説明

電子デバイス用基材並びに機能膜の製造方法および製造装置

【課題】ディスペンサー方式でありながら、位置精度良く機能膜溶液を塗布することが可能な電子デバイス用基材および機能膜製造方法および製造装置を提供すること。
【解決手段】ノズルと基材またはノズルと基材載置テーブル間に電界を印加して機能膜溶液を塗布するディスペンサー塗布方法において、基材上に塗布領域外でかつ塗布領域の延長線上に凸部を設けた基材を用いることにより、位置精度良く機能膜溶液を塗布することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイの発光層などの機能膜を塗布技術を用いて製造する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、低消費電力、軽量のディスプレイへの要望が高かまる中、ディスプレイの機能膜を低コストの塗布方式によって製造する技術が注目を集めている。そんな中で、塗布する際にノズルと基材載置テーブルの間に電圧を印可してノズルより吐出される液径を絞り込んで細いパターンを形成する技術が開示されている。しかしながら、この技術で有機ELディスプレイの発光層の形成のような複数の隔壁が並列に並んだ間の溝部に機能性溶液を塗布しようとした場合、高さの高い隔壁に電界が集中して溝内に精度よく塗布出来なかった。
【0003】
これについて図15、図16を用いて説明する。図15は上記の従来の電界印加方式による有機発光材料インクの塗布装置を示す図、図16は図15のC方向から見た断面図である。
【0004】
図15において1は基材、3は基材の上に形成された隔壁、20は基材を載置する基材載置テーブル、24は基材1の上方に不図示の駆動手段により一定の間隙を開けた状態で隔壁3間の溝に沿って移動可能に構成されたディスペンサーであり、ディスペンサー24は下端部のノズル22と、その上部に連結されたシリンジ21と、シリンジ21の上部に接続された配管23および配管23内に気体を供給する不図示の定圧気体供給装置より構成されている。14はディスペンサーから吐出される有機発光材料インクであり、41はノズル22と基材載置テーブル20の間に接続された電界印加手段である。
【0005】
次に、上記のように構成された従来の塗布装置の動作について説明する。
【0006】
まず、ディスペンサーのノズルを隔壁間の溝の延長線上で隔壁の形成されていない外側の場所に位置決めする。次に、隔壁間の溝方向にディスペンサーの移動を開始し、ノズルが隔壁間の溝の上部に到達するまでに一定速度に加速しておき、ノズルが隔壁間の溝の上部に到達した時点で定圧気体供給装置から配管へ気体を供給すると共に、電界印加手段によってノズルと基材載置テーブル間に電界を印加して、シリンジ内の有機発光材料インクをノズル先端より吐出して基材上へ塗布する。
【0007】
このような電界印加方式のディスペンサーの場合、インクはノズルから出た後、対象物に着弾するまでに電界の力で引き伸ばされて細くなると同時に電界強度が最も強くなる間隙の小さい部分、つまりこの場合の隔壁上部にインクが引き寄せられる特徴があり、そのために図16に示すようにインクは隔壁間の溝部ではなく隔壁上に着弾し、狙った溝へ塗布することが困難であった。
【0008】
そこで、上記の問題を解決する方法として隔壁の間に配置された電極部分とノズルの間に電圧を印加して塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
図17は、上記特許文献1に記載された従来の塗布工法を示すものである。図17において、20は基材載置テーブル、101は基材載置テーブルに載置された基材、103は基材101上に形成された隔壁、113は隔壁103の間に形成されたアドレス電極、25はペースト供給部、41はアドレス電極113とペースト供給部25の間に電界を印加するための電界印加手段、104はディスペンサーから吐出された蛍光体ペーストを表している。この構成のように隔壁の溝の間に形成されたアドレス電極とノズルの間に電界を印加することで、ノズルから吐出された蛍光体ペーストはアドレス電極へ引き寄せられて精度良く溝内に塗布できる。
