説明

電子機器の異常検出装置および異常検出方法

【課題】大きな負荷を単位としてヒューズを配置すると、溶断したヒューズに対応する、故障が発生した負荷については特定できるものの、当該負荷のどの部位で故障等が発生したか、その細部の部位まで特定することができない。
【解決手段】大きな単位の電子回路に対して1つのヒューズを割り当てるのではなく、電源系を分離して電子回路を複数にブロック化し、これらブロック化した電子回路(オプション制御系51、負荷駆動系52)の各々に対して1対1の関係でヒューズ66,67を割り当ててそれぞれの電源供給ラインL1,L2中に挿入する一方、溶断したヒューズについての情報をCPU61によって管理するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の異常検出装置および異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば複写機やプリンタ装置等の画像形成装置では、電子回路に過電流が流れることによる必要以上の加熱を防ぐために、過電流保護装置としてヒューズを電子回路内に備えている。そして、ヒューズ切れなどによってマシンが停止した際に、マシン停止の原因を究明したり、修理したりする作業では、マシンを分解し、ヒューズの導通状態を確認するようにしている。
【0003】
ヒューズが溶断していた場合には、例えばハーネス地絡による短絡やモータ内部の異常ショートなどの原因を取り除かなければ、溶断したヒューズを取り替えたとしても、再度ヒューズが溶断してしまうことになる。ヒューズ溶断の原因を特定する手法としては、一般的には、ヒューズ部を短絡させた状態で、コネクタを1個ずつ抜いていき、電源の短絡保護装置が働いた箇所を短絡部と判断する手法が採られている。しかし、この手法では、原因を特定するのに工数が多くかかり、サービスコストが高くなってしまう。
【0004】
このため、従来は、負荷駆動回路と操作部を構成するスイッチの間を、コネクタを介して結線した電気回路において、スイッチの常開接点と可動切片の間に、コネクタの接続をチェックするヒューズを設け、かつスイッチの常開接点と負荷駆動回路を制御するマイクロコンピュータの間を接続する回路の途中に、マイクロコンピュータより出力されるコネクタ接続信号により、ヒューズ溶断電流を流す断線回路を設けた自己診断回路が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、負荷に電力供給を行うための電源回路の電源ライン上にヒューズを介装するとともに、当該ヒューズの両端と接地点との間に各々抵抗からなる分圧回路を介装し、当該分圧回路により得られたヒューズの両端の電圧値に基づいて負荷が動作異常状態にあるか否かを判断するとともに、その異常原因を判断する判断手段を有する異常検出装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−289088号公報
【特許文献2】特開2001−150773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の従来技術では、主にコネクタの結線確認を行え、これを応用すればハーネスの地絡箇所を特定することが可能であるものの、マイクロコンピュータが自動で判断する構成となっているため、マシン自体がOFFになってしまった場合は、診断結果をユーザが認知することができないという課題がある。
【0008】
特許文献2記載の従来技術では、ヒューズの両端の電圧値の組み合わせから、負荷側のドライバの故障なのか、電源異常なのかを特定することができるため、エラー情報の詳細化が行えるものの、I/O資源を数多く用いなければならなく(具体的には、1つの信号につき2個のI/O)、またマシン電源のOFF時には情報を得ることができないなどの課題がある。
【0009】
また、いずれの従来技術でも、大きな負荷を単位としてヒューズを配置する構成が採られているため、溶断したヒューズに対応する、異常が発生した負荷については特定できるものの、当該負荷のどの部位で異常が発生したか、その細部の部位まで特定することができなかった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、故障等が発生した細部の部位を特定し、その特定した情報をマシン停止の原因を究明したり、修理したりするのに反映させることが可能な電子機器の異常検出装置および異常検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、電源系を分離して電子回路を複数にブロック化し、これらブロック化した複数の電子回路の各々に対してそれぞれ電源供給ライン中に挿入された過電流保護素子を介して電源を供給し、各電源供給ラインのいずれかに挿入された過電流保護素子に溶断が発生した際に、溶断した過電流保護素子についての情報を管理する構成を採っている。
