説明

電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法

【課題】導電性ゴム組成物を押出成形する際に生じる導電性ゴム組成物と押出機のダイスとの間の摩擦を低減して抵抗調整層の表面に斑状の微細な凹凸が生じるのを抑制するとともに、使用時において接触する像担持体の削れを防止することが可能な電子写真機器用帯電ロールを提供すること。
【解決手段】軸体12の外周に導電性弾性層14と抵抗調整層16とを有する帯電ロール10であり、抵抗調整層16が、平均粒径が2〜5μmの球状粒子を配合した導電性ゴム組成物を押出成形し、これを架橋してなるものであり、架橋後における抵抗調整層16の表面粗さ(Rz)を2〜5μmの範囲内とした帯電ロール10とする。この際、導電性ゴム組成物の粘度はMV50以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く用いられるようになってきている。電子写真機器においては、感光ドラムなどの像担持体表面に静電潜像を形成し、静電潜像にトナーを接触させてトナー像を形成した後、トナー像を転写紙などに転写することにより像が形成される。静電潜像を形成する際には、帯電ロールを用いて像担持体表面に帯電処理が行なわれる。
【0003】
帯電ロールとしては、例えば、芯金の外周に1層以上の導電性弾性層を有するものが知られている。導電性弾性層としては、ベース層や抵抗調整層などとして機能するものが知られている。また、ロール表面を保護するなどの目的により、必要に応じて、ロール最外層に表層が形成されることがある。
【0004】
例えば特許文献1には、導電性ロールに関するものであるが、芯金と表層との間に少なくとも1層以上の弾性層を有する導電性ロールが開示されている。そしてこの特許文献1には、弾性層を形成するゴム組成物のゴム練り時においてゴム組成物中に含有される充填材の分散性を向上させるために、平均粒径0.05〜0.5μmの無機球状粒子を弾性層中に添加する点が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−146903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、帯電ロールの抵抗調整層は、導電性ゴム組成物をチューブ状に押出成形することにより製造される場合がある。この場合、図2に示すように、導電性ゴム組成物2は押出機のダイス1内を通って押出される。この際、導電性ゴム組成物2と押出機のダイス1の内周面との間には摩擦(スティックスリップ)が生じる。この摩擦により、導電性ゴム組成物2はダイス1の内周面にひっかかりながら押出される。この影響により、押出時に微細な振動が生じ、導電性ゴム組成物2の押出成形体の表面に斑状の微細な凹凸が生じることがあった。そうなると、特に耐久時においてロール表面に汚れムラが発生し、画像が悪化する問題があった。
【0007】
そのため、本発明者らは、導電性ゴム組成物中に粒子を配合してゴム表面に粗さを付与することにより、押出時における滑り性を改善させることを試みた。ところが、配合する粒子の形状や大きさなどが押出時の摩擦に大きく影響することが判明した。例えば配合する粒子の大きさが比較的小さいときには、押出時の滑り性が改善されないことが判明した。また、配合する粒子の大きさが比較的大きいときには、ロール表面の凹凸が大きくなり、使用時において帯電ロールと接触する像担持体の削れが発生することが判明した。そのため、これらの問題を解決する帯電ロールが強く望まれる。
【0008】
なお、特許文献1には、導電性ゴム組成物のゴム練り時において充填材の分散性を向上させるためにナノオーダーの微粒子を含有させる点が記載されているのみであり、上記問題を解決するに足りる開示や示唆は全く記載されていない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、導電性ゴム組成物を押出成形する際に生じる導電性ゴム組成物と押出機のダイスとの間の摩擦を低減して抵抗調整層の表面に斑状の微細な凹凸が生じるのを抑制するとともに、使用時において接触する像担持体の削れを防止することが可能な電子写真機器用帯電ロールおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成された導電性弾性層と、前記導電性弾性層の外周に形成された抵抗調整層とを有し、前記抵抗調整層は、平均粒径が2〜5μmの球状粒子を含有する導電性ゴム組成物よりなる押出成形体の架橋体よりなり、架橋後における前記抵抗調整層の表面粗さ(Rz)が2〜5μmの範囲内にあることを要旨とするものである。