【特許文献1】特許第3778234号公報(第7頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この方法では隔壁の間の溝部に電極が形成されていない基材の場合には、溝内に精度良く塗布出来ず、また電極がある場合についても全ての電極線と導通を取る必要が有り、万が一導通が取れていない部分があると、その部分の塗布精度が悪くなってしまうという課題を有していた。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、塗布対象部に電極が形成されていない基材であっても低コストのディスペンサー方式で、塗布位置精度の良い塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1発明は、隔壁で囲まれた複数の塗布領域を有する電子デバイスの基材において、各塗布領域に応じて、塗布領域の外側かつ塗布領域の延長線上に凸部を有することを特徴とする電子デバイス用基材を提供するものである。
【0013】
また、上記第1発明において、前記凸部は前記隔壁と同材料からなると好適である。
【0014】
また、上記第1発明において、前記凸部は複数形成されており、塗布領域に塗布する機能膜の種類に応じて、隔壁の長手方向に垂直に直線状に配置されても良い。
【0015】
また、本発明の第2発明は、機能膜の成分を溶媒に溶解した機能膜溶液をノズル先端から吐出して、前記ノズルと相対的に移動する基材に塗布して前記基材上に機能膜を形成する機能膜の製造方法であって、基材を載置する機材テーブルと前記ノズルとの間,又は,前記ノズルと前記基材との間に電界を印加すると共に前記基材に設けられた凸部から塗布を開始し、隔壁で囲まれた塗布領域内に連続的に前記機能膜溶液を塗布することを提供するものである。
【0016】
また、本発明の第3発明は、機能膜の成分を溶媒に溶解した機能膜溶液をノズル先端から吐出して、前記ノズルと相対的に移動する基材に塗布して前記基材上に機能膜を形成する機能膜の製造方法であって、基材を載置する機材テーブルと前記ノズルとの間,又は,前記ノズルと前記基材との間に電界を印加すると共に隔壁で囲まれた塗布領域の外側かつ前記塗布領域の延長上に引き込み用の液滴を塗布し、前記引き込み用の液滴から塗布を開始して前記塗布領域内に連続的に機能膜溶液を塗布することを提供するものである。
【0017】
また、本発明の第4発明は、基材を載置する基材載置テーブルと、前記基材載置テーブルの上方に配置されかつ少なくとも1つのノズルを有するディスペンサーと、前記ノズルと前記基材載置テーブルを相対的に移動させる駆動手段と、前記ノズルと前記基材載置テーブルの間に電界を印可する電界印加手段と、前記駆動手段と前記ディスペンサーと前記電界印加手段のタイミングを制御する制御手段を備えたことを提供するものである。
【0018】
更に、本発明の第5発明は、前記基材をロールで搬送する基材搬送機構を備え、前記基材載置テーブルの上方に配置されかつ少なくとも1つのノズルを有するディスペンサーと、前記基材を挟んで前記ノズルと反対側に配置された基材押圧ロールと、前記ノズルと前記基材押圧ロールの間に電界を印可する電界印加手段を備えると共に、前記基材搬送機構と前記ディスペンサーと前記電界印可手段のタイミングを制御する制御手段を備えたことを提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、塗布対象部に電極が形成されていない基材であっても低コストのディスペンサー方式で、機能膜溶液を塗布位置精度良く塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本実施例では機能膜溶液として有機発光材料を溶剤に溶解した有機発光材料インクを用いて有機ELディスプレイの発光層を形成する取組みを行った。
【0022】
まず、本実施例で作成した有機ELディスプレイの構造について説明する。
【0023】
図12は本実施例で作成した有機ELディスプレイの構造を示す図である。図12(a)は平面図、図12(b)は図12(a)のA−A断面図である。
【0024】
