説明

電子機器モジュールの製造方法

【課題】対向する被着体間の間隔を維持するスペーサの形成および接着を簡便に行うことができ、生産性を向上できる電子機器モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】耐熱性樹脂フィルムからなる基材2aの両面に熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる接着剤層2b,2cが形成された3層構造からなる接着フィルム2と、接着剤層2bに貼合された粘着剤層または剥離剤層3bを有する剥離フィルム3と、接着剤層2cに貼合された粘着剤層4bを有するキャリアフィルム4を備え、エポキシ系接着剤が半硬化状態に熱処理され、25℃で可撓性を有した固体状であり、接着フィルム2が、電子機器の寸法パターンに合わせて型抜きされ、キャリアフィルム4の上に2次元的に配設されてなる接着フィルム積層体1Aを準備し、剥離フィルム3を剥がして接着剤層2bを基板に固定し、キャリアフィルム4を剥離して型抜きされた接着フィルム5を基板上に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器や電子部品をプリント基板や光学ガラス板などの基板に接着して電子機器モジュールなどに組み立てるのに用いられる接着フィルムを用いた電子機器モジュールの製造方法に関する。
特に本発明は、例えば、有機EL素子などの発光素子や表示素子を電子機器モジュールに組み立てるための、光学ガラス板などの基板に接着するのに用いられる接着フィルムを用いた電子機器モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の組立の際、基板や部品を接着する接着剤として、液状の接着剤のほか、シート状に成形された接着シートが知られている(例えば特許文献1,2)。
特許文献1の段落0031〜0034には、柔軟性エポキシ樹脂、柔軟性硬化剤、シランカップリング剤、潜在性触媒を配合してなる接着体を3層または多層にして、中心層はシランカップリング剤を含まず、応力を緩和する機能に優れ、最外層はシランカップリング剤を含んで、被接着物との接着力が大きくなるようにした構成の柔軟性接着体が記載されている。
特許文献2の段落0005〜0011には、エポキシ樹脂及び硬化剤と、シロキサン変性ポリアミドイミドと、分子量5万以上のゴム成分を含有する接着剤組成物を基材フィルムに塗布し、半硬化状態に熱処理後、基材フィルムから剥離して用いる熱硬化性耐熱接着フィルムが記載されている。
【0003】
また、従来、光学ガラス板やガスバリアフィルムなどの表面保護層に有機EL素子や半導体素子の外周部を接着する方法としては、光学ガラス板やガスバリアフィルムなどの表面保護層に液状封止剤をディスペンサにて塗布して有機EL素子や半導体素子の外周部に貼合する方法(例えば特許文献3,4)や、ガラス板などの第1の板状部材に光硬化性接着剤を用いた接着フィルムを貼合した後、露光・現像によってパターニングし、その後で所定の寸法にてパターニングされた該光硬化性接着剤層からなるリブ材に、第2の板状部材を直接に貼合する方法(例えば特許文献5)が知られている。
【0004】
特許文献3の段落0011および図1,2には、有機EL素子周囲の基板上に、厚みを保持するためにフィラーを含有した紫外線硬化性または熱硬化性の液状接着剤が有機EL素子を取り囲むように塗付され、無機バリア膜を有する可撓性フィルムを付着し、密封された有機ELパネルが記載されている。
特許文献4の段落0010〜0011および図4には、ガラス層にスペーサが形成され、さらにマイクロレンズアレイを具備するシリコン基材の上部にエポキシなどの接着剤で密封されて、マイクロレンズアレイとガラス層の間に空間が形成された半導体モジュールが記載されている。
【0005】
特許文献5の段落0016〜0023および図1には、ガラス板などの基板の表面上に設けられたフィルム状の感光性接着剤からフォトリソグラフィーを用いてパターニングすることで、基板との接着と、有効領域を囲む空間を確保するためのスペーサとして機能する接着層を形成する表示装置の製造方法が記載されている。
また、特許文献6の段落0053〜0055、0078および図2には、ガラス板などの支持基板の上に有機EL層が形成され、接着剤を介して光透過性を有する封止基板が積層された発光装置について、接着剤を用いた封止方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−124557号公報
