説明

電子内視鏡システム、電子内視鏡、およびプロセッサ

【課題】プロセッサに専用端子を設けることなく簡素な構造で、画像処理装置において適切な画像処理を行うことが可能な電子内視鏡システム、電子内視鏡およびプロセッサを提供することを目的とする。
【解決手段】体腔内を撮影して画像信号を生成する撮影手段と、撮影手段に接続されるプロセッサであって、画像信号に第1の画像処理を施す第1の画像処理手段と、画像信号の出力先を切り替える切替手段と、を備えるプロセッサと、プロセッサに着脱自在に接続され、画像信号に第2の画像処理を施す第2の画像処理手段とからなる電子内視鏡システムにおいて、切替手段によって画像信号の出力先を、第1の画像処理手段または第2の画像処理手段のいずれかに切り替える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡システム、電子内視鏡、およびプロセッサに関し、特に画像処理装置を接続して使用可能な電子内視鏡システム、電子内視鏡、およびプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、患者の体腔内を診断又は治療するための電子内視鏡システムは、先端部に備えられた固体撮像素子で体腔内を撮像する電子内視鏡と、体腔内の観察部位を照明するための光を電子内視鏡に供給し、電子内視鏡により生成された画像信号を処理してモニタに出力する電子内視鏡用プロセッサとから構成される。このような電子内視鏡システムでは、プロセッサから供給される照明光が電子内視鏡の先端から体腔内へ向けて照射され、体腔壁で反射した反射光が撮像素子によって光電変換される。そして、光電変換によって生成された電荷は、画像信号として読み取られ、プロセッサに出力される。そして、プロセッサによって必要な画像処理が施され、モニタに出力される。
【0003】
近年、技術の進歩に伴い、上記のような電子内視鏡システムに基本機能として備えられている撮影機能、照明機能、画像処理機能、および調光機能等以外の新たな機能が開発されている。しかしながら、従来の電子内視鏡システムにおいて、基本機能以外の新たな機能を実現するためには、既存の電子内視鏡またはプロセッサを、当該新たな機能に対応するよう改修したり、新たな機能を備えたものへと交換したりしなければならず、コストや汎用性の面などにおいて問題があった。そこで、このような問題を解決するため、特許文献1には、新たな機能を備えた周辺機器を電子内視鏡システムに接続することで、従来の電子内視鏡を用いて新たな機能を実現することが提案されている。詳しくは、特許文献1の内視鏡システムでは、圧力測定装置を周辺機器として内視鏡システムの画像処理装置に接続する。そして、圧力測定装置において、画像処理装置から出力された画像に、測定された圧力値を重畳して、モニタに表示させる構成となっている。これにより、画像処理装置が圧力測定機能を備える必要なく、圧力測定結果を表示させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−51975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特に、画像処理技術の分野においては、日々新しい画像処理方法が開発され、高速化や精密化などが実現されている。こうした新しい画像処理技術を、既存の電子内視鏡システムにおいて実現するためには、特許文献1にて提案されるように、新たな画像処理機能を備えた画像処理装置を、周辺機器として電子内視鏡システムのプロセッサに接続することが考えられる。しかしながら、このとき、画像処理装置を通常モニタが接続されるプロセッサの出力端子に接続すると、プロセッサにおいて基本機能として備える画像処理が施された後の画像信号が、画像処理装置に出力されてしまう。そして、これにより、画像処理装置においてプロセッサから出力された画像信号に対して、新たな画像処理を施すことになり、本来得られる画像処理効果が得られなくなってしまうことがある。これを解決するためには、プロセッサから出力される画像信号に対して、プロセッサにて施された画像処理を元に戻す処理を行った上で画像処理装置における画像処理を行わなければならず、処理の負荷が増大してしまうといった問題があった。
【0006】
