説明

電子コンパスおよび電子コンパスの零点誤差を求める方法

本発明は、電子コンパスの零点誤差(Hx0,Hy0)を求める方法に関する。この方法は、3軸磁気センサを用いて電子コンパスの第1座標系における第1磁界強度を測定するステップと、地表面に平行な第2座標系(x,y)における伏角補正された第2磁界強度(200)を第1磁界強度から計算するステップと、伏角補正された第2磁界強度(200)に当てはめ関数(210)を当てはめるステップと、当てはめた当てはめ関数(210)から零点誤差(Hx0,Hy0)を求めるステップとを有する。本発明は、電子コンパスを動作させる方法にも関する。この方法は、磁気センサを用いて測定された第1磁界強度から第2座標系(x,y)における伏角補正された磁界強度(Hx0,Hy0)を計算するステップと、伏角補正された第2磁界強度(Hx0,Hy0)から上述した方法で求めた零点誤差(Hx0,Hy0)を減算することによって零点補正される第3磁界強度(Bx,By)を計算するステップと、南北方向に対して第2座標系(x,y)の軸(x)が偏差する方位角を計算するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子コンパスの零点誤差の測定方法、電子コンパスの動作方法並びに電子コンパスに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサは、地磁気の測定に用いることができ、電子コンパスにおいて使用するのに適している。地磁気は地表面に平行なので、互いに垂直な少なくとも2つの軸に沿って地磁気を測定することができる磁気センサが必要とされる。この場合、電子コンパスは地表面に平行に維持されなければならない。3軸磁気センサを用いた場合には、地表面に対する電子コンパスの伏角を計算して求めることができる。
【0003】
地磁気の強さはわずか数十μTしかないので、非常に感度の高い磁気センサが必要とされるが、このために磁気センサは干渉場に対して弱い。このような干渉場は、例えば近傍の導電線または強磁性材料によって引き起こされ、地磁気に重畳される付加的な磁界成分を生じさせる。このことによって、測定された信号を評価する際に誤差が生じてしまい、ひいては方位の検出に誤差が生じてしまう。
【0004】
文献US2007/0276625A1から公知の、3軸磁気センサを用いた電子コンパスは零点誤差を自動的に補正することができる。このために、電子コンパスはその種々の向きにおいて測定される磁界強度を収集し、これらの磁界強度の空間成分は3次元デカルト座標系においてプロットされる。続いて、3次元座標系における測定値の分布を球によって近似する。座標系の原点からの球の中心点のずれからは、ノイズに起因する電子コンパスの零点誤差が推定される。この3次元の磁気センサデータを直接処理するために必要なアルゴリズムは、複雑且つ誤差に弱い。
【0005】
発明の開示
本発明の課題は、電子コンパスの零点誤差を求める、改善された方法を提供することである。当該の課題は請求項1に記載の方法によって解決される。
【0006】
本発明の別の課題は、電子コンパスを動作させる、改善された方法を提供することである。当該の課題は請求項9に記載の方法によって解決される。
【0007】
本発明の別の課題は、改善された電子コンパスを提供することである。当該の課題は請求項11に記載の電子コンパスによって解決される。
【0008】
有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
電子コンパスの零点誤差を求める、本発明による方法は、3軸磁気センサを用いて電子コンパスの第1座標系における複数の第1磁界強度を測定するステップと、地表面に平行な第2座標系における伏角が補正された複数の第2磁界強度を複数の第1磁界強度から計算するステップと、伏角補正された複数の第2磁界強度に当てはめ関数を当てはめるステップと、当てはめた当てはめ関数から零点誤差を求めるステップとを有する。有利には、この方法によって、零点誤差を求めることが三次元から二次元の問題に還元される。これによって、当てはめ関数を当てはめるのが簡単になる。有利には、第2磁界強度は既に伏角補正されており、零点誤差を求めることが簡単になる。
【0010】
有利には、複数の第1磁界強度のそれぞれに対して伏角補正された複数の第2磁界強度を計算するために、第2座標系に対する第1座標系のロール角及びピッチ角を求めるステップと、第1磁界強度、ロール角及びピッチ角から伏角補正された第2磁界強度を計算するステップとが行われる。
