説明

電子内視鏡システムおよび画像制御システム

【課題】 内視鏡システムの本体設置場所から離れることなく、複数の観察画像の表示位置を別々に調整する。
【解決手段】 第1、第2モニタ60、70およびビデオプリンタ80をプロセッサ30に接続させ、キーボード90をプロセッサ30に接続させる。プロセッサ30に、第1〜第3同期制御回路39A〜39Cを設け、映像信号に対する同期信号の挿入処理を、第1、第2モニタ60、70およびビデオプリンタ80に対しそれぞれ別々に実行させる。キーボード90のファンクションキーF1〜F3の操作に従い、第1、第2モニタ60、70およびビデオプリンタ80のうち、表示位置調整対象となる表示/記録装置を設定する。そして、上下左右矢印キーに対する操作に従い、タイミングコントローラ43は、観察画像を上、下、左、あるいは右へ移動させるように、挿入タイミングを修正した同期信号を、選択された装置に応じた同期制御回路へ送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の表示装置、記録装置を備えた電子内視鏡システム、あるいは複数の画像表示を制御する画像制御システム関し、特に、複数の観察画像の表示位置を調整する表示処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡システムでは、ビデオスコープ先端部を胃など体内器官に挿入すると、ビデオスコープ先端に設けられた撮像素子から観察部位の画像信号が読み出され、映像信号が生成される。映像信号はプロセッサを介してモニタに出力され、これにより観察画像が画面上の所定の位置に表示される(例えば、特許文献1参照)。また、プロセッサには複数のモニタ、プリンタ、あるいはコンピュータなど外部装置が接続可能であり、各外部装置へ映像信号が出力される(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−237130号公報
【特許文献2】特開2001−157665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
観察画像の表示位置、記録位置は、表示装置や記録装置の特性に起因して、適切な位置(中心位置)からずれる場合がある。通常、表示装置には位置調整用のつまみ等の操作部材が設けられ、医師などのオペレータが表示装置において該操作部材を操作することにより位置調整を行う。しかしながら、内視鏡を用いた手術、処置等の医療行為では、種類の異なる複数の観察画像を表示し、また、複数の作業者、観察者に作業状況、観察部位を見せるため、複数のモニタや記録装置などの外部装置がいくつも用意される。この場合、観察画像の位置調整を各外部装置の配置された場所へ赴いて行わなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電子内視鏡システムは、撮像素子を備えたビデオスコープと、ビデオスコープが接続されるプロセッサと、複数の画像形成装置とを備えた電子内視鏡システムであり、各画像形成装置における観察画像の表示位置をそれぞれ独立して調整可能である。ここで、画像形成装置は、画像形成面において所定エリアに画像を形成する装置を表し、モニタなどのソフトコピー可能な表示装置や、プリンタなどのハードコピー可能な記録装置など様々な外部装置が接続可能である。電子内視鏡システムは、信号処理手段と、映像信号出力手段とを有する。信号処理手段は、撮像素子から読み出される画像信号に基づいて、観察画像に応じた映像信号を生成する。映像信号処理手段は、複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、映像信号に同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力する。
【0005】
本発明の電子内視鏡システムでは、例えばキーボードなどの入力部材がプロセッサに接続されており、複数の画像形成装置の中から所定の装置に対し観察画像の形成エリアの移動を実行させるために操作される。また、複数の画像形成装置の中で察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定するために設定手段を備える。例えば、設定用入力部材に対する操作に従い、画像系装置が設定される。そして、映像信号出力手段は、設定手段による設定と入力部材に対する操作に従い、複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御する。例えば、観察画像の形成エリアを上下方向に沿って移動させるため、1フィールドもしく1フレーム分の映像信号に対する垂直同期信号の挿入タイミングを調整する。あるいは、観察画像の形成エリアを左右方向に沿って移動させるため、1ライン分の映像信号に対する水平同期信号の挿入タイミングを調整する。
