説明

電子レンジ用包装体

【課題】箱体の開封後の電子レンジによる加熱時に、内部の包装袋が十分膨張することのできる電子レンジ用包装体を提供することである。
【解決手段】箱体10と、箱体10に収められた包装袋20とを有する電子レンジ用包装体であって、箱体10における開封部15の非開封部との境界16は、前面11をわたって第2側面13b及び第3側面13dのそれぞれに続き、当該第2側面13b及び第3側面13dのそれぞれと裏面12との接合部まで延び、第2側面13bと裏面12との接合部における境界16の端部P1と、第3側面13dと裏面12との接合部における境界16の端部P2とを結ぶように裏面12に折り容易化線18が形成され、第2側面13b及び第3側面13dの少なくとも一方と裏面12との接合部における境界16の端部P1(P2)から裏面12に延びるように切込み18a(18b)が形成された構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気抜き部が形成されて電子レンジでの加熱が可能となるパウチ等の包装袋が箱体に収められた構造となる電子レンジ用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジでの加熱が可能となる逃圧口(蒸気抜き部)の設けられた食品用の包装袋(パウチ)が箱体に収められた構造となる電子レンジ加熱包装体が提案されている(特許文献1参照)。この電子レンジ加熱包装体においては、包装袋に加熱する際の内圧上昇を緩和するための逃圧口(蒸気抜き部)が形成され、その包装袋が、開放可能な切離開封部の形成された箱体に、その逃圧口を前記切離開封部に対向させて収められている。そして、箱体の切離開封部を開放して包装袋の逃圧口を露出させた状態にて、電子レンジにより包装袋内の食品内容物が加熱される。この加熱によって、箱体内の包装袋が膨張して内圧がある限界を超えると、逃圧口から蒸気が噴出し、包装袋内部の圧力が適切に維持されつつ包装袋内の食用内容物が加熱調理される。
【0003】
また、電子レンジ加熱パウチの外包装に使用される扁平箱形の化粧箱において、箱の底面に折り線及び該折り線に接続するパウチ支持部切り取り線を形成した電子レンジ加熱パウチ用化粧箱であって、当該箱体を開封すると、化粧箱のパウチ支持部が切り取り線に沿って切り取られ、化粧箱の開封された部分の上面に突出するように形成される電子レンジ加熱パウチ用化粧箱が提案されている(特許文献2参照)。更に、包装箱に設けた正面板切断予定線と側面板切断予定線との破断と、背面折り曲げ線を支点として折り曲げることによって容易に開封可能で、当該折り曲げた開封部分を支持することでパウチを傾斜支持することが可能になるとともに、パウチ背面に当接するように折り出された制御突起が傾斜状態を支持する箱体の復元動作を抑制することが可能な電子レンジ用パウチ用包装箱が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
このような電子レンジ用包装体によれば、箱体の切離開封部を開放するだけで、箱体から包装袋を取り出すことなく、電子レンジによって前記包装袋内の食品内容物を加熱することができるので、電子レンジによる加熱調理の準備を簡単かつ容易に行うことができる。更に、包装袋が箱体内に収まった状態で電子レンジよる加熱がなされるので、包装袋内の食品内容物を安定した状態で加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−39476号公報
【特許文献2】特開2003−170930号公報
【特許文献3】特開2006−044696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の箱体の開封部を開放して包装袋の蒸気抜きの部分(逃圧口)を露出させ、その状態で電子レンジによって包装袋の内容物を加熱することのできる電子レンジ用包装体では、開放された開封部の範囲が小さく、電子レンジによる加熱時に内部の包装袋の十分な膨張が阻害されるおそれがある。また、特許文献2及び特許文献3記載の電子レンジ用パウチ用包装箱においても、当該包装箱の裏面の折り返し線で開封部を折り曲げることによって背面が補強されるため、包装箱(化粧箱)が変形し難くなって、電子レンジによる加熱時に内部のパウチの十分な膨張が阻害されるおそれがある。