説明

電子写真捺染用現像剤及び電子写真捺染方法

【課題】分散性が良好で、布との固着染着性に優れ、画像濃度が高い電子写真捺染用現像剤を提供する。
【解決手段】電子写真捺染用現像剤におけるトナーの着色剤が、下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像化し、当該感光体上のトナー像を転写布に転写し、当該転写布に転写されたトナー像を当該転写布に捺染する電子写真捺染方法に使用される前記トナーを含む現像剤であって、当該トナーは、着色剤と樹脂を含む粒状体である電子写真捺染用現像剤及びこの現像剤を使用する電子写真捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染法は、糸、編織物、二次製品等色々な形態の繊維品に適用され、版形式及び機械操作によって凹版を用いるローラ捺染、孔版によるスクリーン、型紙捺染が主流である。スクリーン捺染には手工捺染、半自動スクリーン捺染機、自動走行スクリーン捺染機による捺染、フラット型及びロータリー式自動スクリーン捺染機による捺染などがある。しかし、ローラ捺染は、金属ローラに図柄を彫刻する工程が煩雑でローラの取り扱い等も大変であり、スクリーン捺染は、スクリーンの製造に時間がかかり、捺染作業に手間がかかる等の問題があった。また、ロータリー式スクリーン捺染もスクリーンの製作、ローラの彫刻等に時間がかかる等の問題があった。このように従来からの捺染法はその製作工程が煩雑で、出来上がりまで長期間費やされるため、簡便な捺染法が望まれていた。
【0003】
近年、従来の彫刻製版工程を省略し、短期間で製作が可能なインクジェットを用いた捺染方法として、例えば特許文献1記載のものが提案されている。しかし、インクジェットによる捺染方式は、濃度を上げることができない、捺染していくうちに濃度が変化してしまう等の欠点があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、電子写真方式を用いた捺染方法が最近開発されている。この方法としては、例えば、特許文献2に記載されているように、感光体上に静電潜像を形成し、静電潜像をトナーで現像した後、このトナー像を布類に転写し、熱によりトナーを定着させる、いわゆる乾式トナーを使用する電子写真方式による捺染方法が提案されている。
【0005】
また、液体トナーを用いた電子写真方式による捺染法も提案されており、例えば、特許文献3に示すように、昇華染料を用いた液体トナーをイオン流により現像し、図柄を転写物に印刷し、これを布類に重ね合せ昇華熱転写するものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−195776号公報
【特許文献2】特開平5−27474号公報
【特許文献3】特開平9−73198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2記載の電子写真方式による捺染方法は、乾式トナーを用いたものであり、トナー層厚が厚いため、肌触りが良くない樹脂により物理的に繊維に付着させているため、摩擦堅牢度、耐洗濯特性が劣る等の問題があった。
【0008】
また、特許文献3記載のものでは、肌触り等も自然で、簡便な方法であるが、カラーの場合、2色目に重ねた濃度が出にくい、耐洗濯性に劣る等の欠点があった。さらに、布の裏面までトナーが染込まず、両面捺染する必要があった。加えて作業が煩雑で、布に転写後、不要になった紙(転写物)がムダになるなどの問題があった。
【0009】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、帯電特性、分散性が良好で、布との固着染着性に優れ、画像濃度が高い電子写真捺染用現像剤を提供することである。
【0010】
また、他の目的としては、捺染の作業性を大幅に効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない電子写真捺染方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、感光体上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像化し、当該感光体上のトナー像を転写布に転写し、当該転写布に転写されたトナー像を当該転写布に捺染する電子写真捺染方法に使用される前記トナーを含む電子写真捺染用現像剤であって、前記トナーは着色剤と樹脂を含む粒状体であり、かつ前記着色剤が下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴とする。
【0012】
【化1】

【0013】
但し、上記一般式中のR1及びR2は、同一又は異なり、それぞれNH、NHCH、F、Cl、Br、NHCHOHから選ばれる基を示している。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記染料は、染料純度が80%以上である染料であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記トナーの樹脂は、当該樹脂の少なくとも一部にアルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂を含有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項3記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂は、2000mgKOH/g以下の酸価を有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記現像剤は、前記トナーを分散させる担体液を含有し、当該担体液が体積抵抗10Ω・cm以上の抵抗値を有する担体液であることを特徴とする。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項5記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記担体液は、常圧で沸点100℃〜350℃の脂肪族飽和炭化水素であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項5又は6記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記トナーは、絶対値が10mV〜200mVのζ電位を有することを特徴とする。
