説明

電子機器のランド構造

【課題】 銅からなるランドと半田からなる接続部材とを接合した電子機器のランド構造において、ランドと接続部材との界面に形成される金属間化合物層に発生したクラックの進展をランドの途中で妨げることができるようにする。
【解決手段】 ランド23aの上面中央部に形成されたニッケル−金めっき層26と接続部材11との界面には第1の金属間化合物層27が形成されている。ランド23aの上面外周部と接続部材11との界面には、組成が前記第1の金属間化合物層とは異なる第2の金属間化合物層2が形成されている。そして、第2の金属間化合物層28にその外周部からクラックが発生し、このクラックが進展しても、第2の金属間化合物層28とこの第2の金属間化合物層28とは組成の異なる第1の金属間化合物層27との境界でクラックの進展を妨げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子機器のランド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器のランド構造には、例えば特許文献1に記載のように、銅からなるランドと半田からなるボール状の接続部材とを接合したものがある。この場合、CSP(chip size package)と呼ばれる半導体装置において、ランドと接続部材との接続信頼性を確保するため、ランドの上面の一部に銅からなる突起を設け、この突起を接続部材で覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3863161号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、接続部材を形成するための半田の組成が錫−銀−銅の組成である場合には、銅からなるランドおよび突起と接続部材との界面に銅−錫の組成である金属間化合物層が形成される。一方、接続部材に繰り返し落下や曲げ等の機械的負荷が加わると、金属間化合物層にその外周部からクラックが発生することがある。このような場合、上記従来の電子機器では、ランドおよび突起と接続部材との界面に金属間化合物層が連続して形成されているため、金属間化合物層に発生したクラックがランドの全体に亘って進展してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、金属間化合物層に発生したクラックの進展をランドの途中で妨げることができる電子機器のランド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電子機器のランド構造は、銅からなるランドと半田からなる接続部材とを接合した電子機器のランド構造において、前記ランドの一面の一部と前記接続部材との界面に第1の金属間化合物層が形成され、前記ランドの一面の他部と前記接続部材との界面に組成が前記第1の金属間化合物層とは異なる第2の金属間化合物層が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、金属間化合物層に発生したクラックの進展をランドの途中で妨げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態としてのランド構造を含む半導体装置の実装構造の要部の断面図。
【図2】図1に示す半導体装置の底面図。
【図3】図1に示す回路基板の一部の平面図。
【図4】図1に示す回路基板の製造に際し、当初準備したものの断面図。
【図5】図4に続く工程の断面図。
【図6】図5に続く工程の断面図。
【図7】図6に続く工程の断面図。
【図8】図7に示す回路基板上に半導体装置を実装する場合を説明するために示す断面図。
【図9】この発明の他の実施形態を説明するために示す回路基板一部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1はこの発明の一実施形態としてのランド構造を含む半導体装置の実装構造の要部の断面図を示す。半導体装置1は、一般的にはCSPと呼ばれるものであり、平面方形状のシリコン基板2を備えている。シリコン基板2の下面周辺部にはアルミニウム系金属等からなる複数の接続パッド3が設けられている。
【0010】
接続パッド3の中央部を除くシリコン基板2の下面には酸化シリコン等からなるパッシベーション膜4が設けられ、接続パッド3の中央部はパッシベーション膜4に設けられた開口部5を介して露出されている。パッシベーション膜4の下面にはポリイミド系樹脂等からなる保護膜6が設けられている。パッシベーション膜4の開口部5に対応する部分における保護膜6には開口部7が設けられている。
