【0005】
図20は、LCを用いた並列共振回路から成る電圧制御型発振器(VCO)1Gのブロック図である。この電圧制御型発振器(VCO)1Gは、帰還部である並列共振回路83を備えたコルピッツ型の発振回路80と、逓倍回路81と差動変換回路82から構成される。コルピッツ型の発振回路80は図示しないNPN型のバイポーラトランジスタ等から、又、並列共振回路83はインダクタL,コンデンサC、及び可変容量ダイオードCvにより構成される。そして、制御電圧Vcにより可変容量ダイオードCvの容量値を制御することにより、発振周波数が変化するようになっている。コルピッツ型の発振回路80からの発振出力は、さらに、逓倍回路81で所望の周波数、例えば、622.08MHzに逓倍され、1つの入力信号から差動信号が取り出せる差動変換回路82でクロック信号として出力される。
【0006】
図21は、ATカット型水晶振動子を用いた従来の電圧制御型水晶発振器(Voltage Controlled Cristal Oscillator)1Hの構成を示すブロック図である。この電圧制御型水晶発振器(VCXO)1Hは、数10MHzで振動するATカット型水晶振動子と電圧制御移相回路84とコルピッツ型の発振回路80から成る発振部85と、前述した逓倍回路81と、差動変換回路82とから構成されている。その発振部85では、電圧制御移相回路84において外部からの制御電圧Vcを入力し、一定の範囲で発振周波数を可変できるようになっている。
【0007】
又、従来の電圧制御型水晶発振器(VCXO)において、上記した発振部85を、例えば、特許文献1に示すような切換制御回路を用いて複数の圧電振動子(水晶振動子)からの信号を選択する多周波切換型発振器に置き換えて構成することもできる。
【0008】
又、従来の電圧制御型発振器として、例えば、特許文献2に示すように複数のSAW共振子をスイッチにより切り換えて低雑音で広帯域化を図っているものもある。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−297640号公報 (段落 0013,第1図)
【特許文献2】
特開平8−213838号公報 (段落 0006,第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記した電圧制御型の高周波発振器は以下に示すような問題点(課題)があった。
【0011】
図20に示した電圧制御型発振器(VCO)1Gは、コイルやコンデンサを用いた並列共振回路のQ値が非常に小さいためジッタが多く発生し、上記したSONET方式のジッタに関するシステム仕様を満足させることができないという課題があった。
【0012】
一方、図21に示したQ値の高いATカット型水晶振動子を用いた電圧制御型水晶発振器(VCXO)1Hを使用した場合、ATカット型水晶振動子の周波数変化が数100KHz程度にとどまり、適用する高速の光通信システムのマルチレートへの対応ができないという課題があった。
【0013】
そして、図21や特許文献1に記載されているATカット型水晶振動子は、主振動以外に副振動が近接して存在すると、温度条件が変わったときにさらに近接して主振動と結合しやすく、又、必要な振動以外にも不要なスプリアスが存在している。又、逓倍回路81はATカット型水晶振動子のもつ主振動を基にして逓倍化を図る、即ち、高調波を発生させ必要な高調波のみを高周波信号として得る方式を採用している。このため、ATカット型水晶振動子の主振動と副振動の結合やその振動に起因する不要なスプリアスが、ジッタの発生要因となる。又、逓倍回路81において、ATカット型水晶振動子の主振動を基に発生させた高周波信号以外の不要な高調波も、ジッタの発生要因となる。従って、それらの発生要因が雑音となってジッタを増大させるという課題があった。
【0014】
又、従来の電圧制御型発振器1G,1Hは、コルピッツ型の発振回路80、逓倍回路81、差動型変換回路82から構成され、部品を多く必要とするため大型化され、近年の超小型化、低コスト化という要請に反するという課題もあった。
【0015】
又、特許文献2によれば、複数のSAW共振子をスイッチにより切り換える構成を採るが、外部からの制御ができないため、一旦、SAW共振子を選択してしまえば、その後の変更ができないという課題があった。
【0016】
又、特許文献2に示すような構成においても、▲1▼バリキャップダイオードの温度特性、特に、低逆電圧(容量値大)において変動が大きいこと、▲2▼能動素子の温度−位相特性、▲3▼コイル,コンデンサ等受動素子の温度特性の影響により、図22に示すように制御電圧−発振周波数可変特性が大きく変動してしまうという課題がある。即ち、図22R>2(a)に示す発振周波数の温度特性で、特に、高温域において、発振周波数に大きな変動が顕著に見られる。同様に、図22(b)においても、高温域で、発振周波数に大きな変動が見られる。これらは、SAW共振子を用いた電圧制御型SAW発振器(VCSO)に顕著に表れる問題である。
【0017】
さらに、使用する周波数毎に発振器を提供しようとする場合、それの機種毎に設計・製造が必要となること、又、この発振器を必要とするシステム提供者からの注文に即時に応じるために、常に在庫しておかなければならないという課題があった。
【0018】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電圧制御型発振器の発振部にQ値の低いLC型の並列共振回路や不要な副振動やスプリアスを有するATカット型水晶振動子を使用することなく、外部からの制御により数種類の周波数を選択的に発振させることのできる電圧制御型発振器を得ることを目的とする。又、逓倍回路、差動型変換回路を用いることなく、ジッタの少ない小型化、低コスト化が図られた電圧制御型発振器を得ることを目的とする。又、発振周波数の温度特性、特に、高温域において、改善が図られた電圧制御型発振器を得ることを目的とする。そして、周波数毎に設計・製造することなく、複数の発振周波数から選択して使用できる電圧制御型発振器を得ることを目的とする。
【0019】
さらに、本発明は、ネットワークシステムの仕様に応じて周波数が選択でき、かつジッタの少ない小型化、低コスト化が図られた電圧制御型発振器を用いた電子機器、例えば、光ネットワーク通信機器を得ることも目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の電圧制御型発振器は、外部からの制御電圧により入力信号の位相を所定量ずらした出力信号として出力する電圧制御移相回路と、それぞれ所定の共振周波数で共振する複数のSAW共振子と、外部からの制御信号により前記複数のSAW共振子のいずれか1つを選択する第1の切り換え手段と、前記第1の切り換え手段により、前記複数のSAW共振子のうちいずれか1つ選択されたSAW共振子からの所定の共振周波数を有する出力信号を選択する周波数選択手段と、前記所定の共振周波数の共振信号を増幅して出力する発振用差動増幅器と、前記発振用差動増幅器からの出力信号を入力する帰還バッファ用差動増幅器とを備え、前記電圧制御移相回路と、前記第1の切り換え手段により選択されたSAW共振子と、前記周波数選択手段と、前記発振用差動増幅器と、前記帰還バッファ用差動増幅器とにより正帰還発振ループを形成することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、所望の共振周波数が得られ、1種類の電圧制御型発振器で光ファイバ通信システムにおける周波数の異なる個々のシステム仕様に応じることができる。併せて、この選択されたSAW共振子に対応する周波数選択手段により、回路のインピーダンス不整合による雑音や、異常発振に基づく不要な雑音を除去できるので、それらの雑音に起因するジッタを発生することがないという効果がある。