また、プロセッサにモニタへの出力端子以外に、画像処理装置へ出力するための専用端子を設け、電子内視鏡から出力される画像処理が施される前の画像信号を、当該専用端子を介して画像処理装置へ出力することも考えられる。しかしながら、この場合は、プロセッサ内部の配線が増えることによるプロセッサ内部におけるノイズの発生や、専用端子を介して外部から伝送されるノイズの発生といった問題がある。さらに、該専用端子に対するEMC対策が必要となるなど、コストアップにも繋がってしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、プロセッサに専用端子を設けることなく簡素な構造で、画像処理装置において適切な画像処理を行うことが可能な電子内視鏡システム、電子内視鏡およびプロセッサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明により、体腔内を撮影して画像信号を生成する撮影手段と、撮影手段に接続されるプロセッサであって、画像信号に第1の画像処理を施す第1の画像処理手段、および画像信号の出力先を切り替える切替手段を備えるプロセッサと、プロセッサに着脱自在に接続され、画像信号に第2の画像処理を施す第2の画像処理手段とからなり、上記切替手段は、画像信号の出力先を、第1の画像処理手段または第2の画像処理手段のいずれかに切り替えることを特徴とする電子内視鏡システムが提供される。
【0009】
このように構成することにより、撮影手段によって生成された画像信号を、第1の画像処理手段を介さずに第2の画像処理手段に出力することが可能となる。これにより、第2の画像処理手段では、第1の画像処理手段における画像処理の影響を受けることなく、画像処理が行われ、適切な画像処理効果を得ることができる。また、プロセッサに切替手段を備えることにより、追加で専用端子を設けて第2の画像処理手段へ画像信号を出力する必要がなく、コストアップやノイズの影響等を軽減することができる。
【0010】
また、上記第2の画像処理は、第1の画像処理とは異なる画像処理を少なくとも一つ含むものであっても良い。
【0011】
また、上記切替手段は、プロセッサに第2の画像処理手段が接続されている場合には、画像信号を第2の画像処理手段に出力し、プロセッサに第2の画像処理手段が接続されていない場合には、画像信号を第1の画像処理手段に出力する構成としても良い。このように構成することで、第2の画像処理手段が接続されていない場合には、第1の画像処理手段によって画像処理を行い、第2の画像処理が接続されている場合には、第2の画像処理手段によって画像処理を行うといったように、第2の画像処理手段の接続状況に応じた画像処理を行うことが可能となる。
【0012】
また、上記プロセッサは、ユーザによって手動で切り替え可能なスイッチをさらに備えても良い。この場合、上記切替手段は、スイッチの状態に基づいて、プロセッサに第2の画像処理手段が接続されているか否かを判断する構成としても良い。
【0013】
また、上記電子内視鏡システムは、プロセッサと、第2の画像処理手段とが通信を行うための通信手段をさらに備えても良い。この場合、切替手段は、通信手段における通信結果に基づいて、プロセッサに第2の画像処理手段が接続されているか否かを判断する構成としても良い。
【0014】
また、上記プロセッサは、第1の画像処理が施された画像処理信号または、画像信号のいずれかを出力する出力手段を更に備えても良い。そして、上記第2の画像処理手段は、出力手段に接続されるものであっても良い。このように構成することで、出力手段を第1の画像処理後の画像処理信号の出力、および第2の画像処理手段への画像信号の出力の両方に使用することができ、第2の画像処理手段への画像信号を出力するための特別な専用端子が不要となる。
【0015】
また、上記出力手段は、切替手段によって、画像信号が第1の画像処理手段に出力される場合は画像処理信号を出力し、画像信号が第2の画像処理手段に出力される場合は画像信号を出力するものであっても良い。このような構成により、切替手段によって、画像信号が第2の画像処理手段に出力される場合は、出力手段を介して画像信号が第2の画像処理手段に出力されるよう構成することが可能となる。
【0016】
また、上記出力手段は、複数の出力端子を含み、上記第2の画像処理手段は、複数の出力端子のいずれかに接続されるものであっても良い。さらに、出力手段から画像信号が出力される場合は、複数の出力端子のうち、第2の画像処理手段が接続される出力端子以外の出力端子へ、画像信号が出力されないようにする構成としても良い。このように構成することで、画像処理の施されていない画像信号が、誤ってモニタ等に出力されることを防ぐことができる。
【0017】
また、本発明により、電子内視鏡用プロセッサに着脱自在に接続される電子内視鏡であって、体腔内を撮影して画像信号を生成する撮像手段と、画像信号に画像処理を施す画像処理手段と、画像信号の出力先を、画像処理手段または電子内視鏡用プロセッサのいずれかに切り替える切替手段と、を備えることを特徴とする電子内視鏡が提供される。このように構成することにより、画像処理手段を備えた電子内視鏡においても、画像処理が施されていない画像信号をプロセッサに出力することができる。
【0018】
さらに、本発明により、電子内視鏡および画像処理装置が着脱自在に接続される電子内視鏡用プロセッサであって、電子内視鏡によって生成される画像信号に画像処理を施す画像処理手段と、画像信号の出力先を、画像処理手段または画像処理装置のいずれかに切り替える切替手段と、を備える電子内視鏡用プロセッサが提供される。
