説明

電子写真用トナーの製造方法および電子写真用トナー

【課題】 粉砕によって粒子化されたトナー粒子を加熱処理して、充分な流動性を有する電子写真用トナーを製造することのできる電子写真用トナーの製造方法を提供する。
【解決手段】 粉砕によって粒子化されるトナー粒子100重量部に対して比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子を2重量部以上5重量部以下の重量比で含む原料混合物を、熱風処理装置1を用いて、熱風噴射ノズル12から熱風処理槽11内に供給される熱風の温度Ta[℃]および風量La[lt/min、0℃、1気圧]、原料噴射ノズル13から熱風処理槽11内に供給される原料混合物の供給速度Wf[g/min]、ならびにトナー粒子の2分の1(1/2)降下温度Tm[℃]が、下記式(1)および(2)を満足する条件下で加熱処理する。
Tm<Ta×La/(La+Wf×1.4[lt/g])<Tm×2 …(1)
0.08[g/lt]×La<Wf<0.5[g/lt]×La …(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法によって画像を形成する画像形成装置たとえば複写機またはプリンタに用いられる電子写真用トナーの製造方法、およびその製造方法によって製造される電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、OA(Office Automation)機器などの性能向上に伴い、情報の出力機器として、高解像度の文字画像および図形画像などの画像を出力できる各種プリンタ、複写機が市販されている。これらの機器における画像形成方法としては、像担持体に静電荷像を形成し、電子写真用トナー(以下、単に「トナー」ということがある)を用いて静電荷像を現像してトナー像とし、このトナー像を記録媒体に転写して定着させる、いわゆる電子写真法が広く使用されている。
【0003】
電子写真用トナーは、結着剤、着色剤、離型剤および帯電制御剤などを含有する、微細な粒子状のものである。
【0004】
電子写真用トナーの製造方法の一種として、粉砕法が知られている。粉砕法は、まず結着剤、離型剤、着色剤および荷電制御剤などのトナー原料を混合して溶融混練し、得られた溶融混練物を冷却した後、粉砕して分級することによってトナー粒子を得る方法であり、比較的簡易な設備で、効率良く電子写真用トナーを製造できるという特長を有する。粉砕法では、より詳細には分級の後にさらにトナー粒子に流動化剤および抵抗制御剤などの外添剤を外添し、混合機で混合してトナー粒子表面に外添剤を付着させて電子写真用トナーを得る。
【0005】
このように溶融混練物を粉砕することによってトナー粒子を生成して製造される電子写真用トナーは、粒子の形状が不定形となり、流動性が充分でないという問題を有している。このようなトナーを用いると、たとえば非磁性1成分現像法では、現像スリーブへのトナーの搬送性が充分でなくなり、追従不良やジッタが発生しやすくなる。「追従不良」とは、現像スリーブの回転にトナー補給(供給)が追従できず、画像濃度が低下する現象のことである。「ジッタ」とは、機械的負荷により現像スリーブやトナーの搬送速度が乱れ、画像に縞状の濃淡が発生する現象のことである。
【0006】
電子写真用トナーの流動性を向上させるための技術として、粉砕して得たトナー粒子に流動化剤を添加した後、加熱処理してトナー粒子を球形化させて電子写真用トナーを得る方法がある(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平5−281783号公報(第5頁)
【特許文献2】特開2002−311647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の技術によれば、電子写真用トナーの流動性を向上させることは可能であるが、生産性が著しく悪い。たとえば特許文献1の実施例では、原料トナーの供給量を1.5kg/時間、すなわち25g/minとして加熱処理されており、製造方法としては非現実的である。
【0009】
また、特許文献2に開示の技術では、トナー粒子の飛散や転写効率を改良しているが、生産方法の改良がなされていない現実にある。
このような状況の中、電子写真用トナーの製造方法の改善が望まれている。
【0010】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、粉砕によって粒子化されたトナー粒子を加熱処理する条件によって、充分な流動性を有する電子写真用トナーを高生産性で製造することのできる電子写真用トナーの製造方法、およびその製造方法によって製造される電子写真用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、粉砕によって粒子化されたトナー粒子と比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子とを特定の比率で含む原料混合物を、特定の熱風処理装置を用いて特定条件下で加熱処理することによって、トナー粒子同士の融着およびトナー粒子表面へのシリカ微粒子の固着を抑えるとともに、トナー粒子を流動しやすい形状に成形することができ、充分な流動性を有する電子写真用トナーが得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
すなわち本発明は、粉砕によって粒子化され結着剤および着色剤を含有するトナー粒子と、比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子とを含み、シリカ微粒子の重量比がトナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下である原料混合物を加熱処理する加熱処理工程を含み、
加熱処理工程では、
上部に冷却用エアを取入れるためのエア取入口が形成され、上部から内部空間に原料混合物および熱風が供給される熱風処理槽と、
熱風処理槽の上部から内部空間に向けて熱風を噴射する熱風噴射ノズルと、
熱風噴射ノズルから噴射される熱風に向けて原料混合物を噴射する原料噴射ノズルであって、原料混合物が噴射される原料出口が形成される下端開口部が、熱風噴射ノズルの熱風が噴射される熱風出口が形成される下端開口部の内方側に、熱風噴射ノズルの下端開口部よりも上方に位置するように設けられる原料噴射ノズルと、
原料噴射ノズルから離隔して原料噴射ノズルを囲繞するように設けられ、内部に冷媒が流下する流路が形成される冷却ジャケットを含み、原料噴射ノズルと熱風噴射ノズルとを断熱する断熱機構と、
原料噴射ノズルの下端開口部の下方に原料噴射ノズルから離隔して設けられる衝突部材と、
原料噴射ノズルの外表面部と断熱機構の冷却ジャケットの内表面部とによって形成されるエア噴射流路の下端の開口から、衝突部材の原料噴射ノズルの下端開口部を臨む表面部に向けて分散用エアを噴射するエア噴射手段とを備える熱風処理装置を用いて、
熱風噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される熱風の温度Ta[℃]および風量La[lt/min、0℃、1気圧]、原料噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される原料混合物の供給速度Wf[g/min]、ならびにトナー粒子の2分の1(1/2)降下温度Tm[℃]が、下記式(1)および(2)を満足する条件下で、原料混合物を加熱処理することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法である。
Tm<Ta×La/(La+Wf×1.4[lt/g])<Tm×2 …(1)
0.08[g/lt]×La<Wf<0.5[g/lt]×La …(2)
【0013】
また本発明は、加熱処理工程では、
熱風噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される熱風の風量La[lt/min、0℃、1気圧]が1462.5[lt/min、0℃、1気圧]以下である(La≦1462.5)とき、原料噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される原料混合物の供給速度Wf[g/min]が下記式(2a)を満足する条件下で原料混合物を加熱処理し、