【0022】
本発明の電圧制御型発振器は、外部からの記制御電圧により入力信号の位相を所定量ずらした出力信号として出力する電圧制御移相回路と、それぞれ所定の共振周波数で共振する複数のSAW共振子と、外部からの制御信号により前記複数のSAW共振子のいずれか1つを選択する第1の切り換え手段と、前記第1の切り換え手段により、前記複数のSAW共振子のうちいずれか1つ選択されたSAW共振子からの所定の共振周波数を有する出力信号を選択する周波数選択手段と、前記周波数選択手段で選択された所定の共振信号を増幅して出力する発振用増幅器と、前記発振用増幅器からの出力信号を入力する帰還バッファ用増幅器と、前記発振用増幅器からの信号を入力し、出力信号を出力する複数の出力用増幅器とを備え、前記電圧制御移相回路と、前記第1の切り換え手段により選択されたSAW共振子と、前記周波数選択手段と、前記発振用増幅器と、前記帰還バッファ用増幅器とにより正帰還発振ループを形成することを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、所望の共振周波数が得られ、1種類の電圧制御型発振器で光ファイバ通信システムにおける周波数の異なる個々のシステム仕様に応じることができる。併せて、周波数選択手段により、回路のインピーダンス不整合による雑音や、異常発振に基づく不要な雑音を除去できるので、それらの雑音に起因するジッタを発生することがない。さらに、集積回路(Integrated Circuit)内部に複数の出力用増幅器を備えるので、電圧制御型発振器の出力に出力バッファ用ドライバICのような外付用部品を追加する必要がなくなり、小型化、低価格化が図れるという効果がある。
【0024】
本発明の電圧制御型発振器は、前記周波数選択手段が、誘導素子及び容量素子を有するLC並列共振回路として構成され、前記複数のSAW共振子のそれぞれの一端と接地間で直列に接続される受動素子を備え、前記複数のSAW共振子のいずれか1つが選択された際、選択された前記SAW共振子に直列接続された前記受動素子は前記LC並列共振回路と並列接続されることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、選択されたSAW共振子に対応するLC並列共振回路単位での切り換えや、受動素子を個別に選択するための切り換え手段を設ける必要がないので、部品の節約が図られ、電圧制御型発振器の小型化を図ることができるという効果がある。
【0026】
本発明の電圧制御型発振器は、前記周波数選択手段は、誘導素子及び容量素子を有するLC並列共振回路として構成され、第2の切り換え手段と、前記第2の切り換え手段の一端と接地間で直列に接続される受動素子とを備え、前記複数のSAW共振子のいずれか1つが選択された際、選択された前記SAW共振子に対応する、前記第2の切り換え手段により選択された前記受動素子が前記LC並列共振回路と並列接続されることを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、選択されたSAW共振子に対応するLC並列共振回路単位で切り換える必要がないので、誘導素子(インダクタ)の節約が図られ、電圧制御型発振器の小型化を図ることができるという効果がある。
【0028】
本発明の電圧制御型発振器は、前記周波数選択手段が、誘導素子及び可変容量素子を有するLC並列共振回路として構成され、外部からの制御信号に基づいて前記可変容量素子の容量を制御するための制御電圧を生成する制御電圧生成手段を備えることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、周波数選択手段(LC並列共振回路)は、誘導素子(インダクタ)と可変容量素子(可変容量ダイオード)とからなる簡易な構成を採用している。このため、複数の個別の容量素子(コンデンサ)を配置して、これらと誘導素子と多数の、かつ長い配線を行う必要がない。この結果、複数の容量素子と誘導素子における配線間に存在する浮遊容量等が発生しないので、LC並列共振回路の特性に与える悪影響をなくすことができるという効果がある。
【0030】
本発明の電圧制御型発振器は、反転出力端子及び非反転出力端子を有する前記帰還バッファ用差動増幅器の出力端子のいずれか1つを前記正帰還発振ループとして選択する信号選択手段を備えたことを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、帰還バッファ用差動増幅器から出力される互いに相異なる位相を有する二つの信号のうちからいずれかを選択することができるので、電圧制御移相回路における調整可能な移相量を少なく設定することができる。この結果、使用する周波数帯に応じて複数の電圧制御移相回路を備える必要がないので、電圧制御型発振器の小型化、低価格化が図られるという効果がある。
【0032】
本発明の電圧制御型発振器は、前記差動増幅器は、ECLラインレシーバを用いた差動増幅回路であることを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、集積回路化が容易となるので、その電圧制御型発振器の小型化、低消費電力化を図ることができ、かつ高速で動作させることができるという効果がある。
【0034】
本発明の電圧制御型発振器は上記の構成において、前記LC並列共振回路に並列接続される前記受動素子は容量素子であることを特徴とする。
【0035】
上記構成によれば、複数のSAW共振子のいずれか1つが選択されると、これに対応する受動素子として簡易な容量素子がLC並列共振回路に並列に接続されるので、LC並列共振回路の周波数選択性を容易に変更させることができるという効果がある。
【0036】
本発明の電圧制御型発振器は、前記周波数選択手段が負の温度特性を有するNTCサーミスタを備えることを特徴とする。
【0037】
上記構成によれば、電圧制御型発振器の制御電圧−発振周波数特性が広い温度範囲、特に高温域におけるその特性が大幅に改善される。この結果、発振周波数の温度による変化を軽減できるので、周囲の環境温度が高温になったとしても、周波数の安定した電圧制御型発振器が得られるという効果がある。
【0038】
本発明の電子機器は、上記に記載した電圧制御型発振器を備えたことを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、使用するSAW共振子毎に簡易にLC並列共振回路を形成して、不要なジッタを大幅に削減し高安定化された電圧制御型発振器を使用することにより、送受信データとクロック信号間におけるタイミングマージンが確保される。これにより、本発明による電圧制御型発振器を電子機器、例えば、光インターフェースモジュールに適用すれば誤動作することなく光ネットワークを介して安定したデータ送受信を行うことができる。又、本発明の電圧制御型SAW発振器(VCSO)は、外部からの制御により複数のSAW共振子の共振周波数を選択的に切り換え可能である。従って、本発明の電圧制御型SAW発振器(VCSO)を1個搭載しておけば、システム側からシステムの仕様に応じて発振周波数を切り換えることができる。併せて、周波数の異なる個別の電圧制御型SAW発振器(VCSO)を複数設ける必要がないので、小型化、低価格化が図られた光インターフェースモジュールを提供することができるという効果がある。