【発明の効果】
【0019】
したがって、本発明によれば、プロセッサに専用端子を設けることなく簡素な構造で、画像処理装置において適切な画像処理を行うことが可能な電子内視鏡システム、電子内視鏡およびプロセッサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態における電子内視鏡システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態における出力切替え処理のフローチャートである。
【図3】本発明の(a)プロセッサの画像処理回路における処理ブロック、および(b)画像処理装置の画像処理回路における処理ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における電子内視鏡システム1について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の概略構成を示す図である。電子内視鏡システム1は、患者の体腔内を術者が観察・診断するための医療用観察システムである。電子内視鏡システム1は、体腔内の画像を撮影するための電子内視鏡10、電子内視鏡10が着脱自在に接続されるプロセッサ20、プロセッサ20に着脱自在に接続される画像処理装置30、およびモニタ40から構成される。尚、モニタ40は、プロセッサ20または画像処理装置30に接続される。
【0023】
電子内視鏡10は、患者の体内に挿入される長尺の可撓管からなる挿入部10a、術者によって把持される把持部10bおよびプロセッサ20に電気的および光学的に接続される接続部10cからなる。電子内視鏡10の接続部10cから挿入部10aの先端まで、プロセッサ20から供給される光を伝搬するためのライトガイド101が延在している。また、挿入部10aの先端には、ライトガイド101にて伝搬された光を観察部位に射出するための配光レンズ102、観察部位で反射された光を撮像素子の受光面に結像させるための対物レンズ103、および受光面に結像された被写体像に基づいて画像信号を生成する固体撮像素子であるCCD104が配置される。
【0024】
プロセッサ20は、電子内視鏡システム1全体の駆動制御や同期を図るためのシステムコントローラ201およびタイミングコントローラ202、電子内視鏡10に照明光を供給するためのランプ203、ランプ203に駆動電力を供給するためのランプ電源204、およびランプ203から照射される光の光量を調整する絞り205を備えている。また、プロセッサ20は、電子内視鏡10から出力される画像信号に所定の画像処理を施す画像処理回路206、画像処理回路206にて処理された画像に文字情報などを重畳するためのOSD回路207、画像信号をモニタ40に適した形式のビデオ信号へと変換するためのエンコーダ208、およびエンコーダ208にて変換されたビデオ信号を、接続される外部機器へと出力するための出力端子209を備えている。さらに、本実施形態のプロセッサ20の図示しないフロントパネルには、術者によって切り替え可能なスイッチ210が設けられている。また、プロセッサ20は、スイッチ210の状態に基づいて、電子内視鏡10から送られる画像信号の出力先を切り替える切替回路211を備えている。
【0025】
画像処理装置30は、画像処理装置30の各部を統括的に制御するシステムコントローラ301、プロセッサ20の出力端子209と接続され、出力端子209から出力されるビデオ信号を受信する入力端子302、入力される画像信号に対して後述する画像処理を行う画像処理回路303、画像処理回路303にて処理された画像に文字情報などを重畳するためのOSD回路304、画像信号をモニタ40に適した形式のビデオ信号へと変換するためのエンコーダ305、およびエンコーダ305にて変換されたビデオ信号を接続される外部機器へと出力するための出力端子306を備えている。
【0026】
また、モニタ40は、NTSC方式の画像に対応するTVモニタ40Tや、TVモニタ40Tよりも高解像度のSXGA方式の画像に対応するPCモニタ40Pであり、それぞれプロセッサ20または画像処理装置30の出力端子209または306に接続される。
【0027】
続いて、上記の構成を備えた電子内視鏡システム1における体腔内観察について、説明する。まず、プロセッサ20の電源が投入され、術者によって電子内視鏡10の挿入部10aが患者の体内に挿入されると、システムコントローラ201の制御の下、ランプ電源204からランプ203へ駆動電力が供給され、ランプ203から光が照射される。ランプ203から照射された光は、その光路中に配置された絞り205によって光量が調整され、電子内視鏡10のライトガイド101に入射する。そして、ライトガイド101に入射した光は、ライトガイド101内を伝搬され、配光レンズ102を介して、挿入部10aの先端から射出される。
