説明

電子レンジ

【課題】2つのマイクロ波放射手段を備える場合において、被調理食品の調理状況を正確に検知することができる電子レンジを提供すること。
【解決手段】赤外線センサ30を、一対のアンテナ部15の対称中心に設ける。換言すれば、赤外線センサ30の視野32に対して対称な位置に一対のアンテナ部15を配置する。このため、赤外線センサ30は、一対のアンテナ部15に対して均等な視野範囲を有することになる。よって、一対のアンテナ部15によって被調理食品をマイクロ波加熱する場合において、被調理食品の調理状況を正確に検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加熱室に被調理食品を収容し、この被調理食品をマイクロ波によって誘導加熱(マイクロ波加熱)する電子レンジが知られている。電子レンジでは、マグネトロンが発生したマイクロ波が、導波管によってアンテナに導かれ、アンテナから加熱室内の被調理食品へ放射される。
たとえば、特許文献1に記載の電子レンジでは、加熱室の下部に、平板アンテナが配置され、さらに、平板アンテナ上には、2つの回転スターラーが設けられている。この電子レンジでは、マグネトロンが発生したマイクロ波が、平板アンテナおよび2つの回転スターラーを順に経て加熱室内に放射される。つまり、2つの回転スターラーが加熱室に最も近いアンテナであるといえる。
【0003】
また、特許文献2に記載の電子レンジでは、加熱室の右側面上部に赤外線センサを設け、この赤外線センサによって、加熱室内の被調理食品の温度を非接触で検知する。これにより、被調理食品の調理の進捗状況(加熱状態)を検知することができる。
【特許文献1】特開2005−203230号公報
【特許文献2】特開2002−260840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電子レンジでは、回転スターラーを2つ設けている。つまり、この電子レンジには、被調理食品をマイクロ波加熱する波源(給電部)が2つある。この場合に、特許文献2の赤外線センサによって加熱室内の被調理食品の温度を検知しようとすると、赤外線センサは、被調理食品の温度を、各波源に応じて偏って検知してしまう虞がある。その場合、被調理食品の加熱状態を正確に検知することは困難であり、調理の進捗状況を正確に検知することも困難である。
【0005】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、2つのマイクロ波放射手段を備える場合において、被調理食品の調理状況を正確に検知することができる電子レンジを提供することを主たる目的とする。
この発明は、良好にマイクロ波加熱を行うことができる電子レンジを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、前面が扉で開閉され、被調理食品を収容するための加熱室と、前記加熱室の左右方向中央部に対して対称な位置に設けられ、前記加熱室内へマイクロ波を放射するための一対のマイクロ波放射手段と、前記加熱室へ収容された被調理食品を上方から臨む位置であって、かつ、前記一対のマイクロ波放射手段の対称中心に設けられた調理状況検知手段と、を含むことを特徴とする電子レンジである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記一対のマイクロ波放射手段は、前記加熱室の底面沿いに左右に設けられていることを特徴とする、請求項1記載の電子レンジである。
請求項3記載の発明は、前記一対のマイクロ波放射手段は、それぞれ、回転軸を中心に回転する回転式マイクロ波放射アンテナを含むことを特徴とする、請求項1または2記載の電子レンジである。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記調理状況検知手段は、前記加熱室の左右方向中央部の背面上方から底面を臨むように設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジである。
請求項5記載の発明は、前記調理状況検知手段は、前記加熱室の底面ほぼ全面を検知する視野を有することを特徴とする、請求項4記載の電子レンジである。
【0009】
請求項6記載の発明は、前記調理状況検知手段は、前記加熱室底面の左右方向中央部を前端から後端まで検知するための複数の視野を有し、前記複数の視野が底面上を左右に移動するように、前記調理状況検知手段を揺動させる揺動機構が備えられていることを特徴とする、請求項5記載の電子レンジである。
請求項7記載の発明は、前記加熱室の近傍に設けられたマグネトロンと、前記マグネトロンから放射されるマイクロ波を2つの分路へ誘導するための分岐導波管とを有し、2つの前記分路に、それぞれ、前記マイクロ波放射手段が設けられており、前記分岐導波管の分岐位置には、前記分岐導波管内へ膨出する半球状の突起が形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の電子レンジである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、マイクロ波放射手段は、加熱室の左右方向中央部に対して対称に、左右に一対設けられている。これら左右一対のマイクロ波放射手段により加熱室内へマイクロ波が放射され、加熱室内に収容された被調理食品がマイクロ波加熱により調理される。
調理状況検知手段は、たとえば赤外線センサで構成することができ、マイクロ波加熱により調理される食品表面の変化を検知する。これにより調理の進捗状況を検知することができる。
【0011】
請求項1の構成では、調理状況検知手段は、一対のマイクロ波放射手段の対称中心に設けられている。換言すれば、調理状況検知手段の視野に対して対称な位置に一対のマイクロ波放射手段が配置されている。このため、調理状況検知手段は、一対のマイクロ波放射手段に対して均等な視野範囲を有することになる。よって、一対のマイクロ波放射手段によるマイクロ波加熱の調理状況を自動制御する場合において安定した仕上がりが達成されるように、調理状況を正確に検知することができる。
【0012】
一対のマイクロ波放射手段は、たとえば加熱室の左右側面からマイクロ波を放射するように設置することもできるが、請求項2記載のように、加熱室の底面沿いに左右に設けることにより、良好にマイクロ波加熱を行うことができる。
一対のマイクロ波放射手段は、請求項3記載のように、回転式マイクロ波放射アンテナとすることにより、加熱室内へほぼ均等にマイクロ波を放射することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、調理状況検知手段により、加熱室に収容された食品の調理状況を上方から良好に把握できる。また、加熱室の背面上方は、加熱される食品が吹き上がった際等に、その吹き上がりが到達しにくい位置であり、調理状況検知手段が食品等によって汚れにくい。
請求項5記載の発明によれば、調理状況検知手段は、加熱室の底面のほぼ全面を検知視野としており、収容された食品の調理状況を正確に検知することができる。