【0040】
【発明の実施の形態】
(1)第1の実施形態
最初に、第1の実施形態について、説明する。
【0041】
(1−1) 第1の実施形態の構成
A.電圧制御型SAW発振器の構成
図1は、本発明の第1の実施形態による電圧制御型SAW発振器(Voltage Controlled SAW Oscillator:VCSO)1Aの構成を示すブロック図である。
【0042】
電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aは、発振用差動増幅器21,出力用差動増幅器22、帰還バッファ用差動増幅器23をそれぞれ内蔵するICチップ2aと、外部からの制御電圧Vcに基づいて入力信号の位相を所定量ずらし調整する電圧制御移相回路3と、それぞれ所定の共振周波数を有する複数のSAW共振子X1〜Xnと、外部からの制御信号によりオン/オフ動作する切り換えスイッチ(第1の切り換え手段)4aと、インダクタLとコンデンサCのLC並列共振回路5a(周波数選択手段)とから構成される。又、ICチップ2aから出力され、これの外部から基準バイアス電圧VBBが、発振用差動増幅器21の反転入力端子D2に供給される。そして、少なくとも、発振用差動増幅器21,帰還バッファ用差動増幅器23,電圧制御移相回路3,切り換えスイッチ4aによりいずれか1つ選択されたSAW共振子Xm(但し、m=1〜n)と、LC並列共振回路5aとにより正帰還発振ループが形成される。
【0043】
尚、選択されたSAW共振子を、以下、SAW共振子Xmと表示する。
SAW共振子は、圧電基板上にすだれ状の励振電極と梯子状の反射器を配置し、励振電極で励振された表面波を反射器で反射させることで定在波を発生させ、共振子として機能させるものである。又、所定の周波数以外に共振点が存在しないので、SAW共振子自身からは不要な雑音が発生せず、これに起因するジッタを発生することがないという利点を有する。SAW共振子は共振周波数が数100MHz〜数GHzであり、高周波発振回路に用いられる。
【0044】
前述した3つの差動増幅器21〜23は、図2に示すECLラインレシーバ(Emitter−Coupled Logic:エミッタ結合論理)を用いた差動増幅回路である。ECLラインレシーバは、低消費電力であり、かつ高速動作が可能であるので高周波発振器に用いられている。又、図2に示すように、SAW共振子Xmからの共振信号を増幅する差動増幅器21〜23は、ECLラインレシーバを用いた差動増幅回路から構成されるので、集積回路化が容易であり、電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aの小型化を実現することができる。
【0045】
発振用差動増幅器21では、SAW共振子Xmからの所定の共振周波数fmの信号が発振用差動増幅器21の非反転入力端子D1に入力される。そして、相互の位相差が180度である出力信号が、非反転出力端子Q+と反転出力端子Q−から出力される。
【0046】
出力用差動増幅器22は、発振用差動増幅器21からの出力信号を波形整形し所定の発振周波数、例えば、622.08MHzのクロック信号Fとして出力する。
【0047】
帰還バッファ用差動増幅器23はバッファ機能を有する差動増幅器であり、その出力は出力端子Q1,Q2に出力される。そして、ECLラインレシーバを用いた帰還バッファ用差動増幅器23のそれぞれの出力端子Q1,Q2に、図示しないエミッタ終端抵抗がICチップ2aの外付け用としてそれぞれ接続される。尚、図2には、エミッタ終端抵抗R6,R7を出力端子OUT−,OUT+のそれぞれに接続した状態が示されている。
【0048】
電圧制御移相回路3は、外部からの制御電圧Vcに基づいて電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aの位相条件を満足させるため、帰還バッファ用差動増幅器23からの出力信号SQ1又はSQ2のいずれかを所定の位相量に調整する。
【0049】
図3は、電圧制御移相回路3の構成を示す回路図である。
LC並列共振回路5aは、インダクタLとコンデンサCの並列回路として、発振用差動増幅器21の非反転及び反転のそれぞれの入力端子D1,D2間に接続される。そして、選択されたSAW共振子Xmの共振周波数fmを選択し出力する。
【0050】
B.SAW共振子とLC並列共振回路の構成
次に、図1及び図4を参照して、第1の実施形態の電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aに使用される複数のSAW共振子とLC並列共振回路の構成に関していくつかの実施例について説明する。
【0051】
<実施例1>
まず、図1に基づいて実施例1を説明する。
図1において、複数のSAW共振子X1〜Xnはそれぞれの一端に切り換えスイッチ4aが接続され、この切り換えスイッチ4aの他端にはLC並列共振回路5aが接続される。入力端子Tcを介して外部から入力された制御信号CONTにより、複数のSAW共振子X1〜Xnのいずれか1つのSAW共振子Xmを選択する。この選択により、前述したような所定の共振周波数、例えば、622.08MHz,644.53125MHz,666.51429MHz,669.32658MHzのいずれかが得られることになる。
【0052】
又、複数のSAW共振子X1〜Xnそれぞれの端子とコンデンサC1〜Cn(受動素子)の一端が切り換えスイッチ4aを介して直列接続され、コンデンサC1〜Cnの他端が接地される。この構成は、SAW共振子X1〜Xnのいずれか1つのSAW共振子Xmが選択されると同時に、これに対応するコンデンサCm(m=1〜n)をLC並列共振回路5aと並列に接続するというものである。
【0053】
ここで、SAW共振子と同様に、以下、コンデンサCmは選択されたコンデンサを表示するものとする。
【0054】
ここで、図1に示した構成を一部変更した変形例について説明する。
図4は、図1に示した、SAW共振子とLC並列共振回路5aの基本的な構成に対する変形例を示す図である。図4によれば、SAW共振子Xm’(m’=1〜n)に直列接続したコンデンサCm’を廃し、LC並列共振回路5aのコンデンサCと共用させて構成したものである。これにより、図1の構成と比べてコンデンサを1つ減らすことができる。
【0055】
以上説明したように、実施例1はSAW共振子XmとコンデンサCmを直列接続させた構成で切り換えるというものである。この構成により、インダクタとコンデンサからなる並列共振回路毎に切り換えるという構成に比べて、複数のインダクタ分の部品が削減される。さらに、後述する実施例2(図5参照)に示す個別のコンデンサC1〜Cnそれぞれの単位で選択する切り換えスイッチを設ける必要がないので、切り換えスイッチの節約が図られ、電圧制御型発振器の小型化を図ることができる。