熱風噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される熱風の風量La[lt/min、0℃、1気圧]が1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超える(La>1462.5)とき、原料噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される原料混合物の供給速度Wf[g/min]が下記式(2b)を満足する条件下で原料混合物を加熱処理することを特徴とする。
117[g/min]<Wf<0.5[g/lt]×La …(2a)
0.08[g/lt]×La<Wf<0.5[g/lt]×La …(2b)
【0014】
また本発明は、シリカ微粒子の比表面積が200m/g以上であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記電子写真用トナーの製造方法によって製造されることを特徴とする電子写真用トナーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粉砕によって粒子化されたトナー粒子と、比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子とを含み、シリカ微粒子の重量比がトナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下である原料混合物が加熱処理される加熱処理工程を経て、電子写真用トナー(以下、単に「トナー」ということがある)が製造される。加熱処理工程では、熱風処理装置を用いて加熱処理が行なわれる。この熱風処理装置による加熱処理によって、トナー粒子を流動しやすい形状に成形するとともに、トナー粒子同士間にシリカ微粒子を介在させることができるので、電子写真用トナーとして必要な流動性を充分に有する電子写真用トナーを得ることができる。
【0017】
シリカ微粒子の比表面積が80m/g未満であると、シリカ微粒子の粒径が大きくなり過ぎ、シリカ微粒子による流動性の向上効果が充分に発揮されず、電子写真用トナーとして必要な流動性が得られなくなる。シリカ微粒子の比表面積を80m/g以上にすることによって、電子写真用トナーとして必要な流動性をより確実に付与することができる。
【0018】
トナー粒子100重量部に対するシリカ微粒子の重量比が2重部未満であると、トナー粒子同士の融着が発生しやすく、またトナー粒子同士が融着せずにトナー粒子が個々に存在していても流動性が低いという問題がある。またトナー粒子100重量部に対するシリカ微粒子の重量比が5重量部を超えると、感光体へのダメージおよびトナーフィルミング、ならびにコールドオフセットが生じやすくなる。シリカ微粒子の重量比をトナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下にすることによって、トナー粒子同士の融着を抑え、流動性をより確実に向上させることができ、また感光体へのダメージおよびトナーフィルミング、ならびにコールドオフセットの発生を防ぐことができる。「トナーフィルミング」とは、感光体にトナーが皮膜状に融着する現象のことである。「コールドオフセット」とは、定着部材を用いてトナーを加熱および加圧して記録媒体に定着させるときに、トナーの溶融不足が原因で、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象と記録媒体に定着したトナーがはがれやすくなる現象のことである。
【0019】
熱風処理装置では、熱風処理槽の上部から内部空間に向けて熱風噴射ノズルの熱風出口から熱風が噴射され、この熱風に向けて原料噴射ノズルの原料出口から原料混合物が噴射される。原料噴射ノズルから噴射された原料混合物は、衝突部材に衝突して熱風中に分散されるとともに、エア噴射手段によってエア噴射流路から噴射される分散用エアによって熱風中に分散され、熱風によって加熱処理される。原料噴射ノズルの原料出口が形成される下端開口部は、熱風噴射ノズルの熱風出口が形成される下端開口部の内方側に、熱風噴射ノズルの下端開口部よりも上方に位置するように設けられているので、原料噴射ノズルから噴射された原料混合物は、熱風噴射ノズルから噴射される熱風と直ちに接触し、加熱処理される。原料噴射ノズルと熱風噴射ノズルとは、内部の流路に冷媒が流下する冷却ジャケットを含む断熱機構によって断熱されているので、原料噴射ノズル内を流動する原料混合物が、熱風噴射ノズル内を流動する熱風との熱交換によって昇温することが防止される。加熱処理された原料混合物は、熱風処理槽の上部に形成されたエア取入口を通して熱風処理槽内に流入する冷却用エアによって冷却される。
【0020】
この熱風処理装置における加熱処理は、熱風噴射ノズルから噴射される熱風の温度(以下「熱風温度」ということがある)Ta[℃]および風量(以下「熱風風量」ということがある)La[lt/min、0℃、1気圧]、原料噴射ノズルから噴射される原料混合物の供給速度(以下「原料供給速度」ということがある)Wf[g/min]、ならびにトナー粒子の1/2降下温度Tm[℃]が、前述の式(1)および(2)を満足する条件下で行なわれる。
【0021】
熱風中におけるトナー粒子の表面温度Tt[℃]は、熱風温度Ta、熱風風量Laおよび原料供給速度Wfと相関しており、式(1)の中辺「Ta×La/(La+Wf×1.4[lt/g])」で表すことができる。式(1)の中辺の値がトナー粒子の1/2降下温度Tm以下であると、トナー粒子の表面温度Ttが低過ぎてトナー粒子の表面が充分に溶融されず、成形されにくいので、加熱処理によるトナーの流動性の向上効果が得られないか、または効果が得られても小さいものとなる。式(1)の中辺の値がトナー粒子の1/2降下温度Tmの2倍以上であると、トナー粒子の表面温度Ttが高過ぎてトナー粒子の表面が過度に溶融し、トナー粒子同士が融着しやすくなり、またシリカ微粒子がトナー粒子表面に固着して流動性が低下する。式(1)を満足する条件下で加熱処理を行なうことによって、トナー粒子の表面温度Ttを好適な範囲にすることができるので、トナー粒子同士の融着およびシリカ微粒子のトナー粒子表面への固着を抑え、流動性をより確実に向上させることができる。
【0022】
また熱風中における原料混合物の濃度は、式(2)の中辺である原料供給速度Wfおよび熱風風量Laと相関している。原料供給速度Wfが0.08La以下であると、熱風中における原料混合物の濃度が低くなり過ぎ、単位時間あたりに加熱処理することのできる原料混合物の量が過度に少なくなるので、生産性が低くなる。原料供給速度Wfが0.5La以上であると、熱風中における原料混合物の濃度が高くなり過ぎ、原料混合物を均一に加熱処理することが困難になり、またトナー粒子同士の融着が発生する。式(2)を満足する条件下で加熱処理を行なうことによって、熱風中における原料混合物の濃度を好適な範囲にすることができるので、原料混合物をより均一に加熱処理し、均質なトナーを得ることができ、またトナー粒子同士の融着を抑え、流動性をより確実に向上させることができる。また生産性が過度に低くなることを防ぐことができる。
【0023】
このように比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子をトナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下の重量比で混合して原料混合物とし、この原料混合物に対して、式(1)および(2)を満足する条件下で加熱処理を行なうことによって、トナー粒子同士の融着およびトナー粒子表面へのシリカ粒子の固着を抑え、流動しやすい形状に成形することができるので、電子写真用トナーとして充分な流動性を有する電子写真用トナーを製造することができる。このような電子写真用トナーは搬送性に優れるので、このような電子写真用トナーを用いることによって、追従不良およびジッタの発生を抑えることができる。
【0024】