【0020】
また、請求項8の発明は、請求項5乃至7のいずれか1項記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記トナーは、0.1μm〜5μmの平均粒径を有することを特徴とする。
【0021】
また、請求項9の発明は、感光体上の静電潜像を現像手段によって供給される現像剤中のトナーにより現像してトナー像化し、当該感光体上のトナー像を転写布に転写し、当該転写布に転写されたトナー像を当該転写布に捺染する電子写真捺染方法において、
前記現像剤は、請求項5乃至8のいずれか1項記載の電子写真捺染用現像剤であることを特徴とする。
【0022】
また、請求項10の発明は、請求項9記載の電子写真捺染方法において、
前記感光体上のトナー像を転写布に転写する際に、当該トナー像を転写布に転写する転写ローラによって前記トナー像に圧力を印加しながら転写布にトナー像を転写することを特徴とする。
【0023】
また、請求項11の発明は、請求項9又は10記載の電子写真捺染方法において、
前記感光体上のトナー像を転写布に転写する工程は、前記感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写した後、当該中間転写体上に転写されたトナー像を転写布に二次転写する工程を含むことを特徴とする。
【0024】
また、請求項12の発明は、請求項11記載の電子写真捺染方法において、
前記二次転写前に前記中間転写体に前記トナーの分散媒を供給する工程を含むことを特徴とする。
【0025】
また、請求項13の発明は、請求項9乃至12のいずれか1項記載の電子写真捺染方法において、
前記感光体上の静電潜像を現像手段によって供給される現像剤中のトナーにより現像してトナー像化する際に、前記現像手段によって感光体上に供給されて前記静電潜像をトナー像化した後に、過剰の現像剤をリバースローラによって除去することを特徴とする。
【0026】
また、請求項14の発明は、請求項13記載の電子写真捺染方法において、
前記現像手段として現像ローラを使用し、当該現像ローラの線速が前記感光体の線速に対して1.2倍〜6倍に設定され、前記リバースローラの線速が前記感光体の線速に対して1.2倍〜4倍に設定されることを特徴とする。
【0027】
また、請求項15の発明は、請求項9乃至14のいずれか1項記載の電子写真捺染方法において、
前記現像手段として現像ローラを使用し、当該現像ローラの線速が前記感光体の線速に対して1.2倍〜6倍に設定され、前記リバースローラの線速が前記感光体の線速に対して1.2倍〜4倍に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、前記トナーが、前記着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有することによって、帯電特性、分散性が良好で、布との固着染着性に優れ、画像濃度が高い電子写真捺染用現像剤を提供することができる。
【0029】
【化2】

【0030】
但し、上記一般式中のR1及びR2は、同一又は異なり、それぞれNH、NHCH、F、Cl、Br、NHCHOHから選ばれる基を示している。
【0031】
また、本発明によれば、前記現像剤として、請求項5乃至8のいずれか1項記載の電子写真捺染用現像剤を使用することによって、捺染の作業性を大幅に効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない電子写真捺染方法を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0033】
本発明は、感光体上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像化し、当該感光体上のトナー像を転写布に転写し、当該転写布に転写されたトナー像を当該転写布に捺染する電子写真捺染方法に使用される前記トナーを含む電子写真捺染用現像剤であって、当該トナーは着色剤と樹脂を含む粒状体であり、かつ前記着色剤として下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴としている。
【0034】
【化3】

【0035】
但し、上記一般式中のR1及びR2は、同一又は異なり、それぞれNH、NHCH、F、Cl、Br、NHCHOHから選ばれる基を示している。
【0036】
上記一般式(1)で表される染料は、綿、麻等のセルロース系天然繊維中のOH基等の官能基と化学反応して染着する反応性染料であり、電子写真捺染用現像剤中のトナーとして使用したときに、帯電特性、画像濃度、染着性において優れた性能が得られる。
【0037】
一般の捺染インクでは、版を用いて画像を作成するため捺染インクの電気的な特性はさほど重要な意味を持たない。しかし、電子写真捺染方法で使用されるトナーの場合には、プラスあるいはマイナスの電気的な特性によりトナー像を形成しているために、トナー中の着色剤として使用される染料の帯電特性は非常に重要である。
【0038】
上記一般式(1)で表される染料を用いることにより帯電特性が良好になる明確な理由は不明であるが、染料骨格と電子吸引基、電子供与基との微妙なバランスによるものと考えられる。具体的には、一般式(1)の例としては、図1に示すようなものがあり、いずれもオレンジ色系の染料である。
【0039】
上記一般式(1)で表される染料は、例えば,次のようにして製造することができる。この染料の母体部分は、例えばスルファトエチルスルホン基やビニルスルホン基等を持った下記一般式(2)で示す芳香族アミン化合物などであり、これを常法によってジアゾ化し、得られたジアゾ化合物を下記式(3)で示す8−アミノ−1ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸とカップリングさせて得られる。
