説明

電子ビームを感知するための多層検出器及び方法

電子ビーム106の強度を感知するための検出器及び方法が開示される。例示の検出器は、導電コア110と、導電コア110の上に形成された絶縁層112と、電圧電位に電気的に接続され、絶縁層112の上に形成された外側導電層114とを有する多層複合構造104を含む。支持体116が、電子ビーム発生器102とターゲット領域108との間で、電子ビーム発生器102によって発生される電子ビーム106の直接経路の内部で、電子ビーム発生器102と位置合わせして導電コア110を配置するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子ビームは、殺菌目的のためのパッケージング材料の照射を含めた、しかしそれに限定されない様々な用途で使用される。例えば、飲料を入れるために使用される容器などのパッケージング材料が、電子ビーム照射を使用して殺菌される。電子ビームの強度をオンライン制御するため、及び均一性変動を監視するために、電子センサが線量照射測定に使用される。センサからの信号が解析されて、フィードバック制御信号として電子ビーム制御システムにフィードバックされる。パッケージング材料の殺菌では、そのようなセンサ・フィードバックを使用して、十分なレベルの殺菌を保証することができる。望ましい保存期間の長さ、並びにパッケージの配送及び貯蔵が低温で行われるか、それとも周囲温度で行われるかに応じて、様々なレベルの殺菌を選択することができる。
【0002】
直接測定法に基づく、電子ビーム強度を測定するための既存のセンサの1種は、真空チャンバ内部に配置された導体を使用する。真空チャンバは、周囲環境からの隔離をもたらす。真空ベースのセンサは比較的大きいので、ターゲット物体の遮蔽を回避するために、直接電子ビーム経路の外側の位置に位置する。遮蔽は、例えば、パッケージング材料の適切な照射(したがって適切な殺菌)を妨げることがある。したがって、これらのセンサは、ビームの周辺からの二次情報、又は二次照射からの情報に基づいて測定値を提供する。
【0003】
動作時、十分なエネルギーを有する電子ビームからの電子は、真空チャンバのチタン(Ti)窓などの窓を通過して、導体によって吸収される。吸収された電子は、導体内で電流を発生する。この電流の大きさは、真空チャンバの窓を通過する電子の数の尺度である。この電流は、センサ位置での電子ビームの強度の間接的な尺度を提供する。
【0004】
保護コーティングを有する真空チャンバと、チャンバ内部の信号ワイヤを表す電極とを有する公知の電子ビーム・センサが、公開されている米国特許出願第2004/0119024号に記載されている。チャンバ壁は、導体の周りで真空体積を維持するために使用される。記載されているセンサは、電子ビーム密度を感知するために電極と正確に位置合わせされた真空チャンバ窓を含む。センサは、二次照射を感知するために、照射される移動物に対して、電子ビーム発生器とは反対側の位置に配置されるように構成される。同様の電子ビーム・センサが、特許公開WO2004/061890号に記載されている。このセンサの一実施例では、真空チャンバが取り除かれ、電極には絶縁被膜が設けられる。絶縁被膜は、電子ビームによって生成される静電場及びプラズマ電子からの影響が電極出力に実質的に影響を及ぼすのを回避するために提供される。
【0005】
米国特許第6657212号には、電子ビーム管の窓の外側に配置された電流検出ユニットのステンレス鋼導体などの導体に絶縁被膜が提供される電子ビーム照射処理デバイスが記載されている。電流測定ユニットは、検出される電流を測定する電流計を含む。この特許は、セラミック被覆検出器の利点を記載している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
電子ビームの強度を感知するための検出器であって、導電コアと、導電コアに接して形成された絶縁層と、電圧電位に電気的に接続され、絶縁層に接して形成された外側導電層とを有する多層複合構造と、電子ビーム発生器とターゲット領域との間で、電子ビーム発生器によって発生される電子ビームの直接経路の内部で、電子ビーム発生器と位置合わせして導電コアを配置するように構成された支持体とを備える検出器が開示される。
【0007】
また、経路に沿って放出される電子ビームでターゲット領域を照射するための方法が開示される。この方法は、電子出口窓を通して、且つ経路に沿って電子ビームを放出するステップと、電子出口窓から出る電子ビームを検出するステップとを含み、検出が、導電コアと、導電コアに接して形成された絶縁層と、絶縁層に接して形成された外側導電層とを有する多層複合構造を用いて行われ、外側導電層が電圧電位に接続される方法が開示される。
【0008】