【0011】
保護膜6の下面には複数の配線8が設けられている。配線8は、保護膜6の下面に設けられた銅等からなる下地金属層9と、下地金属層9の下面に設けられた銅からなる上部金属層10との2層構造となっている。配線8の一端部8aは、パッシベーション膜4および保護膜6の開口部5、7を介して接続パッド3に接続されており、他端部はランド8bとなっており、その間は引き回し線部8cとなっている。
【0012】
配線8のランド8bの中央部を除く配線8および保護膜6の下面にはソルダーレジスト等からなるオーバーコート膜9が設けられ、配線8のランド8bの中央部はオーバーコート膜9に設けられた開口部10を介して露出されている。オーバーコート膜9の開口部10内およびその下方には半田からなるボール状の接続部材11が配線8のランド8bに接続されて設けられている。ここで、図2は図1に示す半導体装置1の底面図を示す。配線8のランド8bおよび接続部材11はマトリクス状に配置されている。
【0013】
図1に戻って説明を続けると、回路基板21は絶縁基板22を備えている。絶縁基板22の上面には銅箔等からなる複数の配線23が設けられている。配線23の先端部はランド23aとなっている。配線23のランド23aおよびその周囲を除く配線23および絶縁基板22の上面にはソルダーレジスト等からなるオーバーコート膜24が設けられ、配線23のランド23aおよびその周囲はオーバーコート膜24に設けられた開口部25を介して露出されている。
【0014】
そして、半導体装置1は、その接続部材11が回路基板21の配線23のランド23aの全表面に第1、第2の金属間化合物層27、28等を介して接合されていることにより、回路基板21上にフェイスダウン方式で実装されている。この状態では、配線23のランド23aの上面中央部にはニッケル−金めっき層26が設けられ、ニッケル−金めっき層26と接続部材11との間には第1の金属間化合物層27が形成されている。また、第1の金属間化合物層27の周囲におけるランド23aの上面外周部およびランド23aの側面には第2の金属間化合物層28が形成されている。第1、第2の金属間化合物層27、28の材料については後で説明する。
【0015】
ここで、図3は図1に示す回路基板21の一部の平面図を示す。オーバーコート膜24の開口部25および第1、第2の金属間化合物層27、28下のランド23aは、図2に示す接続部材11の配置に対応して、マトリクス状に配置されている。また、ここで、図1に示すように、配線23のランド23aおよびその周囲をオーバーコート膜24で覆わずにオーバーコート膜24の開口部25を介して露出させているのは、半導体装置1の接続部材11でランド23aの全表面を覆うことにより、接続部材11とランド23aとの接合面積を大きくするためである。
【0016】
次に、回路基板21の製造方法の一例について説明する。まず、図4に示すものを準備する。この準備したものでは、絶縁基板22の上面にランド23aを含む配線23が形成され、配線23のランド23aおよびその周囲を除く配線23および絶縁基板22の上面にはオーバーコート膜24が形成され、配線23のランド23aおよびその周囲はオーバーコート膜24に形成された開口部25を介して露出されている。
【0017】
次に、図5に示すように、フォトリソグラフィ法により、オーバーコート膜24の開口部25を介して露出されたランド23aを含む配線23および絶縁基板22の上面およびオーバーコート膜24の上面にレジスト膜31を形成する。この場合、ランド23aの上面中央部に対応する部分におけるレジスト膜31には開口部32が形成されている。
【0018】
次に、図6に示すように、ニッケルの無電解めっきおよび金の無電解めっきを連続して行うことにより、レジスト膜31の開口部32内におけるランド23aの上面にニッケル−金めっき層26を形成する。次に、レジスト膜31を剥離する。次に、レジスト膜31を剥離した後の図6に示すものを、銅に対するキレート剤(ベンゾトリアゾール、イミダゾール等)水溶液に浸漬する。すると、図7に示すように、ニッケル−金めっき層26の周囲におけるランド23aの上面外周部、ランド23aの側面およびオーバーコート膜24の開口部25を介して露出された配線23の表面に水溶性プリフラックス処理層33が形成される。この場合、ニッケル−金めっき層26の表面には水溶性プリフラックス処理層は形成されない。
【0019】