【0014】
請求項6記載の発明によれば、調理状況検知手段は、一対のマイクロ波放射手段の対称中心からその視野を左右へ移動するようにして調理状況を検知するため、マイクロ波加熱される食品の調理状況を、公平に、正しく、かつ安定して検知することができる。
請求項7記載の発明によれば、マグネトロンで発生されるマイクロ波を、分岐導波管を通じて一対のマイクロ波放射手段へ誘導する際に、分岐導波管内でマイクロ波がマグネトロンに戻るように反射することが半球状の突起で阻止され、分岐導波管内のマイクロ波を各マイクロ波放射手段へ良好に誘導することができる。
【0015】
つまり、分岐導波管の分岐位置に半球状の突起を設けることにより、分岐位置でのマイクロ波のインピーダンス整合を改善して、マグネトロンから出力されたマイクロ波がマグネトロン側へ反射するのを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下では、電子レンジ(電子オーブンスチームレンジ)を例にとって説明するが、本発明は、電子レンジ機能だけのものにも、もちろん適用できる。
<電子レンジの基本構成>
図1は、この発明の一実施形態に係る食品調理装置としての電子レンジ1の正面右側斜視図である。図2は、図1において、扉2を開いた状態を示す。図3は、電子レンジ1の底面図である。図4は、扉2および化粧板3(外カバー板)を取り除いた状態にあるケーシング4の正面上側斜視図である。図5は、加熱室11の底である凹部16の平面図であって、回転アンテナ20A、20Bの配置および形状を示す図である。図6(a)は、拡散モード、図6(b)は、集中モードにおけるマイクロ波放射のイメージ図である。図7は、調理状況検知手段としての赤外線センサ30の揺動に伴って視野32が加熱室11内で移動する様子を説明するための模式図であって、図7(a)は、本実施例を適用した場合を示し、図7(b)は、比較例を適用した場合を示す。図8は、扉2を取り除いた状態にあるケーシング4の正面図である。図9は、後ヒータ23を一部抜き出して示した図である。図10は、加熱循環室74内を示す試作品の写真である。図11は、扉2および化粧板3(外カバー板)を取り除いた状態にあるケーシング4の右側断面図である。図12(a)は、電子レンジ1の予熱工程に係る電気的構成を示すブロック図であり、図12(b)は、予熱工程を説明するためのフローチャートである。図13は、扉2および化粧板3(外カバー板)を取り除いた状態にあるケーシング4の正面左側斜視図である。図14は、扉2および化粧板3(外カバー板)を取り除いた状態にあるケーシング4の正面右側斜視図である。図15は、過熱スチーム生成ユニット51の正面右側斜視図である。図16は、図15に示す過熱スチーム生成ユニット51の分解斜視図である。図17は、正面左側から見た過熱スチーム生成ユニット51の分解斜視図である。図18は、図8に角皿25および金網7を追加した図である。図19は、変形例に係る過熱スチーム生成ユニット51の右側面図である。
【0017】
以下、説明の便宜上、図1において扉2が設けられた側を前方(正面側)とし、電子レンジ1を正面側から見たときを基準として、電子レンジ1の方向を特定する(図示方向矢印参照)。なお、左右方向は、幅方向と同義である。
電子レンジ1は、その外殻をなすケーシング4を有している。ケーシング4は、図2に示すように、前面が開放された(この部分を開口8という。)中空のボックス状をした金属製のフレーム12と、フレーム12の外側(左右外側面および上外表面)を覆う化粧板3(外カバー板)とを備えている。フレーム12によって加熱室11が形成されている。加熱室11は、フレーム12の左右側壁、天壁、底壁および後壁によって区画された横長の略直方体形状の空間であり、前面に開口8を有している。底壁は、そのほぼ全域に亘って窪む凹部16を形成している(図4参照)。そして、凹部16を上から塞ぐように、平板状の底板6が載置されている。つまり、加熱室11の底面は、被調理食品が載置される底板6と、その下に窪まされた凹部16という二重構造を有している。
【0018】
左右側壁の各内面には、前後方向に延びるレール24が、上下方向に一定の間隔を隔てて複数(この実施例では3つ)設けられている。以下では、説明の便宜上、これらのレール24を、上から順にレール24U、レール24M、レール24Lと区別することがある。レール24は、加熱室11内へ突出している。図18に示すように、左側のレール24と、このレール24と対向する右側のレール24とによって、トレイ状の角皿25を、底板6から浮いた状態で保持することができる。角皿25にも被調理食品を載置することができる。
【0019】
角皿25には、金網7を載置することができる。金網7は、水平方向に延びる平坦部26と、平坦部26の幅方向両端から下方へ延びる脚部27とを備えている。角皿25に金網7を載置すると、金網7は、脚部27が角皿25に嵌り、かつ、平坦部26が角皿25の底面から浮くように、保持される。金網7にも被調理食品を載置することができる。その場合、被調理食品は、平坦部26に載置され、加熱された被調理食品から染み出した塩分や油脂などは、平坦部26の下方の角皿25に受け止められる。
【0020】
図2に示すように、ケーシング4の正面には、開口8を開閉する扉2が設けられている。扉2は、その下端において幅方向に延びる回動軸を中心に、起立して開口8を塞ぐ閉位置(図1参照)と、閉位置から前側へ傾倒して開口8を開放し、扉2の内面が底板6と略面一になる開位置(図2参照)との間で回動する。図1に示すように、扉2の正面において、上端には取っ手9が設けられ、下端には操作パネル10が設けられている。取っ手9を掴むことにより、扉2を、上述した開位置と閉位置との間で回動させることができる。操作パネル10を操作することにより、ケーシング4内に内蔵された図示しない制御部に対して、調理条件の設定や調理開始の指示を行うことができる。また、操作パネル10には、調理状況が表示される。
【0021】
図3に示すように、ケーシング4の底面には、マイクロ波を発生するマグネトロン13と、マイクロ波をガイドする導波管14(分岐導波管)とが設けられている。マグネトロン13は、ケーシング4(フレーム12)の底面の後端部の幅方向中央において、加熱室11の近傍に配置されている(図11も参照)。導波管14は、マグネトロン13のアンテナ29を収容し、マグネトロン13から前側に延びた後に左右へ分岐する底面視T字状である。なお、導波管14の左右2つの分岐部分を、それぞれ、分路18という。マグネトロン13から放射されるマイクロ波は、導波管14によって各分路18へ案内される。導波管14の内側壁面には、分岐位置に、導波管14内へ膨出する半球状の突起28が形成されている(図11も参照)。マグネトロン13のアンテナ29から導波管14の分岐位置まで到達したマイクロ波は、突起28に当たることによって、マグネトロン13側へほとんど反射することなく、図示矢印で示すように、各分路18へと円滑に分散される。つまり、導波管14の分岐位置に半球状の突起28を設けることにより、分岐位置でのマイクロ波のインピーダンス整合を改善して、マグネトロン13から出力されたマイクロ波がマグネトロン13側へ反射するのを抑えることができる。これにより、マグネトロン13で発生されるマイクロ波を、導波管14を通じて各分路18へ案内する際に、導波管14内のマイクロ波を各分路18(後述するアンテナ部15)へ良好に案内することができる。この結果、マグネトロン13側へ反射するマイクロ波がマグネトロン13のアンテナ29付近等で放電を生じさせる等の不具合を防止することができる。
