電子キーシステムのキー位置判定装置
【課題】電子キーの位置判定を精度よく行うことができる電子キーシステムのキー位置判定装置を提供する。
【解決手段】車両1に登録済みの全電子キー2,2…に対して、運転席アンテナ10から問合せ(第1問合せ)を実行し、この問合せに対して応答のあった電子キー2のIDコードを記憶する。続いて、第1問合せで応答のあった電子キー2,2…に対して、助手席アンテナ11から問合せ(第2)を行う。そして、これら両方の問合せで応答を受け付ければ、車内に電子キー2があると判定し、第1問合せのみで応答を受け付ければ、車外に電子キー2があると判定する。
【解決手段】車両1に登録済みの全電子キー2,2…に対して、運転席アンテナ10から問合せ(第1問合せ)を実行し、この問合せに対して応答のあった電子キー2のIDコードを記憶する。続いて、第1問合せで応答のあった電子キー2,2…に対して、助手席アンテナ11から問合せ(第2)を行う。そして、これら両方の問合せで応答を受け付ければ、車内に電子キー2があると判定し、第1問合せのみで応答を受け付ければ、車外に電子キー2があると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーの位置を判定する電子キーシステムのキー位置判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両キーとしての電子キーから無線によりIDコードを車両に送信してID照合を実行する電子キーシステムが広く使用されている。この電子キーシステムには、車両からIDコード返信要求としてリクエストを送信し、このリクエストに応答して電子キーが返信してきたIDコードによりID照合を行うキー操作スマートシステムがある。キー操作フリーシステムには、車外でID照合が成立すると、ドアロック施解錠が許可又は実行されるスマートエントリーシステムと、車内でID照合が成立すると、車内のエンジンスイッチの単なる押し操作のみでエンジン始動が可能となるワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。
【0003】
この電子キーシステムの一種には、図9に示すように、車両80の各ドア81,82にアンテナ83,84を設置し、これらアンテナ83,84からの送信電波に対して電子キー85が返してきた応答の論理判定によってキー位置を判定する技術(特許文献1,2等)が考案されている。この技術は、運転席ドア81に設置された運転席アンテナ83と、助手席ドア82に設置された助手席アンテナ84とから順にリクエストを送信して、運転席アンテナエリア86と助手席アンテナエリア87とを順に形成し、これらリクエストに対して電子キー85が返信するIDコード、即ち応答の論理判定によってキー位置を判定する。
【0004】
例えば、運転席アンテナ83のリクエストに対して電子キー85からの応答があり、助手席アンテナ84のリクエストに対して電子キー85から応答がないと、電子キー85が車外に位置すると判定する。また、運転席アンテナ83のリクエストに対して電子キー85からの応答がなく、助手席アンテナ84からのリクエストに対して電子キー85の応答があれば、電子キー85が車外に位置すると判定する。さらに、運転席アンテナ83のリクエストと助手席アンテナ84のリクエストとに対して両方とも応答があれば、電子キー85が車内に位置していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−84406号公報
【特許文献2】特開2005−76329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、1台の車両80に対して電子キー85は必ずしも1つだけではなく、一般的に1台の車両80には、例えば1つのマスターキーと複数のサブキーとが登録される。このため、現状は、1台の車両80に対して電子キー85が複数存在することになる。従って、場合によっては、図10に示すように、電子キー85が運転席側車外と助手席側車外の両方に位置することもある。しかし、前述した論理判定によりキー位置を判定しようとした場合、電子キー85が図10に示す位置状態をとると、電子キー85が車内に位置すると誤判定してしまう問題があった。
【0007】
また、場合によっては、図11に示すように、運転席車外と助手席車外と車内との3箇所に電子キー85が同時に存在することも想定される。ところで、アンテナ83(84)は、例えば優先順位の高いキーから順に問い合せて、応答を受けた時点で通信を停止するので、例えば電子キー85の優先度が85a→85b→85cの順で高ければ、運転席アンテナ83は電子キー85aから応答を受けた時点で確認を止め、助手席アンテナ84は電子キー85bから応答を受けた時点で確認を止める。このため、結果として車内に電子キー85cが位置していることを認識できない問題があった。
【0008】
本発明の目的は、電子キーの位置判定を精度よく行うことができる電子キーシステムのキー位置判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するために、本発明では、キー通信対象に複数のアンテナを設け、一アンテナの通信エリアと他アンテナの通信エリアとが交わる干渉領域を設け、電子キーが前記干渉領域とその非干渉領域とのどちらにあるのかを見ることで、前記電子キーの位置を判定する電子キーシステムのキー位置判定装置において、前記キー通信対象に登録された電子キーに対して、前記一アンテナから応答有り無しの問合わせを行う第1問合せ手段と、前記第1問合せ手段の問合せに対して応答があった前記電子キーに対して、前記他アンテナから更なる応答有り無しの問合せを行う第2問合せ手段と、前記第1問合せ手段及び前記第2問合せ手段の問合せ結果を基に、前記電子キーの位置を判定するキー位置判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、まずは最初に、第1問合せ手段による問合せとして、キー通信対象に登録された各電子キーに対してキー単位でそれぞれ個別に問合せて応答有無を確認し、第1問合せ手段で応答のあった電子キーに対して、続く第2問合せ手段により更なる問合せを行って、キー位置を判定する。このため、一アンテナの通信エリアと他アンテナの通信エリアとにそれぞれ電子キーが位置していても、電子キーがどちらの通信エリアに位置するのかを判定することが可能となるので、電子キーの位置判定をより精度よく行うことが可能となる。
【0011】
本発明では、前記第1問合せ手段は、前記キー通信対象に登録された前記電子キーへのそれぞれの問合せを、使用アンテナを切り換えることなく一度に実行し、前記第2問合せ手段は、前記第1問合せ手段の全問合せが完了した後に、当該第1問合せ手段の問合せに対して応答のあった前記電子キーへの問合せを実行することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、第1問合せ手段での問合せでは、キー通信対象に登録された全電子キーに対して先に問合せを済ませるので、使用アンテナを一度だけ切り換えればよい分、キー位置判定に要する時間が短く済む。このため、例えば複数の電子キーが非干渉領域に位置する場合に、キー位置判定に要する所要時間を短く済ませることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記第1問合せ手段は、前記電子キーに対して前記一アンテナから順番に応答有り無しの問合せを行った際、前記電子キーから応答を受信すると、該応答の受け付け時点で使用アンテナを前記一アンテナから前記他アンテナに切り換え、前記第2問合せ手段は、切り換え後の前記他アンテナで、前記第1問合せ手段による問合せで応答があった前記電子キーに対する問合せを実行し、前記第1問合せ手段で応答があると使用アンテナを前記一アンテナから前記他アンテナに切り換えて更に問合わせる動作を、前記第1問合せ手段で応答を得る度に実行することを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、電子キーの登録本数に拘らず、例えば電子キーを1本のみ使用する際には、キー位置判定に要する所要時間を最短とすることが可能となる。
本発明では、前記干渉領域が前記キー通信対象としての車両の車内に設定され、前記非干渉領域が車外に設定され、前記キー位置として前記電子キーが車内及び車外のどちらにあるのかが判定されることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、電子キーが車内又は車外のどちらにあるかをより正確に判定することが可能となるので、例えば車両周囲に電子キーが存在するにも拘らずドアロックの施解錠が実行できなかったり、或いは電子キーが車内に存在するにも拘らずエンジン始動操作を実行できなかったりする状況を生じ難くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子キーの位置判定を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態におけるキー位置判定装置の概略構成を示す構成図。
【図2】車両に形成される各通信エリアの範囲を示す概念図。
【図3】運転席側車外通信エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図4】運転席側車外通信エリア及び助手席側車外通信エリアの2エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図5】運転席側車外通信エリア、助手席側車外通信エリア及び車内通信エリアの3エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図6】第2実施形態における運転席側車外通信エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図7】運転席側車外通信エリア及び助手席側車外通信エリアの2エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図8】運転席側車外通信エリア、助手席側車外通信エリア及び車内通信エリアの3エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図9】従来において車両に形成される各通信エリアの範囲を示す概念図。
【図10】運転席側車外通信エリア及び助手席側車外通信エリアの2エリアに電子キーが位置する状態を示す模式図。
【図11】運転席側車外通信エリア、助手席側車外通信エリア及び車内通信エリアの3エリアに電子キーが位置する状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した電子キーシステムのキー位置判定装置の第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0019】
図1に示すように、車両1には、無線によりキー照合を行う電子キーシステムの一種として、電子キー2が車両1に近づくと自動でID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム3が設けられている。このキー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドアロックの施解錠が実行されるスマートエントリーシステムと、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ4を押し操作するのみでエンジンを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。なお、車両1がキー通信対象に相当する。
【0020】
この場合、車両1には、電子キー2との間でID照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、同装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組みをなす電子キー2のIDコードが登録されている。IDコードは、車両1に登録された電子キー2の数だけ登録されている。
【0021】
照合ECU9には、運転席側にLF(Low Frequency)帯の電波を発信する運転席側車外発信機(以降、運転席アンテナ10と記す)と、助手席側にLF帯の電波を発信する助手席側車外発信機(以降、助手席アンテナ11と記す)と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両チューナ12とが接続されている。これらアンテナ10,11は、車体のドアに設けられ、電子キー2に対するID返信要求としてリクエスト信号SrqをLF帯の電波により断続的に送信する。なお、アンテナ10,11がアンテナ(一アンテナ、他アンテナ)に相当する。