【特許文献2】特開2002−161261号公報
【特許文献3】特開2007−059311号公報
【特許文献4】特開2006−210888号公報
【特許文献5】特開2009−140666号公報
【特許文献6】特開2010−045011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の接着シートは、半導体装置の組立或いは使用時に発生する熱による応力を緩和するため、ゴム弾性を有する柔軟性エポキシ樹脂を含有する構成である。実施例1では、内厚150μmのシートを25mm角に打ち抜いて使用している。しかしながら、小型の光学ガラス板に表示素子を接着する場合のように、被着体同士の間に空間を形成してその周囲を接着する場合には、ゴム弾性を有する層の厚みを大きくした場合、熱による応力を緩和するには有利であるとしても、弾性変形に伴う厚みの変動が大きく、スペーサのように厚みを所定の寸法から変形しないように維持するのは困難と考えられる。
【0008】
また、特許文献2に記載の耐熱接着フィルムは、室温で固形のエポキシ樹脂にシロキサン変性ポリアミドイミドとゴム成分を添加して、硬化物の耐熱性と密着性を向上したものである。しかし、接着剤の厚みは、実施例で25μmとされている以外には特に記載はなく、光学ガラス板に表示素子を接着する場合のように、被着体同士の間に所定の厚みの空間を形成してその周囲を接着する用途への適用は意図されていない。
また、特許文献3に記載のモジュールは、液状接着剤を精密にパターン塗布する必要があるため、液状接着剤の塗布工程に不良が発生すると、高価な有機EL素子を使用不能にしてしまうという廃棄損失(ロス)の問題がある。
【0009】
特許文献4に記載のモジュールは、接着剤のほかにスペーサとなる支持体の構造物を形成する必要がある。光学ガラス板上のスペーサ形成工程の後に、液状接着剤の塗布工程を行うため、工程が複雑になり、液状接着剤の塗布工程に不良が発生すると、高価な光学用ガラス板を使用不能にしてしまうという廃棄損失(ロス)の問題がある。
特許文献5に記載の表示装置の製造方法は、接着剤のパターンを形成するためのリソグラフィー工程において、パターニングの際に露光不良が発生すると、ガラス板を使用不能にしてしまうという廃棄損失(ロス)の問題がある。また、特許文献5の段落0105〜0106に記載されているように、厚みが100μmを超えると感光性接着フィルム中の残存揮発分が多くなり、発泡に起因する耐湿信頼性が低下する問題がある。
【0010】
特許文献6に記載の発光装置の封止方法において、接着剤は、エポキシ樹脂等の光硬化性接着剤や熱硬化性接着剤を用いることができ、また、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできるとしている。また、特許文献6の段落0078には、有機EL素子の支持基板上の画素の周囲にガラススペーサ(直径:300μm)を分散させた感光性エポキシ樹脂接着剤を塗布した後、封止基板を押付け、UVランプを用いてエポキシ樹脂接着剤を硬化させ、有機EL発光装置を得ることが記載されているが、接着剤層の厚みが数百μm程度に厚くなると、接着剤層の全体を均一にUV硬化させるのが困難になるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、対向する被着体間の間隔を維持するスペーサの形成および接着を簡便に行うことができ、生産性を向上できる電子機器モジュールの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、接着フィルム2の接着剤層2b,2cは可撓性を有し、熱膨張率の異なる、例えば光学ガラス板と半導体基板などの被着体の貼合に用いても、貼合時からの温度変化と熱膨張率の差による変位に追従し、また、基材2aへのせん断応力を吸収して、両被着体との間の接着の破壊を抑制するための接着フィルム積層体を用いた、電子機器モジュールの製造方法を提供する。
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、電子機器と基板とを貼合して電子機器モジュールを製造する方法であって、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする電子機器モジュールの製造方法を提供する。