経路に沿って放出される電子ビームでターゲット領域を照射するための装置であって、電子出口窓を通して、且つ経路に沿って電子ビームを放出するための手段と、電子出口窓から出る電子ビームを検出するための手段とを備え、検出が、導電コアと、導電コアに接して形成される絶縁層と、絶縁層に接して形成される外側導電層とを有する複合構造を用いて行われ、外側導電層が電圧電位に接続される装置が開示される。
【0009】
他の特徴及び実施例は、好ましい実施例の以下の詳細な説明を添付図面に関連して読めば当業者に明らかになろう。同様の参照番号が、同様の要素を表すために使用されている。
【実施例】
【0010】
図1は、電子ビーム発生器102など電子ビームを放出するための手段と、検出器104など電子ビームを検出するための手段とを組み合わせて含む例示システム100を図示する。検出器104は、ターゲット領域108を照射する、経路に沿って電子ビーム発生器によって発生される電子ビーム106の強度(例えば瞬時強度)を感知するために提供される。
【0011】
検出器104は、導電コア110と、絶縁層112と、絶縁層112に接して形成された外側導電層114とを有する多層複合構造を含む。例示実施例では、外側導電層114は、検出器の接地電位(例えば、例示システム100の接地電位)に接続され、又は検出器の近傍でプラズマから電子が引き出される速度に影響を及ぼすのに十分な電圧電位に接続される。
【0012】
本明細書で言及する際、そのような速度は、電子ビーム強度の測定において所望のレベルの一貫性及び精度が特定の期間にわたって得られるまで、外側導電層114に印加される電圧を調節することによって実験的に決定することができる。この特定の期間中、例えば、外側導電層をテスト電位に接続することによって、且つ(図1の検出器と同様に構成された、又はその外側層が接地電位にある他の適切な構成の)第2の独立した検出器を同時に使用することによって、電子ビーム強度を監視することができる。第2の検出器は、セットアップ段階中に電子ビーム強度を測定するために、所定の期間にわたって電子ビーム経路内に周期的に配置することができる。第2の検出器は、電子ビーム経路内に周期的に挿入されたとき、(電子ビーム経路内部に継続的に維持される)図1の検出器を使用して得られる測定値と比較される測定値を得るために使用することができる。測定の合間に、第2の検出器を電子ビーム経路から取り外すことができ、任意のプラズマ蓄積を放電することができる。図1の検出器の測定の所望の一貫性及び精度を提供する外側導電層に印加される電圧電位が識別されるまで、図1の検出器での電圧電位を、様々なセットアップ段階サイクルにわたって調節することができる。例示実施例では、0〜10ボルト程度の電圧電位を外側導電層に印加することができる。
【0013】
支持体116が備えられ、該支持体116は、電子ビーム発生器102など電子ビーム発生器と位置合わせして複合構造を配置するように構成される。検出器104は、支持体116から絶縁することができる。支持体は、電子ビーム発生器とターゲット領域108との間で、電子ビーム発生器102によって発生される電子ビームの直接経路の内側或いは内部に複合構造を配置する。本明細書で言及する際、「直接経路の内側或いは内部」という表現は、電子ビーム出口窓とターゲット領域との間の位置を表し、したがって、限定された領域の電子だけでなく、ビーム106(すなわちビーム全体、又はビームの任意の適切な部分)の幅に沿った電子が感知される。平行な経路内のビームからの電子は、ターゲット領域108内に配置されたターゲット物体に衝突する。
【0014】
例示の図1の実施例に示されるような電子ビーム発生器102は、所望の用途のために電子ビーム発生器を駆動するのに十分な電圧を提供するのに適した高電圧電源118を含む。また、電子ビーム発生器は、高電圧電源118の高電圧を基準とするフィラメント電源120を含み、これは、高電圧電源118からの電力を、電子ビーム発生器の電子放出フィラメント122のための適切な出力電圧に変換する。さらに、高電圧電源118は、グリッド制御機構119を含む。
【0015】
フィラメント122は、真空チャンバ124内部の反射器内に収容することができる。例示実施例では、真空チャンバ124は気密封止することができる。動作時、フィラメント122からの電子(e)は例えば電子ビーム106に沿った経路のような、ターゲット領域108に向かう方向に、電子ビーム106の経路など電子ビーム経路に沿って放出される。
【0016】
例示実施例では、検出器104は、ターゲット材料を保持するために使用される支持体と組み合わせて使用することができる。そのような支持体は、図1の例示実施例では、パッケージング・デバイス126、例えばパッケージング材料ウェブ走行ローラ又は任意の他の適切なデバイスとして表される。パッケージング・デバイス126は、検出器104の導電コア110に対する所望の測定位置でターゲット領域108内にターゲット材料を保持するために使用される。
【0017】