【0022】
導波管14の各分路18には、導波管14によって案内されてきたマイクロ波を加熱室11内へ放射するアンテナ部15(マイクロ波放射手段)が設けられている。これら2つのアンテナ部15は、対をなし、導波管14の分岐位置(突起28、さらには加熱室11の左右方向中央部)を基準として幅方向に対称となるように、左右に配置されている。アンテナ部15は、モータ19と、回転式マイクロ波放射アンテナとしての回転アンテナ20(図4参照)とを備えている。モータ19は、分路18に対して下側から取付けられている。また、図4に示すように、モータ19の回転軸は、回転アンテナ20の回転軸21と結合し、この回転軸21は、分路18内を上方へ凹部16内まで延びている。左右の回転軸21は、導波管14の分岐位置(後述する基準面X)を基準として幅方向に対称となるように配置されている。回転アンテナ20は、凹部16内において、回転軸21に取付けられている。回転アンテナ20は、図示では細長い矩形薄板状であって、長手方向において中央から外れた位置において回転軸21に取付けられている。なお、回転アンテナ20は、上述した形状に限らず、たとえば、略円盤形状であって、回転軸21に対して水平に非対称に張り出したものとしてもよい。回転アンテナ20は、モータ19の駆動力を受けて、回転軸21を中心に底板6の下面に沿って回転する。
【0023】
導波管14によって各分路18(図3参照)へ案内されたマイクロ波は、左右一対のアンテナ部15において、回転アンテナ20の回転軸21を経て回転アンテナ20に到達し、回転する回転アンテナ20から放射される。そして、このマイクロ波は、図2に示す底板6を透過して、加熱室11内へ供給される。底板6は、セラミック板等の、マイクロ波が透過する材料で形成されている。アンテナ部15によってマイクロ波が加熱室11内へ放射されることで、マイクロ波運転が実行され、マイクロ波加熱(誘電加熱)によって、加熱室11内の被調理食品が調理される。なお、一対のアンテナ部15は、たとえば加熱室11の左右側面からマイクロ波を放射するように設置することもできるが、本実施例のように、加熱室11の底板6の下方に左右に設けることにより、良好にマイクロ波加熱を行うことができる。また、回転アンテナ20を用いることにより、加熱室11内へほぼ均等にマイクロ波を放射、攪拌することができる。
【0024】
回転アンテナ20は、図4に示すものに代えて、図5に示す回転アンテナ20A、20Bとしてもよい。
図5に示す回転アンテナ20A、20Bは、薄い金属板で形成され、互いに等しい平面形状をした大型の平板アンテナである。すなわち、回転アンテナ20A、20Bは、それぞれ、回転軸21から所定の角度方向に張り出した幅の広い矩形主張出し部211、その両側に張り出した幅の狭い一対の矩形副張出し部212、213、矩形主張出し部211の張り出し方向と反対の角度方向に張り出した半リング状張出し部214、および、半リング状張出し部214の内側に形成された椀形張出し部215を有している。
【0025】
このような大型の平板アンテナを左右一対に備えた大型Wアンテナ構造とすることによって、電子レンジ1に次のようなマイクロ波加熱を行わせることができる。
まず、拡散モードとして、2つの回転アンテナ20A、20Bを互いに逆方向に一定速度で回転させながらマイクロ波加熱を行う。拡散モードでは、大型のWアンテナ20A、20Bからマイクロ波が拡散され、加熱室11の隅々までマイクロ波が行き渡り、食品の加熱ムラを抑えておいしく調理できる。
【0026】
また、集中モードとして、2つの回転アンテナ20A、20Bの回転を図5に示す位置で停止させ、マイクロ波加熱を行う。集中モードは、たとえば、ごはん一膳を素早くあたためたい、おかず一品を素早くあたためたい、という欲求に応えられるスピード加熱モードである。
回転アンテナ20A、20Bの矩形主張出し部211、211は、マイクロ波を強く放射する部分であり、図5の位置で回転アンテナ20A、20Bを停止させ、マイクロ波を放射させると、加熱室11の中央部へマイクロ波が強く放射される。よって、加熱室11の中央部に置いた食品を素早く加熱できる。
【0027】
図6(a)、(b)は、上記拡散モードおよび集中モードのマイクロ波放射のイメージ図である。図6(a)が拡散モード、図6(b)が集中モードを表わしている。回転アンテナ20A、20Bを用いることによって、拡散モードと集中モードとを必要に応じて切り換えられる。
<赤外線センサ>
図4および図11に示すように、ケーシング4(フレーム12)の背面上端部には、赤外線センサ30が、加熱室11の左右方向中央部の背面上方から底板6を臨むように、取付けられている。また、赤外線センサ30に対応して、ケーシング4の背面上端部には、図8に示すように、検出窓31が形成されている。
【0028】
図4に示すように、赤外線センサ30および検出窓31は、上述した左右2つのアンテナ部15(詳しくは回転アンテナ20の回転中心である回転軸21)に対して等しい距離の位置にある基準面X上に位置する。詳しくは、基準面Xには、左右の回転アンテナ20の回転中心同士を結んだ線Yの中央位置Zが含まれ、基準面Xは、ケーシング4(フレーム12)の幅方向中央を通っている。言い換えれば、赤外線センサ30および検出窓31は、1対のアンテナ部15の対称中心に配置されている。
【0029】
赤外線センサ30は、検出窓31を介して、加熱室11内の被調理食品から生じる赤外線を検知する。詳しくは、赤外線センサ30は、図11に示すように、加熱室11内において右側面視で前後方向に連続して並ぶ複数(本実施例ではたとえば8つ)の視野32を有している。さらに詳しくは、赤外線センサ30は、視野32を有する赤外線検出素子(図示せず)を複数(本実施例では8つ)備えている。各視野32の視野角θは、等しく設定されている。赤外線センサ30は、後述するように左右に揺動可能に設けられており、ホームポジション(基本位置)では、8つの視野32によって底板6の左右方向中央部を、その前端から後端まで検知することができる。つまり、赤外線センサ30が基本位置にある場合、8つの視野32は、一対のアンテナ部15の対称中心(図4に示す基準面X)にある。そして、赤外線センサ30には、揺動機構87が設けられている。揺動機構87によって、赤外線センサ30は、前側へ傾斜した方向に延びる揺動軸33を中心に、上述した基本位置から左右へ向けて揺動可能であり、赤外線センサ30の揺動に応じて、複数の視野32は、底板6上を左右へ移動する。これにより、視野32は、加熱室11内において、底板6のほぼ全面を検知することができる。そのため、赤外線センサ30は、底板6上に収容された被調理食品を上方から臨み、加熱される被調理食品の表面から生じる赤外線を視野32において検知する。そして、その検知結果をもとに、図示しない制御部が被調理食品の現時点での温度を判断する。これにより調理の進捗状況を検知することができる。また、上述したように、赤外線センサ30は、加熱室11の底板6のほぼ全面を検知視野としているので、収容された食品の調理状況を正確に検知することができる。そして、制御部(図示せず)は、被調理食品の現時点での温度に応じて、マイクロ波の供給時間を制御する。つまり、マイクロ波加熱時間が自動制御される。
