説明

電子機器の筐体

【課題】構成する部材に変形や破損を生じさせることなく、スナップフィットによる結合を容易に解除可能な電子機器の筐体を提供する。
【解決手段】本発明の電子機器の筐体は、空間部の一部を構成する凹部の内側に突出する係止爪部を有してなる第1筐体部と、前記係止爪部が挿入される係止孔部を有し該係止孔部内に前記係止爪部が挿入されることによって前記第1筐体部と結合する第2筐体部と、前記第1筐体部及び前記第2筐体部が結合した状態において、前記空間部と外部とを連絡する連絡孔と、前記空間部内において移動可能であって、前記連絡孔に外部から挿通される押圧部材によって押圧可能に配設された移動部材と、前記移動部材から前記係止孔部内に向かって突設され、前記移動部材の移動に伴い前記係止孔部内から前記係止爪部を押し出す押圧突部と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体部を結合することで空間部を形成し、該空間部内に電子機器の少なくとも一部を構成する部材を収容する電子機器の筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の筐体は、複数の部材を結合することで構成されることが一般的である。一対の互いに嵌合する箱状の部材を結合する構成としては、例えば特開2001−41211号公報に開示されているように、一方の部材の嵌合面に複数の穴部を設け、他方の部材の嵌合面に該複数の穴部に係合する複数の爪部を設ける構成が知られている。このような結合方法は、一般にスナップフィット(エラスティックフィットネス)と称される。スナップフィットによる結合は、結合に用いる穴部及び爪部を、筐体の外部から見えない位置に設けて結合部を隠し、かつ部材同士を密着させることができるという利点を有する。
【0003】
スナップフィットによって結合された部材同士の結合を解除するためには、爪部と穴部との係合が解除されるように、筐体を構成する部材を変形させる必要がある。そこで、スナップフィットによって部材を結合する筐体では、結合の解除を容易なものとするために、例えば特開2001−41211号公報に開示されているように、筐体の一部に孔を設けて、該孔から爪部と穴部との係合が解除する治具を挿入可能とする構成が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−41211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スナップフィットによって結合された部材同士の結合を解除する場合、部材に不用意な力が加えられると、筐体を構成する部材に変形や破損が生じてしまうことがある。特に、部材同士が密着している場合には、部材間にヘラのような薄い板状の治具を差し込んで、治具に力を加えて爪部と穴部との係合を解除する必要があるため、爪部が折損したり部材の合わせ目に傷が付いてしまうことがある。
【0006】
また、部材同士の結合の解除を容易なものとするために筐体の一部に孔を設けた場合、筐体の外観に孔が存在するため、デザイン上好ましくない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スナップフィットによって部材を結合してなる電子機器の筐体において、筐体を構成する部材に変形や破損を生じさせることなく容易に結合を解除することが可能な電子機器の筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子機器の筐体は、電子機器の少なくとも一部を構成する部材を収容する空間部を有した電子機器の筐体であって、前記空間部の一部を構成する凹部、及び該凹部の側壁部から内側に突出する係止爪部を有してなる第1筐体部と、前記凹部内に嵌め合わされる突部、及び該突部の側壁部に穿設され前記係止爪部が挿入される係止孔部を有し、該係止孔部内に前記係止爪部が挿入されることによって前記第1筐体部と結合する第2筐体部と、前記第1筐体部及び前記第2筐体部が結合した状態において、前記空間部と外部とを連絡する連絡孔と、前記空間部内において移動可能であって、前記連絡孔に外部から挿通される押圧部材によって押圧可能に配設された移動部材と、前記移動部材から前記係止孔部内に向かって突設され、前記移動部材の移動に伴い前記係止孔部内から前記係止爪部を押し出す押圧突部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構成する部材に変形や破損を生じさせることなく、スナップフィットによる結合を容易に解除可能な電子機器の筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】筐体の斜視図である。