また本発明によれば、加熱処理工程における原料供給速度Wfは、熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]以下であるとき、前述の式(2a)を満足し、熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超えるとき、前述の式(2b)を満足する。熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超えるとき、式(2b)の左辺の値は117[g/min]を超えるので、熱風風量Laの値によらず、原料供給速度Wfは117[g/min]を超える値になる。原料供給速度Wfが117[g/min]以下であると、単位時間あたりに加熱処理することのできる原料混合物の量が過度に少なくなるので、生産性が低くなる。前述のように熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]以下であるときに式(2a)を満足する条件下で原料混合物を加熱処理し、熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超えるときに式(2b)を満足する条件下で原料混合物を加熱処理することによって、原料供給速度Wfを117[g/min]を超える値にして加熱処理することができるので、生産性を低下させることなく、充分な流動性を有する電子写真用トナーを製造することができる。
【0025】
また本発明によれば、原料混合物にトナー粒子とともに含まれるシリカ微粒子の比表面積は、200m/g以上である。このように比表面積が200m/g以上であるシリカ微粒子を用いることによって、比表面積が200m/g未満であるシリカ微粒子を用いる場合に比べて、電子写真用トナーとして充分な流動性を有する電子写真用トナーをより確実に得ることができる。
【0026】
また本発明によれば、電子写真用トナーは、前述のように優れた電子写真用トナーの製造方法によって製造される。したがってトナー粒子同士の融着およびトナー粒子表面へのシリカ粒子の固着が抑えられ、充分な流動性を有する電子写真用トナーが実現される。このような電子写真用トナーは、搬送性に優れており、追従不良およびジッタの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の一形態である電子写真用トナー(以下、単に「トナー」ということがある)の製造方法は、粉砕によって粒子化されたトナー粒子に、流動化剤としてシリカ微粒子を添加して混合して得られた原料混合物を、後述する図1および図2に示す熱風処理装置1を用いて加熱処理する加熱処理工程を含む。
【0028】
本実施形態による電子写真用トナーの製造方法によって得られる電子写真用トナーは、前述のトナー粒子とシリカ微粒子とを含む。本実施形態では、加熱処理工程の前に、粉砕によってトナー粒子を生成する粒子生成工程と、トナー粒子およびシリカ微粒子を混合して原料混合物を生成する混合工程とが含まれる。
【0029】
[粒子生成工程]
粒子生成工程では、粉砕によってトナー粒子を生成する。トナー粒子は、結着剤および着色剤を含有し、本実施形態ではさらに荷電調整剤、離型剤を含有する。トナー粒子は、荷電調整剤および離型剤を含有しなくてもよい。トナー粒子を構成する材料(以下「トナー粒子の構成材料」ということがある)はこれに限定されない。
【0030】
トナー粒子を構成する結着剤の材料としては、特に制限はなく、従来公知のものが使用でき、具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料を挙げることができる。これらの結着剤の材料は、1種を単独で用いることができ、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中でも、着色しやすく、鮮明な色彩のトナーが得られる点から、ポリエステル樹脂を用いることが特に好適である。したがって本実施形態ではポリエステル樹脂から成る結着剤を用いる。
【0031】
トナー粒子を構成する着色剤の材料としては、特に制限はなく、従来公知のものが使用できる。具体的には、黒色の着色剤の材料としては、たとえばカーボンブラック、黒色を呈する磁性粉などを挙げることができ、シアン色の着色剤の材料としては、たとえば銅フタロシアニン、メチレンブルー、ビクトリアブルーなどを挙げることができ、マゼンタ色の着色剤の材料としては、たとえばローダミン染料、ジメチルキナクリドン、ジクロロキナクリドン、カーミンレッドなどを挙げることができ、イエロー色の着色剤の材料としては、たとえばベンジジンイエロー、クロムイエロー、ナフトールイエロー、ジスアゾイエローなどを挙げることができる。
【0032】
本実施形態においてトナー粒子は、離型剤を含有する。トナー粒子に離型剤を含有させることによって、電子写真用トナーの耐オフセット性を向上させ、オフセット現象を起こりにくくすることができる。離型剤の材料としては、特に制限はなく、従来公知のものが使用でき、具体的には、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、サゾールワックス、モンタン系エステルワックスなどを挙げることができる。
【0033】
またトナー粒子は、荷電調整剤を含有する。トナー粒子に荷電調整剤を含有させることによって、電子写真用トナーを効率的に帯電させることができる。荷電調整剤の材料としては、特に制限はなく、従来公知のものが使用でき、具体的には、ニグロシン、塩基性染料、モノアゾ染料などの金属錯体、サリチル酸およびジカルボン酸などのカルボン酸の、クロムおよび鉄などの金属との金属錯体、有機染料などを挙げることができる。
【0034】
トナー粒子は、本実施形態では粉砕によって粒子化されたものであり、粒子生成工程において、上記構成材料を、ヘンシェルミキサなどの混合機を用いて混合し、二軸押出機などの混練機を用いて混練した後、得られた混練物を粉砕機によって粉砕することによって得られる。混練物の粉砕に用いる粉砕機としては、特に制限はなく、たとえばジェットミル、ターボミルなどを挙げることができる。これらの中でも、ロータを用いて粉砕するロータ式粉砕機を使用することが好ましい。
【0035】
トナー粒子は、後述する加熱処理工程における加熱処理によって、複数の粒子が融着することなく、個々に表面が平滑な粒子となるので、加熱処理後のトナー粒子の大きさは、粒子生成工程で得られるトナー粒子の大きさによって決定される。加熱処理工程における加熱処理後のトナー粒子は、体積平均粒子径が4μm以上15μm以下であることが好ましく、6μm以上10μm以下であることがより好ましい。したがって、加熱処理工程に供するトナー粒子としては、粒子生成工程における粉砕によって得られるトナー粒子から、加熱処理後におけるトナー粒子の体積平均粒子径の好適な範囲として前述した範囲内に体積平均粒子径を有するものを分級によって分取して使用することが好ましい。
【0036】
[混合工程]
混合工程では、粒子生成工程において得られるトナー粒子とシリカ微粒子とを含む原料混合物を生成する。本実施形態では、トナー粒子とシリカ微粒子とを混合して、トナー粒子とシリカ粒子とから成る原料混合物を生成する。本実施形態において原料混合物は、トナー粒子とシリカ微粒子とから成る混合粒子である。原料混合物中においてシリカ微粒子は、トナー粒子の表面に付着していてもよく、トナー粒子から独立して含まれていてもよい。
【0037】
シリカ微粒子としては、比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子が用いられる。シリカ微粒子の比表面積は、シリカ微粒子の粒径の大小を表しており、比表面積が大きいほど、シリカ微粒子の粒径が小さいことを意味する。シリカ微粒子の比表面積の上限は、特に制限されないが、一般に入手できるシリカ微粒子としては、比表面積の上限が380m/g程度である。したがって本実施形態では、シリカ微粒子の比表面積は、80m/g以上380m/g以下である。
【0038】
シリカ微粒子の比表面積は、BET法によって測定される。「BET法」とは、Brunauer、EmmettおよびTellerによって提案された理論に基づき、試料粒子表面へのガスの吸着量から試料の比表面積を求める方法である。本実施形態では、液体窒素温度における窒素ガスの吸着を利用してシリカ微粒子の比表面積を測定する。
【0039】
シリカ微粒子は、トナー粒子100重量部に対して、2重量部以上5重量部以下の重量比の範囲内で使用される。
【0040】
前述のシリカ微粒子とトナー粒子とが、混合工程で混合されて原料混合物が生成する。具体的には、粒子生成工程で得られたトナー粒子100重量部に対して、前述の比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子を2重量部以上5重量部以下添加し、混合装置で可及的に均一に混合し、原料混合物を生成する。トナー粒子とシリカ微粒子との混合に用いられる混合装置としては、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサなどが挙げられる。混合装置は、これらに限定されるものではなく、粉体を混合できる装置であれば、どれでも混合装置として用いることができる。