そして、包装袋(パウチ)の十分な膨張が阻害されると、所望の時間よりも早く蒸気抜き部から蒸気が噴出して加熱ムラが生じたり、蒸気抜き部以外の部分が破袋して内容物が漏れ出すなどの問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、箱体の開封後の電子レンジによる加熱時に、内部の包装袋が十分膨張することのできる電子レンジ用包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子レンジ用包装体は、相互に対向する前面及び裏面と該前面及び裏面の縁に連なる側面とを有し、前記前面に開放可能な開封部が設けられた箱体と、蒸気抜き部が形成され、該蒸気抜き部が前記開封部に対向するように前記箱体に収められた包装袋とを有する電子レンジ用包装体であって、前記側面は、第1側面とそれを挟んで相互に対向する第2側面及び第3側面とを少なくとも有し、前記開封部は、非開封部との境界から前記第1側面の側に開放するものであって、前記開封部の非開封部との境界は、前記前面をわたって前記第2側面及び前記第3側面のそれぞれに続き、当該第2側面及び第3側面のそれぞれと前記裏面との接合部まで延び、前記第2側面と前記裏面との接合部における前記境界の端部と、前記第3側面と前記裏面との接合部における前記境界との端部とを結ぶように前記裏面に折り容易化線が形成され、前記開封部が、前記折り容易化線を支点として前記裏面側へ折り返されて前記蒸気抜き部を露出させるとともに、前記箱体に収められた包装袋を斜めに支持した状態で電子レンジによって加熱される際に、膨張する前記包装袋による前記箱体の非開封部の変形を許容するように、前記第2側面及び前記第3側面の少なくとも一方と前記裏面との接合部における前記境界の端部から当該裏面に延びるように切込み形成された構成となる。
【0009】
このような構成により、包装袋の収められた箱体の開封部を、前面をわたって第2側面及び第3側面に続き当該第2側面及び第3側面のそれぞれと裏面との接合部まで延びる当該開封部と非開封部との境界から前記第2側面及び第3側面に挟まれる第1側面の側に開放し、その開封部を裏面に形成された折り容易化線をヒンジのようにして箱体の裏面側に折返して包装袋の蒸気抜き部が露出するとともに、前記箱体に収められた包装袋が斜めに支持された状態で、当該包装体が電子レンジにて加熱され得る。電子レンジからの加熱作用を受ける包装袋は、内部で発生する水蒸気により膨張し、その内圧がある限度を超えると、水蒸気が水蒸気抜き部から噴出する。よって、包装袋内の内容物が適度な圧力にて加熱調理され得る。
【0010】
箱体の前記第2側面及び前記第3側面の少なくとも一方と前記裏面との接合部における前記境界の端部から当該裏面に延びるように切込みが形成されているので、前述したような包装袋の膨張によって箱体の残り部分の前面が盛り上がるとともに裏面が前記折り返された前記開封部側に押し下げ変形が許容され、さらに、前記開封部が押えつけられるとともに、前記箱体が前記切込みから裂け得る。このように箱体が前記切込みから裂け得ることにより、箱体が包装袋の膨張を押えつけようとする力が緩和され得るとともに、膨張する前記包装袋によって前記箱体の非開封部が変形し易くなり得る。
【0011】
前記切込みは、前記第1側面に平行に延びるように形成することができ、また、記第2側面及び前記第3側面の双方のそれぞれと前記裏面との接合部における前記境界の端部から当該裏面に延びるように形成することもできる。
【0012】
本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記前面における前記開封部内の前記第1側面に対向する部位に当該開封部の非開封部との境界に沿うように形成された指掛け部を有する構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、前面における開封部内の第1側面に対向する部位に形成された指掛け部に指をかけ、その指掛け部を前記第1側面に向けて引き上げることにより前記開封部を非開封部との境界から前記第1側面の側に開放することができるので、箱体を部分的に切り取って開封する場合のようにゴミが分散せず、また、タブを摘まんで開封する場合のように誤ってタブがちぎれることもなく、容易にかつ確実に開封部を開放することができるようになる。
【0014】