図12において、1は基材、2は基材1の上に形成した第1電極である。本実施例では基材1には厚さ100ミクロンのポリエチレンナフタレートのシートを用い、第1電極2の材料としては、ITOを用いてフォトリソグラフィー法によってパターニングした。3は第1電極2の上に形成した隔壁、11は引き込み用凸部、4は隔壁3により形作られた溝部に形成した赤色(R)有機発光層、5は緑色(G)有機発光層、6は青色(B)有機発光層で発光層の厚さは60ナノメートル程度とした。隔壁3の材料としては、パターニング後に有機発光材料インクに対して撥液性を発現し、接触角が50deg以上となるように、フッ素を含有させた感光性樹脂材料を用いてフォトリソグラフィー法によってパターニングした。引き込み用凸部11についても、隔壁3と同じ材料のものを用いて同様の方法で形成した。7は有機発光層4、5、6の上に形成された第2電極である。第2電極の材料としてはAlを用い、マスク越しの真空蒸着法によってパターニングした。
【0025】
次に上記のように構成される有機ELディスプレイの有機発光層の形成手順を、図13、図14を用いて説明する。
【0026】
図13は本実施例における有機ELディスプレイの隔壁の配置を示す図、図14は発光層の形成手順を示す図である。
【0027】
本実施例では、図13に示すように、基材1の上に隔壁3を形成した。隔壁の幅は40ミクロン、隔壁間の溝幅を60ミクロン、隔壁の高さは1ミクロンとした。引き込み用凸部の高さも隔壁と同じ1ミクロンとした。
【0028】
この隔壁間の溝へ、赤色(R)有機発光材料インクを塗布して乾燥させて図14(a)の赤色(R)有機発光層4を形成し、その後、緑色(G)有機発光材料インクを塗布して乾燥させて図9(b)の緑色(G)有機発光層5を形成し、その後、青色(B)有機発光材料インクを塗布して乾燥させて図9(c)の青色(B)有機発光層6を形成した。
【0029】
<実施の形態1>
次に、本発明の実施の形態1について図1〜4を参照して説明する。
【0030】
図1は本発明の実施の形態1を示す図、図2は本発明の実施の形態1における引き込み用凸部を設けた隔壁形成基材を示す図、図3は本発明の実施の形態1の原理を説明するための側面図、図4は本発明の実施の形態1の塗布方法を説明する図である。
【0031】
図1において1は基材、3は基材1の上に形成されたストライプ状の隔壁であり、その間の溝部が塗布領域となる。11は基材1上で塗布領域外かつ塗布領域の延長線上に設けられた引き込み用凸部、20は基材1を載置する基材載置テーブル、24は基材1の上方に不図示の駆動手段により一定の間隙を開けた状態で塗布領域に沿って移動可能に構成されたディスペンサーであり、ディスペンサー24は下端部のノズル22と、その上部に連結されたシリンジ21と、シリンジ21の上部に接続された配管23および配管23内に気体を供給する不図示の気体供給装置より構成されている。
【0032】
本実施例では気体供給装置として、電気信号の入力によって設定圧力を調整できる電空レギュレータを用いた気体供給装置を使用し、基材上でディスペンサーを移動させる際の加速時には、その移動速度に応じて設定圧力を変化させることで、加速領域においても塗布量が均一になるようにした。14はディスペンサーから吐出される有機発光材料インクであり、41はノズル22と基材載置テーブル20の間に接続された電界印加手段である。
【0033】
次に、上記のように構成された本実施例の塗布装置の動作について説明する。
【0034】
まず、ストライプ状の隔壁3および引き込み用凸部11を形成した基材1を、基材載置テーブル20上で吸着固定する。次に、ディスペンサーのノズルを引き込み用凸部の上方へ位置決めする。この状態で気体供給装置から配管へ気体を供給すると共に、電界印加手段によってノズルと基材載置テーブル間に電界を印加してシリンジ内の有機発光材料インクをノズル先端より連続的に吐出させる。そして吐出したインクの先端が着弾するのとほぼ同じタイミングで、不図示の駆動手段によりディスペンサーを塗布領域方法へ向けて移動させはじめ、ノズルが塗布領域上に到達するまでに一定速度に加速しておき、塗布領域内を一定速度で移動させながら有機発光材料インクを塗布した。
【0035】