【0012】
大きな単位の電子回路に対して1つの過電流保護素子を割り当てるのではなく、電源系を分離して電子回路を複数にブロック化し、これらブロック化した複数の電子回路の各々に対して1対1の関係で過電流保護素子を割り当ててそれぞれの電源供給ライン中に挿入する一方、溶断した過電流保護素子についての情報を管理することで、その情報から電子回路において異常が発生した細部な部位(ブロック化された電子回路)を簡単に特定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異常が発生した細部の部位を簡単に特定できるため、その特定した情報をマシン停止の原因を究明したり、修理したりするのに反映させることで、迅速かつ的確なメンテナンスの実行が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明が適用される電子機器、例えばデジタルカラー複写機を示す概略構成図である。図1から明らかなように、本適用例に係るデジタルカラー複写機は、画像入力部10、画像形成部20および給紙部30などを備え、装置本体の例えば上面側には表示機能(ディスプレイ)を持つ操作パネル部(ユーザI/F(インターフェース)表示部)40を有する構成となっている。
【0016】
画像入力部10において、プラテンガラス11上に載置された原稿50の画像は、照明用ランプ12からの照射光に基づく原稿面からの反射光である像光として、ミラー系13を経由した後レンズ14によって光学センサ、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ15の撮像面上に結像される。すると、CCDイメージセンサ15は、原稿画像が例えばカラー画像の場合には、原稿50の反射率情報をR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の信号として読取、R,G,Bの各信号を出力する。
【0017】
画像形成部20は、画像出力装置として、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色材ごとに画像形成エンジン21Y,21M,21C,21Kを有している。これら画像形成エンジン21Y,21M,21C,21Kは、例えば、図の右側から、即ち用紙搬送方向の上流側からY,M,C,Kの順に水平にかつ直列に配置されている。
【0018】
画像形成エンジン21Yにおいて、像担持体である感光ドラム22Yの周囲には、Yの信号に応じて画素ごとにレーザビームのオンデューティ時間を決めるとともに、感光ドラム22Y上を露光して静電潜像を形成する露光源(画像書込装置)23Y、感光ドラム22Yの表面を一様に帯電させるための帯電器24Y、感光ドラム22Y上の静電潜像を電子写真プロセスによってトナー像に現像するための現像器25Y、トナー像を用紙(記録紙)に転写させるための転写器26Y、転写後の残留トナーを回収するためのクリーナー27Yなどが配置されている。現像器25Yには、トナーを格納したカートリッジ(図示せず)が収納されている。
【0019】
画像形成エンジン21Yと同様に、画像形成エンジン21Mの感光ドラム22Mの周囲には、露光源23M、帯電器24M、現像器25M、転写器26M、クリーナー27Mなどが配置され、画像形成エンジン21Cの感光ドラム22Cの周囲には、露光源23C、帯電器24C、現像器25C、転写器26C、クリーナー27Cなどが配置され、画像形成エンジン21Kの感光ドラム22Kの周囲には、露光源23K、帯電器24K、現像器25K、転写器26K、クリーナー27Kなどが配置されている。
【0020】
上記構成の画像入力部10および画素形成部20を備えるデジタルカラー複写機では、先ず、露光源23YでY(イエロー)の信号が光信号に変換され、レーザビームの照射により感光ドラム22Y上に原稿画像に対応した静電潜像が形成される。このYの潜像は、現像器25Yによりトナー像に現像される。そして、給紙部30の用紙トレイ31から送り込まれ、用紙搬送ベルト28によって搬送されてくる用紙に対して、転写機26YがYの静電潜像にトナー像を転写する。