また、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記指掛け部は、前記境界の部分と折れ目線により囲まれるように形成され、前記指掛け部を押して前記折れ目線から前記箱体の内側に折り込むことにより形成される孔に指がかかるように構成することができる。
【0015】
このような構成により、指掛け部を押して折れ目線から箱体の内側に折り込むことにより形成される孔に指をかけて開封部を開放することができるので、その操作がし易く、折れ目線から折れ曲がった指掛け部により指のかかる孔が補強されるようになって力がかけやすく、更に、箱体を形成するボール紙等の切断端縁に指先が当たらないのでより安全に開封部の開放操作を行うことができる。
【0016】
本発明に係る電子レンジ用包装体における前記折り容易化線は、開放される開封部をヒンジのように折り返すことを容易化する線であれば、特に限定されるものではなく、例えば、単なる折りくせ線であっても、複数の切込み線が連なる切込み線列であってもよい。折り容易化線が切込み線列にて形成される場合、包装袋の膨張による箱体の表面の盛り上がり及び裏面の押し下げ変形によって、切込み線列も切り裂かれ得るので、箱体が内部包装袋の膨張を押えつけようとする力が更に緩和され得るとともに、膨張する前記包装袋によって前記箱体の非開封部が更に変形し易くなる。
【0017】
本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記切込みは、前記折り容易化線に重なって形成される構成とすることができる。
【0018】
このような構成により、包装袋が膨張した際に、箱体の表面の盛り上がり及び裏面の押し下げ変形によって切込みから折り容易化線に従って裂けやすくなるので、箱体が包装袋の膨張を押えつけようとする力を緩和させることができるとともに、膨張する前記包装袋によって前記箱体の非開封部が更に変形し易くなる。
【0019】
本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記箱体の前記側面の高さが、内容物が充填された前記包装袋の加熱前の厚みの1.1〜1.5倍の範囲内とした構成とすることができる。
【0020】
このような構成により、内部の包装袋の厚みと略同等の厚さ(側面の高さ)の箱体を用いて電子レンジ用包装体を構成することができる。このように、内部の包装袋の厚みと略同等の厚さの箱体であっても、電子レンジの加熱によって包装袋が膨張する際に、箱体が切込みから裂けることにより、当該箱体が包装袋の膨張を押えつけようとする力が緩和され得ることから、包装袋は十分膨張することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電子レンジ用包装体によれば、開放された開封部が箱体の残りの部分の裏側に折り返された状態で、電子レンジによって当該箱体の残りの部分から露出する包装袋が加熱される際に、その包装袋の膨張によって箱体の残り部分の表面が盛り上がるとともに裏面が前記折り返された前記開封部側に押し下げ変形し、それにつれて、前記開封部が押えつけられるとともに、前記箱体が前記切込みから裂けることにより、箱体が包装袋の膨張を押えつけようとする力が緩和されるとともに、膨張する前記包装袋による前記箱体の非開封部の変形が許容されるようになるので、箱体の開封後の電子レンジによる加熱時に、内部の包装袋が十分膨張することのできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子レンジ用包装体の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電子レンジ用包装体に用いられる箱体の展開図である。
【図3】箱体に形成された開封部の詳細構造を示す部分拡大展開図である。
【図4】図1に示す電子レンジ用包装体の断面構造を示す断面図である。
【図5】図1に示す電子レンジ用包装体の箱体を開封した状態を示す斜視図である。
【図6】図1に示す電子レンジ用包装体の箱体を開封した状態を示す正面図である。
【図7】箱体内に収められるパウチの膨張した状態を示す斜視図である。
【図8】図5に示す状態の電子レンジ用包装体を電子レンジにて加熱した後の状態を示す斜視図である。
【図9】図5に示す状態の電子レンジ用包装体を電子レンジにて加熱した後の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の実施の一形態に係る電子レンジ用箱入り包装袋における箱体は、図1及び図2に示すように構成される。なお、図1は、電子レンジ用包装体の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示す電子レンジ用包装体に用いられる箱体の展開図である。