【0011】
この場合、前記導電性ゴム組成物中のゴムポリマーは、ニトリルゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、および、アクリルゴムから選択された1種または2種以上のゴムポリマーであることが望ましい。
【0012】
そして、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールの製造方法は、軸体と、導電性弾性層と、抵抗調整層とを有する電子写真機器用帯電ロールの製造方法であって、平均粒径が2〜5μmの球状粒子を含有する導電性ゴム組成物を押出成形して押出成形体を形成する工程と、前記押出成形体を架橋して表面粗さ(Rz)が2〜5μmの抵抗調整層を形成する工程とを有することを要旨とするものである。
【0013】
この場合、前記導電性ゴム組成物の粘度がMV50以下であると良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、抵抗調整層が特定粒径の球状粒子を含有する導電性ゴム組成物よりなる押出成形体の架橋体よりなり、架橋後における抵抗調整層の表面粗さ(Rz)が上記特定範囲内になるように構成されたものである。そのため、押出される導電性ゴム組成物の表面に滑り性が付与されて、押出成形する際に生じる導電性ゴム組成物と押出機のダイスとの間の摩擦が低減され、抵抗調整層の表面に斑状の微細な凹凸が生じるのが抑制される。これにより、画像の悪化が防止できる。また、配合する粒子の平均粒径が上記範囲内に小さく抑えられているため、ロール表面の凹凸に起因する像担持体の削れが防止できる。
【0015】
そして、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールの製造方法では、特定粒径の球状粒子を含有する導電性ゴム組成物を押出し、これを架橋して、表面粗さが上記特定範囲内にある抵抗調整層を形成する。そのため、押出される導電性ゴム組成物の表面に滑り性が付与され、押出成形する際には導電性ゴム組成物と押出機のダイスとの間の摩擦が低減される。これにより、抵抗調整層の表面に斑状の微細な凹凸が生じるのが抑制された帯電ロールが製造できる。また、配合する粒子の平均粒径が上記範囲内に小さく抑えられているため、ロールの表面凹凸に起因した像担持体の削れが防止可能な帯電ロールが製造できる。
【0016】
この際、導電性ゴム組成物の粘度がMV50以下であると、より一層、押出時における導電性ゴム組成物と押出機のダイスとの間の摩擦が低減される。また、押出時における導電性ゴム組成物の供給圧力が低く抑えられるため、球状粒子の配合による導電性ゴム組成物の滑り性向上効果が確実に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、帯電ロールということがある。)について、図を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、一実施形態に係る帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成されたベース層14と、ベース層14の外周に形成された抵抗調整層16と、抵抗調整層16の外周に形成された表層18とを備えている。帯電ロール10は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器に組み込まれるものである。
【0019】
軸体12としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、またはこれらの合金等の金属製の中実体よりなる芯金、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体、またはこれらにめっきが施されたものなどが挙げられる。また、導電性樹脂よりなる中実体や円筒体を用いることもできる。さらに、基材には導電性または非導電性の樹脂等よりなる中実体や円筒体を用い、これに金属めっきしたものを用いることもできる。より好ましくは、ステンレス、アルミニウム等の金属製の中実体、円筒体である。軸体12の外周面には、ベース層14との接着性を確保するための接着剤が塗布されていても良い。このとき、その接着剤は導電性を有するものであることが好ましい。