【0021】
続いて、露光源23MがM(マゼンタ)の光信号を出力し、Mの静電潜像の形成、現像の各工程を経て、搬送ベルト28によって搬送されてくる用紙に対してMのトナー像を転写機26Mによって転写する。以下同様にして、C(シアン)、K(ブラック)の潜像形成、現像、転写が行われる。このようにして、搬送ベルト28によって搬送されてくる用紙に対して4色の転写が順次行われる。そして、4色目の転写が終了すると、用紙は定着装置29に送られてトナー像の溶融定着が行われ、一連の画像形成処理が完了する。
【0022】
図2は、上記構成のデジタルカラー複写機を機能ごとに分類して示した機能ブロック図である。図2に示すように、本適用例に係るデジタルカラー複写機は、上述した画像入力部10、画像形成部20および給紙部30に加えて、両面印刷の際に用いる用紙反転部60と、複写後の用紙に対してホッチキス止めやパンチ穴開けなどの処理を行う最終処理部70等を備えている。なお、図1では、これら用紙反転部60および最終処理部70の各機構については図示を省略している。
【0023】
デジタルカラー複写機においては、その機能の主たる部分は画像形成部20であることから、当該画像形成部20を本体としたとき、画像入力部10、給紙部30、用紙反転部60および最終処理部70についてはオプションとなる。画像入力部10、画像形成部20、給紙部30、用紙反転部60および最終処理部70の各々には、各機構部の動作を電気的に制御するための電子回路からなる制御系が設けられている。
【0024】
図3は、画像形成部20の制御系(電子回路)の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、画像形成部20の制御系は、入力信号判別部41、CPU42、負荷制御部43およびビデオ制御部44等の電子回路から構成され、制御基板45上に搭載されている。
【0025】
入力信号判別部41には、用紙搬送経路中の適当な箇所に配置された用紙センサなどの各種センサを含むセンサ部46から、各センサの検知信号が供給される。入力信号判別部41は、センサ部46から供給される各センサの検知信号を判別処理し、その処理結果をCPU42に渡す。CPU42は、入力信号判別部41の処理結果を基に、用紙搬送等の所定の処理を実行すべく負荷制御部43を制御する。
【0026】
負荷制御部43は、CPU42による制御に応じて、用紙搬送モータ等の負荷47を駆動する。また、ビデオ制御部44は、CPU42による制御の下に、画像入力部10から供給されるR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)の信号に対して、L*** の色空間に、さらにY(イエロー)M(マゼンタ)C(シアン)K(ブラック)の色空間に変換する処理などを行った後、露光源23(図1の23Y,23M,23C,23K)に供給する。
【0027】
ここでは、画像形成部20の制御系を例にとってその構成について説明したが、画像入力部10、給紙部30、用紙反転部60および最終処理部70の制御系についても、基本的に、画像形成部20の制御系と同じ構成となっている。ただし、ビデオ制御部44を有するのは、画像形成部20の制御系の場合だけである。
【0028】
以上説明した本適用例に係るデジタルカラー複写機には、電子回路に過電流が流れる等によって必要以上の加熱を防ぐために、過電流等の異常を検知する異常検出装置が搭載されることになる。
【0029】
本発明では、画像入力部10、画像形成部20、給紙部30、用紙反転部60および最終処理部70の各機能ブロックに設けられる電子回路を、電源系を分離して複数にブロック化し、これらブロック化した複数の電子回路の各々に対してそれぞれ電源供給ライン中に挿入された過電流保護素子であるヒューズを介して電源を供給し、各電源供給ラインのいずれかに挿入されたヒューズに溶断が発生した際に、溶断したヒューズの部位の情報を管理することを特徴としている。
【0030】
複数の電子回路へのブロック化については、画像入力部10、画像形成部20、給紙部30、用紙反転部60および最終処理部70の各機能ブロック全体の電子回路を、機能ブロックに関係なく、各機能ブロック全体の電子回路を複数にブロック化するようにしても良いし、また機能ブロック単位でブロック化するようにしても良いし、さらには1つの機能ブロックの電子回路をさらに複数にブロック化するようにしても良い。
【0031】