【0006】
入力部材が操作されると、選択された観察画像の表示位置のみが移動する。よって、オペレータは、観察画像の表示位置を調整する必要がある画像形成装置を適宜選択、設定し、内視鏡システムの本体設置場所を離れることなく、複数の観察画像を別々に位置調整できる。
【0007】
例えば映像信号出力手段は、複数の画像形成装置の数に対応するように、複数の同期制御回路を備える。各同期制御回路は、生成された映像信号に対しそれぞれ独自に所定のタイミングで同期信号を間挿させる。映像信号出力手段は、選択された画像形成装置に応じた同期制御回路に対し、同期信号のタイミングを制御する。例えば入力部材は、形成エリアの移動方向を設定するための移動方向設定部材と、形成エリアの移動量を調整する移動量調整部材とを有する。
【0008】
信号処理手段は、種類の異なる映像信号を別々に生成可能であって、映像信号出力手段は、複数の画像形成装置に対し、それぞれ種類の異なる映像信号を出力するように構成してもよい。
【0009】
本発明の電子内視鏡装置のプロセッサは、撮像素子を備えたビデオスコープが接続され、複数の画像形成装置がそれぞれ接続される電子内視鏡システムのプロセッサであって、撮像素子から読み出される画像信号に基づいて、観察画像に応じた映像信号を生成する信号処理手段と、複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、映像信号に同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力する映像信号出力手段と、複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定する設定手段とを備える。例えば、キーボードなどの設定用入力部材が接続されて設定操作が行われた場合、操作に従って画像形成装置が選択設定される。選択設定された画像形成装置に対し観察画像の形成エリアの移動を実行させるために操作される入力部材が接続され、映像信号出力手段が、入力部材に対する操作に従い、複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする。
【0010】
本発明の内視鏡用画像制御装置は、ビデオスコープに設けられた撮像素子から読み出される画像信号に基づいて、観察画像に応じた映像信号に対し、複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力する映像信号出力手段と、複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定する設定手段とを備え、映像信号出力手段が、選択設定された画像形成装置において観察画像の形成エリアの移動を実行させる入力部材に対する操作および設定手段による設定に従い、複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御する。本発明の内視鏡用画像制御方法は、ビデオスコープに設けられた撮像素子から読み出される画像信号に基づいて、観察画像に応じた映像信号を生成し、複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、映像信号に同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力し、複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定し、選択設定された画像形成装置において観察画像の形成エリアの移動を実行させる入力部材に対する操作および設定手段に従い、複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の画像制御システムは、複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、映像信号に同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力する映像信号出力手段と、複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定する設定手段とを備え、選択設定された画像形成装置において観察画像の形成エリアの移動を実行させるために操作される入力部材が接続され、映像信号出力手段が、設定手段および入力部材に対する操作に従い、複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内視鏡システムの本体設置場所から離れることなく、複数の観察画像の表示位置を別々に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態である電子内視鏡システムのブロック図である。図2は、第1モニタの表示画面を示した図である。図3は、プロセッサ内に設けられた回転板を示した平面図である。図4は、自家蛍光観察モードにおける映像信号を示した図である。そして図5は、キーボードの一部を示した図である。