(1)耐熱性樹脂フィルムからなる基材の両面に、それぞれ熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる第1の接着剤層および第2の接着剤層が形成された3層構造からなる接着フィルムと、前記第1の接着剤層に貼合された粘着剤層または剥離剤層を有する剥離フィルムと、前記第2の接着剤層に貼合された粘着剤層を有するキャリアフィルムとを備え、前記接着フィルムの基材は、厚みが20〜500μmであり、第1の接着剤層および第2の接着剤層は、それぞれ厚みが5〜50μmであって完全に硬化した状態においても可撓性を有し、前記エポキシ系接着剤が半硬化状態に熱処理されてなり25℃において可撓性を有した固体状であり、前記接着フィルムが、電子機器の寸法パターンに合わせて型抜きされ、前記キャリアフィルムの上に2次元的に配設されてなる接着フィルム積層体を準備する工程、
(2)前記接着フィルム積層体から前記剥離フィルムを剥がした後、前記キャリアフィルム上の前記型抜きされた接着フィルムを基板の上に重ね合わせ、加熱処理により前記第1の接着剤層の接着力を発現して前記基板に固定し、さらに前記キャリアフィルムを剥離することにより、前記型抜きされた接着フィルムを前記基板上に転写する工程、
(3)前記型抜きされた接着フィルムが転写された前記基板を、電子機器の寸法パターンに合わせて小片にダイシングする工程、
(4)前記小片に転写されている前記型抜きされた接着フィルムの前記第2の接着剤層の上に電子機器を重ね合わせ、加熱処理により前記第2の接着剤層の接着力を発現して前記電子機器に固定し、前記基板の小片と前記電子機器とを前記型抜きされた接着フィルムを介して接着し、電子機器モジュールに組み立てる工程。
【0014】
また、本発明は、電子機器と基板とを貼合して電子機器モジュールを製造する方法であって、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする電子機器モジュールの製造方法を提供する。
(1)耐熱性樹脂フィルムからなる基材の両面に、それぞれ熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる第1の接着剤層および第2の接着剤層が形成された3層構造からなる接着フィルムと、前記第1の接着剤層に貼合された粘着剤層または剥離剤層を有する剥離フィルムと、前記第2の接着剤層に貼合された粘着剤層を有するキャリアフィルムとを備え、前記接着フィルムの基材は、厚みが20〜500μmであり、前記エポキシ系接着剤が半硬化状態に熱処理されてなり25℃において可撓性を有した固体状であり、前記接着フィルムが、電子機器の寸法パターンに合わせて型抜きされ、前記キャリアフィルムの上に2次元的に配設されてなる接着フィルム積層体を準備する工程、
(2)前記接着フィルム積層体から前記剥離フィルムを剥がした後、前記キャリアフィルム上の前記型抜きされた接着フィルムを基板の上に重ね合わせ、加熱処理により前記第1の接着剤層の接着力を発現して前記基板に固定し、さらに前記キャリアフィルムを剥離することにより、前記型抜きされた接着フィルムを前記基板上に転写する工程、
(3)前記基板に転写されている前記型抜きされた接着フィルムの前記第2の接着剤層の上に電子機器を重ね合わせ、加熱処理により前記第2の接着剤層の接着力を発現して前記電子機器に固定し、前記基板と前記電子機器とを前記型抜きされた接着フィルムを介して接着する工程、
(4)前記型抜きされた接着フィルムを介して前記電子機器が接着された前記基板を、電子機器の寸法パターンに合わせて小片にダイシングし、電子機器モジュールに組み立てる工程。
【0015】
前記電子機器が発光素子または表示素子であり、前記基板が光学ガラス板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被着体への貼合前に打ち抜き等で接着フィルムのパターニングが可能であり、接着フィルムは、2つの被着体の間に配置して圧着することで貼合可能なので、被着体上での接着フィルムのパターニングが不要となる。これにより、パターニング不良による被着体のロスが発生せず、製造コストの大幅な節減が期待できる。また、液状接着剤をディスペンサから塗布するときのように接着剤の幅の広がりが生じて、接着剤が不必要な部分まで塗布される恐れがない。