【0025】
図1において、この電子レンジ用包装体に用いられる箱体(化粧箱)10は、紙製(例えば、コートボール紙310g/cm2等)であって、相互に対向する矩形形状の前面11及び裏面12と、前面11及び裏面12の各縁に連なる上側面13a、横側面13b、下側面13c及び横側面13dの4つの側面とから形成されている。そして、図1には表れていないが、箱体10内には、プラスチック製シートにて形成され、食品等の内容物が充填された所謂平袋タイプの電子レンジ用のパウチ20(包装袋)が収められている(後述する図4乃至図7参照)。
【0026】
箱体10は、図2に示す展開紙から組み立てられる。この展開紙は、矩形形状(長方形状)の前面11及び裏面12、短冊形状の上側面13a、一方の横側面13b、下側面13c、他方の横側面13d、糊代(糊付け面)14aa、14b、14ca及び折り片14ab、14ac、14cb、14ccからなっている。この展開紙を折り曲げ接着することで、図1に示すように、相互に対向する前面11、裏面12と、相互に対向する上側面13a、下側面13c及び相互に対向する2つの横側面13b、13dの4つの側面とによって扁平直方体形状となる箱体10が形成される。具体的には、裏面12から突出する糊代14bを横側面13dの裏側に接着することにより、前面11の縁に連なる横側面13dが裏面12に接合される。そして、折り片14ab、14ac、14cb、14ccを内側に折り込みつつ糊代14aaを上側面13aの裏側に接着するととともに、糊代14caを下側面13cの裏側に接着することにより、前面11及び裏面12に上側面13a、下側面13c及び横側面13b、13dの4つの側面が接合して、箱体10が形成される。
【0027】
また、図1とともに図2及び図3を参照するに、箱体10の前面11から上側面13a(第1側面)を挟む両横側面13b(第2側面)及び13d(第3側面)にかけて開放可能な開封部15が形成されている。開封部15の非開封部との境界16には切込み線が連なった切込み線列が形成されており、この切込み線列の非切込み部分が連鎖的に切れることによって開封部15が境界16から上側面13aの方向に開放する。開封部15の非開封部との境界16は、前面11において上側面13aの側に開口する略V字状となる第1部分161と、当該第1部分161の一方の端部に続いて前面11から一方の横側面13bに延びて当該横側面13bと裏面12との接合部に至る第2部分162と、第1部分161の他方の端部に続いて前面11から他方の横側面13dに延びて当該横側面13dと裏面12との接合部に至る第3部分163とからなっている。箱体10の展開紙上において、境界16の第1部分161と第2部分162とは直線的に続き、第1部分161と第3部分163とも直線的に続いている。また、横側面13dに接着される糊代14bには、横側面13dに形成される境界16の第3部分163に合致するように切込み線列C163が形成されている。
【0028】
裏面12には、上側面13a及び下側面13cと平行となるように、折りを容易にするための折り容易化線18が形成されている。この折り容易化線18は、例えば、複数の切込み線が連なる切込み線列となっており、開封部15の非開封部との境界16の第2部分162の端部P1と、第3部分163の端部に合致する糊代14bに形成された切込み線C163の端部P2との間に形成されている。特に、折り容易化線18の一方の端部は、開封部15の非開封部との境界16の横側面13b上の第2部分162の端部P1から裏面12に続く切込み線18a(切込み)となっており、折り容易化線18の他方の端部は、開封部15の非開封部との境界16の横側面13d(糊代14b)上の第3部分163の端部P2から裏面12に続く切込み線18b(切込み)となっている。
【0029】
また、開封部15の非開封部との境界16の略V字状になる第1部分161の頂部の内側には指掛け部17が形成されている。指掛け部17は、第1側面13aに対向する境界16の略V字状になる頂部の所定範囲部分とミシン目線17a(折れ目線)とに囲まれて形成され、その指掛け部17には切込み線17bが形成されている。これにより、指掛け部17を押してミシン目線17aから箱体10(前面11)の内側に折り込むことにより形成された孔に指がかかるようになる。