以下に、本適用例に係るデジタルカラー複写機に搭載される異常検出装置の具体的な実施例について具体的に説明する。以下の各実施例では、電子回路を機能ブロック単位でブロック化するとともに、1つの機能ブロックの電子回路をさらに複数にブロック化する場合を例に挙げて説明するものとする。
【0032】
[実施例1]
図4は、実施例1に係る異常検出装置の構成を示す回路図である。ここでは、図面の簡略化のために、ある1つの機能ブロックのみについて図示している。当該機能ブロックを画像形成部20とした場合、制御基板45上の電子回路については、一例として、論理レベルの電源電圧(例えば、+5V)を動作電源として回路動作するオプション制御系51(図3の入力信号判別部41、CPU42およびビデオ制御部44に相当)と、論理レベルよりも高い電源電圧(例えば、+24V)を動作電源とし、モータ等の負荷を駆動する負荷駆動系52(図3の負荷制御部43に相当)とにブロック化するものとする。
【0033】
本実施例1に係る異常検出装置は、オプション制御系51および負荷駆動系52に対して別々に電源電圧を供給するメイン基板53と、当該メイン基板53に付属のサブ基板54とを備えている。
【0034】
メイン基板53上には、CPU61、I/O回路62、レギュレータ63〜65、ヒューズ66,67およびフォトカプラ68,69等が搭載されている。CPU61は、本実施例1に係る異常検出装置全体の制御を行う。I/O回路62は、CPU61に対する信号の入出力のインターフェースとなる。レギュレータ63,64,65は、外部から供給される電源電圧+24.5Vに基づいて例えば+3.3V,+5V,+24Vの電源電圧を生成する。
【0035】
レギュレータ63で生成された電源電圧+3.3Vはメイン基板53上のCPU61やI/O回路62等で用いられる。レギュレータ64で生成された電源電圧+5Vは、電源供給ラインL1を介してオプション制御系51(図3の入力信号判別部41、CPU42およびビデオ制御部44)に供給される。レギュレータ65で生成された電源電圧+24Vは、電源供給ラインL2を介して負荷駆動系52(図3の負荷制御部43)に供給される。ヒューズ66,67は、電源供給ラインL1,L2中に挿入されている。
【0036】
フォトカプラ68は、近接して対向配置された発光ダイオードLED1およびフォトトランジスタPT1によって構成されている。発光ダイオードLED1は、電源供給ラインL1上のヒューズ66よりもオプション制御系51側の部位とグランドとの間に抵抗R1を介して接続されている。フォトトランジスタPT1は、エミッタが接地され、コレクタが抵抗R2を介して+3.3V電源に接続されている。
【0037】
フォトカプラ69は、近接して対向配置された発光ダイオードLED2およびフォトトランジスタPT2によって構成されている。発光ダイオードLED2は、電源供給ラインL2上のヒューズ67よりも負荷駆動系52側の部位とグランドとの間に抵抗R3を介して接続されている。フォトトランジスタPT2は、エミッタが接地され、コレクタが抵抗R4を介して+3.3V電源に接続されている。
【0038】
サブ基板54上には、揮発性メモリである例えばSRAM71、UI(ユーザインターフェース)コントローラ72、ユーザインターフェース73、バッテリ74および制御トランジスタ75等が搭載されている。このサブ基板54は、デジタルカラー複写機のマシン背面やカバー内部など、ユーザが容易に確認できない場所に装着される。
【0039】
SRAM71は、バスラインBUS1を介してメイン基板53上のI/O回路62と接続されている。UIコントローラ72は、バスラインBUS2を介してSRAM71と接続されている。ユーザインターフェース73は、ディスプレイや発光ダイオードなどの表示機能を持ち、UIコントローラ72によって表示制御が行われる。
【0040】
バッテリ74の電圧は、制御トランジスタ75を介してSRAM71、UIコントローラ72およびユーザインターフェース73に供給される。制御トランジスタ75は例えばPNPトランジスタであり、エミッタがバッテリ74の正電極に接続され、ベースが抵抗R5を介して接地されている。制御トランジスタ75のベースには、メイン基板53に電源電圧+24.5Vが供給されているときには、CPU61から“H”レベルの制御信号が与えられる。
【0041】