【0040】
【化4】

【0041】
但し上記一般式(2)中、Ra、Rb、Rc、Rd、Reの1個は、スルファトエチルスルホン基又はビニルスルホン基を、残りの他の基は、H又はアルキル基を示す。
【0042】
【化5】

【0043】
また、トリアジン環の反応基部分は、例えば以下のような反応式(4)から合成できる。
【0044】
【化6】

【0045】
本発明において使用されるトナー中の着色剤としては、上記一般式(1)の染料のみで構成することができるが、上記一般式(1)の染料と一緒に他の染料を混合して使用することもできる。他の染料を使用する場合は全染料分の30質量%以下が望ましい。
【0046】
上記一般式(1)で示す染料に混合される染料としては、市販の染料を使用することが可能であるが、一般的に、市販の粉体染料は、染料純度50%程度で、食塩、芒硝が多量に入っている場合が多い。このような食塩、芒硝を含む染料は、現像剤の抵抗、帯電性に悪影響を与えるため、精製するか、初めから上記食塩、芒硝等の塩類含有量の少ない染料を用いた方が良好である。この場合、染料純度を80%以上とすることが望ましい。
【0047】
染料の純度は以下(1)〜(3)の手法によって溶解、再沈殿法で求められる。
(1)食塩、芒硝などの無機塩類を溶解せずに染料のみを溶解する溶媒(N,N−ジメチルホルムアミドなど)を用いて抽出する。
(2)上記(1)の染料溶解液に染料を溶解しない溶媒(アセトンなど)を混合し染料を析出させる。
(3)(析出させた染料質量/初めの染料質量)×100 で純度(%)を算出する。
【0048】
本発明による転写布へのトナー中の染料の染着処理は、アルカリ濃度食塩、芒硝のパッド・スチーム法で行うことが好ましい。アルカリ成分としては、ナトリウムやカルシウム、バリウム等の水酸化物や炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナトリウム等を濃度0.1質量%〜10質量%の水溶液にしたものを用いる。これらどのような材料でも効果は得られるが特に炭酸水素ナトリウム(重曹:NaHCO)が好ましい。アルカリ水溶液濃度は0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜5質量%、更に好ましくは0.5質量%〜2質量%である。アルカリ濃度が0.1質量%よりも低い場合は反応性が低下し、アルカリ濃度が10質量%よりも高くなると綿布(セルロース)との反応前に染料自体の反応基が加水分解して、潰れてしまう場合がある
【0049】
処理温度は80℃〜140℃、好ましくは95℃〜110℃である。処理温度が80℃よりも低い場合は樹脂や染料の溶解が不十分で反応性が低下する。処理温度が140℃よりも高い場合は布との反応前に染料反応基が潰れてしまう場合がある。また、温度だけでなく加熱蒸気を用いる蒸熱法で行うことが望ましい。
【0050】
本発明による電子写真捺染用現像剤としては、後述する液体現像剤のような担体液を含まず、磁性キャリア等のキャリアとトナー粒子を含む乾式の現像剤とし、このような乾式現像剤中のトナー粒子を転写布に付着させるいわゆる乾式捺染トナーとして使用することができる。この場合、トナー粒子中には、前述の着色剤としての染料と共に、粒状体を形成する樹脂が併用される。この場合の樹脂としてはスチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好適に使用することができる。この乾式捺染トナーの平均粒径は、3〜20μmが望ましく、3μm未満ではチリが生じ、20μmを超えると色彩、解像性が悪くなる。この場合の乾式トナーの粒径は、コールターカウンター法により求める。コールターカンウター法は、乾式トナーの粒径測定で通常用いられる方法であり、トナーを電解質溶液中に分散し小孔の開いた隔壁の両側から電圧をかける。小孔から粒子体積分の電解質溶液が排除されるため、左右の電極間の電気抵抗が瞬間的に増し、電圧パルスを生じるためこのパルス数と大きさから粒度分布を求める。
【0051】
本発明による電子写真捺染用現像剤としては、トナー粒子を担体液中に分散させた液状現像剤としても使用可能であり、液状現像剤として使用する方が、上記乾式現像剤として使用する場合よりも転写布に対する捺染トナーによる染着性が良好で好適である。
【0052】
本発明による液状現像剤に含有されるトナー粒子は、着色剤としての前述の一般式(1)で示す染料の他に、粒状体を構成する樹脂が含有される。この樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、低分子量ポリエチレン樹脂、低分子量ポリプロピレン樹脂等が好適に使用され、GPC法で測定した数平均分子量Mnが500〜20000であるものが望ましい。このような樹脂を使用することにより、繊維に対する固着力、被膜強度が弱く、後述する担体液と組み合わせることによってソーピング処理で95%以上のトナーの樹脂を除去することが可能となる。
【0053】
また、上記樹脂に加えて、樹脂の一部にはアルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂を含有させると、発色、水洗工程でトナー中の樹脂が溶解し、布から脱離するため、風合の良好な捺染布が得られる。
【0054】
発色水洗工程では、100℃前後でスチーミング後、0.1質量%〜2質%程度のアルカリ水溶液で処理する場合があり、アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂を含有させないと、樹脂分が残り、風合を劣化させる原因となる。そのため、本発明においては、アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂を含有させて、発色水洗工程で樹脂が離脱し、風合の良好な捺染が得られるようにすることが望ましい。
【0055】