また、2つの被着体同士の間隔が大きい場合であっても、本発明の3層構造からなる接着フィルムの中間層である基材の厚みを増大させて接着フィルムの厚みを大きくすることができるので、高価な接着剤を節約し、コスト増を抑制することができる。
接着フィルムが、電子機器の寸法パターンに合わせて型抜きされ、キャリアフィルムの上に2次元的に配設されているので、1つの基板に多数の接着フィルムを一度に転写することができ、生産性を大幅に向上することができる。
【0017】
また、電子機器モジュールを製造するとき、絶縁封止用の樹脂をモールドしたり(加工時の操作温度は、例えば180℃程度)、回路配線を接続するための半田をリフローさせたり(加工時の操作温度は、例えば260℃程度)する必要があるが、本発明に係わる接着フィルム積層体は、耐熱性に優れるので、電子機器モジュールの製造工程における熱履歴によって劣化しにくく、接着性能の変化が小さい。
また、本発明に係わる接着フィルム積層体のエポキシ接着剤は、完全に硬化した状態においても可撓性を有するため、熱膨張率の異なる被着体、例えば光学ガラス板と半導体基板などの貼合に用いても、貼合時からの温度変化と熱膨張率の差による変位に追従し、また、中間層である基材へのせん断応力を吸収して、両被着体との間の接着の破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明で用いられる接着フィルム積層体の第1の形態例を示す断面図である。
【図2】本発明の接着フィルム積層体において枠状に打ち抜かれた接着フィルムの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の接着フィルム積層体における接着フィルムのパターンの一例を示す断面図である。
【図4】接着フィルムが型抜きされる前の接着フィルム積層体の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の接着フィルム積層体の第2の形態例を示す断面図である。
【図6】図5に示す接着フィルム積層体の剥離フィルムを剥がして光学ガラス板に貼合した状態の一例を示す断面図である。
【図7】光学ガラス板に型抜きされた接着フィルムを転写した状態の一例を示す断面図である。
【図8】型抜きされた接着フィルムが仮固定された光学ガラス板の小片の一例を示す断面図である。
【図9】接着フィルムを介して電子機器が接着された光学ガラス板の小片の一例を示す断面図である。
【図10】接着フィルムを介して電子機器が接着された光学ガラス板の一例を示す断面図である。
【図11】接着フィルムを介して電子機器が接着された光学ガラス板の小片の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、本形態例の電子機器モジュールの製造方法で用いられる接着フィルム積層体1Aは、耐熱性樹脂フィルムからなる基材2aの両面に、それぞれ熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる第1の接着剤層2bおよび第2の接着剤層2cが形成された3層構造からなる接着フィルム2と、第1の接着剤層2bに貼合された第1の粘着剤層または剥離剤層3bを有する剥離フィルム3と、第2の接着剤層2cに貼合された第2の粘着剤層4bを有するキャリアフィルム4とを備える。
【0020】
そして、接着フィルム2の基材2aは、厚みが20〜500μmであり、第1の接着剤層2bおよび第2の接着剤層2cは、それぞれ厚みが5〜50μmであって完全に硬化した状態においても可撓性のある熱硬化性のエポキシ系接着剤層が形成されてなる3層構造からなり、前記エポキシ系接着剤層が、半硬化状態に熱処理されてなり25℃において可撓性を有した固体状である。
また、本発明に係わる熱硬化性のエポキシ系接着剤層は、完全に硬化した状態において25℃、1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が1.0〜1800MPaであり、完全に硬化した状態にての折り曲げ評価試験において、複数回の折り曲げ操作によっても破壊することが無く可撓性を有する。
図1〜3に示すように、接着フィルム2が、電子機器の寸法パターンに合わせて型抜きされ、多数の型抜き形状5がキャリアフィルム4の上に2次元的に配設されている。