例示の図1の実施例では、検出器104は、電子ビーム発生器102から独立したものとして示されている。しかし、代替実施例では、フィラメント122によって発生される電子ビーム106は、電子ビーム発生器の出口窓128を通過することができる。出口窓128は、電子ビームを拡散してより均一なビームにするため、及びターゲット領域108に向かって電子ビームを集束させるために使用することができる。例示実施例では、検出器104は、出口窓128に形成するか、又は出口窓128に取り付けることができる。
【0018】
図1の例示検出器104は、任意選択の窓130を含む。窓130は、電子ビーム発生器102に面する検出器104の部分に形成することができる。例示の窓130は、例えば、絶縁層112の一部分をエッチングして、直径が縮小された領域を形成することによって形成することができ、それにより、フィラメント122からの電子が、この領域内で導電コア110に貫入することができる。
【0019】
例示の図1の実施例では、円柱形の同軸検出器104の断面図が提供される。しかし、検出器は、様々な構成の任意のもので形成される多層複合構造を含むことができる。例えば、複合構造は、同軸構成であっても、平坦なサンドイッチ構成、又は任意の他の所望の構成であってもよい。窓130は、使用される構成に関わらず形成することができる。この窓の使用は、絶縁層が導電コアに達するには不十分なエネルギーの電子をフィルタリングすることを可能にし、同時に、電子ビームの非常に特定の領域内での電子ビームの測定を可能にする。
【0020】
フィラメント122から放出された電子がターゲット領域に向かって進むとき、電子は、この経路に沿って空気分子と衝突する。エミッタ電子は、この経路に沿ってガスをイオン化して、それによりプラズマを生成するのに十分なエネルギーを有することができる。プラズマは、イオン及び電子を含む。プラズマ電子は、二次電子又は熱電子であり、電子ビームからの電子に比べて低いエネルギーを有する。プラズマ電子は、ランダムなベクトル速度を有し、ある距離のみを進むことができ、その距離の長さは、ビーム電子のための平均自由経路よりも小さい。
【0021】
例示実施例では、プラズマ電子は、数電子ボルト(eV)程度など、第1のしきい値未満のエネルギーを有することができる。放出される電子は、数十電子ボルト(eV)程度など、しきい値を超えるエネルギーを有することができる。例えば、エミッタ電子の貫入は、(水1.0g/cc中で)10〜50マイクロメートル(μm)程度となることがあり、一方、プラズマ電子は、1マイクロメートル未満だけ貫入する(1.0g/cc)。
【0022】
プラズマ電子が導電コアに達するのを最小限にする、且つ/又はなくすために、導電コア上の複合コーティングの厚さを、所望のしきい値に応じて選択することができる。前述の例では、この厚さは、1マイクロメートルよりも大きくすることができるが、フィルタを通して所望のエネルギーの放出電子を導電コアに接触しないようにするほどは厚くはない。窓130内の外側導電層114は、上述した多層検出器の例示寸法に関して、数百ナノメートル(nm)程度など比較的薄く構成することができる。
【0023】
絶縁層112は、プラズマ電子が導電コアに達するのを防止するのに十分な厚さで形成することができるが、プラズマ電子を「ブリードオフ(bleed off)」して、表面上へのプラズマ電子の蓄積を防止するために、外側導電層114が提供される。そのような蓄積は、場合によっては、所望の放出電子が導電コアに達するのを妨げることがある。また、外側導電層は、絶縁層のために、環境からの保護を提供するために構成することもできる。
【0024】
導電コアの厚さは、任意の適切な寸法にすることができる。例えば、絶縁層と外側導電層とを合成した厚さに比べて比較的小さな導電コアを使用することができる。例示実施例では、複合構造の直径は、望みに応じて、0.3ミリメートル(mm)程度、或いはそれよりも小さく又は大きくすることができる。適切に小さな寸法に設定される場合、検出器は、ターゲット領域を遮蔽せずに、フィラメント122とターゲット領域108との間で電子ビームの直接経路の内部に位置決めすることができる。
【0025】
導電コアに達する電子は、電流計132によって検出することができる。検出された電流は、窓130に衝突する電子ビームの領域での電子ビーム強度の尺度とみなすことができる。電流計からの出力は、例えば、プログラム可能なコンピュータ、処理装置、又は他の同様のデバイスとして構成される制御装置134に供給することができる。制御装置134は、電子ビーム検出器の出力に応じて電子ビームの強度を調節するための手段として機能することができる。例えば、制御装置134は、電流計132の出力を設定値と比較し、次いで電源118、フィラメント120、及び/又はグリッド制御機構119の出力を調節して、これらの構成要素の任意の1つ又は複数からの調整された出力を達成することによって、電子ビーム強度を所望の設定値に調節することができる。
【0026】