【0030】
そして、上述したように、また、図7(a)で模式的に示すように、赤外線センサ30は、2つの回転アンテナ20の回転中心から等しい距離を隔てた位置(基準面X上)にある。つまり、赤外線センサ30の揺動軸33と基準面Xとが一致している。さらに換言すれば、赤外線センサ30は、上述した一対のアンテナ部15の対称中心にあるので、赤外線センサ30の視野32に対して対称な位置に一対のアンテナ部15が配置されているといえる。この場合、赤外線センサ30を左右へ等しく揺動させたとき、視野32は、基準面Xを基準として左右対称となるように左右へ等しく移動し、また、その大きさ(図7(a)における範囲W)は、左右の回転アンテナ20側で等しい。つまり、赤外線センサ30は、一対のアンテナ部15に対して均等な視野範囲を有することになる。これにより、赤外線センサ30は、左右の回転アンテナ20のいずれかの側へ偏ることなく、正確に赤外線を検知することができる。そのため、上述した制御部(図示せず)では、被調理食品の正確な温度判断が可能となり、一対のアンテナ部15によるマイクロ波加熱の調理状況を自動制御する場合において安定した仕上がりが達成されるように、調理状況を正確に検知することができる。そして、赤外線センサ30は、一対のアンテナ部15の対称中心(上述した基本位置)からその視野32を左右へ移動するようにして調理状況を検知するため、マイクロ波加熱される食品の調理状況を、食品の位置によってばらつくことなく、公平に、正しく、かつ安定して検知することができる。
【0031】
これに対し、図7(b)に示すように、赤外線センサ30が左右の回転アンテナ20の回転中心から等しい距離を隔てた位置(基準面X上)にない場合には、赤外線センサ30を左右へ揺動させても、視野32は、基準面Xを基準として左右対称に移動せず、その大きさ(範囲W)は、左右の回転アンテナ20側で異なる。図7(b)は、赤外線センサ30を基準面Xから右側にずらして配置した例を示しており、視野32の範囲Wは、左の回転アンテナ20側では広くなる一方で、右の回転アンテナ20側では狭くなり、検知精度が異なる(左の回転アンテナ20の方が精度が低い。)。そのため、赤外線センサ30は、左右の回転アンテナ20側で偏って赤外線を検知することとなり、正確な赤外線の検知が困難である。
【0032】
また、図11に示すように、加熱室11の背面上方から底板6を望むように赤外線センサ30を配置することにより、赤外線センサ30は、加熱室11に収容された食品の調理状況を上方から良好に把握できる。加熱室11の背面上方は、加熱される食品が吹き上がった際等に、その吹き上がりが到達しにくい位置であり、赤外線センサ30が食品等によって汚れにくい。
<ヒータ>
主として図11を参照して、加熱室11の上方および後方には、通電されることによって輻射熱を発生するヒータが配置されている。なお、上方のヒータを上ヒータ22といい、後方のヒータを後ヒータ23という。この電子レンジ1では、上述したマイクロ波運転に加えて、上ヒータ22および後ヒータ23が発生する熱を用いて被調理食品を加熱するヒータ運転(オーブン加熱)が実行される。
【0033】
図11および図13を参照して、上ヒータ22は、通電されることによって発熱するニクロム線(図示せず)をマイカ(雲母)で形成された2枚の平板で挟みこむことによって形成されている。上ヒータ22は、加熱室11内の被調理食品に対して上方から対向するので、被調理食品の上側表面に焦げ目を付けることができる。
図8および図11を参照して、後ヒータ23は、フレーム12の後側壁に内蔵されている。言い換えれば、フレーム12の後側壁は、外部に面する外壁(図11では表れていない。)と加熱室11に面する内壁41(壁面)とを含む2重構造であり、後ヒータ23は、上述した外壁と内壁41との間の空間(加熱循環室74という。)に配置されている。加熱循環室74は、加熱室11に対して後側から隣接しており、内壁41によって、加熱室11と加熱循環室74とが区画されている。加熱循環室74には、図8に示すように、後ヒータ23に加えて、ファン35が備えられている。ファン35は、正面視において、加熱循環室74の略中央位置に配置されている。ファン35は、前後方向に延びる回転軸を中心に、正面視反時計回りの方向(図示矢印参照)へ回転する。ファン35は、その周辺に沿って16枚の羽根を有し、中央前方から取り込んだ空気を16枚の羽根できめ細かく周囲へ送り出す。ファン35の回転数は、通常回転で、たとえば、約2100rpmである。
【0034】
後ヒータ23は、図9に示すように、発熱体としてのたとえばニクロム線36と、ニクロム線36の外周を覆う金属製の外皮37と、ニクロム線36と外皮37との間に充填された絶縁粉末34とを備える、いわゆるシーズヒータである。そして、後ヒータ23は、さらに、外皮37の外周面から張り出した放熱フィン38を備えている。放熱フィン38は、熱伝導率の高い素材で形成され、外皮37の周面に、その長さ方向(軸方向)に亘って螺旋状に連続するように突設されている。この放熱フィン38は、外皮37に対して、たとえば、かしめ止められている。このように、放熱フィン38を、外皮37の軸方向に連続した螺旋状に、外皮37の外周面から張り出す形状とすることにより、放熱フィン38を簡単に作成できる。また、放熱フィン38が付いた後ヒータ23を容易に作成することができる。そして、ニクロム線36に通電すると、ニクロム線36が発熱し、その熱が外皮37を介して放熱フィン38に伝えられる。放熱フィン38に伝えられた熱によって、放熱フィン38の周囲の空気が加熱される。後ヒータ23は、放熱フィン38を備えていることにより、通常のシーズヒータ(放熱フィンのないもの)と比較して、約8倍の表面積で熱を効率よく放出する。
【0035】
図8、図10および図11を参照して、後ヒータ23は、正面視において、ファン35を取り囲むように延びている。詳しくは、後ヒータ23は、内壁41の左側下端部付近を開始位置39として上方へ延び、相対的に大きな曲率で屈曲してから右側へ延び、その後、相対的に小さな曲率で屈曲して下方へ延び、さらに相対的に小さな曲率で屈曲して左側へ延び、上述した開始位置39の右側において逆S字を描くように屈曲してから下方の終了位置40へと延びている。このように、後ヒータ23は、開始位置39および終了位置40の近傍において密集(配置密度が他の部分より高い)しており、この密集部分では、他の部分に比べて発熱量が大きい。ファン35は、屈曲配置された後ヒータ23の内側に配置されている。
