説明

電子デバイスにおいて有用な高い熱伝導率を有する熱伝導性ポリイミドフィルム複合材料

【課題】電子デバイスにおいては、熱の除去が、すべてのデバイス設計者の重要な考慮事項である。誘電体の片面(または両面)に金属層が載せられている、通常、電子デバイスの誘電体層または前駆体金属積層板として有用な、熱伝導性、耐熱性ポリイミド複合材料を提供すること。
【解決手段】本発明のポリイミド複合材料は、その中に分散された熱伝導性フィラー粒子を40〜85重量%の範囲で含有する。これらのフィルム複合材料は、良好な誘電強度、良好な熱伝導率、および場合により良好な付着力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスまたは同様の種類の用途において、シート接着剤、および/または基板として有用である熱伝導性ポリイミド複合材料の提供を目的とする。これらの電子デバイスは、高度に充填されたポリイミド複合材料層、および、ポリイミド複合材料層の片面、または両面に金属が存在している金属層を備えたシート積層板から作製することができる。より具体的には、本発明のポリイミド複合材料層は、誘電体として使用することができる。ポリイミドは、ポリイミド結合剤中に45から85重量%の量分散された無機のフィラー材料を含む。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物粒子、特に、ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウムおよび窒化ホウ素は、良好な熱伝導率を有することが知られており、ポリイミドを含む多くのバインダ高分子のフィラーとして使用されている。例えば、そのようなサブミクロンサイズの酸化アルミニウム粒子は、ポリイミドシートにおける熱伝導性が必要とされる商業的な用途において、フィラー材料として一般的に使用されている。しかし、電子デバイスは、より多くのエネルギーおよびより多くの熱を発生し、熱を上手に処理することがより重要であることを要求する。したがって、より高い熱伝導率を有し、かつ/または熱インピーダンスを低減することができるポリイミド複合材料に対する要望が存在する。
【0003】
Fraivilligの特許文献1には、(ポリイミドマトリックス中に分散された)酸化アルミニウム粒子を含む熱伝導性ポリイミドフィルムを用いた改善された熱伝導性積層板が開示されており、複合材料マトリックスは、分離接着剤層(separate adhesive layer)を用いて金属基板上に層状に貼り付けられている。しかし、通常、開示されているポリイミド複合材料は、熱伝導性フィラーを約40重量%未満含有している複合材料である。そのようなものとして、これらの複合材料は、時々熱伝導率が低すぎて、いくつかの電子工業用途において役立つことができない。
【0004】
Oteyの特許文献2には、その中に熱伝導性フィラー材料を含んでいないポリイミドフィルムを使用した熱電モジュールデバイスが開示されており、隣接のセラミック基板から熱を(かなり不完全に)伝導するために、フィラーが充填されていないポリイミドフィルムが使用されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,208,631号明細書
【特許文献2】米国特許第6,410,971号明細書
【特許文献3】米国特許第5,166,308号明細書
【特許文献4】米国特許第5,298,331号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な熱伝導率を有するポリイミドフィルム複合材料を対象とする。これらの複合材料フィルムは、電子デバイス中の熱伝導性誘電体層として特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合材料は、その中に熱伝導性フィラー粒子を分散させたポリイミド結合剤を含む。ポリイミド結合剤成分中のフィラー成分の充填重量は、次の数、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85重量%の、その数を含めていずれか2つの間にある。
【0008】
本発明のポリイミド結合剤は、次の数値、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110および100℃を含めたいずれか2つの間のガラス転移温度を有することができ、あるいは250、270、290、310、330、350、370、390、410、430、450、470、490、510、530または550℃の間のガラス転移温度を有することができる。
【0009】
本発明のポリイミド複合材料は、ポリイミド成分および熱伝導性フィラー成分から得られる。本発明のポリイミド成分は、二無水物成分およびジアミン成分から誘導され、二無水物成分は、通常、芳香族、脂肪族、または脂環式の二無水物のどれでもよく、ジアミン成分は、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、またはこれらのいかなる組合せをも含む。
【0010】
本発明の熱伝導性フィラー(すなわち、ポリイミド結合剤材料中に分散されたフィラー)は、次の寸法、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、1000、2000、3000、4000、および5000nmを含めたいずれか2つの間の範囲にある平均粒子寸法(ポリマー結合剤中に分散された)を有し、分散されたフィラーの少なくとも80、85、90、92、94、95、96、98、99または100重量%が、上記定義した寸法範囲内に存在する。これらのフィラーは、40、45、50、55、60、65、70、75、80から85重量%にわたる量で、ポリイミド複合材料中に存在する。
【0011】
本発明の熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、シリカ、窒化ホウ素、窒化ホウ素を被覆した酸化アルミニウム、顆粒状アルミナ、顆粒状シリカ、フュームドシリカ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムを被覆した窒化アルミニウム、二酸化チタン、リン酸二カルシウム、チタン酸バリウム、およびそれらの組合せからなる群から、通常選択される。
【0012】
本発明のポリイミドフィルム複合材料は、通常、約2、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250から300ミクロンまでの厚さを有する薄膜の形態をしている。
【0013】
本発明のポリイミドフィルム複合材料の熱伝導率は、通常、次の数値、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、4.0、6.0、8.0、10.0、20.0、50.0、100、150および200W/(m・K)を含めたいずれか2つの間に存在する。
【0014】
本発明の複合材料は、ポリイミド−金属積層板を形成する際に役立ち得るものであり、或いは、その他の誘電体の良好な熱伝導率が要求される設計において独立型のフィルムとしても使用し得る優れた誘電体である。
【0015】
通常、本発明の熱伝導性ポリイミドフィルム複合材料は、誘電体材料の良好な熱伝導率が必要とされる電子デバイス中の単層ベース基板(誘電体)として有用である。そのような電子デバイスの例(これに限定されるものではないが)には、熱電モジュール、熱電冷却機、DC/ACおよびAC/DC変換器、DC/DCおよびAC/AC変換器、電力増幅器、電圧制御器、点火装置、発光ダイオード、ICパッケージなどが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
概観:本発明のポリイミド複合材料は、(i)ポリイミド結合剤成分、および(ii)熱エネルギーを伝導することができる無機フィラー成分を含む。これらの成分については、個別に記述し、次いで複合材料として一緒に記述する。
【0017】
ポリイミド結合剤:本発明の有用な高絶縁耐力ポリイミド結合剤は、二無水物成分(または対応する、二塩基酸ジエステル、ハロゲン化二塩基酸エステル、または二無水物のテトラカルボン酸誘導体)およびジアミン成分から誘導される。二無水物成分は、通常、芳香族、脂肪族、または脂環式の二無水物のいずれでもよい。ジアミン成分は、通常、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、または脂環式ジアミンのいずれでもよい。
【0018】
本発明の有用な二無水物には、芳香族二無水物が含まれる。これらの芳香族二無水物(これに限定されるものではない)には以下のものが含まれる。
【0019】
1.ピロメリト酸二無水物(PMDA);
2.3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA);