例示実施例では、導電コアは、銅又はステンレス鋼信号ワイヤ、或いは任意の他の適切な導体であってよい。絶縁層112は、例えば、二酸化珪素(SiO)又はアルミナ(Al)を含めた、しかしそれらに限定されない任意の適切な絶縁体であってよい。外側導電層114には、金を含めた、しかしそれに限定されない任意の適切な導体を使用することができる。
【0027】
既に言及したように、図1の例示検出器104は、窓130の使用により、ビームの指定された領域での電子ビーム強度を測定するために使用することができる。検出器は、比較的小さな寸法(例えば0.3ミリメートル〜1ミリメートル、又はそれ未満)で形成することができるので、導電コアに沿った平均強度尺度を提供するために、導電コアの長さに沿って複数の電子窓を作成することができる。
【0028】
図2は、複数の複合構造が提供される検出器200の例示実施例を示す。各複合構造は、図1に関して説明したものと同様にして構成することができる。しかし、この例示実施例では、各複合構造が、異なる寸法の複数の窓を含む。
【0029】
図2において、平行な導電コアを有する複数の複合構造202及び204が提供され、それぞれの複合構造の外側導電層が、異なる寸法で形成された複数の窓を含み、複数の複合構造は、電子ビーム経路内部で並べて(並列に)配置される。フィラメント(図1のフィラメント122など)から放出される電子は、第1の複合構造202、又は第2の複合構造204を通過することができる。第1の複合構造202の長さに沿って第1の寸法を有する窓は、第2の複合構造の長さに沿って第2の寸法を有する窓と平行である。第1及び第2の導電コアの平行な窓のいくつかが同じ寸法であってよいことを当業者は理解するであろう(例えば、第1及び第2の複合構造の長さに沿った中央領域に位置する窓)。
【0030】
例示実施例では、窓のサイズは、導電コアの一端から他端に向かって変えることができる。例えば、検出器200は、導電コアの一端から他端に向かう第1の方向に進むにつれて窓が大きくなっていく第1の複合構造202を含む。第2の複合構造204では、窓は、同じ第1の方向に沿って小さくなり、異なる寸法を有する第1及び第2の複合構造の平行な向かい合う窓を構成する。
【0031】
例示実施例では、総計の窓面積は、多層複合構造202と204のいずれも同じであってよい。したがって、電子ビームがその幅にわたって対称的な強度をもつ場合、電流検出器206及び208によって発生される信号は、処理装置210で解析されるときに等しくなる。しかし、電子ビーム強度が非対称(その幅にわたって不均一)である場合、電流検出器206及び208からの電流信号は、処理装置210で処理されるときに異なる。
【0032】
電流検出器206及び208からの出力を組み合わせて処理することによって、処理装置210は、電子ビームでの非対称性を識別し、電子ビームからの強度出力が傾けられている方向及び大きさを判別する出力(例えば表示)を生成するようにプログラムすることができる。比率の差を、処理装置210の出力212として生成して、電子ビーム均一性の尺度として使用することができる。例えば、(例えば検出器の中点付近の)中央領域で大きな窓を、検出器の端部で小さな窓を有する第1の導電コアを使用して、同じ効果を達成することができる。第1の実施例は、左右の非対称情報を与え、第2の実施例は、中央と側部との非対称情報を与える。また、これらの検出の組合せを使用することもできる。
【0033】
図2は、ビームの幅にわたる電子ビーム強度の均一性が検出される例示実施例を示すが、電子ビーム強度の多次元解析を測定することもできることを当業者は理解するであろう。図3は、電子ビーム強度の二次元測定を提供することができる例示実施例を示す。ここで、複合構造の例示アレイがグリッドとして形成されて、電子ビーム経路の断面の二次元内(すなわち、電子ビーム経路を横切る平面内)での複数の位置のそれぞれでの電子ビームのエネルギーを検出する。
【0034】
図3の検出器300では、複合構造302のアレイは、電子出口窓に取り付けることができるグリッド配置で提供することができる。したがって、検出器300は、検出器のメッシュ、又は線量マッピング・ユニットとみなすことができる。各導電コアからの情報(例えば、信号振幅、信号差/比、導電コア位置など)を、処理装置304によって放出強度プロットを生成するために使用することができる。処理装置304によって生成される例示プロット306が図3に例示される。
【0035】
例示の図3の実施例では、多層検出器300は、電子ビーム発生器の出口窓128として形成することができ、又は出口窓128に取り付けるように構成することができる。さらに、例示の図3の実施例では、複合構造302は、電子ビーム経路を横切る平面内で、互いに対してある角度で配置することができる。そのような構成は、グリッドの下を通るターゲット材料の遮蔽の低減(最小の遮蔽)をもたらすことができる。
【0036】