【0036】
また、図8に示すように、内壁41には、多数の貫通穴42(吹き出し孔)が形成されている。詳しくは、内壁41における第1位置43、第2位置44、第3位置45、第4位置46、第5位置47および第6位置48のそれぞれに貫通穴42が複数形成されている。第1位置43は、ファン35の中心に対向する位置である。第2位置44は、後ヒータ23における上述した密集部分に対向する位置であり、第1位置43の左側にある。第3位置45、第4位置46、第5位置47は、後ヒータ23におけるファン35より上側部分、右側部分および下側部分にそれぞれ対向する位置である。第6位置48は、内壁41の左側上端部近傍である。
【0037】
上述したようにファン35が正面視反時計回りの方向(図示矢印参照)へ回転すると、加熱室11内の空気が、第1位置43の貫通穴42を介して、加熱循環室74内に取り込まれる。取り込まれる空気は、ファン35の中心から放射状に周囲の後ヒータ23へと放出され、ファン35の周りを正面視反時計回りの方向へ流れながら、加熱循環室74内において、後ヒータ23によって加熱される。詳しくは、ファン35によって後ヒータ23へ放出された空気が外皮37および放熱フィン38を通過する。放熱フィン38を有することにより、外皮37だけの場合と比べて、通過する空気との接触面積が増大し、空気が効率良く加熱される。加熱された空気(加熱空気)は、ファン35によって、第2位置44、第3位置45、第4位置46、第5位置47および第6位置48の各貫通穴42を介して、加熱室11内へ送り出され、加熱室11内の被調理食品を加熱する。このように、加熱室11内の空気が、ファン35および後ヒータ23によって、加熱室11と加熱循環室74との間で循環されながら加熱され、この空気によって加熱室11内の被調理食品が加熱される。たとえば、複数の角皿25(図18参照)を上下方向に並べて配置した場合において、上ヒータ22(図4参照)のみを駆動しても、最上位置にある角皿25の被調理食品しか十分に加熱できない。最上位置にある角皿25より下方の角皿25まで上ヒータ22の熱が届き難いからである。これに対し、本実施例のように空気を加熱および循環させることによって、複数の角皿25のすべての被調理食品に熱を行き届かせ、これらの被調理食品を十分に加熱することができる。このように空気を加熱循環させるタイプの後ヒータ23は、コンベクションヒータと呼ばれる。そして、上述したように、加熱室11の空気を加熱循環室74へ取り込み、取り込んだ空気を加熱して加熱室11へ送り出す際に、後ヒータ23が放熱フィン38(図9参照)を備えたシーズヒータであるから、後ヒータ23の加熱効率が極めて良好で、高温の空気を加熱室11へ送り出すことができる。よって、高出力で一気に食品を調理でき、食品本来のおいしさを引き出すことができる。また、調理時間も短縮できる。また、放熱フィン38を設けることにより、後ヒータ23表面(外皮37)の温度が過加熱状態になることを防止でき、後ヒータ23自体の寿命を長くすることが可能になる。
【0038】
ここで、後ヒータ23において、上述した密集部分(開始位置39および終了位置40の近傍)で加熱された空気は、それ以外の部分で加熱された空気よりも温度が高く、上述したように正面視反時計回りの方向へ流れて第5位置47の貫通穴42(特定吹き出し孔)を介して、加熱室11の下部へ吹き出される。換言すれば、加熱循環室74内で第5位置47の貫通穴42へ向かう空気の流路85に、後ヒータ23の密集部分が配置されている。これにより、後ヒータ23によって加熱された空気のうち、第5位置47の貫通穴42から加熱室11の下部(底板6)へ送り出される熱風を特に高温にすることができる。そのため、底板6に載置された被調理食品を確実に加熱することができ、また、角皿25(図18参照)に載置されることで底板6から浮いた位置に配置された被調理食品を下側から加熱(オーブン加熱)する際に、下火効果を高めることができる。
【0039】
また、図11に示すように、後ヒータ23は、放熱フィン38が内壁41に接した状態で設けられていることが望ましい。これにより、後ヒータ23の熱は、通過する空気を加熱するのみでなく、放熱フィン38を通して加熱室11の内壁41も加熱するから、内壁41自体が加熱されることにより、加熱室11内の温度をより高温にすることができ、短時間で良好な加熱調理を実現することができる。
【0040】
上述した加熱循環室74の放熱フィン38付の後ヒータ23、多枚数の羽根を有する大型ファン35を具備する構成は、高出力のオーブン調理を実現でき、ジェットヒートエンジンと称することができる。
なお、内壁41を除く加熱室11および加熱循環室74の壁面は、たとえば、空気層、断熱板、断熱材、断熱板を挟んだ多層断熱鋼板で形成するのが好ましく、これによって、加熱室11内の熱を閉じ込めてよりスムーズな高火力調理を実現できる。
【0041】
また、通常、被調理食品の調理工程に先立って加熱室11内を予め加熱する工程(予熱工程)が実施される。予熱工程では、図8に示すファン35の回転数は、上述した通常回転数(約2100rpm)よりも低くされる。
この電子レンジ1では、図12(a)に示すように、制御部17(ファン制御手段)が、操作パネル10、ファン35および後ヒータ23のそれぞれに対して電気的に接続されている。操作パネル10の操作による予熱工程の実施指令に応じて、制御部17は、ファン35および後ヒータ23をそれぞれ駆動させる。
【0042】
予熱工程では、図12(b)に示すように、制御部17は、操作パネル10の操作に応じて予熱行程を実施するか否かを判断する(ステップS1)。予熱行程を実施する場合には(ステップS1のYES)、制御部17は、後ヒータ23に通電し、ファン35を、たとえば約900rpmで低速回転させる(ステップS2)。このように、予熱工程において、ファン35の回転数を相対的に低速にすることにより、加熱空気の循環速度を比較的低くできる。そのため、より高温の加熱空気が加熱室11内へゆるやかに供給されて加熱室11内に留まり、加熱室11を短時間で温めることができる。よって、予熱時間の短縮を図ることができる。一方、予熱工程を実施しない場合、たとえば、予熱工程後の調理工程では(ステップS1のNO)、後ヒータ23に通電し、上述した通常回転数(約2100rpm)でファン35を回転させる(ステップS3)。
<過熱スチーム生成装置>
図13に示すように、加熱室11の左外側には、調理用の過熱スチームを生成する過熱スチーム生成装置5の過熱スチーム生成ユニット51が配置されている。この電子レンジ1では、上述したマイクロ波運転およびヒータ運転に加えて、過熱スチーム生成装置5が生成する過熱スチームで被調理食品を加熱するスチーム運転が実行される。加熱室11内に過熱スチームを供給して被調理食品を過熱スチームで加熱することにより、被調理食品の脱塩や脱脂を図ることができる。なお、通常のスチームの温度が約100℃であるのに対し、過熱スチームの温度は約130℃である。スチーム運転おいて、上ヒータ22および/または後ヒータ23を連動させることにより、これらのヒータが生じる熱によって加熱室11内の過熱スチームを加熱することで、加熱室11内の過熱スチームの温度を350℃〜400℃に上昇させることもできる。