【図2】筐体の分解斜視図である。
【図3】筐体の連絡孔の中心軸及び係止爪部を含む平面における断面図である。
【図4】図3のIV-IV断面図である。
【図5】図3のV−V断面図である。
【図6】移動部材が解除用螺子によって押圧されて移動した状態を示す図である。
【図7】図6のVII-VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0012】
本発明に係る筐体1は、その内部に空間部を有し、該空間部内に電子機器の少なくとも一部を構成する部材を収容する電子機器の筐体である。電子機器の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、筐体1は、撮像装置の筐体であって、空間部内に液晶表示装置2を収容する。
【0013】
図1に示すように、筐体1は、略6面体形状の外形を有し、空間部に収容した液晶表示装置2の表示面2aが外部に露出するように1面に開口部が形成されている。筐体1は、ヒンジ機構部5を介して、撮像装置の図示しない本体部に対して相対的に移動可能に結合される。
【0014】
ヒンジ機構部5は、いわゆる2軸ヒンジであり、本体部に固定される基台部5aと、基台部5aに対して回動する第1軸部5bと、第2軸部5bに対して第1軸部5bと略直交する軸周りに回動する第2軸部5cと、筐体1に固定されるブラケット部5dとを具備して構成されている。図1の矢印A1及び矢印A2で示すように、ヒンジ機構部5は、筐体1を、基台部5aに対して互いに略直交する2つの軸周りに回動可能に支持する。
【0015】
図2に示すように、本実施形態の筐体1は、第1筐体部3、第2筐体部4、保持部7及び移動部材8を具備して構成されている。第1筐体部3及び第2筐体部4は、詳しくは後述する構成によって互いに結合し、筐体1の外形を構成する。第1筐体部3及び第2筐体部4の互いに向かい合う領域には、それぞれ凹部3b及び凹部4bが形成されている。第1筐体部3及び第2筐体部4は、互いに結合することによって、内部に凹部3b及び凹部4bからなる所定の空間部を形成する。第1筐体部3及び第2筐体部4を構成する材料は、特に限定されるものではないが、例えば合成樹脂等の成型材料が好ましい。
【0016】
第1筐体部3は、矩形の枠状の部材であって、液晶表示装置2を収容する空間部の一部である凹部3bが形成されている。凹部3bは、底面部、第1筐体部3の短辺に沿って互いに対向する一対の側壁部3c、3d及び第1筐体部3の長辺に沿って互いに対向する一対の側壁部3e、3fによって囲まれた、略直方体形状を有する。凹部3bの底面部には、液晶表示装置2の画像表示面2aを露出させるための開口部3aが形成されている。
【0017】
互いに対向する一対の側壁部3c、3dには、それぞれ貫通孔3g、3hが形成されている。貫通孔3g、3hは、第1筐体部3及び第2筐体部4を螺子締結する締結用螺子9、10を挿通するためのものである。側壁部3dには、ヒンジ機構部5の第2軸部5cを挿通するための切り欠き3iが形成されている。
【0018】
また、互いに対向する一対の側壁部3e、3fには、凹部3b内側に突出する係止爪部3kが形成されている。係止爪部3kの側壁部3c側に向く面には、斜面部3mが形成されている。斜面部3mは、貫通孔3gが形成された側壁部3cから遠ざかるにつれて凹部3bの内側(空間部の内側)に向かうように形成されている。
【0019】