なお、ここでは、画像形成部20の機能ブロックを例に挙げて制御基板45とメイン基板53との関係について説明したが、他の機能ブロック、即ち画像入力部10、給紙部30、用紙反転部60および最終処理部70などについても、画像形成部20の場合と同様に、制御基板とメイン基板との関係を設定することになる。ただし、CPUについては、各メイン基板に対して共通に1つ設け、この1つのCPUによって全体の制御を行うように構成することも可能である。
【0042】
また、ここでは、制御基板45上の電子回路を、オプション制御系51と負荷駆動系52との2つにブロック化するとしたが、オプション制御系51と負荷駆動系52の各々についてさらに電源系を分離して複数にブロック化することも可能である。ブロック化をより微細化することで、異常発生箇所の特定がより確実に行えることになる。
【0043】
次に、上記構成の実施例1に係る異常検出装置の回路動作について説明する。
【0044】
(正常時の回路動作)
本デジタルカラー複写機の電源オンの状態では、メイン基板53に対して電源電圧+24.5Vが供給され、レギュレータ63,64,65では、+3.3V,+5V,+24Vの電源電圧が生成される。これにより、電源電圧+5Vは、電源供給ラインL1によってヒューズ66を介してオプション制御系51に供給され、電源電圧+24Vは、電源供給ラインL2によってヒューズ67を介して負荷駆動系52に供給される。
【0045】
オプション制御系51および負荷駆動系52に電源電圧(+5V,+24V)が供給されている状態では、発光ダイオードLED1,PD2に電流が流れるため当該発光ダイオードLED1,PD2が共に発光し、その光をフォトトランジスタPT1,PT2がそれぞれ受光する。これにより、フォトトランジスタPT1,PT2がオン状態となるため、各コレクタ電位が“L”レベルとなる。これらコレクタ電位は、I/O回路62を介してCPU61に伝達される。
【0046】
CPU61は、フォトトランジスタPT1,PT2の各コレクタ電位が“L”レベルのときは、オプション制御系51および負荷駆動系52に正常に電源電圧(+5V,+24V)が供給されていると認識する。また、メイン基板53に対して電源電圧+24.5Vが供給されている状態では、CPU61は、サブ基板54に対して“H”レベルの制御電圧を与える。これにより、制御トランジスタ75がオン状態となるため、バッテリ74の電圧が当該制御トランジスタ75を介してSRAM71、UIコントローラ72およびユーザインターフェース73に供給されない。
【0047】
以上が、本適用例に係るデジタルカラー複写機に何ら異常が発生していないときの回路動作である。
【0048】
(異常時の回路動作)
一方、例えば負荷駆動系52において、モータ内部の異常ショートなどの原因によって負荷駆動系52の電子回路に過電流が流れると、当該過電流によってヒューズ67が溶断する。すると、負荷駆動系52に電源電圧+24Vが供給されなくなる。このとき、デジタルカラー複写機では、正常の複写動作を行うことができないことから、異常が発生した旨のメッセージが、操作パネル40(図1参照)のディスプレイ上に表示される。これを受けて、ユーザはサービスマンに修理を依頼することになる。
【0049】
負荷駆動系52への電源の供給が遮断されると同時に、発光ダイオードLED2に電流が流れなくなるため当該発光ダイオードLED2が発光せず、したがってフォトトランジスタPT2がオフ状態となる。これにより、フォトトランジスタPT2のコレクタ電位が“H”レベル(略電源電圧+3.3V)になり、I/O回路62を介してCPU61に伝達される。
【0050】
すると、CPU61は、フォトトランジスタPT2の“H”レベルのコレクタ電位を受けて、負荷駆動系52に何らかの異常が発生してヒューズ67が溶断し、負荷駆動系52に電源電圧+24Vが供給されなくなったと認識するとともに、CPU61は、サブ基板54に対して“L”レベルの制御信号を与える。これにより、制御トランジスタ75がオン状態となるためバッテリ74の電圧が当該制御トランジスタ75を介してSRAM71、UIコントローラ72およびユーザインターフェース73に供給される。その後、溶断したヒューズ67についての情報、例えばヒューズの部位の情報(ヒューズ番号など)や、異常の可能性のあるコンポーネント(本例では、画像形成部20)の情報、異常が発生したジョブ中の詳細なタイミング(例えば、あるモータが起動した後、1.5秒後に異常発生)の情報などをサブ基板54上のSRAM71に保持して管理する。
【0051】