【0021】
接着フィルム2の基材2aとしては、耐熱性樹脂フィルムが用いられる。基材2aに要求される耐熱性とは、分解開始温度が少なくとも200℃以上であることをいい、接着フィルムを被着体に貼合した後のプロセス中に受ける熱処理の温度に応じて設定される。
耐熱性樹脂フィルムを構成する耐熱性樹脂は、融点が180℃以上のものが選ばれる。このような耐熱性樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等が挙げられる。
【0022】
接着フィルム2の基材2aの両面に設けられる接着剤層2b,2cは、半硬化状態(硬化率50%)での線形領域内のひずみを付加し、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2.0KPa〜350KPaであり、完全に硬化した状態においてひずみ依存性測定を行った際の25℃、1Hzでの線形領域内の貯蔵弾性率(E’)が1.0〜1800MPaである熱硬化性のエポキシ系接着剤層2b,2cからなる。
また、接着剤層2b,2cは、電子機器モジュールを製造するとき、絶縁封止用の樹脂をモールドしたり(例えば180℃程度の操作温度で行う)、回路配線を接続するための半田をリフローさせたり(例えば260℃程度)する温度においてアウトガスが発生しない熱硬化性のエポキシ系接着剤層3,4からなるものが好ましい。
具体例としてはDIC(株)製エピクロンEXA−4816等である。
【0023】
接着剤層2b、2cに用いるエポキシ系接着剤としては、耐熱性と可撓性に優れるものが用いられる。このようなエポキシ樹脂としては、脂肪鎖変性エポキシ樹脂、シクロペンタジエン変性エポキシ樹脂やナフタレン変性エポキシ樹脂等の炭化水素変性エポキシ樹脂、エラストマー変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂の中で、1分子中に2以上のエポキシ基を有し、完全に硬化した状態での折り曲げ評価試験において、1回以上の折り曲げ操作に耐え得るエポキシ樹脂が、可撓性の点において好ましい。
この1分子中に2以上のエポキシ基を有し、折り曲げ評価試験において1回以上の折り曲げ操作に耐え得る可撓性を有するエポキシ樹脂としては、DIC(株)製エピクロン860、エピクロン900−IM、エピクロンEXA―4816、エピクロンEXA−4822、旭チバ(株)製アラルダイトAER280、東都化成(株)製エポトートYD−134、ジャパンエポキシレジン(株)製JER834、JER872、住友化学工業(株)製ELA−134等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC(株)製エピクロンHP−4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC(株)製エピクロンN−740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等である。これらのエポキシ樹脂は1種類を用いるか、又は2種類以上を併用することができる。
これらの樹脂の中で特に好ましい具体例としては、DIC(株)の柔軟性エポキシ樹脂(商品名EPICLON(登録商標)EXA−4816)等が挙げられる。この柔軟性エポキシ樹脂は、長鎖炭化水素鎖とビスフェノールA骨格とを、アセタール結合(長鎖炭化水素鎖を有するジビニルエーテル)、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合等の官能基を介して交互に連結して高分子量化された2官能性フェノール化合物の両端のOH基をグリシジル化して得られる2官能性エポキシ化合物である。
【0024】
エポキシ系接着剤には、適宜の添加剤を添加することができる。
硬化剤は、としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族酸無水物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシリレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、ポリフェノール化合物等が挙げられる。
硬化促進剤としては、ベンジルジメチルアミン(BDMA)などの第三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0025】