第2筐体部4は、矩形の枠状の部材であって、第1筐体部3の凹部3b内に嵌合するため外周形状が略矩形状で第1筐体部3に重ね合わせる方向に突出する突部4aを有し、該突部4aが凹部3b内に嵌合することによって、凹部3bの開口を塞ぐ形状を有する。また、突部4a内には、液晶表示装置2を収容する空間部の一部である凹部4bが形成されている。凹部4bは、略直方体形状を有し、第2筐体部4の短辺に沿って互いに対向する一対の側壁部4c、4d及び第2筐体部4の長辺に沿って互いに対向する一対の側壁部4e、4fによって囲まれている。
【0020】
言い換えれば、突部4aは、凹部4bを囲むように矩形の枠状に設けられた側壁部4c、4d、4e及び4fによって構成されている。突部4aが凹部3b内に嵌合した状態において、第1筐体部3と第2筐体部4との間には、凹部3b及び凹部4bからなる空間部が形成される。
【0021】
互いに対向する一対の側壁部4c、4dには、それぞれ貫通孔4g、4hが形成されている。貫通孔4g、4hは、突部4aが凹部3b内に嵌合した状態において、第1筐体部3の貫通孔3g、3hと中心軸が略一致するように設けられている。貫通孔4g、4hは、締結用螺子9、10を挿通するためのものである。側壁部4dには、ヒンジ機構部5の第2軸部5cを挿通するための切り欠き4iが形成されている。
【0022】
また、互いに対向する一対の側壁部4e、4fには、貫通孔である係止孔部4kが穿設されている。図3及び図4に示すように、係止孔部4kは、突部4aが凹部3b内に嵌合した状態において、第1筐体部3の係止爪部3kをその孔の内部に挿入可能に設けられている。本実施形態では、係止孔部4k内に係止爪部3kが挿入されることによって、第1筐体部3と第2筐体部4とは、いわゆるスナップフィット(エラスティックフィットネス)と称される形態で結合される。スナップフィットは、俗にパッチン、パッチン留めとも称される。
【0023】
保持部7は、空間部内に配設され、空間部内において液晶表示装置2を保持する部材である。保持部7は、金属や合成樹脂等からなり、略矩形状の平面部7aと、該平面部7aの各辺から平面部7aに略直交して第1筐体部3側に向かって起立する側面部7c、7d、7e及び7fとを具備して構成されている。側面部7c、7dは平面部7aの短辺に沿って設けられ、側面部7e、7fは平面部7aの長辺に沿って設けられている。
【0024】
保持部7は、平面部7aと、該平面部7aの各辺から第1筐体部3側に向かって起立する側面部7c、7d、7e及び7fとによって、表示面2a以外の5面を囲むようにして液晶表示装置2を保持する。なお、図示しないが、保持部7と液晶表示装置2との間には、接着剤や緩衝材が配設されてもよい。
【0025】
図3に示すように、保持部7は、第2筐体部4の凹部4b内に配設される。この状態において、側面部7cは、第2筐体部4の側壁部4cに当接する。一方、側面部7dは、第2筐体部4の側壁部4dと所定の距離だけ離間した状態で、側壁部4dと略平行に延在する。側壁部4dと側面部7dとの間には、ヒンジ機構部5の第2軸部5cに接続されたブラケット部5dが挟持される。
【0026】
この互いに対向する一対の側面部7c、7dには、それぞれ螺子孔7g、7hが貫通して形成されている。螺子孔7g、7hは、締結用螺子9、10と螺合する雌螺子部が形成されている。螺子孔7g、7hは、保持部7が凹部4b内に配設された状態において、第2筐体部4の貫通孔4g、4hと中心軸が略一致するように設けられている。
【0027】
すなわち、第1筐体部3と第2筐体部4とがスナップフィットにより結合した状態において、第1筐体部の貫通孔3g、3h、第2筐体部4の貫通孔4g、4h、及び保持部7の螺子孔7g、7hは、略同一軸上に位置する。したがって、筐体1の外部から螺子孔7g、7hに締結用螺子9、10を螺合させることによって、第1筐体部3と第2筐体部4とが一体的に固定化される。また、このとき、側壁部4dと側面部7dとの間にブラケット部5dが挟持されることによって、筐体1とヒンジ機構部5とが結合される。
【0028】
本実施形態では、第1筐体部3と第2筐体部4とがスナップフィットにより結合した状態において略同一軸上に配設される貫通孔3g、貫通孔4g及び螺子孔7gが、図3に示すように空間部と筐体1の外部とを連絡する連絡孔11を構成する。該連絡孔11は、矩形状の筐体1の互いに対向する一対の辺のうちの一方、本実施形態では短辺の一方に設けられている。