本発明において使用されるアルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂としては、水溶性メラミン樹脂、水溶性ロジン変性樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、コラーゲン、ゼラチン、デンプン、キトサン等がある。市販の商品としては、クラレ社製ポバール(PVA)、イソバン(イソブチレン/マレイン酸樹脂)、ハリマ化成社製ネオトール、ハリディプ(アルキッド樹脂、アクリル樹脂)、日本合成化学社製エコアティ(PVA)、ナガセケムテックス社製デコナール(エポキシ樹脂)、日本純薬社製ジュリアー(アクリル樹脂)、カブセン(ポリエステル樹脂)などが挙げられる。このようなアルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂は、0〜2000mgKOH/gの酸価を有するものが望ましい。樹脂の酸価はトナーの帯電特性に大きな影響を及ぼす。酸価が低いほど帯電性への影響は少なくなり、酸価が高くなるほどマイナス帯電性が高まる傾向にある。このため酸価が高い場合はトナーをプラス帯電性にする場合には、その制御が困難になる。樹脂の酸価は望ましくは1〜150mgKOH/gである。
【0056】
このような構成からなる液体現像剤中の捺染トナーとしては、200mV以下、好ましくは、10〜200mVのζ電位を有するものが望ましい。ζ電位が10mVよりも低いとトナー粒子が凝集したり、電気泳動性が低下し地汚れしたり、濃度が低下する。またζ電位が200mVよりも高いと感光体付着量が低下し濃度が低下する場合がある。
【0057】
また、本発明による液体現像剤中に含有される捺染トナー粒子は、0.1〜5μmの平均粒径を有するものが望ましく、0.1μm以下では、十分な濃度が得られない場合やニジミが発生しやすくなる場合があり、5μm以上では、色彩、解像性が悪くなる場合がある。より望ましくは、0.1〜1.5μmの平均粒径を有するものが好適である。
【0058】
本発明の液体現像剤に使用される担体液としては、10Ω・cm以上、好ましくは、10Ω・cm〜1016Ω・cmの高抵抗で低誘電率のものが良く、10Ω・cmより低い抵抗値を有すると現像性が低下し、地汚れや画像濃度の低下が起こリ易くなる。また、1016Ω・cmより高い場合には、画像ボケが生じる場合がある。
本発明において好適に使用可能な担体液としては、イソパラフィン系炭化水素、シリコーン系オイル等が良好である。イソパラフィン系炭化水素は、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、エクソール100/140、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130(以上エクソンモービル社製)(エクソン化学)などがあり、シリコーン系オイルとしては、KF98(1〜10000cst)(信越シリコン社製)、SH200、SH344(東レシリコン社製)、TSF451(東芝シリコン社製)などがある。
この担体液の沸点は100〜350℃が望ましい。100℃以下であると転写前に溶媒が揮発しやすく転写性向上の効果が低減したり、臭気、安全性の点や、揮発溶剤蒸気が作業者にとって好ましくない。350℃以上では、溶剤が揮発しにくく、発色工程で溶剤が除去できず発色特性に問題が生じる。350℃以下であれば、後工程の加熱、スチーミングの段階で蒸発させることができる。
【0059】
また、本発明においては、捺染トナー粒子が担体液中で良好に分散させるために、分散用樹脂を前述のトナー樹脂と共に併用することが好ましい。好ましい分散用樹脂としては、次の一般式(5)で示すビニルモノマーAと一般式(6)で示すで表わされるビニルモノマー及びビニルピリジン、ビニルピロリドン、エチレングリコールジメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンより選ばれるモノマーBの各一種づつもしくは、数種の共重合体、グラフト共重合体からなるアクリル系樹脂がある。
【0060】
【化7】

【0061】
(但し、RはHまたはCHを、nは6〜20の整数を表わす。)
【0062】
【化8】

【0063】
(但し、RはHまたはCHを、nは6〜20の整数を、RはCが1〜4のアルキル基又はHを表す。)
【0064】
本発明に好ましい分散用樹脂としてのアクリル系樹脂は、例えば以下のようにして合成することができる。攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた3LのフラスコにアイソパーHを500g仕込み、90℃に加熱し、攪拌しながらラウリルメタアクリレート(三菱レイヨン社製、アクリエステルL)100g、グリシジルメタアクリレート(三菱レイヨン社製、アクリエステルG)20g、メタクリル酸(三菱レイヨン社製)15g、アズビスイソブチロニトリル1gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下する。その後、95℃に保ち5時間重合を行う。その後、メチルメタクリレート(三菱レイヨン社製、アクリエステルM)30g、アズビスイソブチロニトリル0.2gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下し、85℃に保ち1時間重合を行う。合成されたアクリル樹脂の重合率は95%以上、数平均分子量Mnは約8000〜約50000、重量平均分子量Mwは約10000〜約80000が好ましい。
【0065】
さらに、本発明においては、トナー中に、着色剤及び樹脂と共に、荷電制御剤が含有されている。このような、荷電制御剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸金属塩、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸カルシュウム、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉄、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸クロム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸マグネシュウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸ジルコニウム、オクタン酸ジルコニウム、ドデシル酸ジルコニウム等の金属石鹸を適用することができる。
