説明

電圧制御発振器

【課題】変調感度が高すぎず、かつ、制御周波数範囲の広い電圧制御発振器を提供する。
【解決手段】構造、容量変化特性が異なる複数種類の可変容量素子が並列に接続され、制御電圧により、複数種類の可変容量素子の容量値を同時に制御するようにした共振部と、共振部による発振を維持するための増幅部とを備える。可変容量素子として、バラクタダイオードとMOSバラクタを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振器に関する。特に、LC回路の共振現象を利用した電圧制御発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタのLと、制御電圧によって容量値が変わる可変容量素子Cとを用いたLC共振部を有する電圧制御発振器が知られている。その電圧制御発振器では、LC共振部による発振を維持するための増幅部がさらに設けられ、そのLC共振部に用いられる可変容量素子は、バラクタダイオードを用いたものと、MOSバラクタを用いたものがある。
【0003】
また、バラクタダイオードの他にMOSFETを可変容量として用いた電圧制御発振器が特許文献1に記載されている。特許文献1の電圧制御発振器では、LC共振器回路部が、インダクタンス部と容量部と制御電圧端子とを有し、容量部は、直列接続されたバラクタダイオードとMOSFETを備え、制御電圧端子がバラクタダイオードのカソードとMOSFETのゲートに接続され、制御電圧端子に印加される制御電圧により、容量を従来より大きく変化させることができると特許文献1には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−118550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は本発明により与えられる。電圧制御発振器の共振部は、電圧制御端子に与える電圧により制御可能な制御周波数範囲が広いことが好ましい。また、制御電圧の全範囲(例えば、電圧制御発振器に供給される高電位電源電圧と低電位電源電圧の範囲内)において、周波数の変化が直線的であることが理想である。その周波数の変化率(変調感度)が一部の領域で高すぎることは好ましくない。可変容量素子としてバラクタダイオードを用いた場合には、周波数の変化はMOSバラクタに比べて直線的であるが、制御周波数範囲が狭い。一方、MOSバラクタを用いた場合には、制御周波数範囲は広く取れるが、直線性が得られず、一部の領域で変調感度が高すぎる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面による電圧制御発振器は、構造、容量変化特性が異なる複数種類の可変容量素子が並列に接続され、制御電圧により、前記複数種類の可変容量素子の容量値を同時に制御するようにした共振部と、前記共振部による発振を維持するための増幅部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数種類の可変容量素子を並列に接続し、それら複数種類の可変容量素子の容量値を同時に制御するようにした共振部を備えるので、各可変容量素子の長所を生かし、欠点を抑制した電圧制御発振器が得られる。
【0008】
特に並列に接続する可変容量素子として、MOSバラクタとバラクタダイオードを用いた場合には、制御周波数範囲が広く、かつ、変調感度が高すぎる領域の存在しない電圧制御発振器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1による電圧制御発振器のブロック図である。
【図2】実施例1の変形例1による電圧制御発振器のブロック図である。
【図3】実施例1の変形性2による電圧制御発振器のブロック図である。
【図4】MOSバラクタの印加電圧対容量値の変化特性である。
【図5】バラクタダイオードの印加電圧対容量値の変化特性である。
【図6】比較例1の電圧制御発振器のブロック図である。
【図7】比較例2の電圧制御発振器のブロック図である。
【図8】実施例1と比較例1及び比較例2の制御電圧対発振周波数特性を比較した図である。
【図9】実施例1と特許文献1に記載の従来技術による電圧制御発振器の制御電圧対発振周波数特性を比較した図である。
【図10】実施例1と比較例1及び比較例2の制御電圧対変調感度特性を比較した図である。
【図11】実施例1と特許文献1に記載の従来技術による電圧制御発振器の制御電圧対変調感度特性を比較した図である。
