説明

電子回路基板の導通検査方法およびブラシ状プローブ

【課題】電子回路基板の一つの実装部品と導通する実装部品を特定するための導通検査の作業時間の短縮化と、抽出漏れのない導通検査を行うことができる。
【解決手段】ピン状プローブを一つの実装部品に接触させ、柔軟性を有する金属製ブラシを備えたブラシ状プローブを、電子回路基板の一部の領域にある複数の実装部品に同時に接触させることにより、一つの実装部品と複数の実装部品との間で導通検査を行い、導通を検出したときには、領域内にある複数の実装部品のいずれかと導通があると判断し、導通を検出しないときには、ブラシ状プローブを用いて導通が検出されるまで他の領域について導通検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバースエンジニアリングなどの分野において電子回路基板の実装部品間の導通を確認するために用いられる電子回路基板の導通検査方法および前記導通検査方法に用いるブラシ状プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板の一つの実装部品と導通する実装部品を特定して実装部品間の電気的繋がりを抽出するために、デジタルマルチメータ等の測定手段のプローブを各実装部品に接触させて各実装部品間の導通を確認することが行われている。
【0003】
図7は従来の電子回路基板の導通検査方法を示す図である。従来の電子回路基板の導通検査方法は、図7のように、まず、電子回路基板2の一つの実装部品6を特定してこの実装部品に一方のピン状のプローブ4を接触し、残りの不特定の実装部品の一つ一つに他方のピン状のプローブ4を接触させることにより、特定の実装部品6と導通する他の実装部品6を抽出するようにしていた。
【0004】
しかしながら、1つの電子回路基板に実装される部品の数は、数百個やそれ以上にもなるため、実装部品の一つ一つに対してピン状のプローブ4を用いて1対1の導通確認を行う検査方法は多大な作業時間を必要とし、また、抽出漏れが発生するというおそれがあった。
【0005】
同時に複数の端子にプローブを接触させる方法については、特許文献1の第2図に示されているが、同図に示された方法は、半田不良の検査のために既に特定された端子間の導通を同図に示された装置を用いて行う検査方法であり、特定の実装部品と導通する他の実装部品を抽出するために不特定の実装部品との導通を検査する方法ではないため、前記の問題の解決手段として採用することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−170573号(公報マイクロフィルム)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、電子回路基板の一つの実装部品と導通する実装部品を特定するための導通検査の作業時間の短縮化と、抽出漏れのない技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、以下の各請求項に記載の発明により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、各請求項毎に説明する。
【0009】
請求項1に記載の発明は、
電子回路基板の一つの実装部品と導通する実装部品を特定するための電子回路基板の導通検査方法であって、
ピン状プローブを前記一つの実装部品に接触させ、
柔軟性を有する金属製ブラシを備えたブラシ状プローブを、前記電子回路基板の一部の領域にある複数の実装部品に同時に接触させることにより、前記一つの実装部品と前記複数の実装部品との間で導通検査を行い、
導通を検出したときには、前記領域内にある前記複数の実装部品のいずれかと導通があると判断し、
導通を検出しないときには、前記ブラシ状プローブを用いて導通が検出されるまで他の領域について導通検査を行うことを特徴とする電子回路基板の導通検査方法である。
【0010】
前記のように一つ一つの実装部品に対して、ピン状のプローブを用いて1対1の導通確認を行うと検査作業に時間がかかり過ぎる等の問題がある。このため、本発明者は特定領域の複数の実装部品について、一まとめに検査して導通の有無を検査し、その結果に基づいて導通する領域を順次絞り込んでいくことにより効率的に検査できると考えるに至った。
【0011】
請求項1に記載の発明においては、ピン状プローブを一つの実装部品に接触させ、柔軟性を有する金属製ブラシを備えたブラシ状プローブを、前記電子回路基板の一部の領域にある複数の実装部品に同時に接触させることにより、前記一つの実装部品と前記複数の実装部品との間で導通検査を行う。このように導通検査を行うことにより、導通を検出したときには、前記領域内にある前記複数の実装部品のいずれかと導通があると判断することができる。即ち、電子回路基板の特定領域単位での絞り込み検査が可能となる。また、導通を検出しないときには、前記ブラシ状プローブを用いて導通が検出されるまで他の領域について導通検査を行うことより、電子回路基板の特定領域単位での絞り込みが可能となる。このように請求項1に記載の発明により、電子回路基板の導通検査の作業時間を短縮化することができる。また、大きな接触面積を有するブラシ状プローブを用いることにより、検査の漏れも防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