【0011】
本発明の方法の別の実施形態によれば、ロール角及びピッチ角を求めるために、3軸加速度センサを用いて第1座標系における加速度値を測定するステップと、第2座標系に対する第1座標系のロール角及びピッチ角を計算するステップとが行われる。有利にはこれによって、地表面に対する電子コンパスの向きが磁気センサから独立している加速度センサを用いて検出され、これにより方法の堅牢性が高まるのである。
【0012】
1つの実施形態では、測定された加速度値は処理前にローパスフィルタを用いてフィルタリングされる。これによって、測定データを採取した時の運動ノイズ(Storbewegung)を抑圧することができ、これにより方法の確実性が高まるのである。
【0013】
有利には、当てはめ関数として円関数が用いられる。
【0014】
本発明の方法の1つの実施形態によれば、複数の第1磁界強度を採取した時、電子コンパスは例えば揺動されるように動かされる。これは、例えば携帯電話のようなポータブルな装置に適している。
【0015】
本発明による電子コンパスを動作させる方法は、上述した方法に従って電子コンパスの零点誤差を求めるステップと、3軸磁気センサを用いて電子コンパスの第1座標系における第1磁界強度を測定するステップと、地表面に平行な第2座標系における伏角補正された第2磁界強度を第1磁界強度から計算するステップと、伏角補正された第2磁界強度から零点誤差を減算することによって零点補正される第3磁界強度を計算するステップと、南北方向に対する第2座標系の軸のずれを示す方位角を計算するステップとを有する。有利には、本発明の方法に従う電子コンパスにより求められた方位角が零点補正される、すなわちあり得る外部磁界の影響から電子コンパスが解放される。
【0016】
本発明による電子コンパスは、3軸磁気センサ及び3軸加速度センサを含んでおり、上述した零点誤差を求める方法を行うように構成されている。
【0017】
有利には、電子コンパスは上述したこの電子コンパスを動作させる方法を行うようにも構成されている。
【0018】
1つの実施形態によれば、磁気センサは少なくとも1つのGMRセンサを含んでいる。
【0019】
他の実施形態によれば、加速度センサは少なくとも1つのマイクロメカニカル加速度センサを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電子コンパスを概略的に示した図
【図2】電子コンパスの内部を概略的に示した図
【図3】電子コンパスが360°回転した場合の、伏角補正された第2磁界強度の曲線を概略的に示した図
【図4】伏角補正された第2磁界強度の曲線を代替的に示した図
【図5】零点補正されていない第2磁界強度と零点補正された第3磁界強度とを概略的に示した図
【図6】零点誤差を求める方法の概略的なフローチャート
【図7】伏角補正された磁界強度を計算する方法の概略的なフローチャート
【図8】ロール角及びピッチ角を求める方法の概略的なフローチャート
【図9】電子コンパスを動作させる方法の概略的なフローチャート
【0021】
発明を実施するための形態
図1には電子コンパス100の概略図が示されている。この電子コンパス100は、検出した方位を表示するためのディスプレイ101を備えていてもよい。この電子コンパス100は、操作部位102、例えば1つまたは複数の操作ボタンを備えていてもよい。この操作部位102によって、電子コンパス100を操作することができる。この電子コンパス100は、他のポータブルな装置又はポータブルではない装置、例えば携帯電話、PDA(携帯情報端末)、ナビゲーション装置又は腕時計に組み込むことができる。
【0022】
第1座標系KS’は、電子コンパス100に固定された座標系として考えることができる。この第1座標系KS’は、相互に直交する3つの軸x’、y’、z’を有している。x’軸は電子コンパス100から前方へ、y’軸は側方へ、z’軸は下方へ向かって延びている。x’軸を中心とする電子コンパスの回転は、ロール角θの変化に相当する。y’軸を中心とする電子コンパス100の回転は、ピッチ角φの変化に相当する。z’軸を中心とする電子コンパス100の回転は、方位角αの変化に相当する。
【0023】