【図12】本発明の実施例2による電圧制御発振器のブロック図である。
【図13】本発明の実施例3による電圧制御発振器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に本発明の概要について、必要に応じて図面を参照して説明する。なお、概要の説明において引用する図面及び図面の符号は実施形態の一例として示すものであり、それにより本発明による実施形態のバリエーションを制限するものではない。
【0011】
本発明の一実施形態の電圧制御発振器1は、例えば、図1〜図3、図12、図13に示すように、構造、容量変化特性が異なる複数種類の可変容量素子(バラクタダイオードD1〜D4とMOSバラクタC1、C2)が並列に接続され、(電圧制御端子VCから与えられる)制御電圧により、複数種類の可変容量素子(C1、C2、D1〜D4)の容量値を同時に制御するようにした共振部と、共振部による発振を維持するための増幅部(M1〜M4、CC)と、を含む。複数種類の可変容量素子を並列に接続し、制御電圧により複数種類の可変容量素子を同時に制御するので、各可変容量素子の長所を生かし、欠点を抑制した電圧制御発振器が得られる。
【0012】
また、一実施形態の電圧制御発振器1は、複数種類の可変容量素子が、MOSバラクタと、バラクタダイオードである。MOSバラクタは、制御電圧がMOSトランジスタの閾値付近であると容量値が大きく変化するが、制御電圧が閾値から離れると印加電圧に対する容量値の変化率は著しく鈍くなる。特に、用途によっては、閾値付近での変調感度が高すぎる場合がある。一方、バラクタダイオードは、MOSバラクタに比べて広い電圧範囲で直線に近い印加電圧対容量値の変化特性を有する。ただし、容量変化率が小さいので、制御周波数範囲が狭くなる。上記構成により、MOSバラクタとバラクタダイオードを並列に接続し、MOSバラクタとバラクタダイオードの容量値を同時に制御するようにしたので、制御周波数範囲が広く、かつ、変調感度が高すぎる領域の存在しない電圧制御発振器が得られる。
【0013】
また、一実施形態の電圧制御発振器1は、例えば図1〜3のように、インダクタL1と、インダクタL1の両端と共通ノードCNとの間にそれぞれ接続された第1、第2のMOSバラクタ(C1、C2)と、インダクタL1の両端と電源(GND、VDD)との間にそれぞれ逆バイアスになるように接続された第1、第2のバラクタダイオード(D1、D2)と、共通ノードCNと電圧制御端子VCとの間に接続された第1の抵抗R1と、インダクタL1の両端と電圧制御端子VCとの間に接続された第2、第3の抵抗(R2、R3)と、を含む。
【0014】
また、一実施形態の電圧制御発振器1は、例えば図3のように、上記電源(VDD、GND)を高電位電源VDD、低電位電源GNDのうち一方の電源としたときに、高電位電源VDD、低電位電源GNDのうち他方の電源とインダクタL1の両端との間にそれぞれ逆バイアスになるように接続された第3、第4のバラクタダイオード(D3、D4)をさらに含む。
【0015】
また、図1〜図3に示すように、第1及び第2のMOSバラクタ(C1、C2)のゲート端子が共通ノードCNに接続されている。
【0016】
さらに、例えば、図1〜図3に示すように、インダクタの両端が増幅部の入出力端子に接続されている。図1〜図3では、増幅部は、電流源CCから電流を供給されるMOSトランジスタM1、M3で構成されるインバータとMOSトランジスタM2、M4で構成されるインバータが互いに入力と出力が接続されている構成を取っているが、これらのインバータの入出力端子が増幅器の入出力端子となり、インダクタL1の両端に接続される。
【0017】
また、図12、図13に示すように、電源VDDと第1ノードN1との間に接続された第1のインダクタL1と、電源VDDと第2ノードN2との間に接続された第2のインダクタンスL2と、電圧制御端子VCに抵抗R1を介して接続された第3ノードN3と第1ノードN1との間に逆バイアスになるように接続された第1のバラクタダイオードD1と、第3ノードN3と第2ノードN2との間に逆バイアスになるように接続された第2のバラクタダイオードD2と、一端がそれぞれ第3ノードN3に接続させた第1及び第2のMOSバラクタ(C1、C2)と、第1のMOSバラクタC1の他端と第1ノードN1との間に接続された第1の固定容量C3と、第2のMOSバラクタC2の他端と第2ノードN2との間に接続された第2の固定容量C4と、を含む。
【0018】