エポキシ系接着剤を基材2aに塗布する際、十分な流動性があれば無溶媒とすることも可能であるが、有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
基材2aの両面にエポキシ系接着剤を塗布する際は、片面の接着剤を塗布した後、他方の面の接着剤を塗布する前に、剥離フィルム3またはキャリアフィルム4のいずれかを塗布済みの接着剤層の上に貼合しても良い。
図4に、接着フィルム2が型抜きされる前の接着フィルム積層体1の断面図を示す。
【0026】
本形態例の接着フィルム積層体1Aおよび型抜き前の接着フィルム積層体1においては、接着剤層2b,2cを構成するエポキシ系接着剤は、接着フィルム2の基材2aの両面に塗布乾燥後、半硬化状態に熱処理されている。この結果、接着剤層2b,2cが25℃において可撓性を有した固体状であるため、図2に示すように、接着フィルム2の型抜きにより、内部に貫通穴状の空間6を有する枠状等の所望の形状を備える型抜き形状5に加工することが容易になる。液状物の塗布や、フォトリソグラフィーによる露光などに比べ、パターン形成の不良が起こりにくい。また、不良があっても、選択して除去することにより、被着物の廃棄損失(ロス)を避けることができる。
【0027】
枠状の外周形状は、円形(丸枠)、四角形(四角枠)など特に限定されない。型抜きの方法は、打ち抜きや切断等、刃物を用いて不要な部分を除去する方法であれば良い。1つの型抜きされた接着フィルム5の内部に、複数の貫通穴状の空間6を設けることも可能である。
型抜きされた接着フィルム(型抜き形状)5の寸法は、貼合される電子機器など被着体の寸法パターンに合わせて設定することが好ましい。
刃物加工に適した半硬化状態を得るための熱処理は、通常の硬化条件よりも低温および/または短時間で完了させるものであり、エポキシ系接着剤の性質や性能に応じて適宜設定することができる。
【0028】
エポキシ系接着剤層2b,2cを構成するエポキシ系接着剤としては、温度90〜110℃において仮固定され、温度140〜160℃において最終固定されることが可能なものが選択される。接着剤の硬化温度は、硬化剤や硬化促進剤の配合などによっても制御可能である。
【0029】
接着フィルム2の基材2aの厚みは、20〜500μmであり、それぞれのエポキシ系接着剤層2b,2cの厚みは、5〜50μmである。基材2aの厚みは、接着フィルム2全体の厚み(すなわち第1の接着剤層2b、基材2aおよび第2の接着剤層2cの厚みの合計)の50〜98%程度が好ましい。
【0030】
剥離フィルム3は、接着フィルム積層体1Aの使用時に最初に剥離される保護フィルムであり、キャリアフィルム4は、剥離フィルム3の剥離後も接着フィルム2を支持する支持基材である。剥離フィルム3およびキャリアフィルム4としては、基材3a,4aの上に、粘着剤層または剥離剤層3b、粘着剤層4bが設けられた片面粘着フィルムが好適に用いられる。
基材3a,4aを構成するフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ノルボルネン系フィルム、フェノキシエーテル型重合体フィルム、有機耐透気性フィルムをはじめとする単層または複層プラスチックフィルムが挙げられる。
粘着剤層または剥離剤層3b、粘着剤層4bを構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
また、剥離剤層を構成する剥離剤としては、任意の剥離剤を用いることができるが、剥離特性のすぐれたシリコーン系剥離剤が望ましい。
【0031】
本形態例の接着フィルム積層体1Aは、型抜き前の接着フィルム積層体1から剥離フィルム3を剥離した後、キャリアフィルム4上で接着フィルム2を被着体の寸法パターンに合わせて型抜きすることにより、図3に示すように、被着体の寸法パターンに合わせて形成された型抜き形状5(図3の例の場合は、四角形の枠状である)が、キャリアフィルム4の上に2次元的に配設された状態となるように加工することができる。
キャリアフィルム4が、接着フィルム2に貼合される粘着剤層4bを有するので、型抜きの際、常温25℃で可撓性を有した固体状の接着剤層2b,2cを、基材2aの両面に有する接着フィルム2を、より確実に保持することができる。
【0032】