【0066】
画像形成時に、感光体上の静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成した後、当該トナー像を転写布に転写ローラで0.1〜3Kg/cmの圧力をかけ転写した場合には、平滑性の悪い転写紙や捺染の際に、転写性が向上し、高濃度の画像を形成できる。
【0067】
また、画像形成時に、後述するように、中間転写体を用いて転写する場合も、更に高い圧力がかけられるため転写性が向上する。しかし、中間転写体を用いない場合よりも転写時の溶媒量が少なくなるため、捺染の場合は、二次転写前に中間転写体上に脂肪族炭化水素やシリコーンオイル等の担体液を吹き付け転写に必要な担体液量を確保することが望ましい。この際の担体液の吹き付け量は0.20〜0.70mg/cm程度が良好である。
【0068】
また、捺染の場合、濃度を向上のためには、現像付着量を上げたり、或いは、現像後リバースローラによる担体液のスクイズ量を少なくすることにより、感光体上の現像液量を多くして布への溶剤染込み量を増やすことによって容易に行うことができる。
【0069】
図2は、本発明による一実施形態の電子写真捺染方法で使用される画像形成装置の概略構成を示す図である。帯電チャージャー等の帯電電圧付与部材2により、矢印方向Aに回転するドラム状の感光体1に電荷を与え、画像情報に応じた露光Lにより非画像部の電荷を消去して静電潜像を形成する。感光体1は、セレン感光体、有機感光体、アモルファスシリコン感光体等が使用される。感光体1の表面電位は、400V〜1600Vの範囲が良好である。感光体1の電荷の残っている静電潜像に矢印B方向に回転する現像ローラ3から供給される液体現像剤Tによりトナーを供給して静電潜像を現像してトナー像を形成する。続いて、矢印C方向に回転するリバースローラ4で感光体1の表面の余剰の現像液を除去し、転写電圧付与部材としての転写チャージャー5aによりトナーの電荷と逆電荷の電圧をかけ、感光体1の表面に形成されたトナー像を転写布Sに転写させる。なお、6は矢印D方向に搬送される転写布Sを感光体1の表面から分離させる分離ローラ、10は、感光体1からトナー像を転写布Sに転写する際に、トナー像中の担体液を補充するために、転写布Sに対して担体液を塗布、噴霧する担体液塗布・噴霧装置である。
【0070】
現像ローラ3は、感光体1と順方向に回転して、感光体1の表面に形成された静電潜像を現像ローラ3から供給される液体現像剤T中のトナーによってトナー像化する。一方、リバースローラ4は感光体1と逆方向に回転されて、現像ローラ3によって供給された現像剤の内、トナー像化で使用されたトナー以外の余剰の現像剤を感光体1の表面から除去する。この際に、現像ローラ3の線速は、感光体1の線速に対して1.2倍〜6倍、また、リバースローラ4の線速は、感光体1の線速に対して1.2倍〜4倍が効果的である。
【0071】
現像ローラ3と感光体1のギャップは50〜250μm、現像ローラ3とリバースローラ4のギャップは30〜150μmが良好である。転写電圧付与部材5の転写電圧は500〜4000Vの範囲が良好である。転写布Sに転写されずに感光体1に残ったトナーをクリーニングブレード7、クリーニングローラ8で除去後、除電手段11で感光体1の表面を除電する。なお、画像部の電荷を消去し非画像部の電荷を残して静電潜像を形成し、この画像部にトナーを付着させる所謂反転現像方式でも同様に画像形成できる。
【0072】
図3は、本発明による他の実施形態の電子写真捺染方法で使用される画像形成装置の概略構成を示す図である。この実施形態は、図2で示す画像形成装置における転写電圧付与部材としての転写チャージャー5aから転写ローラ5bにした例である。転写ローラ5bを使用する場合は、チャージャー方式に比べ転写布Sに対して感光体1のトナー像を転写する際に、圧力を付与できるため、表面性の荒れた凹凸の大きい転写布を使用した場合でも転写性が良好である。転写圧は0.1〜3kg/cmが良好である。
【0073】
図4は、本発明による他の実施形態の電子写真捺染方法で使用される画像形成装置の概略構成を示す図である。この実施形態は、図3で示す画像形成装置に中間転写部材としての中間転写ローラ12を感光体1と転写布Sとの間に配設した例である。このように、中間転写ローラ12を感光体1と転写布Sとの間に配設することによって、図3で示す中間転写部材を使用しない画像形成装置よりもさらに高い転写圧力を付与できるため、表面性の荒れた凹凸の大きい転写布Sを使用した場合でも転写性が良好である。この場合、感光体1の表面から中間転写ローラ12にトナー像を転写する際の一次転写圧は0.1〜3Kg/cmとし、中間転写ローラ12から転写布Sにトナー像を転写する際の二次転写圧は0.1〜5Kg/cmが良好である。この場合に、感光体1の表面から中間転写ローラ12へのトナー像の一次転写時に現像剤中の担体液成分が少なくなり、中間転写ローラ12から転写布Sへのトナー像の二次転写に必要な担体液量が少なくなる場合があるため、二次転写前に中間転写ローラ12に担体液塗布・噴霧装置10から担体液を吹きかける工程を追加すると効果的である。
【0074】