また、図12、図13に示すように、第1及び第2のMOSバラクタの他端にそれぞれ固定バイアスVBIASが与えられている。MOSバラクタが電圧制御端子VCから与える電圧により容量値を容易に変えられるように、固定バイアスを与える。たとえば、固定バイアス値は、VDDとGNDの1/2の電圧である。
【0019】
図12、図13のように第1及び第2のMOSバラクタ(C1、C2)のゲート端子が第3ノードN3に接続される。
【0020】
また、図12、図13に示すように、第1ノードN1及び第2ノードN2がそれぞれ(トランジスタM1、M2で構成される)増幅部の入出力端子(M1、M2のドレイン、ゲート)に接続されている。
【0021】
さらに、図12に示すように、インダクタ(L1、L2)が接続される電源が高電位電源VDDであり、第1のバラクタダイオードD1のアノードが第3ノードN3に、カソードが第1ノードN1に接続され、第2のバラクタダイオードD2のアノードが第3ノードN3に、カソードが第2ノードN2に接続されている。
【0022】
または、図13に示すように、インダクタ(L1、L2)が接続される電源が低電位電源GNDであり、第1のバラクタダイオードD1のアノードが第1ノードN1に、カソードが第3ノードN3に接続され、第2のバラクタダイオードD2のアノードが第2ノードN2に、カソードが第3ノードN3に接続されている。以下、実施例について、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1の電圧制御発振器1のブロック図である。図1の電圧制御発振器1は、増幅部と、共振部により構成される。増幅部は、PMOSトランジスタM3とNMOSトランジスタM1で構成されるCMOSインバータと、PMOSトランジスタM4とNMOSトランジスタM2で構成されるCMOSインバータを備えている。PMOSトランジスタM3とM4のソースは、高電位電源VDDに接続された電流源回路CCに接続されている。また、NMOSトランジスタM1とM2のソースは、低電位電源GNDに接続されている。この2つのインバータは互いに入力端子が相手方のインバータの出力端子に接続されている。この2つのインバータの入力端子及び出力端子は、それぞれ増幅部の入出力端子として共振部に接続されている。
【0024】
共振部は、インダクタL1と第1、第2のMOSバラクタC1、C2、第1、第2のバラクタダイオードD1、D2、第1乃至第3の抵抗R1〜R3を備えている。インダクタL1の両端は、増幅部の入出力端子に接続される。また、このインダクタL1の両端には、それぞれ、第1のバラクタダイオードD1のカソードと第2のバラクタダイオードD2のカソードが接続されている。第1のバラクタダイオードD1及び第2のバラクタダイオードD2のアノードはそれぞれ低電位電源端子GNDに接続されている。また、インダクタL1の両端には、それぞれ第1のMOSバラクタC1と第2のMOSバラクタC2のソースドレイン端子が接続されている。第1のMOSバラクタC1と第2のMOSバラクタC2のゲート端子は共通ノードCNに接続され、共通ノードCNは第1の抵抗R1を介してチューニング端子である電圧制御端子VCに接続される。また、第1、第2のバラクタダイオードD1、D2のカソードは、それぞれ第2、第3の抵抗R2、R3を介して電圧制御端子VCに接続されている。
【0025】
上記構成により、共振部は、インダクタL1に対して、第1、第2のMOSバラクタC1、C2と第1、第2のバラクタダイオードD1、D2が並列に接続された共振回路として機能する。また、電圧制御端子VCが第1乃至第3の抵抗R1〜R3を介して第1、第2のMOSバラクタC1、C2のゲート端子、及び第1、第2のバラクタダイオードのカソードに接続されているので、電圧制御端子VCの電圧が変化すると、第1、第2のMOSバラクタC1、C2と第1、第2のバラクタダイオードD1、D2の容量が共に変化することになる。なお、図1において、第1、第2のMOSバラクタC1、C2は、ドレインとソースが短絡接続されており、ゲート端子とソースドレイン端子の2端子の可変容量素子として機能する。
【0026】
図2は、実施例1の変形例1による電圧制御発振器のブロック図である。図1では、第1、第2のバラクタダイオードを低電位電源GNDとインダクタL1の両端との間に接続していたが、図2の変形例1では、第1、第2のバラクタダイオードを高電位電源VDDとインダクタL1の両端との間に接続している点が異なっている。バラクタダイオードの向きは、図1と同様に、逆バイアスになるように接続している。すなわち、アノードをインダクタL1の両端に接続し、カソードを高電位電源VDDに接続している。他は、図1の実施例1と同一である。