例えば、パッケージング材料などのターゲット物体が、図3に示される図の下部から図の上部に進む場合、パッキング材料の全ての部分が、材料が進むときに電子ビームによって均等に照射される。しかし、角度付きの複合構造は、その二次元断面にわたって複数の位置で電子ビームを感知し、それにより、殺菌プロセスに影響を及ぼすことなく、電子ビーム強度の正確なプロットを提供する。例示実施例では、角度が0又は90度、或いは他の適切な角度であってもよい(例えば、検出器を電子出口窓に対して直角に配置することもできる)ことを理解すべきである。
【0037】
図4は、均一な厚さを有する多層複合構造を使用して検出器が形成される例示実施例を示す。図4に示されるように、多層検出器400は、窓130を除いては図1の検出器と同様にして形成される導電コア402と、絶縁層404と、外側導電層406とを含む。
【0038】
図5は、第1及び第2の導電コア502及び504が設けられた、多層検出器500を形成するために使用される複数の複合構造の例示実施例を示す。第2の導電コア504は、多層検出器500の第1の絶縁層506に接して形成される。第2の絶縁層508は、第2の導電コア504に接して形成される。外側導電層510が第2の絶縁層508に接して形成され、したがって、第2の導電コア504及び第2の絶縁層は、第1の導電コア502と外側導電層510との間に形成される。
【0039】
この例示実施例では、検出器は、電子ビーム経路の間に配置することができ、それにより、経路に沿って発生された電子は、第1の導電コアに接触する前に外側導電層及び第2の導電コアを通過する。そのような構成は、例えば電流検出器512及び514を使用して電子ビーム強度及びエネルギーのマッピングを可能にする。これらの検出器は、図2及び3で論じたように、電子ビーム強度をマッピングするための処理装置に接続することができる。
【0040】
図5に示される検出器は、電子の強度とエネルギーとの両方を監視することを可能にする。最も内側の第1の導電層内に吸収される電子は、より高いエネルギーを有し、第2の導電層内に吸収される電子は、より低いエネルギーを有する。各層に達する電子の平均エネルギーは、図1の制御装置134などの制御装置によって計算することができる。この場合、制御装置は、強度対エネルギーのプロットを出力することができる。検出器に含まれる層の数は、分解能を定義するために使用することができ、層の厚さは、検出器の効率を定義するために使用することができる。
【0041】
図6A〜6Cは、様々な検出器構成の断面図を例示する。図6Aでは、円柱形の同軸検出器600が、内側導電コア602と、絶縁層604と、電圧電位(例えば接地)に接続することができる外側導電層606とを含む。
【0042】
図6Bは、内側コア層610と、絶縁層612と、外側導電層614とを有する検出器608の代替の非円柱形サンドイッチ構成を示す。外側層614は、前述したのと同様に電圧電位に接続することができる。
【0043】
図6Cは、図6Aの同軸構成の端部、及び/又は図6Bのサンドイッチ構成の側部に関連して使用することができる、露出された端部の例示修正形態を示す。図6Cでは、絶縁層620と共に導電内側コア618が設けられている。外側導電層622が絶縁層を覆い、したがって内側導電コアは、絶縁層及び外側導電層内部に完全に包囲され、内側コアが外側導電層によって取り囲まれる。
【0044】
図7は、検出器700の例示実施例を示し、この検出器700は、電子ビーム強度を測定することができ、強度測定時に検出器の近傍での任意のプラズマの影響を求めることができる。例えば、プラズマの影響を測定するために、調整可能な電圧を導電コアに接続することができる。DC電圧は、再現可能な様式で、記録される感知電流を変えるために調整することができる(例えば約−200〜+200ボルトの間で、或いはそれよりも低く又は高く)。負バイアス電圧で、電子ビーム内の電子は妨げられる。より低いしきい値DC電圧では、記録される電流は、プラズマ中の正イオンからのみ生じる。
【0045】
差分測定を、例えばインスタンス画角(instance angle of view)、バイアス電圧、又は幾何形状などのパラメータに関して行うことができる。そのような測定は、2つの異なる導電コアからの2つの信号を記録することに基づかせることができ、それにより、実際の電子信号がその差から計算される。
【0046】
図7で、例示検出器700は、多層電荷コレクタとして形成され、最上層(電子ビーム発生器の方向で)が、外側導電表面702として構成される。ここで、底部基板層710以外の各層を、例えば厚さ0.1〜1マイクロメートル(μm)程度の厚さで構成することができる。図7で、外側導電表面702と、複数の導電コアを表す追加の層704及び706とは、図6に関して論じたのと同様にして構成される。導電コアは、絶縁層708によって互いに離隔される。基板710は、支持構造として機能する。
【0047】