導通を検出しないときには、前記ブラシ状プローブを前記電子回路基板に押し当てた状態で移動させることにより、他の領域について導通検査を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子回路基板の導通検査方法である。
【0013】
特定の実装部品と繋がりのある実装部品を絞り込んでいく場合、前記ブラシ状プローブを前記電子回路基板に押し当てた状態で移動させることにより、他の領域について導通検査を行うようにすれば、隙間なく連続的に検査を進めることができるので、抽出漏れを防止することができる。
【0014】
なお、ブラシ状プローブの移動ルートは、ブラシ状プローブの位置を少しずつずらしながら1方向にのみ移動させるルートや、往復移動させるルートが考えられる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、
導通を検出したときには、前記ブラシ状プローブよりも小型のブラシ状プローブを前記領域の一部の小領域にある複数の実装部品に同時に接触させることにより、前記一つの実装部品と前記複数の実装部品との間で導通検査を行い、
導通を検出したときには、前記小領域内にある前記複数の実装部品のいずれかと導通があると判断し、
導通を検出しないときには、前記小型のブラシ状プローブを用いて導通が検出されるまで他の領域について導通検査を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子回路基板の導通検査方法である。
【0016】
寸法の大きい大型の電子回路基板については、小さなブラシ状プローブを用いて移動させる場合には時間がかかる。このため、大きなブラシ状プローブを用いて速やかに絞り込むことが好ましい。一方、大きなブラシ状プローブで絞り込まれた領域の面積は大きくなるため、この領域を1対1で検査するには時間がかかる。そこで、絞り込んだ領域を小型のブラシ状プローブで同様な絞り込み作業をすれば、小領域への絞込みが可能になる。
【0017】
このように請求項3に記載の発明においては、検査領域を段階的に絞り込むことにより検査作業時間を短縮化することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、
導通を検出したときには、前記複数の実装部品のそれぞれについて、ピン状プローブを用いて導通検査を行って前記一つの実装部品と導通する実装部品を特定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電子回路基板の導通検査方法である。
【0019】
絞り込んだ領域について、1対1で導通検査を行うことにより、最終的に一つの実装部品と導通する実装部品を特定することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子回路基板の導通検査方法に用いられるブラシ状プローブであって、
柔軟性を有する金属製ブラシを備えていることを特徴とするブラシ状プローブである。
【0021】
請求項5に記載の発明のブラシ状プローブを使用すれば、前記の通り、実装部品の絞込みを速やかに行うことができる。特に、柔軟性を有する金属製ブラシは密着性に優れているため、電子回路基板表面から突出する実装部品にフィットすることができて検査漏れをなくすことができる。
【0022】
このような金属製ブラシの材質としては、銅、アルミニウム、真鍮等の電気伝導性に優れた材料が好ましい。また、導通性や耐摩耗性のよいメッキが施されても良い。金属製ブラシを構成する線の線径は、材料にもより異なるが、100〜500μm程度のものが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、電子回路基板の一つの実装部品と導通する実装部品を特定するための導通検査の作業時間の短縮化と、抽出漏れのない導通検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子回路基板の導通検査方法を説明するための斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るブラシ状プローブの図で、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子回路基板の導通検査方法を説明するための図で、同図(a)は小型の電子回路基板の場合の説明図、同図(b)は大型の電子回路基板の場合の説明図である。