次に、図7に示す回路基板21上に半導体装置1を実装する場合について説明する。まず、図8に示すように、半導体装置1の下面に形成された半田からなるボール状の接続部材11を回路基板21のニッケル−金めっき層26上に位置合わせして配置する。次に、リフローを行うと、図1に示すように、半導体装置1は、その接続部材11が回路基板21の配線23のランド23aの全表面に第1、第2の金属間化合物層27、28等を介して接合されることにより、回路基板21上にフェイスダウン方式で実装される。
【0020】
この場合、ニッケル−金めっき層26と接続部材11との界面に第1の金属間化合物層27が形成される。また、水溶性プリフラックス処理層33が蒸発して除去され、第1の金属間化合物層27の周囲におけるランド23aの上面外周部およびランド23aの側面と接続部材11との界面に第2の金属間化合物層28が形成される。
【0021】
接続部材11を形成するための半田の組成が錫−銀−銅の組成である場合には、第1の金属間化合物層27の組成はニッケル−錫および金−錫となる。第2の金属間化合物層28の組成は銅−錫となる。なお、無電解めっきによりニッケルを析出させるための還元剤として次亜リン酸を用いる場合には、第1の金属間化合物層27の組成はニッケル−リンとなることもある。
【0022】
いずれにしても、第1の金属間化合物層27の組成と第2の金属間化合物層28の組成とは異なることになる。したがって、接続部材11に繰り返し落下や曲げ等の機械的負荷が加わり、第2の金属間化合物層28にその外周部からクラックが発生し、このクラックが進展しても、第2の金属間化合物層28とこの第2の金属間化合物層28とは組成の異なる第1の金属間化合物層27との境界(つまりランド23aの途中)でクラックの進展が妨げることができる。この結果、破壊に至るまでの繰り返し負荷回数を増大することができ、ひいては接続信頼性を向上させることができる。
【0023】
ここで、図7において、水溶性プリフラックス処理層33を形成する幅は、特に限定されるものではないが、ランド23aの直径の10〜25%の範囲が好ましい。ニッケル−金めっき層26の厚さも特に限定されるものではないが、一例として、ニッケルめっき厚さは1〜5μmであり、金めっき厚さは0.01〜0.1μmである。なお、図1において、半導体装置1を実装した後に、半導体装置1と回路基板21との間にアンダーフィル材を注入するようにしてもよい。
【0024】
次に、図9はこの発明の他の実施形態における図7に示すような状態を説明するために示す回路基板21の一部の平面図である。この場合、図示の都合上、ランド23aは6×6のマトリクス状に配置されているとする。最外周のランド23aのうち4隅のランド23aおよびその内周側のランド23aのうち4隅のランド23aでは、対角線上において上面の内側ほぼ半分にニッケル−金めっき層26が形成され、対角線上において上面の外側ほぼ半分に水溶性プリフラックス処理層33が形成されている。
【0025】
最内周のランド23aでは、対角線上において上面の内側ほぼ半分にニッケル−金めっき層26が形成され、対角線上において上面の外側ほぼ半分に水溶性プリフラックス処理層33が形成されている。上記以外のランド23aでは、縦方向および横方向において上面の内側ほぼ半分にニッケル−金めっき層26が形成され、縦方向および横方向において上面の外側ほぼ半分に水溶性プリフラックス処理層33が形成されている。
【0026】
すなわち、全てのランド23aの上面の内側ほぼ半分にはニッケル−金めっき層26が形成され、全てのランド23aの上面の外側ほぼ半分には水溶性プリフラックス処理層33が形成されている。したがって、この場合、全てのランド23aの上面の内側ほぼ半分には第1の金属間化合物層が形成され、全てのランド23aの上面の外側ほぼ半分には第2の金属間化合物層が形成されることになる。
【0027】
一方、回路基板21上に半導体装置1を実装した状態では、金属間化合物層に発生するクラックは半導体装置1の外周部側から発生する。ここで、第2の金属間化合物層は、第1の金属間化合物層と比較して、半田からなる接続部材との接合部の接続信頼性が良好である。したがって、全てのランド23aの上面の外側ほぼ半分に第2の金属間化合物層が形成され、全てのランド23aの上面の内側ほぼ半分に第1の金属間化合物層が形成されていると、接続信頼性をより一層向上させることができる。
【0028】
なお、回路基板21のランド23aの直径を半導体装置1のランド8bの直径と同じとし、半導体装置1のランド8bの場合と同様に、回路基板21のランド23aの上面外周部をオーバーコート膜24で覆うようにしてもよい。また、半導体装置1のランド8bの直径を回路基板21のランド23aの直径と同じとし、回路基板21のランド23aの場合と同様に、半導体装置1のランド8bおよびその周囲をオーバーコート膜9で覆わないようにしてもよい。さらに、回路基板21上に実装されるものは半導体装置1以外の電子部品であってもよい。