【0015】
電子内視鏡システム10は、ビデオスコープ20とプロセッサ30とを備え、ビデオスコープ20はプロセッサ30に着脱自在に接続されている。また、電子内視鏡システム10は、第1、第2モニタ60、70、ビデオプリンタ80およびキーボード90を備え、それぞれプロセッサ30に接続されている。
【0016】
プロセッサ30にはキセノンランプ32とレーザ光源34とが設けられており、キセノンランプ32を使用してカラー画像を表示する通常観察モードと、レーザ光源34を利用して自家蛍光観察画像を表示する自家蛍光観察モードによる観察が選択可能である。
【0017】
通常観察モードの場合、キセノンランプ32から放射された光(照明光)は、ハーフミラー33、集光レンズ35を通ってライトガイド22の入射端22Aに入射する。ビデオスコープ20内に設けられたライトガイド22は光をスコープ先端側へ導く光ファイバ束であり、ライトガイド22を通過した光は射出端22Bから射出し、拡散レンズである配光レンズ23を介して観察部位へ照射する。
【0018】
照明光が被写体である観察部位において反射すると、反射光は対物レンズ24、励起光フィルタ25を介してCCD26に到達し、被写体像がCCD26の受光面に形成される。CCD26の受光面には補色モザイクフィルタ(図示せず)が各画素に対応しながら配置されており、各色要素フィルタを通過した光に基づいて、被写体像に応じたアナログ画像信号が光電変換によって発生する。アナログ画像信号は、CCD駆動回路36から送られてくる駆動信号に基づいて読み出される。ここでは、テレビジョン規格としてNTSC方式が適用され、1フィールド分の画像信号が1/60秒間隔で順次読み出され、プロセッサ20の信号処理回路37へ送られる。また、カラー撮像処理として色差線順次方式が適用されている。
【0019】
信号処理回路37では、アナログ画像信号に対し、増幅処理、ホワイトバランス調整処理、ガンマ補正処理、A/D変換処理など様々な処理が施される。その結果、デジタル映像信号が生成され、第1メモリ38Aへ送られる。第1メモリ38Aでは一時的にデジタル映像信号が映像データとして格納され、所定のタイミングでそれぞれ読み出される。読み出されたデジタル映像信号は、第1、第2、第3同期制御回路39A、39B、39Cへ送られる。
【0020】
第1、第2、第3同期制御回路39A、39B、39Cでは、水平、垂直同期信号などの同期信号(タイミングリファレンス信号)が同期データとして所定のタイミングでデジタル映像信号に対してそれぞれ間挿される。そして、第1、第2、第3同期制御回路39A、39B、39Cから第1、第2、第3エンコーダ40A、40B、40Cへそれぞれ映像信号が送られると、外部機器に対し出力可能となるように信号処理が施される。映像信号はビデオ信号として第1、第2、第3エンコーダ40A、40B、40Cから出力され、それぞれ第1、第2モニタ60、70およびビデオプリンタ80へ送信される。これにより、カラー観察画像が第1、第2モニタ60、70上に表示され、ビデオプリンタ80によって印刷される。図2では、第1モニタ60に表示されている観察画像SJが示されており、観察画像SJは画面SC内において画像エリアAR内に表示される。
【0021】
一方、自家蛍光観察モードの場合、レーザ光源34から放射される励起光とキセノンランプから放射される照明光とを交互に被写体へ照射させ、通常カラー観察画像と自家蛍光観察画像とを別々に表示する。自家蛍光観察モードが設定されると、キセノンランプ32が点灯する一方、レーザ光源34が所定の時間間隔(1/60秒間隔)で間欠的に点灯し、紫外線波長領域付近の波長から成る励起光がレーザ光源34から放出される。励起光はハーフミラー33において反射し、集光レンズ35を介してライトガイド22の入射端22Aに入射する。
【0022】
回転板31は、キセノンランプ32から放出される光を周期的に遮光するチョッパであり、回転板31の半分は、周上に沿って開口したU字型の光透過部31Rによって構成されている(図3参照)。回転板31は、画像信号の読出し時間間隔(1/60秒間隔)に従い、交互に照明光を透過、遮断するように一定速度でモータ41の駆動により回転する。回転板31の回転とレーザ光源34の発光タイミングを調整することにより、励起光と照明光とが交互に被写体へ照射する。
【0023】