【図4】(a)(b)は本発明の実施の形態2に係るブラシ状プローブを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係るブラシ状プローブを示す側面図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係るブラシ状プローブを示す図で、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図である。
【図7】従来の電子回路基板の導通検査方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態の電子回路基板の導通検査方法を説明するための斜視図である。図1のように本実施の形態の電子回路基板の導通検査方法は、電子回路基板2の一つの実装部品6と導通する実装部品を特定するための方法であり、ピン状プローブ4およびブラシ状プローブ1を備えたテスター等の測定器3を用いて行われる。ブラシ状プローブ1は、柔軟性を有する金属製ブラシ11と固定部12を備えている。なお、金属製ブラシ11は密に配置されるものであるが、図に示す金属製ブラシ11は作図上隙間を設けて示している。
【0027】
本実施の形態の電子回路基板の導通検査方法は、まず、ピン状プローブ4を一つの実装部品6に接触させる。
【0028】
次に、ブラシ状プローブ1を電子回路基板2に押し付けて電子回路基板2の一部の領域にある複数の実装部品(図示略)に同時に接触させる。
【0029】
測定器3が導通を検出したときには、実装部品6とこの領域内にある複数の実装部品のいずれかとが導通があると判断することができる。その後は、前記複数の実装部品のそれぞれについて、ピン状プローブ4を用いて1対1の導通検査を行って実装部品6と導通する実装部品を特定する。
【0030】
測定器3が導通を検出しないときには、この領域内には導通する実装部品はないと判断し、ブラシ状プローブ1を電子回路基板2に押し当てた状態で移動させることにより、他の領域にある実装部品について導通検査を行って実装部品6と導通する実装部品を絞り込んで行く。そして、測定器3が導通を検出したときには、1対1の導通検査を行って実装部品6と導通する実装部品を特定する。
【0031】
図2は、本発明の実施の形態1に係るブラシ状プローブ1を示す図で、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図である。図2において、ブラシ状プローブ1の金属製ブラシ11は、固定部12の先端部12aに固定されている。金属製ブラシ11は、電子回路基板2への接触面積が大きくなるように末広がりの形状にされている。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態に係る電子回路基板の導通検査方法を説明するための図で、同図(a)は、小型の電子回路基板の場合の説明図、同図(b)は大型の電子回路基板の場合の説明図である。図3において、矢印は各電子回路基板2の導通検査方法におけるブラシ状プローブ1の移動ルートを示している。本実施の形態においては、移動ルートを1方向のみにして検査している。
【0033】
同図(a)の場合、電子回路基板2の矢印Y1の開始点Y11の位置からブラシ状プローブ1を矢印Y1の方向に移動させる。この領域の検査が完了した後は、これと隣接する領域を矢印Y2、Y3のように移動させる。なお、隣接する移動ルートの領域はラップさせて検査漏れをなくす。
【0034】
大型の電子回路基板20に対して導通検査を行う場合には、同図(b)に示すように比較的寸法の大きいブラシ状プローブ10を用いて、前記と同じ要領で検査し、検査領域を二点鎖線で囲まれた小領域Xに絞り込む。次に、この小領域Xについて二点鎖線で示す比較的寸法の小さいブラシ状プローブ1を用いて、小領域Xにある複数の実装部品に同時に接触させた状態で、二点鎖線の矢印の方向にブラシ状プローブ1を移動させて検査を行う。そして、小領域Xの中で更に絞り込まれた微小領域について1対1の検査をして実装部品6と導通する実装部品を特定する。
【0035】
図4は、本実施の形態2に係るブラシ状プローブを示す斜視図であり、(a)(b)は、それぞれブラシ状プローブ1の測定器3への異なる接続構造を示している。同図(a)においては、ブラシ状プローブ1の電気コード13の先端にクリップ式の接続部14を設け、この接続部14をピン状プローブ4に挟んで測定器3に接続する。同図(b)においては、ブラシ状プローブ1の電気コード13の先端にコネクタ状の接続部14を設け、この接続部14を測定器3に接続する。
【0036】