本実施例では、ノズルは内径50ミクロンのものを用い、有機発光材料インクは粘度100mPa・secのものを用い、ノズル先端部と基材の距離を100ミクロン、電界印加手段の電圧を1.5kVとし、ディスペンサーの定速での移動速度を150mm/sとした。このように、引き込み用凸部を塗布の起点とすることによって、図3の(a)に示すように、ノズルから吐出されたインクの先端がノズル基材間の距離が最も近くて電界が強くなる引き込み用凸部に引き寄せられ、その後に続くインクは図3の(b)に示すように、既に塗布されたインクが最も高くなり、その部分へ引き寄せられて着弾するため、ノズルの穴位置精度が悪くても、穴位置精度以上の高い位置精度で塗布ができ、それを繰り返すことで、図3の(c)に示すように、塗布領域内へ正確にインクを導くことが出来た。
【0036】
以上のようにしてストライプ状に形成された隔壁間の塗布領域内に、はみ出し無く有機発光材料インクを塗布することが出来た。
【0037】
この塗布動作の後にインクを乾燥させて1色目の発光層の高さを1ミクロン厚の引き込み用凸部より低い約60ナノメートル厚とし、次の色の有機発光材料インクを同様に塗布して乾燥し、更に繰り返して三色の発光層を形成した。
【0038】
なお、本実施例を示す図1において、塗布したインクが一定の幅になるように示したが、図4に示すように隔壁の中へ引き込んでしまうまでの間、塗布量を少なくしても良く、このようにすることで、隔壁の存在しない基材上でのインクの濡れ広がりを抑えることが出来る。
【0039】
なお、本実施例では、電界印加手段の電圧を一定値としたが、塗布開始時にこの電圧を変化させて引き込み状態を調整しても構わない。
【0040】
なお、本実施例では、ノズル先端と基材の距離を一定値としたが、塗布開始時にこの距離を変化させて引き込み状態を調整しても構わない。
【0041】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について図5、図6を参照して説明する。図5は本発明の実施の形態2における引き込み用凸部付き隔壁形成基材を示す図、図6は本発明の実施の形態2の方法による有機ELディスプレイの発光層の形成段階を示す図である。
【0042】
本発明の実施の形態2と本発明の実施の形態1との違いは、使用する基材に形成された引き込み用凸部の配置の違いだけであるので、その部分についてのみ説明する。
【0043】
図5において引き込み用凸部11は、同一発光色のインクが塗布される塗布領域に対応する凸部が同一直線上に配置され、別の発光色のインクが塗布される塗布領域に対応する凸部は、異なる直線上に配置されている。このようにして赤色、緑色、青色の三色に対応する発光層を塗布する場合、隣り合う凸部が3段を成すように繰返されて配置される。
【0044】
以上のような構成の引き込み用凸部を備えた基材を用い、まず、図6(a)に示すように塗布領域に近い色から塗布して乾燥させ、続いて、図6(b)に示すように真ん中の色を塗布して乾燥させて、最後に、図6(c)に示すように最も塗布領域から遠い位置に引き込み用凸部を設けた色を塗布して乾燥させて三色の発光層を形成した。発光層の厚さは約60ナノメートルで、引き込み用凸部の高さが1ミクロンであるため、塗布の開始点は基本的には本発明の実施の形態1で用いた引き込み用凸部の構成であってもノズルとの間隙の最も小さい引き込み用凸部へ引き寄せられるが、より確実に引き寄せる方法として、塗布開始時に引き込み用凸部の近傍に発光層が存在しないようにするために引き込み用凸部の配置を実施の形態2のよう段々にした。このようにすることで、より確実な引き寄せが出来て、はみ出し無く塗布できるほか、引き込み用凸部の高さと発光層の高さが近い場合、または発光層の高さが引き込み用凸部の高さより高い場合においても、確実に引き込み現象を起こさせることが出来、このような場合であっても隔壁間の溝部に、はみ出し無く塗布することが出来る。
【0045】
<実施の形態3>
次に本発明の実施の形態3について図7を参照して説明する。図7は本発明の実施の形態3における引き込み用凸部付き隔壁形成基材を示す図である。
【0046】