また、接着フィルム2の型抜き後、図1に示すように、型抜きされた接着フィルム5の上を、再び剥離フィルム3で覆ってロール状に巻き取り、型抜きされた接着フィルム5が剥離フィルム3とキャリアフィルム4の間に支持された接着フィルム積層体1Aを製造することもできる。
この場合、製品検査を合格した接着フィルム積層体1Aは、例えば、半導体装置の組み立て工程で使用されるまでロール状に巻き取って保存することができるので、半導体装置の組み立て工程で使用される際には接着フィルム2を型抜き及び製品検査を行う必要がなく、半導体装置の組み立て工程の生産性をさらに向上させることができる。
剥離フィルム3およびキャリアフィルム4が、それぞれ接着フィルム2に貼合される粘着剤層または剥離剤層3b、粘着剤層4bを有するので、ロールへの巻取りやロールからの繰出し、また、搬送の際、常温25℃で可撓性を有した固体状の接着剤層2b,2cを、基材2aの両面に配設した接着フィルム2をより確実に保持することができる。
【0033】
また、図5に示すように、接着フィルム2の型抜き形状5が枠状であり、さらに型抜き形状5の枠内の空間6に相当する位置においてキャリアフィルム4がくり抜かれた構成の接着フィルム積層体1Bを製造することもできる。この場合、図6に示すように、剥離フィルム3を剥離して、型抜き形状5とした接着フィルム2を光学ガラス板7等の被着体に貼合するとき、キャリアフィルム4の基材4a及び第2の粘着剤層4bには穴4cが開いた状態に除去されているので、枠内の空間6を通じてキャリアフィルム4の第2の粘着剤層4bが光学ガラス板7等の被着体に付着(転写)して汚れとなるのを防止することができる。
空間6の位置で接着フィルム2を型抜きする工程と、空間6に対応する穴4cをキャリアフィルム4に開口する工程とは、同時に行うこともできるし、別々の工程で行うこともできる。
図5に示す接着フィルム積層体1Bも、図1の接着フィルム積層体1Aと同様に、半導体装置の組み立て工程を行うまでロール状に巻き取って保存することができる。
【0034】
上述の接着フィルム積層体1A、1Bは、例えば図9,11に示すように、光学ガラス板7に素子基板(電子機器)8が貼合された電子機器モジュール10,10Aの製造工程に好適に用いることができる。
本形態例の電子機器8は、発光素子や表示素子などの素子基板であり、光学ガラス板などの基板7と対向する側に表示素子等のデバイス9を有する。デバイス9は、特に限定されるものではないが、例えば、有機EL素子などの発光素子や表示素子である。
【0035】
接着フィルム2の型抜き形状5は、デバイス9を露出するための空間6を有する。この空間6は、デバイス9によって放射される光などの物理的刺激を通過可能である。デバイス9は、光などの物理的刺激を放射する表示装置が好ましい。
なお、電子機器8と貼合される基板7として、光学ガラス板(基板)のほか、プリント基板、絶縁基板、樹脂基板、半導体基板などの各種基板を採用することも可能である。該基板は、可撓性を有するフィルムやシート等であっても構わない。
【0036】
本形態例の接着フィルム2は、上述したように、接着剤層2b,2cが常温25℃では可撓性を有した固体状であるので、基板7と電子機器8とを貼合するときには、まず第1の接着剤層2bを基板7と重ね合わせて加熱および加圧して仮固定し、次いで、第2の接着剤層2cを電子機器8と重ね合わせて加熱および加圧して仮固定し、さらに加熱温度を高めて最終固定することが好ましい。
ここで、仮固定の温度は、接着剤が溶融して被着体に対する接着性を発現可能な温度であり、最終固定の温度は、接着剤が硬化して接着強度がさらに高まる温度である。仮固定の段階では、接着剤の硬化は抑制されているので、仮固定後に接着剤が冷却しても、再び加熱することで、接着性を発現することができる。最終固定後は、接着剤が熱硬化することで再溶融不能になり、耐熱性が向上する。
【0037】
また、本発明に係わる電子機器モジュールの製造方法において、接着フィルムの被着体が、例えば光学ガラスとシリコンウエハーである場合を想定して、これらの材質の線膨張係数を、表1に示した。
本発明に係わる接着フィルムを介して、これらの熱膨張率(線膨張係数)の大きく異なる被着体を接着する場合、接着フィルムが高温に加熱された時に、被着体であるシリコンウエハーに比べて約2.5倍も線膨張係数の大きな光学ガラスにより、接着フィルムの全体を拡げる方向に引っ張られてしまう。仮に、接着フィルムが可撓性を有しておらず被着体に強固に接着されていると、最後には熱応力によって破壊することが起こり得る。