【0030】
箱体10に収められた平袋タイプのパウチ20は、図4及び図5に示すように、縁部に蒸気抜き部21a、21b、21cが並んで形成されている。各蒸気抜き部21a、21b、21cは、例えば、特開2002−249176号公報に記載されるように、孔(弱化部)の周りがシールされた構造となって、パウチ20の内圧が限界を超えると、その蒸気抜き部21a、21b、21c(孔)から蒸気が噴出するようになっている。なお、蒸気抜き部21a、21b、21cの構造としては、上述したものに限らず、パウチ20の縁辺シール部の所定部位を、狭幅とする、内側に突出させる、易剥離性フィルムを挟んでシールするなどして、パウチ20の内圧が上昇した際に前記所定部位のシールが優先的に剥離するようにしたもの、マイクロ波の照射で発熱する発熱体をフィルム材(シート)に貼り付け、該フィルム材が溶融、もしくはシール強度が低下して蒸気が抜けるようにしたものなど、公知のものを適用することができる。
【0031】
パウチ20は、蒸気抜き部21a、21b、21cが前面11に形成された開封部15に対向するように箱体10に収められている。また、このパウチ20は、開封部15に対応した部位に内圧上昇によって裏面12側に突出する折返し部22が形成されている。この折返し部22は、パウチ20が膨張した際に突出するようになっており、その詳細な構造は、特開2006−62672号公報に記載されている。
【0032】
箱体10の各側面13a〜13dの高さは、食品等の内容物が充填されたパウチ20の電子レンジによる加熱前の厚みの1.1倍〜1.5倍の範囲内に設定できる。このように、パウチ20の厚みと略同等の厚さ(側面の高さ)の箱体10を用いることができる。なお、パウチ20の厚みは、平板上に載置したパウチ20にその表面の全体を覆う大きさの平面をのせて均等にならした状態で測定された両平板間の距離とする。
【0033】
このように箱体10に収められたパウチ20の内容物を電子レンジにて加熱する場合について説明する。
【0034】
箱体10の開封部15の指掛け部17を内方に押し込んで形成される孔に指を引っかけて引き上げることで、開封部15の非開封部との境界16である前面11の第1部分161、一方の横側面13bの第2部分162及び他方の横側面13dの第3部分163のそれぞれに形成された切込み線列が順次切れて、開封部15は、その非開封部との境界16から上側面13aの方向に開放される。そして、開封部15は、図5及び図6に示すように、裏面11に形成された折り容易化線18をヒンジのようにして箱体10の残りの部分の裏面12に接するまで折り返される。このように開封部15が箱体10の残りの部分の裏面12に接するまで折り返されると、箱体10からパウチ20の蒸気抜き部分21a、21b、21cの形成された部分が露出する。
【0035】
このようにして開封部15が箱体10の裏面12側に折り返されているので、パウチ20が収められている箱体10の残りの部分(非開封部)は、パウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分が高くなるように傾斜した状態になる。この状態のままで、電子レンジ用包装体(箱体10、パウチ20)が電子レンジ内セットされる。電子レンジによってパウチ20内の食品内容物が加熱されると、加熱された食品内容物から発生する水蒸気によってパウチ20が、図7に示すように、膨張し、箱体10の裏面12に当接した折返し部22が拡張して突出する。パウチ20の膨張及びその折返し部22の突出によって、図8及び図9に示すように、箱体10内でパウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分がせり上がる。そして、パウチ20の内圧がある限度を超えると、パウチ20のせり上がった部分に形成された蒸気抜き部21a、21b、21cから水蒸気が噴出し、パウチ20の食品内容物が適度な圧力によって加熱調理される。
【0036】
このようなパウチ20の膨張によって、図8及び図9に示すように、箱体10のパウチ20の収められた部分の前面11が盛り上がるとともに裏面12が折り返された開封部15の側に押し下げ変形する。このような箱体10の変形に対して、開封部15の折返しの境界となる折り容易化線18の両端部の切込み線18a、18bの存在により変形が容易になる。さらにパウチ20の膨張が大きい場合には、この切込み線18a、18bから折り容易化線18に沿って箱体10の裏面12の切り裂きが誘導され、箱体10がパウチ20の膨張を押えつけようとする力が緩和されるとともに、膨張するパウチ20による箱体18の非開封部が変形し易くなる。