また、前記の図3(b)に示す方法では、小型および大型の二種類のブラシ状プローブ1、10が必要になるため、図4(a)に示すように固定部12においてブラシの交換ができるようになっている。このため、固定部12はソケット部12bと、ソケット部12bに着脱可能に接続される先端部12aとで構成されている。そして、先端部12aを取り外すことにより、大型のブラシ状プローブ10のブラシヘッド10aをソケット部12bに接続できるようになっている。
【0037】
図5は、実施の形態3に係るブラシ状プローブを示す側面図であり、末広がりタイプのブラシ状プローブ1において、金属製ブラシ11を一列のみ配列して形成されている。ブラシ状プローブ1を電子回路基板2を押し付けたときは、金属製ブラシ11が撓んで電子回路基板2に面接触することができ、さらにブラシ状プローブ1を移動させることにより、安価で小さい形状であるにも拘らず、広い面積の導通検査を行うことができる。
【0038】
図6は、実施の形態4に係るブラシ状プローブを示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。ブラシ状プローブ1は、比較的幅の広い固定部12の先端部12aから柔軟性を有する金属製ブラシ11を大きく拡げることなくほぼストレートに導出して形成されている。このため、金属製ブラシ11を電子回路基板に押し当てた時に、全領域において、ほぼ均等に圧力を加えて検査することができる。
【0039】
なお、測定器3の導通表示は、視覚的な表示に加えて、音で導通を知らせるようにしても良い。
【0040】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、以上の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以上の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1、10 ブラシ状プローブ
2、20 電子回路基板
3 測定器
4 ピン状プローブ
11 金属製ブラシ
12 固定部
13 電気コード
14 接続部
12a 先端部
12b ソケット部
Y1、Y2、Y3 矢印
Y11 開始点
X 小領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板の一つの実装部品と導通する実装部品を特定するための電子回路基板の導通検査方法であって、
ピン状プローブを前記一つの実装部品に接触させ、
柔軟性を有する金属製ブラシを備えたブラシ状プローブを、前記電子回路基板の一部の領域にある複数の実装部品に同時に接触させることにより、前記一つの実装部品と前記複数の実装部品との間で導通検査を行い、
導通を検出したときには、前記領域内にある前記複数の実装部品のいずれかと導通があると判断し、
導通を検出しないときには、前記ブラシ状プローブを用いて導通が検出されるまで他の領域について導通検査を行うことを特徴とする電子回路基板の導通検査方法。
【請求項2】
導通を検出しないときには、前記ブラシ状プローブを前記電子回路基板に押し当てた状態で移動させることにより、他の領域について導通検査を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子回路基板の導通検査方法。
【請求項3】
導通を検出したときには、前記ブラシ状プローブよりも小型のブラシ状プローブを前記領域の一部の小領域にある複数の実装部品に同時に接触させることにより、前記一つの実装部品と前記複数の実装部品との間で導通検査を行い、
導通を検出したときには、前記小領域内にある前記複数の実装部品のいずれかと導通があると判断し、
導通を検出しないときには、前記小型のブラシ状プローブを用いて導通が検出されるまで他の領域について導通検査を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子回路基板の導通検査方法。
【請求項4】
導通を検出したときには、前記複数の実装部品のそれぞれについて、ピン状プローブを用いて導通検査を行って前記一つの実装部品と導通する実装部品を特定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電子回路基板の導通検査方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子回路基板の導通検査方法に用いられるブラシ状プローブであって、
柔軟性を有する金属製ブラシを備えていることを特徴とするブラシ状プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169729(P2011−169729A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33485(P2010−33485)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】