説明

電子書籍装置

【課題】メモ等をディスプレイに直接触れることなく入力でき、しかも、通常の筆記用具を使用して、メモ等の筆跡を用紙上に残しながら、そのメモ等の軌跡を電子データとして同時に入力することも可能な電子書籍装置を提供する。
【解決手段】電子書籍装置は、ディスプレイDを有する電子書籍端末Eと、矩形状のフレーム1に取り付けられた少なくとも一組の発光素子と受光素子を備え、上記フレーム1内に位置する入力体に関連して生じる、上記発光素子から受光素子に到達する光の遮断を検知することにより、この入力体のフレーム1内における位置情報を出力する光学式入力手段Sと、から構成され、この光学式入力手段Sの枠内から露呈したタッチエリアTに、メモ等を書き込むと、その移動軌跡が、上記ディスプレイDに表示された電子書籍の情報に重ねて表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な入力手段を備える電子書籍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、書籍の文字や写真等の情報が電子化されて提供されるようになってきており、その電子化情報を表示するものとして電子書籍端末が普及してきている。その電子書籍端末のなかには、上記書籍の文字等を表示するだけでなく、メモ等を入力することができるよう、上記書籍の文字等を表示するディスプレイがタッチセンサ付きのもの(タッチパネル)になっているものがある(例えば、特許文献1を参照)。すなわち、このものは、上記書籍の文字等が表示されているディスプレイ(タッチパネル)に、指先や専用のペン等を接触させ、その指先等を動かすことにより、その指先等の移動軌跡がメモや付箋等として、上記ディスプレイに出力されるようになっている。
【0003】
上記のような電子書籍端末のディスプレイ(タッチパネル)は、機器を操作する人の指や専用のペン等の触れた位置を、二次元(x−y方向)で検出する触れ位置検出手段を備えており、上記電子書籍端末を操作するとともに、上記ディスプレイ上に、電子書籍の情報(表示)と連携して、入力したメモや付箋等を表示できるようになっている。この触れ位置検出手段(タッチセンサ)としては、通常、価格や性能,耐久性等の観点から、抵抗膜方式や静電容量方式,電磁誘導方式等を採用したものが多く用いられている。これらの方式のタッチパネルは、そのパネルの表面近傍に、多数の電気的な接点がマトリックス状に形成された構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−147871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記電子書籍端末では、指先やペン等の先端が、操作や入力を行う際にディスプレイの表面に直接接触するため、たとえディスプレイに防傷処理等が施されていたとしても、使用頻度が多くなるにつれて傷が発生し、その傷により、ディスプレイに表示される文字等の視認性が低下するという問題がある。しかも、入力した上記メモや付箋等は、上記電子書籍端末にデジタルデータ(電子データ)として保存(記憶)することができるが、コンピュータ,電子情報機器等の操作に不慣れな人や、高齢者等を中心に、筆跡や文字等がディスプレイ等に仮想表示されるより、紙等の媒体上に直接筆跡が残る形でメモや付箋等を残したい、という要望が依然として根強い。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、メモ等をディスプレイに直接触れることなく入力でき、しかも、通常の筆記用具を使用して、メモ等の筆跡を用紙上に残しながら、そのメモ等の軌跡を電子データとして同時に入力することも可能な電子書籍装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の電子書籍装置は、ディスプレイを備えた電子書籍端末と、下記(A)の枠状の入力手段とを備え、上記入力手段の枠内で入力体を移動させることにより、この入力体の移動軌跡を、上記ディスプレイに表示された電子書籍の情報に重ねて表示するという構成をとる。