電流検出器714によって測定される電流の和は、電子ビーム強度に比例するものとみなすことができ、相対的な大きさが、図5に関して論じたのと同様にしてエネルギー分布に関する情報を提供する。上層702は、電子ビーム712からの電子の経路内に直接あってよい。図7は、外側導電表面と2つの導電コアとを含むが、満足な分解能を達成するために望みに応じて任意の数のそのようなコアを含むことができる。
【0048】
図8は、図6Aに示される検出器の代替実施例を示す。円柱形の同軸検出器800は、内側導電コア802と、絶縁層804と、電圧電位、好ましくは接地に接続される外側導電層806とを含む。内側導電コア802は、好ましくは、ステンレス鋼又はアルミニウムからなるロッドである。ロッドの外面に、絶縁層804が堆積される。前記層804は薄く、好ましくは0.1〜10μm程度であり、好ましくは酸化物、例えば酸化アルミニウム(Al)からなる。別法として、ポリマーなど別の絶縁材料が使用されることもある。絶縁層804の外面に、外側導電層806が、好ましくは堆積によって形成される。前記層806は、好ましくは金(Au)からなることがある。前述したように、絶縁層804に外側導電層806を設ける目的は、プラズマ電子に対処し、プラズマ電子が絶縁層804の表面上に蓄積して、検出器周囲での電場特性を変えるのを防止することである。他の実施例では、外側導電層は薄くなっており、したがって、電子ビーム発生器からの電子がそこを通過することができる。しかし、導電層806は、より厚くされてもよい。その場合、内側導電コア802に達するように電子が通過することができる、少なくとも窓が導電層806に必要とされる。そのような1つ又は複数の窓は、プラズマ電子を排除することができる能力を外側導電層806が維持することができる限り、いくつかの方法で形成することができる。図示される実施例では、小さな窓808が検出器に沿って形成される。導電層806は、電子ビーム経路の外側に配置されることになる検出器の端部には形成されていない。さらに、検出器の端部では、導電コアが露出されて、検出器のためのコネクタとして働く。別法として、1つの細長い窓を有するのではなく、外側導電層806は、いくつかの「窓」を備えるネットとして形成されることがある。実験データ及び理論的なシミュレーションが、外側導電層の重要性を検証している。検出器の性能は、外側導電層が存在するとき、絶縁酸化物層のみで覆われた検出器に比べて大幅に改善される。
【0049】
経路に沿って放出される電子ビームでターゲット領域を照射するための例示の方法は、例示の図1の実施例に関連して理解することができる。ここで、電子ビーム106は、経路に沿って真空チャンバ124から放出される。真空チャンバから出る電子ビームは、既に論じた複合構造を有する多層検出器104を使用して検出することができる。別法として、本明細書で述べる任意の検出器、又は容易に明らかなそれらの変形形態を使用することができる。
【0050】
本発明を、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化することもできることを当業者は理解するであろう。したがって、本明細書で開示した実施例は、全ての面で例示的なものとみなされ、限定されるものとはみなされない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示されており、その意味及び範囲及び等価範囲内に入る全ての変更が、本発明により網羅されるものと意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】例示実施例による例示電子ビーム発生器及び関連の電子ビーム多層検出器を示す図である。
【図2】複数検出器構成の例示実施例を示す図である。
【図3】複数検出器構成の例示実施例を示す図である。
【図4】同軸検出器を含めた、しかしそれに限定されない様々な形状で構成することができる多層検出器の代替断面実施例を示す図である。
【図5】同軸検出器を含めた、しかしそれに限定されない様々な形状で構成することができる多層検出器の代替断面実施例を示す図である。
【図6A】同軸検出器を含めた、しかしそれに限定されない様々な形状で構成することができる多層検出器の代替断面実施例を示す図である。
【図6B】同軸検出器を含めた、しかしそれに限定されない様々な形状で構成することができる多層検出器の代替断面実施例を示す図である。
【図6C】同軸検出器を含めた、しかしそれに限定されない様々な形状で構成することができる多層検出器の代替断面実施例を示す図である。
【図7】同軸検出器を含めた、しかしそれに限定されない様々な形状で構成することができる多層検出器の代替断面実施例を示す図である。
【図8】本発明による多層検出器のさらなる代替実施例の3つの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生される電子ビーム(106)の強度を感知するための検出器であって、