【0041】
[加熱処理工程]
加熱処理工程では、混合工程で得られた原料混合物を、熱風処理装置を用いて加熱処理する。この加熱処理工程を経て電子写真用トナーが得られる。図1は、本実施形態の加熱処理工程で用いられる熱風処理装置1の構成を示す断面図である。図1では、熱風処理槽11および熱風噴射ノズル12の断面構成を示し、原料噴射ノズル13およびホッパ部17については、図面が錯綜して理解が困難になるので、正面図を示す。図2は、図1に示す熱風処理装置1の熱風噴射ノズル12および原料噴射ノズル13を拡大して示す断面図である。
【0042】
熱風処理装置1は、熱風処理槽11と、熱風噴射ノズル12と、原料噴射ノズル13と、断熱機構14と、衝突部材15と、エア噴射手段16とを含んで構成される。
【0043】
図1に示すように、熱風処理槽11は、略円筒状の処理槽本体21と、処理槽本体21の上部の開口を塞ぐ天板22とを含む。処理槽本体21は、その軸線方向が鉛直方向に一致するように配置される。鉛直方向をZ1方向と定義し、このZ1方向の反対方向をZ2方向と定義し、Z1方向とZ2方向とを含んでZ方向と定義する。処理槽本体21は、上部の開口径が下部の開口径よりも大きく、軸線方向における上部と下部との間の中間部が、下部に近づくに従って開口径が小径となるテーパ状に形成されている。
【0044】
天板22は、処理槽本体21の上部に設けられている。処理槽本体21と天板22とによって形成される熱風処理槽11の内部空間には、混合工程で得られる原料混合物および熱風が熱風処理槽11の上部から供給される。天板22は、略円板状に形成されており、その中央部の第1取入口部23には第1エア取入口が形成され、外周部の第2取入口部24には第2エア取入口が形成されている。この第1エア取入口および第2エア取入口を通して、冷却用エアが取入れられる。
【0045】
熱風噴射ノズル12は、熱風処理槽11の上方に設けられている。熱風噴射ノズル12は、L字形状に屈曲して形成されており、その一端部である熱風出口が形成される下端開口部25の開口端面が、天板22の上面を含む仮想平面に含まれるように、より詳細には下端開口部25の開口端面および天板22の上面のZ方向における位置が一致するように配置されている。熱風噴射ノズル12の熱風出口および天板22の第1エア取入口は円形状に形成されており、熱風噴射ノズル12は、熱風出口の軸線が、第1エア取入口の軸線と一致するように配置されている。この下端開口部25に形成される熱風出口から熱風処理槽11内に熱風が噴射される。
【0046】
図2に示すように、原料噴射ノズル13は、原料出口が形成される下端開口部26が、熱風噴射ノズル12の下端開口部25の内方側に位置するように設けられている。また原料噴射ノズル13の下端開口部26は、熱風噴射ノズル12の下端開口部25よりも上方、すなわちZ2方向側に位置するように設けられている。
【0047】
原料噴射ノズル13の上部は、熱風噴射ノズル12の屈曲部27を貫通しており、外部に臨む上部には、原料混合物を貯溜するホッパ部17が設けられている。ホッパ部17の下部にはディフューザ27が設けられており、ホッパ部17内にはディフューザ27に向けて圧縮エアを噴射するエア噴射ノズル28が設けられている。エア噴射ノズル28からディフューザ27に圧縮エアを噴射すると、ホッパ部17内に貯溜された原料混合物が原料噴射ノズル13内へ吸引されて圧縮エアと混合され、その固気混合流体が原料噴射ノズル13の下端開口部26の原料出口から、熱風噴射ノズル12から噴射される熱風の中心部に向けて噴射される。
【0048】
衝突部材15は、原料噴射ノズル13の下方、より詳細には原料噴射ノズル13の下端開口部26の下方に、原料噴射ノズル13から離隔して設けられている。衝突部材15を設けることによって、原料噴射ノズル13から噴射される原料混合物を衝突によって分散させることができる。衝突部材15は、円板状に形成されている。
【0049】
断熱機構14は、原料噴射ノズル13の外側に設けられている。断熱機構14を設けることによって、原料噴射ノズル13と熱風噴射ノズル12とを断熱し、熱風噴射ノズル12内を流動する熱風との接触によって原料噴射ノズル13がトナー粒子の融点以上に昇温することを防止することができる。これによって、トナー粒子が溶融して原料噴射ノズル13の内面に付着して堆積することを防止することができる。
【0050】
断熱機構14は、原料噴射ノズル13から離隔して原料噴射ノズル13を囲繞するように設けられる冷却ジャケット29を含む。断熱機構14は、原料噴射ノズル13の外側に設けられた内筒部14aと、内筒部14aの外側に設けられた外筒部14bとを含み、この内筒部14aと外筒部14bとによって冷却ジャケット29が形成されている。内筒部14aと外筒部14bとの間隙である冷却ジャケット29の流路には冷媒が流下する。冷却ジャケット29の下部には冷媒入口30が形成され、上部には冷媒出口31が形成されており、冷媒入口30から冷却ジャケット29内に冷媒を供給して原料噴射ノズル13を冷却し、冷却後の冷媒を冷媒出口31から流出させるようにしている。冷媒としては、−15℃のエチレングリコール50%水溶液が用いられる。冷媒は、これに限定されず、水または空気を冷媒として用いるようにしてもよい。
【0051】
断熱機構14の内筒部14aの内周面部と原料噴射ノズル13の外周面部との間にはエア噴射通路32が形成されている。エア噴射通路32は、冷却ジャケット29の内表面部である内筒部14aの内周面部と、原料噴射ノズル13の外表面部である外周面部とによって形成されている。エア噴射通路32の上部にはエア入口33が形成されており、そのエア入口33からエア噴射通路32内に分散用エアである気体が供給される。エア噴射通路32内に供給された分散用エアは、エア噴射通路32内を下向き、すなわちZ1方向に流下して、下端の開口34から、衝突部材15の上面部である原料噴射ノズル13の下端開口部26を臨む表面部に向けて噴射される。
【0052】
熱風処理装置1は、熱風噴射ノズル12から熱風処理槽11内に熱風を噴射すると共に、エア噴射通路32から衝突部材15に分散用エアを噴射し、かつ冷却ジャケット29内に冷媒を流動させる冷却状態において、原料噴射ノズル13から原料混合物と圧縮エアとの固気混合流体を噴射する。
【0053】
原料噴射ノズル13から原料混合物が噴射されると、噴射された原料混合物は衝突部材15に衝突する。その衝突およびエア噴射通路32から衝突部材15の上面部に向けて噴射される分散用エアとによって、原料混合物である混合粒子が熱風中に分散される。これによって原料混合物を熱風と効果的に接触させることができるので、加熱処理を効率的に行なうことができる。また熱風噴射ノズル12から噴射される熱風は、その中心部分、すなわち熱風出口の中心部分において、他の部分に比べて高温になっている。本実施形態では、熱風出口の軸線と原料出口の軸線とが一致しており、原料混合物は、高温になっている熱風の中心部分に噴射されるので、熱風と効果的に接触することができ、その接触によってトナー粒子の表面が溶融し、加熱処理される。
【0054】
本実施形態では、天板22に第1および第2エア取入口が形成されており、この第1エア取入口23および第2エア取入口24から熱風処理槽11内に冷却用エアが流入するので、この冷却用エアによって、加熱処理された原料混合物を素速く冷却することができる。また第2エア取入口24から流入する冷却用エアによって熱風処理槽11の内面が冷却されるので、加熱処理された原料混合物は、熱風処理槽11の内面に付着することなく、熱風処理槽11の下部に形成される出口から排出される。
【0055】
本実施形態では、原料噴射ノズル13の下端開口部26の開口端面は、熱風噴射ノズル12の下端開口部25の開口端面よりも上方に位置するように設けられる。すなわち原料噴射ノズル13の下端開口部26は、熱風噴射ノズル12の下端開口部25よりも、寸法Hだけ上方に位置するように設けられる。これによって、原料噴射ノズル13から噴射される原料混合物は熱風と直ちに接触することができ、また原料混合物が熱風の高温域で流動する時間を長くとることができるので、原料混合物をより効果的に加熱処理することができる。
【0056】
図1および図2に示す熱風処理装置1としては、たとえば特開2004−276016号公報に開示されている球形化処理装置を用いることができ、具体的には、日本ニューマチック工業株式会社から表面改質機として市販されているメテオレインボー(商品名)などが挙げられる。特開2004−176016号公報に開示されている球形化処理装置では、反応槽が熱風処理槽に相当する。