【0043】
過熱スチーム生成装置5は、タンク49(図1参照)と、パイプ50と、図示しないポンプと、1つの過熱スチーム生成ユニット51とを含んでいる。
タンク49は、水を収容し、図1に示すように、ケーシング4の正面下部に対して、いわゆるカセット方式として、着脱可能に装着される。
図13に示すように、過熱スチーム生成ユニット51は、フレーム12の左側壁外面に取り付けられている。また、過熱スチーム生成ユニット51は、上下の噴射ノズルを備えていて、図14に示すように、左側壁の内面86(区画面)に、それら上噴射ノズル52および下噴射ノズル53が上下2段に表れている。上噴射ノズル52および下噴射ノズル53は、それぞれ、前後方向に並んで複数(本実施例では3つ)設けられている。上噴射ノズル52は、最上位置のレール24Uの上方において、内面86から加熱室11内を臨んでおり、下噴射ノズル53は、最上位置のレール24Uと最上位置から2番目のレール24Mとの間において、内面86から加熱室11内を臨んでいる。上噴射ノズル52および下噴射ノズル53については、以降で詳説する。
【0044】
図13に戻って、過熱スチーム生成ユニット51と、図13で図示されていないタンク49とは、パイプ50で連結されている。パイプ50の途中(詳しくは、タンク49の近傍)には、ポンプ(図示せず)が備えられており、このポンプが駆動されると、タンク49内の水が、パイプ50を介して、過熱スチーム生成ユニット51へ供給される。この水は、過熱スチーム生成ユニット51によって加熱されて過熱スチームとなり、図14に示す上噴射ノズル52および下噴射ノズル53から加熱室11内に噴射される。ここで、図18に示すように、最上位置から2番目の左右のレール24Mで角皿25を保持し、さらに、角皿25に金網7を載置する場合において、金網7の平坦部26が上下方向において上噴射ノズル52と下噴射ノズル53との間に配置されるように、脚部27の長さが設定されている。これにより、平坦部26に載置された被調理食品は、上噴射ノズル52および下噴射ノズル53のそれぞれから噴射される過熱スチーム(図示矢印参照)によって上下方向から挟まれることになり、過熱スチームに効率的に晒され、加熱調理が行われ、その際に、上述した脱塩および脱脂効果を促進することができる。このように、この過熱スチーム生成ユニット51では、上噴射ノズル52および下噴射ノズル53を2段に備えるので、加熱室11内へ立体的に過熱スチームを供給することができる。これにより、加熱室11内に過熱スチームを比較的速やかに充満させることができ、かつ、食品に対して多面的に過熱スチームを付与でき、被調理食品を良好に加熱できるとともに、調理時間の短縮を図ることができる。なお、噴射ノズルは2段に限らず、3段以上としてもよい。
【0045】
次に、過熱スチーム生成ユニット51について詳説する。
図15に示すように、過熱スチーム生成ユニット51は、右側面視において略矩形の薄板形状をしている。図16および図17に示すように、過熱スチーム生成ユニット51は、本体54と左蓋55と右蓋56とに3分割される。本体54、左蓋55および右蓋56は、熱伝導性の良好な、たとえばアルミニウムでダイカスト成形された金属体である。なお、金属体に代えて、セラミック体でもよい。過熱スチーム生成ユニット51は、左蓋55(第1の金属体)、本体54(第2の金属体)および右蓋56(第3の金属体)が、左からこの順で3層に重ね合わせられて構成されており、本体54が中央に配置される。
【0046】
図16に示すように、略矩形の薄板形状をした本体54の右側面の前後方向中央には、右側へ突出する凸条(本体右凸条57という。)が設けられている。本体右凸条57は、右側面視において矩形状をなし、その内側には、窪み(本体右窪み58という。)が形成されている。本体右窪み58の上端には、本体54を幅方向に貫通する小孔(上小孔59という。)が前後方向に並んで3つ形成されている。前側2つの上小孔59は、互いに隣接している。上小孔59の下側には、本体54を幅方向に貫通する小孔(下小孔60という。)が前後方向に並んで3つ形成されている。3つの下小孔60は、等間隔で配置されている。本体右窪み58には、各下小孔60を取り囲むように右側へ延びる管が設けられている。この管が、上述した上噴射ノズル52である。
【0047】
図17に示すように、本体54の左側面には、左側へ突出する凸条(本体第1左凸条61という。)が設けられている。本体第1左凸条61は、左側面視において上向きに突出する凸形状をなし、その内側には、窪み(本体左窪み78という。)が形成されている。本体左窪み78は、下方に位置する相対的に容量の大きな水貯留部76と、水貯留部76の上方につながった、前後方向(左側面視において左右方向)に幅が狭いスチーム上昇路77とを含んでいる。さらに、本体54の左側面には、本体第1左凸条61の外側において、本体第1左凸条61に沿い、左側へ突出する凸条(本体第2左凸条62という。)が設けられている。本体第1左凸条61と本体第2左凸条62との間には、本体第1左凸条61および本体第2左凸条62に沿う溝(本体左溝63という。)が形成されている。本体左窪み78の上端には、上述した上小孔59および下小孔60が位置している。本体左窪み78には、左側に突出する複数のリブが設けられている。これらのリブには、傾斜リブ64と上下方向リブ65とが含まれる。傾斜リブ64は、各下小孔60の下方において、やや下向きに傾斜して延びている。上下方向リブ65は、傾斜リブ64の下方において、略上下方向に沿って延びている。
【0048】
本体54には、ヒータ66(共用ヒータ)が取付けられている。ヒータ66は、上下方向に間隔を隔てて前後に延びる2本のシーズヒータであり、端部以外が本体54に埋設されるように、本体54に取付けられている。なお、説明の便宜上、上側を上ヒータ66Uといい、下側を下ヒータ66Lという。上ヒータ66Uは、下小孔60のやや下側(傾斜リブ64および上下方向リブ65の近傍)に位置し、下ヒータ66Lは、本体左窪み78では下端部に位置し、本体右窪み58では、その上下方向中央からやや下側(図16参照)に位置している。各ヒータ66は、通電されることで発熱し、本体左窪み78および本体右窪み58(図16参照)では、各ヒータ66の周囲が加熱される。
【0049】
左蓋55は、左側面視において上向きに突出する凸形状の薄板形状に形成されている。左蓋55の前後方向における略中央には、左蓋55を幅方向に貫通する小孔(左蓋小孔67という。)が形成されている。左蓋55の左側面には、左蓋小孔67を取り囲むように左側へ延びる管(ジョイントパイプ68という。)が設けられている。
図16に示すように、左蓋55の右側面(内面)には、左蓋55の周縁の全てに沿って右側へ突出する凸条(左蓋凸条69という。)が設けられている。左蓋凸条69の内側には、窪み(左蓋窪み79という。)が形成されている。左蓋小孔67は、左蓋凸条69内に配置されている。