【0027】
図3は、実施例1の変形例2による電圧制御発振器のブロック図である。図3では、第1、第2のバラクタダイオードに加えて、第3、第4のバラクタダイオードを設け、インダクタL1の両端と、高電位電源VDDとの間、及び低電位電源GNDとの間の両方にバラクタダイオードを接続している。バラクタダイオードの接続の向きは、いずれも逆バイアスになる向きである。
【0028】
なお、図1乃至図3のような発振回路は、共振部に電気的刺激が加わると、共振周波数の交流信号が発生する。しかしその共振現象も共振部の寄生抵抗により減衰、停止してしまうため、正帰還で構成された増幅部によって作られる負性抵抗によってその損失が補填され、定常的な交流信号が得られるようになる。電圧制御発振器とは発振周波数を印加電圧によってコントロールする回路であるが、共振周波数f=1/(2π√LC)のCの値、つまりバラクタの容量値を変化させることでそれを可能としている。上記図1乃至図3のいずれも増幅部は、MOSトランジスタで構成しているが、バイポーラトランジスタによっても構成することができる。増幅部は、発振部による発振を維持するような回路であれば、どのような回路であってもよい。
【0029】
ここで、図4と図5を用いて、可変容量素子であるMOSバラクタとバラクタダイオードの印加電圧対容量値の変化特性の違いについて説明する。
【0030】
図4は、MOSバラクタの印加電圧対容量値の変化特性である。MOSバラクタの容量値制御はゲート端子とソースドレイン端子の相対電位により行い、ゲート印加、ソースドレイン印加でもほぼ同特性で使用可能である。実施例ではゲート端子印加として構成しているが、ソースドレイン印加としてもよい。MOSバラクタでは、通常ソースとドレインとを短絡接続し、その短絡したソースドレイン端子とゲート端子間の容量を可変容量として用いており、容量変化のための電圧印加の向きは、MOSトランジスタとしてのしきい値電圧を基準としてプラス方向とマイナス方向の2方向である。
【0031】
図4から理解できるように、容量値はMOSトランジスタのしきい値付近(0V付近)は印加電圧を変化させると容量値は急峻に変化する。しかし、印加電圧がMOSトランジスタの閾値を離れていくに従って、容量変化特性は、著しく鈍くなる。図4でも、印加電圧が−1V以下、又は1V以上であると印加電圧を変化させてもほとんど容量値は変化していないことが読み取れる。
【0032】
図5は、バラクタダイオードの印加電圧対容量値の変化特性である。バラクタダイオードの容量値制御は、アノード端子とカソード端子に逆バイアスを印加し、PN接合の逆バイアスで生じる空乏層の厚さを制御することにより行う。容量値制御のための電圧印加は、逆バイアスであればアノード端子、カソード端子のどちらでもいい。なお、PN接合の逆バイアス状態で生じる空乏層を制御して用いるため、容量印加の向きは逆方向のみである。カソード印加の場合はアノードに低電位電源(0V、グランドGND)に接続して基準とするためカソード電圧を高電位電源から低電位電源(0V)に低下させるにしたがって、容量が増加する。すなわち、印加電圧に対し容量値は負の傾きになる。これに対して、アノード印加の場合は、カソードを高電位電源に接続して基準とするため、アノード電圧を0Vから高電位電源の電圧に上昇させるに従って容量値が増加する。すなわち、印加電圧に対し容量値は正の傾きになる。
【0033】
図5から理解できるように、印加電圧に対する容量値の変化は比較的リニアであり、印加電圧を変化させれば、それにつれて容量値は変化する。ただし、規格化してMOSバラクタの容量変化率と比較すると、特にMOSバラクタのしきい値付近でMOSバラクタよりバラクタダイオードの方が容量変化率が小さい。すなわち、MOSバラクタは、特にMOSバラクタのしきい値付近で大きな容量変化率が得られるが、変調感度が高すぎる場合があり、しきい値から離れると容量変化率は急速に低下する。一方、バラクタダイオードは、MOSバラクタに比べて広い範囲で直線的な容量変化率が得られるが、容量変化率が低いため、制御周波数範囲が得られない。そのように、MOSバラクタとバラクタダイオードは互いに異なる印加電圧容量特性を有している。
【0034】
実施例1では、MOSバラクタとバラクタダイオードを並列に接続し、MOSバラクタとバラクタダイオードの容量値を同時に制御している。上記のように、MOSバラクタとバラクタダイオードは、異なる印加電圧容量特性を有しているが、実施例1によれば、両者の長所を活かし短所を補い合うことができる。