【0022】
運転席アンテナ10は、運転席側車外及び車内の両エリアを満たす範囲にリクエスト信号Srqの通信エリア(以降、運転席アンテナエリアE1と記す:図2参照)を形成する。また、助手席アンテナ11は、助手席側車外及び車内の両エリアを満たす範囲にリクエスト信号Srqの通信エリア(以降、助手席アンテナエリアE2と記す:図2参照)を形成する。そして、運転席アンテナエリアE1と助手席アンテナエリアE2との干渉領域が車内通信エリアEcとして形成され、運転席アンテナエリアE1において車内通信エリアEcを除いた領域が運転席側車外通信エリアEaとして形成され、助手席アンテナエリアE2において車内通信エリアEcを除いた領域が助手席側車外通信エリアEbとして形成される。なお、運転席アンテナエリアE1及び助手席アンテナエリアE2が通信エリアに相当し、運転席側車外通信エリアEa及び助手席側車外通信エリアEbが非干渉領域に相当し、車内通信エリアEcが干渉領域に相当する。
【0023】
一方、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御する通信制御部13が設けられている。通信制御部13のメモリ(図示略)には、キー固有のIDとしてIDコードが登録されている。通信制御部13には、LF帯の電波を受信可能なLF受信機14と、UHF帯の電波を送信可能なUHF送信機15とが接続されている。電子キー2は、LF受信機14でリクエスト信号Srqを受信すると、IDコードを含むID信号SidをUHF送信機15によりUHF帯の電波で送信する。
【0024】
照合ECU9は、運転席アンテナ10や助手席アンテナ11からリクエスト信号Srqを断続的に送信して、ID照合(スマート照合)を実行する。スマート照合は、例えば車両駐車時(エンジン停止及びドアロック施錠)に常時実行されたり、或いは車両ドアハンドルノブに設けたドアロック施錠実行ボタン(図示略)が操作されたりしたときに実行される。また、スマート照合は、例えば車両1に設けたカーテシスイッチ(図示略)で運転者の乗車を検出たときに実行される。
【0025】
照合ECU9は、運転席アンテナ10及び助手席アンテナ11にリクエスト信号Srqの送信動作を順にとらせ、各送信動作に対する電子キー2の応答(即ち、ID信号Sidの返信)の論理判定によって電子キー2の位置を特定し、スマート照合を実行する。基本的な判定として、両アンテナ10,11のうち片方のみ応答を受け付けた際には、電子キー2が車外にあるとみなされ、両アンテナ10,11とも応答を受け付けた際には、電子キー2が車内にあるとみなされる。
【0026】
照合ECU9は、車外の電子キー2からのID信号Sidを車両チューナ12で受信してスマート通信(車外通信)が確立すると、車外のID照合(スマート照合)として車外照合を実行する。そして、この車外照合が成立すると、ドアロック装置6によるドアロック施解錠が許可又は実行される。また、照合ECU9は、車内の電子キー2からのID信号Sidを車両チューナ12で受信してスマート通信(車内通信)が確立すると、車内のID照合(スマート照合)として車内照合を実行する。そして、この車内照合が成立すると、エンジンスイッチ4(エンジン始動装置7)による電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可される。
【0027】
ところで、車両1には、マスターキー及び複数のサブキーというように、複数の電子キー2が登録されている。このため、背景技術でも述べたように、場合によっては、例えば運転席側車外通信エリアEa及び助手席側車外通信エリアEbの両方に同時に電子キー2が位置する状態(図4参照)や、運転席側車外通信エリアEa、助手席側車外通信エリアEb及び車内通信エリアEcの各エリアに同時に電子キー2が位置する状態(図5参照)をとることもある。このとき、各アンテナ10,11に対する電子キー2の応答の論理判定を単に見ただけでは、電子キー2が車外又は車内のどちらに位置しているのかが判定できない。
【0028】
そこで、本例のキー操作フリーシステム3には、電子キー2が図4や図5の位置状態をとってもキー位置を正確に判定することが可能なキー位置判定装置16が設けられている。本例のキー位置判定装置16は、スマート照合時、2つのアンテナ10,11のうちの一方から、照合ECU(車両1)に登録された電子キー2の全てに対してキー単位でそれぞれ問合せを行い、登録済みキーの全てに問合せを行った後、応答のあった電子キー2に対して、前述したアンテナ10,11の他方から更に問合せを行い、その問合せ結果を基にしてキー位置を判定する。
【0029】
この場合、照合ECU9には、2つのアンテナ10,11の一方から、照合ECU9に登録済みの全電子キー2に対してリクエスト信号Srqの送信、即ち問合せ(以降、第1問合せと記す)を行う第1問合せ実行部17が設けられている。第1問合せ実行部17は、スマート照合においてアンテナ10,11の一方からリクエスト信号Srqを送信する際、照合ECU9に登録された全てのキー番号(1〜N:Nは整数)で電子キー2に問合せをし、応答があったキー番号の電子キー2、即ちID信号Sidを返信してきた電子キー2のIDコードを記憶する。なお、第1問合せ実行部17が第1問合せ手段に相当し、第1問合せが応答有り無しの問合せを構成する。
【0030】
照合ECU9には、第1問合せに対して応答のあった電子キー2に対して、アンテナ10,11の他方から問合せ(以降、第2問合せと記す)を行う第2問合せ実行部18が設けられている。第2問合せ実行部18は、第1問合せの実行後、第1問合せで記憶した電子キー2のキー番号を、アンテナ10,11のうちの他方から送信することにより問合せを行い、応答の有無を確認する。なお、第2問合せ実行部18が第2問合せ手段に相当し、第2問合せが応答有り無しの問合せを構成する。
【0031】
照合ECU9には、第2問合せ実行部18の問合せ結果を基にキー位置を判定するキー位置判定部19が設けられている。キー位置判定部19は、第1問合せ時のみ電子キー2から応答を受け付けると、電子キー2が車外に位置すると判定する。また、キー位置判定部19は、第1問合せで応答のあったキー番号の電子キー2から、第2問合せでも応答を受け付けることができれば、電子キー2が車内に位置すると判定する。なお、キー位置判定部19がキー位置判定手段に相当する。
【0032】
次に、本例のキー位置判定装置16の動作を図3〜図5に従って説明する。
まず、図3に示すように、運転席側車外通信エリアEaにのみ電子キー2が進入する場合を想定する。運転席アンテナ10及び助手席アンテナ11は、待機状態をとっている電子キー2を起動状態に切り換える指令としてウェイク信号20を交互に送信する。電子キー2が運転席側車外通信エリアEaに進入してウェイク信号20を受信すると、電子キー2が待機状態から起動状態に切り換わる。電子キー2は、起動状態に切り換わると、これを車両1に通知する信号としてアック信号21をUHF帯の電波によって送信する。
【0033】
照合ECU9は、ウェイク信号20を送信してから制限時間内にアック信号21を受信すると、車両周囲に電子キー2が存在すると認識する。このとき、第1問合せ実行部17は、2つのアンテナ10,11のうち、まずウェイク信号20に対する応答のあった側のアンテナ、ここでは運転席アンテナ10からチャレンジ22を送信して、第1問合せを開始する。チャレンジ22には、電子キー2への動作命令であるコマンドと、チャレンジレスポンス認証用の乱数コードであるチャレンジコードと、優先順位が何番目のキーなのかを示すキー番号とが含まれている。
【0034】
電子キー2は、チャレンジ22を受信すると、このチャレンジ22に含まれるキー番号でキー番号照合を実行する。ここで、電子キー2のキー番号がキー番号1であるとすると、運転席アンテナ10から最初に送信される第1チャレンジ22aでキー番号照合が成立する。
【0035】
電子キー2は、キー番号照合が成立することを確認すると、同じチャレンジ22内に含まれるチャレンジコードでレスポンスコードを演算する。レスポンスコードは、電子キー2に登録された暗号式にチャレンジコードを通すことによって算出される。電子キー2は、レスポンスコードの算出が完了すると、自身に登録されたIDコードと、このレスポンスコードとを含む信号を、レスポンス23としてUHF帯の電波により送信する。電子キー2は、レスポンス23を送信し終えると、起動状態から元の待機状態に戻る。
【0036】
照合ECU9は、チャレンジ22を送信する際、同チャレンジ22のチャレンジコードを自身の暗号鍵に通して、自身でもレスポンスコードを演算する。照合ECU9は、車両チューナ12でレスポンス23を受信すると、このレスポンス23に含まれるIDコードと、自身に登録されたIDコードとを照らし合わせて、IDコード照合を実行する。照合ECU9は、このIDコード照合の成立を確認すると、同じレスポンス23に含まれるレスポンスコードを、自身が演算したレスポンスコードと照らし合わせてレスポンスコード照合を実行する。照合ECU9は、IDコード照合及びレスポンスコード照合の両照合が成立すること確認すると、スマート照合が成立すると認識する。
【0037】
第1問合せ実行部17は、チャレンジ22の送信に際し、照合ECU9に登録されている全ての電子キー2に対する問合せとして、キー番号を順に変えてチャレンジ22を繰り返し送信する。本例の場合、第1チャレンジ22aの後、キー番号2を含む第2チャレンジ22bが送信され、キー番号Nを含む第nチャレンジ22nが送信されるまで、チャレンジ22の送信が繰り返される。チャレンジ22は、優先順位の高いキー番号、例えばマスターキー→第1サブキー→第2サブキー…の順に送信される。
【0038】
第1問合せ実行部17は、第1チャレンジ22aに対する応答として電子キー2からレスポンス23を受信すると、このレスポンス23の受信完了を待って第2チャレンジ22bを送信する。第1問合せ実行部17は、第2チャレンジ22bを送信しても制限時間内にレスポンス23を受信できなければ、制限時間経過を以て次チャレンジの送信を開始し、キー番号の数だけ以上の動作を繰り返す。第1問合せ実行部17は、チャレンジ22に対する応答のあった電子キー2のキー番号、即ち電子キー2のIDコードを、自身のメモリ等に記憶する。
【0039】
なお、2番目以降のチャレンジ22b〜21nには、チャレンジコードが含まれず、コマンド及びキー番号のみが送信される。これは、複数の電子キー2,…が1つの同じ通信エリア内に入っていれば、キー番号が違っても、最初に送信された第1チャレンジ22aの受信で以て、チャレンジコードの取得が可能であるので、通信のスループットを目的として、2番目以降のチャレンジ22b〜21nからチャレンジコードを省略している。
【0040】
第1問合せ実行部17による第1問合せが完了すると、続いて第2問合せ実行部18は、使用アンテナを運転席アンテナ10から助手席アンテナ11に切り換え、第1問合せで記憶したIDコードの電子キー2に対して第2問合せを開始する。このとき、第2問合せ実行部18は、まずウェイク信号20を送信して、助手席アンテナエリアE2内に位置する電子キー2を起動させる。
【0041】
そして、第2問合せ実行部18は、第1問合せで応答のあった電子キー2に対し、優先順位の高いものから順にチャレンジ22…を送信して、応答有無を確かめる。ここでは、第1問合せの際、キー番号1の電子キー2から応答を受け付けたので、第2問合せ実行部18は第1チャレンジ22aを助手席アンテナ11から送信させる。なお、第2問合せ実行部18は、ウェイク信号20に対する電子キー2のアック返信の有無に関係なく、第1チャレンジ22aの送信を実行する。このとき、助手席アンテナエリアE2には電子キー2が存在しないので、第1チャレンジ22aに対する電子キー2の応答はない。よって、第2問合せ実行部18は、チャレンジに対する応答を受け付けることができず、助手席アンテナエリアE2内に電子キー2が存在しないと認識する。
【0042】
キー位置判定部19は、第1問合せ及び第2問合せの問合せ結果を基に、電子キー2のキー位置を判定する。キー位置判定部19は、電子キー2が第1問合せでのみ応答があった場合、同電子キー2が車外にあると判定し、電子キー2が第1問合せ及び第2問合せの両方で応答があった場合、同電子キー2が車内にあると判定する。ここでは、運転席側車外通信エリアEaに電子キー2が1つ存在する場合を想定しているので、キー位置判定部19は第1問合せでのみ電子キー2から応答を受け付けて、電子キー2が車外に位置すると判定する。