図2には、電子コンパス100に含まれている構成要素が概略的に示されている。この電子コンパス100は、3軸磁気センサ110及び3軸加速度センサ120を備えている。その上、3軸磁気センサ110及び3軸加速度センサ120に接続された評価ユニット130も含まれている。磁気センサ110は、例えばホールプローブ、GMRセンサ、フラックスゲートセンサ又は他の適切な磁気センサを含んでいる。加速度センサ120は、例えばマイクロメカニカル加速度センサを含んでいる。評価ユニット130は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又は他の適切な電子素子を含んでいる。当業者であれば、適切な構成素子は従来技術から周知である。
【0024】
磁気センサ110は、電子コンパス100に固定された第1座標系KS’の3つの空間方向全てにおいて磁界の強さを測定するように構成されている。従って、磁気センサ110は、x’軸方向の成分Mx’とy’軸方向の成分My’とz’軸方向の成分Mz’とを有する第1磁界強度M’を測定する。加速度センサ120は、電子コンパス100に固定された第1座標系KS’の3つの空間方向全てにおいて電子コンパス100に影響を及ぼす加速度の値を測定するように構成されている。従って、加速度センサ120は、x’軸方向の成分ax’とy’軸方向の成分ay’とz’軸方向の成分az’とを有する加速度値a’を測定する。
【0025】
静止している電子コンパス100に重力加速度のみが影響を及ぼし、この重力加速度は地表面900に垂直に掛かっているので、評価ユニット130は、電子コンパス100に固定された第1座標系KS’の、第2座標系KSに対する向きを、測定された加速度値a’の成分ax’、ay’、az’から軸x、y、zを用いて推定することができる。第2座標系KSのx−y平面は、地表面900に平行である。第2座標系のx軸は、地表面900の南北方向に対して第1座標系KS’のx’軸と同じ方位角αだけずれている。例えば、評価ユニット130は、第2座標系KSをx軸及びy軸を中心として回転させて第1座標系KS’へ移行させるために必要なロール角θ及びピッチ角φを計算することができる。計算は、例えば次の式に従って行うことができる。
θ=1/tan(ay’/sqrt(ax’ ax’+az’ az’));
φ=1/tan(ax’/sqrt(ay’ ay’+az’ az’)). (1)
また、評価ユニット130は、第1座標系KS’における第1磁界強度M’から、第2座標系KSのx軸成分Hx及びy軸成分Hyを有する第2磁界強度Hを計算することができる。計算は、例えば次の式に従って行うことができる。
Hx=Mx’cos(φ)+My’sin(φ)sin(θ)−Mz’sin(φ)cos(θ);
Hy=My’cos(θ)+Mz’sin(θ). (2)
評価ユニット130は、第2座標系KSのz軸方向における第2磁界強度Hの成分Hzも計算することができる。地磁気は地表面900に平行である、つまり第2座標系KSのx−y平面を走っているので、第2磁界強度Hの成分Hzはゼロに等しい。そうでなければ、誤差の存在が推定される。
【0026】
地磁気は地表面900の南北方向を走っているので、評価ユニット130は第2磁界強度Hの成分Hx,Hyから方位角αの値、つまり第2座標系KSの南北方向からのx軸方向のずれを推定することができる。方位角αの計算は、例えば次の式に従って行うことができる。
α=arctan(Hy/Hx). (3)
図3には、方位角αに依存して第2磁界強度Hの成分Hx,Hyの予想される曲線が示されている。電子コンパス100が南を向いている場合には、第2座標系KSのx方向の成分Hxが最大となるが、y方向の成分Hyはゼロに等しい。電子コンパス100が西を向いている場合、第2磁界強度Hのx成分はゼロに等しいが、y成分が最大となる。電子コンパス100が北を向いている場合には、第2磁界強度Hのx成分が最大となるが、y成分はゼロに等しい。電子コンパス100が東を向いている場合には、y成分Hyが最大となるが、x成分Hxはゼロに等しい。
【0027】
図4には、伏角補正された第2磁界強度Hの成分Hx,Hyの予想される曲線が代替的に示されている。この図4では、予想される第2磁界強度HがHx−Hy平面において方位角αの関数として媒介変数で表示されている。これは、第2磁界強度Hの成分Hx,Hyのあり得る値の組合せによって形成される円で表される。
【0028】