【0035】
すなわち、MOSバラクタを使用したときに生じる、基準電圧から離れた領域での周波数変化の鈍化を、バラクタダイオードにより補うことで制御電圧の全範囲で周波数変化のリニアリティを高めることができる。
【0036】
また、MOSバラクタのみの場合の容量変化ではしきい値付近において、変調感度が高すぎてしまうが、バラクタダイオードを併用することでそれを緩和させることができる。さらに緩和の度合いも、MOSバラクタとバラクタダイオードの容量比を変えることでコントロール可能である。
【0037】
さらに、MOSバラクタのみの場合の容量変化では最大発振周波数と最低発振周波数の範囲が大きすぎ、後段の分周器の全範囲正常動作確保が難しくなる場合があるが、バラクタダイオードを併用することで、それを抑えることができる。
【0038】
図8は、実施例1の制御電圧対発振周波数特性を比較例1及び比較例2と比較した図である。比較例1の電圧制御発振器101の構成を図6に、比較例2の電圧制御発振器102の構成を図7に示す。図6の電圧制御発振器101は、図1の電圧制御発振器に対して、バラクタダイオードD1とD2及びバラクタダイオードD1、D2のカソードと電圧制御端子VCとの間に設けた抵抗R2、R3を備えておらず、可変容量素子としてMOSバラクタC1、C2のみを備えた電圧制御発振器である。
【0039】
また、図7の電圧制御発振器102は、図6の電圧制御発振器101にインダクタL1と低電位電源GNDとの間に固定容量C3、C4を付加し、MOSバラクタC1、C2のしきい値付近における変調感度を鈍らせた電圧制御発振器である。
【0040】
図8において、比較例1は、制御電圧VTが1.2V付近での変調感度が高すぎる。比較例2では、固定容量を付加しているので、全体的に変調感度が鈍っている。また、比較例1、比較例2とも、制御電圧が0.4V以下、又は2.2V以上で制御電圧を変えてもほとんど発振周波数が変化していない。それに対して、実施例1では、制御電圧が1.2V付近での変調感度が緩和されており、かつ、0V〜3Vの全流域で、制御電圧につれて発振周波数が変化している。
【0041】
次に図9は、特許文献1に記載されている電圧制御発振器と実施例1による電圧制御発振器1の制御電圧対発振周波数特性を比較した図である。特許文献1に記載されている電圧制御発振器は、すでに説明したように、バラクタダイオードとMOSFETとを直列に接続し、MOSFETを可変容量として用いるものであるが、特許文献1の段落0018に記載されているようにバラクタダイオードの容量を全容量に対して無視できるような小さな容量としているので、基本的には、図6に示す比較例1と同様な特性となる。したがって、比較例1と同様に、特定の制御電圧で変調感度が高すぎ、かつ、特定の制御電圧から離れると制御電圧を変えてもほとんど発振周波数が変わらない領域が存在する。
【0042】
図10は、実施例1と比較例1及び比較例2の制御電圧対変調感度特性を比較した図である。実施例1によれば、比較例1のような変調感度が高すぎる領域が存在せず、比較例1、比較例2より中程度の変調感度が得られる領域が広くなっている。電圧制御発振器に求められる変調感度は、要求される位相ノイズによって異なる。例えばGPS受信用ICなどにおいては、変調感度を150〜600MHz程度に抑えたい場合がある。この様な場合、図10により、所望の変調感度が得られる制御可能電圧範囲を求めると、比較例1では0.4〜2.0V、比較例2では0.7〜2.1V、実施例1では0〜2.4Vとなる。すなわち、実施例1によれば、比較例1、2より広い領域で所望の変調感度が得られる。
【0043】
図11は、実施例1と特許文献1に記載の従来技術による電圧制御発振器の制御電圧対変調感度特性を比較した図である。術来技術は、基本的に図10に示す比較例1と同様な特性を有しており、実施例1によれば、この従来技術と比較しても良好な制御電圧対変調感度特性が得られる。
【実施例2】
【0044】