本発明の実施の形態3と本発明の実施の形態1との違いは、使用する基材に形成された引き込み用凸部の配置および厚さの違いだけであるので、その部分についてのみ説明する。
【0047】
図7において引き込み用凸部11は、同一発光色のインクが塗布される塗布領域に対応する凸部が同一直線上に配置され、別の発光色のインクが塗布される塗布領域に対応する凸部は、異なる直線上に配置されている。このようにして赤色、緑色、青色の三色に対応する発光層を塗布する場合、隣り合う凸部が3段を成すように繰返されて配置される。更に本実施例の場合の引き込み用凸部11は、隔壁によって形成された溝部の内側に形成されており、隔壁3の厚さに比べて厚く形成されている。今回は隔壁厚さ1ミクロンより厚い3ミクロンとした。
【0048】
以上のような構成の引き込み用凸部を備えた基材を用いて本発明の実施の形態2と同様にしてインクを塗布して発光層を形成した。本実施例のように引き込み用凸部を隔壁の高さより高くしてかつ隔壁間の溝の中へ入れることで、塗布したインクが確実に溝内に収まり塗布領域外でのインクの濡れ広がりによる混色等の発生を防止することが出来る。
【0049】
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4について図8〜10を参照して説明する。
【0050】
図8は本発明の実施の形態4における引き込み用液滴を基材上に塗布した隔壁形成基材を示す図、図9は本発明の実施の形態4の原理を説明するための側面図、図10は本発明の実施の形態4における引き込み用液滴を隔壁材料上に塗布した隔壁形成基材を示す図である。
【0051】
本発明の実施の形態4と本発明の実施の形態1との違いは、基材上に引き込み用凸部を設ける代わりに、基材上に引き込み用の液滴を塗布しておき、それを引き込み用の起点にして塗布する点であり、それ以外については実施の形態1と同様であるので、この部分についてのみ以下に説明する。
【0052】
まず、ノズルを引き込み用凸部に相当する場所に位置決めした後、ディスペンサーに気体供給装置から気体を供給すると共に、電界印加手段によってノズルと基材載置テーブル間に電界を印加してシリンジ内の有機発光材料インクをノズル先端より吐出して基材1上に図8の60に示す引き込み用液滴を形成する。その後、この液滴を実施の形態1における引き込み用凸部11と同じように扱って、図9に示すように連続塗布時のインクの先端を引き込み用液滴60に引き寄せて塗布を開始する。この後は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0053】
本実施例のように、ノズルの穴位置精度がインクの塗布位置精度と同等以上の場合には、基材上の平らな場所で電界を印加した状態でノズルよりインクを吐出して引き込み用の液滴を形成しておいてから連続塗布を開始することによって引き込み用凸部を別途設けることなく、隔壁間の溝部に、はみ出し無く塗布することが出来る。
【0054】
なお、本実施例では図8のように隔壁の形成されていない基板上に引き込み用液滴を形成したが、図10のように溝の無い隔壁のべた膜を形成した領域に引き込み用液滴を形成してもよく、このようにすることで隔壁のインクに対する撥液性によって液滴の濡れ広がりが抑制され、より高い液滴となるので引き寄せ効果を強くすることが出来る。
【0055】
<実施の形態5>
次に、本発明の実施の形態5について図11を参照して説明する。図11は本発明の実施の形態5の塗布装置を示す図である。
【0056】
図11において、1はロールに巻かれた長尺シートの基材、3は基材1上に基材の長手方向に平行に形成されたストライプ状の隔壁、11は基材1上に形成された引き込み用凸部、48は隔壁3の間の溝の上方に複数のノズルを配置されたマルチノズルディスペンサーヘッド、47は基材1の上面と48のマルチノズルディスペンサーヘッドのノズル先端が均一な間隙になるように配置された基材押圧ロール、41は48のマルチノズルディスペンサーヘッドのノズルと47の基材押圧ロールとの間に電界を印加するための電界印加手段、45は基材搬送用ロール1、46は基材搬送用ロール2であり不図示の駆動手段によって長尺シートの基材1を搬送できるようになっている。
【0057】