励起光を被写体に照射すると、励起光により生体組織から生じる自家蛍光がCCD26に到達する一方、励起光の反射光は励起光フィルタ25により遮断される。その結果、自家蛍光にのみ応じた被写体像がCCD26に形成される。CCD26は、光強度の弱い自家蛍光に対応した高感度撮像素子であり、自家蛍光による画像信号が増幅されて読み出される。
【0024】
1フィールドごとに励起光と照明光とが交互に被写体へ照射することで、通常観察用の画像信号(通常観察画像信号)と自家蛍光による画像信号(自家蛍光観察画像信号)が、1フィールドごとに交互に読み出される(図4参照)。通常観察画像信号および蛍光観察画像信号は信号処理回路37において交互に処理され、その後、通常観察用の映像信号(通常観察映像信号)は第1メモリ38Aへ送られ、蛍光観察用の映像信号(自家蛍光観察映像信号)は第2メモリ38Bへ送られる。
【0025】
第1メモリ38Aに格納された通常観察映像信号は、1フィールド分ごとに第1および第3同期制御回路39A、39Cへ送られる。そして同期信号を付加された通像観察映像信号が、第1、第3エンコーダ40A、40Cを経て第1モニタ60、およびビデオプリンタ80へ送信される。一方、第2メモリ38Bに格納された自家蛍光観察映像信号は、1フレーム分ごとに第2同期制御回路39Bへ送られる。そして同期信号が付加された自家蛍光観察映像信号が第2モニタ70へ送信される。この結果、通常のカラー観察画像が第1モニタ60に表示されるとともに、濃淡画像である自家蛍光観察画像が第2モニタ70に表示される。また、必要に応じて通常のカラー観察画像が印刷される。
【0026】
CPU、ROM、RAMが組み込まれたシステムコントローラ42は、プロセッサ30内の各回路を制御し、レーザ光源34を駆動するレーザ駆動回路44、キセノンランプ32を発光させるキセノンランプ用電源回路45、モータ41を駆動するモータ駆動回路46、さらに、各回路の信号処理タイミングを制御するタイミングコントローラ43などへ制御信号を出力する。
【0027】
タイミングコントローラ43は、第1、第2、第3同期制御回路39A、39B、39Cへ水平同期、垂直同期などの同期信号を所定のタイミングで出力し、1ライン分の映像信号の間、あるいは1フィールド分の映像信号の間に同期信号を間挿させる。同期信号を間挿させるタイミングは、同期制御回路ごとに別々に設定され、システムコントローラ42は、同期信号の出力タイミングを調整するため、タイミングコントローラ43へ制御信号を出力する。
【0028】
プロセッサ30のフロントパネルに設けられた観察モード切替スイッチ47は、通常観察モードと自家蛍光観察モードを切り替えるためのスイッチであり、スイッチ操作に従ってシステムコントローラ42がモード切替を検出する。
【0029】
キーボード90は、後述する観察画像の表示位置調整のため、オペレータによって操作される。第1モニタ60の観察画像の表示位置を調整する場合、図5に示すファンクションキーF1が操作され、第2モニタ70の観察画像の表示位置を調整する場合、ファンクションキーF2が操作される。また、ビデオプリンタ80にはプレビュー用モニタ(図示せず)が接続されており、このプレビューモニタに表示される観察画像の表示位置を調整する場合、ファンクションキーF3が操作される。観察画像の移動方向、移動量の設定は、左右上下の4つの矢印キー“←”、“→”、“↑”、“↓”に対する操作によって行われ、それぞれ観察画像を左右上下にシフトさせる。
【0030】
図6は、水平ライン方向に沿った1ラインごとの画像データを示した図である。図7は、観察画像の左右方向に沿った表示位置調整を示した図である。図8は、1フィールドごとの画像データを示した図である。図9は、観察画像の上下方向に沿った表示位置調整を示した図である。図6〜図9を用いて、観察画像の表示位置調整について説明する。ただし、通常観察モードにおいて表示位置が調整されるものとする。
【0031】
第1、第2モニタ60、70の機器の特性により、観察画像の表示位置がずれる。図7に示すように、第1モニタ60の場合、観察画像SJの画像エリアARは、画面SC上における適正位置から左側へずれている。ただし、ここでの適正位置は、画面中心位置Pに関して画像エリアARが対称性を持つ表示位置を表す。また、図9に示すように、第2モニタ70の場合、観察画像SJ’の画像エリアAR’は、画面SC’における適正位置から上方向へずれている。
【0032】
第1モニタ60において観察画像の表示位置を調整する場合、キーボード90のファンクションキーF1が操作される。システムコントローラ42がファンクションキーF1の操作を検知することにより、第1モニタ60における観察画像位置調整が設定される。そして、観察画像SJを中央に表示するため、右矢印キー“→”が操作されると、システムコントローラ42は、観察画像SJの移動方向、移動量を検知し、タイミングコントローラ43へそれら移動方向、移動量に対応した制御信号を出力する。