【0029】
以下、この発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0030】
(付記1)
付記1の発明は、銅からなるランドと半田からなる接続部材とを接合した電子機器のランド構造において、前記ランドの一面の一部と前記接続部材との界面に第1の金属間化合物層が形成され、前記ランドの一面の他部と前記接続部材との界面に組成が前記第1の金属間化合物層とは異なる第2の金属間化合物層が形成されていることを特徴とする電子機器のランド構造である。
【0031】
(付記2)
付記2の発明は、前記第1の金属間化合物層は、前記ランドの一面の一部に設けられたニッケル−金めっき層と前記接続部材との界面に形成されていることを特徴とする付記1に記載の電子機器のランド構造である。
【0032】
(付記3)
付記3の発明は、前記第1の金属間化合物層は、前記ランドの一面の中央部と前記接続部材との界面に形成され、前記第2の金属間化合物層は、前記ランドの一面の外周部と前記接続部材との界面に形成されていることを特徴とする付記1または2に記載の電子機器のランド構造である。
【0033】
(付記4)
付記4の発明は、前記ランドは、回路基板上に設けられた配線の先端部からなり、前記接続部材は、前記回路基板上に実装される電子部品下に設けられたものからなることを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の電子機器のランド構造である。
【0034】
(付記5)
付記5の発明は、前記ランドは複数でマトリクス状に配置され、全ての前記ランドの上面の内側半分に前記第1の金属間化合物層が形成され、全ての前記ランドの上面の外側半分に前記第2の金属間化合物層が形成されていることを特徴とする付記4に記載の電子機器のランド構造である。
【符号の説明】
【0035】
1 半導体装置
8 配線
8b ランド
9 オーバーコート膜
11 接続部材
21 回路基板
23 配線
23a ランド
24 オーバーコート膜
26 ニッケル−金めっき層
27 第1の金属間化合物層
28 第2の金属間化合物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅からなるランドと半田からなる接続部材とを接合した電子機器のランド構造において、前記ランドの一面の一部と前記接続部材との界面に第1の金属間化合物層が形成され、前記ランドの一面の他部と前記接続部材との界面に組成が前記第1の金属間化合物層とは異なる第2の金属間化合物層が形成されていることを特徴とする電子機器のランド構造。
【請求項2】
前記第1の金属間化合物層は、前記ランドの一面の一部に設けられたニッケル−金めっき層と前記接続部材との界面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器のランド構造。
【請求項3】
前記第1の金属間化合物層は、前記ランドの一面の中央部と前記接続部材との界面に形成され、前記第2の金属間化合物層は、前記ランドの一面の外周部と前記接続部材との界面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器のランド構造。
【請求項4】
前記ランドは、回路基板上に設けられた配線の先端部からなり、前記接続部材は、前記回路基板上に実装される電子部品下に設けられたものからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器のランド構造。
【請求項5】
前記ランドは複数でマトリクス状に配置され、全ての前記ランドの上面の内側半分に前記第1の金属間化合物層が形成され、全ての前記ランドの上面の外側半分に前記第2の金属間化合物層が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電子機器のランド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−4843(P2013−4843A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136147(P2011−136147)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】