説明

電子キー

【課題】合図用笛と電子キーの保管を容易にする。
【解決手段】電子キー1はイモビライザ機能を有する制御装置2と交信する送受信装置を含むIC基板5を本体とする。電子キー1のケーシング3は樹脂成型品であり、隔壁4によって区画され、回路収容室31と共鳴室32とを形成する。回路収容室31には、吹き口7と放音口8を設けて笛部を形成し、共鳴室32には電子キー1の本体である送受信回路を有するIC基板5を備えた。ケーシング3の端部には、ひもやチェーンなどを通すひも通し孔34を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーに関し、特に、緊急時や船舶同士または雪上走行車両からの合図等に使用できる笛を一体化した電子キーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された制御装置からのリクエスト信号を受信して、そのリクエスト信号の応答信号を送信する携帯型送受信装置、つまり車両用電子キーが知られる。例えば、特開2001−349110号公報に開示されている電子キーシステムでは、車両側の制御装置でリクエスト信号に対する応答信号に含まれる識別情報と予め登録されている識別情報とを照合し、これら識別情報が一致した段階でドアロックを解除する。さらに、イグニッションノブを操作すると、制御装置と電子キーとの間でエンジン始動許可のための交信が行われ、この交信で行われる識別情報の照合でも識別情報が一致した場合にエンジンが始動するように構成されている。
【0003】
また、船舶への制御入力システムとして、識別符号を含む無線信号の発信装置を備え、船舶制御装置がこの無線信号を受信して識別符号が特定のものであると判断したときに船舶の操作ロックを解除するようにしたものが知られる(特開2003−127987号公報)。
【特許文献1】特開2001−349110号公報
【特許文献2】特開2003−127987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両用電子キーを特許文献2に記載されたような船舶の操作ロック解除システムに携帯型送受信装置として使用することができる。しかし、例えば、小型船舶を使用する場合、小型船舶安全備品として緊急時に使用できる笛が必要とされる。したがって、笛と電子キーとをそれぞれ個別に管理しなければならない煩雑さが生じる。例えば、それぞれを衣服のポケットに入れておくとか、ひも、ワイヤ、チェーン等の連結具でそれぞれを衣服や身体につないでおくことになる。しかし、複数の連結具でつないでおくのは、煩雑であるし、紛失した場合にも気付きにくいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、笛と一括して管理することができるようにした船舶または雪上走行車両用電子キーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、船舶や雪上走行車両に搭載されたイモビライザと通信して該イモビライザの機能を設定および解除する電子キーが、ケーシングを有し、合図用の笛を前記ケーシングと一体に形成している点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記ケーシングが樹脂成型されており、電子キー本体であるIC基板の収容室と、笛の共鳴室とに区画されている点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記IC基板に、送受信回路、アンテナ、電源、およびCPUが組み込まれている点に第3の特徴がある。
【0009】
さらに、本発明は、船舶や雪上走行車両に搭載されたイモビライザと通信して前記イモビライザの機能を設定および解除する電子キーが、合図用の笛と一体化され、該笛のケーシング内部に組み込まれている点に第4の特徴がある。
【0010】
またさらに本発明は、笛の吹き口が設けられたケーシングの一端部とは反対側の他端部にひも通し孔を備えている点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
第1の特徴を有する本発明によれば、電子キーに笛が一体化されているので、保管が容易であり、電子キーと笛とを個別に保管していた煩雑さが解消される。小型船舶安全備品としての笛を、船舶を始動させるために必須の電子キーと一体化したので、笛をどこかに置き忘れたまま出航することを確実に無くすることができる。同様に、広い雪原やスキー場等を走行する雪上走行車両つまりスノーモービルにおいても合図用笛を電子キーと一体化することにより常時笛を携帯できるようになる。
【0012】
第2の特徴を有する本発明によれば、電子キー本体と笛とをケーシングを区画するだけで構成できる。
【0013】
第3の特徴を有する本発明によれば、IC基板に電子キーとして必須の部品を搭載して電子キーを小型化できる。
【0014】
第4の特徴を有する本発明によれば、小型船舶安全備品としての笛のケーシングを拡張して電子キーを収容するようにしたので、笛と電子キーのケーシングを個別に製作する煩雑さが改善される。
【0015】
第5の特徴を有する本発明によれば、ひも通し孔に通されるひもで電子キーを着衣や身体などにつないだ状態で、笛を吹き鳴らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図3は小型船舶のキーレスエントリシステムの構成図である。このキーレスエントリシステムは、電子キー1と制御装置2を含んでいる。電子キー1は後述する笛と一体又は笛形状のケース内に組み込まれた無線送受信機であり、固有の識別情報(ID情報)を有する。制御装置2は、電子キー1との交信に基づいて行われるイモビライザ機能を備えることができる。
【0017】