【0029】
一方、側面部7e、7fは、保持部7が凹部4b内に配設された状態において、第2筐体部4の側壁部4e、4fと所定の距離だけ離間し、側壁部4e、4fと略平行に延在する。また、側面部7e、7fと、螺子孔7hが設けられた側面部7cとの間には、切り欠き部7bが設けられている。
【0030】
凹部4b内において、第2筐体部4の側壁部4e、4fと保持部7の側面部7e、7fとの間には、一対の移動部材8が、矩形状の筐体1の長辺方向に移動可能に配設されている。
【0031】
本実施形態の移動部材8は、金属や合成樹脂等からなり、側壁部4e、4fと側面部7e、7fとの間に挟持された状態で筐体1の長辺方向に摺動する略平面状の摺動部8aと、摺動部8aに略直交して空間部の内側に向かって延出する当接部8bとを具備して構成されている。
【0032】
移動部材8は、第1筐体部3と第2筐体部4とが結合した状態において、移動範囲の連絡孔11側(側壁部4c側)である一端に位置する(図3に示す状態)。摺動部8aには、空間部の外側、すなわち隣接する側壁部4e、4f側に向かって突出する押圧突部8cが設けられている。
【0033】
押圧突部8cは、所定の高さを有して係止孔部4k内に突出している。また、移動部材8が移動範囲の一端に位置している状態において、押圧突部8cは、係止孔部4k内において係止爪部3kよりも連絡孔11側であって、かつ係止爪部3kと接触しない位置に配設されている。
【0034】
言い換えれば、係止孔部4k内において、押圧突部8cは、連絡孔11の中心軸に沿う方向から見た場合に、係止爪部3kと重なりかつ係止爪部3kよりも連絡孔11側に配設されている。
【0035】
図5に示すように、本実施形態では、押圧突部8cは、先端部が側壁部4e、4fの外側の面と略同一平面上に位置する高さを有する。また、本実施形態では、押圧突部8cの係止爪部3kに対向する領域には、係止爪部3kの斜面部3mと略平行な斜面部8dが形成されている。すなわち斜面部8dは、連絡孔11から遠ざかるにつれて空間部内側(摺動部8a側)に向かうように形成されている。
【0036】
当接部8bは、図3に示すように、保持部7の切り欠き部7bを通って螺子孔7gの中心軸上にまで延出する舌片状の部位である。すなわち、連絡孔11の中心軸に沿う方向から見た場合に、当接部8bは、連絡孔11よりも空間部内側において連絡孔11と重なるように配設されている。
【0037】
以上に説明した本実施形態の筐体1における作用を、以下に説明する。
上述したように本実施形態では、第1筐体部3及び第2筐体部4は、凹部3b内に突部4aを押し込むことによって、係止爪部3kが係止孔部4k内に挿入され、筐体3、4の弾性を利用したいわゆるスナップフィットと称される形態で結合する。また、第1筐体部3及び第2筐体部4は、短辺に設けられた螺子孔7g、7hに螺合する締結用螺子9、10によって側壁部4cが側壁部3cと側面部7cとの間に挟まれ、一体的に固定化される。第1筐体部3及び第2筐体部4は、このような構成によって結合することによって、液晶表示装置2を収容するための空間部を内部に形成する。
【0038】
本実施形態において、第1筐体部3及び第2筐体部4の結合を解除するには、まず、締結用螺子9、10を螺子孔7g、7hから取り外す。次に、締結用螺子9が抜去された連絡孔11に、筐体1の外側から空間部内に向かって押圧部材を挿通する。
【0039】
このとき、連絡孔11の空間部側には、移動部材8の当接部8bが配設されているため、押圧部材は当接部8bに当接する。したがって、押圧部材を連絡孔11内において空間部側に押し込むことによって、移動部材8は押圧部材に押圧されて移動範囲の他端側(連絡孔11から遠ざかる方向)に向かって移動する。
【0040】
なお、押圧部材は、連絡孔11内に挿通可能であって、かつ移動部材8を押圧して移動範囲の他端側に移動させることが可能な長さを有する部材であれば、その形態は特に限定されるものではない。本実施形態では一例として、押圧部材は、螺子孔7gに螺合し、締結用螺子9の雄螺子部よりも長い雄螺子部を有する、解除用螺子12である。したがって、本実施形態では、押圧部材である解除用螺子12を、筐体1の外側から螺子孔7gに螺合し空間部側へ移動するようにねじ込むことによって、図6に示すように、移動部材8は解除用螺子12の先端部によって押圧されて移動範囲の他端側へと移動する。