3.3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA);
4.4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA);
5.3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA);
6.2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA);
7.4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA);
8.2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;
9.1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;
10.1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;
11.2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;
12.2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物;
13.2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;
14.2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;
15.2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;
16.2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;
17.2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;
18.1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;
19.1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;
20.ビス−(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;
21.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;
22.4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物;
23.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物;
24.テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物;
25.ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物;
26.チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物;
27.フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物;
28.ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物;
29.ビス−1,3−イソベンゾフランジオン;
30.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物;
31.ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物;
32.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンズイミダゾール二無水物;
33.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンゾオキサゾール二無水物;
34.2−(3’,4’−ジカルボキシフェニル)5,6−ジカルボキシベンゾチアゾール二無水物;
35.ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)2,5−オキサジアゾール1,3,4−二無水物;
36.ビス−2,5−(3’,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4−オキサジアゾール二無水物;
37.ビス−2,5−(3’,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4−オキサジアゾール二無水物;
38.5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物;
39.トリメリト酸無水物2,2−ビス(3’,4’−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;
40.1,2,3,4−シクロブタン二無水物;
41.2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物;
42.それらの酸エステルおよび酸ハライドエステル誘導体;
43.およびそれら類似物。
【0020】
本発明の有用な芳香族ジアミンには、これらに限られるものではないが、以下のものが含まれる。
【0021】
1.2,2ビス−(4−アミノフェニル)プロパン;
2.4,4’−ジアミノジフェニルメタン;
3.4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド(4,4’−DDS);
4.3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS);
5.4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;
6.4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA);
7.3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA);
8.1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134またはRODA);
9.1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133);
10.1,2−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン;
11.1,2−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;
12.1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン;
13.1,4−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;
14.1,5−ジアミノナフタレン;
15.1,8−ジアミノナフタレン;
16.2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン;
17.4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン;
18.4,4’−ジアミノジフェニルシラン;
19.4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド;
20.4,4’−ジアミノジフェニル−N−メチルアミン;
21.4,4’−ジアミノジフェニル−N−フェニルアミン;
22.1,2−ジアミノベンゼン(OPD);
23.1,3−ジアミノベンゼン(MPD);
24.1,4−ジアミノベンゼン(PPD);
25.2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン;
26.2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン;
27.5−(トリフルオロメチル)−1,3−フェニレンジアミン;
28.2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−ヘキサフルオロプロパン(BDAF);
29.2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン;
30.ベンジジン;
31.4,4’−ジアミノベンゾフェノン;
32.3,4’−ジアミノベンゾフェノン;
33.3,3’−ジアミノベンゾフェノン;
34.m−キシリレンジアミン;
35.ビスアミノフェノキシフェニルスルホン;
36.4,4’−イソプロピリデンジアニリン;