【0057】
加熱処理工程では、混合工程で得られた原料混合物を、図1および図2に示す熱風処理装置1を用いて、熱風噴射ノズル12から熱風処理槽11内に供給される熱風の温度Ta[℃]および風量La[lt/min、0℃、1気圧]、原料噴射ノズル13から熱風処理槽11内に供給される原料混合物の供給速度Wf[g/min]、ならびにトナー粒子の2分の1(1/2)降下温度Tm[℃]が、下記式(1)および(2)を満足する条件下で、原料混合物を加熱処理する。
Tm<Ta×La/(La+Wf×1.4[lt/g])<Tm×2 …(1)
0.08[g/lt]×La<Wf<0.5[g/lt]×La …(2)
【0058】
熱風風量Laは、0℃、1気圧の標準状態における値に換算した値であり、0℃、1気圧の標準状態において熱風処理槽11に対して1分間(min)当りに供給される熱風の体積(リットル;lt)で表される。
【0059】
加熱処理工程では、熱風と原料混合物とが混合されるので、熱風中におけるトナー粒子の表面温度Tt[℃]は、熱風の温度Taおよび風量La、熱風中のトナー粒子の量、ならびにトナー粒子の比熱から、熱風中においてトナー粒子に与えられる熱量を計算することによって求めることができる。具体的には、熱風中におけるトナー粒子の表面温度Tt[℃]は、熱風温度Ta、熱風風量Laおよび原料供給速度Wfと相関しており、式(1)の中辺「Ta×La/(La+Wf×1.4[lt/g])」で表すことができる。
【0060】
式(1)の中辺の値がトナー粒子の1/2降下温度Tm以下である、すなわちTa×La/(La+Wf×1.4)≦Tmであると、トナー粒子の表面温度Ttが低過ぎてトナー粒子の表面が充分に溶融されず、成形されにくいので、加熱処理によるトナーの流動性の向上が得られないか、または効果が得られても小さいものとなる。
【0061】
式(1)の中辺の値がトナー粒子の1/2降下温度Tmの2倍以上である、すなわちTa×La/(La+Wf×1.4)≧Tm×2であると、トナー粒子の表面温度Ttが高過ぎてトナー粒子の表面が過度に溶融し、トナー粒子同士が融着しやすくなり、またシリカ微粒子がトナー粒子表面に固着して流動性が低下する。
【0062】
式(1)を満足する、すなわちTm[℃]<Ta[℃]×La[lt/min]/(La[lt/min]+Wf[g/min]×1.4[lt/g])<Tm[℃]×2という条件下で加熱処理を行なうことによって、トナー粒子の表面温度Ttを好適な範囲にすることができるので、トナー粒子同士の融着およびシリカ微粒子のトナー粒子表面への固着を抑え、流動性をより確実に向上させることができる。
【0063】
図3は、熱風風量Laと原料供給速度Wfとの相関関係を示すグラフである。図3において横軸は、熱風風量La[lt/min、0℃、1気圧]を示し、縦軸は原料供給速度Wf[g/min]を示す。式(1)を満足する条件下において、熱風風量Laおよび原料供給速度Wfを変化させて加熱処理を行ない、加熱処理後の流動性を後述する実施例と同様にして評価すると、電子写真用トナーとして必要な流動性を有する電子写真用トナーが得られる範囲は、参照符51で示される直線(以下「第1直線」という)と、参照符52で示される直線(以下「第2直線」という)との間の領域、すなわち図3において左下がりの斜線で示される領域Aおよび右下がりの斜線で示される領域Bであることが判った。第1直線51は、Wf=0.08[g/lt]×Laの直線を表し、第2直線は、Wf=0.5[g/lt]×Laの直線を表す。したがって式(2)を満足する、すなわち0.08[g/lt]×La<Wf<0.5[g/lt]×Laの条件下で加熱処理することによって、電子写真用トナーとして必要な流動性を有する電子写真用トナーを得ることができる。
【0064】
式(2)は熱風中の原料混合物の濃度に関係しており、熱風中における原料混合物の濃度は、式(2)の中辺である原料供給速度Wfおよび熱風風量Laと相関している。原料供給速度Wfが0.08La以下であると、流動性は良好となるが、熱風中における原料混合物の濃度が低くなり過ぎ、単位時間あたりに加熱処理することのできる原料混合物の量が過度に少なくなるので、生産性が低くなる。原料供給速度Wfが0.5La以上であると、熱風中における原料混合物の濃度が高くなり過ぎ、原料混合物を均一に加熱処理することが困難になり、またトナー粒子同士の融着が発生する。
【0065】
式(2)を満足する、すなわち0.08[g/lt]×La[lt/min]<Wf[g/min]<0.5[g/lt]×La[lt/min]という条件下で加熱処理を行なうことによって、熱風中における原料混合物の濃度を好適な範囲にすることができるので、原料混合物をより均一に加熱処理し、均質なトナーを得ることができ、またトナー粒子同士の融着を抑え、流動性をより確実に向上させることができる。また生産性が過度に低くなることを防ぐことができる。
【0066】
また本実施形態では、原料混合物中にトナー粒子とともに含まれるシリカ微粒子の比表面積は80m/g以上である。シリカ微粒子の比表面積が80m/g未満であると、シリカ微粒子の粒径が大きくなり過ぎ、シリカ微粒子による流動性の向上効果が充分に発揮されず、電子写真用トナーとして必要な流動性が得られなくなる。シリカ微粒子の比表面積を80m/g以上にすることによって、電子写真用トナーとして必要な流動性をより確実に付与することができる。
【0067】
シリカ微粒子の比表面積は、より好ましくは100m/g以上であり、さらに好ましくは200m/g以上である。このように比表面積が100m/g以上であるシリカ微粒子を用いることによって、比表面積が100m/g未満であるシリカ微粒子を用いる場合に比べて、電子写真用トナーとして充分な流動性を有する電子写真用トナーをより確実に得ることができる。さらに比表面積が200m/g以上であるシリカ微粒子を用いることによって、比表面積が200m/g未満であるシリカ微粒子を用いる場合に比べて、電子写真用トナーとして充分な流動性を有する電子写真用トナーを一層確実に得ることができる。
【0068】
また原料混合物中におけるシリカ微粒子の重量比は、トナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下である。トナー粒子100重量部に対するシリカ微粒子の重量比が2重部未満であると、トナー粒子同士の融着が発生しやすく、またトナー粒子同士が融着せずにトナー粒子が個々に存在していても、トナーとしての流動性が低いという問題がある。またトナー粒子100重量部に対するシリカ微粒子の重量比が5重量部を超えると、感光体へのダメージおよびトナーフィルミング、ならびにコールドオフセットが生じやすくなる。シリカ微粒子の重量比をトナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下にすることによって、トナー粒子同士の融着を抑え、流動性をより確実に向上させることができ、また感光体へのダメージおよびトナーフィルミング、ならびにコールドオフセットの発生を防ぐことができる。
【0069】
このように比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子をトナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下の重量比で混合して原料混合物とし、この原料混合物に対して、式(1)および(2)を満足する条件下で加熱処理を行なうことによって、トナー粒子同士の融着およびトナー粒子表面へのシリカ粒子の固着を抑え、流動しやすい形状に成形することができる。このようにトナー粒子表面へのシリカ微粒子の固着が抑えられるので、トナー粒子間に介在するシリカ微粒子の量が、加熱処理によって減少することを防ぐことができる。したがって電子写真用トナーとして充分な流動性を有する電子写真用トナーを製造することができる。このような電子写真用トナーは搬送性に優れるので、このような電子写真用トナーを用いることによって、追従不良およびジッタの発生を抑えることができる。
【0070】
前述のように、図3に示す斜線の領域AおよびBでは、電子写真用トナーとして必要な流動性を有するトナーが得られるが、図3において右下がりの斜線で示される領域B、すなわち原料供給速度Wfが117[g/min]以下の領域では、生産性が低くなる。したがって本実施の形態では、第1直線51と第2直線52との間の領域のうち領域Bを除いた領域、すなわち図3において左下がりの斜線で示される領域Aにおいて加熱処理を行なう。