【0043】
続いて、図4に示すように、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2a(キー番号1)が位置し、助手席側車外通信エリアEbに第2電子キー2b(キー番号2)が位置した場合を想定する。ここで、例えば運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で第1電子キー2aが応答したとする。このとき、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先順位の高いキー番号の順にチャレンジ22a,21b…を順次送信して、第1問合せを開始する。
【0044】
ここでは、第1電子キー2aが運転席側車外通信エリアEaに位置している例を想定しているので、第1問合せ実行部17は、第1チャレンジ22aを送信したときに電子キー2aからの応答を受け付け、それ以降のチャレンジ22b…では応答を受け付けない。よって、第1問合せ実行部17は、問合せに対する応答のあったキー番号1の電子キー2、即ち第1電子キー2aのIDコードをメモリに保持する。
【0045】
また、第1問合せが完了すると、第2問合せ実行部18は、第1問合せで応答のあった電子キー2に対して、助手席アンテナ11から更に応答を問合せる第2問合せを実行する。このとき、第2問合せ実行部18は、助手席アンテナエリアE2内のキーを起動させるべく、助手席アンテナ11からウェイク信号20を送信し、その一定時間後、同じ助手席アンテナ11から第1チャレンジ22aを送信する。しかし、第1電子キー2aは、助手席アンテナエリアE2の外部にあるので、第1チャレンジ22aを受信することができない。よって、第2問合せ実行部18は、第1チャレンジ22aに対する応答を受け取ることができない。
【0046】
なお、この第2問合せの際、助手席アンテナ11から送信されたウェイク信号20で、助手席アンテナエリアE2内の第2電子キー2bが起動状態に切り換わってアック信号24を返信してくる。しかし、第2電子キー2bは、キー番号の違いから、第1チャレンジ22aに対する応答動作をとることができない。よって、第2電子キー2bは、第2問合せに際して起動状態をとるものの、第2問合せには何ら関係しない。
【0047】
従って、キー位置判定部19は、第1問合せで第1電子キー2aから応答を受け付け、第2問合せで第1電子キー2aから応答を受け付けない問合せ結果を得る。キー位置判定部19は、第1電子キー2aから第1問合せでのみ応答を受け付けることを以て、電子キー2が車外に位置すると判定する。よって、車外通信エリアEa,Ebの両方に電子キー2がそれぞれ位置していても、結果として問題なく、電子キー2が車外に位置すると判定される。
【0048】
続いて、図5に示すように、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2aが位置し、助手席側車外通信エリアEbに第2電子キー2bが位置し、車内通信エリアEcに第3電子キー2c(キー番号3)が位置する場合を想定する。ここでも、運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で第1電子キー2aが応答したとする。このときも、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先度の高い順にチャレンジ22a,21b…を送信して、第1問合せを実行する。なお、第3電子キー2cもウェイク信号20により起動状態に切り換わってアック信号25を返信してくるので、このアック信号25での応答によってチャレンジ22の送信を開始してもよい。
【0049】
ここでは、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2aが位置し、車内通信エリアEcに第3電子キー2cが位置しているので、第1問合せ実行部17は、第1チャレンジ22aに対して第1電子キー2aから応答を受け付け、第3チャレンジ22cに対して第3電子キー2cから応答を受け付ける。よって、第1問合せ実行部17は、車両1に登録された複数の電子キー2a,2b…のうち、応答のあった第1電子キー2aと第3電子キー2cとのIDコードを保持する。
【0050】
そして、第1問合せが完了すると、第2問合せ実行部18は、第1問合せで応答のあった第1電子キー2a及び第3電子キー2cに対し、助手席アンテナ11から更に応答を問い合せる第2問合せを実行する。このときも、第2問合せ実行部18は、助手席アンテナエリアE2内のキーを起動させるべく、助手席アンテナ11からウェイク信号20を送信し、その一定時間後、第1問合せで応答のあったキー番号のチャレンジ22を、同じ助手席アンテナ11から順番に送信する。ここでは、まず最初に第1チャレンジ22aが送信され、その後、続けて第3チャレンジ22cが送信される。
【0051】
このとき、助手席アンテナ11から送信されたウェイク信号20で、助手席アンテナエリアE2内にある第2電子キー2bがアック信号24を返信し、第3電子キー2cがアック信号25を返信してくる。しかし、第2問合せ実行部18は、これらアック信号24,25の受信有無に関係なく、一定時間後、チャレンジ22a,22cの送信を開始する。
【0052】
ここでは、第1電子キー2aが助手席アンテナエリアE2の外部に位置し、第3電子キー2cが助手席アンテナエリアE2の内部に位置する。このため、第2問合せ実行部18は、第1電子キー2aから応答を受け付けず、第3電子キー2cのみから応答を受け付ける。よって、キー位置判定部19は、第3電子キー2cから第1問合せ及び第2問合せの両方から応答を受け付けることを以て、電子キー2が車内に位置すると認識する。これにより、3つのエリアEa〜Ecの全てに電子キー2が位置していても、電子キー2が車内に位置すると判定される。
【0053】
以上は、2つのアンテナ10,11のうち、運転席アンテナ10からのウェイク信号20で電子キー2が起動した場合を説明したが、助手席アンテナ11からのウェイク信号20で電子キー2が起動する場合も同様の動作をとる。よって、助手席アンテナ11からのウェイク信号20で電子キー2が起動する場合の動作は、説明を省略する。
【0054】
従って、本例においては、図4に示すように、運転席側車外通信エリアEa及び助手席側車外通信エリアEbの両方に電子キー2が位置していても、車外に電子キー2があると判定することが可能となる。また、図5に示すように、運転席側車外通信エリアEaと助手席側車外通信エリアEbと車内通信エリアEcの3つに電子キー2が位置していても、問題なく車内に電子キー2があると判定することが可能となる。よって、本例のキー位置判定装置16を採用すれば、精度よく電子キー2の位置を判定することが可能となる。
【0055】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)照合ECU9に登録された全電子キー2に対して運転席アンテナ10より問合せ(第1問合せ)を行い、この第1問合せで応答のあった電子キー2に対して助手席アンテナ11より問合せ(第2問合せ)を行い、両方の問合せで応答を得た場合には、電子キー2が車内にあると判定し、第1問合せのみで応答を得た場合には、電子キー2が車外にあると判定する。このため、電子キー2が図4や図5のような位置状態をとっていても、電子キー2の位置を正しく割り出すことが可能となるので、電子キー2の位置をより精度よく判定することができる。
【0056】
(2)第1問合せで全電子キー2に対して一度に問合せを行い、この問合せの後に、第2問合せに以降するので、使用アンテナを一度のみ切り換えればよいだけ、キー位置判定に要する時間を短く済ますことができる。このため、例えば複数の電子キー2が車外通信エリアEa,Ebに位置する場合、キー位置判定に要する所要時間を短く済ませることができる。
【0057】
(3)キー位置判定装置16はキー位置として電子キー2が車内又は車外のどちらにあるのかを見るので、電子キー2が車内又は車外のどちらにあるのかを、より正確に判定することができる。よって、例えば車両周囲に電子キー2が存在するにも拘らずドアロックの施解錠が実行できなかったり、或いは電子キー2が車内に存在するにも拘らずエンジン始動操作を実行できなかったりする状況を生じ難くすることができる。
【0058】
(4)運転席アンテナ10と助手席アンテナ11との2つのアンテナで、電子キー2が車内又は車外のどちらに位置するのかを判定する。よって、例えば運転席側車外用と助手正側車外用と車内用とのそれぞれに個別のアンテナを用意する必要がないので、車体に設置するアンテナ本数を少なく済ますことができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図6〜図8に従って説明する。なお、本例は、第1実施形態のキー位置判定形式を変更したのみの構成である。よって、基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、同一部分に関しては詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0060】
本例のキー位置判定装置16は、スマート照合時、2つのアンテナ10,11のうち一方から、照合ECU9(車両1)に登録された電子キー2に対してキー単位で問合せを行い、電子キー2から応答を受け付けると、その応答受付け時点で使用アンテナを他方に切り換え、応答のあった同じ電子キー2に対して問合せを行う。このとき、応答があれば、電子キー2が車内に位置すると判定し、応答が無ければ、使用アンテナを元のアンテナに再度切り換え、問合せの続きを再開する。そして、以上の動作を登録済みキーの全てに行い、キー位置を判定する。
【0061】
まず、図6に示すように、運転席側車外通信エリアEaにのみ電子キー2(キー番号1)が進入する場合を想定する。ここで、例えば運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で電子キー2が応答したとする。このとき、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先順位の高いキー番号の順にチャレンジ21a,21b…を順次送信して、第1問合せを実行する。ここでは、優先順位の最も高い電子キー2が運転席側車外通信エリアEaに位置しているので、第1チャレンジ21aを送信した後、直ちに電子キー2からレスポンス23を受信する。
【0062】
第2問合せ実行部18は、電子キー2からレスポンス23を受信して応答を受け付けると、直ぐにアンテナを助手席アンテナ11に切り換え、助手席アンテナエリアE2内のキーを起動させるべく、助手席アンテナ11からウェイク信号20を送信する。そして、第2問合せ実行部18は、ウェイク信号20を送信してから一定時間後、第1問合せで応答のあったキー番号のチャレンジ22、即ち第1チャレンジ22aを、助手席アンテナ11から再度送信する。なお、第2問合せ実行部18は、ウェイク信号20に対する電子キー2のアック返信の有無に関係なく、第1チャレンジ22aの送信を実行する。
【0063】
ここでは、運転席側車外通信エリアEaに電子キー2が位置する場合を想定しているので、第2問合せ実行部18は、この第1チャレンジ22aに対する応答を受け付けることができない。キー位置判定部19は、第2問合せに対する応答を電子キー2から受け付けることができないことを確認すると、電子キー2が車内に存在しないと判定する。そして、キー位置判定部19は、使用アンテナを元の運転席アンテナ10に戻して、続くキー番号のチャレンジ22の送信を再開させ、以降の問合せを継続させる。
【0064】
よって、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10からウェイク信号20を再度送信し、このウェイク信号20を送信してから一定時間後、第2チャレンジ22b、第3チャレンジ22c…を順番に送信し、第nチャレンジ22nの送信が完了するまで、チャレンジ22の送信を繰り返す。なお、第1問合せ実行部17は、第2チャレンジ22bの送信を、アック信号21の受け付けに関係なく開始する。キー位置判定部19は、運転席アンテナ10でチャレンジ22に対する応答を得ることができたものの、助手席アンテナ11で同一チャレンジ22の応答を受け付けることができないことを確認すると、電子キー2が車外に位置すると判定する。