【0050】
右蓋56は、右側面視において略矩形の薄板状に形成されている。右蓋56の上端部には、右蓋56を幅方向に貫通する穴(右壁穴70という。)が、前後方向に等しい間隔を隔てて3つ形成されている。また、右蓋56の下端部には、右蓋56を幅方向に貫通する小孔(右壁小孔83という。)が、前後方向に等しい間隔を隔てて3つ形成されている。さらに、右蓋56には、各右壁小孔83を取り囲むように右側へ延びる管が設けられている。この管が、上述した下噴射ノズル53である。
【0051】
図17に示すように、右蓋56の左側面(内面)には、右蓋56の周縁の全てに沿って左側へ突出する凸条(右蓋第1凸条71という。)が設けられている。さらに、右蓋56の左側面には、右蓋第1凸条71の内側において、右蓋第1凸条71に沿い、左側へ突出する凸条(右蓋第2凸条72という。)が設けられている。右蓋第1凸条71と右蓋第2凸条72との間には、右蓋第1凸条71および右蓋第2凸条72に沿う溝(右蓋溝73という。)が形成されている。右蓋第2凸条72の内側には、窪み(右蓋窪み80という。)が形成されている。3つの右壁穴70において、前端の右壁穴70は、右蓋溝73の前側上端部に位置し、後端の右壁穴70は、右蓋溝73の後側上端部に位置し、中央の右壁穴70は、右蓋窪み80内に位置している。これに対し、全ての右壁小孔83は、右蓋窪み80内に位置している。
【0052】
本体54に対して、左蓋55および右蓋56が取付けられる。
左蓋55は、本体54に対して、左側から取付けられる。このとき、左蓋凸条69(図16参照)が本体左溝63に嵌めこまれる。ここで、予め本体左溝63に流し込まれた耐熱性の接着剤、たとえばシリコンの接着剤によって、左蓋凸条69と本体左溝63との間は塞がれる。そして、本体54および左蓋55のそれぞれの周縁に設けられた各ねじ部81をねじ(図示せず)で連結することによって、本体54に対する左蓋55の取付けが完了する。なお、各ねじ部81のうち、左蓋55および本体54の上端中央寄りの2つのねじ部81は、右蓋56の上端にある2つのねじ部81と共締めされる。この状態において、本体左窪み78と左蓋窪み79(図16参照)とは、互いに連通する。ここで、本体54と左蓋55との間で互いに連通状態にある本体左窪み78および左蓋窪み79において、上下方向リブ65より下側の部分に、前述した水貯留部76が形成され、上下方向リブ65以上の部分に、幅(前後の幅)が狭いスチーム上昇路77(供給路)が形成されている。スチーム上昇路77は、水貯留部76から上方に延びている。なお、説明の便宜上、水貯留部76およびスチーム上昇路77を、本体左窪み78に示している。また、左蓋小孔67は、水貯留部76に連通し、上小孔59および下小孔60は、スチーム上昇路77の上部に連通している。なお、下小孔60に対応する上噴射ノズル52(図16参照)は、スチーム上昇路77の上部に形成されているといえる。
【0053】
一方、右蓋56は、本体54に対して、右側から取付けられる。このとき、本体右凸条57(図16参照)が右蓋溝73に嵌めこまれる。ここで、予め右蓋溝73に流し込まれたたとえばシリコンの接着剤によって、本体右凸条57と右蓋溝73との間は塞がれる。そして、本体54および右蓋56のそれぞれの周縁に設けられた各ねじ部81をねじ(図示せず)で連結することによって、本体54に対する右蓋56の取付けが完了する。この状態において、本体右窪み58(図16参照)と右蓋窪み80とは、互いに連通する。以下では、本体54と右蓋56との間で連通状態にある本体右窪み58および右蓋窪み80をまとめてスチーム誘導路82(供給路)という。なお、説明の便宜上、スチーム誘導路82を、本体右窪み58に示している(図16参照)。また、各上噴射ノズル52は、対応する右壁穴70に挿通され、右側に露出される(図15参照)。そして、図16に示すように、上小孔59は、スチーム誘導路82の上部に連通し、右壁小孔83は、スチーム誘導路82の下部に連通している。なお、右壁小孔83に対応する下噴射ノズル53は、スチーム誘導路82の下部に形成されているといえる。また、スチーム誘導路82は、上小孔59を介して、スチーム上昇路77(図17参照)の上部に連通している。そして、各ヒータ66がスチーム誘導路82内まで膨出していることから、スチーム誘導路82は、各ヒータ66に近接して配置されているといえる。
【0054】
以上により、図15に示すように、過熱スチーム生成ユニット51が完成する。なお、図17に示すジョイントパイプ68には、上述したパイプ50(図13参照)が取付けられる。
この状態において、上述したポンプ(図示せず)を駆動して、タンク49(図1参照)の水を、パイプ50(図13参照)を介して過熱スチーム生成ユニット51に供給する。
【0055】
過熱スチーム生成ユニット51に供給された水は、左蓋小孔67を通過してから、水滴となって落下し、水貯留部76に貯留される。この水は、水貯留部76において、下ヒータ66Lによって加熱されて(詳しくは、下ヒータ66Lに加熱された水貯留部76によって加熱されて)、スチームとなり、図示矢印に示すように、上下方向リブ65同士の間、傾斜リブ64同士の間を順に通過しながらスチーム上昇路77を上昇する。このとき、このスチームは、上下方向リブ65および傾斜リブ64から放熱される上ヒータ66Uの熱によってさらに加熱されて過熱スチームとなる。スチーム上昇路77の上部まで上昇した過熱スチームにおいて、一部は、下小孔60から上噴射ノズル52(図16参照)を流れ、上述したように、加熱室11内へ噴射される(図18参照)。
【0056】
一方で、スチーム上昇路77の上部まで上昇した過熱スチームにおいて、下小孔60へ流れる過熱スチーム以外の過熱スチームは、上小孔59から、図16に示すスチーム誘導路82に流入し、スチーム誘導路82によって下方(図示矢印参照)へ導かれる。ここで、スチーム誘導路82は、上述したように、ヒータ66に近接して配置されているので、スチーム誘導路82を下降する過熱スチームは、上ヒータ66Uおよび下ヒータ66Lを順に通過し、これらのヒータ66によって再加熱される。これにより、この過熱スチームの温度低下を抑制することができる。また、これらのヒータ66に到達する以前に過熱スチームが冷えてスチームや水滴になったとしても、これらのヒータ66によって加熱されるので、再び過熱スチームが生成される。そして、再加熱された過熱スチームは、右壁小孔83から下噴射ノズル53を流れ、上述したように、加熱室11内へ噴射される(図18参照)。このように、この過熱スチーム生成ユニット51では、上噴射ノズル52および下噴射ノズル53から噴出されるまで過熱スチームを維持することができる。
【0057】
また、上述したように、ヒータ66が埋設された本体54は、熱伝導性の良好な材料で形成されている。そのため、左蓋55と本体54との間に形成された水貯留部76およびスチーム上昇路77(図17参照)、ならびに、本体54と右蓋56との間に形成されるスチーム誘導路82に対して、良好にヒータ66の熱を供給することができる。