【0071】
第1直線51において原料供給速度Wfが117[g/min]であるときの熱風風量Laは、1462.5[lt/min、0℃、1気圧]である。したがって本実施形態では、熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]以下である(La≦1462.5)ときには原料供給速度Wfが下記式(2a)を満足する条件下で原料混合物を加熱処理し、熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超える(La>1462.5)ときには原料供給速度Wfが下記式(2b)を満足する条件下で原料混合物を加熱処理する。
117[g/min]<Wf<0.5[g/lt]×La …(2a)
0.08[g/lt]×La<Wf<0.5[g/lt]×La …(2b)
【0072】
式(2a)は、図3に示す領域Aのうち、熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]以下である領域A1を表し、式(2b)は、図3に示す領域Aのうち、熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超える領域A2を表す。
【0073】
熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超えるとき、式(2b)の左辺の値は117[g/min]を超えるので、図3に示す領域A2の領域となり、熱風風量Laの値によらず、原料供給速度Wfは117[g/min]を超える値になる。前述のように、原料供給速度Wfが117[g/min]以下であると、単位時間あたりに加熱処理することのできる原料混合物の量が過度に少なくなるので、生産性が低くなる。
【0074】
本実施形態のように熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]以下であるときに式(2a)を満足する条件下、すなわち図3に示す領域A1において原料混合物を加熱処理し、熱風風量Laが1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超えるときに式(2b)を満足する条件下、すなわち図3に示す領域A2において原料混合物を加熱処理することによって、原料供給速度Wfを117[g/min]を超える値にして加熱処理することができる。したがって、生産性を低下させることなく、充分な流動性を有する電子写真用トナーを製造することができる。
【0075】
以上のように加熱処理工程では、トナー粒子とシリカ微粒子とが混合された原料混合物である混合粒子が加熱処理され、加熱処理された混合粒子(以下「被処理混合粒子」ということがある)が得られる。この被処理混合粒子は、トナー粒子に対するシリカ微粒子の固着が非常に少なく、またトナー粒子同士の融着による結合がなく、流動性が良好であるので、流動化剤を加えずにそのまま電子写真用トナーとして使用することができる。
【0076】
このように加熱処理工程で得られる被処理混合粒子は、そのままトナーとして用いられてもよいが、この加熱処理工程で得られる被処理混合粒子を母体トナーとし、この母体トナーに、流動化剤、帯電的フィルミングを防止するためのフィルミング防止剤などの添加剤を添加したものがトナーとして用いられてもよい。すなわち、本実施形態のトナーの製造方法によって製造されるトナーは、加熱処理工程で得られる被処理混合粒子の集合体であってもよく、この被処理混合粒子に添加剤が添加されたものの集合体であってもよい。
【0077】
流動化剤としては、たとえばシリカなどの無機物が用いられる。被処理混合粒子に流動化剤を添加することによって、トナーの流動性をさらに向上させることができる。
【0078】
前述のように被処理混合粒子は、式(1)および(2)を満足する条件下で加熱処理されたものであり、トナー粒子に対するシリカ微粒子の固着が非常に少なく、またトナー粒子同士の融着による結合がなく、流動性が良好である。したがって本実施形態で得られる被処理混合粒子に流動化剤を添加する場合には、式(1)および(2)を満足しない条件下で加熱処理された混合粒子に流動化剤を添加する場合に比べて、流動化剤の添加量を少なくすることができる。これによって、感光体へのダメージおよびトナーフィルミング、ならびにコールドオフセットの発生をより確実に防ぐことができる。
【0079】
本実施形態のトナーの製造方法によって製造される電子写真用トナーは、単独で1成分現像剤として用いられてもよく、キャリアと混合されて2成分現像剤として用いられてもよい。また本実施形態による電子写真用トナーは、非磁性トナーとして用いられてもよく、磁性トナーとして用いられてもよい。磁性トナーとして用いられる場合、トナー粒子には、磁性材料が含有される。
【実施例】
【0080】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。以下では、非磁性トナーを例示するが、本発明の電子写真用トナーは、非磁性トナーに限定されるものではない。
【0081】
(a)測定方法
以下の実施例および比較例で用いたトナー粒子の1/2降下温度Tm、原料混合物および電子写真用トナーの粒度分布は、以下のようにして測定した。
【0082】
[トナー粒子の1/2降下温度Tm]
トナー粒子の1/2降下温度Tmは、株式会社島津製作所製のフローテスタCFT−500Dを用い、1/2法によって測定した。具体的には、フローテスタ(商品名:CFT−500D、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gに対し、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出されるようにプランジャーで20kgf(196.133N)の荷重を与えながら、昇温速度毎分6℃で試料を加熱し、フローテスタのプランジャー降下量(流れ量)と温度との関係を表す降下量−温度曲線を求めた。得られたS字状の降下量−温度曲線の高さをhとし、ノズルから試料が半分流出したときの温度として、高さhの2分の1(h/2)に対応する温度を求め、この温度を試料の1/2降下温度Tmとした。
【0083】
〔粒度分布〕
原料混合物および電子写真用トナーの粒度分布は、粒度分布測定装置(商品名:マルチサイザー(MULTISIZER)II、ベックマン コールター(BECKMAN COULTER)社製)を用い、口径100μmのアパーチャーチューブで測定した。
【0084】
(b)トナー粒子の生成
(トナー粒子A)
結着剤として市販の非磁性カラートナー用ポリエステル樹脂(商品名:HP−325、
日本合成化学工業株式会社製)10重量部と、着色剤としてマゼンタ色着色剤(ピグメントレッド57:1)5重量部とを溶融混合した後、熱ロールで溶融混練し、得られた混練物を冷却して固化させた後、粗砕してマスターバッチを得た。このマスターバッチ15重量部に、前述の非磁性カラートナー用ポリエステル樹脂10重量部と、非磁性トナー用ポリエステル樹脂(商品名:ET2900、エスケーケミカルズ(SK Chemicals)社製)80重量部と、荷電調整剤としてアルキルサリチル酸亜鉛(商品名:ボントロン(BONTRON)E−84、オリエント化学工業株式会社製)2重量部と、離型剤としてポリエチレン(商品名:サンワックス161−P、三洋化成工業株式会社製)4重量部とを加えて混合した後、熱ロールで溶融混練して混練物を得た。この混練物を冷却して固化させた後、粉砕して分級を行い、非磁性トナー粒子を得た。以下、このトナー粒子をトナー粒子Aという。以上のようにしてマゼンタ色のトナー粒子Aを生成した。得られたトナー粒子Aの1/2降下温度Tmは127℃であった。
【0085】
(トナー粒子B)
荷電調整剤として、アルキルサリチル酸亜鉛(商品名:BONTRON E−84、オリエント化学工業株式会社製)に代えて、有機ジルコニウム化合物(商品名:TN−105、保土谷化学工業株式会社製)を用いる以外は、トナー粒子Aと同様にして、マゼンタ色のトナー粒子Bを生成した。得られたトナー粒子Bの1/2降下温度Tmは146℃であった。
【0086】
(トナー粒子C)
着色剤として、マゼンタ色着色剤であるピグメントレッド57:1に代えて、イエロー色着色剤であるピグメントイエロー74を用いる以外は、トナー粒子Aと同様にして、イエロー色のトナー粒子Cを生成した。得られたトナー粒子Cの1/2降下温度Tmは124℃であった。
【0087】
(トナー粒子D)