【0065】
続いて、図7に示すように、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2a(キー番号1)が位置し、助手席側車外通信エリアEbに第2電子キー2b(キー番号2)が位置する場合を想定する。ここでは、例えば運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で第1電子キー2aが応答したとする。このときも、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先順位の高いキー番号の順にチャレンジ22を順次送信して、第1問合せを開始する。ここでは、第1電子キー2aが運転席側車外通信エリアEaに位置しているので、第1問合せ実行部17は第1チャレンジ22aを送信した後、直ちに第1電子キー2aからレスポンス23を受信する。
【0066】
第2問合せ実行部18は、第1電子キー2aから応答を受け付けると、直ぐにアンテナを助手席アンテナ11に切り換え、ウェイク信号20を送信した後、第1チャレンジ22aを再度送信する。このとき、第1電子キー2aが助手席側車外通信エリアEbの外部に位置し、助手席側車外通信エリアEbに位置しているのは第2電子キー2bであるので、第1電子キー2aは第1チャレンジ22aに対する応答を返すことができない。よって、第2問合せ実行部18は問合せに対する応答を受け付けることができないことになる。
【0067】
なお、この第2問合せの際、助手席アンテナ11から送信されたウェイク信号20で、助手席アンテナエリアE2内の第2電子キー2bが起動状態に切り換わってアック信号24を返信してくる。しかし、第2電子キー2bは、キー番号の違いから、第1チャレンジ22aに対する応答動作をとることができない。よって、第2電子キー2bは、第2問合せに際して起動状態をとるものの、第2問合せには何ら関係しない。
【0068】
キー位置判定部19は、第1問合せで応答を受け付け、第2問合せで応答を受け付けることができないことを確認すると、電子キー2が車外に位置すると判定する。キー位置判定部19は、電子キー2から第2問合せに対する応答が無かった場合、通信アンテナを運転席アンテナ10に再度変更し、続きのキー番号のチャレンジ22、即ち第2チャレンジ22b以降のチャレンジ22の送信を再開する。この場合は、第2チャレンジ22b以降も応答も受け付けることができないので、キー位置判定装置16は電子キー2が車内に無く、車外にのみ存在すると認識する。
【0069】
続いて、図8に示すように、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2aが位置し、助手席側車外通信エリアEbに第2電子キー2bが位置し、車内通信エリアEcに第3電子キー2c(キー番号3)が位置する場合を想定する。ここでも、運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で第1電子キー2aが応答したとする。このときも、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先度の高い順にチャレンジ22を送信して、第1問合せを実行する。ここでは、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2aが位置し、車内通信エリアEcに第3電子キー2cが位置しているが、第1問合せ実行部17は、第1問合せにおいて、まず最初に第1電子キー2aから応答を受信する。
【0070】
第2問合せ実行部18は、第1電子キー2aから応答を受信すると、通信アンテナを助手席アンテナ11に切り換えて、今度は助手席アンテナ11から第1チャレンジ22a送信する。ここで、第1電子キー2aが運転席アンテナエリアE1内にないので、第2問合せ実行部18は、この第1チャレンジ22aに対する応答を車両チューナ12で受信することができない。このとき、キー位置判定部19は、第1問合せでは電子キー2の応答を受け取るものの、第2問合せでは応答を受け取ることができないので、この時点では、電子キー2が車外に位置すると判定する。そして、キー位置判定部19は、2番目以降のキー番号の電子キー2に対する問合せを、照合ECU9に実行させる。
【0071】
続いて、第1問合せ実行部17は、使用アンテナを助手席アンテナ11から運転席アンテナ10に再度切り換え、運転席アンテナ10から第2チャレンジ22b以降の送信を再開する。このとき、第2電子キー2bは、運転席アンテナエリアE1内にないので、この第2チャレンジ22bに対する応答を受け付けることはできない。よって、第1問合せ実行部17は、制限時間の経過を見て、続いて第3チャレンジ22cを運転席アンテナ10から送信する。第3電子キー2cは、運転席アンテナエリアE1内に位置するので、この第3チャレンジ22cに応答してレスポンス23を返信する。よって、第1問合せ実行部17は、第3チャレンジ22cに対する応答を受け付けることになる。
【0072】
第2問合せ実行部18は、第3チャレンジ22cに対する応答を受け付けると、使用アンテナを助手席アンテナ11に再度切り換えて、助手席アンテナ11から同じ第3チャレンジ22cを送信する。第3電子キー2cは、助手席アンテナエリアE2内に位置するので、第2問合せ実行部18は、この第3チャレンジ22cに対する応答を受信する。よって、キー位置判定部19は、第1問合せで第3チャレンジ22cに対する応答を受け付け、更に第2問合せでも第3チャレンジ22cに対する応答を受け付けるので、これを以て電子キー2が車内に位置すると判定する。そして、キー位置判定部19は、電子キー2が車内にあることを認識した時点でチャレンジ22の送信を停止し、キー位置判定を終了する。
【0073】
従って、本例においても、電子キー2が図7や図8の位置状態をとっても、間違うことなく電子キー2の位置を割り出すことが可能となるので、電子キー2の位置を精度よく判定することが可能となる。また、車両1に登録される電子キー2の登録本数が増えても、電子キー2が車内にあると分かった時点でキー位置判定が終了される。よって、アンテナ10(11)から問合せを行うに際して、車両1に登録された全電子キー2のチャレンジ22を送信する必要がなくなるので、キー位置判定に要する時間を短く済ますことが可能となる。
【0074】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1),(3),(4)に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(5)車両1に登録された電子キー2の登録本数に拘らず、例えば電子キー2を1本のみ使用する際には、キー位置判定に要する所要時間を最短とすることができる。
【0075】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、ウェイク信号20の送信は、定期的に実行される形式や、ある所定操作を条件に送信実行が行われる形式のどちらを採用してもよい。
【0076】
・第1及び第2実施形態において、キー位置判定装置16を車内のキー置き忘れ検知に応用してもよい。
・第1及び第2実施形態において、問合せ時にチャレンジ22を送信する際、アック返信の受け付けに関係なくチャレンジ22を送信することに限らず、電子キー2からのアック返信受け付けを条件としてチャレンジ22を送信してもよい。
【0077】
・アンテナ切り換え後のチャレンジ22の送信は、無条件に実行されることに限らず、例えばウェイク信号20に対するアック応答を受信することを条件としてもよい。
・第1及び第2実施形態において、アンテナ10,11の配置位置は、ドアに限定されず、例えば車体ピラーとしてもよい。
【0078】
・第1及び第2実施形態において、アンテナ10,11の本数は、運転席及び助手席の2本に限らず、例えばラッゲージドアに設置して、合計3本としてもよい。
・第1及び第2実施形態において、キー位置判定装置16は、電子キー2が車内又は車外のどちらにあるのかを見るものに限定されない。例えば、車内を複数領域に分割し、電子キーがこれら分割エリアのどこに位置するのかを見るものでもよい。
【0079】
・第1及び第2実施形態において、スマート照合の際、車両1から車両固有IDとしてビークルIDを電子キー2に送信して、このIDの照合を実行するようにしてもよい。
・第1及び第2実施形態において、キー操作フリーシステム3は、車両1→電子キー2の往路通信と、電子キー2→車両1の復路通信とで、それぞれ異なる周波数を使用することに限らず、同じ周波数としてもよい。
【0080】
・第1及び第2実施形態において、通信で使用する周波数は、LFやUHFに限定されず、他の帯域も使用可能である。
・第1及び第2実施形態において、各電子キー2に個別に問い合せる際、チャレンジ22に含まれるキー番号で電子キー2を特定することに限定されない。例えば、車両1から個別の記号を送信するなどして電子キー2を特定してもよく、要は電子キー2の特定として種々の形式が採用可能である。
【0081】
・第1及び第2実施形態において、キー位置判定装置16の採用対象は、車両1に限定されず、他の機器や装置に搭載してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0082】
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記問合せは、前記電子キーを待機状態から起動状態に切り換えるトリガとしてのウェイク信号と、前記電子キーの正否を問うチャレンジレスポンス認証用のチャレンジとから構築され、前記チャレンジに含まれるキー番号によって、前記電子キーの有り無しが確認される。この構成によれば、チャレンジ内のキー番号という従来から使用されているものによって電子キーの有無を問い合せるので、電子キーに問合せを行うに際して、新たな記号等を設ける必要がない。
【符号の説明】
【0083】
1…キー通信対象としての車両、2(2a〜2c)…電子キー、10…アンテナ(一アンテナ、他アンテナ)を構成する運転席アンテナ、11…アンテナ(一アンテナ、他アンテナ)を構成する助手席アンテナ、16…キー位置判定装置、17…第1問合せ手段としての第1問合せ実行部、18…第2問合せ手段としての第2問合せ実行部、19…キー位置判定手段としてのキー位置判定部、E1…通信エリアを構成する運転席アンテナエリア、E2…通信エリアを構成する助手席アンテナエリア、Ea…非干渉領域としての運転席側車外通信エリア、Eb…非干渉領域としての助手席側車外通信エリア、Ec…干渉領域としての車内通信エリア。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーの位置を判定する電子キーシステムのキー位置判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両キーとしての電子キーから無線によりIDコードを車両に送信してID照合を実行する電子キーシステムが広く使用されている。この電子キーシステムには、車両からIDコード返信要求としてリクエストを送信し、このリクエストに応答して電子キーが返信してきたIDコードによりID照合を行うキー操作スマートシステムがある。キー操作フリーシステムには、車外でID照合が成立すると、ドアロック施解錠が許可又は実行されるスマートエントリーシステムと、車内でID照合が成立すると、車内のエンジンスイッチの単なる押し操作のみでエンジン始動が可能となるワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。
【0003】
この電子キーシステムの一種には、図9に示すように、車両80の各ドア81,82にアンテナ83,84を設置し、これらアンテナ83,84からの送信電波に対して電子キー85が返してきた応答の論理判定によってキー位置を判定する技術(特許文献1,2等)が考案されている。この技術は、運転席ドア81に設置された運転席アンテナ83と、助手席ドア82に設置された助手席アンテナ84とから順にリクエストを送信して、運転席アンテナエリア86と助手席アンテナエリア87とを順に形成し、これらリクエストに対して電子キー85が返信するIDコード、即ち応答の論理判定によってキー位置を判定する。
【0004】
