説明

電子回路装置

【課題】ケース内部の雰囲気温度の上昇を効果的に抑制することができる電子回路装置を提供すること。
【解決手段】電子回路装置1は、通電により発熱する発熱電子部品21と、発熱電子部品21を収容するケース3とを備えている。ケース3は、発熱電子部品21を搭載する搭載部31と、搭載部31に対向配置され、搭載部31とは反対側に外部電子部品61が配設される対向部32とを有する。搭載部31は、発熱電子部品21が搭載され、発熱電子部品21を冷却する冷媒を流通させる第1冷媒流路41が形成された流路形成部311と、第1冷媒流路41が形成されていない非流路形成部312とを有する。対向部32の一部には、冷媒を流通させる第2冷媒流路42が形成されている。第2冷媒流路42は、少なくとも、対向部32における搭載部31の非流路形成部312に対向する対向領域322に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品とその電子部品を収容するケースとを備えた電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路装置としては、例えば、電子部品と、その電子部品を収容すると共に冷媒を流通させる冷媒流路を形成したケースとを備えたものがある。
例えば、特許文献1では、DC−DCコンバータを構成する電子部品と、その電子部品を収容すると共に冷媒を流通させる冷媒流路を形成したケースとを備えたスイッチング装置(電源装置)が開示されている。
【0003】
このスイッチング装置では、DC−DCコンバータを構成する電子部品がベースプレート上に搭載されており、そのベースプレートの台座部の内部に冷媒流路が形成されている。また、台座部上には、DC−DCコンバータを構成する電子部品のうち、通電による発熱が大きいスイッチング素子や整流素子が搭載されている。そして、台座部の内部に形成された冷媒流路を流通する冷媒によって、発熱の大きいスイッチング素子や整流素子を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−297887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構造のスイッチング装置では、次のような問題があった。
すなわち、ベースプレート上には、発熱の大きいスイッチング素子や整流素子の他にもコイル、コンデンサ、トランス等が搭載されており、これらの電子部品も通電により発熱する。そのため、ケース内部の雰囲気温度が上昇し、ケースに収容されている電子部品等に影響を与えるおそれがある。
【0006】
ここで、冷媒流路は、ベースプレートのうち、発熱の大きいスイッチング素子や整流素子が搭載された台座部にのみ形成されている。よって、台座部周辺については、冷媒流路を流通する冷媒によってスイッチング素子や整流素子を冷却することができ、ケース内部の雰囲気温度の上昇を抑制することができるが、それ以外の部分については、特に台座部から離れれば離れるほど、ケース内部の雰囲気温度の上昇を十分に抑制することができなかった。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、ケース内部の雰囲気温度の上昇を効果的に抑制することができる電子回路装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、通電により発熱する発熱電子部品と、
該発熱電子部品を収容するケースとを備え、
該ケースは、上記発熱電子部品を搭載する搭載部と、該搭載部に対向配置され、該搭載部とは反対側に外部電子部品が配設される対向部とを有し、
上記搭載部は、上記発熱電子部品が搭載され、該発熱電子部品を冷却する冷媒を流通させる第1冷媒流路が形成された流路形成部と、上記第1冷媒流路が形成されていない非流路形成部とを有し、
上記対向部の一部には、冷媒を流通させる第2冷媒流路が形成されており、
該第2冷媒流路は、少なくとも、上記対向部における上記搭載部の上記非流路形成部に対向する対向領域に形成されていることを特徴とする電子回路装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記電子回路装置において、発熱電子部品を収容するケースは、搭載部と該搭載部に対向配置された対向部とを有する。搭載部は、発熱電子部品が搭載され、該発熱電子部品を冷却する第1冷媒流路が形成された流路形成部と、第1冷媒流路が形成されていない非流路形成部とを有する。また、対向部において、搭載部の非流路形成部に対向する対向領域には、第2冷媒流路が形成されている。