図12は、実施例2による電圧制御発振器1のブロック図である。図12に示す電圧制御発振器1は、電源電圧が低い条件やバイポーラ回路においてよく用いられる電圧制御発振器である。図12では、共振部の電圧が高電位電源電圧に近いため、実施例1の電圧制御発振器とは、構成が少し異なる。図12の電圧制御発振器1は、増幅部と、共振部により構成される。増幅部は、NMOSトランジスタM1とNMOSトランジスタM2を含み、NMOSトランジスタM1のドレインとNMOSトランジスタM2のゲートは第1ノードN1に接続される。また、NMOSトランジスタM2のドレインとNMOSトランジスタM1のゲートは第2ノードN2に接続される。第1、第2ノードN1、N2は、増幅部の入出力端子になり、共振部に接続される。なお、NMOSトランジスタM1とM2のソースは共に低電位電源GNDに接続される。なお、NMOSトランジスタM1、M2は、それぞれ、コレクタを第1ノードN1、ベースを第2ノードN2、エミッタを低電位電源GNDに接続したNPNバイポーラトランジスタと、コレクタを第2ノードN2、ベースを第1ノードN1、エミッタを低電位電源GNDに接続したNPNバイポーラトランジスタと、に置き換えることもできる。
【0045】
共振部は、第1及び第2のインダクタL1、L2と、第1、第2のMOSバラクタC1、C2と、第1、第2のバラクタダイオードD1、D2と、抵抗R1と、第1、第2の固定容量C3、C4と、を備えている。インダクタL1は高電位電源VDDと第1ノードN1との間に接続され、インダクタL2は高電位電源VDDと第2ノードN2との間に接続される。また、第1ノードN1、第2ノードN2には、それぞれ、第1、第2のバラクタダイオードD1、D2のカソードが接続される。第1、第2のバラクタダイオードD1、D2のアノードは、第3ノードN3に接続され、第3ノードN3は抵抗R1を介して電圧制御端子VCに接続される。さらに、第3ノードN3には、第1、第2のMOSダイオードC1、C2のゲート端子が接続される。また、第1、第2のMOSダイオードC1、C2のソースドレイン端子には、固定バイアス電圧VBIASが与えられる。さらに、第1、第2のMOSダイオードC1、C2のソースドレイン端子と第1、第2ノードN1、N2との間には、第1、第2の固定容量C3、C4が接続される。この固定容量C3、C4は、直流電圧を遮断するために設けられ、固定容量C3、C4とMOSバラクタC1、C2との接続点には、MOSバラクタの制御電圧の基準電位となる固定バイアス電圧VBIASが外部から与えられる。VBIASの電圧としては、高電位電源VDDと低電位電源(GND)との1/2の電圧が望ましい。
【0046】
上記構成によっても、MOSバラクタとバラクタダイオードが並列に接続され、電圧制御端子VCから与えられる電圧により、MOSバラクタとバラクタダイオードを同時制御するので、実施例1と同様に好ましい特性の電圧制御発振器が得られる。
【実施例3】
【0047】
図13は、実施例3による電圧制御発振器1のブロック図である。実施例2は、共振部の電圧が高電位電源VDDに近い場合に適した電圧制御発振器であったが、実施例3は、共振部の電圧が低電位電源(グランド)GNDに近い場合に適した電圧制御発振器の構成である。実施例2では、増幅部はソースが低電位電源に接続されたNMOSトランジスタで構成されていたのに対して、図13の実施例3では、ソースが高電位電源VDDに接続されたPMOSトランジスタで構成されている点が異なっている。また、第1及び第2のインダクタL1、L2は、それぞれ、第1、第2ノードN1、N2と低電位電源VSSとの間に接続される。また、第1、第2のバラクタダイオードD1、D2の接続の方向が第1、第2ノードN1、N2がアノードに、第3ノードN3がカソードに接続されていることが違うほかは、実施例2の図12と同一である。実施例3によっても、実施例1と同様に好ましい特性の電圧制御発振器が得られる。また、実施例3において、増幅部のPMOSトランジスタをPNPバイポーラトランジスタに置き換えることもできる。
【0048】
なお、MOSバラクタには、NMOSのトランジスタ構造をバラクタに用いたNMOSバラクタとPMOSのトランジスタ構造をバラクタに用いたPMOSバラクタが考えられるが、必要に応じてどちらの構造もMOSバラクタとして用いることができる。また、並列に接続するバラクタダイオードとMOSバラクタは接続の向きにより印加電圧対容量の変化特性が逆になる場合があるが、印加電圧を変化させたときにバラクタダイオード容量が増える方向に変化するときは、MOSバラクタも容量が増える向きに接続することが望ましい。
【0049】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1、101、102:電圧制御発振器
C1、C2:MOSバラクタ
C3、C4:固定容量
CC:電流源回路
D1、D2、D3、D4:バラクタダイオード
GND:低電位電源
L1、L2、L3:インダクタ
M1、M2:NMOSトランジスタ
M3、M4:PMOSトランジスタ