地磁気が電子コンパス100の周辺において磁気ノイズ源によって弱められるか又は局所的に妨害される場合には、電子コンパス100によって求められる第2磁界強度Hは、Hx−Hy平面において零点を中心とする円上には現れず、中心点が零点に対して零点誤差Hx0,Hy0だけずれている円上に現れる。これは、図5に概略的に示されている。図5には、第2磁界強度Hの複数の測定値200が一例としてプロットされているHx−Hy平面の一部が示されている。どの図示された測定値200も、地表面900に対して電子コンパス100をいろいろな向きにした時に測定されたものである。電子コンパス100の周辺に磁気ノイズ場が存在しているせいで、測定値200はHx−Hy平面の原点を中心とする円上にはない。これらの測定された測定値200が式(3)に従って方位角αを求めるために用いられた場合には、電子コンパス100の周辺の磁気ノイズのせいで誤った方位角αが求められてしまう。それ故に第一に、測定値200は零点誤差Hx0,Hy0の値だけ補正する必要がある。
【0029】
測定値200は零点誤差Hx0,Hy0の周辺に環状に分布しているので、この零点誤差Hx0,Hy0を求めるために、当てはめ関数210を測定値200に当てはめることができる。このことによって、当てはめた当てはめ関数210から零点誤差Hx0,Hy0を求めることができる。当てはめ関数として、例えば半径が予め固定的に決まっているか又は調整可能である円関数が適している。当てはめ関数として円関数が用いられる場合には、当てはめた円関数の中心として零点誤差Hx0,Hy0が得られる。続いて、そのように求められた零点誤差Hx0,Hy0が測定値200から減算されて、予想される測定値分布215に沿ってHx−Hy平面の原点の周囲に存在する零点補正された第3磁界強度Bx,Byを得ることができる。続いて、零点補正された第3磁界強度Bx,Byからは、次の式に従って正確な方位角αを計算することができる。
α=arctan(By/Bx) (4)
図6では、電子コンパス100によって行うことができるような、電子コンパス100の零点誤差を求める方法300を説明する。第1の方法ステップ310では、電子コンパス100は3軸磁気センサ110を用いて、電子コンパス100に固定された第1座標系KS’における、成分Mx’、My’、Mz’を有する複数の第1磁界強度M’を測定する。有利には、第1磁界強度M’は、電子コンパス100をいろいろな向きにした時に測定される。例えば、複数の第1磁界強度M’を測定する間、電子コンパス100を回転又は揺動させてもよい。
【0030】
第2の方法ステップ320では、地表面900に平行な第2座標系KSにおける、成分Hx,Hyを有する伏角補正された複数の第2磁界強度Hが複数の第1磁界強度M’から計算される。これは、例えば図7に基づき以下に記載する方法400によって行うことができる。
【0031】
第3の方法ステップ330では、当てはめ関数210は、伏角補正された複数の第2磁界強度Hに当てはめられる。当てはめ関数210として、例えば円関数を用いることができる。円の半径は固定的に決まっており、予想される地磁気強度の大きさに相当するか、又は伏角補正された第2磁界強度Hの値にあわせることができる。
【0032】
第4の方法ステップ340では、当てはめた当てはめ関数210から零点誤差Hx0,Hy0が求められる。当てはめ関数210として円関数が用いられる場合には、当てはめた円関数の中心として零点誤差Hx0,Hy0が得られる。
【0033】
図7には、第1座標系KS’における複数の第1磁界強度M’から、第2座標系KSにおける伏角補正された複数の第2磁界強度Hを計算する方法400のフローチャートが概略的に示されている。この方法400は第1磁界強度M’に対して行われ、この第1磁界強度M’から伏角補正された第2磁界強度Hを計算している。そのために、第1の方法ステップ410では、第2座標系KSに対する第1座標系KS’のロール角θ及びピッチ角φが求められる。これは、例えば図8に基づき以下に説明する方法500によって行うことができる。
【0034】
第2の方法ステップ420では、第1磁界強度M’、ロール角θ及びピッチ角φから伏角補正された第2磁界強度Hが計算される。これは、例えば上述した式(2)によって行うことができる。
【0035】
図8には、ロール角θ及びピッチ角φを求める方法500のフローチャートが概略的に示されている。この方法は、第1座標系KS’における、成分ax’、ay’、az’を有する加速度値a’を3軸加速度センサ120を用いて測定する方法ステップ510を含んでいる。
【0036】