図4は、制御装置2を搭載した小型水上ジェット推進艇の側面図である。図4において、小型艇40は、艇体41の前部に操舵ハンドル46を備え、操舵ハンドル46の後方には鞍乗り式のシート47を備える。艇体41の中央部にはエンジン48が配置され、艇尾49にはジェット推進機室51が設けられる。ジェット推進機室51のジェット推進機52は、艇底の入口53から後方へ延びたハウジング54内のインペラ55を備える。
【0018】
小型艇40を推進する際には、エアボックス50内に吸込まれてターボチャージャ57を通過したエアと燃料との混合ガスをエンジン48に導入する。エンジン48でインペラ55を回転させることにより、入口53から吸引した水をハウジング54を通してジェット水としてステアリングノズル58に導く。
【0019】
操舵ハンドル46の周囲に設けられたメータボックス62内には電子キー1と交信して小型艇40の盗難防止用イモビライザの制御装置2が収容されている。
【0020】
図5は電子キー本体の構成を示すブロック図である。電子キー1は、受信回路11、送信回路12、CPU13、バッテリと電源回路を含む電源14を有する。CPU13は、その機能として、リクエスト信号照合部131、応答信号生成部132を備える。受信回路11および送信回路12、並びにCPU13は電源14で駆動される。受信回路11は、受信アンテナ11aを有し、この受信アンテナ11aを通じて信号を受信する。リクエスト信号照合部131は、受信回路11で受信した信号が制御装置2から送信されるリクエスト信号Srであるか否かを判断し、受信した信号がリクエスト信号Srならば応答信号生成部132にID要求信号を出力する。応答信号生成部132は、リクエスト信号照合部131からのID要求信号に基づいて、図示しないROMに記憶されているIDデータDtを読み出し、送信回路12に供給する。送信回路12は送信アンテナ12aを通じて、IDデータDtを含む、リクエスト信号Srに対する応答信号Saを送信する。
【0021】
図6は、制御装置2の構成を示すブロック図である。制御装置2は、受信回路201、送信回路202、電源203、CPU204、ECU205、および駆動回路206を含んでいる。制御装置2に対する指令等の入力手段として、起動スイッチ207およびメインスイッチ208が設けられる。
【0022】
メインスイッチ208は船舶の始動用に設けられる。起動スイッチ217は電子キーシステムつまりキーレスエントリシステムを起動するために設けられる。ECU206は船舶の駆動源であるエンジンの燃料噴射制御や点火制御を行う。駆動回路205は盗難防止のために船舶の操舵輪の動きを規制するロック手段としてのソレノイド等のアクチュエータを駆動する。
【0023】
電源203は、バッテリと電源回路とを含み、CPU204や、受信回路201、送信回路202等に電力を供給する。CPU204は、起動スイッチ207やメインスイッチ208のオン操作に基づいて図示しないROMからリクエストデータDrを読み出して送信回路202に出力する。
【0024】
送信回路202は、CPU204から供給されたリクエストデータDrに基づいて形成されたリクエスト信号Srを送信する。受信回路201は、受信アンテナ201aを通じて電子キー1から送信される応答信号Saを受信する。
【0025】
CPU204は、受信回路201から供給された信号が応答信号Saであるかどうかを照合し、さらに応答信号Saであった場合に、この応答信号Saに含まれるIDデータDtと図示しないメモリに登録されているIDデータとが一致しているかどうかを照合する。CPU204は、送信回路202からリクエスト信号Srを送出した後、応答信号Saの到来の有無を監視する。
【0026】
起動スイッチ207のオン操作に応答して送信されたリクエスト信号Srに対する応答信号Saが検出された場合は、駆動回路205にロック解除信号を出力し、ECU205に許可信号を出力する。ロック解除信号に応答して操舵輪ロックは解除され、ECU204は動作可能になってエンジンは始動される。
【0027】
図1は、電子キー1の透視斜視図、図2は側面断面図である。図1に示した電子キー1は緊急時に使用できる笛を一体的に備えている。電子キー1は樹脂成型品であるケーシング3を備える。ケーシング3は、隔壁4で仕切られた二つの部屋31,32を備えている。一方の部屋31は回路収容室であり、他方の部屋32は笛の共鳴室を構成する。回路収容室31には、図5に示した回路を含むIC基板5を収容するとともに、このIC基板5の回路をオン・オフするスイッチ6を装着している。共鳴室32の端部には、吹き口7が形成され、共鳴室32の他端つまり隔壁4の近傍には放音口8が形成される。
【0028】
このように構成された電子キー1は、船舶の制御装置と通信してイモビライザ機能を設定および解除させる。また、電子キー1に一体に設けられている笛は、これを吹き鳴らして合図を送るのに使用される。
【0029】
電子キー1のケーシング3に突出部33を形成して、そこにひも通し孔34を設けてもよい。このひも通し孔34は、電子キー1を衣服や身体につなぎ止めるためのひもやチェーン等の通し孔として使用することができる。
【0030】
なお、ひも通し孔34は突出部33に設けるのに限らず、ケーシング3の本体側を貫通するように形成してもよい。図7は、電子キーの変形例に係る外観斜視図、図8は同要部側面断面図であり、図2と同符号は同一または同等部分を示す。図6,7において、電子キー1には、ケーシング3の端部を貫通するひも通し孔34aを設けている。ひも通し孔34aを穿っている部分は図8に示すようにケーシング3の肉厚を厚くするのがよい。ひも等を通しやすく、かつひも等との接触面積を大きくすると耐摩耗性が向上するからである。
【0031】