【0056】
<実施例2>
次に、図5に基づいて、実施例2を説明する。
図5(a)は、付加するコンデンサC1〜Cnと切り換えスイッチ4bとで構成する場合のその構成を示す図である。即ち、図5(a)において、実施例2は、SAW共振子X1〜Xnとこれらを選択する切り換えスイッチ4aと複数のコンデンサC1〜Cnとこれらを選択する切り換えスイッチ(第2の切り換え手段)4bとLC並列共振回路5aとから構成したものである。そして、外部からの制御信号CONTに基づいて、選択されたSAW共振子Xmに対応するコンデンサCmを、切り換えスイッチ4bにより選択し、このコンデンサCmがインダクタLと、さらに、並列に接続され、LC並列共振回路5aが形成される。
【0057】
図5(b)は、第1の実施形態における実施例2の変形例を示す図である。
図5(b)によれば、この変形例は、複数のコンデンサC1〜Cnのいずれか1つのコンデンサCm’(m’=1〜n)を廃し、コンデンサCで兼用させるというものである。図5R>5(b)は、コンデンサを伴わないSAW共振子Xm’(m=m’)が選択された場合を示している。この構成により、図5(a)に示す構成に比べコンデンサを1個削減することができる。
【0058】
以上説明したように、実施例2はコンデンサC1〜Cnのいずれか1つを選択したコンデンサCmを、さらにLC並列共振回路5aのインダクタLに付加させるというものである。このような構成により、インダクタとコンデンサからなる並列共振回路毎に切り換えるという構成に比べて、複数のインダクタ分の部品が削減され、電圧制御型発振器の小型化を図ることができる。
【0059】
尚、実施例2において、切り換えスイッチ4bにコンデンサC1〜Cnをそれぞれ直列接続した構成で説明したが、コンデンサC1〜Cnに切り換えスイッチ4bをそれぞれ直列接続して、切り換えスイッチ4bの一端を接地する構成としても、同様の効果を奏する。
【0060】
又、切り換えスイッチ4a,4bの切り換え手段として、ダイオードスイッチ、スイッチングトランジスタ、また、マルチプレクサ等の手段のいずれによっても実現できる。
【0061】
C.LC並列共振回路の役割
次に、図6に基づいて、選択されたコンデンサCmが並列接続されるLC並列共振回路5aの役割とその周波数特性について説明する。尚、ここでは、説明上、図1に示す構成で2つのSAW共振子の場合について説明する。
【0062】
SAW共振子X1,X2の共振周波数をそれぞれf1,f2とする。又、SAW共振子X1が選択されたときのLC並列共振回路5aの共振周波数fs1は、コンデンサC1が付加されて、fs1=1/(2π√(L(C+C1)))である。SAW共振子X2が選択されたときのLC並列共振回路5aの共振周波数fs2は、コンデンサC2が付加されて、fs2=1/(2π√(L(C+C2)))と表わされる。これらの関係を図示したものが、図6である。
【0063】
図6において、例えば、SAW共振子X1におけるLC並列共振回路5aの周波数特性は、コンデンサC1が付加されて(a)として表わされ、SAW共振子X1の共振周波数f1はその特性(a)内では選択可能な周波数となる。同様に、SAW共振子X2が選択されるとコンデンサC2が付加されるので、そのときのLC並列共振回路5aの周波数特性は(b)のように周波数が低いほうに移動し(C2>C1の場合)、SAW共振子X2の共振周波数f2は特性(b)内で選択可能な周波数となる。
【0064】
以上説明したように、付加されるコンデンサCmにより、LC並列共振回路5aの周波数特性は、これに対応するSAW共振子Xmの共振周波数fmを選択できる特性に変更される。
【0065】
ところで、このLC並列共振回路を設ける理由は、不要な周波数を除去する点にある。即ち、数100MHzで共振するSAW共振子を用いた高周波用の電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aは、SAW共振子X1〜Xnを始めとして、電圧制御移相回路3、LC並列共振回路5a、差動増幅器21,23からなる帰還回路を構成している。この帰還回路におけるインピーダンスの整合性が十分にとれないことに起因して高周波発振信号波形が歪む等、不要な高調波が存在する。
【0066】
図7は、SAW共振子Xmを回路記号で等価的に表わしたときの電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aの等価回路である。図7に示すように、正規の正帰還発振ループ(a)以外に、SAW共振子Xmの電極間容量Cdm(m=1〜n)に基づく正帰還発振ループ(b)がこの帰還回路に存在する。この正規でない正帰還発振ループ(b)に起因する異常発振が発生することになり、電圧制御型発振器自体に、それらの不要な周波数を除去するために周波数選択性を持たせることが必要となる。即ち、LC並列共振回路5aにこの機能を持たせ、これにより、図6で説明したようにSAW共振子Xmの共振周波数fmが選択され、一方、前述した不要な高調波や異常発振等の雑音を除去することができる。
【0067】
(1−2) 第1の実施形態から得られる効果
次に、本発明の第1の実施形態から得られる効果について説明する。
第1の実施形態によれば、複数のSAW共振子とこれを選択するための切り換えスイッチを備え、入力端子を介して外部から入力された制御信号により、複数のSAW共振子のいずれか1つのSAW共振子が選択される。この選択により、システムの仕様に応じた所定の共振周波数が得られることになり、1種類の電圧制御型発振器で光ファイバ通信システムにおける個々のシステム仕様に応じることができるという効果が得られる。
【0068】
又、1種類の電圧制御型発振器を設計・製造すればよいので、その在庫管理が容易になるという効果が得られる。
【0069】
又、電圧制御型発振器には、周波数選択性を持つLC並列共振回路を備えているので、回路のインピーダンス不整合による雑音の発生や、正規でない正帰還発振ループによる異常発振等に起因する不要な雑音を除去できる。この結果、SAW共振子の共振周波数のみが選択され、それらの雑音が除去されて、これらに起因するジッタを発生することがないという効果が得られる。
【0070】
又、複数のSAW共振子のいずれか1つが選択された際、これに対応するコンデンサがLC並列共振回路と並列に接続されるという構成を採る。このため、選択されたSAW共振子の共振周波数に合わせてLC並列共振回路の選択特性を簡易に変更することができるという効果が得られる。
【0071】
又、インダクタとコンデンサからなるLC並列共振回路単位で切り換える必要がないので、複数個のインダクタ部品を削減することができ、電圧制御型発振器の大型化を抑制できるという効果が得られる。
【0072】
又、SAW共振子は、ATカット型水晶振動子のような副振動がないので、主振動と結合することがないうえに、不要なスプリアスも存在しない。又、さらに高い周波数を得るための逓倍回路を必要としないので、高調波も発生することがない。従って、それらに起因するジッタを発生することがないという効果が得られる。
さらに、逓倍回路をなくすことで簡易な構成が採れるので、電圧制御型発振器の大型化を抑制して、小型化・低価格化を図ることができるという効果が得られる。
【0073】