37.N,N−ビス−(4−アミノフェニル)メチルアミン;
38.N,N−ビス−(4−アミノフェニル)アニリン
39.3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル;
40.4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート;
41.2,4−ジアミノトルエン;
42.2,5−ジアミノトルエン;
43.2,6−ジアミノトルエン;
44.2,4−ジアミン−5−クロロトルエン;
45.2,4−ジアミン−6−クロロトルエン;
46.4−クロロ−1,2−フェニレンジアミン;
47.4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン;
48.2,4−ビス−(β−アミノ−t−ブチル)トルエン;
49.ビス−(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル;
50.p−ビス−2−(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン;
51.1−(4−アミノフェノキシ)−3−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;
52.1−(4−アミノフェノキシ)−4−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;
53.2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP);
54.ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS);
55.2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(m−BAPS);
56.4,4’−ビス−(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB);
57.ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル(BAPE);
58.2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(6Fジアミン);
59.ビス(3−アミノフェニル)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルホスフィンオキシド
60.2,2’−ビス−(4−フェノキシアニリン)イソプロピリデン;
61.2,4,6−トリメチル−1,3−ジアミノベンゼン;
62.4,4’−ジアミノ−2,2’−トリフルオロメチルジフェニルオキシド;
63.3,3’−ジアミノ−5,5’−トリフルオロメチルジフェニルオキシド;
64.4,4’−トリフルオロメチル−2,2’−ジアミノビフェニル;
65.4,4’−オキシ−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
66.4,4’−オキシ−ビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
67.4,4’−チオ−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼン−アミン];
68.4,4’−チオビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
69.4,4’−スルホキシル−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン;
70.4,4’−スルホキシル−ビス−[(3−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
71.4,4’−ケト−ビス−[(2−トリフルオロメチル)ベンゼンアミン];
72.9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン;
73.1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン;
74.3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン;
75.およびそれら類似物。
【0022】
本発明の有用な脂肪族ジアミンは、単独でまたは芳香族ジアミンと共に使用されるが、これらに限られるものではないが、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン(DMD)、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン(DDD)、1,16−ヘキサデカメチレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン、イソホロンジアミン、およびそれらの組合せが含まれる。
【0023】
本発明の二無水物およびジアミン成分は、所定の望ましい性質を有するポリイミド結合剤を提供するために特別に選択される。そのような1つの性質は、ポリイミド結合剤が一定のガラス転移温度(Tg)を有することである。1つの有用なTg範囲は、例えば結合剤の良好な結合性が求められる場合、次の数値、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110および100℃を含めたいずれか2つの間に存在することができる。付着力がその他の性質より重要でない場合は、別の有用な範囲は、550、530、510、490、470、450、430、410、390、370、350、330、310、290、270および250℃から存在する。上述した二無水物およびジアミンのすべてが、低Tgポリイミド結合剤または高Tg結合剤を形成するわけではない。そのようなものとして、どの二無水物、およびどのジアミン成分が必要であるかを選択することは、バインダ高分子の最終的性質を注文に応じて作製するための重要事項である。
【0024】
本発明の一実施形態においては、p−フェニレンジアミンが、第2ジアミンとしての4,4’−ODAと共に使用される。この実施形態においては、BPDAおよびPMDAの組合せが、ポリイミド結合剤を形成する二無水物成分として使用される。別の実施形態では、PMDAは4,4−ODAと共に使用してポリイミドを形成する。この実施形態では、ポリイミド結合剤成分の前駆体(すなわち、ポリアミック酸)は、約50重量%の酸化アルミニウムフィラーと均一に混合された。その結果として生じた混合ポリマーは、1ミル(10-3インチ=0.0254mm)厚さの、フィラー充填ポリイミドフィルム複合材料に熱的に変換された。フィルム複合材料は、約0.7W/(m・K)の熱伝導率、および350℃超のTgを有していた。
【0025】
本発明の別の実施形態においては、有用な二無水物には、BPADA、DSDA、ODPA、BPDA、BTDA、6FDA、およびPMDAまたはそれらの混合物が含まれる。これらの二無水物は、商業的に容易に入手でき、通常、容認できる性能を有している。1つの注目すべき二無水物は、優れた付着力および良好な屈曲性寿命を有し、同時に、また、かなり低い吸湿係数を有するポリイミドを製造することができるということから、BPADAである。
【0026】
本発明の一実施形態においては、ポリイミドは、最初にポリイミド前駆体(通常、ポリアミド溶液)を形成することにより合成される。ポリアミック酸は、(溶媒系において)1種または複数種の二無水物モノマーを2種またはそれ以上のジアミンモノマー(ポリシロキサンジアミンであるもの)と反応させることにより作製される。熱伝導性フィラーがポリアミック酸溶液中に十分分散しうる限り、フィラーを、ポリアミック酸を調製する前、調製中、調製後に、分散させることができる。ポリマーのイミド化(すなわち、溶媒の除去および硬化)により、フィラー材料が結合剤中に十分分散することができる点を超えて粘度が上昇するまでは、通常、このことは当てはまる。
【0027】
本発明のポリイミドの合成に有用な有機溶媒は、好ましくは、ポリイミド前駆体材料を溶解しうるものである。そのような溶媒は、例えば225℃未満の、かなり低い沸点を有するはずであり、その結果、ポリイミドは、適度(すなわち、より便利な、より低コスト)の温度で乾燥することができる。210、205、200、195、190、または180℃未満の沸点が好ましい。
【0028】