(A)矩形状のフレームと、これに取り付けられた少なくとも一組の発光素子と受光素子とから構成され、上記フレーム内に位置する入力体に関連して生じる、上記発光素子から受光素子に到達する光の遮断を検知することにより、この入力体のフレーム内における位置情報を出力する光学式入力手段。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子書籍装置は、入力体の軌跡(触れ位置)の検知手段として、上記(A)の枠状の光学式入力手段を備えている。そのため、入力に専用のペンは不要であり、メモ等の入力に用いる入力体として、人の指や、通常の筆記に用いるペン等の細長い物を用いることができる。また、その入力は、ディスプレイとは別体として構成された上記(A)の入力手段の枠内で、上記入力体を移動させて行うことから、入力の際に、この入力体は上記電子書籍端末のディスプレイに直接接触することがない。そのため、本発明の電子書籍装置は、メモ等の入力時に、上記ディスプレイに傷をつけることがない。しかも、触れ位置の検出面に、電気的な(物理的な)接点がなく、耐久性に優れるうえ、埃や汚れ等の影響も受けにくい。
【0009】
また、上記光学式入力手段が枠状であるため、その枠の下あるいは枠内に紙(用紙)を載置すれば、この枠内で、筆記用具等を使用して、上記用紙上にメモ等を直接書き込むことができる。しかも、上記用紙に書き込んだメモ等は、情報を記録した紙媒体として保存可能なことは勿論、上記光学式入力手段の入力体の軌跡(触れ位置)の検知手段により、自動的に電子データに変換されて、上記電子書籍のディスプレイ上に、電子書籍の情報に重ねて表示されるとともに、入力手段あるいは電子書籍の記憶手段等に保存(記憶)される。
【0010】
これにより、本発明の電子書籍装置は、電子化することに特別な配慮を払うことなく、メモや付箋等を、通常の筆記用具で枠内に載置した用紙に直接書き込むだけで、その筆記用具の移動軌跡が自動的に電子化される。また、上記電子化された情報は、入力手段あるいは電子書籍の記憶手段等から容易に引き出す(再生する)ことができ、他者との共有化や、知識や記録等の保管も簡単に行うことができて、便利である。
【0011】
また、本発明の電子書籍装置のなかでも、上記(A)の枠状入力手段のフレームに、その枠状において互いに対向する一方の部分に複数の発光素子が並んで配置され、他方の部分に複数の受光素子が並んで配置され、各発光素子および受光素子が上記フレームの内側に向かって位置決めされ、上記発光素子から受光素子に向かって出射された光が、上記フレーム内に、縦横に交差する光の格子を形成するようになっているものは、これら発光素子(光源)として発光ダイオード(LED)等を使用し、受光素子としてフォトダイオード(PD)を用いる等、汎用的な部品を使用することができる。したがって、上記光学式入力手段を安価に構成できる点で有利である。また、耐衝撃に優れ、耐久性があるというメリットがある。
【0012】
そして、本発明の電子書籍装置において、上記(A)の枠状入力手段のフレームの四つの角部のうち、一つの辺の両側の角部に、上記発光素子と複数の受光素子からなる受光素子アレイとを上下に重ねたモジュールがそれぞれ配置され、これらモジュールの間の上記一つの辺を除く三つの辺の内側面に、テープ状の再帰性光反射体が配設され、一方のモジュールの発光素子から出射された光が、上記再帰性光反射体により反射されて、この一方のモジュールの受光素子アレイに再帰入射するようになっているものは、少ない部品点数で、三角測量により、上記筆記用具の先端の位置を特定できる。また、この電子書籍装置も、汎用的な部品を用いて、安価に構成することができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における電子書籍装置の全体構成を説明する図である。
【図2】第1実施形態の電子書籍装置の光学式入力手段の概略構成を説明する平面図である。