【0020】
ベース層14は、導電性を有する弾性体よりなるものである。ベース層14を形成する材料は、ベース層14に要求される機能などを考慮して適宜選択することができる。ベース層14を形成する主材料としては、具体的には、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)、ヒドリンゴム(CO、ECO等)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等を例示することができる。より好ましくは、EPDM、NBR、ヒドリンゴムである。これらは1種または2種以上併用することができる。ベース層14は、発泡体であっても良いし、中実体であっても良い。
【0021】
ベース層14中には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO、c−ZnO、c−SnO等(「c−」は、導電性を意味する。)の電子導電剤や、四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等のイオン導電剤等の従来公知の導電剤が適宜添加される。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等の、帯電ロールのベース層に添加されうる一般的な添加剤を適宜添加されていても良い。
【0022】
ベース層14の厚みは、特に限定されるものではない。帯電ロール10に要求される諸性能、例えば、導電性、寸法、表面硬度などを考慮して適宜調節することができる。
【0023】
抵抗調整層16は、導電性ゴム組成物よりなる押出成形体の架橋体よりなるものである。すなわち、抵抗調整層16は、導電性ゴム組成物を押出成形して押出成形体を形成した後、押出成形体を架橋したものよりなる。
【0024】
導電性ゴム組成物は、少なくともゴムポリマーと導電剤と球状粒子とを含有する。ゴムポリマーとしては、NBR、H−NBR、EPDM、SBR、ヒドリンゴム、BR、IR、シリコーンゴム等を例示することができる。より好ましくは、NBR、ヒドリンゴムである。これらは1種または2種以上併用することができる。導電剤としては、カーボンブラック等の電子導電剤や四級アンモニウム塩等のイオン導電剤などが挙げられる。
【0025】
球状粒子は、押出される導電性ゴム組成物の表面に粗さを付与する目的で配合される。すなわち、抵抗調整層16を形成するためには、導電性ゴム組成物を押出成形するが、この際、図2に示すように、導電性ゴム組成物2は押出機のダイス1内を通って押出されるため、導電性ゴム組成物2の表面と押出機のダイス1の内周面との間には摩擦(スティックスリップ)が生じる。この摩擦が大きいと、導電性ゴム組成物2はダイス1の内周面にひっかかりながら押出される。この影響により、押出時に微細な振動が生じ、導電性ゴム組成物2の押出成形体の表面に斑状の微細な凹凸が生じるおそれがある。球状粒子は、導電性ゴム組成物2の表面に粗さを付与して、導電性ゴム組成物2の表面と押出機のダイス1の内周面とを点接触させるようにし、タック性を低減させて、押出の際の摩擦を低減させる。
【0026】
このとき、粒子が球状でなく、例えば鱗片状のものや針状のもの、または粉砕物などに見られるように不定形の非球状であると凝集しやすくなり、抵抗調整層16の表面状態が悪化する。そのため、粒子は球状である。
【0027】
球状粒子の平均粒径は2〜5μmの範囲内にある。平均粒径とは、ふるい上分布曲線の50%に対応する粒径をいう。平均粒径は、例えば上市されているシスメックス社製の「マスターサイザー2000」などの粒径分布測定装置により測定することができる。球状粒子の平均粒径が2μm未満では、押出される導電性ゴム組成物の表面に、押出の際の摩擦を低減するのに十分な粗さを付与することができない。また、押出される導電性ゴム組成物の表面粗さを大きくするために配合量を多くすれば、導電性ゴム組成物の粘度が上昇し、これにより押出の際の摩擦が上昇する。一方、球状粒子の平均粒径が5μmを超えると、抵抗調整層16の表面凹凸が大きくなりすぎるため、感光ドラムなどの像担持体表面の削れが発生する。球状粒子の平均粒径としては、より好ましくは、2〜4.5μmの範囲内である。
【0028】