例えば、運転席アンテナ83のリクエストに対して電子キー85からの応答があり、助手席アンテナ84のリクエストに対して電子キー85から応答がないと、電子キー85が車外に位置すると判定する。また、運転席アンテナ83のリクエストに対して電子キー85からの応答がなく、助手席アンテナ84からのリクエストに対して電子キー85の応答があれば、電子キー85が車外に位置すると判定する。さらに、運転席アンテナ83のリクエストと助手席アンテナ84のリクエストとに対して両方とも応答があれば、電子キー85が車内に位置していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−84406号公報
【特許文献2】特開2005−76329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、1台の車両80に対して電子キー85は必ずしも1つだけではなく、一般的に1台の車両80には、例えば1つのマスターキーと複数のサブキーとが登録される。このため、現状は、1台の車両80に対して電子キー85が複数存在することになる。従って、場合によっては、図10に示すように、電子キー85が運転席側車外と助手席側車外の両方に位置することもある。しかし、前述した論理判定によりキー位置を判定しようとした場合、電子キー85が図10に示す位置状態をとると、電子キー85が車内に位置すると誤判定してしまう問題があった。
【0007】
また、場合によっては、図11に示すように、運転席車外と助手席車外と車内との3箇所に電子キー85が同時に存在することも想定される。ところで、アンテナ83(84)は、例えば優先順位の高いキーから順に問い合せて、応答を受けた時点で通信を停止するので、例えば電子キー85の優先度が85a→85b→85cの順で高ければ、運転席アンテナ83は電子キー85aから応答を受けた時点で確認を止め、助手席アンテナ84は電子キー85bから応答を受けた時点で確認を止める。このため、結果として車内に電子キー85cが位置していることを認識できない問題があった。
【0008】
本発明の目的は、電子キーの位置判定を精度よく行うことができる電子キーシステムのキー位置判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するために、本発明では、キー通信対象に複数のアンテナを設け、一アンテナの通信エリアと他アンテナの通信エリアとが交わる干渉領域を設け、電子キーが前記干渉領域とその非干渉領域とのどちらにあるのかを見ることで、前記電子キーの位置を判定する電子キーシステムのキー位置判定装置において、前記キー通信対象に登録された電子キーに対して、前記一アンテナから応答有り無しの問合わせを行う第1問合せ手段と、前記第1問合せ手段の問合せに対して応答があった前記電子キーに対して、前記他アンテナから更なる応答有り無しの問合せを行う第2問合せ手段と、前記第1問合せ手段及び前記第2問合せ手段の問合せ結果を基に、前記電子キーの位置を判定するキー位置判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、まずは最初に、第1問合せ手段による問合せとして、キー通信対象に登録された各電子キーに対してキー単位でそれぞれ個別に問合せて応答有無を確認し、第1問合せ手段で応答のあった電子キーに対して、続く第2問合せ手段により更なる問合せを行って、キー位置を判定する。このため、一アンテナの通信エリアと他アンテナの通信エリアとにそれぞれ電子キーが位置していても、電子キーがどちらの通信エリアに位置するのかを判定することが可能となるので、電子キーの位置判定をより精度よく行うことが可能となる。
【0011】
本発明では、前記第1問合せ手段は、前記キー通信対象に登録された前記電子キーへのそれぞれの問合せを、使用アンテナを切り換えることなく一度に実行し、前記第2問合せ手段は、前記第1問合せ手段の全問合せが完了した後に、当該第1問合せ手段の問合せに対して応答のあった前記電子キーへの問合せを実行することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、第1問合せ手段での問合せでは、キー通信対象に登録された全電子キーに対して先に問合せを済ませるので、使用アンテナを一度だけ切り換えればよい分、キー位置判定に要する時間が短く済む。このため、例えば複数の電子キーが非干渉領域に位置する場合に、キー位置判定に要する所要時間を短く済ませることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記第1問合せ手段は、前記電子キーに対して前記一アンテナから順番に応答有り無しの問合せを行った際、前記電子キーから応答を受信すると、該応答の受け付け時点で使用アンテナを前記一アンテナから前記他アンテナに切り換え、前記第2問合せ手段は、切り換え後の前記他アンテナで、前記第1問合せ手段による問合せで応答があった前記電子キーに対する問合せを実行し、前記第1問合せ手段で応答があると使用アンテナを前記一アンテナから前記他アンテナに切り換えて更に問合わせる動作を、前記第1問合せ手段で応答を得る度に実行することを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、電子キーの登録本数に拘らず、例えば電子キーを1本のみ使用する際には、キー位置判定に要する所要時間を最短とすることが可能となる。
本発明では、前記干渉領域が前記キー通信対象としての車両の車内に設定され、前記非干渉領域が車外に設定され、前記キー位置として前記電子キーが車内及び車外のどちらにあるのかが判定されることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、電子キーが車内又は車外のどちらにあるかをより正確に判定することが可能となるので、例えば車両周囲に電子キーが存在するにも拘らずドアロックの施解錠が実行できなかったり、或いは電子キーが車内に存在するにも拘らずエンジン始動操作を実行できなかったりする状況を生じ難くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子キーの位置判定を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態におけるキー位置判定装置の概略構成を示す構成図。
【図2】車両に形成される各通信エリアの範囲を示す概念図。
【図3】運転席側車外通信エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図4】運転席側車外通信エリア及び助手席側車外通信エリアの2エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図5】運転席側車外通信エリア、助手席側車外通信エリア及び車内通信エリアの3エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図6】第2実施形態における運転席側車外通信エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図7】運転席側車外通信エリア及び助手席側車外通信エリアの2エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図8】運転席側車外通信エリア、助手席側車外通信エリア及び車内通信エリアの3エリアに電子キーが位置する際のスマート通信の流れを示すタイムチャート。
【図9】従来において車両に形成される各通信エリアの範囲を示す概念図。
【図10】運転席側車外通信エリア及び助手席側車外通信エリアの2エリアに電子キーが位置する状態を示す模式図。
【図11】運転席側車外通信エリア、助手席側車外通信エリア及び車内通信エリアの3エリアに電子キーが位置する状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した電子キーシステムのキー位置判定装置の第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0019】
図1に示すように、車両1には、無線によりキー照合を行う電子キーシステムの一種として、電子キー2が車両1に近づくと自動でID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム3が設けられている。このキー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドアロックの施解錠が実行されるスマートエントリーシステムと、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ4を押し操作するのみでエンジンを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。なお、車両1がキー通信対象に相当する。
【0020】
この場合、車両1には、電子キー2との間でID照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、同装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組みをなす電子キー2のIDコードが登録されている。IDコードは、車両1に登録された電子キー2の数だけ登録されている。
【0021】
照合ECU9には、運転席側にLF(Low Frequency)帯の電波を発信する運転席側車外発信機(以降、運転席アンテナ10と記す)と、助手席側にLF帯の電波を発信する助手席側車外発信機(以降、助手席アンテナ11と記す)と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両チューナ12とが接続されている。これらアンテナ10,11は、車体のドアに設けられ、電子キー2に対するID返信要求としてリクエスト信号SrqをLF帯の電波により断続的に送信する。なお、アンテナ10,11がアンテナ(一アンテナ、他アンテナ)に相当する。
【0022】
運転席アンテナ10は、運転席側車外及び車内の両エリアを満たす範囲にリクエスト信号Srqの通信エリア(以降、運転席アンテナエリアE1と記す:図2参照)を形成する。また、助手席アンテナ11は、助手席側車外及び車内の両エリアを満たす範囲にリクエスト信号Srqの通信エリア(以降、助手席アンテナエリアE2と記す:図2参照)を形成する。そして、運転席アンテナエリアE1と助手席アンテナエリアE2との干渉領域が車内通信エリアEcとして形成され、運転席アンテナエリアE1において車内通信エリアEcを除いた領域が運転席側車外通信エリアEaとして形成され、助手席アンテナエリアE2において車内通信エリアEcを除いた領域が助手席側車外通信エリアEbとして形成される。なお、運転席アンテナエリアE1及び助手席アンテナエリアE2が通信エリアに相当し、運転席側車外通信エリアEa及び助手席側車外通信エリアEbが非干渉領域に相当し、車内通信エリアEcが干渉領域に相当する。
【0023】
一方、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御する通信制御部13が設けられている。通信制御部13のメモリ(図示略)には、キー固有のIDとしてIDコードが登録されている。通信制御部13には、LF帯の電波を受信可能なLF受信機14と、UHF帯の電波を送信可能なUHF送信機15とが接続されている。電子キー2は、LF受信機14でリクエスト信号Srqを受信すると、IDコードを含むID信号SidをUHF送信機15によりUHF帯の電波で送信する。
【0024】
照合ECU9は、運転席アンテナ10や助手席アンテナ11からリクエスト信号Srqを断続的に送信して、ID照合(スマート照合)を実行する。スマート照合は、例えば車両駐車時(エンジン停止及びドアロック施錠)に常時実行されたり、或いは車両ドアハンドルノブに設けたドアロック施錠実行ボタン(図示略)が操作されたりしたときに実行される。また、スマート照合は、例えば車両1に設けたカーテシスイッチ(図示略)で運転者の乗車を検出たときに実行される。
【0025】
照合ECU9は、運転席アンテナ10及び助手席アンテナ11にリクエスト信号Srqの送信動作を順にとらせ、各送信動作に対する電子キー2の応答(即ち、ID信号Sidの返信)の論理判定によって電子キー2の位置を特定し、スマート照合を実行する。基本的な判定として、両アンテナ10,11のうち片方のみ応答を受け付けた際には、電子キー2が車外にあるとみなされ、両アンテナ10,11とも応答を受け付けた際には、電子キー2が車内にあるとみなされる。
【0026】