【0028】
そして、体腔内の生体組織で反射した光は、対物レンズ103を介してCCD104の受光面に結像される。本実施形態では、カラー撮像方式として単板同時式が適用されており、CCD104の受光面上にはイエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)の各色要素が市松模様状に並べられた補色カラーフィルタ(図示せず)が受光面の各画素に対応して配置されている。そして、CCD104では、システムコントローラ201による制御の下、補色カラーフィルタを透過した光の強度に応じた被写体像の画像信号が光電変換により発生され、所定時間間隔ごとに1フレーム分の画像信号が、色差線順次方式によって順次読み出される。本実施形態では、インターライン・トランスファ方式のCCDが使用されており、NTSC方式の垂直同期周波数に対応して、例えば1/30秒間隔ごとに1フレーム分の画像信号が順次読み出され、プロセッサ20へ送られる。
【0029】
CCD104から送られた画像信号は、プロセッサ20の切替回路211に入力する。切替回路211は、システムコントローラ201からの制御信号に基づいて、入力する画像信号の出力先を、画像処理回路206またはエンコーダ208のいずれかへ切り替える。ここで、上述のように、プロセッサ20の出力端子209に画像処理装置30が接続されている場合、すなわち画像処理装置30においてプロセッサ20とは異なる画像処理を施したい場合には、プロセッサ20の画像処理回路206にて画像処理が行われる前の画像信号を画像処理装置30に出力することが望ましい。そのため、本実施形態においては、プロセッサ20のフロントパネルに設けられたスイッチ210を術者によって手動で操作することによって、CCD104から送られる画像信号の経路を、画像処理回路206を通る経路、または画像処理回路206をスキップしてエンコーダ208に入力する経路のいずれかへ切り替える。
【0030】
具体的な画像信号の出力先切替え処理について、図2を参照して説明する。図2は、システムコントローラ201によって実行される出力先切替え処理の流れを示すフローチャートである。本処理では、まず、システムコントローラ201によってスイッチ210がONであるか否かが判断される(S101)。ここで、上述のように、プロセッサ20に画像処理装置30が接続されている場合は、術者によってスイッチ210が「ON」にされる。一方、プロセッサ20に画像処理装置30が接続されていない場合は、スイッチ210は「OFF」にされる。これにより、システムコントローラ201は、スイッチ210の状態に基づいて、画像処理装置30がプロセッサ20に接続されているか否か、すなわち画像処理装置30において画像処理を施すか否かを判断することができる。
【0031】
そして、スイッチ210がONでない(すなわちOFFである)場合は(S101:No)、システムコントローラ201によって、CCD104から送られる画像信号を、画像処理回路206に出力するよう、切替回路211が制御される(S102)。この場合、プロセッサ20には画像処理装置30が接続されていないため、プロセッサ20が備える画像処理回路206にて画像信号の画像処理が施される。
【0032】
図3(a)は、画像処理回路206において行われる、画像処理ブロックを示す図である。図3(a)に示されるように、画像処理回路206では、まず画像信号がA/D変換処理され、8ビットのデジタル信号へと変換される。そして、デジタル変換された画像信号に対して、ノイズリダクション処理が行われる。ここでは、1フレーム分の画像信号と、1フレーム前の画像信号との相関性に基づいて、画像信号におけるノイズ成分が除去される。続いて、エンハンス処理では、所定の係数に従って画像における輪郭強調が施される。さらに、続いてゲイン調整処理が行われ、画像のホワイトバランスや、RGBゲイン値が調整される。最後に、ガンマ補正処理が行われ、画像が自然な明るさとなるようガンマ特性の補正が行われる。尚、図3(a)に示される画像処理ブロックは一例であり、その他の画像処理が行われる構成とすることも可能である。
【0033】
画像処理回路206における各処理が終了すると、処理された画像信号がOSD回路207に出力される。OSD回路207では、受信した画像信号に対応する画像に所定の文字情報(日時、内視鏡の種類、術者によって入力されるコメントなど)が重畳され、エンコーダ208へと出力される。エンコーダ208では、文字が重畳された画像信号が変換され、RGB信号、Y/C分離信号およびNTSCコンポジット信号を含むNTSC信号、ならびにSXGA規格に基づくSXGA信号などのビデオ信号が生成される。そして、エンコーダ208で生成された各ビデオ信号は、出力端子209へ出力される。