更に、前記48のマルチノズルディスペンサーヘッドに接続されて気体を供給する不図示の気体供給手段と、前記駆動手段と前記電界印加手段と前記気体供給手段のタイミングを制御する不図示の制御手段とを備えている。
【0058】
次に、上記のように構成された本実施例の塗布装置の動作について説明する。長尺シートの基材1は搬送ロール1および2によって一定速度で連続搬送され、基材押圧ロールによって押圧されて基材の上面とマルチノズルディスペンサーヘッドのノズル先端とが一定の間隙になるように搬送される。
【0059】
一方、基材の上方に間隙を開けて配置されたマルチノズルディスペンサーは、基材上の引き込み用凸部がノズル下方に到達した時点で、不図示の気体供給装置より気体を供給されると共に、電界印加手段によってノズルと基材押圧ロールの間に電界が印加され、ノズルから有機発光材料インクを吐出して基材上に塗布を開始する。その後、インクを連続的に吐出して隔壁の終端がノズルの下方に到達した時点で、不図示の気体供給装置からの気体の供給を停止すると共に、電界印加手段による電界の印加を停止してノズルからのインクの吐出を終了する。
【0060】
以上の動作を繰り返して、長尺シート上に形成された複数の隔壁ブロックに対して塗布を行こない、隔壁の溝内へ精度良く塗布することが出来た。
【0061】
なお、本発明の実施の形態において、有機発光層4、5、6を第1電極2の上に形成する場合について示したが、図12(c)のように第1電極2の上に正孔輸送層9、中間層10をスピンコート法などで積層し、その上に隔壁3を形成した後、有機発光層4、5、6を形成しても良い。
【0062】
なお、本発明の実施の形態において、ディスペンサーは気体供給装置を用いたタイプのものを用いたが、これに限定されるものではなく、例えばシリンジポンプを用いたディスペンサーであっても良く、更にはインクの粘度と塗布速度によっては電界印加手段のみで吐出を制御できる場合もあり、そのような場合には気体供給手段等のポンプ手段は必要が無い。
【0063】
なお、本発明の実施の形態において、有機ELディスプレイの有機発光材料インクの塗布について示したが、有機ELディスプレイの製造方法に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態において、有機発光材料インクの粘度を100mPa・secとしたが、これに限定されるものではなく、例えば数mPa・secから数千mPa・secでも適応可能である。
【0064】
なお、本発明の実施の形態において、ノズルと基材載置テーブルの間に電界を印加したが、ノズルと基材との間に電界を印加しても同様の効果が得られる。
【0065】
なお、本発明の実施の形態において、基材をポリエチレンナフタレートのシートとしたがこれに限定するものではなく、例えばガラス基板であっても構わない。
【0066】
なお、本発明の実施の形態において、パッシブマトリクス型のディスプレイを示したが、アクティブマトリクス型のディスプレイにも実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の有機ELディスプレイの製造方法および装置は、画素ピッチが微細な有機ELディスプレイの発光層を形成できるだけでなく、隔壁の溝内に中間層等を形成する場合においても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における引き込み用凸部付き隔壁形成基材を示す図
【図3】本発明の実施の形態1の原理を説明するための側面図
【図4】本発明の実施の形態1の塗布方法を説明する図
【図5】本発明の実施の形態2における引き込み用凸部付き隔壁形成基材を示す図
【図6】本発明の実施の形態2の方法により有機ELディスプレイの発光層の形成段階を示す図
【図7】本発明の実施の形態3における引き込み用凸部付き隔壁形成基材を示す図
【図8】本発明の実施の形態4における引き込み用液滴を基材上に塗布した隔壁形成基材を示す図
【図9】本発明の実施の形態4の原理を説明するための側面図
【図10】本発明の実施の形態4における引き込み用液滴を隔壁材料上に塗布した隔壁形成基材を示す図
【図11】本発明の実施の形態5を示す図