また、この電子レンジ1では、1つの過熱スチーム生成ユニット51で上噴射ノズル52および下噴射ノズル53の両方に過熱スチームを供給することにより、部品点数の削減を図ることができる。さらに、この過熱スチーム生成ユニット51では、ヒータ66が、上噴射ノズル52へ過熱スチームを供給するスチーム上昇路77(図17参照)と、下噴射ノズル53へ過熱スチームを供給するスチーム誘導路82との両方を加熱するので、構成の簡素化を図ることができる。なお、ヒータ66は、上ヒータ66Uおよび下ヒータ66Lの2本のヒータで構成されているが、これら2本のヒータをコ字状に連結することによって1本化することも可能である。その場合、2本のヒータの連結部分がスチーム誘導路82内に配置されればよい。
【0058】
また、変形例として、図19に示す過熱スチーム生成ユニット51を用いてもよい。なお、図19において、上述した部品と共通する部品には共通の符号を付し、その説明を省略する。
変形例に係る過熱スチーム生成ユニット51では、右蓋56(図17参照)が省略され、その代わりに、略S字状に屈曲するパイプ(ガイドパイプ84という。)が設けられている。ガイドパイプ84において、直線部分は、アルミニウムや銅やステンレスなどの金属で形成され、屈曲部分は、シリコンなどで形成されている。もちろん、ガイドパイプ84は、全部が金属で形成されていてもよいし、全部がシリコンで形成されていてもよい。各ガイドパイプ84において、一端が、対応する上小孔59(図16参照)に接続され、他端には、下噴射ノズル53が接続されている。そして、各ガイドパイプ84は、上ヒータ66Uおよび下ヒータ66Lに対して、右側から接触するように、本体54に取付けられている。そのため、上述したようにスチーム上昇路77(図17参照)から上小孔59(図16参照)に到達した過熱スチームは、ガイドパイプ84を流れ、上記した実施例と同様に、上ヒータ66Uおよび下ヒータ66Lによって再加熱される。
【0059】
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の一実施形態に係る食品調理装置としての電子レンジ1の正面右側斜視図である。
【図2】図1において、扉2を開いた状態を示す。
【図3】電子レンジ1の底面図である。
【図4】扉2および化粧板3(外カバー板)を取り除いた状態にあるケーシング4の正面上側斜視図である。
【図5】加熱室11の底である凹部16の平面図であって、回転アンテナ20A、20Bの配置および形状を示す図である。
【図6】図6(a)は、拡散モード、図6(b)は、集中モードにおけるマイクロ波放射のイメージ図である。
【図7】調理状況検知手段としての赤外線センサ30の揺動に伴って視野32が加熱室11内で移動する様子を説明するための模式図であって、図7(a)は、本実施例を適用した場合を示し、図7(b)は、比較例を適用した場合を示す。
【図8】扉2を取り除いた状態にあるケーシング4の正面図である。
【図9】後ヒータ23を一部抜き出して示した図である。
【図10】加熱循環室74内を示す試作品の写真である。
【図11】扉2および化粧板3(外カバー板)を取り除いた状態にあるケーシング4の右側断面図である。
【図12】図12(a)は、電子レンジ1の予熱工程に係る電気的構成を示すブロック図であり、図12(b)は、予熱工程を説明するためのフローチャートである。
【図13】扉2および化粧板3(外カバー板)を取り除いた状態にあるケーシング4の正面左側斜視図である。
【図14】扉2および化粧板3(外カバー板)を取り除いた状態にあるケーシング4の正面右側斜視図である。
【図15】過熱スチーム生成ユニット51の正面右側斜視図である。
【図16】図15に示す過熱スチーム生成ユニット51の分解斜視図である。
【図17】正面左側から見た過熱スチーム生成ユニット51の分解斜視図である。
【図18】図8に角皿25および金網7を追加した図である。
【図19】変形例に係る過熱スチーム生成ユニット51の右側面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 電子レンジ
2 扉
6 底板
11 加熱室
13 マグネトロン
14 導波管
15 アンテナ部
18 分路
20 回転アンテナ
21 回転軸
28 突起
30 赤外線センサ
32 視野
87 揺動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が扉で開閉され、被調理食品を収容するための加熱室と、
前記加熱室の左右方向中央部に対して対称な位置に設けられ、前記加熱室内へマイクロ波を放射するための一対のマイクロ波放射手段と、
前記加熱室へ収容された被調理食品を上方から臨む位置であって、かつ、前記一対のマイクロ波放射手段の対称中心に設けられた調理状況検知手段と、
を含むことを特徴とする電子レンジ。
【請求項2】
前記一対のマイクロ波放射手段は、前記加熱室の底面沿いに左右に設けられていることを特徴とする、請求項1記載の電子レンジ。
【請求項3】
前記一対のマイクロ波放射手段は、それぞれ、回転軸を中心に回転する回転式マイクロ波放射アンテナを含むことを特徴とする、請求項1または2記載の電子レンジ。
【請求項4】
前記調理状況検知手段は、前記加熱室の左右方向中央部の背面上方から底面を臨むように設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ。
【請求項5】
前記調理状況検知手段は、前記加熱室の底面ほぼ全面を検知する視野を有することを特徴とする、請求項4記載の電子レンジ。
【請求項6】
前記調理状況検知手段は、前記加熱室底面の左右方向中央部を前端から後端まで検知するための複数の視野を有し、
前記複数の視野が底面上を左右に移動するように、前記調理状況検知手段を揺動させる揺動機構が備えられていることを特徴とする、請求項5記載の電子レンジ。
【請求項7】
前記加熱室の近傍に設けられたマグネトロンと、
前記マグネトロンから放射されるマイクロ波を2つの分路へ誘導するための分岐導波管とを有し、
2つの前記分路に、それぞれ、前記マイクロ波放射手段が設けられており、
前記分岐導波管の分岐位置には、前記分岐導波管内へ膨出する半球状の突起が形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の電子レンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図6】
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【図10】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−24915(P2009−24915A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187298(P2007−187298)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】