【0041】
移動部材8が移動範囲の一端から他端側へ移動すると、係止孔部4k内においては、移動部材8に設けられた押圧突部8cの斜面部8dと、第1筐体部3の係止爪部3kの斜面部3mとが当接する。さらに移動部材8が移動範囲の他端側へ移動すると、係止孔部4k内において、係止爪部3kは押圧突部8cによって空間部とは反対側(筐体1の外側)に向かって押圧される。そしてこの押圧突部8cによる押圧力によって、係止爪部3kが形成された側壁部3e、3fは外側に向かって弾性変形し、係止爪部3kは係止孔部4k内から筐体1の外側に向かって移動する。すなわち、押圧突部8cは、移動部材8の移動に伴って、くさび状に係止爪部3kを係止孔部4k内から押し出す。
【0042】
そして移動部材8が移動範囲の他端に移動すると、図6及び図7に示すように、係止爪部3kと押圧突部8cは、先端部において互いに当接した状態となる。押圧突部8cの先端部は、係止孔部4kが形成された側壁部4e、4fの外側の面と略同一平面上に位置することから、係止爪部3kは、押圧突部8cによって係止孔部4kから外側に押し出された状態となる。すなわち、係止爪部3k及び係止孔部4kのスナップフィットによる結合が解除される。
【0043】
そして、押圧部材である解除用螺子12を螺子孔7gから取り外し、連絡孔11内から抜去する。このとき、移動部材8は、押圧突部8cの先端部が側壁部3e、3fの弾性によって空間部内側に向かって付勢されており、押圧突部8cの先端部と係止爪部3kの先端部との間の摩擦によって、移動することはない。
【0044】
すなわち、一旦、移動部材8が移動範囲の他端に移動した後は、解除用螺子12を連絡孔11内から抜去しても、第1筐体部3及び第2筐体部4のスナップフィットによる結合が解除された状態が維持される。そして、連絡孔11内から解除用螺子12を抜去することによって、第1筐体部3及び第2筐体部4は、互いに離間する方向に移動することが可能となり、第1筐体部3と第2筐体部4とを分離し離間させることが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、第1筐体部3及び第2筐体部4のスナップフィットによる結合を、連絡孔11内に解除用螺子12をねじ込むだけで、容易かつ確実に解除することができる。また、スナップフィットによる結合を解除する際に第1筐体部3及び第2筐体部4に無理な力が加わることが無いため、第1筐体部3及び第2筐体部4を変形させてしまったり損傷させてしまうことがない。
【0046】
また、本実施形態では、押圧部材である解除用螺子12を空間部内に挿入するための連絡孔11は、第1筐体部3及び第2筐体部4を螺子締結するために設けられた貫通孔3g、貫通孔4g及び螺子孔7gによって構成されている。このため、第1筐体部3及び第2筐体部4のスナップフィットによる結合を解除するためにのみ用いられる構成は、筐体1の外観上は隠された状態となる。したがって本実施形態によれば、従来のように結合を解除するための治具を挿入するための孔等を筐体1の外観上に設ける必要が無く、筐体1の外観の見栄えを損ねることがない。
【0047】
また、本実施形態では、押圧部材である解除用螺子12は、締結用螺子9と同様の通常の螺子部材であることから、特殊な形状の治具を用いることなく、一般的な工具のみによって扱うことができる。例えば、締結用螺子9、10及び解除用螺子12を、同一のサイズのドライバーで扱うことができるようにすれば、単一のドライバーのみで筐体1の組立及び分解を行うことができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電子機器の筐体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0049】