サブ基板54上においては、UIコントローラ72は、SRAM71に格納された溶断したヒューズ67についての情報を基に、ユーザインターフェース73の例えばディスプレイ上に、ヒューズ番号あるいは異常が発生した部位(本例では、画像形成部20の負荷駆動系52)などの情報を表示する。SRAM71での格納情報の保持およびユーザインターフェース73の表示の各状態は、バッテリ74からSRAM71およびユーザインターフェース73に電圧が供給されている限り維持される。
【0052】
これにより、仮に異常発生箇所が危険度が高く、CPU61がマシン自体のAC電源の供給を停止せざるを得ない状態においても、修理の依頼を受けたサービスマンは、マシンのカバーを開け、当該カバー内部に装着されているサブ基板54上のユーザインターフェース73の表示を確認するだけで、異常発生箇所を特定できるため、その修復に当たって的確に、かつ迅速に対応することができる。このとき、サービスマンは、異常が発生した負荷駆動系52が搭載された制御基板45を交換するなどの修復作業を行うとともに、溶断したヒューズ67を交換する。
【0053】
この修復作業に際して、CPU61による制御の下に、サービスマンに対して交換する基板上の同じ箇所(異常が発生した基板の箇所)に地絡等の不具合がないことを確認するように指示する旨のメッセージを、ユーザインターフェース73のディスプレイ上に表示させることで、同じ異常の発生を未然に防止することができる。
【0054】
また、特にCPU61を複数の機能ブロックに対して共通に1つ設け、この1つのCPU61によってマシン全体の異常の管理を行う構成を採る場合には、当該CPU61の制御の下に、異常が発生した際に、不具合箇所を判断し、マシンの稼働に支障のない機能ブロックがある場合には、マシンを停止させずに機能制限してマシンの使用を許可する、もしくは代替手段を選択できるようにすることも可能である。
【0055】
一例として、両面コピーを行う際に用いる用紙反転部60で異常が発生した場合には、当該用紙反転部60を使用しなくても片面コピーは可能であることから、その旨のメッセージを操作パネル部40(図1参照)のディスプレイ上に表示させるとともに、2枚の原稿について例えば「片面コピーにて1枚ずつ2原稿分コピー」、あるいは「片面コピーにて1枚の用紙上に2原稿分コピー」などのモードをユーザが選択できるようにする。その際に、どのモードを選択するか、あるいはいずれのモードも選択しないかはユーザの自由であるが、少なくとも、マシンを停止させずに機能制限してマシンの使用を許可することで、異常発生によるユーザにかける負担を最小限に抑えることができる。
【0056】
別の例として、画像形成部20におけるビデオ制御部44の電子回路をさらにブロック化した場合において、カラーコピーを行う際に、例えばYの露光源23Y(図1参照)に異常が発生したとき、カラーコピーは行えないが、白黒コピーは可能であることから、その旨のメッセージを操作パネル部40のディスプレイ上に表示させるようにする。その際に、白黒コピーを選択するか否かはユーザの自由であるが、少なくとも、マシンを停止させずに代替手段を選択できるようにすることで、異常発生によるユーザにかける負担を最小限に抑えることができる。
【0057】
上述したように、大きな単位の電子回路に対して1つのヒューズを割り当てるのではなく、電源系を分離して電子回路を複数にブロック化し、これらブロック化した複数の電子回路の各々に対して1対1の関係でヒューズを割り当ててそれぞれの電源供給ライン中に挿入する一方、溶断したヒューズについての情報を管理することで、その情報から電子回路において故障等が発生した細部な部位(ブロック化された電子回路)を簡単に特定できるため、その特定した情報をマシン停止の原因を究明したり、修理したりするのに反映させることで、迅速かつ的確なメンテナンスの実行が可能になる。
【0058】
特に、ブロック化された電子回路の各々に電源供給をなすメイン基板53とは別にサブ基板54を用意し、当該サブ基板54上にはSRAM71、UIコントローラ72、表示機能を持つユーザインターフェース73、さらにはバッテリ74を搭載し、マシン電源オフ時でもCPU61の管理情報を保持し、かつ表示できるようにしたことで、サービスマンに対して異常発生に関する情報を確実に提供することができる。
【0059】
なお、本実施例1では、ヒューズ66,67の溶断を検出する手段としてフォトカプラ68,69を用いているが、フォトカプラ68,69に限られるものではなく、ヒューズ66,67の溶断を検出してその旨をCPU61に伝達できるものであれば良い。
【0060】
[実施例2]
図5は、実施例2に係る異常検出装置の構成を示す回路図であり、図中、図4と同等部分には同一符号を付して示している。