【0034】
ここで、出力端子209は、NTSC信号を出力するためのNTSC端子209NおよびSXGA信号を出力するためのSXGA端子209Sからなる。そして、エンコーダ208にて変換されたRGB信号、Y/C分離信号、およびNTSCコンポジット信号は、NTSC端子209Nに出力され、SXGA信号はSXGA端子209Sに出力される。そして、NTSC端子209Nに接続されたTVモニタ40T、および/またはSXGA端子209Sに接続されたPCモニタ40Tにおいて、各ビデオ信号に基づいた被写体像が表示される。
【0035】
一方、スイッチ210がONである場合は(S101:Yes)、システムコントローラ201によって、CCD104から送られる画像信号を、エンコーダ208へ出力するように、切替回路211が制御される(S103)。これにより、CCD104から送られる画像信号は、画像信号処理回路206における画像処理が施されないまま、エンコーダ208へと出力される。
【0036】
続いて、システムコントローラ201は、エンコーダ208において、画像処理装置30が接続されていない出力端子への信号の出力を停止する(S104)。ここで、スイッチ210がONになっている場合は、上述のように画像処理の施されていない画像信号がエンコーダ208に出力され、各方式のビデオ信号へと変換される。そのため、このような状態において出力端子209にモニタ40が接続されていると、何の画像処理も施されていない画像がモニタ40に表示されてしまう。そして、これにより、体腔内の観察に支障をきたし、場合によっては不適切な画像に基づいて処置が行われてしまう恐れもある。
【0037】
そのため、スイッチ210がONの場合には、すなわちCCD104にて生成された画像信号が、画像処理回路206による画像処理を行われずにエンコーダ208に出力される場合には、画像処理装置30が接続されている端子以外には、ビデオ信号を出力しないようにすることで、誤った処置や診断が行われることを防ぐことができる。本実施形態においては、画像処理装置30は、以降の画像処理を適切に行うためにも、最も高解像度の信号を出力するSXGA端子209Sに接続される。そのため、S104では、システムコントローラ201によって、エンコーダ208で生成された各ビデオ信号のうち、SXGA信号のみが、SXGA端子209Sへ送られ、NTSC信号の出力は停止されるよう制御される。
【0038】
続いて、SXGA端子209Sから出力されたビデオ信号は、画像処理装置30の入力端子302から画像処理装置30に入力される。そして、図示しないデコード回路によってA/D変換等が行われ、画像信号に変換された後、画像処理回路303へ出力される。そして、画像処理回路303にて画像信号に対して画像処理が施される。図3(b)は画像処理回路303において行われる、画像処理ブロックを示す図である。尚、図3(b)において、プロセッサ20における画像処理回路206とは異なる処理については、二重線で示される。
【0039】
図3(b)に示されるように、画像処理回路303においても、まず画像信号がA/D変換処理される。このとき、画像処理装置30の画像処理回路303では、プロセッサ20の画像処理回路206よりも高い分解能を備え、例えば12ビットのデジタル画像信号への変換が行われる。そして、デジタル変換された画像信号に対して、ノイズリダクション処理が行われる。ここでも、プロセッサ20の画像処理回路206におけるノイズリダクション処理に比べ、フレーム間の相関が高速で処理され、ノイズリダクション処理による遅延量が削減される。続いて、エンハンス処理が行われ、所定の係数に従って画像における輪郭強調が施される。
【0040】
さらに、画像処理装置30の画像処理回路303では、プロセッサ20の画像処理回路206には備えられていない画像処理機能として、血管強調処理が行われる。本処理では、画像信号におけるRGBの波長分析などにより血管部分の検出を行い、検出された血管部分を強調した画像へと変換される。続いてゲイン調整処理が行われ、画像のホワイトバランスや、RGBゲイン値が調整される。そして、最後に、12ビットのデジタル信号に対応したガンマ補正処理が行われ、画像が自然な明るさとなるようガンマ特性の補正が行われる。尚、図3(b)に示される画像処理ブロックは一例であり、その他の画像処理が行われる構成とすることも可能である。
【0041】
画像処理回路303における各処理が終了すると、処理された画像信号がOSD回路304に出力される。OSD回路304では、プロセッサ20のOSD回路207と同様に、受信した画像信号に対応する画像に所定の文字情報(日時、内視鏡の種類、術者によって入力されるコメント、画像処理装置30における処理内容など)が重畳され、エンコーダ305へと出力される。エンコーダ305においても、プロセッサ20のエンコーダ208と同様に、文字が重畳された画像信号が変換され、RGB信号、Y/C分離信号およびNTSCコンポジット信号を含むNTSC信号、ならびにSXGA規格に基づくSXGA信号などのビデオ信号が生成される。そして、エンコーダ305で生成されたビデオ信号は、出力端子306へ出力される。