【0037】
このように、本発明の実施の形態に係る電子レンジ用包装体によれば、開封部15が開放されて箱体10から蒸気抜き部21a、21b、21cの部分が露出するパウチ20内の食品内容物が電子レンジによって加熱される際に、開封部15の折返しの境界となる折り容易化線18の両端部の切込み線18a、18bにより、箱体10がパウチ20の膨張を押えつけようとする力が緩和されるとともに、さらに切り込み線18a、18bから折り容易化線18に沿って箱体10の裏面12の切り裂きが誘導されることにより、膨張するパウチ20により箱体18の非開封部が変形し易くなるので、箱体10の開封後の電子レンジによる加熱時に、内部のパウチ20が十分膨張することができるようになる。その結果、パウチ20内の食品内容物を有効に加圧された状態で加熱調理することができる。
【0038】
箱体10の各側面13a〜13dの高さが、食品等の内容物が充填されたパウチ20の電子レンジによる加熱前の厚みの1.1倍〜1.5倍の範囲内に設定され、パウチ20の厚みと略同等の厚さ(側面の高さ)の箱体10が用いられていても、切込み線18a、18bから箱体10の裏面12が裂け得ることにより、電子レンジの加熱によってパウチ20は十分膨張することができるようになる。
【0039】
また、開封部15が箱体10の裏面12側に折り返されているので、箱体10によりパウチ20に形成された蒸気抜き部21a、21b、21cを比較的高い位置に保持することができるので、加熱時に、パウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cから蒸気が噴出する際に内容物まで吹きだしてしまうことを確実に防止することができる。また、噴出する蒸気が開封部15に当たって湿ってしまうこともない。
【0040】
更に、前述したように、加熱時に、開封部15の折返しの境界となる折り容易化線18の両端部の切込み線18a、18bから箱体10の裏面12の切り裂きが誘導されることにより、箱体10がパウチ20の膨張を押えつけようとする力が緩和されるとともに、膨張するパウチ20により箱体18の非開封部が変形し易くなるので、裏面12側に折り返された開封部15が押えつけられるようになり(図9参照)、折り返された開封部15が戻って倒れてしまうのを確実に防止することができる。
【0041】
また、箱体10の前面11に形成された指掛け部17を押してミシン目線17aから箱体10の内側に折り込むことにより形成される孔に指をかけて開封部15を開放することができるので、箱体10を部分的に切り取って開封する場合のようにゴミが分散せず、また、タブを摘まんで開封する場合のように誤ってタブがちぎれることもない。そして、その開封操作がし易く、ミシン目線17aから折れ曲がった指掛け部17によって指のかかる孔が補強されるようになって力がかけやすく、更に、箱体10を形成するボール紙の切断端縁に指先が当たらないのでより安全に開封部15の開放操作を行うことができる。
【0042】
本発明の実施の形態に係る電子レンジ用包装体では、開封部15の非開封部との境界16の横側面13b、13dの第2部分162及び第3部分163のそれぞれかの端部P1、P2から裏面12に形成される切れ込み線18a、18bは、折り容易化線18の一部となっていたが、その始点(P1、P2)が共通であれば、切込み線18a、18b(切込み)と折り容易化線18とは合致していなくてもよい。例えば、それら切込み線18a、18bは、上側面13aに平行ではなく、傾斜していてもよい。また、その切込み線18a、18bは、いずれか一方であってもよい。
【0043】
また、開封部15の非開封部との境界16に切込み線列を形成して開封部15が境界16から開放するようになっていたが、開口のある箱体に、開封部15に相当する部分を貼り付けて全体としての箱体10を形成するようにしてもよい(2009−51562号公報参照)。この場合、貼り付けられた部分をはがすことによって開封部が境界16から上側面13aの方向に開放されるようになる。
【0044】