着色剤として、マゼンタ色着色剤であるピグメントレッド57:1に代えて、シアン色着色剤であるピグメントブルー15:3を用いる以外は、トナー粒子Aと同様にして、シアン色のトナー粒子Dを生成した。得られたトナー粒子Dの1/2降下温度Tmは122℃であった。
【0088】
(トナー粒子E)
着色剤として、マゼンタ色着色剤であるピグメントレッド57:1に代えて、ブラック色着色剤であるカーボンブラックを用いる以外は、トナー粒子Aと同様にして、ブラック色のトナー粒子Eを生成した。得られたトナー粒子Eの1/2降下温度Tmは116℃であった。
【0089】
(c)電子写真用トナーの製造
(実施例1)
前述のようにして生成した非磁性トナー粒子であるトナー粒子Aの100重量部に対して、比表面積が100m/gであるシリカ微粒子(商品名:RY200、日本アエロジル株式会社製)3重量部を加え、ヘンシェルミキサを用いて前混合し、原料混合物である混合粒子を得た。得られた混合粒子の粒度分布を測定し、体積平均粒径Da1を求めた。この加熱処理前の体積平均粒径Da1は、8.9μmであった。
【0090】
得られた原料混合物である混合粒子を、図1および図2に示す構成の熱風処理装置(商品名:メテオレインボーMR−10型、日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて、表1に示すように熱風温度Taを292℃とし、熱風風量Laを600[lt/min、0℃、1気圧]とし、原料供給速度Wfを167[g/min]として加熱処理し、被処理混合粒子を得た。この被処理混合粒子100重量部に対して、シリカ微粒子(商品名:R974、日本アエロジル株式会社製)1重量部を加え、ヘンシェルミキサを用いて混合し、実施例1の電子写真用トナーを得た。得られたトナーについて粒度分布を測定し、体積平均粒径Da2を求めた。この加熱処理後の体積平均粒径Da2は、8.9μmであった。
【0091】
(実施例2)
原料混合物中のシリカ微粒子として、比表面積が100m/gであるシリカ微粒子に代えて、比表面積が170m/gであるシリカ微粒子(商品名:R974、日本アエロジル株式会社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電子写真用トナーを得た。
【0092】
(実施例3)
原料混合物中のシリカ微粒子として、比表面積が100m/gであるシリカ微粒子に代えて、比表面積が220m/gであるシリカ微粒子(商品名:R812S、日本アエロジル株式会社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例3の電子写真用トナーを得た。
【0093】
(実施例4)
原料混合物中のトナー粒子100重量部に対するシリカ微粒子の重量比を3重量部から5重量部に変更する以外は実施例2と同様にして、実施例4の電子写真用トナーを得た。
【0094】
(実施例5〜7)
加熱処理における熱風温度Taを表1に示す値にそれぞれ変更する以外は実施例2と同様にして、実施例5〜7の電子写真用トナーを得た。
【0095】
(実施例8〜12)
加熱処理における熱風温度Taおよび原料供給速度Wfを表1に示す値にそれぞれ変更する以外は実施例2と同様にして、実施例8〜12の電子写真用トナーを得た。
【0096】
(実施例13,14)
トナー粒子Aに代えてトナー粒子Bを用い、図1および図2に示す構成の熱風処理装置であるメテオレインボー(日本ニューマチック工業株式会社製)としてMR−10型に代えてMR−100型を用い、加熱処理における熱風温度Ta、熱風風量Laおよび原料供給速度Wfを表1に示す値にそれぞれ変更する以外は実施例2と同様にして、実施例13および14の電子写真用トナーを得た。
【0097】
(実施例15〜17)
トナー粒子Aに代えてトナー粒子C〜Eをそれぞれ用いる以外は実施例2と同様にして、実施例15〜17の電子写真用トナーを得た。
【0098】
(比較例1)
原料混合物中のシリカ微粒子として、比表面積が100m/gであるシリカ微粒子に代えて、比表面積が35m/gであるシリカ微粒子(商品名:RX50、日本アエロジル株式会社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電子写真用トナーを得た。
【0099】
(比較例2)
原料混合物中のシリカ微粒子として、比表面積が100m/gであるシリカ微粒子に代えて、比表面積が60m/gであるシリカ微粒子(商品名:PM05、株式会社トクヤマ製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電子写真用トナーを得た。
【0100】
(比較例3)
トナー粒子Aに対してシリカ微粒子を添加せずに、トナー粒子Aに対して加熱処理を行なう以外は実施例1と同様にして、すなわち原料混合物に代えてトナー粒子Aを実施例1と同じ条件で加熱処理した後、得られたトナー粒子とシリカ微粒子とを実施例1と同様にして混合し、比較例3の電子写真用トナーを得た。
【0101】
(比較例4〜7)
原料混合物中のトナー粒子100重量部に対するシリカ微粒子の重量比を3重量部から表1に示す値にそれぞれ変更する以外は実施例2と同様にして、比較例4〜7の電子写真用トナーを得た。
【0102】
(比較例8〜10)
加熱処理における熱風温度Taを表1に示す値にそれぞれ変更する以外は実施例2と同様にして、比較例8〜10の電子写真用トナーを得た。
【0103】
(比較例11,12)
加熱処理における熱風温度Taおよび原料供給速度Wfを表1に示す値にそれぞれ変更する以外は実施例2と同様にして、比較例11および12の電子写真用トナーを得た。
【0104】
(d)評価
以上のようにして得られた実施例1〜17および比較例1〜12の電子写真用トナーについて、以下のようにして評価を行なった。
【0105】
<融着量ΔDa>
加熱処理後の体積平均粒子径Da2から、加熱処理前の体積平均粒子径Da1を減算した値(Da2−Da1)を、融着量ΔDa[μm]として求め、加熱処理の前後におけるトナー粒子同士の融着およびトナー粒子へのシリカ微粒子の融着の発生度合を以下の基準に基づいて評価した。ただし、融着量ΔDaが負(−)の値になった場合には「○」と評価した。
○:融着少ない。融着量ΔDaが0.0μm以上0.3μm以下である。
△:融着やや多い。融着量ΔDaが0.3μmを超えて0.7μm未満である。
×:融着多い。融着量ΔDaが0.7μm以上である。
【0106】
<流動性>
流動性は、筒井理化学器械社製のカサ比重測定器を用い、日本工業規格(JIS)Z2504に従い、かさ比重[g/cm]を測定し、その値を評価指標として、以下の基準に基づいて評価した。
○:流動性良い。かさ比重が0.37g/cm以上である。
△:流動性やや悪い。かさ比重が0.35g/cm以上0.37g/cm未満である。
×:流動性悪い。かさ比重が0.35g/cm未満である。
【0107】
<定着性>
定着性は以下のようにして評価した。まず、得られたトナーを市販の非磁性1成分現像方式のカラープリンタ(商品名:Magicolor2400W、コニカミノルタ株式会社製)の現像槽に投入し、複数の印字部が均一に配置されたパターンのテスト画像を印刷した。印刷されたテスト画像の印字部を摩擦する摩擦試験を行なった。摩擦試験は、堅牢型耐摩試験機(商品名:摩擦堅牢度試験機、株式会社大栄科学精器製作所製)を用いて、荷重300gの条件下、やわらかい綿を10往復させて印字部を摩擦することによって行なった。
【0108】
摩擦試験の前後において、印字部の反射率濃度(以下、単に「濃度」という)を光学濃度計(商品名:RD914、マクベス社製)用いて測定し、下記式(3)で定義される定着率[%]を求めた。
定着率[%]=(摩擦後の印字部の濃度)/(摩擦前の印字部の濃度)
×100[%] …(3)
【0109】
求めた定着率を評価指標として、以下の基準に基づいて定着性を評価した。ただし、定着率が100%を超える値になった場合には「○」と評価した。
○:定着性良い。定着率が95%以上100%以下である。
△:定着性やや悪い。定着率が90%以上95%未満である。
×:定着性悪い。定着率が90%未満である。
【0110】
<追従不良>
定着性の評価と同様にして、全面べた画像を3枚連続印刷し、得られた3枚の画像を目視観察して画像濃度を比較し、3枚の画像間における画像濃度の低下の有無および低下の程度を確認し、その結果から追従不良の程度を判断し、以下の基準に基づいて評価した。
○:良好。画像濃度の低下がなく、追従不良なし。
△:可。画像濃度の低下が少しあり、追従不良少しあり。