導電コア(110;402;502、504;602;610;618;704、706;802)と、前記導電コアに接して形成された絶縁層(112;404;506、508;604;612;620;708;804)と、電圧電位に電気的に接続され、前記絶縁層に接して形成された外側導電層(114;406;510;606;614;622;702;806)とを有する多層複合構造(104;200;300;400;500;600;608;616;700;800)と、
電子ビーム発生器(102)とターゲット領域(108)との間で、前記電子ビーム発生器(102)によって発生される前記電子ビーム(106)の直接経路の内部で、前記電子ビーム発生器(102)と位置合わせして前記複合構造を配置するように構成された支持体(116)と
を備える検出器。
【請求項2】
前記外側導電層(114;406;510;606;614;622;702;806)が、前記検出器(104;200;300;400;500;600;608;616;700;800)の接地電位に接続される請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
前記外側導電層(114; 406;510;606;614;622;702;806)が、前記検出器(104;200;300;400;500;600;608;616;700;800)の近傍でプラズマから電子が引き出される速度に影響を及ぼすのに十分な電圧電位に接続される請求項1に記載の検出器。
【請求項4】
前記外側導電層(114; 406;510;606;614;622;702;806)が、前記導電コア(110;402;502;504;602;610;618;704、706;802)を取り囲む請求項1に記載の検出器。
【請求項5】
経路に沿って電子ビーム(106)を放出するための電子ビーム発生器(102)と、
前記電子ビーム発生器(102)のフィラメント(122)が内部に位置する真空チャンバ(124)と
を有する、電子ビーム発生器(102)を備えた請求項1に記載の検出器。
【請求項6】
ターゲット領域(108)内にターゲット材料を保持するための支持体(126)を有し、前記電子ビーム発生器(102)と前記ターゲット領域(108)との間に位置決めされた請求項5に記載の検出器。
【請求項7】
前記複合構造が、前記真空チャンバ(124)の電子ビーム出口窓(128)に形成される請求項5に記載の検出器。
【請求項8】
電子ビーム強度の尺度として前記導電コア(110;402;502;504;602;610;618;704、706;802)内の電流を検出するための電流計(132;206、208;412;512、514;714)
を備える請求項1に記載の検出器。
【請求項9】
前記経路内部の複数の位置のそれぞれで前記電子ビーム(106)の強度を検出するためのグリッドとして形成される前記複合構造(302)のアレイ
を備える請求項1に記載の検出器。
【請求項10】
前記複合構造が、前記ターゲット領域(108)内部でのターゲット材料の所望の走行方向に対してある角度で、且つ前記電子ビーム(106)の前記経路を横切る平面内に配置される請求項8に記載の検出器。
【請求項11】
前記絶縁層(506;708)に接して形成される第2の導電コア(504;704)と、
前記第2の導電コア(504;704)に接して形成される第2の絶縁層(508;708)と
を備え、前記外側導電層(510;702)が、前記第2の絶縁層(508;708)に接して形成され、それにより前記第2の導電コア(504;704)及び前記第2の絶縁層(508;708)が、前記第1の導電コア(502;706)と前記外側導電層(510;702)との間に形成される
請求項1に記載の検出器。
【請求項12】
前記経路に沿って発生された電子が前記導電コア(502;706)に接触する前に前記外側導電層(510;702)及び前記第2の導電コア(504;704)を通過するように、前記経路の間に配置された請求項11に記載の検出器。
【請求項13】
絶縁層(506;708)によって分離された複数の導電コア(502、504;704、706)
を備える請求項1に記載の検出器。
【請求項14】
前記外側導電層(114)が、断面が縮小された窓(130)を確立するために、厚さが縮小された領域を含む請求項1に記載の検出器。
【請求項15】
前記外側導電層(114)が、異なる寸法で形成された複数の窓(130)を含む請求項1に記載の検出器。
【請求項16】
複数の複合構造(202、204)を備え、各複合構造の前記外側導電層が、異なる寸法で形成された複数の窓を含み、前記複数の複合構造(202、204)が、前記電子ビーム経路(106)の内部に並べて配置され、それにより、第1の複合構造(202)の長さに沿って第1の寸法を有する窓が、第2の複合構造(204)の長さに沿って第2の寸法を有する窓に平行である