【0061】
図5に示すように、本実施例2に係る異常検出装置は、実施例1に係る異常検出装置の構成に加えて、バッテリ74として充電式のものを用いるとともに、当該充電式のバッテリ74の状態をCPU61によって確認し、その残量に応じてバッテリ74の充電制御を行う構成となっている。
【0062】
具体的には、バッテリ74の電圧はメイン基板53上に設けられたA/D(アナログ/デジタル)変換器81でデジタル化されてCPU61に与えられる。バッテリ74の正電極は、充電制御トランジスタ82および抵抗R6を介して+3.3V電源に接続されている。CPU61は、A/D変換器81の出力に基づいてバッテリ74の状態を確認し、バッテリ74の残量が所定の閾値よりも少ないときに、“H”レベルの充電制御信号を充電制御トランジスタ82のベースに与える。
【0063】
これにより、充電制御トランジスタ82がオン状態になるため、+3.3V電源から抵抗R6および充電制御トランジスタ82を通してバッテリ74に充電電流が供給される。CPU61は、充電中もバッテリ74の充電状態を確認し、規定値に達したら充電制御信号を“L”レベルにし、充電動作を停止させる。このバッテリ74の充電制御の際に用いる上記所定の閾値や規定値についてのデータはROM83に格納されている。
【0064】
CPU61はさらに、バッテリ74の充電中は、マシン電源がオフされないように、ユーザインターフェース73のディスプレイに「データ保存中」等のメッセージを表示させることでマシンの動作状態をユーザに知らせるとともに、例えば充電完了後に、管理している異常に関する情報をSRAM71に書き込む。このように、バッテリ74の電圧が低くなった際にたとえSRAM71の保持データの内容が不確定なものになったとしても、充電完了後に管理情報を改めてSRAM71に書き込むことで、SRAM71には常に異常に関する正確な情報を保存できるため、その内容を的確にメンテナンスに反映させることができる。
【0065】
[実施例3]
図6は、実施例3に係る異常検出装置の構成を示す回路図であり、図中、図4と同等部分には同一符号を付して示している。
【0066】
図6に示すように、本実施例3に係る異常検出装置は、実施例1に係る異常検出装置の構成に加えて、バッテリ74として充電式のものを用いるとともに、当該充電式のバッテリ74の状態を常夜電源で動作するサブCPUによって確認し、その残量に応じてバッテリ74の充電制御を行う構成となっている。
【0067】
具体的には、メイン基板53上には、バッテリ74の充電制御を行う充電制御部90が搭載されている。充電制御部90は、サブCPU91、A/D変換器92、EEPROM93、充電制御トランジスタ94等によって構成されている。この充電制御部90には、ACコンセントにプラグを差し込んだ状態では常夜電源部101から常に常夜電源Vccが供給される。
【0068】
充電制御部90において、バッテリ74の正電極は、充電制御トランジスタ94および抵抗R7を介して常夜電源Vccに接続されている。サブCPU91は、A/D変換器92でA/D変換されて供給されるバッテリ74の電圧情報を基に当該バッテリ74の状態を確認し、残量が所定の閾値よりも少ない場合に、バッテリ74の充電制御を行う。
【0069】
ただし、残量が所定の閾値よりも少ない場合に常に充電を開始するのではなく、サブCPU91はマシン情報に基づいてマシンが節電モードやメイン電源オフのときに、“H”レベルの充電制御信号を充電制御トランジスタ94のベースに与える。
【0070】
これにより、充電制御トランジスタ94がオン状態になるため、常夜電源Vccから抵抗R7および充電制御トランジスタ94を通してバッテリ74に充電電流が供給される。サブCPU91は、バッテリ74の電位を確認した後、その電位に対応した規定時間充電を行い、バッテリ74充電状態を確認し、その後充電制御信号を“L”レベルにし、充電動作を停止させる。このバッテリ74の充電制御の際に用いる上記所定の閾値や規定値についてのデータはEEPROM93に格納されている。
【0071】
このように、バッテリ74の状態を常夜電源Vccで動作するサブCPU91によって確認し、残量が所定の閾値よりも少ない場合に、マシンの節電モードや電源オフのときにバッテリ74の充電を行うことで、突然の異常発生に伴いヒューズ66,67の溶断が発生したとしても、溶断したヒューズについての情報をSRAM71に保持し、またユーザインターフェース73のディスプレイ上に表示することができる。