電子キー1は上記外観形状に限らない。図9は円筒形の電子キーに係る外観斜視図である。図9に示した電子キー1は小径部9を有する円筒形のケーシング3を有し、小径部9に吹き口7を形成する。図中部分Aが電子キー本体部、部分Bが笛部である。
【0032】
なお、上述した電子キーはひも等を通して衣服等につなぎ止めるのに好適な構成を有しているが、このような管理形態に限らず着衣のポケット等に収納してあってもよい。図10は、救命胴衣(ライフジャケット)の正面図である。この種のライフジャケット10にはポケット11が設けられていることが多い。電子キー1はこのようなライフジャケット10のポケット11に収納して管理しておくようにすれば、必ずしも、ひも通し孔34,34a等は必要ない。
【0033】
本発明は、電子キーと笛とを一体化したが、笛に代えて、アラーム(警報音装置)を設けてもよい。アラームは電池、ブザーおよびブザー起動用スイッチを備えた周知の警報装置(例えば、特開平11−219483号公報参照)の構成を適用することができる。
【0034】
さらに、アラームに代えて、あるいはアラームと併用して電球や発光ダイオードなどを点滅させる発光装置を電子キーと一体に構成してもよい。警報音と発光装置を同時に作動させる装置は、例えば、特開2005−52626号公報の構成を適用することができる。
【0035】
なお、本発明は、電子キーを笛と一体化させたものであるが、従来一般に認識されている笛の形状を損なうことなく、その形状を変形させて電子キーを組み込む空間を形成してもよい。例えば、従来既存の笛のケーシング長さを延長させて電子キー収容室を確保し、笛部は従来品の形状を維持することができる。こうすれば、従来実施されている笛の製造工程を大きく変更することなく、電子キーのケーシングを製造することができる。例えば、図9に示した例では、笛部Bを延長させて部分Aを形成すれば、笛一体型電子キーのケーシングを容易に製造することができる。
【0036】
上述の実施形態では、小型船舶に採用されているイモビライザの機能を設定および解除する電子キーに関して説明した。しかし、本発明の電子キーは、例えば、特開平9−221093号公報に記載されたような雪上走行車両に搭載されるイモビライザの機能を設定および解除するものにも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子キーの透視斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電子キーの側面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電子キーのシステム構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るイモビライザ機能を搭載した水上小型艇の側面図である。
【図5】電子キー本体の構成を示すブロック図である。
【図6】船舶側に設けられる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】電子キーの変形例に係る外観斜視図である。
【図8】電子キーの変形例に係る要部側面断面図である。
【図9】円筒形の電子キーに係る外観斜視図である。
【図10】本発明の電子キーを保管するライフジャケットの正面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…電子キー、 2…制御装置、 3…ケーシング、 4…隔壁、 5…IC基板、 6…スイッチ、 7…吹き口、 8…放音口、 11a…受信アンテナ、 12a…送信アンテナ、 13…CPU、 14…電源、 31…回路収容室、 32…共鳴室、 34…ひも通し孔、 40…小型艇

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載されたイモビライザと通信して該イモビライザの機能を設定および解除する電子キーにおいて、
ケーシングを有し、合図用の笛を前記ケーシングと一体に形成していることを特徴とする電子キー。
【請求項2】
雪上走行車両に搭載されたイモビライザと通信して該イモビライザの機能を設定および解除する電子キーにおいて、
ケーシングを有し、合図用の笛を前記ケーシングと一体に形成していることを特徴とする電子キー。
【請求項3】
前記ケーシングが樹脂成型されており、電子キー本体であるIC基板の収容室と、笛の共鳴室とに区画されていることを特徴とする請求項1または2記載の電子キー。
【請求項4】
前記IC基板に組み込まれた送受信回路、アンテナ、電源、およびCPUを具備していることを特徴とする請求項3記載の電子キー。
【請求項5】
船舶に搭載されたイモビライザと通信して前記イモビライザの機能を設定および解除する電子キーにおいて、
合図用の笛と一体化され、該笛のケーシング内部に組み込まれていることを特徴とする電子キー。
【請求項6】
雪上走行車両に搭載されたイモビライザと通信して前記イモビライザの機能を設定および解除する電子キーにおいて、
合図用の笛と一体化され、該笛のケーシング内部に組み込まれていることを特徴とする電子キー。
【請求項7】
前記ケーシングにはひも通し孔が設けられ、該ひも通し孔は、ケーシングの一端部に設けられた前記笛の吹き口とは反対側のケーシング他端部に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子キー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−120061(P2007−120061A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310944(P2005−310944)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】