球状粒子の配合量は、その平均粒径を考慮し、摩擦を低減するのに十分な粗さを付与できる範囲に適宜調節すれば良い。例えば平均粒径が5μmである場合には、本発明の特定範囲内において平均粒径は比較的大きいため、球状粒子の配合量はゴムポリマー100質量部に対して80質量部以下であることが好ましい。この範囲内であれば、架橋後における抵抗調整層16の表面粗さを5μm以下にすることができる。これにより、像担持体表面の削れを抑えることができる。より好ましくはゴムポリマー100質量部に対して60質量部以下である。一方、抵抗調整層16の表面粗さを確保するなどの観点から、球状粒子の配合量はゴムポリマー100質量部に対して10質量部以上であることが好ましい。より好ましくは、ゴムポリマー100質量部に対して30質量部以上である
【0029】
また、例えば平均粒径が2μmである場合には、本発明の特定範囲内において平均粒径は比較的小さいため、球状粒子の配合量はゴムポリマー100質量部に対して70質量部以上であることが好ましい。この範囲内であれば、押出の際の摩擦を低減するのに十分な粗さを導電性ゴム組成物の表面に付与することができる。より好ましくは、ゴムポリマー100質量部に対して80質量部以上である。一方、押出される導電性ゴム組成物の粘度が上昇しすぎるなどの観点から、球状粒子の配合量はゴムポリマー100質量部に対して90質量部以下であることが好ましい。
【0030】
球状粒子の材質は、特に限定されるものではない。球状粒子としては、例えば、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、尿素樹脂粒子などの樹脂粒子や、シリカ粒子、カーボン粒子などの無機粒子などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されて配合されていても良い。
【0031】
帯電ロール10において、架橋後における抵抗調整層16の表面粗さは2〜5μmの範囲内にある。表面粗さは、JIS B0601(1994)に準拠して測定した十点平均粗さ(Rz)である。抵抗調整層16の表面粗さを上記特定範囲内にするためには、例えば、配合する球状粒子の平均粒径の大きさや球状粒子の配合量を調節するなどすれば良い。
【0032】
抵抗調整層16には、ベース層14と同様に、さらに、架橋剤、架橋促進剤等の、帯電ロールの抵抗調整層に添加されうる一般的な添加剤が適宜添加されても良い。抵抗調整層16の厚みは、特に限定されるものではない。帯電ロール10に要求される諸性能等、例えば、体積抵抗、寸法、表面硬度などを考慮して適宜調節することができる。
【0033】
表層18は、帯電ロール10の表面保護などの機能を有するものである。表層材料としては、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、これらを変性した樹脂などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
【0034】
表層18は、必要に応じて、導電剤(電子導電剤やイオン導電剤)、可塑剤、レベリング剤等の各種添加剤を含有していても良い。また、表層18の厚さは特に限定されず、帯電ロール10に要求される諸性能に応じて適宜調節すれば良い。
【0035】
本発明に係る帯電ロールとしては、図1に示す層構成の帯電ロール10に限定されるものではない。例えば、帯電ロール10において表層18を有しない構成の帯電ロールであっても良い。また、帯電ロール10においてベース層14と表層18との間に、さらに1層以上の中間層が介在されていても良い。中間層としては、例えば、軟化剤移行防止層や抵抗調整層などが挙げられる。
【0036】
次に、本発明に係る帯電ロールの製造方法(以下、本製造方法ということがある。)について説明する。本製造方法は、軸体と、導電性弾性層と、抵抗調整層とを有する電子写真機器用帯電ロールを製造する製造方法であり、抵抗調整層を形成する工程に特徴を有する。
【0037】
本製造方法においては、予め所定の配合割合に調製した導電性弾性層用の導電性ゴム組成物を用い、押出成形、金型成形等の公知の成形手法によって導電性弾性層を形成する。また、予め所定の配合割合に調製した抵抗調整層用の導電性ゴム組成物を用い、押出成形の手法によって抵抗調整層を形成する。この際、導電性弾性層用の導電性ゴム組成物と抵抗調整層用の導電性ゴム組成物とを用いて、導電性弾性層が内側に、抵抗調整層が外側になるように、二層押出装置により押出成形を行なって、積層チューブ体を形成しても良い。
【0038】