×:不良。画像濃度の低下が著しく、追従不良ひどい。
【0111】
<ジッタ>
定着性の評価と同様にして、全面べた画像を3枚連続印刷し、得られた画像を目視観察して、画像への縞状の濃淡の発生の有無および発生の程度を確認し、その結果からジッタの程度を判断し、以下の基準に基づいて評価した。
○:良好。縞状の濃淡が発生しておらず、ジッタなし。
△:可。縞状の濃淡が若干発生しており、ジッタ少しあり。
×:不良。縞状の濃淡が著しく発生しており、ジッタひどい。
【0112】
<画質>
以上の定着性、追従不良およびジッタの評価で、全ての評価が「△」以上であったトナーに関して画質の評価を行なった。評価は、以下のようにして行なった。得られたトナーを市販の非磁性1成分現像方式のカラープリンタ(商品名:Magicolor2400W、コニカミノルタ株式会社製)の現像槽に投入し、面積率5%の画像を1000枚印刷後、全面ベタ画像を印刷し、得られたベタ画像を目視観察し、画像に印刷方向に対して平行方向への筋ムラが発生しているか否かを確認し、さらに筋ムラが発生している場合には発生した筋の本数を確認し、以下の基準に基づいて画質を評価した。
○:良好。筋なし。
△:可。筋が1〜2本。
×:不良。筋が3本以上。
【0113】
<生産性>
生産性は、加熱処理における原料供給速度Wfを評価指標として、以下の基準に基づいて評価した。
○:良好。原料供給速度Wf[g/min]が、熱風風量La[lt/min、0℃、1気圧]に対して下記式(4a)を満たし、かつ117[g/min]を超える(Wf>117)。
△:可。原料供給速度Wf[g/min]が、熱風風量La[lt/min、0℃、1気圧]に対して下記式(4a)を満たし、117[g/min]以下である(Wf≦117)。
×:不良。原料供給速度Wf[g/min]が、熱風風量La[lt/min、0℃、1気圧]に対して下記式(4b)を満たす。
Wf>0.08La …(4a)
Wf≦0.08La …(4b)
【0114】
以上の評価結果を表1に示す。表1には、各電子写真用トナーの製造における加熱処理前の体積平均粒子径Da1および加熱処理後の体積平均粒子径Da2を合わせて示す。また表1には、前述の式(1)の中辺「Ta×La/(La+Wf×1.4[lt/g])」の値を合わせて示す。表1では、評価を行なわなかった項目については「−」と記載する。
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示すように、比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子をトナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下の重量比で混合して原料混合物とし、この原料混合物に対して、式(1)および(2)を満足する条件下で加熱処理を行なった実施例1〜17では、融着量ΔDaが小さく、トナー粒子同士の融着およびトナー粒子表面へのシリカ粒子の固着が抑えられることが判る。また実施例1〜17の電子写真用トナーは、かさ比重が大きく、電子写真用トナーとして充分な流動性を有することが判る。また実施例1〜17の電子写真用トナーを用いることによって、追従不良、ジッタおよび画像への筋ムラの発生を抑えることができることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本実施形態の加熱処理工程で用いられる熱風処理装置1の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す熱風処理装置1の熱風噴射ノズル12および原料噴射ノズル13を拡大して示す断面図である。
【図3】熱風風量Laと原料供給速度Wfとの相関関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0118】
1 熱風処理装置
11 熱風処理槽
12 熱風噴射ノズル
13 原料噴射ノズル
14 断熱機構
15 衝突部材
16 エア噴射手段
17 ホッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕によって粒子化され結着剤および着色剤を含有するトナー粒子と、比表面積が80m/g以上であるシリカ微粒子とを含み、シリカ微粒子の重量比がトナー粒子100重量部に対して2重量部以上5重量部以下である原料混合物を加熱処理する加熱処理工程を含み、
加熱処理工程では、
上部に冷却用エアを取入れるためのエア取入口が形成され、上部から内部空間に原料混合物および熱風が供給される熱風処理槽と、
熱風処理槽の上部から内部空間に向けて熱風を噴射する熱風噴射ノズルと、
熱風噴射ノズルから噴射される熱風に向けて原料混合物を噴射する原料噴射ノズルであって、原料混合物が噴射される原料出口が形成される下端開口部が、熱風噴射ノズルの熱風が噴射される熱風出口が形成される下端開口部の内方側に、熱風噴射ノズルの下端開口部よりも上方に位置するように設けられる原料噴射ノズルと、
原料噴射ノズルから離隔して原料噴射ノズルを囲繞するように設けられ、内部に冷媒が流下する流路が形成される冷却ジャケットを含み、原料噴射ノズルと熱風噴射ノズルとを断熱する断熱機構と、
原料噴射ノズルの下端開口部の下方に原料噴射ノズルから離隔して設けられる衝突部材と、
原料噴射ノズルの外表面部と断熱機構の冷却ジャケットの内表面部とによって形成されるエア噴射流路の下端の開口から、衝突部材の原料噴射ノズルの下端開口部を臨む表面部に向けて分散用エアを噴射するエア噴射手段とを備える熱風処理装置を用いて、
熱風噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される熱風の温度Ta[℃]および風量La[lt/min、0℃、1気圧]、原料噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される原料混合物の供給速度Wf[g/min]、ならびにトナー粒子の2分の1(1/2)降下温度Tm[℃]が、下記式(1)および(2)を満足する条件下で、原料混合物を加熱処理することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
Tm<Ta×La/(La+Wf×1.4[lt/g])<Tm×2 …(1)
0.08[g/lt]×La<Wf<0.5[g/lt]×La …(2)
【請求項2】
加熱処理工程では、
熱風噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される熱風の風量La[lt/min、0℃、1気圧]が1462.5[lt/min、0℃、1気圧]以下である(La≦1462.5)とき、原料噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される原料混合物の供給速度Wf[g/min]が下記式(2a)を満足する条件下で原料混合物を加熱処理し、
熱風噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される熱風の風量La[lt/min、0℃、1気圧]が1462.5[lt/min、0℃、1気圧]を超える(La>1462.5)とき、原料噴射ノズルから熱風処理槽内に供給される原料混合物の供給速度Wf[g/min]が下記式(2b)を満足する条件下で原料混合物を加熱処理することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナーの製造方法。
117[g/min]<Wf<0.5[g/lt]×La …(2a)
0.08[g/lt]×La<Wf<0.5[g/lt]×La …(2b)
【請求項3】
シリカ微粒子の比表面積が200m/g以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真用トナーの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真用トナーの製造方法によって製造されることを特徴とする電子写真用トナー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−119645(P2008−119645A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308470(P2006−308470)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】