次の方法ステップ520では、測定された加速度値a’から、第2座標系KSに対する第1座標系KS’のロール角θ及びピッチ角φが計算される。この計算は、例えば上述した式(1)によって行うことができる。
【0037】
ロール角θ及びピッチ角φは、有利には、伏角補正された第2磁界値Hに換算されるべきそれぞれの測定値M’に対して別に求める必要がある。このことは、地表面900に対して電子コンパス100を同じ向きにした時に、前述の磁界値M’と共に加速度値a’も記録されることを意味する。
【0038】
方法500の1つの発展形態では、方法ステップ510と520との間で、測定された加速度値a’をローパスフィルタに通して、測定データを採取した時の運動ノイズを抑圧することができる。電子コンパス100が例えば強く揺り動かされた場合には、遠心力が生じる。この遠心力は、電子コンパス100に影響を及ぼす重力加速度に重畳し測定結果を狂わせる。ローパスフィルタを利用することによって、このような狂いがフィルタリングされて取り除かれる。
【0039】
図9には、電子コンパス100を動作させる方法600のフローチャートが概略的に示されている。この方法600は、電子コンパス100の零点誤差Hx0,Hy0を求める第1の方法ステップ610を含んでいる。このことは、例えば図6に基づき上で説明した方法300によって行うことができる。
【0040】
第2の方法ステップ620では、電子コンパス100の第1座標系KS’における第1磁界強度M’が3軸磁気センサ110を用いて測定される。
【0041】
第3の方法ステップ630では、地表面900に平行な第2座標系KSにおける伏角補正された第2磁界強度Hが第1磁界強度M’から計算される。このことは、例えば図7に基づき上で説明した方法400によって行うことができる。
【0042】
第4の方法ステップ640では、伏角補正された第2磁界強度Hから零点誤差Hx0,Hy0を減算することによって、零点補正された第3磁界強度Bが計算される。
【0043】
第5の方法ステップ650では、地表面900の南北方向に対する第2座標系KSのx軸のずれを示す方位角αが成分Bx,Byを有する第3磁界強度Bから計算される。このことは、例えば式(4)によって行うことができる。そのように求められた方位角αを、例えば電子コンパス100のディスプレイ101に表示することができる。
【0044】
電子コンパス100は、これを操作する使用者の指示で、または周期的に、零点誤差を求める上述した方法を行うことができる。電子コンパス100は、零点誤差を求める上述した方法を持続的に行ってもよい。この実施形態では、電子コンパス100によって測定されるそれぞれの測定値は零点誤差を持続的に補正するために用いられる。それまでの測定値の特性から大きなずれを示す測定データをフィルタリングして除去し、短期的なノイズを抑圧するようにしてもよい。
【0045】
電子コンパス100の零点誤差を求める上述した方法は、電子コンパス100の内部ノイズ及び外部ノイズを補償するのに適している。内部ノイズは、電子コンパス100の内部で形成されたノイズ磁界に起因する。外部ノイズは、電子コンパス100の周辺に存在するノイズ磁界に起因する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子コンパス(100)の零点誤差(Hx0,Hy0)を求める方法において、
3軸磁気センサ(110)を用いて、前記電子コンパス(100)の第1座標系(KS’)における複数の第1磁界強度(Mx’,My’,Mz’)を測定するステップと、
前記複数の第1磁界強度(Mx’,My’,Mz’)から、地表面(900)に平行な第2座標系(KS)における伏角補正された複数の第2磁界強度(Hx,Hy)を計算するステップと、
伏角補正された前記複数の第2磁界強度(Hx,Hy)に当てはめ関数(210)を当てはめるステップと、
前記当てはめた当てはめ関数(210)から前記零点誤差(Hx0,Hy0)を求めるステップと
を有することを特徴とする、電子コンパス(100)の零点誤差(Hx0,Hy0)を求める方法。
【請求項2】
前記複数の第1磁界強度(Mx’,My’,Mz’)のそれぞれに対して伏角補正された前記複数の第2磁界強度(Hx,Hy)を計算するために、
前記第2座標系(KS)に対する前記第1座標系(KS’)のロール角(θ)及びピッチ角(φ)を求めるステップと、
前記第1磁界強度(Mx’,My’,Mz’)とロール角(θ)とピッチ角(φ)とから、伏角補正された前記第2磁界強度(Hx,Hy)を計算するステップと