【図3】(a)は第2実施形態の電子書籍装置の光学式入力手段の概略構成を説明する平面図であり、(b)はそのZ部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における電子書籍装置の全体構成を説明する図である。
この電子書籍装置は、見開き型のブックカバーBの左側内面BLに、ディスプレイDを有する電子書籍端末Eが配置され、上記見開きの右側内面BRに、四角枠状のフレーム1を有する光学式入力手段Sが配置されており、この光学式入力手段Sの枠内で、指や筆記用具等、入力に用いる物体(入力体)を移動させることにより、この入力体の移動軌跡を、上記ディスプレイDに表示された電子書籍の情報に重ねて表示することができるようになっている。また、上記光学式入力手段Sは、図1に示すように、四角枠状(矩形状)のフレーム1と、これに取り付けられた少なくとも一組の発光素子と受光素子(図示省略)とから構成され、このフレーム1内の入力体により生じる、上記発光素子から受光素子に到達する光の遮断(遮光)を検知することにより、入力体のフレーム1内における位置情報を出力するようになっている。このように、電子書籍端末Eに、光学的な手法で入力情報を検知する光学式入力手段Sを設けたことが、本発明の電子書籍装置の特徴である。
【0016】
上記光学式入力手段Sは、上記ブックカバーBの見開き面に対して着脱自在に取り付けられており、その枠(フレーム1)内には、通常、指等を滑りやすくするとともに傷付きを防止するフィルム等が貼り付けられ、指等の触れ位置を検出するためのタッチエリアTが形成されている。なお、上記光学式入力手段Sは、入力体のフレーム1内における位置情報(移動軌跡)を記憶するための記憶手段Mを備えている。
【0017】
また、上記光学式入力手段Sは、上記ブックカバーBに対して着脱自在であるため、この光学式入力手段SとブックカバーB(右側内面BR)との間に、筆記用の用紙(通常の筆記用具で書くことのできる紙)を挟んで固定したり、用紙を新しいものに交換したり、といった作業が簡単に行えるようになっている。これにより、筆記用具を用いて、上記枠状の光学式入力手段S内に固定あるいは載置した用紙に、直接、メモ等を書き込むことができる。そして、用紙を新しいものに交換しても、上記記憶手段Mに記憶した内容(移動軌跡)を、上記電子書籍端末EのディスプレイDに再度表示(再生)したり、パーソナルコンピュータ等を利用して、外部の情報機器に引き出したりすることもできる。
【0018】
なお、上記光学式入力手段Sには、電子書籍端末Eと接続するための通信(電源)ケーブル(ない場合もある)や、これを駆動するためのバッテリ、上記発光素子および受光素子のドライバ等の制御手段、パーソナルコンピュータ等の情報機器と通信するための通信手段(有線または無線)が、他の辺より幅広の太枠部1c等に内蔵されている(図示は省略)。
【0019】
つぎに、上記電子書籍装置を構成する電子書籍端末EおよびブックカバーBについて説明する。上記ブックカバーBは、図1のように、略長方形で、かつ、そのほぼ中央で二つに折りたたむことのできる、見開き型となっており、その中央より左側内面BLが、上記電子書籍端末Eを固定する部位に、その中央より右側内面BRが、上記光学式入力手段Sを着脱自在に固定する部位になっている。なお、電子書籍端末Eの本体は、左側内面BLの内部に組み込まれており、その表面の大きな開口から、電子書籍端末Eの表示部(ディスプレイD)のみが露出するようになっている。
【0020】