本発明の溶媒は、単独でまたは他の溶媒と組み合わせて(すなわち、共溶媒)使用することができる。有用な有機溶媒には、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチル−ピロリジン−3−オン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’−ジメチル−ホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素(TMU)、ヘキサメチルホスホアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、γ−ブチロラクトン、およびピリジンが含まれる。一実施形態においては、好ましい溶媒には、N−メチルピロリドン(NMP)およびジメチルアセトアミド(DMAc)が含まれる。
【0029】
共溶媒は、通常、全溶媒の約5から50重量%で使用することができる。有用な共溶媒には、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(モノグリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、1,2−ビス−(2−メトキシエトキシ)エタン(トリグリム)、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル)]エーテル(テトラグリム)、ビス−(2−メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、「Cellosolve(商標)」(エチレングリコールエチルエーテル)、ブチル「Cellsolve(商標)」(エチレングリコールブチルエーテル)、「Cellosolve(商標)アセテート」(エチレングリコールエチルエーテルアセテート)、および「ブチルCellsolve(商標)アセテート」(エチレングリコールブチルエーテルアセテート)が含まれる。
【0030】
最終的に、前駆体(ポリアミック酸)は、99.5重量%を超える固形物含有量を有する高温ポリイミド材料に変換される。この方法におけるある時点で、フィラー材料がポリイミド前駆体と混合することができる点を超えて、結合剤の粘度が増大される。本明細書における特別の実施形態に応じて、恐らく、フィラー材料が結合剤中に分散することができるほど十分に材料を溶媒和することによって、多分、結合剤の粘度を再び低下することができる。
【0031】
ポリアミック酸溶液を、加熱または従来のポリイミド変換化学などの当技術分野で普通に知られている方法および技術を使用して高温ポリイミドに変換することができる。そのようなポリイミド製造方法は、数十年にわたって実施されてきた。ポリイミドの製造に関する公表された文献の量は多数あり、したがって、本明細書におけるさらなる考察は不必要である。どの従来法または非従来法のポリイミド製造方法でも、フィラー材料が混合することができるのに十分な、低い粘度を有する前駆体材料が使用できるという条件で、本発明に従って使用するのに適切でありうる。同様に、ポリイミドが、完全にイミド化された状態で可溶性である場合は、最終の複合材料に成形される前のこの段階で、フィラーを分散させることができる。
【0032】
熱伝導性フィラー成分:本発明の熱伝導性フィラー成分は、平均寸法(ポリイミド結合剤材料内に分散された)が、次の寸法:50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、400、450、500および5000nmを含めたいずれか2つの間の範囲にあり、分散されたフィラーの少なくとも80、85、90、92、94、95、96、98、99または100%が上記の寸法範囲内にある、無機材料、時として金属酸化物でありうる。フィラー寸法は、フィラーを有機溶媒に(場合により、分散剤、接着促進剤、および/またはカップリング剤の助けをかりて)分散させ、Horiba(登録商標)製のレーザ粒子分析器などのレーザによる粒子分析器によって求めた。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態においては、フィラー粒子の平均の寸法が50nm未満である場合は、フィラー粒子は、ポリイミドの製造において好ましく用いられる有機溶媒中で凝集するかまたは不安定になる傾向を有しうる。別の場合には、凝集した粒子の平均粒径が5000nmを超えると、ポリイミド結合剤中のフィラー成分の分散は、あまりにも不均質に(または、複合材料の厚さに対して不適切に大きく)なりうる。結合剤中のフィラー成分が比較的不均質に分散されると、複合材料フィルムの機械的な伸び、フィルムの屈曲性寿命が劣り、かつ/または絶縁耐力が低下するようになる。
【0034】
本発明の熱伝導性フィラー成分は、主として良好な熱伝導率を有するフィルム複合材料を提供するために選択される。アルミナは、有用な熱伝導性フィラー材料(特にバインダ高分子における)として産業界で認められているので、本明細書において特に言及されている。しかし、本発明では、伝導性フィラーとして他のフィラーを用いることが期待されている。これらのフィラーには、(これに限るものではないが)シリカ、窒化ホウ素、窒化ホウ素を被覆した酸化アルミニウム、顆粒状アルミナ、顆粒状シリカ、フュームドシリカ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムを被覆した窒化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、およびそれらの組合せが含まれる。
【0035】
ポリイミド結合剤成分中のフィラー成分の充填重量は、次の数値、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85重量%を含めたいずれか2つの間にある。これらの充填水準において、これらの複合材料ポリイミドフィルムの熱伝導率は、次の数値、約2、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250および300ミクロンを含めたいずれか2つの間の厚さを有する薄膜において、次の数値、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、4.0、6.0、8.0、10.0、20.0、50.0、100、150および200W/(m・K)を含めたいずれか2つの間に存在する。
【0036】
普通、本発明の熱伝導性フィラーは、ナノ寸法の従来のフィラーをポリマーマトリックス中に分散させようと試みる場合に普通に起こる不必要な粒子の凝集を解きほぐすために、通常、相当の粉砕および濾過を必要としうる。そのような粉砕および濾過は、コスト高になりうるものであり、不必要な凝集をすべて除去できるとは限らない。実際、一実施例形態では、熱伝導性フィラーは、ジメチルアセトアミド溶媒において35重量%で分散性であり、懸濁性である。フィラーを分散させ(高速せん断機械力により)、懸濁させた後、20℃で72時間静置すると、15、10、8、6、4、2または1重量%未満のフィラーが溶液から沈殿した。
【0037】
ポリイミドマトリックス中へのフィラーの組み入れ:本発明の熱伝導性ポリイミドシート接着剤フィルムは、極性非プロトン溶媒の存在下で、ジアミンおよび二無水物モノマーを一緒に結合させてポリアミック酸溶液(ポリアミック酸溶液とも呼ばれる)を形成することにより作製することができる。二無水物およびジアミンモノマーは、通常、約0.90から1.10の芳香族二無水物モノマーの芳香族ジアミンモノマーに対するモル比で結合されている。ポリアミック酸の分子量は、二無水物およびジアミンモノマーのモル比を調節することにより調節される。
【0038】
一実施形態においては、ポリアミック酸溶液は、次の百分率:5、10、12、15、20、25、27、30、40、45、50、55、または60重量パーセント(%)を含めたいずれか2つの間の範囲にある濃度で、極性非プロトン溶媒中に溶解されている。一実施例では、ポリアミック酸溶液の溶媒含有量は、約10、12、14、16、18、20、または22から約24、26、28、または30重量パーセント(%)溶媒の範囲にある。
【0039】
一実施形態においては、本発明によるナノ寸法のフィラー(すなわち、酸化アルミニウム粒子)は、最初に溶媒中に分散され、スラリーを形成する。次いで、スラリーはポリアミック酸前駆体溶液に分散される。この混合物を、本明細書においては、充填されたポリアミック酸成膜溶液(filled polyamic acid casting solution)と呼ぶ。フィラーのポリイミドに対する濃度(最終複合材料フィルム中の)は、通常、40、45、50、55、60、65、70、75、80または85重量パーセント(%)の範囲にある。フィラーの濃度が増大すると、複合材料ポリイミドの熱伝導率もまた増大する。
【0040】
充填されたポリアミック酸成膜溶液は、通常、予備成形されたポリアミック酸溶液およびフィラーの混合物である。フィラーは、約1、3、5、7、9または10重量(%)パーセントから約15、20、25、30、35、40、45または50(%)重量パーセントまたはそれ以上の濃度範囲に存在する。一実施形態においては、フィラーは、ポリアミック酸溶液を作製するために用いられるのと同じ極性非プロトン溶媒(例えば、DMAc)に先ず分散される。場合により、少量のポリアミック酸溶液をフィラースラリーに添加し、スラリーの粘度を増大させるか、分散を改善するか、または不必要な粒子の凝集からスラリーを安定させることができる。