【0033】
図6に示すように、第1同期制御回路39A(および第2、第3同期制御回路39B、39C)では、デジタル映像信号に対し、1水平ライン分の画像データ(H画像データ)の間に水平同期信号(H同期データ)が間挿される。タイミングコントローラ43は、水平同期信号の挿入タイミングが相対的に早まるように、出力タイミングを修正して水平同期信号を第1同期制御回路39Aへ送る。このときの同期信号の挿入タイミングは、右矢印キーの操作量によって定められる。ここでは、左矢印キー“←”、右矢印キー“→”それぞれ一回の押下によって1画素分ずつ画像エリアARが左右に移動する。
【0034】
1水平ライン分の画像データと水平同期信号とのデータ時間間隔が長くなるため(図6参照)、1水平ライン分の画像の表示開始位置が画面中央側へ向けて右にシフトする。その結果、観察画像SJの画像エリアAR全体が右側へシフトする(図7参照)。オペレータは第1モニタ60を見ながら左右矢印キーを操作し、観察画像SJを画面SCの中央に設定する。なお、図2では、表示位置調整後の観察画像SJを示している。
【0035】
一方、第2モニタ70において観察画像の表示位置を調整する場合、キーボード90のファンクションキーF2に対する操作によって第2モニタ70における観察画像位置調整が設定される。そして、観察画像SJを中央に表示するため下矢印キー“↓”が操作されると、システムコントローラ42は、下矢印キーの操作量に従って、タイミングコントローラ43へ制御信号を出力する。
【0036】
図8に示すように、第2同期制御回路39B(および第1、第3同期制御回路39A、39C)では、デジタル映像信号に対し、1フィールド分の画像データ(V画像データ)の間に垂直同期信号(V同期データ)が間挿される。ただし、奇数フィールドの画像データと偶数フィールドの画像データが交互に並ぶ。タイミングコントローラ43は、垂直同期信号の挿入タイミングが相対的に早まるように、出力タイミングを修正して垂直同期信号を第2同期制御回路39Bへ送る。このときの同期信号の挿入タイミングは、下矢印キーの操作量によって定められる。上下矢印キー“↑、“↓”においても、一回の押下によって1画素分ずつ画像エリアARが上下にシフトする。
【0037】
1フィールド分の画像データと垂直同期信号とのデータ時間間隔が長くなるため(図8参照)、1フィールド分の画像の表示開始位置が画面中央側へ向けて下にシフトする。その結果、観察画像SJ’の画像エリアAR’が下側へシフトする(図9参照)。オペレータは観察画像SJ’を見ながら上下矢印キーを操作し、観察画像SJ’を画面SC’の中央に設定する。
【0038】
ビデオプリンタ80のプレビュー用モニタにおいて表示位置調整を行う場合、ファンクションキーF3が操作される。プレビュー用モニタの特性により観察画像は左下側へずれて表示されているため(図示せず)、上下左右矢印キーの操作に従い、第3同期制御回路39Cにおける垂直同期信号、水平同期信号の挿入タイミングが制御され、観察画像が画面中央側へ向けてシフトされる。
【0039】
なお、自家蛍光観察モードの場合においても、ファンクションキー“F1〜F3”および上下左右の矢印キーが操作され、観察画像の表示位置が第1モニタ60、第2モニタ70それぞれ別々に修正される。これにより、ビデオプリンタ80によって印刷され、印刷用紙の中央位置に観察画像が形成される。
【0040】
このように本実施形態によれば、第1、第2モニタ60、70およびビデオプリンタ80がプロセッサ30に接続され、また、キーボード90がプロセッサ30に接続される。プロセッサ30には、第1〜第3同期制御回路39A〜39Cが設けられ、映像信号に対する同期信号の挿入処理が、第1、第2モニタ60、70およびビデオプリンタ80に対してそれぞれ別々に実行される。キーボード90のファンクションキーF1〜F3いずれかが操作されると、第1、第2モニタ60、70およびビデオプリンタ80のうち、表示位置調整対象となる表示/記録装置が設定される。そして、上下左右矢印キーに対する操作に従い、タイミングコントローラ43は、観察画像を上、下、左、あるいは右へ移動させるように、挿入タイミングを修正した同期信号を選択された装置に応じた同期制御回路へ送る。
【0041】
プロセッサ30の傍にあるキーボード90を操作するだけで、第1、第2モニタ60、70に表示される観察画像SJ、SJ’の表示位置をそれぞれ別々に調整することができるため、表示装置の調整つまみをそれぞれ操作する必要がない。また、上下左右キーを操作して観察画像を左右上下自在に移動させることができるため、表示装置等の特性に関らず、常に観察画像を中心に表示することができる。