上記電子書籍端末Eは、電子化された書籍や写真等の情報を、ディスプレイDに表示するとともに、上記光学式入力手段Sからの情報(メモや付箋等の情報)をディスプレイDに表示する。これにより、上記ディスプレイDには、上記書籍の文字等の情報に、上記光学式入力手段Sで入力したメモ等の情報が重ね合わさった状態で表示される。また、電子書籍端末Eには、光学式入力手段Sで入力したメモ等を、その入力した位置に対応するディスプレイDの位置に表示させるために、光学式入力手段Sが検知した入力体の触れ位置(座標情報)を、ディスプレイDの画面上の座標に変換し表示するソフトウェア(プログラム)が組み込まれている。なお、上記書籍の文字等の情報は、通常、上記電子書籍端末E内のメモリや、ハードディスク,メモリカード等の情報記憶媒体に予め記憶させておき、その情報記憶媒体から出力される。また、上記ディスプレイDに表示された、上記書籍の文字等の情報と、上記光学式入力手段Sで入力したメモ等の情報とを、重ね合わせた状態で、上記情報記憶媒体に記憶することもできる。
【0021】
上記電子書籍端末EのディスプレイDとしては、例えば、液晶パネル,有機ELパネル,電子ペーパ等が用いられる。また、そのディスプレイDは、タッチパネルであってもよいし、そうでなくてもよい。
【0022】
上記のような電子書籍装置は、入力体の軌跡(触れ位置)の検知手段として、電子書籍端末E(ディスプレイD)とは別体として構成された枠状の光学式入力手段Sを備えている。そのため、その入力は、上記光学式入力手段Sの枠内(フレーム1内)で上記入力体を移動させて行うことから、入力の際に、この入力体は上記電子書籍端末EのディスプレイDに直接接触することがない。そのため、この実施の形態の電子書籍装置は、メモ等の入力時に、上記ディスプレイDに傷をつけることがない。しかも、触れ位置の検出面(タッチエリアT)に、電気的な接点がなく、耐久性に優れるうえ、埃や汚れ等の影響も受けにくいという利点がある。
【0023】
つぎに、上記電子書籍装置の光学式入力手段の具体的な例として、光学式入力手段(S1)のフレーム1内に、発光素子(光源)として多数の発光ダイオード(LED)を並べて配置し、受光素子として多数のフォトダイオード(PD)を並べて配置することにより、この光学式入力手段S1の枠内(タッチエリアT)に、縦横に直交する光の格子を形成する、第1実施形態の電子書籍装置について説明する。なお、ブックカバーBおよびその左側内面BLに配設されるディスプレイD付き電子書籍端末Eは、図1に記載の実施の形態と同様であるため、その図示と説明を省略する。
【0024】
図2は、第1実施形態における電子書籍装置の光学式入力手段(S1)の概略構成を説明する平面図である。なお、この図においては、説明を容易にするために、フレーム1の短辺X1,X2方向を横方向(x方向)とし、フレーム1の長辺Y1,Y2方向を縦方向(y方向)とするとともに、フレーム1内側の格子状の光(不可視の赤外光)を二点鎖線で表示している。また、LED,PDの個数と格子状の光の本数は数を省略し、このフレーム1内の電気配線等を点線で表示するとともに、光学式入力手段S1を駆動するためのバッテリや、パーソナルコンピュータ等の情報機器と通信するための通信手段(ケーブルまたは無線アンテナ)等は、図示を省略している(後記の図3も同様)。
【0025】
この第1実施形態における電子書籍装置の光学式入力手段S1は、図2のように、枠状のフレーム1内側の四角状の領域(タッチエリアT)における指等の先端位置(x−y座標)を検出する触れ位置検出手段と、この触れ位置検出手段により得られた指等の先端位置の移動軌跡情報(x−y位置の変化)を記憶するとともに、発光素子および受光素子の制御手段を兼用する記憶手段MC(内蔵)と、を備える。
【0026】
上記光学式入力手段S1は、そのフレーム1部分(内部)に、上記触れ位置検出手段の発光部として、フレーム1内に並べて配置された多数のLED2,2,・・・からなる光源が設けられており、上記各LED2が配置されたフレーム1の部位(辺X1,Y1)に対向するフレーム1部分(辺X2,Y2)には、これら各LED2に対応する多数のPD3,3,・・・からなる受光部が形成され、これら各LED2とPD3とは、上記枠状のフレーム1の内縁に沿って、その先端が内側に向くように並べて位置決めされている。そして、各LED2およびPD3のコントローラ(制御手段)を兼用する記憶手段MCの制御により、上記各LED2を一斉に、あるいは、走査方向に順次発光させることによって、フレーム1内の四角状の検知領域に、縦横に直交する光の格子(二点鎖線)が形成される。