【0041】
一実施形態においては、フィラースラリーをポリアミック酸溶液と混合し、充填されたポリアミック酸成膜溶液を形成することができる。この混合操作には、高速せん断混合を含めることができる。この実施形態においては、フィラーが最終フィルム中に85重量%を超えて存在する場合は、フィルムは脆くなりすぎ、自立した、機械的に強靭な、フレキシブルシートを形成するのに十分な可撓性を有することができない。さらに、フィラーが、40重量%未満の水準で存在する場合は、これから成形されたフィルムは、熱伝導性が十分でないことがある。
【0042】
上述のポリアミック酸成膜溶液は、場合により、加工助剤(例えば、オリゴマー)、抗酸化剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、他の有機または無機フィラーまたはさまざまな補強材を含む、追加の添加物をさらに含むことができる。通常の無機フィラーには、フューム金属酸化物のようなコロナ抵抗性フィラーおよび金属のような導電性フィラーが含まれる。一般的な他のフィラーには、炭化ケイ素、ダイヤモンド、リン酸二カルシウム、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレン、カーボンブラック、黒鉛、および導電性ポリマーが含まれる。
【0043】
本発明の一実施形態においては、ポリアミド成膜溶液を、エンドレス金属表面または回転ドラムなどの支持体上に流し出すかまたは塗布する。次いで、溶液を加熱して溶媒のいくらかを除去することによって、ウェットフィルムが成形される。このウェットフィルムは、時々「グリーン」フィルムと呼ばれ、適切な温度で焼き付けすることによって、60、65、70、75、80、85、および90重量%からの固形物が存在する自立フィルムに変換される。グリーンフィルムは、支持体から分離され、幅出し工程において連続的な熱および/または放射線硬化により硬化される。この工程により、98.5%またはそれ以上の重量%の固形物を有する比較的高度に硬化されたポリイミドフィルムであるフィルムを製造することができる。
【0044】
本発明による、ポリイミドフィルムを製造するための他の有用な方法を、特許文献3および特許文献4において見ることができ、そこにおけるすべての教示は参照により本明細書に組み込まれる。また、次のような、非常に多くの変更が可能である:
(a)ジアミンモノマーおよび二無水物モノマーを予め混合し、次いで、攪拌しながら、その混合物を一部ずつ分けて溶媒に添加する方法。
【0045】
(b)ジアミンおよび二無水物の混合物を攪拌しながら、溶媒を添加する方法(上記(a)とは逆)。
【0046】
(c)ジアミンだけを溶媒に溶解させ、次いで、反応速度を制御できるような速度で、二無水物をそれに添加する方法。
【0047】
(d)二無水物モノマーだけを溶媒に溶解させ、次いで、反応速度を制御できるような速度で、アミン成分をそれに添加する方法。
【0048】
(e)ジアミンモノマーおよび二無水物モノマーを別々に溶媒に溶解させ、次いで、これらの溶液を、反応器中で混合する方法。
【0049】
(f)過剰なアミン成分を有するポリアミック酸および過剰な二無水物成分を有する別のポリアミック酸を予め形成し、次いで、特に、ランダムでないまたはブロック共重合体を造るようなやり方で、反応器中で互いに反応させる方法。
【0050】
(g)特定の割合のアミン成分および二無水物成分を最初に反応させ、次いで、残りの二無水物モノマーを反応させる、またはこれとは逆の、方法。
【0051】
(h)フィラー粒子を溶媒中に分散させ、次いで、ポリアミック酸の流れに注入し、充填された成膜溶液を形成し、次いで、流し出してグリーンフィルムを形成する方法。高分子量のポリアミック酸、または次いで、高分子量のポリアミック酸まで鎖を伸ばされる低分子量のポリアミック酸を用いて、これを行うことができる。
【0052】
(i)溶媒の一部または全量に対して、成分の一部または全部を、順序を問わず添加する、さらに、どの成分の一部または全部でも、溶媒の一部または全部に溶液として添加することができる方法。
【0053】
(j)最初に、二無水物モノマーの1種とジアミンモノマーの1種とを反応させて第1のポリアミック酸を作製し、次いで、他の二無水物モノマーと他のアミン成分とを反応させて第2のポリアミック酸を作製し、次いで、フィルムを形成する前に、いくつかのやり方の中のどれか1つのやり方でアミド酸を結合させる方法。
【0054】
複数の加熱区域または領域を有する加熱装置を使用することが好ましい。また、約200から600℃、好ましくは350から500℃の、オーブンの最高空気(または窒素)温度をもたらすように、最高加熱温度を制御できることが、通常、好ましい。グリーンフィルムの最高硬化温度を上に定義した範囲内に制御することによって、優れた機械的強度、および良好な寸法の熱安定性を有するポリイミドフィルムを得ることが可能になる。
【0055】
別法として、加熱時間を変化させながら、加熱温度を200から600℃に設定することができる。硬化時間に関しては、約1、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50秒から約60、70、90、100、200、400、500、700、800、900、1000、1100または1200秒の間(加熱温度に応じた時間の長さ)、本発明のポリイミドフィルムを最高温度に曝すことが好ましい。あまりにも急速に乾燥することによってフィルムにシワが寄らないように、加熱温度を段階的に変えることができる。
【0056】
フィルムの意図されている目的または最終的な用途の仕様に応じて、ポリイミドフィルムの厚さを調節することができる。選択された特定の実施形態の設計基準に応じて、フィルムの厚さは、次のフィルムの厚さ:5、8、10、20、25、30、35、40、45、50、60、80、100、125、150、175、200、300、400、および500ミクロンを含めたいずれか2つの厚さの範囲に存在しうる。一実施例においては、厚さは、約12から約125ミクロン、好ましくは約15から25ミクロンの間にある。
【0057】
本明細書において使用される「熱伝導性」という用語は、1ミル(0.0254mm)のフィルムを基準にして、約0.5W/(m・K)に等しいかそれを超える、いくつかの場合には0.7W/(m・K)を超える水準で、熱を伝導することができる物理的性質を有する複合材料を意味する。フィルムの場合は、通常、約1000分の1インチ(約1.0ミルまたは25ミクロン)の厚さで、円形(直径が約1/2インチ(約12.7mm))のフィルム試料を用いて、熱伝導率を測定する。試料を測定するのに使用したデバイスは、InSb赤外センサを備えた、Netzsch(登録商標)キセノンランプフラッシュ分析器、モデルLFA−447であった。これらの試料に用いた熱伝導率の参照試料は、パイレックス(登録商標)(Pylex)(登録商標)7740の試料であった。ポリイミドフィルム複合材料試料は、最初に両面に約1000Åの金をスパッタし、次いで、両面に約1000Åの黒鉛をスプレーした(試料を黒くするために)。循環浴を約25℃に設定した。ワット数の選択は、「ショート(short)」を選択し(約304ボルト)、暴露時間は、約20から30ミリ秒であった。試料の熱伝導率の平均をとるために、Cowanの式を用いた。
【0058】
本明細書において使用される「絶縁耐力」という用語は、材料が短時間の間、耐えることができる電圧の量を記述するために使用する用語である。1ミル(0.0254mm)厚さの、従来の、充填されていない(コロナ抵抗性のない)ポリイミドフィルムの絶縁耐力は、通常、約7800ボルト/ミル(約307000ボルト/mm)である。従来の熱伝導性フィルムは、通常、約3000から6000ボルト/ミル(118000から236000ボルト/mm)の絶縁耐力を示す。一実施形態においては、本発明によるフィルムのある種類のものは、5000ボルト/ミル(197000ボルト/mm)を超える絶縁耐力を有するものとして定義されている。そのようなものとして、これらの材料は、普通、「誘電体」と呼ばれる。
【0059】
本発明の複合材料は、ポリイミド−金属積層板を形成する際に役立つことができる、または誘電体からの良好な熱伝導率が必要とされる他の設計において、自立フィルムとして使用することができる優れた誘電体である。
【0060】
さらなる実施形態においては、ポリアミック酸フィラー複合材料スラリーは、完全に硬化されたポリイミドベースのフィルム上にまたは直接金属基板上に被覆され、次いで、熱処理によりイミド化することができる。ポリイミドベースのフィルムは、化学的プロセスまたは熱変換プロセスにより調製され、表面処理することができる(例えば、接着を改善するための化学エッチング、コロナ処理、レーザエッチングなどによる)。