を行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
伏角補正された前記第2磁界強度(Hx,Hy)の計算を、次の式に従って行う、
Hx=Mx’cos(φ)+My’sin(φ)sin(θ)−Mz’sin(φ)cos(θ);
Hy=My’cos(θ)+Mz’sin(θ)、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ロール角(θ)及びピッチ角(φ)を求めるために、
3軸加速度センサ(120)を用いて、前記第1座標系(KS’)における加速度値(ax’,ay’,az’)を測定するステップと、
前記第2座標系(KS)に対する前記第1座標系(KS’)のロール角(θ)及びピッチ角(φ)を計算するステップと
を行う、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記ロール角(θ)及びピッチ角(φ)を、次の式に従って計算する、
θ=1/tan(ay’/sqrt(ax’ ax’+az’ az’));
φ=1/tan(ax’/sqrt(ay’ ay’+az’ az’))、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記測定された加速度値(ax’,ay’,az’)を、処理前にローパスフィルタを用いてフィルタリングする、
請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
当てはめ関数(210)として円関数を用いる、
請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記複数の第1磁界強度(Mx’,My’,Mz’)を採取する時、前記電子コンパス(100)を、例えば揺動するように動かす、
請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
電子コンパス(100)を動作させる方法において、
請求項1から8のいずれか1項記載の方法に従って該電子コンパス(100)の零点誤差(Hx0,Hy0)を求めるステップと、
3軸磁気センサ(110)を用いて、該電子コンパス(100)の第1座標系(KS’)における第1磁界強度(Mx’,My’,Mz’)を測定するステップと、
該第1磁界強度(Mx’,My’,Mz’)から、地表面(900)に平行な第2座標系(KS)における伏角補正された第2磁界強度(Hx,Hy)を計算するステップと、
該伏角補正された第2磁界強度(Hx0,Hy0)から前記零点誤差(Hx0,Hy0)を減算することによって、零点補正された第3磁界強度(Bx,By)を計算するステップと、
南北方向に対する前記第2座標系(KS)の軸(x)のずれを示す方位角(α)を計算するステップと
を有することを特徴とする、電子コンパス(100)を動作させる方法。
【請求項10】
前記方位角(α)を、前記第3磁界強度(Bx,By)から次の式に従って計算する、
α=arctan(By/Bx)、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
3軸磁気センサ(110)及び3軸加速度センサ(120)を備えており、
請求項1から8のいずれか1項記載の、零点誤差(Hx0,Hy0)を求める方法を行うことを特徴とする、電子コンパス(100)。
【請求項12】
請求項9または10記載の方法が行われる、請求項11記載の電子コンパス(100)。
【請求項13】
前記3軸磁気センサ(110)は少なくとも1つのGMRセンサを含んでいる、請求項11または12記載の電子コンパス(100)。
【請求項14】
前記3軸加速度センサ(120)は、少なくとも1つのマイクロメカニカル加速度センサを含んでいる、請求項11から13のいずれか1項記載の電子コンパス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−506548(P2012−506548A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532551(P2011−532551)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060927
【国際公開番号】WO2010/046158
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】