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について、説明する。
【0074】
(2−1) 第2の実施形態の構成
図8は、本発明の第2の実施形態による電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Cの構成を示すブロック図である。第1の実施形態を示す図1との差異は、SAW共振子X1〜Xnに接続されたコンデンサC1〜Cnを廃し、可変容量ダイオード(可変容量素子)CvoからなるLC並列共振回路5bと制御電圧生成部6とを設けた点にある。
【0075】
図8において、LC並列共振回路5bは、可変容量ダイオードCvoとインダクタLから構成され、後述する制御電圧Vcoを入力し可変容量ダイオードCvoの容量値を設定し、選択されたSAW共振子Xmの共振周波数fmを有する信号を選択する。
【0076】
又、制御電圧生成部6は、外部端子Tcを介して入力された制御信号Vcntに基づいて、SAW共振子Xmの所望する共振周波数を選択するために必要な、LC並列共振回路5bの可変容量ダイオードCvoに供給する制御電圧Vcoを生成する。
【0077】
これ以外の構成については、第1の実施形態と同一であるので、同一ブロックには同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0078】
尚、このLC並列共振回路5bの周波数特性は、制御電圧Vcoにより可変容量ダイオードCvoの容量値が設定される点を除けば、同一の容量値を有する個別のコンデンサの場合と同一である。
【0079】
(2−2) 第2の実施形態から得られる効果
次に、本発明の第2の実施形態から得られる効果について説明する。
第2の実施形態によれば、LC並列共振回路は、可変容量ダイオードとインダクタからなる簡易な構成を採用しているので、第1の実施形態で説明した複数の個別のコンデンサを廃し、これらとインダクタと多数の、かつ長い配線をなくすことができる。この結果、複数のコンデンサとインダクタの配線間に存在する浮遊容量等がなくなり、LC並列共振回路に与える悪影響を防止できるという効果が得られる。
尚、その他の効果については、LC並列共振回路5bに関係する効果を除き第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
(3)第3の実施形態
次に、第3の実施形態について、説明する。
【0081】
(3−1) 第3の実施形態の原理
図9は、本発明の第3の実施形態による電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Dの構成を示すブロック図である。
【0082】
本発明による第3の実施形態は、LC並列共振回路5aにNTCサーミスタRTを並列に接続した構成を採る。この点以外は、第1又は第2の実施形態と同一であるのでその説明は省略する。尚、説明は、図1に基づいた構成で説明する。
【0083】
図9において、通常,図3に示した電圧制御位相回路3のバリキャップダイオードCvによりリアクタンスを可変させ、発振ループの位相を可変することによって制御電圧−周波数特性が得られる。即ち、バリキャップダイオードに印加する制御電圧により、所望の発振周波数が得られる。
【0084】
ところで、「発明が解決しようとする課題」で説明したように、選択されたSAW共振子Xmと電圧制御位相回路3を用いた構成において、制御電圧−発振周波数特性(図22参照)が、特に、高温域において、大きく変動してしまうという問題がある。このような問題に対しては、図9に示すように、第1の実施形態におけるLC並列共振回路5aに並列にNTCサーミスタRTを接続することにより改善される。この温度特性の改善について、図10乃至図13を参照して、説明する。
【0085】
NTCサーミスタRTは負の温度特性を有し、一般的に、図10に示すように、周囲の環境温度が上昇すると、NTCサーミスタRTの抵抗値Rは指数関数的に減少する。
【0086】
図11は、LC並列共振回路5cのNTCサーミスタRTの抵抗値Rを変化させた場合の周波数−位相特性を示す図である。図11の矢印で示すように、周波数−位相特性は、NTCサーミスタRTの抵抗値Rが小さいほど、LC並列共振回路5cの共振周波数FA(例えば、前述の622.08MHz)を中心に左回りに回転させたような特性が得られる。即ち、抵抗値Rが小さいほど、周波数−位相特性は平坦な特性が得られ、周波数変化に対して位相量の変化が小さくなる。
【0087】
又、図12は、このLC並列共振回路5cの共振周波数FAより高い任意の周波数F1(図11参照)、例えば、625MHzという周波数における温度−位相変化量特性を示す図である。図12の縦軸は、共振周波数FAにおける位相を0として周波数F1の位相との差を、温度を変えたときの位相変化量として表わしたものである。図12に示す破線は、LC並列共振回路5cにサーミスタRTが接続されていない場合、又、実線はサーミスタRTを接続した場合の特性を示している。
【0088】
図12の破線が示すように、NTCサーミスタRTが接続されていない場合は、低温域においては位相変化量が小さいのに対し、高温域においては位相変化量が大きくなる。一方、図12の実線が示すように、NTCサーミスタRTを接続した場合は、高温において抵抗値Rが小さくなると位相変化量が小さくなり、低温、高温に関係なく位相変化量はほぼ一定となる、という特性を有する。言い換えると、高温域においてNTCサーミスタRTの抵抗値Rを小さくすることで、位相の変化量が大きくなることを防止している。
【0089】
図13は、電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Dの正帰還発振ループにおける発振周波数F−周波数可変感度を示す図である。ここで、周波数可変感度とは、単位制御電圧Vc当たりの発振周波数の周波数偏差で表わしたものである。図13において、破線はNTCサーミスタRTの抵抗値Rが大きい場合を、そして、実線は抵抗値Rが小さいときの周波数可変感度特性を示す。即ち、環境温度が高くなってNTCサーミスタRTの抵抗値Rが小さくなるほど、発振周波数の高い領域においても、その周波数可変感度が向上し、低い領域とほぼ同じ感度を持たせることができる事を示している。従って、高温になったとしても、NTCサーミスタRTの抵抗Rが小さくなって、周波数可変感度を維持することができる。
【0090】
(3−2) 第3の実施形態から得られる効果
次に、本発明の第3の実施形態から得られる効果について説明する。
上記の図13で説明したように、NTCサーミスタRTをLC並列共振回路5aに並列接続させて正帰還発振ループの周波数可変感度を、温度に関係なくほぼ一定にすることができるので、図14及び図15に示すような改善効果が得られる。
【0091】
図14において、電圧制御型SAW発振器(VCSO)における制御電圧Vc−発振周波数Fの特性が示すように、高温における制御電圧Vcに対する発振周波数Fの変化を他の温度域の場合とほぼ同じ特性にすることができる。又、図15の発振周波数Fの温度特性が示すように、広い温度範囲で発振周波数Fの温度による変化をほぼ同じ傾向の特性とすることができる。特に、高温域におけるその温度特性が従来と比較して大幅に改善され(図22参照)、発振周波数Fの温度による変化を軽減できるので、周囲の環境温度が高温になったとしても、周波数の安定した電圧制御型SAW発振器(VCSO)が得られるという効果を有する。
