説明

電子回路装置

【課題】半導体部品により発せられた熱を効率良く放散させることができる電子回路装置を提供すること。
【解決手段】電子回路装置100において、放熱パッド103が、放熱台101と接する第1の面と反対の半導体部品102の第2の面と接する。これにより、放熱台101のみならず放熱パッド103からも放熱されるので、半導体部品102によって発せられた熱を効率よく放散することができる。また、放熱パッド103は、弾性を有する部材から構成され、固定部材104によって圧接されて半導体部品102の上面に押しつけられる。これにより、半導体部品102の上面に凹凸が存在している場合、又は、半導体部品102の寸法に多少のばらつきがある場合でも、放熱パッド103を半導体部品102に良好に密着させることができる。その結果、半導体部品102によって発せられた熱の放散効率をさらに高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装される半導体部品を備える電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的に大きな電流を流して発熱を伴うパワーMOSFETやパワーダイオードなどの半導体部品が搭載された電子回路装置がある。このような半導体部品は、一般に、半導体素子を樹脂でモールドしてなるブロック形状の本体部と、半導体素子の端子を外部に導くリード線とから構成され、リード線が本体部の一端側から外部に導出されて構成される。
【0003】
また、以前より、電子回路装置において、回路基板にリード線を介して接続される半導体部品を放熱板に接触させて冷却する構成も知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の電子回路装置においては、放熱板と半導体部品とをクリップにより直接的に挟持する。これにより、放熱板と半導体部品とを接触させて、半導体部品において発せられた熱を放熱部材へ逃がすことができる。
【0004】
ここで、上記電子回路装置のクリップは放熱板と半導体部品とを長期間安定的に固定する必要があるので、高い強度が要求される。従って、クリップの材料には、硬度の高いものを選択する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−077452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の電子回路装置では、以下の理由により、半導体部品において発せられた熱を効率良く放散することができない。
(1)第1の理由は、半導体部品から吸熱する部分が、主に、放熱板との接触面に限られることである。クリップも極わずかに放熱するが、上記の通り、クリップの材料には硬度の高いものが要求されるため、熱伝導率の高い材料を選択できない。なぜならば、熱伝導率の高い材料(例えば、アルミ、銅など)は、硬度が低いからである。
(2)第2の理由は、半導体部品の寸法にばらつきが生じ、このばらつきのためにクリップを半導体部品に密着させることの困難性である。
(3)第3の理由は、放熱板と接触する半導体部品の面に通常凹凸ができるので、放熱板と半導体部品とが密着しないことである。
【0007】
また、従来、一般的に為されている、半導体部品を放熱板に直接的に螺着させる方法でも、上記した第1の理由により、熱を効率良く放散することができない。
【0008】
本発明の目的は、半導体部品により発せられた熱を効率良く放散させることができる電子回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の電子回路装置は、半導体素子を内蔵する半導体部品と、前記半導体部品の第1の面と接触し、前記半導体部品によって発せられる熱を放散する第1の放熱部材と、弾性を有する部材であって前記第1の面と反対の前記半導体部品の第2の面に接触し、前記半導体部品によって発せられる熱を放散する第2の放熱部材と、前記第2の放熱部材と圧接し、前記第2の放熱部材及び前記半導体部品を前記第1の放熱部材に押しつけることにより固定する固定部材と、を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体部品により発せられた熱を効率良く放散させることができる電子回路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子回路装置の要部の斜視図
【図2】図1の電子回路装置の要部のA−A矢視断面図
【図3】図1の電子回路装置の要部の分解斜視図
【図4】固定部材の本体の斜視図
【図5】固定部材の本体の斜視図
【図6】固定部材の本体の6面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電子回路装置100の要部の斜視図、図2は、図1の電子回路装置100の要部のA−A矢視断面図、図3は、電子回路装置100の要部の分解斜視図である。
【0014】
電子回路装置100は、放熱台101と、半導体部品102と、放熱パッド103と、固定部材104とを有する。
【0015】
放熱台101は、高い熱伝導性を有する部材により構成される。放熱台101には、半導体部品102が配設され、放熱台101の上面と半導体部品102の下面とが接触する。これにより、半導体部品102によって発せられる熱が、放熱台101によって吸熱されると共に放散される。