R1、R2、R3:抵抗
VBIAS:バイアス電圧
VC:電圧制御端子(チューニング端子)
VDD:高電位電源
CN:共通ノード
N1:第1ノード
N2:第2ノード
N3:第3ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造、容量変化特性が異なる複数種類の可変容量素子が並列に接続され、制御電圧により、前記複数種類の可変容量素子の容量値を同時に制御するようにした共振部と、
前記共振部による発振を維持するための増幅部と、
を含むことを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項2】
前記複数種類の可変容量素子が、MOSバラクタと、バラクタダイオードであることを特徴とする請求項1記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
インダクタと
前記インダクタの両端と共通ノードとの間にそれぞれ接続された第1、第2のMOSバラクタと、
前記インダクタの両端と電源との間にそれぞれ逆バイアスになるように接続された第1、第2のバラクタダイオードと、
前記共通ノードと電圧制御端子との間に接続された第1の抵抗と、
前記インダクタの両端と前記電圧制御端子との間に接続された第2、第3の抵抗と、
を含むことを特徴とする請求項2記載の電圧制御発振器。
【請求項4】
前記電源を高電位電源、低電位電源のうち一方の電源としたときに、
前記高電位電源、低電位電源のうち他方の電源と前記インダクタの両端との間にそれぞれ逆バイアスになるように接続された第3、第4のバラクタダイオードをさらに含むことを特徴とする請求項3記載の電圧制御発振器。
【請求項5】
前記第1及び第2のMOSバラクタのゲート端子が前記共通ノードに接続されていることを特徴とする請求項3又は4記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
前記インダクタの両端が前記増幅部の入出力端子に接続されていることを特徴とする請求項3乃至5いずれか1項記載の電圧制御発振器。
【請求項7】
電源と第1ノードとの間に接続された第1のインダクタンスと、
前記電源と第2ノードとの間に接続された第2のインダクタンスと、
電圧制御端子に抵抗を介して接続された第3ノードと前記第1ノードとの間に逆バイアスになるように接続された第1のバラクタダイオードと、
前記第3ノードと前記第2ノードとの間に逆バイアスになるように接続された第2のバラクタダイオードと、
一端がそれぞれ前記第3ノードに接続させた第1及び第2のMOSバラクタと、
前記第1のMOSバラクタの他端と前記第1ノードとの間に接続された第1の固定容量と、
前記第2のMOSバラクタの他端と前記第2ノードとの間に接続された第2の固定容量と、
を含むことを特徴とする請求項2記載の電圧制御発振器。
【請求項8】
前記第1及び第2のMOSバラクタの他端にそれぞれ固定バイアスが与えられていることを特徴とする請求項7記載の電圧制御発振器。
【請求項9】
前記第1及び第2のMOSバラクタのゲート端子が前記第3ノードに接続されていることを特徴とする請求項7又は8記載の電圧制御発振器。
【請求項10】
前記第1ノード及び第2ノードがそれぞれ前記増幅部の入出力端子に接続されていることを特徴とする請求項7乃至9いずれか1項記載の電圧制御発振器。
【請求項11】
前記電源が高電位電源であり、前記第1のバラクタダイオードのアノードが前記第3ノードに、カソードが前記第1ノードに接続され、前記第2のバラクタダイオードのアノードが前記第3ノードに、カソードが前記第2ノードに接続されていることを特徴とする請求項7乃至10いずれか1項記載の電圧制御発振器。
【請求項12】
前記電源が低電位電源であり、前記第1のバラクタダイオードのアノードが前記第1ノードに、カソードが前記第3ノードに接続され、前記第2のバラクタダイオードのアノードが前記第2ノードに、カソードが前記第3ノードに接続されていることを特徴とする請求項7乃至10いずれか1項記載の電圧制御発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−278658(P2010−278658A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128038(P2009−128038)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】