例えば、上述した実施形態においては、連絡孔11を構成する螺子孔7gは保持部7に設けられる構成としたが、螺子孔7gは、第2筐体4又はヒンジ機構部5のブラケット部5dに設けられる構成であってもよい。
【0050】
また、上述した実施形態においては、第1筐体部3及び第2筐体部4を合成樹脂によって形成することが好ましいとしたが、スナップフィットによって結合を利用可能な材料であればこれに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る電子機器の筐体は、上述の実施形態で説明したデジタルカメラの液晶表示装置の筐体に限らず、他の電子機器、例えばデジタルビデオカメラ、録音機器、携帯電話、PDA、パーソナルコンピューター、ゲーム機、デジタルメディアプレーヤー、テレビ、GPS、時計等の筐体の一部であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 筐体、
2 液晶表示装置、
3 第1筐体部、
3a 開口部、
3b 凹部、
3c、3d 側壁部(短辺側)、
3e、3f 側壁部(長辺側)、
3g 貫通孔、
3h 貫通孔、
3i 切り欠き、
3k 係止爪部、
3m 斜面部、
4 第2筐体部、
4a 突部、
4b 凹部、
4c、4d 側壁部(短辺側)、
4e、4f 側壁部(長辺側)、
4g 貫通孔、
4h 貫通孔、
4i 切り欠き、
4k 係止孔部、
5 ヒンジ機構部、
5a 基台部、
5b 第1軸部、
5c 第2軸部、
5d ブラケット部、
7 保持部、
7a 平面部、
7b 切り欠き部、
7c、7d 側面部(短辺側)、
7e、7f 側面部(長辺側)、
7g 螺子孔、
7h 螺子孔、
8 移動部材、
8a 摺動部、
8b 当接部、
8c 押圧突部、
8d 斜面部、
9 締結用螺子、
10 締結用螺子、
11 連絡孔、
12 解除用螺子(押圧部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の少なくとも一部を構成する部材を収容する空間部を有した電子機器の筐体であって、
前記空間部の一部を構成する凹部、及び該凹部の側壁部から内側に突出する係止爪部を有してなる第1筐体部と、
前記凹部内に嵌め合わされる突部、及び該突部の側壁部に穿設され前記係止爪部が挿入される係止孔部を有し、該係止孔部内に前記係止爪部が挿入されることによって前記第1筐体部と結合する第2筐体部と、
前記第1筐体部及び前記第2筐体部が結合した状態において、前記空間部と外部とを連絡する連絡孔と、
前記空間部内において移動可能であって、前記連絡孔に外部から挿通される押圧部材によって押圧可能に配設された移動部材と、
前記移動部材から前記係止孔部内に向かって突設され、前記移動部材の移動に伴い前記係止孔部内から前記係止爪部を押し出す押圧突部と、
を具備することを特徴とする電子機器の筐体。
【請求項2】
前記連絡孔は、前記第1筐体部及び前記第2筐体部を螺子締結するための締結用螺子が挿入される螺子孔及び貫通孔からなり、
前記移動部材は、前記螺子孔の中心軸上に配設された当接部を有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器の筐体。
【請求項3】
前記移動部材は、前記連絡孔の中心軸に沿う方向に移動可能であって、
前記押圧突部は、前記係止孔部内において、前記連絡孔の中心軸に沿う方向から見た場合に前記係止爪部よりも前記連絡孔側に位置し、かつ前記係止爪部と重なるように配設され、
前記押圧突部及び前記係止爪部の少なくとも一方の互いに対向する領域には、前記連絡孔から中心軸に沿って遠ざかるにつれて前記空間部内側に向かう斜面部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の筐体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−9558(P2011−9558A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152693(P2009−152693)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】