図5は、本発明による他の実施形態の電子写真捺染方法で使用される画像形成装置の概略構成を示す図である。この実施形態は、画像形成ユニット13R、13G、13BK、13C、13M、13Yをタンデム型に配置したフルカラー画像を形成することに可能な画像形成装置である。即ち、レッド(R)、グリーン(G)、黒(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のトナー像を形成する画像形成ユニット13R、13G、13BK、13C、13M、13Yを転写布Sの搬送方向Dに対して搬送ベルト14上に並置させ、各画像形成ユニット13R、13G、13BK、13C、13M、13Yでそれぞれの色のトナー画像を搬送ベルト14上に保持された転写布S上に形成するものである。各画像形成ユニット13R、13G、13BK、13C、13M、13Yは、感光体1R、1G、1BK、1C、1M、1Yの周囲に、帯電付与部材2、現像ローラ3R、3G、3BK、3C、3M、3Y、クリーニングローラ8及び転写ローラ5bを備えている。そして、各感光体1R、1G、1BK、1C、1M、1Yの表面を帯電付与部材2で一様に帯電させ、図示しない露光手段から各色に対応する画像情報に基づく光ビームLR、LG、LBK、LC、LM、LYを各感光体1R、1G、1BK、1C、1M、1Yの表面に照射して、各色に対応する静電潜像を形成している。このようにして形成された各色の静電潜像に対して各色のトナーを含有する現像ローラ3R、3G、3BK、3C、3M、3Yから各色のトナーを感光体1R、1G、1BK、1C、1M、1Yに供給して各色のトナー像を感光体1R、1G、1BK、1C、1M、1Yの表面に形成する。このようにして各感光体1R、1G、1BK、1C、1M、1Y上に形成された各色のトナー像を、転写ローラ5bで、布搬送ベルト14上に保持された転写布Sに転写してフルカラー捺染を行うようになっている。
【0075】
本発明による電子写真捺染用現像剤に使用される捺染トナーは、着色剤、樹脂、帯電制御剤を混合し、ブスコニーダなどの混練機で混練後、粗粉砕、微粉砕し所定の粒径になるように粗紛、微紛をカットして得られる。
【0076】
また、本発明による電子写真捺染用液体現像剤は、上記捺染トナーと担体液をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミルなどの分散機に投入、分散、混練を行って濃縮トナーを調製し、これを前記担持液中に分散させることにより現像液を得ることができる。
【0077】
本発明で使用される乾式トナーにおける着色剤、樹脂、帯電制御剤の濃度は、適宜決定すればよいが、例えば着色剤5〜15質量%、樹脂80〜95質量%、帯電制御剤1〜10質量%である。また液体現像剤の濃縮トナーとして使用される場合の組成物は、着色剤5〜10質量%、樹脂5〜20質量%、担体液70〜95質量%、帯電制御剤0.1〜1質量%である。
【0078】
次に、本発明による電子写真用現像剤について、実施例に基づいて説明する。ここでの%、部は、特に断らない限り、質量基準である。
【実施例】
【0079】
〔実施例1〕
・図1の染料A(純度48%品) 66部
・ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸(80/10/10)共重合体のアイソパーH20%溶液 98部
・ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン社製) 58部
・水溶性樹脂 ポバール(PVA)(クラレ社製) 488部
・アイソパーH 175部
・荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 3部
をピンミルに入れて10時間分散後、さらにアイソパーHを300部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図2の画像形成装置で電子写真捺染を行った。
【0080】
〔実施例2〕
・図1の染料B (純度93%品) 36部
・スチレン・アクリル共重合樹脂(スチレン/アクリル=60/40)(三菱レーヨン社製) 44部
・水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス社製)74部
・荷電制御剤(サリチル酸誘導体の金属錯体) 2部
をブスコニーダで混練、冷却後パルペライザーで粗粉砕しジェットミルで粉砕後分級し乾式トナーを得た。布を紙に張り付け、このトナーを用いリコー社製乾式プリンタ(Imagio)で捺染をおこなった。
【0081】
〔実施例3〕
・図1の染料E (純度80%) 51部
・エポキシ変性樹脂エピコート802(ジャパンエポキシレジン社製) 23部
・水溶性樹脂 ハリディブ(水溶性アルキド樹脂)(ハリマ化成社製) 72部
・ステアリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸(80/10/10)共重合体のアイソパーH20%溶液 98部
・アイソパーH 250部
・荷電制御剤(オクタン酸ジルコニウム) 5部
をボールミルに入れて24時間分散後、さらにアイソパーHを250部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図3の画像形成装置で電子写真捺染を行った。
【0082】
〔実施例4〕
実施例1の染料A(純度50%品)を純度95%に精製して用いた以外は、実施例1と同一にして濃縮トナーを作成した。この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図3の画像形成装置で電子写真捺染を行った。
【0083】
〔実施例5〕
実施例3の分散媒をアイソパーHからシリコーンオイル(KF−98(2cst))に変えた以外は全て実施例3と同様にして濃縮トナーを作成した。この濃縮トナー100gとシリコーンオイル(KF−96(2cst))を混合した現像剤により図3の画像形成装置で電子写真捺染を行った。
【0084】
〔実施例6〕
・図1の染料F (純度90%) 47部
・ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン社製) 5部
・水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス社製) 93部
・2エチルヘキシルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸(80/10/10)共重合体のアイソパーH20%溶液 120部
・アイソパーH 190部
・荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をバッチ式サンドミルに入れて12時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。この濃縮トナー100gとアイソパーMを混合した現像剤により図3の画像形成装置で電子写真捺染を行った。