抵抗調整層用の導電性ゴム組成物中には、上述するように、平均粒径が2〜5μmの球状粒子を配合する。これにより、押出時における導電性ゴム組成物と押出機のダイスとの間の摩擦が低減される。この際、この導電性ゴム組成物の粘度はMV50以下であることが好ましい。粘度は、架橋前における導電性ゴム組成物の粘度であり、JIS K6300に準拠して測定することができる。導電性ゴム組成物の粘度は、例えば、東洋精機社製「ムーニーRLM−1」により測定することができる。
【0039】
架橋前における導電性ゴム組成物の粘度を上記特定範囲内にすることにより、より一層、押出時における導電性ゴム組成物と押出機のダイスとの間の摩擦が低減される。また、押出時における導電性ゴム組成物の供給圧力が低く抑えられるため、球状粒子の配合による導電性ゴム組成物の滑り性向上効果が確実に得られる。
【0040】
導電性ゴム組成物の粘度は、配合するゴムポリマーの粘度はもとより、配合する球状粒子の平均粒径の大きさや配合量などによって上記範囲内に調整可能である。また、配合する球状粒子の平均粒径の大きさを適宜選択し、球状粒子の配合量を調節するなどにより、架橋後における抵抗調整層の表面粗さ(Rz)を調節できる。
【0041】
次いで、上記積層チューブ体の内孔内に軸体を挿入する。この状態で、軸体と積層チューブ体とを円筒状金型内にセットし、加熱して、導電性弾性層および抵抗調整層を架橋させる。架橋後における抵抗調整層の表面粗さ(Rz)は、2〜5μmの範囲内になるようにする。この際、必要に応じて、導電性弾性層の発泡処理を行なう。軸体の外周面上には、導電性弾性層との接着性を確保するための導電性接着剤を予め塗布することもできる。
【0042】
二層押出ではなく、導電性弾性層を単独で形成する場合には、押出成形による場合、チューブ状の成形体を形成した後、この成形体の内孔内に軸体を挿入する方法であっても良いし、軸体の外周に直接導電性弾性層を押出成形する方法であっても良い。また、金型成形による場合、円筒状金型内に軸体をセットした後、金型内に導電性ゴム組成物を注入する方法により軸体の外周に導電性弾性層を形成することができる。
【0043】
また、抵抗調整層を単独で形成する場合には、押出成形によりチューブ状の成形体を形成し、この成形体の内孔内に、導電性弾性層と軸体との一体化物を挿入する方法であっても良いし、軸体の外周に形成された導電性弾性層の外周に直接抵抗調整層を押出成形する方法であっても良い。
【0044】
次いで、必要に応じて、予め所定の配合割合で、溶媒を用いて塗工液として調製された表層形成用組成物を抵抗調整層の外周面に塗工した後、乾燥、加熱架橋処理すれば、表層を形成することができる。コーティング方法は、特に制限されるものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法などの一般的な方法を適用することができる。
【0045】
溶媒としては、例えば、メタノール、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらは1種または2種以上併用することができる。特に、材料各成分の溶解性などの観点で、メタノール、MEKが好ましい。上記溶媒は、水と混合するものであれば、適宜調整された割合で水を含んでいても良い。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0047】
<導電性弾性層用組成物の調製>
エチレンプロピレンゴム(EPDM)(三井化学社製、EPT4045)100質量部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)25質量部と、酸化亜鉛25質量部と、ステアリン酸1質量部と、プロセスオイル(出光石油化学社製、ダイアナプロセスPW380)30質量部と、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(発泡剤)15質量部と、硫黄1質量部と、ジベンゾチアゾールジスルフィド(架橋促進剤)2質量部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(架橋促進剤)1質量部とを配合し、ロールを用いて混練することにより、導電性弾性層用組成物を調製した。
【0048】
<抵抗調整層用組成物の調製>
NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN3335)100質量部と、FEFカーボンブラック(電子導電剤)(東海カーボン社製、シーストSO)40質量部と、シリカ(日本シリカ社製、ニプシールER)5質量部と、酸化亜鉛5質量部と、ステアリン酸1質量部と、ジベンゾチアゾールジスルフィド(架橋促進剤)1質量部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(架橋促進剤)1質量部と、硫黄1質量部と、下記と表1および表2に記載の形状、平均粒径、配合量の各種粒子とを配合し、ロールを用いて混練することにより、抵抗調整層用組成物を調製した。なお、比較例1では、抵抗調整層用組成物中に粒子を配合しなかった。
【0049】
・粒子<1>(綜研化学社製、「MX150」、アクリル樹脂粒子、球状、平均粒径1.5μm)
・粒子<2>(日硝産業社製、「トスパール120」、シリコーン樹脂粒子、球状、平均粒径2.0μm)
・粒子<3>(日硝産業社製、「トスパール130」、シリコーン樹脂粒子、球状、平均粒径3.0μm)
・粒子<4>(日硝産業社製、「トスパール145」、シリコーン樹脂粒子、球状、平均粒径4.5μm)
・粒子<5>(日硝産業社製、「トスパール240」、シリコーン樹脂粒子、非球状、平均粒径4.0μm)
・粒子<6>(日本カーボン社製、「ICB0520」、カーボン粒子、球状、平均粒径5.0μm)
【0050】
<表層形成用組成物の調製>
フッ素変性アクリレート樹脂(大日本インキ化学工業社製、ディフェンサTR230K)50質量部と、フッ素化オレフィン系樹脂(アトフィナジャパン社製、カイナーSL)50質量部と、導電性酸化チタン(石原テクノ社製、タイペークET−300W)100質量部とをMEK200質量部に溶解または懸濁させ、これらをサンドミルを用いて分散させることにより、表層形成用組成物を調製した。
【0051】
<帯電ロールの作製>
導電性弾性層用組成物と各種抵抗調整層用組成物とを用いて二層押出装置により押出成形を行ない、内側層が導電性弾性層用組成物よりなり、外側層が各種抵抗調整層用組成物よりなる積層チューブを作製した。次いで、積層チューブの内孔内に、導電性接着剤により表面に接着処理された芯金(ニッケルメッキされた鉄製芯金、外径6mm)を装入し、この状態で積層チューブと芯金とを円筒状金型内にセットした。次いで、170℃×30分の加熱を行ない、架橋操作および発泡操作を施して、脱型することにより、芯金の外周面上に、導電性ゴム発泡体にて構成された厚さ3mmの導電性弾性層と、非発泡性の半導電性ゴムにて構成された厚さ500μmの抵抗調整層とが一体的に積層形成されてなるゴムロールを作製した。次いで、表層形成用組成物を用いてディッピング法によりコーティング操作を行なうことにより、ゴムロールの外周面上に厚さ5μmの表層を一体的に積層形成した。以上により、各帯電ロールを作製した。
【0052】
<ムーニー粘度>
架橋する前の抵抗調整層用組成物について、JIS K6300に準拠してムーニー粘度を測定した。この際、測定時の温度は121℃とした。測定に際しては、東洋精機社製の「ムーニーRLM−1」を用いた。
【0053】
<表面粗さ>
架橋後のゴムロールにおける抵抗調整層の表面について、JIS B0601(1994)に準拠して十点平均粗さ(Rz)を測定した。測定に際しては、東京精密社製の「SURFCOM1400D」を用いた。
【0054】
<表面性評価>
架橋後のゴムロールにおける抵抗調整層の表面において、粒子の凝集の有無を目視にて確認した。粒子の凝集が認められない場合を「○」とし、粒子の凝集が認められる場合を「×」とした。
【0055】
<斑の有無の評価>
各帯電ロールを市販のカラーレーザープリンター(ヒューレット・パッカード社製、LASER JET 4000)のカートリッジに組み込んだ状態で、気温15℃、湿度10%の環境下で10000枚まで連続印刷を行なった。耐久印刷後、灰色25%で画像出しを行なった。耐久後の画像上に、汚れムラによる斑状の画像黒ポチが発生していない場合を「○」とし、斑状の画像黒ポチが発生している場合を「×」とした。斑状の画像黒ポチの有無は、目視にて確認した。
【0056】
<ドラムの削れ評価>
各帯電ロールを市販のカラーレーザープリンター(ヒューレット・パッカード社製、LASER JET 4000)のカートリッジに組み込んだ状態で、気温15℃、湿度10%の環境下で10000枚まで連続印刷を行なった。耐久印刷後、灰色25%で画像出しを行なった。耐久後の画像上に、削れによるスジが発生していない場合を「○」とし、スジが発生している場合を「×」とした。スジの有無は、目視にて確認した。
【0057】