照合ECU9は、車外の電子キー2からのID信号Sidを車両チューナ12で受信してスマート通信(車外通信)が確立すると、車外のID照合(スマート照合)として車外照合を実行する。そして、この車外照合が成立すると、ドアロック装置6によるドアロック施解錠が許可又は実行される。また、照合ECU9は、車内の電子キー2からのID信号Sidを車両チューナ12で受信してスマート通信(車内通信)が確立すると、車内のID照合(スマート照合)として車内照合を実行する。そして、この車内照合が成立すると、エンジンスイッチ4(エンジン始動装置7)による電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可される。
【0027】
ところで、車両1には、マスターキー及び複数のサブキーというように、複数の電子キー2が登録されている。このため、背景技術でも述べたように、場合によっては、例えば運転席側車外通信エリアEa及び助手席側車外通信エリアEbの両方に同時に電子キー2が位置する状態(図4参照)や、運転席側車外通信エリアEa、助手席側車外通信エリアEb及び車内通信エリアEcの各エリアに同時に電子キー2が位置する状態(図5参照)をとることもある。このとき、各アンテナ10,11に対する電子キー2の応答の論理判定を単に見ただけでは、電子キー2が車外又は車内のどちらに位置しているのかが判定できない。
【0028】
そこで、本例のキー操作フリーシステム3には、電子キー2が図4や図5の位置状態をとってもキー位置を正確に判定することが可能なキー位置判定装置16が設けられている。本例のキー位置判定装置16は、スマート照合時、2つのアンテナ10,11のうちの一方から、照合ECU(車両1)に登録された電子キー2の全てに対してキー単位でそれぞれ問合せを行い、登録済みキーの全てに問合せを行った後、応答のあった電子キー2に対して、前述したアンテナ10,11の他方から更に問合せを行い、その問合せ結果を基にしてキー位置を判定する。
【0029】
この場合、照合ECU9には、2つのアンテナ10,11の一方から、照合ECU9に登録済みの全電子キー2に対してリクエスト信号Srqの送信、即ち問合せ(以降、第1問合せと記す)を行う第1問合せ実行部17が設けられている。第1問合せ実行部17は、スマート照合においてアンテナ10,11の一方からリクエスト信号Srqを送信する際、照合ECU9に登録された全てのキー番号(1〜N:Nは整数)で電子キー2に問合せをし、応答があったキー番号の電子キー2、即ちID信号Sidを返信してきた電子キー2のIDコードを記憶する。なお、第1問合せ実行部17が第1問合せ手段に相当し、第1問合せが応答有り無しの問合せを構成する。
【0030】
照合ECU9には、第1問合せに対して応答のあった電子キー2に対して、アンテナ10,11の他方から問合せ(以降、第2問合せと記す)を行う第2問合せ実行部18が設けられている。第2問合せ実行部18は、第1問合せの実行後、第1問合せで記憶した電子キー2のキー番号を、アンテナ10,11のうちの他方から送信することにより問合せを行い、応答の有無を確認する。なお、第2問合せ実行部18が第2問合せ手段に相当し、第2問合せが応答有り無しの問合せを構成する。
【0031】
照合ECU9には、第2問合せ実行部18の問合せ結果を基にキー位置を判定するキー位置判定部19が設けられている。キー位置判定部19は、第1問合せ時のみ電子キー2から応答を受け付けると、電子キー2が車外に位置すると判定する。また、キー位置判定部19は、第1問合せで応答のあったキー番号の電子キー2から、第2問合せでも応答を受け付けることができれば、電子キー2が車内に位置すると判定する。なお、キー位置判定部19がキー位置判定手段に相当する。
【0032】
次に、本例のキー位置判定装置16の動作を図3〜図5に従って説明する。
まず、図3に示すように、運転席側車外通信エリアEaにのみ電子キー2が進入する場合を想定する。運転席アンテナ10及び助手席アンテナ11は、待機状態をとっている電子キー2を起動状態に切り換える指令としてウェイク信号20を交互に送信する。電子キー2が運転席側車外通信エリアEaに進入してウェイク信号20を受信すると、電子キー2が待機状態から起動状態に切り換わる。電子キー2は、起動状態に切り換わると、これを車両1に通知する信号としてアック信号21をUHF帯の電波によって送信する。
【0033】
照合ECU9は、ウェイク信号20を送信してから制限時間内にアック信号21を受信すると、車両周囲に電子キー2が存在すると認識する。このとき、第1問合せ実行部17は、2つのアンテナ10,11のうち、まずウェイク信号20に対する応答のあった側のアンテナ、ここでは運転席アンテナ10からチャレンジ22を送信して、第1問合せを開始する。チャレンジ22には、電子キー2への動作命令であるコマンドと、チャレンジレスポンス認証用の乱数コードであるチャレンジコードと、優先順位が何番目のキーなのかを示すキー番号とが含まれている。
【0034】
電子キー2は、チャレンジ22を受信すると、このチャレンジ22に含まれるキー番号でキー番号照合を実行する。ここで、電子キー2のキー番号がキー番号1であるとすると、運転席アンテナ10から最初に送信される第1チャレンジ22aでキー番号照合が成立する。
【0035】
電子キー2は、キー番号照合が成立することを確認すると、同じチャレンジ22内に含まれるチャレンジコードでレスポンスコードを演算する。レスポンスコードは、電子キー2に登録された暗号式にチャレンジコードを通すことによって算出される。電子キー2は、レスポンスコードの算出が完了すると、自身に登録されたIDコードと、このレスポンスコードとを含む信号を、レスポンス23としてUHF帯の電波により送信する。電子キー2は、レスポンス23を送信し終えると、起動状態から元の待機状態に戻る。
【0036】
照合ECU9は、チャレンジ22を送信する際、同チャレンジ22のチャレンジコードを自身の暗号鍵に通して、自身でもレスポンスコードを演算する。照合ECU9は、車両チューナ12でレスポンス23を受信すると、このレスポンス23に含まれるIDコードと、自身に登録されたIDコードとを照らし合わせて、IDコード照合を実行する。照合ECU9は、このIDコード照合の成立を確認すると、同じレスポンス23に含まれるレスポンスコードを、自身が演算したレスポンスコードと照らし合わせてレスポンスコード照合を実行する。照合ECU9は、IDコード照合及びレスポンスコード照合の両照合が成立すること確認すると、スマート照合が成立すると認識する。
【0037】
第1問合せ実行部17は、チャレンジ22の送信に際し、照合ECU9に登録されている全ての電子キー2に対する問合せとして、キー番号を順に変えてチャレンジ22を繰り返し送信する。本例の場合、第1チャレンジ22aの後、キー番号2を含む第2チャレンジ22bが送信され、キー番号Nを含む第nチャレンジ22nが送信されるまで、チャレンジ22の送信が繰り返される。チャレンジ22は、優先順位の高いキー番号、例えばマスターキー→第1サブキー→第2サブキー…の順に送信される。
【0038】
第1問合せ実行部17は、第1チャレンジ22aに対する応答として電子キー2からレスポンス23を受信すると、このレスポンス23の受信完了を待って第2チャレンジ22bを送信する。第1問合せ実行部17は、第2チャレンジ22bを送信しても制限時間内にレスポンス23を受信できなければ、制限時間経過を以て次チャレンジの送信を開始し、キー番号の数だけ以上の動作を繰り返す。第1問合せ実行部17は、チャレンジ22に対する応答のあった電子キー2のキー番号、即ち電子キー2のIDコードを、自身のメモリ等に記憶する。
【0039】
なお、2番目以降のチャレンジ22b〜21nには、チャレンジコードが含まれず、コマンド及びキー番号のみが送信される。これは、複数の電子キー2,…が1つの同じ通信エリア内に入っていれば、キー番号が違っても、最初に送信された第1チャレンジ22aの受信で以て、チャレンジコードの取得が可能であるので、通信のスループットを目的として、2番目以降のチャレンジ22b〜21nからチャレンジコードを省略している。
【0040】
第1問合せ実行部17による第1問合せが完了すると、続いて第2問合せ実行部18は、使用アンテナを運転席アンテナ10から助手席アンテナ11に切り換え、第1問合せで記憶したIDコードの電子キー2に対して第2問合せを開始する。このとき、第2問合せ実行部18は、まずウェイク信号20を送信して、助手席アンテナエリアE2内に位置する電子キー2を起動させる。
【0041】
そして、第2問合せ実行部18は、第1問合せで応答のあった電子キー2に対し、優先順位の高いものから順にチャレンジ22…を送信して、応答有無を確かめる。ここでは、第1問合せの際、キー番号1の電子キー2から応答を受け付けたので、第2問合せ実行部18は第1チャレンジ22aを助手席アンテナ11から送信させる。なお、第2問合せ実行部18は、ウェイク信号20に対する電子キー2のアック返信の有無に関係なく、第1チャレンジ22aの送信を実行する。このとき、助手席アンテナエリアE2には電子キー2が存在しないので、第1チャレンジ22aに対する電子キー2の応答はない。よって、第2問合せ実行部18は、チャレンジに対する応答を受け付けることができず、助手席アンテナエリアE2内に電子キー2が存在しないと認識する。
【0042】
キー位置判定部19は、第1問合せ及び第2問合せの問合せ結果を基に、電子キー2のキー位置を判定する。キー位置判定部19は、電子キー2が第1問合せでのみ応答があった場合、同電子キー2が車外にあると判定し、電子キー2が第1問合せ及び第2問合せの両方で応答があった場合、同電子キー2が車内にあると判定する。ここでは、運転席側車外通信エリアEaに電子キー2が1つ存在する場合を想定しているので、キー位置判定部19は第1問合せでのみ電子キー2から応答を受け付けて、電子キー2が車外に位置すると判定する。
【0043】
続いて、図4に示すように、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2a(キー番号1)が位置し、助手席側車外通信エリアEbに第2電子キー2b(キー番号2)が位置した場合を想定する。ここで、例えば運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で第1電子キー2aが応答したとする。このとき、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先順位の高いキー番号の順にチャレンジ22a,21b…を順次送信して、第1問合せを開始する。
【0044】
ここでは、第1電子キー2aが運転席側車外通信エリアEaに位置している例を想定しているので、第1問合せ実行部17は、第1チャレンジ22aを送信したときに電子キー2aからの応答を受け付け、それ以降のチャレンジ22b…では応答を受け付けない。よって、第1問合せ実行部17は、問合せに対する応答のあったキー番号1の電子キー2、即ち第1電子キー2aのIDコードをメモリに保持する。
【0045】
また、第1問合せが完了すると、第2問合せ実行部18は、第1問合せで応答のあった電子キー2に対して、助手席アンテナ11から更に応答を問合せる第2問合せを実行する。このとき、第2問合せ実行部18は、助手席アンテナエリアE2内のキーを起動させるべく、助手席アンテナ11からウェイク信号20を送信し、その一定時間後、同じ助手席アンテナ11から第1チャレンジ22aを送信する。しかし、第1電子キー2aは、助手席アンテナエリアE2の外部にあるので、第1チャレンジ22aを受信することができない。よって、第2問合せ実行部18は、第1チャレンジ22aに対する応答を受け取ることができない。
【0046】
なお、この第2問合せの際、助手席アンテナ11から送信されたウェイク信号20で、助手席アンテナエリアE2内の第2電子キー2bが起動状態に切り換わってアック信号24を返信してくる。しかし、第2電子キー2bは、キー番号の違いから、第1チャレンジ22aに対する応答動作をとることができない。よって、第2電子キー2bは、第2問合せに際して起動状態をとるものの、第2問合せには何ら関係しない。
【0047】
従って、キー位置判定部19は、第1問合せで第1電子キー2aから応答を受け付け、第2問合せで第1電子キー2aから応答を受け付けない問合せ結果を得る。キー位置判定部19は、第1電子キー2aから第1問合せでのみ応答を受け付けることを以て、電子キー2が車外に位置すると判定する。よって、車外通信エリアEa,Ebの両方に電子キー2がそれぞれ位置していても、結果として問題なく、電子キー2が車外に位置すると判定される。
【0048】