請求項1に記載の検出器。
【請求項17】
前記第1及び第2の複合構造(202、204)それぞれの導電コア内部の電流を検出するための第1の電流検出器(206)及び第2の電流検出器(208)と、
電子ビームの強度の非対称性を識別するために、前記第1の電流検出器(206)及び前記第2の電流検出器(208)の出力を組み合わせて処理するための処理装置(210)と
を備える請求項16に記載の検出器。
【請求項18】
経路に沿って放出される電子ビーム(106)でターゲット領域(108)を照射するための方法であって、
電子出口窓(128)を通して、且つ経路に沿って電子ビーム(106)を放出するステップと、
前記電子出口窓(128)から出る前記電子ビーム(106)を検出するステップと
を備え、前記検出するステップが、導電コア(110;402;502、504;602;610;618;704、706;802)と、前記導電コアに接して形成される絶縁層(112;404;506、508;604;612;620;708;804)と、前記絶縁層に接して形成される外側導電層(114;406;510;606;614;622;702;806)とを有する多層複合構造(104;200;300;400;500;600;608;616;700;800)を用いて行われ、前記外側導電層が電圧電位に接続される方法。
【請求項19】
前記外側導電層(114;406;510;606;614;622;702;806)が、前記検出の接地電位に接続される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記外側導電層(114;406;510;606;614;622;702;806)が、前記検出器の近傍でプラズマから電子が引き出される速度に影響を及ぼすのに十分な電圧電位に接続される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記複合構造が、第2の導電コア(504;704)と第2の絶縁層(506;708)とを含み、前記外側導電層(510;702)が、前記第2の絶縁層(506;708)に接して形成され、それにより前記第2の導電コア(504;704)及び前記第2の絶縁層(506;708)が、前記第1の導電コア(502;706)と前記外側導電層(510;702)との間に形成され、
前記第1の導電コア(502;706)及び前記第2の導電コア(504;704)に接触する電子を検出することによって、電子ビーム(106)のエネルギーをマッピングするステップ
を含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
互いに絶縁された少なくとも3つの導電コア
を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
電子ビーム強度の尺度として前記導電コア(110;402;502、504;602;610;618;704、706;802)からの電流を測定するステップ
を含む請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記検出が、複数の複合構造を用いて行われ、
電子ビーム強度のマッピングとして、少なくとも2つの異なる複合構造内で検出される電流のレベルを比較するステップ
を含む請求項18に記載の方法。
【請求項25】
経路に沿って放出される電子ビーム(106)でターゲット領域(108)を照射するための装置であって、
電子出口窓(128)を通って、且つ経路に沿って電子ビーム(106)を放出するための手段(102)と、
前記電子出口窓(128)から出る前記電子ビーム(106)を検出するための手段と
を備え、前記検出が、導電コア(110;402;502、504;602;610;618;704、706;802)と、前記導電コアに接して形成された絶縁層(112;404;506、508;604;612;620;708;804)と、前記絶縁層に接して形成された外側導電層(114;406;510;606;614;622;702;806)とを有する複合構造(104;200;300;400;500;600;608;616;700;800)を用いて行われ、前記外側導電層が電圧電位に接続される装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−513973(P2009−513973A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537636(P2008−537636)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/SE2006/001147
【国際公開番号】WO2007/050008
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)
【Fターム(参考)】