【0027】
なお、上記発光素子(光源)として使用するLED2としては、近赤外(波長:700〜2500nm)の光を発光するタイプの赤外LED(赤外発光ダイオード)が好ましい。また、受光素子としては、上記フォトダイオード(PD)の他、多数の受光素子がバー状あるいはアレイ状に一列に並ぶリニアセンサアレイや、イメージセンサ等を用いてもよい。
【0028】
上記第1実施形態における光学式入力手段S1を用いた指等の触れ位置の検出は、以下のような手順で行われる。すなわち、まず、校正(キャリブレーション)として、上記発光部のLED2を一つずつ(端から)順次発光させながら、このLED2に対応(対向)するPD3に到達する光(格子光)の強度を、発光時と未発光時で測定し、各PD3ごとに、遮光による物体の検知・非検知のしきい値を決定して、上記コントローラを兼用する記憶手段MCに記憶する。
【0029】
つぎに、上記コントローラを兼用する記憶手段MCにより、上記各LED2を順次発光させ、光学式入力手段S1の検知領域内を走査(スキャン)した状態で、この光学式入力手段S1の枠内から露呈したタッチエリアTの部分に、指等の入力体の先端を降ろすと、図2のように、上記枠内を通る格子状の光の一部が入力体の先端により遮断され、その遮断部分が上記触れ位置検出手段の該当PD3により検知される。そして、この光の遮断により、上記枠内における入力体の座標位置(x−y軸、図2中の「触れ位置」を参照)が特定され、その座標が前記電子書籍端末Eに出力(あるいはディスプレイDに表示)されるとともに、上記記憶手段MCに記憶される。
【0030】
また、上記入力体を移動させてメモや付箋等を書き込むと、その移動に伴う上記入力体の先端の軌跡(メモ等の書き込み情報)が検出され、その軌跡がデジタルデータ(電子データ)として上記電子書籍端末Eに出力され、上記記憶手段MCにも記憶される。
【0031】
さらに、入力体としてペン等の筆記用具を用いる場合は、まず、上記光学式入力手段S1の下側(紙面裏側)あるいはフレーム1の枠内に、筆記用の用紙を載置して固定する。ついで、検知領域内を走査(スキャン)した状態で、この枠内から露呈したタッチエリアTの部分に、ペン等の筆記用具の先端を降ろすと、上記枠内を通る格子状の光の一部が筆記用具の先端により遮断され、この遮断部分が上記触れ位置検出手段の該当PD3により検知される。そして、上記書き込みと同時に、先端の軌跡(メモ等の書き込み情報)が検出され、その軌跡がデジタルデータ(電子データ)として上記電子書籍端末Eに出力され、上記記憶手段MCにも記憶される。
【0032】
上記のような光学式入力手段S1を備える第1実施形態の電子書籍装置によれば、メモ等の入力を、上記光学式入力手段Sの枠内(タッチエリアT)で行うことから、その入力の際に、上記電子書籍端末EのディスプレイDに傷をつけることがない。しかも、上記タッチエリアTには電気的な接点がなく、耐久性に優れるうえ、埃や汚れ等の影響も受けにくいという利点がある。
【0033】
さらに、上記第1実施形態の光学式入力手段S1は、発光素子(光源)として発光ダイオード(LED)等を使用し、受光素子としてフォトダイオード(PD)を用いる等、汎用的な部品を使用することができるため、この光学式入力手段S1および電子書籍装置全体を安価に構成することができる点で有利である。
【0034】
つぎに、光学式入力手段(S2)のフレーム1の二つの角部に、発光素子と受光素子アレイとからなるモジュール(C1,C2)をそれぞれ配置し、これら二つのモジュールを用いて、枠内の入力体の先端位置を三角測量法により特定する、第2実施形態の電子書籍装置について説明する。なお、上記第1実施形態と同様、ブックカバーBおよびディスプレイD付き電子書籍端末Eの図示と説明を省略する。
【0035】