【0061】
本発明の単独のポリイミド金属−クラッドは、銅、アルミニウム、ニッケル、鋼またはこれらの金属の1種または複数種を含有する合金などの金属箔に接着しているフレキシブルポリイミド層を備えている。ある場合は、ポリイミド複合材料層は、追加の接着剤を用いることなく、金属に堅固に接着することができ、直線1インチ(2.54cm)当たり2ポンド(0.907kg)およびそれ以上を超える剥離強度を有する。金属を、ポリイミド層の片面または両面に接着することができる。別の場合は、接着剤を使用してポリイミドフィルム複合材料を金属層に積層することができる。普通の接着剤は、ポリイミド接着剤、アクリルベースの接着剤、およびエポキシである。
【0062】
ポリイミド結合剤成分が約250℃またはそれ未満のTgを有する場合は、ポリイミド自体が、良好な接着フィルムの役割を果たすことができる。接着温度が、通常、150℃から350℃の場合、これらのポリイミド接着フィルムは、直線1インチ(2.54cm)当たり約2ポンド(0.907kg)から直線1インチ(2.54cm)当たり約15ポンド(6.804kg)で銅に接着することができる。一実施形態においては、熱伝導性ポリイミド接着剤複合材料は、直線1インチ(2.54cm)当たり200℃の接着温度で約8ポンド(3.628kg)の接着強さで銅に接着している。
【0063】
本明細書において使用される「伝導層」および「伝導箔」という用語は、金属層または金属泊であることを意味する。伝導箔は、通常、金属箔である。金属箔を、純粋な形態の元素として使用する必要はない:それらを、ニッケル、クロム、鉄、およびその他の金属を含有する銅合金などの金属箔合金として使用することもできる。その他の有用な金属には、これに限らないが、銅、鋼、アルミニウム、黄銅、銅モリブデン合金、コバール(Kovar(登録商標))、インバール(Invar(登録商標))、バイメタル、トライメタル(trimetal)、銅の2層およびインバール(登録商標)の1層からなるトライメタル、ならびに銅の2層およびモリブデンの1層からなるトライメタルが含まれる。
【0064】
伝導層はまた、金属の合金であり、スパッタリングステップ、場合により、引き続き行われる電気メッキステップにより、本発明のポリイミドに通常付着させることができる。この種類の工程では、ポリイミド接着剤の上に、金属種被覆層(metal seed coat layer)を最初にスパッタする。最終的に、電気メッキまたは電着により、金属のより厚いコーティングを種被覆に付着させる。また、剥離強さを増強するために、ポリマーのガラス転移温度より高い温度で、そのようなスパッタされた金属層をホットプレスする。
【0065】
本発明によるポリイミド−金属積層板は、ポリアミック酸を金属箔に塗布し、引き続きポリアミック酸を乾燥および硬化させてポリイミドを形成することにより、形成することもできる。これらの片面積層板を共に積層させ(例えば、ポリイミド面を互いに接触させて設置する)、二重金属積層板を形成することができる。特に適切な金属基板は、圧延され、焼なましされた銅(RA銅)、電着された銅(ED銅)、または圧延され、焼なましされた銅合金の箔である。多くの場合、コーティングの前に金属基板を処理することが有利であることが分かっている。この処理には、これに限らないが、銅、亜鉛、クロム、スズ、ニッケル、コバルト、その他の金属およびこれらの金属の合金の薄層金属上での電着または浸漬析出が含まれうる。前処理は、化学的処理または機械的粗面化処理からなりうる。この前処理により、ポリイミド層の接着、および、したがって、剥離強さをさらに大きくすることができることが分かった。表面の粗面化とは別に、化学的前処理により、金属酸化物基を形成して、金属のポリイミド層に対する接着をさらに増強することができる。この処理は、金属の両面に適用することができ、両面で基板に対する接着を増強することができる。
【0066】
本発明のポリイミド金属−クラッドは、また、接着剤を被覆した誘電体ポリイミドフィルムの片面または両面に、銅箔を積層させることにより調製できる。接着剤を被覆した銅箔を、誘電体ポリイミドフィルムの両面に、または接着剤を被覆した誘電体ポリイミドフィルムに積層させることにより、この構造物を作製することができる。
【0067】
別の実施形態においては、熱伝導性ポリイミド複合材料は、多層ポリイミドフィルム構造物中の別個の層でありうる。例えば、熱伝導層は、2層のポリイミドにおける1層として、または3層のポリイミドにおける外側の層として共押出しすることができる(参照により本明細書に組み込まれている特許文献4も参照されたい)。
【0068】
別の実施形態においては、本発明のポリイミドは、平板式変圧器構成要素を組み立てるために使用する材料として使用される。これらの平板式変圧器構成要素は、電力供給装置において通常使用される。さらに別の実施形態においては、本発明のポリイミド接着剤は、フレキシブルヒータを形成するために、(インコネルのように)熱い金属箔と共に使用することができる。これらのヒータは、通常、自動車および航空宇宙産業用途で使用される。
【0069】
通常、本発明の熱伝導性ポリイミドフィルム複合材料は、誘電体材料の良好な熱伝導率が必要とされる電子デバイス中の単層ベースの基板(誘電体)として有用である。そのような電子デバイスの例には、(これに限らないが)、熱電モジュール、熱電冷却機、DC/ACおよびAC/DC変換器、DC/DCおよびAC/AC変換器、電力増幅器、電圧制御器、点火器、発光ダイオード、ICパッケージなどが含まれる。
【0070】
本発明の有利な性質は、本発明を説明するものであって、限定するものではない次の例を参照することによって、理解することができる。すべての部および百分率は特別の指示がない限り重量で表される。
【0071】
(実施例)
本発明の有利な性質は、本発明を説明するものであって、限定するものではない次の例を参照することによって、さらに理解できる。実施例において使用された化合物は以下のものを含む:
【実施例1】
【0072】
容器内で、ポリアミック酸を調製した。ポリアミック酸を、PMDAおよびODPA二無水物、ならびにRODAジアミンから誘導した。ポリアミック酸(PMDA/ODPA//RODA)の、DMAc中の重量%は、溶液中で約17重量%であった。ポリアミック酸の溶液を数時間攪拌した。
【0073】
別の容器内で、アルミナ酸化物粉末の金属酸化物分散物をDMAc中で調製した。分散物は、約30重量%のアルミナ酸化物および(分散助剤として使用された)ポリアミック酸約7重量%を含有していた。分散物を、粒子がほぼ1から2ミクロンの平均粒径を有するようになるまで、運動混合機中で粉砕した。
【0074】
金属酸化物分散物および約6重量%溶液の追加のPMDA溶液を、ポリマーに対するアルミナ酸化物の重量%充填量がほぼ56重量%になるまで添加した。この混合ポリマー成膜溶液を、かなり均一になるまで混合し、次いで、(スロットダイを使用して)平坦な金属表面に流し出し、ウェットフィルムを形成した。
【0075】
ウェットフィルムの固形物パーセントが約18重量%から約70重量%に増大するまで、約90℃から150℃の温度でほぼ30分間にわたって、ウェットフィルムを加熱した。ある程度乾燥したフィルムを金属表面から引き剥がし、ロールに巻き付けた。ロールを硬化オーブンに移し、加工した。硬化オーブンを使用してフィルムを加熱し、フィルムの端に張力を掛け、平坦な、硬化されたポリイミド複合材料を形成した。約20分にわたって加熱し、温度を約250℃から約400℃に均一に上昇させた。硬化されたポリイミドフィルム複合材料は、98.5重量%を超える固形物パーセントを有していた。
【0076】
ポリイミドフィルム複合材料を1/2インチ(1.27cm)の円形に切断し、熱伝導率を測定すると熱伝導率は0.6W/(m・K)であった。
【実施例2】
【0077】
容器内で、ポリアミック酸を調製した。ポリアミック酸を、PMDAおよびODPA二無水物、ならびにRODAジアミンから誘導した。ポリアミック酸(PMDA/ODPA//RODA)の、DMAc中の重量%は、溶液中で約17重量%であった。ポリアミック酸の溶液を数時間攪拌した。
【0078】
別の容器内で、窒化アルミニウム粉末の金属酸化物分散物をDMAc溶媒中で調製した。分散物は、約30重量%の窒化アルミナおよび約7重量%のポリアミック酸(分散助剤として使用した)を含有していた。分散物を、粒子がほぼ1から2ミクロンの平均粒径を有するようになるまで、運動混合機中で粉砕した。
【0079】
金属酸化物分散物および約6重量%溶液の追加のPMDA溶液を、ポリマーに対する窒化アルミニウムの重量%充填量がほぼ50重量%になるまでポリアミック酸ブレンドに添加した。この混合ポリマー成膜溶液を、均一に混合し、次いで、(スロットダイを使用して)平坦な金属表面に流し出し、ウェットフィルムを形成した。
【0080】