更に、本発明の実施の形態に係る電子レンジ用包装体では、図5に示すように開封部15を裏面12と接するように折り返す状態にしたが、例えば、特許文献2記載の電子レンジ用加熱パウチ用化粧箱のように、箱体10の上側面13aを接地させるように開封してもよい。このように箱体10を開封した場合においても、パウチ20の膨張によって、開封部15の折返しの境界となる折り容易化線18の両端部の切込み線18a、18bから箱体10の裏面12が裂け得るので、箱体10がパウチ20の膨張を押えつけようとする力が緩和され、パウチ20は十分膨張することができる。
【0045】
なお、箱体10に収容されるパウチ20は、図4に示すように、折り返し部22を有するものであったが、この折り返し部22の形成されていない、所謂通常の平型パウチを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上、説明したように、本発明に係る電子レンジ用包装体は、箱体の開封後の電子レンジによる加熱時に、内部の包装袋が十分膨張することのできるという効果を有し、蒸気抜き部が形成されて電子レンジでの加熱が可能となるパウチ等の包装袋が箱体に収められた構造となる電子レンジ用包装体として有用である。
【符号の説明】
【0047】
10 箱体
11 前面
12 裏面
13a 上側面
13b 横側面
13c 下側面
13d 横側面
15 開封部
16 境界
161 第1部分
162 第2部分
163 第3部分
17 指掛け部
18 折り容易化線
18a、18b 切込み線
14aa、14ca、14b 貼代
14ab、14ac、14cb、14cc 折り片
20 パウチ(包装袋)
21a、21b、21c 蒸気抜き部
22 折返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する前面及び裏面と該前面及び裏面の縁に連なる側面とを有し、前記前面に開放可能な開封部が設けられた箱体と、蒸気抜き部が形成され、該蒸気抜き部が前記開封部に対向するように前記箱体に収められた包装袋とを有する電子レンジ用包装体であって、
前記側面は、第1側面とそれを挟んで相互に対向する第2側面及び第3側面とを少なくとも有し、
前記開封部は、非開封部との境界から前記第1側面の側に開放するものであって、前記開封部の非開封部との境界は、前記前面をわたって前記第2側面及び前記第3側面のそれぞれに続き、当該第2側面及び第3側面のそれぞれと前記裏面との接合部まで延び、
前記第2側面と前記裏面との接合部における前記境界の端部と、前記第3側面と前記裏面との接合部における前記境界との端部とを結ぶように前記裏面に折り容易化線が形成され、
前記開封部が、前記折り容易化線を支点として前記裏面側へ折り返されて前記蒸気抜き部を露出させるとともに、前記箱体に収められた包装袋を斜めに支持し、その状態で電子レンジによって加熱される際に、膨張する前記包装袋による前記箱体の非開封部の変形を許容するように、前記第2側面及び前記第3側面の少なくとも一方と前記裏面との接合部における前記境界の端部から当該裏面に延びるように切込みが形成された電子レンジ用包装体。
【請求項2】
前記前面における前記開封部内の前記第1側面に対向する部位に当該開封部の非開封部との境界に沿うように形成された指掛け部を有する請求項1記載の電子レンジ用包装体。
【請求項3】
前記指掛け部は、前記境界の部分と折れ目線により囲まれるように形成され、前記指掛け部を前記折れ目線から前記箱体の内側に折り込むことにより当該指掛け部に指がかかるようにした請求項2記載の電子レンジ用包装体。
【請求項4】
前記折り容易化線は、複数の切込み線が連なる切込み線列にて形成された請求項1乃至3のいずれかに記載の電子レンジ用包装体。
【請求項5】
前記切込みは、前記折り容易化線に重なって形成される請求項4記載の電子レンジ用包装体。
【請求項6】
前記箱体の前記側面の高さが、内容物が充填された状態の前記包装袋の底部の加熱前の厚みの1.1倍〜1.5倍の範囲内とした請求項1乃至5いずれかに記載の電子レンジ用包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−225266(P2011−225266A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99132(P2010−99132)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】