図3(a)は、第2実施形態における電子書籍装置の光学式入力手段(S2)の概略構成を説明する平面図であり、図3(b)は、そのZ部拡大図である。なお、これらの図においても、フレーム1の短辺X1,X2方向を横方向(x方向)とし、フレーム1の長辺Y1,Y2方向を縦方向(y方向)とするとともに、フレーム1下部の太枠部1c内に配置されるバッテリや通信手段等の図示を省略している。
【0036】
この第2実施形態における電子書籍装置の光学式入力手段S2も、枠状のフレーム1内側の四角状の領域(タッチエリアT)における指等の先端位置(x−y座標)を検出する触れ位置検出手段と、この触れ位置検出手段により得られた指等の先端位置の移動軌跡情報(x−y位置の変化)を記憶するとともに、上記モジュールC1,C2の制御手段を兼用する記憶手段MC(内蔵)と、を備えている。
【0037】
上記第2実施形態の光学式入力手段S2が、先の第1実施形態の光学式入力手段S1と異なる点は、そのフレーム1の四つの角部のうち、一つの辺(本例においてはX2)の両側の角部1a,1bに、図3(b)のような、発光素子(LED2)と受光素子アレイ(イメージセンサ4)とを上下に組み合わせた受発光モジュール(カメラモジュールC1,C2)がそれぞれ配置され、これらカメラモジュールC1,C2の間の上記一つの辺(X2)を除く三つの辺(X1,Y1,Y2)の内側面に、図3(a)のように、テープ状の再帰性光反射体(再帰反射テープ5)が貼り付けられている点である。なお、記憶手段MCは、上記第1実施形態と同様、LED2やイメージセンサ4のコントローラ(制御手段)を兼用するようになっている。
【0038】
この構成により、上記第2実施形態における光学式入力手段S2は、各カメラモジュールC1,C2の各LED2から出射された光が、上記再帰反射テープ5の反射により、出射元のカメラモジュールC1,C2に向かって再帰し、その枠内に、図3(a)に示すような、光が各カメラモジュールC1,C2ごとに波紋様に広がる、放射状の光の交差が生じる。
【0039】
なお、上記カメラモジュールC1,C2の発光素子(光源)としては、近赤外(波長:700〜2500nm)の光を発光するタイプの赤外LED(赤外発光ダイオード)が好ましい。また、受光素子としては、CCD,CMOS等のイメージセンサや、多数の受光素子が一列に並ぶCMOSリニアセンサアレイ等を用いることができる。
【0040】
また、上記フレーム1の三つの辺(X1,Y1,Y2)の内側面に取り付ける再帰性光反射体としては、マイクロプリズム式またはガラスビーズ式のどちらでもよい。さらに、上記例では、取扱いが容易なように、テープ状の成形体を用いているが、その代わりに、上記三つの辺(X1,Y1,Y2)の内側面に、光再帰性を有するの塗料等を塗布してもよい。
【0041】
上記第2実施形態の光学式入力手段S2を用いた指等の触れ位置の検出は、以下のような手順で行われる。すなわち、まず、校正(キャリブレーション)として、上記カメラモジュールC1,C2の各LED2を発光させながら、各カメラモジュールC1,C2の各イメージセンサ4に再帰する光(再帰光)の強度を、発光時と未発光時で測定し、各カメラモジュールC1,C2ごとに、遮光による物体の検知・非検知のしきい値を決定して、上記記憶手段MCに記憶する。
【0042】
つぎに、上記コントローラを兼用する記憶手段MCにより、上記各LED2を発光させた状態で、この光学式入力手段S2の枠内から露呈したタッチエリアTの部分に、指等の入力体の先端を降ろすと、図3(a)のように、上記枠内を通る交差状の光の一部が入力体の先端により遮断され、その遮断部分が上記各カメラモジュールC1,C2の該当受光素子により検知される。また、検知された遮断(遮光)位置を、演算装置等(図示省略)を用いて三角測量法により求め、上記枠内における入力体の座標位置〔x−y軸、図3(a)中の「触れ位置」を参照〕を特定し、その座標を記憶手段MCが記憶する。
【0043】
また、上記入力体を移動させてメモや付箋等を書き込むと、その移動に伴う上記入力体の先端の軌跡(メモ等の書き込み情報)が検出,演算され、その軌跡がデジタルデータ(電子データ)として上記電子書籍端末Eに出力され、上記記憶手段MCにも記憶される。