配合組成および評価結果を表1および表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表2において、比較例1では、抵抗調整層用組成物中に粗さを形成するための粒子が配合されていない。そのため、抵抗調整層用組成物を押出する際の摩擦により、抵抗調整層の表面には、図4に示すような斑状の凹凸が発生した。その結果、耐久時において画像不具合が発生した。また、比較例2〜4では、配合した粒子の平均粒径が小さすぎるため、押出時における抵抗調整層用組成物の表面凹凸が小さく、押出時における摩擦の低減効果が小さい。そして、配合量を多くすると、抵抗調整層用組成物の粘度が上がりすぎて、押出時における摩擦の低減効果が小さくなっている。そのため、抵抗調整層の表面に斑状の凹凸が発生し、耐久時において画像不具合が発生した。
【0061】
比較例5〜6では、架橋後における抵抗調整層の表面粗さが小さいため、押出時における摩擦が十分に低減できていないものと考えられる。そのため、抵抗調整層の表面に斑状の凹凸が発生し、耐久時において画像不具合が発生した。これは、配合した粒子の平均粒径が比較的小さい場合において配合量が少ないためと推察される。比較例7〜9では、非球状の粒子を抵抗調整層用組成物中に配合している。その結果、粒子が凝集し、抵抗調整層の表面性が悪化している。これにより、画像不具合が生じている。比較例10〜11では、架橋後における抵抗調整層の表面粗さが大きいため、帯電ロールの使用時に感光ドラムの削れが発生し、耐久時において画像不具合が生じた。これは、配合した粒子の平均粒径が比較的大きい場合において配合量が多いためと推察される。
【0062】
これに対し、本発明に従う実施例では、図3に示すように、抵抗調整層の表面には斑状の凹凸は確認されず、耐久時において画像不具合は確認されなかった。これは、抵抗調整層用組成物を押出する際の摩擦が低減されたためと推察される。また、帯電ロールの使用時においても感光ドラムの削れは確認されず、耐久時において画像不具合は確認されなかった。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールを表す模式図である。
【図2】押出成形時における導電性ゴム組成物と押出機のダイス内周面との摩擦が生じる過程を表わす模式図である。
【図3】実施例に係る帯電ロールの抵抗調整層表面を写した写真である。
【図4】比較例に係る帯電ロールの抵抗調整層表面を写した写真である。
【符号の説明】
【0065】
10 電子写真機器用帯電ロール
12 軸体
14 導電性弾性層
16 抵抗調整層
18 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に形成された導電性弾性層と、前記導電性弾性層の外周に形成された抵抗調整層とを有し、
前記抵抗調整層は、平均粒径が2〜5μmの球状粒子を含有する導電性ゴム組成物よりなる押出成形体の架橋体よりなり、
架橋後における前記抵抗調整層の表面粗さ(Rz)が2〜5μmの範囲内にあることを特徴とする電子写真機器用帯電ロール。
【請求項2】
前記導電性ゴム組成物中のゴムポリマーは、ニトリルゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、および、アクリルゴムから選択された1種または2種以上のゴムポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
軸体と、導電性弾性層と、抵抗調整層とを有する電子写真機器用帯電ロールの製造方法であって、
平均粒径が2〜5μmの球状粒子を含有する導電性ゴム組成物を押出成形して押出成形体を形成する工程と、
前記押出成形体を架橋して表面粗さ(Rz)が2〜5μmの抵抗調整層を形成する工程とを有することを特徴とする電子写真機器用帯電ロールの製造方法。
【請求項4】
前記導電性ゴム組成物の粘度がMV50以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真機器用帯電ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−72450(P2010−72450A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241150(P2008−241150)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】