【0042】
ここで、出力端子306は、NTSC信号を出力するためのNTSC端子306NおよびSXGA信号を出力するためのSXGA端子306Sからなる。そして、エンコーダ305にて変換されたRGB信号、Y/C分離信号、およびNTSCコンポジット信号は、NTSC端子306Nに出力され、SXGA信号はSXGA端子306Sに出力される。そして、NTSC端子306Nに接続されたTVモニタ40T、および/またはSXGA端子306Sに接続されたPCモニタ40Tにおいて、ビデオ信号に基づいた被写体像が表示される。
【0043】
上述のS101からS104の処理は、観察が終了する(S105:Yes)まで繰り返される。これにより、スイッチ210の状態に応じて、電子内視鏡10から出力される画像信号の出力先がプロセッサ20または画像処理装置30のいずれかに切り替えられ、画像処理回路206または画像処理回路303のいずれかによって画像処理が施された被写体像がモニタ40に表示される。
【0044】
このように、本実施形態の電子内視鏡システム1では、プロセッサ20に画像処理装置30が接続され、画像処理装置30において画像信号に対する画像処理が施される場合は、CCD104から送られる画像信号を、プロセッサ20の画像処理回路206における画像処理を行うことなく、画像処理装置30へと出力することが可能となる。これにより、画像処理装置30において、プロセッサ20での画像処理が施されていない画像信号に対して画像処理を施すことができ、画像処理装置30における適切な画像処理効果を得ることができる。
【0045】
また、プロセッサ20の内部に切替回路211を備えることにより、画像処理装置30に画像信号を送信するための特別な専用端子を備える必要がなく、既存の出力端子209を利用して、画像処理装置30へ画像信号を送信することが可能となる。そして、これにより、コストアップやノイズの影響等を軽減することができる。さらに、様々な種類の画像処理装置をプロセッサ20の出力端子209に接続することで、電子内視鏡システム1において、多様な画像処理機能を実現することが可能となる。
【0046】
以上が本発明の実施形態であるが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、術者によってプロセッサ20のフロントパネルに設けられたスイッチ210を手動で切り替えることにより、画像信号の出力先を切り替える構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プロセッサ20のキーボード等を操作して、予め画像信号の出力先を設定し、システムコントローラ201の図示しないメモリに記憶しておくことも可能である。
【0047】
また、その他にも、プロセッサ20と画像処理装置30との間に制御系通信のための通信手段(無線通信手段または有線通信手段)を設け、プロセッサ20および画像処理装置30の通信結果に基づいて、画像処理装置30がプロセッサ20に接続されたか否かを自動的に検知する構成としても良い。このように構成することで、術者が手動でスイッチ210を切り替える手間を省くことができ、またスイッチ210の切り替えを忘れてしまうことによる誤作動を防ぐこともできる。
【0048】
さらに、上記実施形態においては、電子内視鏡10のCCD104によって生成された画像信号がそのままプロセッサ20へ送られる構成であるが、電子内視鏡の種類によっては、電子内視鏡にて独自の画像処理回路を備えるものもある。このような電子内視鏡を備える電子内視鏡システムでは、電子内視鏡にてすでに画像処理が施された画像信号がプロセッサに送られる。そのため、このような場合には、電子内視鏡側に、上記実施形態における切替回路を備える構成としても良い。この場合、CCDにて生成された画像信号は切替回路に入力され、切替回路にて、電子内視鏡が備える画像処理回路、またはプロセッサのエンコーダのいずれかに出力されるよう切り替えられる。このときの切り替えは、プロセッサに備えたスイッチと連動して行われても良いし、電子内視鏡の操作部に新たにスイッチを設ける構成としても良い。このように構成することにより、画像処理回路を備えた電子内視鏡においても、画像処理装置にて画像処理を行う場合には、画像処理が施されていない画像を画像処理装置に出力することができ、画像処理装置における画像処理効果を適切に得ることができる。
【0049】