【0010】
すなわち、ケースにおいて、搭載部と該搭載部に対向配置された対向部との両方にそれぞれ冷媒流路(第1冷媒流路及び第2冷媒流路)が形成されている。そのため、第1冷媒流路及び第2冷媒流路を流通する冷媒によって、ケースの搭載部側及び対向部側からケース内部の雰囲気温度を低減することができる。これにより、ケース内部の雰囲気温度の上昇を効果的に抑制することができる。
【0011】
また、上述のごとく、第1冷媒流路は、ケースにおける搭載部の流路形成部に形成されており、第2冷媒流路は、ケースにおける対向部の対向領域、つまり第1冷媒流路が形成されていない搭載部の非流路形成部に対向する位置に形成されている。このように、第1冷媒流路及び第2冷媒流路を搭載部と対向部との間において互い違いとなるような位置関係とすることにより、搭載部の一部及び対向部の一部に冷媒流路を形成する構成であっても、ケース内部の雰囲気温度の上昇を抑制する効果をケース内全体において偏りなく十分に発揮することができる。
【0012】
また、上述のごとく、ケースの対向部には、第2冷媒流路が形成されている。そのため、対向部に配設される外部電子部品からの熱の影響も抑制することができる。すなわち、対向部に配設される外部電子部品からの熱が対向部を介して伝達され、ケース内部の雰囲気温度が上昇することを、対向部に形成された第2冷媒流路によって抑制することができる。
【0013】
さらに、上述のごとく、第2冷媒流路は、ケースにおける対向部の全体ではなく、その一部に形成されている。そのため、対向部において第2冷媒流路が形成されていない部分に、対向部に配設される外部電子部品等を配置したり、固定したりするスペースを確保することができる。これにより、ケースの対向部に第2冷媒流路を形成しても、外部電子部品等の配置、固定等を容易に行うことができる。
【0014】
このように、ケース内部の雰囲気温度の上昇を効果的に抑制することができる電子回路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、電子回路装置の構成を示す断面説明図。
【図2】図1のA−A線矢視断面説明図。
【図3】実施例2における、電子回路装置の構成を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記電子回路装置としては、例えば、DC−DCコンバータ等の電力変換装置等がある。
また、上記発熱電子部品としては、例えば、トランジスタやダイオード等の半導体素子等がある。
また、上記ケースの上記対向部に配設される上記外部電子部品としては、例えば、インバータ、ECU(電子制御ユニット)、リレー(継電器)等がある。
【0017】
また、上記ケースにおける上記搭載部と上記対向部とは、それぞれケースの一部として一体的に形成されていてもよいし、別々に形成されていてもよい。例えば、対向部がその対向部に配設される外部電子部品を収容する別のケース等の一部として構成されていてもよい。
【0018】
また、上記第1冷媒流路と上記第2冷媒流路とは、上記ケースにおける上記搭載部と上記対向部とが対向する方向において、その一部が重なっている構成とすることができる(請求項2)。
この場合には、第1冷媒流路及び第2冷媒流路を流通する冷媒によって、ケースの搭載部側及び対向部側からケース内部の雰囲気温度を低減する効果をさらに高めることができる。これにより、ケース内部の雰囲気温度の上昇をより一層抑制することができる。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
電子回路装置にかかる実施例について、図を用いて説明する。
本例の電子回路装置1は、図1、図2に示すごとく、通電により発熱する発熱電子部品21と、発熱電子部品21を収容するケース3とを備えている。
ケース3は、発熱電子部品21を搭載する搭載部31と、搭載部31に対向配置され、搭載部31とは反対側に外部電子部品61が配設される対向部32とを有する。
【0020】
搭載部31は、発熱電子部品21が搭載され、発熱電子部品21を冷却する冷媒を流通させる第1冷媒流路41が形成された流路形成部311と、第1冷媒流路41が形成されていない非流路形成部312とを有する。
対向部32の一部には、冷媒を流通させる第2冷媒流路42が形成されている。第2冷媒流路42は、少なくとも、対向部32における搭載部31の非流路形成部312に対向する対向領域322に形成されている。
以下、これを詳説する。
【0021】