【0016】
具体的には、放熱台101は、ベースとなる基台111と、台座部112と、固定台113とから構成される。台座部112は、基台111の上面から突出するように設けられている。さらに、台座部112は、略平面の基台111の上面に対して斜めにされた平面上の傾斜面S1を有している。また、固定台113も、基台111の上面から突出するように設けられている。固定台113の上面S2は、基台111の上面と略平行である。さらに、固定台113の上面S2には、固定ネジと螺合するネジ穴H1が設けられている。そして、台座部112と固定台113とは、一定の離間距離を空けて配置される。
【0017】
半導体部品102は、例えばパワーMOSFETやパワーダイオードなど、比較的に大きな駆動系の電流が流れて、発熱の伴う半導体モジュールである。半導体部品102は、半導体素子を樹脂でモールドしてなる本体部121と、半導体素子の端子を外部に導くリード線122等から構成される。本体部121は、一方の幅が狭いブロック形状をしている。
【0018】
リード線122は本体部121の幅の狭い側から外部に導出されている。リード線122は、本体部121からまっすぐ(すなわち傾斜面S1と平行な方向)に導出された第1部分と、途中で曲げられて回路基板(図示せず)の基板面に対して垂直な方向に向いた第2部分とを有する。
【0019】
半導体部品102の上には、放熱パッド103が配設され、放熱パッド103の下面と半導体部品102の上面とが接触する。これにより、半導体部品102によって発せられる熱が、放熱パッド103によって吸熱されると共に放散される。
【0020】
放熱パッド103は、放熱パッド103は、弾性を有している。すなわち、放熱パッド103は、押圧により塑性変形する粘性層を有している。また、放熱パッド103は、高い熱伝導性を有する部材により構成される。放熱パッド103は、例えば、シリコン製又はアクリルゴム製である。
【0021】
固定部材104は、放熱パッド103の上面を押圧することにより、放熱パッド103及び半導体部品102を放熱台101へ押しつけて固定する。
【0022】
具体的には、固定部材104は、本体141と、固定ネジ142とを有する。本体141には、固定ネジ142を挿通する挿通孔H2が設けられる。そして、固定ネジ142が挿通孔H2に通されてネジ穴H1と螺合することにより、固定部材104が放熱台101に固定(螺着)されるとともに本体141によって放熱パッド103が押圧される。
【0023】
図4及び図5は、本体141をそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。また、図6は、本体141の6面図である。図6(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は底面図、(e)は右側面図、(f)は左側面図である。
【0024】
本体141は、圧接部145と、取り付け部146と、第1の側面部147と、第2の側面部148と、リブ149とを有し、それらが一体成型されている。ここでは、本体141は、アルミ製であり、高い熱伝導性を有している。そして、本体141は、例えば、アルミダイカスで製造される。アルミダイカストは、高圧鋳造法とも呼ばれ、金型に溶湯を低速で層流充填し、外部からの高圧力下で凝固させ成型する鋳造方法である。
【0025】
取り付け部146には、挿通孔H2が設けられる。この挿通孔H2を通された固定ネジ142によって放熱台101に取り付け部146が螺着されることにより、圧接部145が放熱パッド103の上面を押圧する。
【0026】
また、取り付け部146には、挿通孔H2が設けられた面及び第2の側面部148の両方と略直角を為すように、リブ149が設けられる。挿通孔H2が設けられた面からリブ149の上面までの高さは、第2の側面部148に近づくにつれて高くなっている。
【0027】
圧接部145は、板状であり、広い面の形状が矩形である。圧接部145においては、その広い面の隣接する2辺から、第1の側面部147及び第2の側面部148(つまり、2つの壁)が下側に立設される。そして、第1の側面部147と第2の側面部148とは、その2辺に挟まれる頂点において結合されている。すなわち、第1の側面部147と第2の側面部148とは交差している。また、この第1の側面部147と第2の側面部148とによって、半導体部品102の側面が覆われる。
【0028】
第2の側面部148は、一端部において圧接部145と結合され、他端部において取り付け部146と略直角に結合される。すなわち、第2の側面部148は、圧接部145と取り付け部146とを連結している。
【0029】
第1の側面部147における圧接部145との結合部と反対側の面は、取り付け部146を適切に螺着したときに、放熱台101に当接する。
【0030】
以上のように本実施の形態によれば、電子回路装置100において、放熱パッド103が、放熱台101と接する第1の面と反対の半導体部品102の第2の面と接する。
【0031】
これにより、放熱台101のみならず放熱パッド103からも放熱されるので、半導体部品102によって発せられた熱を効率よく放散することができる。