【0092】
又、発振周波数の高温域における温度特性を改善するに当たり、NTCサーミスタRTをLC並列共振回路に並列接続させるという簡易な構成を採用しているので、新たな専用の温度補償回路を設ける必要がない。従って、発振回路の大規模化が抑制され、電圧制御型発振器の小型化、低価格化が図られるという効果が得られる。
尚、その他の効果については、第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0093】
(4)第4の実施形態
次に、第4の実施形態について、説明する。
【0094】
(4−1) 第4の実施形態の構成
図16は、本発明の第4の実施形態による電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Eの構成を示すブロック図である。第1の実施形態を示す図1との差異は、スイッチ回路SWを設けた点にある。これ以外の点については第1乃至第3の実施形態と同一であるので、同一ブロックには同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0095】
図16によれば、帰還バッファ用差動増幅器23の後段には、この非反転出力端子Q1から出力される信号SQ1あるいはその反転出力端子Q2から出力される信号SQ2のいずれかを選択するスイッチ回路(信号選択部)SWが設けられている。そして、スイッチ回路SWの後段には、電圧制御移相回路3が接続され、電圧制御移相回路3における移相量が少なくなるように、スイッチ回路SWは、信号SQ1または信号SQ2のいずれかを選択的に出力する。尚、LC並列共振回路5は、コンデンサC,インダクタL、可変容量ダイオードCvo、NTCサーミスタRTから構成されることは、第1乃至第3の実施形態と同様である。
【0096】
(4−2)スイッチ回路による信号選択
次に、電圧制御移相回路3における移相量が少なくなるように、帰還バッファ用差動増幅器23の出力をスイッチ回路SWにより選択する点について説明する。
【0097】
最初に、スイッチ回路SWを設ける技術的背景について説明する。
2つの光通信ネットワークシステム、一例として、2.5Gbit/s及び10Gbit/sのネットワークシステムに用いられる周波数として、前者では155.52MHz、後者では前述した600MHz帯の周波数がある。この両者に適用できるSAW共振子を複数設けて、これらに共通して使用できる電圧制御型SAW発振器(VCSO)を設計する場合がある。このような場合、使用する周波数に大きな開きがあると電圧制御位相回路3が複数必要となるか、あるいは、1つの回路でその規模が複雑かつ規模が大きくなる。この問題点を回避するために、使用する周波数帯に応じた、簡易、かつ、回路規模の小型化ができる手段が必要となる。この手段が、帰還バッファ差動増幅器23の出力信号を選択するスイッチ回路SWである。
【0098】
図17を参照して、第4の実施形態におけるスイッチ回路SWによる信号選択を行うための手順について説明する。
図17は、信号SQ1あるいは信号SQ2のいずれかを用いた場合に電圧制御型SAW発振器(VCSO)1E全体として位相条件を満たすために電圧制御移相回路3において必要とされる移相量を表した図である。すなわち、電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Eにおける所望の共振周波数をfmとして、正帰還発振ループにおいて信号SQ1を用いたとする。この場合、正帰還発振ループ全体において位相条件を満たさせるためには、電圧制御移相回路3における移相量をΔQ1としなければならないということを表している。信号SQ2についても同様である。
【0099】
位相差ΔQ1と位相差ΔQ2とを比較し、電圧制御移相回路3における移相量がより少なくなるTX端子(X=1,2)側にスイッチ回路SWを切り換える。この切り換えは、図1515に示すように、通常、外部からの制御信号CONTに基づいてSAW共振子X1〜Xnの切り換えと連動して行われる。尚、外部からの制御信号CONTによらず、機械的なスイッチで手動による切り換えであってもよい。
【0100】
ΔQ1>ΔQ2である場合(高い方の周波数、例えば、前述した622.08MHz)には、スイッチ回路SWを帰還バッファ用差動増幅器23の反転出力端子Q2のT2端子側とする。また、ΔQ1<ΔQ2である場合(低い方の周波数、例えば、前述した155.52MHz)には、スイッチ回路SWを帰還バッファ用差動増幅器23の非反転出力端子Q1のT1端子側とする。
【0101】
ところで、発振用差動増幅回路21、帰還バッファ用差動増幅器23、スイッチ回路SW、電圧制御移相回路3、SAW共振子XmおよびLC並列共振回路5aにより構成される正帰還発振ループの位相条件がある。この場合、発振用差動増幅回路21の入出力信号間の位相差θGおよび帰還バッファ用差動増幅器23、スイッチ回路SW、電圧制御移相回路3、SAW共振子XmおよびLC並列共振回路5a並びにこれらを接続する線路に起因する位相ずれθβの和が次式を満たす。
【0102】
〔数1〕
θG+θβ=2・n・π (n=0,1,……)
この位相条件を満足させる結果、電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Eは発振状態となって非反転出力端子Q1及び反転出力端子Q2から基準信号が出力される。
【0103】
以上、説明したように、帰還バッファ用差動増幅器23から出力される互いに相異なる位相を有する二つの信号のいずれかをスイッチ回路SWで選択する構成を採ることにより、電圧制御移相回路3における調整可能な移相量は少なくてよいことになる。
【0104】
(4−3) 第4の実施形態から得られる効果
上述した第1乃至第3の実施形態と同様な効果が得られるとともに、次のような効果が得られる。
第4の実施形態によれば、帰還バッファ用差動増幅器から出力される互いに相異なる位相を有する二つの信号のうちからいずれかをスイッチ回路SWで選択する構成を採ることにより、電圧制御移相回路における調整可能な移相量を少なく設定することができる。この結果、複数の電圧制御移相回路が不要となること、又は、電圧制御移相回路の複雑化が抑制され、発振回路の回路規模を増やすことなく、電圧制御型発振器の小型化、低価格化が図られるという効果が得られる。
【0105】
(5)第5の実施形態
次に、第5の実施形態について、説明する。
【0106】
(5−1) 第5の実施形態の構成
図18は、本発明の第5の実施形態による電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Fの構成を示すブロック図である。
【0107】
図1との差異は、差動増幅器の代わりに入出力が単一型の増幅器を用いる点にある。即ち、発振用増幅器61の出力に複数の増幅器62−1〜62−n,63を並列接続し、正帰還発振ループを形成する帰還バッファ用増幅器63、外部に出力するための出力用増幅器62−1〜62−nとして用いる点にある。この点以外は、第1乃至第3の実施形態のいずれかと同一であるので、同一ブロックには同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0108】