ウェットフィルムの固形物パーセントが約70重量%になるまで、約90℃から150℃の温度でほぼ30分間にわたって、ウェットフィルムを加熱した。ある程度乾燥したフィルムを金属表面から引き剥がし、ロールに巻き付けた。ロールを硬化オーブンに移し、加工した。硬化オーブンを使用してフィルムを加熱し、フィルムの端に張力を掛け、平坦な、ポリイミド複合材料を形成した。約20分にわたって加熱し、温度を約250℃から約400℃に均一に上昇させた。硬化されたポリイミドフィルム複合材料は、98.5重量%を超える固形物パーセントを有していた。
【0081】
ポリイミドフィルム複合材料を1/2インチ(1.27cm)の円形に切断し、熱伝導率を測定すると熱伝導率は0.9W/(m・K)であった。
【実施例3】
【0082】
容器中でポリアミック酸を調製した。ポリアミック酸を、PMDAおよびODPA二無水物およびRODAジアミンから誘導した。DMAc中のポリアミック酸(PMDA/ODPA//RODA)の重量%は、溶液中で約17重量%であった。ポリアミック酸溶液を、数時間攪拌した。
【0083】
別の容器において、窒化ホウ素粉末の分散物をDMAc溶媒中で調製した。分散物は、約30重量%の窒化ホウ素および(分散助剤として使用した)ポリアミック酸約7重量%を含有していた。この分散物を、粒子がほぼ1から2ミクロンの平均粒径を有するようになるまで、運動混合機中で粉砕した。
【0084】
粉末分散物および約6重量%の追加のPMDA溶液を、窒化ホウ素のポリマーに対する重量%充填量が約55重量%になるまで、ポリアミック酸ブレンドに添加した。この混合ポリマー成膜溶液を均一に混合し、次いで、(スロットダイを使用して)平坦な金属表面に流し出して、ウェットフィルムを形成した。
【0085】
ウェットフィルムの固形物パーセントが約70重量%になるまで、約90℃から150℃の温度でほぼ30分間にわたって、ウェットフィルムを加熱した。ある程度乾燥したフィルムを金属表面から引き剥がし、ロールに巻き付けた。ロールを硬化オーブンに移し、加工した。硬化オーブンを使用してフィルムを加熱し、フィルムの端に張力を掛け、平坦な、ポリイミド複合材料を形成した。約20分にわたって加熱し、温度を約250℃から約400℃に均一に上昇させた。硬化されたポリイミドフィルム複合材料は、98.5重量%を超える固形物パーセントを有していた。
【0086】
ポリイミドフィルム複合材料を1/2インチ(1.27cm)の円形に切断し、熱伝導率を測定すると熱伝導率は0.8W/(m・K)であった。
【実施例4】
【0087】
容器中でポリアミック酸を調製した。ポリアミック酸を、PMDAおよび4,4’−ODAジアミンから誘導した。DMAc中のポリアミック酸(PMDA/4,4’−ODA)の重量%は、溶液中で約17重量%であった。ポリアミック酸溶液を数時間攪拌した。
【0088】
別の容器において、窒化ホウ素粉末の分散物をDMAc溶媒中で調製した。分散物は、約30重量%の窒化ホウ素および(分散助剤として使用した)ポリアミック酸約7重量%を含有していた。この分散物を、粒子がほぼ1から2ミクロンの平均粒径を有するようになるまで、運動混合機中で粉砕した。
【0089】
粒子分散物、および6重量%の追加のPMDA溶液を、ポリマーに対する窒化ホウ素の重量%充填量がほぼ50重量%になるまで、ポリアミック酸ブレンドに添加した。この混合ポリマー成膜溶液を、均一に混合し、次いで、(スロットダイを使用して)平坦な金属表面に流し出し、ウェットフィルムを形成した。
【0090】
ウェットフィルムの固形物パーセントが約70重量%になるまで、約90℃から150℃の温度でほぼ30分間にわたって、ウェットフィルムを加熱した。ある程度乾燥したフィルムを金属表面から引き剥がし、ロールに巻き付けた。ロールを硬化オーブンに移し、加工した。硬化オーブンを使用してフィルムを加熱し、フィルムの端に張力を掛け、平坦な、ポリイミド複合材料を形成した。約20分にわたって加熱し、温度を約250℃から約400℃に均一に上昇させた。硬化されたポリイミドフィルム複合材料は、98.5重量%を超える固形物パーセントを有していた。
【0091】
ポリイミドフィルム複合材料を1/2インチ(1.27cm)の円形に切断し、熱伝導率を測定すると熱伝導率は0.75W/(m・K)であった。
【0092】
比較例1
容器中でポリアミック酸を調製した。ポリアミック酸を、PMDAおよび4,4’−ODAから誘導した。DMAc中のポリアミック酸(PMDA/4,4’−ODA)の重量%は、溶液中で約20重量%であった。ポリアミック酸溶液を数時間攪拌した。
【0093】
別の容器中で金属酸化物をDMAcに分散させた。分散物は約55重量%の酸化アルミナ粉末であった。この分散物を、粒子がほぼ1から2ミクロンの平均粒径を有するようになるまで、運動混合機中で粉砕した。
【0094】
酸化アルミナ金属分散物および約6重量%溶液の追加のPMDA溶液を、酸化アルミナの全ポリマーに対する重量%充填量が約35重量%になるまで、ポリアミック酸に添加し、さらに混合した。この混合ポリマー成膜溶液はかなり均一であり、これを(スロットダイを使用して)平坦な金属表面に流し出し、ウェットフィルムを形成した。
【0095】
ウェットフィルムの固形物パーセントが約12重量%から約70重量%に増大するまで、約90℃から150℃の温度でほぼ30分間にわたって、ウェットフィルムを加熱した。ある程度乾燥したフィルムを金属表面から引き剥がし、ロールに巻き付けた。
【0096】
ロールを硬化オーブンに移し、加工した。硬化オーブンを使用してフィルムを加熱し、フィルムの端に張力を掛け、平坦な、硬化されたポリイミド複合材料を形成した。約20分にわたって加熱し、温度を約250℃から約400℃に均一に上昇させた。硬化されたポリイミドフィルム複合材料は、98.5重量%を超える固形物パーセントを有していた。
【0097】
ポリイミドフィルム複合材料を1/2インチ(1.27cm)の円形に切断し、熱伝導率を測定すると熱伝導率は0.4W/(m・K)であった。
【0098】
比較例2
容器中でポリアミック酸を調製した。ポリアミック酸を、PMDAおよび4,4’−ODAから誘導した。DMAc中のポリアミック酸(PMDA/4,4’−ODA)の重量%は、溶液中で約20重量%であった。ポリアミック酸溶液を数時間攪拌した。
【0099】
別の容器において、金属酸化物をDMAc中に分散させた。分散物は、約25重量%のフュームド酸化アルミニウム粉末であった。この分散物を、粒子がほぼ0.10ミクロンの平均粒径を有するようになるまで、運動混合機中で粉砕した。
【0100】
フュームド金属酸化物分散物および約6重量%溶液の追加のPMDA溶液を、全ポリマーに対するフュームド酸化物の重量%充填量がほぼ21重量%になるまで添加し、さらに混合した。芯層がPMDA/4,4’−ODAから誘導された純粋なポリイミドであって、フィラーを含有していない、3層構造物の外側の複数の層として、この混合ポリマー成膜溶液を注型した。それぞれの層は同一の厚さを有しており、全厚さは、約1〜2ミル(または25から50ミクロン)であった。
【0101】
ウェットフィルムの固形物パーセントが約12重量%から約70重量%に増大するまで、約90℃から150℃の温度でほぼ30分間にわたって、ウェットフィルムを加熱した。ある程度乾燥したフィルムを金属表面から引き剥がし、ロールに巻き付けた。
【0102】
ロールを硬化オーブンに移し、加工した。硬化オーブンを使用してフィルムを加熱し、フィルムの端に張力を掛け、平坦な、硬化されたポリイミド複合材料を形成した。約20分にわたって加熱し、温度を約250℃から約400℃に均一に上昇させた。硬化されたポリイミドフィルム複合材料は、98.5重量%を超える固形物パーセントを有していた。
【0103】
ポリイミドフィルム複合材料を1/2インチ(1.27cm)の円形に切断し、熱伝導率を測定すると熱伝導率は0.35W/(m・K)であった。
【0104】
比較例3
容器中でポリアミック酸を調製した。ポリアミック酸を、PMDAおよび4,4’−ODAから誘導した。DMAc中のポリアミック酸(PMDA/4,4’−ODA)の重量%は、溶液中で約20重量%であった。ポリアミック酸溶液を数時間攪拌した。
【0105】
ウェットフィルムの固形物パーセントが約12重量%から約70重量%に増大するまで、約90℃から150℃の温度でほぼ30分間にわたって、ウェットフィルムを加熱した。ある程度乾燥したフィルムを金属表面から引き剥がし、ロールに巻き付けた。
【0106】
ロールを硬化オーブンに移し、加工した。硬化オーブンを使用してフィルムを加熱し、フィルムの端に張力を掛け、平坦な、硬化されたポリイミド複合材料を形成した。約20分にわたって加熱し、温度を約250℃から約400℃に均一に上昇させた。硬化されたポリイミドフィルム複合材料は、98.5重量%を超える固形物パーセントを有していた。
【0107】
ポリイミドフィルムを1/2インチ(1.27cm)の円形に切断し、熱伝導率を測定すると熱伝導率は0.2W/(m・K)であった。
【0108】
比較例4