【0085】
〔実施例7〕
・図1の染料G (純度85%) 51部
・ロジン変性フェノール樹脂(三井・デュポン社製) 94部
・水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス社製) 5部
・2エチルヘキシルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸(80/10/10)共重合体のアイソパーH20%溶液 120部
・アイソパーH 190部
・荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をバッチ式サンドミルに入れて12時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。この濃縮トナー100gとエクソールD30を混合した現像剤により図3の画像形成装置で電子写真捺染を行った。
【0086】
上記実施例1〜7においては、転写布Sは全て糸太さ40番手の200本ブロード綿布を用いた。また、80℃の温水100gに炭酸ナトリウム1g、硫酸ナトリウム1g、尿素3g、アルギン酸ナトリウム1gを溶解させたものを実施例1〜7の転写布に塗布し、105℃、0.1Mpa気圧の蒸気で20分処理後、水洗し、アニオン系界面活性剤2g/Lにより80℃で5分処理を行い捺染サンプルを作成した。その結果は図6の通りであった。
【0087】
〔実施例8〜10〕
また、実施例3のトナーを用いて、転写チャージャー5a(転写圧0.1kg/cm以下)を使用した図2に示す画像形成装置で捺染を行った場合(実施例8)、中間転写ローラ12を取り付けた図4の画像形成装置で捺染を行った場合(実施例9)、更に図4の画像形成装置を使用し、二次転写前にアイソパーHを0.3mg/cm以上吹きかけて捺染を行った場合(実施例10)について、実施例1〜7の場合と同様に評価した。
【0088】
さらに、比較のために、下記比較例1及び2について実施例と同様の後処理を行い評価した。
【0089】
〔比較例1〕
実施例1の染料に代えてリアクティブレッド4(純度50%)を使用した以外は実施例1と同様にして捺染を行った。
【0090】
〔比較例2〕
実施例3の染料に代えてリアクティブレッド46(純度50%)を使用した以外は実施例3と同様にして捺染を行った。
【0091】
図6で示す試験結果から明らかように、比較例1及び2で示す市販の染料を用いた現像剤では、画像濃度、地汚れ、解像性、転写率、帯電制御率、固着率が低い結果を示している。しかも、比較例の捺染トナーは、帯電制御性が悪くトナーとしての機能が出せなかった。これに対し、本発明による各実施例の現像剤を使用したものは、比較例1及び2のものに比べ、帯電制御率、転写率、布濃度が高く、高解像な捺染布が得られた。
【0092】
また、実施例4で示すものでは、実施例1で使用した染料の染料純度を上げているために更に画像濃度が高くなっている。また、実施例5のものでは、担体液としてシリコーンオイルを使用し、脂肪族炭化水素以外の担体液を使用しているため、実施例4に比べて分散性がやや悪い。さらに、実施例6のものでは、水溶性樹脂量が多いため画像濃度がやや低い。実施例7のものでは、水溶性樹脂量が少ないため風合がやや低くなっていることが明らかである。
【0093】
また、実施例10のものでは、二次転写前に中間転写ローラ12上のトナー像に担体液であるアイソパーHを吹きつけているため転写率が上がり画像濃度が向上した。
【0094】
なお、画像濃度、地汚れ、風合、平均粒径、ζ電位、解像性、転写率、帯電制御率、固着率は、次のようにして測定、評価した。
【0095】
(1)画像濃度はX−Riteにより測定した。
(2)地汚れは地汚れ段階見本布によって5段階評価し、5:最良、1:最悪として評価した。
(3)風合は風合段階見本布によって、5:布のみと同程度の柔らかさ、4:柔らかい、3:中程度、2:やや硬い、1:硬いとして5段階評価した。
(4)平均粒径は島津製作所製SA−CP3によって測定した。この場合、トナーを積分球式濁度計で透過率15%程度になるまでアイソパーで希釈し、SA−CP3用セルに充填し、測定条件はACCEL480、MODE:CENT、3〜16チャンネルで行った。
(5)ζ電位は大塚電子製ELS−8000によって測定した。この場合、セル:低誘電率セル、電界:500V/cm、6回測定平均モードで測定した。
(6)解像性は、段階見本によって5段階評価し、5:最良、1:最悪として評価した。
(7)転写率はテープ剥離法による濃度から下記式を用いて算出した。
転写率=(転写前感光体上濃度−転写後感光体残濃度)/(転写前感光体上濃度)×100%
(8)帯電制御率は下記条件の電着法により算出した。
電極間距離:1cm、電極面積:2cm×2cm、電着時間:100秒で測定した。
(9)固着率はX−Riteによりソーピング前後の濃度を測定して下記式から算出した。
固着率=(最終サンプル濃度/固着処理後水洗前濃度)×100%
【0096】
以上のように、本発明による電子写真捺染用現像剤においては、着色剤として前記一般式(1)で示す染料を含有させるため、オンデマンド性に優れ帯電特性が良好で布への固着性が高く、高画像濃度の捺染が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明による電子写真捺染用現像剤で使用される染料のR1及びR2の具体的基を示す表である。
【図2】本発明による一実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明による他の実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明による他の実施形態の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明による他の実施形態のタンデム型の画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】本発明による実施例及び比較例で得られた現像剤及び転写布の試験結果を示す表である。
【符号の説明】