(5−2) 第5の実施形態から得られる効果
上述した第1乃至第4の実施形態と同様な効果が得られるとともに、次のような効果が得られる。
【0109】
電圧制御型発振器の出力に複数の負荷回路を接続する場合、負荷回路間相互の影響を回避するために電圧制御型発振器の外付け用部品として出力バッファ用ドライバICを必要とする。
【0110】
このような場合に、第5の実施形態の構成によれば、発振用増幅器の出力信号をICチップ内部に設けた複数の出力用増幅器のいずれかを介して分岐し、それぞれに複数の負荷回路を接続することで相互の影響を回避することができる。併せて、外付用として使用する出力バッファ用ドライバICのような部品を余分に追加することがなくなり、小型化、低価格化が図れるという効果がある。
【0111】
(6)第6の実施形態
次に、第6の実施形態について説明する。
上記した本発明に係る各実施形態の電圧制御型SAW発振器(VCSO)を通信機器に適用した場合について説明する。
【0112】
図19は、本発明に係る電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aを用いたとしたときの光インターフェースモジュール70の概要を示す構成図である。光インターフェースモジュール70は、光ネットワークを介したデータ送受信などを実行するために、光信号と電気信号との信号変換を行う。例えば、10.3125Gbit/sの光信号と、3.125Gbit/sの電気信号(4系統)との信号変換を行う。電気/光変換部76は、P/S(パラレル/シリアル)変換部74から出力された電気信号を光信号に変換し、光ネットワーク側に出力する。光/電気変換部77は、光ネットワーク側から入力された光信号を電気信号に変換しS/P(シリアル/パラレル)変換部75に出力する。
【0113】
電圧制御型発振器78,79は、本発明に係る電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aであり、ジッタが極めて低減され安定化された一定周波数のクロック信号を出力する。そして、このクロック信号は基準信号として、ビット符号変換部73を介して接続された3.125Gbit/sのS/P変換部71およびP/S変換部72、10.3125Gbit/sのP/S変換部74およびS/P変換部75の各部に用いられる。
【0114】
以上説明したように、選択されるSAW共振子毎に簡易にLC並列共振回路を形成して、不要なジッタを大幅に削減し高安定化された電圧制御型SAW発振器(VCSO)を使用している。これにより、送受信データとクロック信号間におけるタイミングマージンが確保されるので、誤動作することなく光ネットワークを介して安定したデータ送受信を行うことができる。
【0115】
又、動画像のような大量のデータが伝送できる10Gbit/sの高速ネットワークシステムにおいて、安定した動作を容易に確保することができるという効果が得られる。
【0116】
又、本発明の電圧制御型SAW発振器(VCSO)は、複数のSAW共振子を搭載しこの共振周波数を切り換えるための制御信号を備え、外部から制御が可能である。従って、本発明の電圧制御型SAW発振器(VCSO)を1個搭載しておけば、システム側からシステムの仕様に応じて発振周波数を切り換えることができるという効果が得られる。併せて、周波数の異なる個別の電圧制御型SAW発振器(VCSO)を複数設ける必要がないので、小型化、低価格化が図られた光インターフェースモジュールを提供することができる、という効果が得られる。
【0117】
尚、電圧制御型発振器78,79に、本発明に係る、第2乃至第4の実施形態における電圧制御型SAW発振器(VCSO)1B,1C,1D,1E,1Fを適用した場合においても、電圧制御型SAW発振器(VCSO)1Aと同様の効果が得られる。
【0118】
(7)変形例
本願発明は、上述した実施形態に限らず種々の態様にて実施することができる。例えば、以下のような変形実施が可能である。
【0119】
<第1変形例>
上記した実施形態の増幅器は、バイポーラトランジスタを使用して構成した実施例を示し説明したが、トランジスタの種類が異なるMOSトランジスタにより構成してもよい。
【0120】
<第2変形例>
又、電圧制御型発振器をネットワーク用の光インターフェースモジュールに用いる場合について説明したが、発振器、特に高周波発振器を必要とする携帯電話などの無線通信機器など各種電子機器に適用することが可能である。
【0121】
<第3変形例>
水晶振動子、セラミック振動子やSAW共振子等の圧電振動子を構成する圧電材料について、水晶の他、他の圧電材料としてランガサイトや四ほう酸リチウムを用いた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における電圧制御型SAW発振器の構成を示すブロック図である。
【図2】ECLラインレシーバの回路構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における電圧制御移相回路の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における実施例1の変形例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における電圧制御型SAW発振器の実施例2の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるLC並列共振回路の周波数特性を説明する図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における電圧制御型SAW発振器の正帰還発振ループを説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における電圧制御型SAW発振器の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における電圧制御型SAW発振器の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に用いられるNTCサーミスタが有する抵抗値の温度特性を示す図である。
【図11】NTCサーミスタを並列に接続したときのLC並列共振回路の周波数−位相特性を示す図である。
【図12】NTCサーミスタを並列に接続する場合と接続しない場合のLC並列共振回路における位相変化量の温度特性を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る電圧制御型SAW発振器の正帰還発振ループにおける発振周波数−周波数可変感度特性を示す図である。
【図14】本発明の第3の実施形態における電圧制御型SAW発振器の発振周波数の制御電圧特性を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施形態における電圧制御型SAW発振器において、制御電圧を可変したときの発振周波数の温度特性を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施形態における電圧制御型SAW発振器の構成を示すブロック図である。