【0042】
観察画像の上下方向に沿った移動に関しては、1フレームの映像信号の間に挿入される垂直同期信号のタイミングを調整するように構成してもよい。
【0043】
キーボード90に代わりに、他の入力部材(ジョイスティック、マウスなど)によって観察画像をシフトさせてもよい。また、デジタルレコーダなど他の記録装置や、コンピュータ、表示装置を画像形成装置としてプロセッサ30に接続させてもよい。
【0044】
自家蛍光観察画像と、カラー観察画像を別々に表示するだけでなく、様々な撮像処理、信号処理特性の異なる観察画像(例えば、超音波画像)を別々に表示するように構成してもよい。
【0045】
なお、電子内視鏡システムに限定せず、複数の画像形成装置と全体を制御する信号処理装置とを備えた画像制御システムに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態である電子内視鏡システムのブロック図である。
【図2】第1モニタの表示画面を示した図である。
【図3】プロセッサ内に設けられた回転板を示した平面図である。
【図4】自家蛍光観察モードにおける映像信号を示した図である。
【図5】キーボードの一部を示した図である。
【図6】水平ライン方向に沿った1ラインごとの画像データを示した図である。
【図7】観察画像の左右方向に沿った表示位置調整を示した図である。
【図8】1フィールドごとの画像データを示した図である。
【図9】観察画像の上下方向に沿った表示位置調整を示した図である。
【符号の説明】
【0047】
10 電子内視鏡システム
20 ビデオスコープ
26 CCD(撮像素子)
30 プロセッサ
37 信号処理回路(信号処理手段)
39A 第1同期制御回路
39B 第2同期制御回路
39C 第3同期制御回路
42 システムコントローラ
43 タイミングコントローラ
60 第1モニタ(画像形成装置)
70 第2モニタ(画像形成装置)
80 ビデオプリンタ(画像形成装置)
90 キーボード(入力部材)
SJ 観察画像
AR 画像エリア(形成エリア)
SC 画面(画像形成面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を備えたビデオスコープと、前記ビデオスコープが接続されるプロセッサと、複数の画像形成装置とを備えた電子内視鏡システムであって、
前記撮像素子から読み出される画像信号に基づいて、観察画像に応じた映像信号を生成する信号処理手段と、
前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、前記映像信号に同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力する映像信号出力手段と、
前記複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定する設定手段と、
前記プロセッサに接続され、前記設定手段によって選択設定された画像形成装置において観察画像の形成エリアの移動を実行させるために操作される入力部材とを備え、
前記映像信号出力手段が、前記設定手段と前記入力部材に対する操作に従い、前記複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記映像信号出力手段が、
前記複数の画像形成装置に対応し、生成された映像信号に対しそれぞれ独自に所定のタイミングで同期信号を間挿可能な複数の同期制御回路を有し、
前記複数の同期制御回路の中で選択された画像形成装置に応じた同期制御回路に対し、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記映像信号出力手段が、前記観察画像の形成エリアを上下方向に沿って移動させるため、1フィールド若しくは1フレーム分の映像信号に対する垂直同期信号の挿入タイミングを調整することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記映像信号出力手段が、前記観察画像の形成エリアを左右方向に沿って移動させるため、1ライン分の映像信号に対する水平同期信号の挿入タイミングを調整することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記複数の画像形成装置のうち少なくとも1つが、観察画像をソフトコピー可能な表示装置であることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記複数の画像形成装置のうち少なくとも1つが、ハードコピー可能な記録装置であることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記入力部材が、