続いて、図5に示すように、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2aが位置し、助手席側車外通信エリアEbに第2電子キー2bが位置し、車内通信エリアEcに第3電子キー2c(キー番号3)が位置する場合を想定する。ここでも、運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で第1電子キー2aが応答したとする。このときも、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先度の高い順にチャレンジ22a,21b…を送信して、第1問合せを実行する。なお、第3電子キー2cもウェイク信号20により起動状態に切り換わってアック信号25を返信してくるので、このアック信号25での応答によってチャレンジ22の送信を開始してもよい。
【0049】
ここでは、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2aが位置し、車内通信エリアEcに第3電子キー2cが位置しているので、第1問合せ実行部17は、第1チャレンジ22aに対して第1電子キー2aから応答を受け付け、第3チャレンジ22cに対して第3電子キー2cから応答を受け付ける。よって、第1問合せ実行部17は、車両1に登録された複数の電子キー2a,2b…のうち、応答のあった第1電子キー2aと第3電子キー2cとのIDコードを保持する。
【0050】
そして、第1問合せが完了すると、第2問合せ実行部18は、第1問合せで応答のあった第1電子キー2a及び第3電子キー2cに対し、助手席アンテナ11から更に応答を問い合せる第2問合せを実行する。このときも、第2問合せ実行部18は、助手席アンテナエリアE2内のキーを起動させるべく、助手席アンテナ11からウェイク信号20を送信し、その一定時間後、第1問合せで応答のあったキー番号のチャレンジ22を、同じ助手席アンテナ11から順番に送信する。ここでは、まず最初に第1チャレンジ22aが送信され、その後、続けて第3チャレンジ22cが送信される。
【0051】
このとき、助手席アンテナ11から送信されたウェイク信号20で、助手席アンテナエリアE2内にある第2電子キー2bがアック信号24を返信し、第3電子キー2cがアック信号25を返信してくる。しかし、第2問合せ実行部18は、これらアック信号24,25の受信有無に関係なく、一定時間後、チャレンジ22a,22cの送信を開始する。
【0052】
ここでは、第1電子キー2aが助手席アンテナエリアE2の外部に位置し、第3電子キー2cが助手席アンテナエリアE2の内部に位置する。このため、第2問合せ実行部18は、第1電子キー2aから応答を受け付けず、第3電子キー2cのみから応答を受け付ける。よって、キー位置判定部19は、第3電子キー2cから第1問合せ及び第2問合せの両方から応答を受け付けることを以て、電子キー2が車内に位置すると認識する。これにより、3つのエリアEa〜Ecの全てに電子キー2が位置していても、電子キー2が車内に位置すると判定される。
【0053】
以上は、2つのアンテナ10,11のうち、運転席アンテナ10からのウェイク信号20で電子キー2が起動した場合を説明したが、助手席アンテナ11からのウェイク信号20で電子キー2が起動する場合も同様の動作をとる。よって、助手席アンテナ11からのウェイク信号20で電子キー2が起動する場合の動作は、説明を省略する。
【0054】
従って、本例においては、図4に示すように、運転席側車外通信エリアEa及び助手席側車外通信エリアEbの両方に電子キー2が位置していても、車外に電子キー2があると判定することが可能となる。また、図5に示すように、運転席側車外通信エリアEaと助手席側車外通信エリアEbと車内通信エリアEcの3つに電子キー2が位置していても、問題なく車内に電子キー2があると判定することが可能となる。よって、本例のキー位置判定装置16を採用すれば、精度よく電子キー2の位置を判定することが可能となる。
【0055】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)照合ECU9に登録された全電子キー2に対して運転席アンテナ10より問合せ(第1問合せ)を行い、この第1問合せで応答のあった電子キー2に対して助手席アンテナ11より問合せ(第2問合せ)を行い、両方の問合せで応答を得た場合には、電子キー2が車内にあると判定し、第1問合せのみで応答を得た場合には、電子キー2が車外にあると判定する。このため、電子キー2が図4や図5のような位置状態をとっていても、電子キー2の位置を正しく割り出すことが可能となるので、電子キー2の位置をより精度よく判定することができる。
【0056】
(2)第1問合せで全電子キー2に対して一度に問合せを行い、この問合せの後に、第2問合せに以降するので、使用アンテナを一度のみ切り換えればよいだけ、キー位置判定に要する時間を短く済ますことができる。このため、例えば複数の電子キー2が車外通信エリアEa,Ebに位置する場合、キー位置判定に要する所要時間を短く済ませることができる。
【0057】
(3)キー位置判定装置16はキー位置として電子キー2が車内又は車外のどちらにあるのかを見るので、電子キー2が車内又は車外のどちらにあるのかを、より正確に判定することができる。よって、例えば車両周囲に電子キー2が存在するにも拘らずドアロックの施解錠が実行できなかったり、或いは電子キー2が車内に存在するにも拘らずエンジン始動操作を実行できなかったりする状況を生じ難くすることができる。
【0058】
(4)運転席アンテナ10と助手席アンテナ11との2つのアンテナで、電子キー2が車内又は車外のどちらに位置するのかを判定する。よって、例えば運転席側車外用と助手正側車外用と車内用とのそれぞれに個別のアンテナを用意する必要がないので、車体に設置するアンテナ本数を少なく済ますことができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図6〜図8に従って説明する。なお、本例は、第1実施形態のキー位置判定形式を変更したのみの構成である。よって、基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、同一部分に関しては詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0060】
本例のキー位置判定装置16は、スマート照合時、2つのアンテナ10,11のうち一方から、照合ECU9(車両1)に登録された電子キー2に対してキー単位で問合せを行い、電子キー2から応答を受け付けると、その応答受付け時点で使用アンテナを他方に切り換え、応答のあった同じ電子キー2に対して問合せを行う。このとき、応答があれば、電子キー2が車内に位置すると判定し、応答が無ければ、使用アンテナを元のアンテナに再度切り換え、問合せの続きを再開する。そして、以上の動作を登録済みキーの全てに行い、キー位置を判定する。
【0061】
まず、図6に示すように、運転席側車外通信エリアEaにのみ電子キー2(キー番号1)が進入する場合を想定する。ここで、例えば運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で電子キー2が応答したとする。このとき、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先順位の高いキー番号の順にチャレンジ21a,21b…を順次送信して、第1問合せを実行する。ここでは、優先順位の最も高い電子キー2が運転席側車外通信エリアEaに位置しているので、第1チャレンジ21aを送信した後、直ちに電子キー2からレスポンス23を受信する。
【0062】
第2問合せ実行部18は、電子キー2からレスポンス23を受信して応答を受け付けると、直ぐにアンテナを助手席アンテナ11に切り換え、助手席アンテナエリアE2内のキーを起動させるべく、助手席アンテナ11からウェイク信号20を送信する。そして、第2問合せ実行部18は、ウェイク信号20を送信してから一定時間後、第1問合せで応答のあったキー番号のチャレンジ22、即ち第1チャレンジ22aを、助手席アンテナ11から再度送信する。なお、第2問合せ実行部18は、ウェイク信号20に対する電子キー2のアック返信の有無に関係なく、第1チャレンジ22aの送信を実行する。
【0063】
ここでは、運転席側車外通信エリアEaに電子キー2が位置する場合を想定しているので、第2問合せ実行部18は、この第1チャレンジ22aに対する応答を受け付けることができない。キー位置判定部19は、第2問合せに対する応答を電子キー2から受け付けることができないことを確認すると、電子キー2が車内に存在しないと判定する。そして、キー位置判定部19は、使用アンテナを元の運転席アンテナ10に戻して、続くキー番号のチャレンジ22の送信を再開させ、以降の問合せを継続させる。
【0064】
よって、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10からウェイク信号20を再度送信し、このウェイク信号20を送信してから一定時間後、第2チャレンジ22b、第3チャレンジ22c…を順番に送信し、第nチャレンジ22nの送信が完了するまで、チャレンジ22の送信を繰り返す。なお、第1問合せ実行部17は、第2チャレンジ22bの送信を、アック信号21の受け付けに関係なく開始する。キー位置判定部19は、運転席アンテナ10でチャレンジ22に対する応答を得ることができたものの、助手席アンテナ11で同一チャレンジ22の応答を受け付けることができないことを確認すると、電子キー2が車外に位置すると判定する。
【0065】
続いて、図7に示すように、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2a(キー番号1)が位置し、助手席側車外通信エリアEbに第2電子キー2b(キー番号2)が位置する場合を想定する。ここでは、例えば運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で第1電子キー2aが応答したとする。このときも、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先順位の高いキー番号の順にチャレンジ22を順次送信して、第1問合せを開始する。ここでは、第1電子キー2aが運転席側車外通信エリアEaに位置しているので、第1問合せ実行部17は第1チャレンジ22aを送信した後、直ちに第1電子キー2aからレスポンス23を受信する。
【0066】
第2問合せ実行部18は、第1電子キー2aから応答を受け付けると、直ぐにアンテナを助手席アンテナ11に切り換え、ウェイク信号20を送信した後、第1チャレンジ22aを再度送信する。このとき、第1電子キー2aが助手席側車外通信エリアEbの外部に位置し、助手席側車外通信エリアEbに位置しているのは第2電子キー2bであるので、第1電子キー2aは第1チャレンジ22aに対する応答を返すことができない。よって、第2問合せ実行部18は問合せに対する応答を受け付けることができないことになる。
【0067】
なお、この第2問合せの際、助手席アンテナ11から送信されたウェイク信号20で、助手席アンテナエリアE2内の第2電子キー2bが起動状態に切り換わってアック信号24を返信してくる。しかし、第2電子キー2bは、キー番号の違いから、第1チャレンジ22aに対する応答動作をとることができない。よって、第2電子キー2bは、第2問合せに際して起動状態をとるものの、第2問合せには何ら関係しない。
【0068】
キー位置判定部19は、第1問合せで応答を受け付け、第2問合せで応答を受け付けることができないことを確認すると、電子キー2が車外に位置すると判定する。キー位置判定部19は、電子キー2から第2問合せに対する応答が無かった場合、通信アンテナを運転席アンテナ10に再度変更し、続きのキー番号のチャレンジ22、即ち第2チャレンジ22b以降のチャレンジ22の送信を再開する。この場合は、第2チャレンジ22b以降も応答も受け付けることができないので、キー位置判定装置16は電子キー2が車内に無く、車外にのみ存在すると認識する。
【0069】
続いて、図8に示すように、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2aが位置し、助手席側車外通信エリアEbに第2電子キー2bが位置し、車内通信エリアEcに第3電子キー2c(キー番号3)が位置する場合を想定する。ここでも、運転席アンテナ10から送信されたウェイク信号20で第1電子キー2aが応答したとする。このときも、第1問合せ実行部17は、運転席アンテナ10から優先度の高い順にチャレンジ22を送信して、第1問合せを実行する。ここでは、運転席側車外通信エリアEaに第1電子キー2aが位置し、車内通信エリアEcに第3電子キー2cが位置しているが、第1問合せ実行部17は、第1問合せにおいて、まず最初に第1電子キー2aから応答を受信する。