【図17】電圧制御型SAW発振器全体として位相条件を満たすために電圧制御移相回路が必要とする移相量を説明する図である。
【図18】本発明の第5の実施形態における電圧制御型SAW発振器の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第6の実施形態における、電圧制御型SAW発振器を用いた光インターフェースモジュールの概要を示す構成図である。
【図20】LCを用いた並列共振回路から成る従来の電圧制御型発振器の構成を示すブロック図である。
【図21】ATカット型水晶振動子を用いた従来の電圧制御型発振器の構成を示すブロック図である。
【図22】従来の電圧制御型SAW発振器において、制御電圧を可変して得られる発振周波数の制御電圧特性と温度特性を示す図である。
【符号の説明】
1A,1B,1C,1D・・・電圧制御型SAW発振器(VCSO)
2a,2b・・・ICチップ
21,22,23・・・差動増幅器
R1,R2,R3,R4,R5・・・抵抗
R6,R7・・・エミッタ終端抵抗
Tr1,Tr2,Tr3,Tr4,Tr5・・・バイポーラトランジスタ
61,62−1〜62−n,63・・・増幅器
3・・・電圧制御移相回路
Lv・・・伸長コイル
Cv・・・可変容量ダイオード
Cm・・・コンデンサ
R8,Rv・・・抵抗
4a,4b・・・切り換えスイッチ
C1〜Cn・・・コンデンサ
5a,5b,5c・・・LC並列共振回路
RT・・・NTCサーミスタ
C・・・コンデンサ
L・・・インダクタ
Cvo・・・可変容量ダイオード
X1〜Xn・・・SAW共振子
Rm・・・直列抵抗
Cmo・・・直列容量
Lm・・・直列インダクタンス
Cdm・・・並列容量(電極間容量)
6・・・制御電圧生成部
SW・・・スイッチ回路
70・・・光インターフェースモジュール
71,75・・・S/P(シリアル/パラレル)変換部
72,74・・・P/S(パラレル/シリアル)変換部
73・・・ビット符号変換部
76・・・電気/光変換部
77・・・光/電気変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの制御電圧により入力信号の位相を所定量ずらした出力信号として出力する電圧制御移相回路と、
それぞれ所定の共振周波数で共振する複数のSAW共振子と、
外部からの制御信号により前記複数のSAW共振子のいずれか1つを選択する第1の切り換え手段と、
前記第1の切り換え手段により、前記複数のSAW共振子のうちいずれか1つ選択されたSAW共振子からの所定の共振周波数を有する出力信号を選択する周波数選択手段と、
前記所定の共振周波数の共振信号を増幅して出力する発振用差動増幅器と、
前記発振用差動増幅器からの出力信号を入力する帰還バッファ用差動増幅器とを備え、
前記電圧制御移相回路と、前記第1の切り換え手段により選択されたSAW共振子と、前記周波数選択手段と、前記発振用差動増幅器と、前記帰還バッファ用差動増幅器とにより正帰還発振ループを形成する
ことを特徴とする電圧制御型発振器。
【請求項2】
外部からの制御電圧により入力信号の位相を所定量ずらした出力信号として出力する電圧制御移相回路と、
それぞれ所定の共振周波数で共振する複数のSAW共振子と、
外部からの制御信号により前記複数のSAW共振子のいずれか1つを選択する第1の切り換え手段と、
前記第1の切り換え手段により、前記複数のSAW共振子のうちいずれか1つ選択されたSAW共振子からの所定の共振周波数を有する出力信号を選択する周波数選択手段と、
前記周波数選択手段で選択された所定の共振信号を増幅して出力する発振用増幅器と、
前記発振用増幅器からの出力信号を入力する帰還バッファ用増幅器と、
前記発振用増幅器からの信号を入力し、出力信号を出力する複数の出力用増幅器とを備え、
前記電圧制御移相回路と、前記第1の切り換え手段により選択されたSAW共振子と、前記周波数選択手段と、前記発振用増幅器と、前記帰還バッファ用増幅器とにより正帰還発振ループを形成する
ことを特徴とする電圧制御型発振器。
【請求項3】
前記電圧制御型発振器において、
前記周波数選択手段は、誘導素子及び容量素子を有するLC並列共振回路として構成され、
前記複数のSAW共振子のそれぞれの一端と接地間で直列に接続される受動素子を備え、
前記複数のSAW共振子のいずれか1つが選択された際、選択された前記SAW共振子に直列接続された前記受動素子は前記LC並列共振回路と並列接続される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電圧制御型発振器。
【請求項4】
前記電圧制御型発振器において、
前記周波数選択手段は、誘導素子及び容量素子を有するLC並列共振回路として構成され、
第2の切り換え手段と、
前記第2の切り換え手段と直列に接続される受動素子とを備え、
前記複数のSAW共振子のいずれか1つが選択された際、選択された前記SAW共振子に対応する、前記第2の切り換え手段により選択された前記受動素子が前記LC並列共振回路と並列接続される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電圧制御型発振器。
【請求項5】
前記電圧制御型発振器において、
前記周波数選択手段は、誘導素子及び可変容量素子を有するLC並列共振回路として構成され、
外部からの制御信号に基づいて前記可変容量素子の容量を制御するための制御電圧を生成する制御電圧生成手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電圧制御型発振器。
【請求項6】
前記電圧制御型発振器において、
反転出力端子及び非反転出力端子を有する前記帰還バッファ用差動増幅器の出力端子のいずれか1つを前記正帰還発振ループとして選択する信号選択手段を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の電圧制御型発振器。
【請求項7】
前記差動増幅器は、
ECLラインレシーバを用いた差動増幅回路である
ことを特徴とする請求項1又は請求項6のいずれかに記載の電圧制御型発振器。
【請求項8】
前記LC並列共振回路に並列接続される前記受動素子は容量素子である
ことを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の電圧制御型発振器。
【請求項9】
前記周波数選択手段は、
負の温度特性を有するNTCサーミスタを備える
ことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の電圧制御型発振器。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9に記載の電圧制御型発振器を備えた
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2004−165983(P2004−165983A)
【公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−329568(P2002−329568)
【出願日】平成14年11月13日(2002.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】