前記観察画像の形成エリア移動方向を設定するために操作される移動方向設定部材と、
前記観察画像の形成エリア移動量を調整するために操作される移動量調整部材と
を有することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記入力部材が、前記プロセッサに接続されるキーボードであることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項9】
前記信号処理手段が、種類の異なる映像信号を別々に生成可能であって、
前記映像信号出力手段が、前記複数の画像形成装置に対し、それぞれ別々の種類の映像信号を出力可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項10】
撮像素子を備えたビデオスコープが接続され、複数の画像形成装置がそれぞれ接続される電子内視鏡システムのプロセッサであって、
前記撮像素子から読み出される画像信号に基づいて、観察画像に応じた映像信号を生成する信号処理手段と、
前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、前記映像信号に同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力する映像信号出力手段と、
前記複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定する設定手段とを備え、
前記設定手段によって選択設定された画像形成装置において観察画像の形成エリアの移動を実行させるために操作される入力部材が接続され、
前記映像信号出力手段が、前記設定手段と前記入力部材に対する操作に従い、前記複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする電子内視鏡システムのプロセッサ。
【請求項11】
ビデオスコープに設けられた撮像素子から読み出される画像信号に基づいて、観察画像に応じた映像信号に対し、複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力する映像信号出力手段と、
前記複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定する設定手段とを備え、
前記映像信号出力手段が、前記設定手段によって選択設定された画像形成装置において観察画像の形成エリアの移動を実行させる入力部材に対する操作およびに従い、前記複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする内視鏡用画像制御装置。
【請求項12】
ビデオスコープに設けられた撮像素子から読み出される画像信号に基づいて、観察画像に応じた映像信号を生成し、
複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、前記映像信号に同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力し、
前記複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定し、
選択設定された画像形成装置において観察画像の形成エリアの移動を実行させる入力部材に対する操作に従い、前記複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする内視鏡用画像制御方法。
【請求項13】
複数の画像形成装置それぞれの画像形成面に観察画像を所定エリアに形成するように、前記映像信号に同期信号を間挿させて各画像形成装置へ出力する映像信号出力手段と、
前記複数の画像形成装置の中で観察画像の形成エリアの移動対象となる画像形成装置を選択設定する設定手段とを備え、
前記設定手段によって選択設定された画像形成装置において観察画像の形成エリアの移動を実行させるために操作される入力部材が接続され、
前記映像信号出力手段が、前記設定手段と前記入力部材に対する操作に従い、前記複数の画像形成装置の中で選択された画像形成装置の観察画像の形成エリアを移動させるように、同期信号のタイミングを制御することを特徴とする画像制御システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−43162(P2006−43162A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228844(P2004−228844)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】