【0032】
また、放熱パッド103は、弾性を有する部材から構成され、固定部材104によって圧接されて半導体部品102の上面に押しつけられる。
【0033】
これにより、半導体部品102の上面に凹凸が存在している場合、又は、半導体部品102の寸法に多少のばらつきがある場合でも、放熱パッド103を半導体部品102に良好に密着させることができる。その結果、半導体部品102によって発せられた熱の放散効率をさらに高めることができる。
【0034】
そして、半導体部品102は、固定部材104と放熱パッド103とが圧接することにより、弾性を有する部材から構成される放熱パッド103によって放熱台101に押しつけられる。
【0035】
また、固定部材104は、取り付け部146が1つの固定ネジ142によって放熱台101に螺着されることにより、放熱台101に固定される。
【0036】
これにより、固定部材104の固定に要する、放熱台101上のスペースを狭くすることができる。この結果として、電子回路装置100の小型化を実現できる。
【0037】
また、第1の側面部147は、圧接部145と取り付け部146とを連結する第2の側面部148と交差する。
【0038】
これにより、圧接部145と第2の側面部148との結合部の強度を補完することができる。
【0039】
また、第1の側面部147における圧接部145との結合部と反対側の面は、取り付け部146を適切に螺着したときに、放熱台101に当接する。
【0040】
これにより、固定ネジ142を締めすぎることを防止できる。この結果として、固定ネジ142の締めすぎによる、固定部材104、放熱パッド103、及び半導体部品102の破損を防止できる。
【0041】
また、リブ149は、取り付け部146及び第2の側面部148と略直交し、取り付け部146及び第2の側面部148の両方と結合する。
【0042】
これにより、取り付け部146と第2の側面部148との結合部の強度を補完することができる。
【0043】
また、固定部材104の本体141は、アルミ製であることが好ましい。これにより、熱伝導性を高めることができる。
【0044】
また、放熱パッド103は、シリコン製又はアクリルゴム製であることが好ましい。シリコンは、熱衝撃に強く、耐薬品性も有する。また、アクリルゴムは、接点不良の原因となる低分子シロキサンをシリコンが発生させてしまうのに対して、それを発生しない点で有利である。
【0045】
なお、上記説明では、放熱台101が傾斜面S1を有する台座部112を備えるものとして説明を行った。しかしながら、これに限定されるものではなく、台座部112の上面が基台111の上面と略平行であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の電子回路装置は、半導体部品により発せられた熱を効率良く放散させることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0047】
100 電子回路装置
101 放熱台
102 半導体部品
103 放熱パッド
104 固定部材
111 基台
112 台座部
113 固定台
121 本体部
122 リード線
141 本体
142 固定ネジ
145 圧接部
146 取り付け部
147 第1の側面部
148 第2の側面部
149 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を内蔵する半導体部品と、
前記半導体部品の第1の面と接触し、前記半導体部品によって発せられる熱を放散する第1の放熱部材と、
弾性を有する部材であって前記第1の面と反対の前記半導体部品の第2の面に接触し、前記半導体部品によって発せられる熱を放散する第2の放熱部材と、
前記第2の放熱部材と圧接し、前記第2の放熱部材及び前記半導体部品を前記第1の放熱部材に押しつけることにより固定する固定部材と、
を具備する電子回路装置。
【請求項2】
前記固定部材は、
1つの固定ネジにより前記第1の放熱部材に螺着する取り付け部と、
前記取り付け部が螺着されることにより、前記第2の放熱部材と圧接する圧接部と、
を具備する
請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記圧接部から前記第1の放熱部材に向けて突設され且つ互いに交差する第1の壁及び第2の壁を具備し、
前記第1の壁は、前記圧接部と前記取り付け部とを連結し、
前記第1の壁及び前記第2の壁は、前記半導体部品の前記第1の面及び前記第2の面以外の側面を覆う、
請求項2に記載の電子回路装置。
【請求項4】
前記固定部材は、アルミ製である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項5】
前記第2の放熱部材は、押圧により塑性変形する粘性層を有する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記第2の放熱部材は、シリコン製又はアクリルゴム製である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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