図1に示すごとく、本例の電子回路装置1は、DC−DCコンバータ等の電力変換装置である。電子回路装置1は、通電により発熱する発熱電子部品21等を収容するケース3を備えている。
ケース3は、発熱電子部品21を搭載する搭載部31と、搭載部31に対向配置された対向部32と、搭載部31と対向部32との間をつなぐと共にケース3の側面を形成する側面部33とにより構成されている。対向部32は、後述する別ケース5の一部を構成している。
【0022】
搭載部31は、流路形成部311と非流路形成部312とを有する。流路形成部311は、非流路形成部312よりも厚みが大きく、一段高くなっている。
搭載部31の流路形成部311上には、複数の発熱電子部品21が配設されている。また、搭載部31の流路形成部311の内部には、複数の発熱電子部品21を冷却する冷媒を流通させる第1冷媒流路41が形成されている。
【0023】
対向部32の内部には、冷媒を流通させる第2冷媒流路42が形成されている。第2冷媒流路42は、対向部32における搭載部31の非流路形成部312に対向する対向領域322に形成されている。すなわち、第2冷媒流路42は、搭載部31の非流路形成部312に対向して配置されている。
なお、第1冷媒流路41及び第2冷媒流路42に流通させる冷媒としては、例えば、LLC(ロングライフクーラント)(株式会社デンソー製、登録商標)等を用いることができる。
【0024】
また、図2に示すごとく、搭載部31の流路形成部311上に配設された複数の発熱電子部品21は、DC−DCコンバータを構成する電子部品であり、直流を交流に変換するための複数のスイッチング素子21aと交流を直流に変換するための整流素子21bとにより構成されている。スイッチング素子21aとしては、例えば、トランジスタ等を用いることができる。また、整流素子21bとしては、例えば、ダイオード等を用いることができる。
スイッチング素子21a及び整流素子21bは、ネジ29等によって搭載部31の流路形成部311に固定されている。そして、発熱量が比較的多いスイッチング素子21a及び整流素子21bは、第1冷媒流路41を流通する冷媒によって冷却される。
【0025】
また、ケース3内には、上述した発熱電子部品21(スイッチング素子21a、整流素子21b)の他にも、スイッチング素子21aのスイッチング動作を制御するための制御基板22、電圧変換を行うためのトランス23、出力電圧のノイズ除去を行うためのフィルタ24等が収容されている。発熱量が比較的少ないトランス23、フィルタ24等は、ケース3の非流路形成部312側に配置されている。
また、制御基板22には、入力端子25、その他にもコイル、コンデンサ等が配設されている。また、フィルタ24には、ケース3の側面部33の外側に配設された出力端子26が接続されている。
【0026】
また、図1に示すごとく、ケース3の側面部33には、ケース3とは異なる有底箱型形状の別ケース5がネジ39等によって固定されている。
別ケース5は、底部51とその底部51から立設してなると共に別ケース5の側面を形成する立設部52とを有する。別ケース5の開口部は、蓋部53によって閉じられている。蓋部53は、ネジ59等によって立設部52に固定されている。また、別ケース5の底部51は、ケース3の対向部32でもある。
【0027】
また、図2に示すごとく、別ケース5内には、インバータ、ECU、リレー(継電器)等の外部電子部品61が収容されている。外部電子部品61は、ケース3の対向部32(別ケース5の底部51)における搭載部31とは反対側に配設されている。また、外部電子部品61は、対向部32の内部に形成された第2冷媒流路42を避けるようにして配設されたネジ69等によって固定されている。
【0028】
次に、本例の電子回路装置1における作用効果について説明する。
本例の電子回路装置1において、発熱電子部品21を収容するケース3は、搭載部31と搭載部31に対向配置された対向部32とを有する。搭載部31は、発熱電子部品21が搭載され、発熱電子部品21を冷却する第1冷媒流路41が形成された流路形成部311と、第1冷媒流路41が形成されていない非流路形成部312とを有する。また、対向部32において、搭載部31の非流路形成部312に対向する対向領域322には、第2冷媒流路42が形成されている。
【0029】
すなわち、ケース3において、搭載部31と搭載部31に対向配置された対向部32との両方にそれぞれ冷媒流路(第1冷媒流路41及び第2冷媒流路42)が形成されている。そのため、第1冷媒流路41及び第2冷媒流路42を流通する冷媒によって、ケース3の搭載部31側及び対向部32側からケース3内部の雰囲気温度を低減することができる。これにより、ケース3内部の雰囲気温度の上昇を効果的に抑制することができる。