容器中でポリアミック酸を調製した。4,4’−ODAおよびPPDと共にPMDAおよびBPDAからポリアミック酸を誘導した。DMAc中のポリアミック酸(PMDA/BPDA//4,4’−ODA/PPD)の重量%は、溶液中で約15重量%であった。ポリアミック酸溶液を数時間攪拌した。
【0109】
ウェットフィルムの固形物パーセントが約12重量%から約70重量%に増大するまで、約90℃から150℃の温度でほぼ30分間にわたって、ウェットフィルムを加熱した。ある程度乾燥したフィルムを金属表面から引き剥がし、ロールに巻き付けた。
【0110】
ロールを硬化オーブンに移し、加工した。硬化オーブンを使用してフィルムを加熱し、フィルムの端に張力を掛け、平坦な、硬化されたポリイミドフィルム複合材料を形成した。約20分にわたって加熱し、温度を約250℃から約400℃に均一に上昇させた。硬化されたポリイミドフィルム複合材料は、98.5重量%を超える固形物パーセントを有していた。
【0111】
ポリイミドフィルムを1/2インチ(1.27cm)の円形に切断し、熱伝導率を測定すると熱伝導率は0.15W/(m・K)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.二無水物成分、ならびに、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、またはそれらの組合せからなる群から選択されるジアミン成分から誘導されるポリイミド成分を含み、
B.熱伝導性フィラー成分を、フィルム複合材料に対し、次の数値、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80および85を含めたいずれか2つの数値間の重量%含み、
C.ここで、フィルム複合材料は、次の数値、2、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250および300ミクロンを含めたいずれか2つの数値間の厚さを有し、
D.ここで、フィルム複合材料は、次の数値、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、4.0、6.0、8.0、10.0、20.0、50.0、100、150および200W/(m・K)を含めたいずれか2つの間の熱伝導率を有する、
ことを特徴とする熱伝導性ポリイミドフィルム複合材料。
【請求項2】
ジアミン成分は、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン;4,4’−ジアミノジフェニルメタン;4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド(4,4’−DDS);3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS);4,4’−ジアミノジフェニルスルホン;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA);3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA);1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134またはRODA);1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133);1,2−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン;1,2−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン;1,4−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン;およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム複合材料。
【請求項3】
ジアミン成分は、1,2−ジアミノベンゼン(OPD)、1,3−ジアミノベンゼン(MPD)、1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、2,5−ジメチル−1,4−ジアミノベンゼン、2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン、5−(トリフルオロメチル)−1,3−フェニレンジアミン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−ヘキサフルオロプロパン(BDAF)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ベンジジン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム複合材料。
【請求項4】
ジアミン成分は、1−(4−アミノフェノキシ)−3−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1−(4−アミノフェノキシ)−4−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス(3−アミノフェニル)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルホスフィンオキシド(BDAF)、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(m−BAPS)、4,4’−ビス−(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、ビス−(4−[4−アミノフェノキシ]フェニル)エーテル(BAPE)、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(6Fジアミン)、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム複合材料。
【請求項5】
二無水物成分は、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(BPADA)、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム複合材料。
【請求項6】
二無水物成分は、ピロメリト酸二無水物(PMDA)および4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)の組合せであり、そして、ジアミン成分は、p−フェニレンジアミン(PPD)および1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134またはRODA)の組み合わせか、または、これら組み合わせに更にヘキサメチレンジアミンを組合せたものを含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルム複合材料。
【請求項7】
二無水物成分は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)および3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)の組合せであり、そして、ジアミン成分は、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134またはRODA)およびヘキサメチレンジアミンの組合せを含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルム複合材料。
【請求項8】
熱伝導性フィラー成分は、酸化アルミニウム、シリカ、窒化ホウ素、窒化ホウ素を被覆した酸化アルミニウム、顆粒状アルミナ、顆粒状シリカ、フュームドシリカ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、リン酸二カルシウム、チタン酸バリウムおよびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム複合材料。
【請求項9】
ポリイミド成分は、次の数値、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110および100℃を含めたいずれか2つの数値間のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルム複合材料。

【公開番号】特開2006−169534(P2006−169534A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362033(P2005−362033)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】