【図12】本実施例の有機ELディスプレイの構造を示す図
【図13】本実施例の有機ELディスプレイの隔壁を示す図
【図14】本実施例の有機ELディスプレイの発光層の形成段階を示す図
【図15】従来の有機ELディスプレイの発光層の塗布方法における課題を説明するための図
【図16】従来の有機ELディスプレイの発光層の塗布方法における課題を説明するための断面図
【図17】従来の蛍光体層の塗布方法を示す図
【符号の説明】
【0069】
1 基材
2 第1電極
3 隔壁
4 赤色(R)有機発光層
5 緑色(G)有機発光層
6 青色(B)有機発光層
7 第2電極
8 表示用画素領域
9 正孔輸送層
10 中間層
11 引き込み用凸部
14 有機発光材料インク
20 基材載置テーブル
21 シリンジ
22 ノズル
23 配管
24 ディスペンサー
41 電界印加手段
43 引き込み用凸部付き隔壁形成基材
45 基材搬送用ロール1
46 基材搬送用ロール2
47 基材押圧ロール
48 マルチノズルディスペンサーヘッド
60 引き込み用液滴
101 基材
103 隔壁
104 蛍光体ペースト
105 隔壁形成基材
113 アドレス電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で囲まれた複数の塗布領域を有する電子デバイスの基材において、
各塗布領域に応じて、塗布領域の外側かつ塗布領域の延長線上に凸部を有すること
を特徴とする電子デバイス用基材。
【請求項2】
前記凸部は前記隔壁と同材料からなる請求項1記載の電子デバイス用基材。
【請求項3】
前記凸部は複数形成されており、塗布領域に塗布する機能膜の種類に応じて、隔壁の長手方向に垂直に直線状に配置されている請求項1又は2に記載の電子デバイス用基材。
【請求項4】
機能膜の成分を溶媒に溶解した機能膜溶液をノズル先端から吐出して、前記ノズルと相対的に移動する基材に塗布して前記基材上に機能膜を形成する機能膜の製造方法であって、
基材を載置する機材テーブルと前記ノズルとの間,又は,前記ノズルと前記基材との間に電界を印加すると共に前記基材に設けられた凸部から塗布を開始し、隔壁で囲まれた塗布領域内に連続的に前記機能膜溶液を塗布すること
を特徴とする機能膜の製造方法。
【請求項5】
機能膜の成分を溶媒に溶解した機能膜溶液をノズル先端から吐出して、前記ノズルと相対的に移動する基材に塗布して前記基材上に機能膜を形成する機能膜の製造方法であって、
基材を載置する機材テーブルと前記ノズルとの間,又は,前記ノズルと前記基材との間に電界を印加すると共に隔壁で囲まれた塗布領域の外側かつ前記塗布領域の延長上に引き込み用の液滴を塗布し、前記引き込み用の液滴から塗布を開始して前記塗布領域内に連続的に機能膜溶液を塗布すること
を特徴とする機能膜の製造方法。
【請求項6】
基材を載置する基材載置テーブルと、前記基材載置テーブルの上方に配置されかつ少なくとも1つのノズルを有するディスペンサーと、前記ノズルと前記基材載置テーブルを相対的に移動させる駆動手段と、前記ノズルと前記基材載置テーブルの間に電界を印可する電界印加手段と、前記駆動手段と前記ディスペンサーと前記電界印加手段のタイミングを制御する制御手段を備えたこと
を特徴とする機能膜の製造装置。
【請求項7】
前記基材をロールで搬送する基材搬送機構を備え、
前記基材載置テーブルの上方に配置されかつ少なくとも1つのノズルを有するディスペンサーと、前記基材を挟んで前記ノズルと反対側に配置された基材押圧ロールと、前記ノズルと前記基材押圧ロールの間に電界を印可する電界印加手段を備えると共に、前記基材搬送機構と前記ディスペンサーと前記電界印可手段のタイミングを制御する制御手段を備えたこと
を特徴とする機能膜の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−301719(P2009−301719A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151243(P2008−151243)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】