【0070】
第2問合せ実行部18は、第1電子キー2aから応答を受信すると、通信アンテナを助手席アンテナ11に切り換えて、今度は助手席アンテナ11から第1チャレンジ22a送信する。ここで、第1電子キー2aが運転席アンテナエリアE1内にないので、第2問合せ実行部18は、この第1チャレンジ22aに対する応答を車両チューナ12で受信することができない。このとき、キー位置判定部19は、第1問合せでは電子キー2の応答を受け取るものの、第2問合せでは応答を受け取ることができないので、この時点では、電子キー2が車外に位置すると判定する。そして、キー位置判定部19は、2番目以降のキー番号の電子キー2に対する問合せを、照合ECU9に実行させる。
【0071】
続いて、第1問合せ実行部17は、使用アンテナを助手席アンテナ11から運転席アンテナ10に再度切り換え、運転席アンテナ10から第2チャレンジ22b以降の送信を再開する。このとき、第2電子キー2bは、運転席アンテナエリアE1内にないので、この第2チャレンジ22bに対する応答を受け付けることはできない。よって、第1問合せ実行部17は、制限時間の経過を見て、続いて第3チャレンジ22cを運転席アンテナ10から送信する。第3電子キー2cは、運転席アンテナエリアE1内に位置するので、この第3チャレンジ22cに応答してレスポンス23を返信する。よって、第1問合せ実行部17は、第3チャレンジ22cに対する応答を受け付けることになる。
【0072】
第2問合せ実行部18は、第3チャレンジ22cに対する応答を受け付けると、使用アンテナを助手席アンテナ11に再度切り換えて、助手席アンテナ11から同じ第3チャレンジ22cを送信する。第3電子キー2cは、助手席アンテナエリアE2内に位置するので、第2問合せ実行部18は、この第3チャレンジ22cに対する応答を受信する。よって、キー位置判定部19は、第1問合せで第3チャレンジ22cに対する応答を受け付け、更に第2問合せでも第3チャレンジ22cに対する応答を受け付けるので、これを以て電子キー2が車内に位置すると判定する。そして、キー位置判定部19は、電子キー2が車内にあることを認識した時点でチャレンジ22の送信を停止し、キー位置判定を終了する。
【0073】
従って、本例においても、電子キー2が図7や図8の位置状態をとっても、間違うことなく電子キー2の位置を割り出すことが可能となるので、電子キー2の位置を精度よく判定することが可能となる。また、車両1に登録される電子キー2の登録本数が増えても、電子キー2が車内にあると分かった時点でキー位置判定が終了される。よって、アンテナ10(11)から問合せを行うに際して、車両1に登録された全電子キー2のチャレンジ22を送信する必要がなくなるので、キー位置判定に要する時間を短く済ますことが可能となる。
【0074】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1),(3),(4)に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(5)車両1に登録された電子キー2の登録本数に拘らず、例えば電子キー2を1本のみ使用する際には、キー位置判定に要する所要時間を最短とすることができる。
【0075】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、ウェイク信号20の送信は、定期的に実行される形式や、ある所定操作を条件に送信実行が行われる形式のどちらを採用してもよい。
【0076】
・第1及び第2実施形態において、キー位置判定装置16を車内のキー置き忘れ検知に応用してもよい。
・第1及び第2実施形態において、問合せ時にチャレンジ22を送信する際、アック返信の受け付けに関係なくチャレンジ22を送信することに限らず、電子キー2からのアック返信受け付けを条件としてチャレンジ22を送信してもよい。
【0077】
・アンテナ切り換え後のチャレンジ22の送信は、無条件に実行されることに限らず、例えばウェイク信号20に対するアック応答を受信することを条件としてもよい。
・第1及び第2実施形態において、アンテナ10,11の配置位置は、ドアに限定されず、例えば車体ピラーとしてもよい。
【0078】
・第1及び第2実施形態において、アンテナ10,11の本数は、運転席及び助手席の2本に限らず、例えばラッゲージドアに設置して、合計3本としてもよい。
・第1及び第2実施形態において、キー位置判定装置16は、電子キー2が車内又は車外のどちらにあるのかを見るものに限定されない。例えば、車内を複数領域に分割し、電子キーがこれら分割エリアのどこに位置するのかを見るものでもよい。
【0079】
・第1及び第2実施形態において、スマート照合の際、車両1から車両固有IDとしてビークルIDを電子キー2に送信して、このIDの照合を実行するようにしてもよい。
・第1及び第2実施形態において、キー操作フリーシステム3は、車両1→電子キー2の往路通信と、電子キー2→車両1の復路通信とで、それぞれ異なる周波数を使用することに限らず、同じ周波数としてもよい。
【0080】
・第1及び第2実施形態において、通信で使用する周波数は、LFやUHFに限定されず、他の帯域も使用可能である。
・第1及び第2実施形態において、各電子キー2に個別に問い合せる際、チャレンジ22に含まれるキー番号で電子キー2を特定することに限定されない。例えば、車両1から個別の記号を送信するなどして電子キー2を特定してもよく、要は電子キー2の特定として種々の形式が採用可能である。
【0081】
・第1及び第2実施形態において、キー位置判定装置16の採用対象は、車両1に限定されず、他の機器や装置に搭載してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0082】
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記問合せは、前記電子キーを待機状態から起動状態に切り換えるトリガとしてのウェイク信号と、前記電子キーの正否を問うチャレンジレスポンス認証用のチャレンジとから構築され、前記チャレンジに含まれるキー番号によって、前記電子キーの有り無しが確認される。この構成によれば、チャレンジ内のキー番号という従来から使用されているものによって電子キーの有無を問い合せるので、電子キーに問合せを行うに際して、新たな記号等を設ける必要がない。
【符号の説明】
【0083】
1…キー通信対象としての車両、2(2a〜2c)…電子キー、10…アンテナ(一アンテナ、他アンテナ)を構成する運転席アンテナ、11…アンテナ(一アンテナ、他アンテナ)を構成する助手席アンテナ、16…キー位置判定装置、17…第1問合せ手段としての第1問合せ実行部、18…第2問合せ手段としての第2問合せ実行部、19…キー位置判定手段としてのキー位置判定部、E1…通信エリアを構成する運転席アンテナエリア、E2…通信エリアを構成する助手席アンテナエリア、Ea…非干渉領域としての運転席側車外通信エリア、Eb…非干渉領域としての助手席側車外通信エリア、Ec…干渉領域としての車内通信エリア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー通信対象に複数のアンテナを設け、一アンテナの通信エリアと他アンテナの通信エリアとが交わる干渉領域を設け、電子キーが前記干渉領域とその非干渉領域とのどちらにあるのかを見ることで、前記電子キーの位置を判定する電子キーシステムのキー位置判定装置において、
前記キー通信対象に登録された電子キーに対して、前記一アンテナから応答有り無しの問合わせを行う第1問合せ手段と、
前記第1問合せ手段の問合せに対して応答があった前記電子キーに対して、前記他アンテナから更なる応答有り無しの問合せを行う第2問合せ手段と、
前記第1問合せ手段及び前記第2問合せ手段の問合せ結果を基に、前記電子キーの位置を判定するキー位置判定手段と
を備えたことを特徴とする電子キーシステムのキー位置判定装置。
【請求項2】
前記第1問合せ手段は、前記キー通信対象に登録された前記電子キーへのそれぞれの問合せを、使用アンテナを切り換えることなく一度に実行し、
前記第2問合せ手段は、前記第1問合せ手段の全問合せが完了した後に、当該第1問合せ手段の問合せに対して応答のあった前記電子キーへの問合せを実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステムのキー位置判定装置。
【請求項3】
前記第1問合せ手段は、前記電子キーに対して前記一アンテナから順番に応答有り無しの問合せを行った際、前記電子キーから応答を受信すると、該応答の受け付け時点で使用アンテナを前記一アンテナから前記他アンテナに切り換え、
前記第2問合せ手段は、切り換え後の前記他アンテナで、前記第1問合せ手段による問合せで応答があった前記電子キーに対する問合せを実行し、前記第1問合せ手段で応答があると使用アンテナを前記一アンテナから前記他アンテナに切り換えて更に問合わせる動作を、前記第1問合せ手段で応答を得る度に実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステムのキー位置判定装置。
【請求項4】
前記干渉領域が前記キー通信対象としての車両の車内に設定され、前記非干渉領域が車外に設定され、前記キー位置として前記電子キーが車内及び車外のどちらにあるのかが判定される
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムのキー位置判定装置。
【請求項1】
キー通信対象に複数のアンテナを設け、一アンテナの通信エリアと他アンテナの通信エリアとが交わる干渉領域を設け、電子キーが前記干渉領域とその非干渉領域とのどちらにあるのかを見ることで、前記電子キーの位置を判定する電子キーシステムのキー位置判定装置において、
前記キー通信対象に登録された電子キーに対して、前記一アンテナから応答有り無しの問合わせを行う第1問合せ手段と、
前記第1問合せ手段の問合せに対して応答があった前記電子キーに対して、前記他アンテナから更なる応答有り無しの問合せを行う第2問合せ手段と、
前記第1問合せ手段及び前記第2問合せ手段の問合せ結果を基に、前記電子キーの位置を判定するキー位置判定手段と
を備えたことを特徴とする電子キーシステムのキー位置判定装置。
【請求項2】
前記第1問合せ手段は、前記キー通信対象に登録された前記電子キーへのそれぞれの問合せを、使用アンテナを切り換えることなく一度に実行し、
前記第2問合せ手段は、前記第1問合せ手段の全問合せが完了した後に、当該第1問合せ手段の問合せに対して応答のあった前記電子キーへの問合せを実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステムのキー位置判定装置。
【請求項3】
前記第1問合せ手段は、前記電子キーに対して前記一アンテナから順番に応答有り無しの問合せを行った際、前記電子キーから応答を受信すると、該応答の受け付け時点で使用アンテナを前記一アンテナから前記他アンテナに切り換え、
前記第2問合せ手段は、切り換え後の前記他アンテナで、前記第1問合せ手段による問合せで応答があった前記電子キーに対する問合せを実行し、前記第1問合せ手段で応答があると使用アンテナを前記一アンテナから前記他アンテナに切り換えて更に問合わせる動作を、前記第1問合せ手段で応答を得る度に実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステムのキー位置判定装置。
【請求項4】
前記干渉領域が前記キー通信対象としての車両の車内に設定され、前記非干渉領域が車外に設定され、前記キー位置として前記電子キーが車内及び車外のどちらにあるのかが判定される
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムのキー位置判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−102501(P2011−102501A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258121(P2009−258121)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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