【0030】
また、上述のごとく、第1冷媒流路41は、ケース3における搭載部31の流路形成部311に形成されており、第2冷媒流路42は、ケース3における対向部32の対向領域322、つまり第1冷媒流路41が形成されていない搭載部31の非流路形成部312に対向する位置に形成されている。このように、第1冷媒流路41及び第2冷媒流路42を搭載部31と対向部32との間において互い違いとなるような位置関係とすることにより、搭載部31の一部及び対向部32の一部に冷媒流路を形成する構成であっても、ケース3内部の雰囲気温度の上昇を抑制する効果をケース3内全体において偏りなく十分に発揮することができる。
【0031】
また、上述のごとく、ケース3の対向部32には、第2冷媒流路42が形成されている。そのため、対向部32に配設される外部電子部品からの熱の影響も抑制することができる。すなわち、対向部32に配設される外部電子部品からの熱が対向部32を介して伝達され、ケース3内部の雰囲気温度が上昇することを、対向部32に形成された第2冷媒流路42によって抑制することができる。
【0032】
また、上述のごとく、第2冷媒流路42は、ケース3における対向部32の全体ではなく、その一部に形成されている。そのため、対向部32において第2冷媒流路42が形成されていない部分に、対向部32に配設される外部電子部品61等を配置したり、固定したりするスペースを確保することができる。これにより、ケース3の対向部32に第2冷媒流路42を形成しても、外部電子部品61等の配置、固定を容易に行うことができる。
【0033】
このように、本例によれば、ケース3内部の雰囲気温度の上昇を効果的に抑制することができる電子回路装置1を提供することができる。
【0034】
(実施例2)
本例は、図3に示すごとく、第2冷媒流路42の構成を変更した例である。
本例では、同図に示すごとく、第1冷媒流路41と第2冷媒流路42とは、ケース3における搭載部31と対向部32とが対向する方向において、その一部が重なっている。すなわち、対向部32に形成された第2冷媒流路42の一部は、搭載部31と対向部32とが対向する方向において、搭載部31に形成された第1冷媒流路41に対向している。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0035】
本例の場合には、第1冷媒流路41及び第2冷媒流路42を流通する冷媒によって、ケース3の搭載部31側及び対向部32側からケース3内部の雰囲気温度を低減する効果をさらに高めることができる。これにより、ケース3内部の雰囲気温度の上昇をより一層抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0036】
1 電子回路装置
21 発熱電子部品
3 ケース
31 搭載部
311 流路形成部
312 非流路形成部
32 対向部
322 対向領域
41 第1冷媒流路
42 第2冷媒流路
61 外部電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱電子部品と、
該発熱部品を収容するケースとを備え、
該ケースは、上記発熱電子部品を搭載する搭載部と、該搭載部に対向配置され、該搭載部とは反対側に外部電子部品が配設される対向部とを有し、
上記搭載部は、上記発熱電子部品が搭載され、該発熱電子部品を冷却する冷媒を流通させる第1冷媒流路が形成された流路形成部と、上記第1冷媒流路が形成されていない非流路形成部とを有し、
上記対向部の一部には、冷媒を流通させる第2冷媒流路が形成されており、
該第2冷媒流路は、少なくとも、上記対向部における上記搭載部の上記非流路形成部に対向する対向領域に形成されていることを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路装置において、上記第1冷媒流路と上記第2冷媒流路とは、上記ケースにおける上記搭載部と上記対向部とが対向する方向において、その一部が重なっていることを特徴とする電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−58556(P2013−58556A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195205(P2011−195205)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】