さらに、上記実施形態においては、プロセッサ20の出力端子209と、画像処理装置30の出力端子306が、同じ形式のビデオ信号(NTSC形式およびSXGA形式)を出力する構成となっているが、画像処理装置30の出力端子306は、プロセッサ20の出力端子209とは異なる新しい形式のビデオ信号を出力する構成としても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 電子内視鏡システム
10 電子内視鏡
20 プロセッサ
30 画像処理装置
40 モニタ
104 CCD
201 システムコントローラ
206、303 画像処理回路
209、306 出力端子
210 スイッチ
211 切替回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内を撮影して画像信号を生成する撮影手段と、
前記撮影手段に接続されるプロセッサであって、
前記画像信号に第1の画像処理を施す第1の画像処理手段と、
前記画像信号の出力先を切り替える切替手段と、を備えるプロセッサと、
前記プロセッサに着脱自在に接続され、前記画像信号に第2の画像処理を施す第2の画像処理手段と、からなり、
前記切替手段は、前記画像信号の出力先を、前記第1の画像処理手段または前記第2の画像処理手段のいずれかに切り替えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記第2の画像処理は、前記第1の画像処理とは異なる画像処理を少なくとも一つ含むことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記切替手段は、前記プロセッサに前記第2の画像処理手段が接続されている場合には、前記画像信号を前記第2の画像処理手段に出力し、前記プロセッサに前記第2の画像処理手段が接続されていない場合には、前記画像信号を前記第1の画像処理手段に出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、ユーザによって手動で切り替え可能なスイッチをさらに備え、
前記切替手段は、前記スイッチの状態に基づいて、前記プロセッサに前記第2の画像処理手段が接続されているか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記プロセッサと、前記第2の画像処理手段とが通信を行うための通信手段をさらに備え、
前記切替手段は、前記通信手段における通信結果に基づいて、前記プロセッサに前記第2の画像処理手段が接続されているか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第1の画像処理が施された画像処理信号または、前記画像信号のいずれかを出力する出力手段を更に備え、
前記第2の画像処理手段は、前記出力手段に接続されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記出力手段は、前記切替手段によって、前記画像信号が前記第1の画像処理手段に出力される場合は前記画像処理信号を出力し、前記画像信号が前記第2の画像処理手段に出力される場合は前記画像信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記出力手段は、複数の出力端子を含み、
前記第2の画像処理手段は、前記複数の出力端子のいずれかに接続され、
前記出力手段から前記画像信号が出力される場合は、前記複数の出力端子のうち、前記第2の画像処理手段が接続される出力端子以外の出力端子へ前記画像信号が出力されないようにすることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の電子内視鏡システム。
【請求項9】
電子内視鏡用プロセッサに着脱自在に接続される電子内視鏡であって、
体腔内を撮影して画像信号を生成する撮像手段と、
前記画像信号に画像処理を施す画像処理手段と、
前記画像信号の出力先を、前記画像処理手段または前記電子内視鏡用プロセッサのいずれかに切り替える切替手段と、を備えることを特徴とする電子内視鏡。
【請求項10】
電子内視鏡および画像処理装置が着脱自在に接続される電子内視鏡用プロセッサであって、
前記電子内視鏡によって生成される画像信号に画像処理を施す画像処理手段と、
前記画像信号の出力先を、前記画像処理手段または前記画像処理装置のいずれかに切り替える切替手段と、
を備える電子内視鏡用プロセッサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−4907(P2011−4907A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150404(P2009−150404)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】