【0044】
さらに、入力体としてペン等の筆記用具を用いる場合も、第1実施形態と同様、まず、上記光学式入力手段S2の下側(紙面裏側)あるいはフレーム1の枠内に、筆記用の用紙を載置して固定する。ついで、検知領域内を走査(スキャン)しながら、この枠内から露呈したタッチエリアTの部分に、ペン等の筆記用具の先端を降ろすと、上記枠内を通る交差状の光の一部が筆記用具の先端により遮断され、この遮断部分が上記触れ位置検出手段の該当PD3により検知される。そして、上記書き込みと同時に、先端の軌跡(メモ等の書き込み情報)が検出され、その軌跡がデジタルデータ(電子データ)として上記電子書籍端末Eに出力され、上記記憶手段MCにも記憶される。
【0045】
上記のような光学式入力手段S2を備える第2実施形態の電子書籍装置によれば、第1実施形態の電子書籍装置と同様、その入力の際に、上記電子書籍端末EのディスプレイDに傷をつけることがない。しかも、上記タッチエリアTには電気的な接点がなく、耐久性に優れるうえ、埃や汚れ等の影響も受けにくい。さらに、上記光学式入力手段S2は、発光素子(光源)として発光ダイオード(LED)等を使用し、受光素子としてCCD,CMOS等のイメージセンサを用いる等、汎用的な部品を使用することができるため、構成する光学部品の点数が少ないことと相俟って、電子書籍装置を安価に構成することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の電子書籍装置は、電子書籍端末のディスプレイを傷つけることなく、この電子書籍端末に、メモや付箋等の情報を入力することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 フレーム
B ブックカバー
D ディスプレイ
E 電子書籍端末
S,S1,S2 光学式入力手段
T タッチエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを備えた電子書籍端末と、下記(A)の枠状の入力手段とを備え、上記入力手段の枠内で入力体を移動させることにより、この入力体の移動軌跡を、上記ディスプレイに表示された電子書籍の情報に重ねて表示することを特徴とする電子書籍装置。
(A)矩形状のフレームと、これに取り付けられた少なくとも一組の発光素子と受光素子とから構成され、上記フレーム内に位置する入力体に関連して生じる、上記発光素子から受光素子に到達する光の遮断を検知することにより、この入力体のフレーム内における位置情報を出力する光学式入力手段。
【請求項2】
上記(A)の枠状入力手段のフレームに、その枠状において互いに対向する一方の部分に複数の発光素子が並んで配置され、他方の部分に複数の受光素子が並んで配置され、各発光素子および受光素子が上記フレームの内側に向かって位置決めされ、上記発光素子から受光素子に向かって出射された光が、上記フレーム内に、縦横に交差する光の格子を形成するようになっている、請求項1記載の電子書籍装置。
【請求項3】
上記(A)の枠状入力手段のフレームの四つの角部のうち、一つの辺の両側の角部に、上記発光素子と複数の受光素子からなる受光素子アレイとを上下に重ねたモジュールがそれぞれ配置され、これらモジュールの間の上記一つの辺を除く三つの辺の内側面に、テープ状の再帰性光反射体が配設され、一方のモジュールの発光素子から出射された光が、上記再帰性光反射体により反射されて、この一方のモジュールの受光素子アレイに再帰入射するようになっている、請求項1記載の電子書籍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−203577(P2012−203577A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66608(P2011−66608)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】