【0098】
1、1R、1G、1BK、1C、1M、1Y 感光体
2 帯電電圧付与部材
3、3R、3G、3BK、3C、3M、3Y 現像ローラ
4 リバースローラ
5a 転写チャージャー
5b 転写ローラ
6 分離ローラ
7 クリーニングブレード
8 クリーニングローラ
10 担体液塗布、噴霧装置
11 除電手段
12 中間転写ローラ
13R、13G、13BK、13C、13M、13Y 画像形成ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体上の静電潜像をトナーにより現像してトナー像化し、当該感光体上のトナー像を転写布に転写し、当該転写布に転写されたトナー像を当該転写布に捺染する電子写真捺染方法に使用される前記トナーを含む電子写真捺染用現像剤であって、
前記トナーは着色剤と樹脂を含む粒状体であり、かつ前記着色剤が下記一般式(1)で表わされる染料を含有することを特徴とする電子写真捺染用現像剤。
【化1】


但し、上記一般式中のR1及びR2は、同一又は異なり、それぞれNH、NHCH、F、Cl、Br、NHCHOHから選ばれる基を示している。
【請求項2】
請求項1記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記染料は、染料純度が80%以上である染料であることを特徴とする電子写真捺染用現像剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記トナーの樹脂は、当該樹脂の少なくとも一部にアルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂を含有することを特徴とする電子写真捺染用現像剤。
【請求項4】
請求項3記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂は、2000mgKOH/g以下の酸価を有することを特徴とする電子写真捺染用現像剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記現像剤は、前記トナーを分散させる担体液を含有し、当該担体液が体積抵抗10Ω・cm以上の抵抗値を有する担体液であることを特徴とする電子写真捺染用現像剤。
【請求項6】
請求項5記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記担体液は、常圧で沸点100℃〜350℃の脂肪族飽和炭化水素であることを特徴とする電子写真捺染用現像剤。
【請求項7】
請求項5又は6記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記トナーは、絶対値が10mV〜200mVのζ電位を有することを特徴とする電子写真捺染用現像剤。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項記載の電子写真捺染用現像剤において、
前記トナーは、0.1μm〜5μmの平均粒径を有することを特徴とする電子写真捺染用現像剤。
【請求項9】
感光体上の静電潜像を現像手段によって供給される現像剤中のトナーにより現像してトナー像化し、当該感光体上のトナー像を転写布に転写し、当該転写布に転写されたトナー像を当該転写布に捺染する電子写真捺染方法において、
前記現像剤は、請求項5乃至8のいずれか1項記載の電子写真捺染用現像剤であることを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項10】
請求項9記載の電子写真捺染方法において、
前記感光体上のトナー像を転写布に転写する際に、当該トナー像を転写布に転写する転写ローラによって前記トナー像に圧力を印加しながら転写布にトナー像を転写することを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項11】
請求項9又は10記載の電子写真捺染方法において、
前記感光体上のトナー像を転写布に転写する工程は、前記感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写した後、当該中間転写体上に転写されたトナー像を転写布に二次転写する工程を含むことを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項12】
請求項11記載の電子写真捺染方法において、
前記二次転写前に前記中間転写体に前記トナーの分散媒を供給する工程を含むことを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1項記載の電子写真捺染方法において、
前記感光体上の静電潜像を現像手段によって供給される現像剤中のトナーにより現像してトナー像化する際に、前記現像手段によって感光体上に供給されて前記静電潜像をトナー像化した後に、過剰の現像剤をリバースローラによって除去することを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項14】
請求項13記載の電子写真捺染方法において、
前記現像手段として現像ローラを使用し、当該現像ローラの線速が前記感光体の線速に対して1.2倍〜6倍に設定され、前記リバースローラの線速が前記感光体の線速に対して1.2倍〜4倍に設定されることを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれか1項記載の電子写真捺染方法において、
前記感光体と現像手段は、複数対をタンデム型に配置し、当該各現像手段は、異色のトナーを含有する現像剤を感光体上の静電潜像に供給して異色のトナー像を形成することを特徴とする電子写真捺染方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−93052(P2009−93052A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265336(P2007−265336)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】