【0072】
なお、上記実施形態では、デジタルカラー複写機に適用した場合を例に挙げて説明したが、この適用例に限られるものではなく、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置、さらには電子回路を内蔵する電子機器全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明が適用されるデジタルカラー複写機を示す概略構成図である。
【図2】本適用例に係るデジタルカラー複写機を機能ごとに分類して示した機能ブロック図である。
【図3】画像形成部の制御系(電子回路)の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】実施例1に係る異常検出装置の構成を示す回路図である。
【図5】実施例2に係る異常検出装置の構成を示す回路図である。
【図6】実施例3に係る異常検出装置の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0074】
10…画像入力部、11…プラテンガラス、14…レンズ、15…CCDイメージセンサ、20…画像形成部、21Y,21M,21C,21K…画像形成エンジン、22Y,22M,22C,22K…感光ドラム、23Y,23M,23C,23K…露光源、24Y,24M,24C,24K…帯電器、25Y,25M,23C,25K…現像器、26Y,26M,26C,26K…転写器、28…用紙搬送ベルト、29…定着装置、30…給紙部、40…操作パネル部(ユーザI/F表示部)、41…入力信号判別部、42…CPU、43…負荷制御部、44…ビデオ制御部、45…制御基板、46…センサ部、47…負荷、50…原稿、51…オプション制御系、52…負荷駆動系、53…メイン基板、54…サブ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源系が分離されてブロック化された複数の電子回路に対して別々に電源供給を行う電源供給ライン中に挿入された複数の過電流保護素子と、
前記複数の過電流保護素子の少なくとも一つに溶断が発生したことを検出する検出手段と、
前記検出手段が溶断を検出した際の溶断した過電流保護素子についての情報を管理する制御手段と
を備えることを特徴とする電子機器の異常検出装置。
【請求項2】
前記制御手段による管理情報を保持するメモリ手段と、
前記メモリ手段に保持された情報を表示する表示手段とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の電子機器の異常検出装置。
【請求項3】
前記メモリ手段および前記表示手段は、前記制御手段が搭載されたメイン基板とは異なるサブ基板上に搭載され、バッテリの電源で動作する
ことを特徴とする請求項2記載の電子機器の異常検出装置。
【請求項4】
前記バッテリが充電式であり、
前記制御手段は、前記バッテリの状態を確認し、残量に応じて前記バッテリの充電の制御を行う
ことを特徴とする請求項3記載の電子機器の異常検出装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記バッテリの充電完了後に前記メモリ手段に管理情報を書き込む
ことを特徴とする請求項4記載の電子機器の異常検出装置。
【請求項6】
前記バッテリが充電式であるとともに、常夜電源で動作する第2の制御手段を有し、
前記第2の制御手段は、前記バッテリの状態を確認し、残量が所定の閾値よりも少ない場合に、電子機器本体の節電モードやマシン電源オフのときに前記バッテリの充電制御を行う
ことを特徴とする請求項3記載の電子機器の異常検出装置。
【請求項7】
電源系を分離して電子回路を複数にブロック化し、これらブロック化した複数の電子回路の各々に対してそれぞれの電源供給ライン中に挿入された過電流保護素子を介して電源を供給し、
前記各電源供給ラインのいずれかに挿入された過電流保護素子に溶断が発生した際に、溶断した過電流保護素子についての情報を管理する
ことを特徴とする電子機器の異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−62129(P2006−62129A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245042(P2004−245042)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】