【0038】
【表1】

【0039】
しかしながら、本発明に係わる電子機器モジュールの製造方法において、接着フィルム2の接着剤層2b,2cは可撓性を有するため、熱膨張率の異なる、例えば光学ガラス板と半導体基板などの貼合に用いても、貼合時からの温度変化と熱膨張率の差による変位に追従し、また、基材2aへのせん断応力を吸収して、両被着体との間の接着の破壊を抑制することができる。
【0040】
本発明による電子機器モジュールの製造方法の第1形態例を以下に例示する。
(1)まず、上述の接着フィルム積層体1A、1Bを準備する。
(2)接着フィルム積層体1A、1Bから剥離フィルム3を剥がした後、キャリアフィルム4上の型抜きされた接着フィルム5を基板7の上に重ね合わせ、加熱処理により第1の接着剤層2bの接着力を発現して基板7に固定する。この段階では、接着剤層2b,2cには仮固定の温度で熱処理を加える。
さらにキャリアフィルム4を剥離することにより、図7に示すように、複数の型抜きされた接着フィルム5を基板7上に転写することができる。
【0041】
(3)図8に示すように、型抜きされた接着フィルム5が転写された基板7を、電子機器8の寸法パターンに合わせて小片にダイシングする。
(4)基板7の小片に転写されている型抜きされた接着フィルム2の第2の接着剤層2cの上に、電子機器8を重ね合わせる。加熱処理により第2の接着剤層2cの接着力を発現して電子機器8に固定し、図9に示すように、基板7の小片と電子機器8とを型抜きされた接着フィルム5を介して接着し、電子機器モジュール10を組み立てる。
【0042】
本形態例で接着剤層2b,2cに用いられるエポキシ接着剤は、光学ガラス板などの基板7のダイシングの際に水と接触しても接着性能が劣化しない。また、(2)の基板7への仮固定後から(4)の電子機器8への接着までの間に数日が経過しても接着性能が劣化しない。
【0043】
本発明においては、図7に示すように、複数の型抜きされた接着フィルム5を基板7上に転写した後、基板7を小片にダイシングする前の段階で、基板7と電子機器8とを型抜きされた接着フィルム5を介して接着することができる。
本発明による電子機器モジュールの製造方法の第2形態例を以下に例示する。
【0044】
(1)および(2)は、第1形態例の製造方法と同様である。
(3)基板7に転写されている型抜きされた接着フィルム5の第2の接着剤層2cの上に電子機器8を重ね合わせ、加熱処理により第2の接着剤層2cの接着力を発現して電子機器8に固定し、基板7と電子機器8とを型抜きされた接着フィルム5を介して接着する。
この場合、図10に示すように、電子機器8としては、半導体ウエハのように、複数の電子機器8が基板状に連続した構成を採用することも可能である。
【0045】
(4)図11に示すように、型抜きされた接着フィルム5を介して電子機器8が接着された基板7を、電子機器8の寸法パターンに合わせて小片にダイシングし、電子機器モジュール10Aに組み立てる。この場合、ダイシングで得られた個々の小片から、それぞれ電子機器モジュール10Aを構成することができる。
複数の電子機器が基板状に連続した構成の場合は、基板7とともに電子機器もダイシングする。この場合、基板7の平面寸法は、電子機器の平面寸法と同程度になるのが通常である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0047】
<実施例1>
本発明の電子機器モジュールの製造方法に係わる、実施例1の接着フィルム積層体の製造方法は、次のとおりである。
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムの片面に、エポキシ接着剤としてDIC株式会社の柔軟性エポキシ樹脂(商品名EPICLON(登録商標)EXA−4816)を乾燥厚みが15μmとなるように塗工した。接着剤の塗布面に、粘着剤層または剥離剤層を有する剥離フィルムを貼合した後、同じ柔軟性エポキシ樹脂を同じ乾燥膜厚でPET樹脂フィルムの反対面に塗工し、さらに反対面の接着剤の塗布面に、粘着剤層を有するキャリアフィルムを貼合した。
エポキシ接着剤の塗工後、120℃で4分間熱処理し、エポキシ接着剤が半硬化した3層構造からなる、接着フィルムを、剥離フィルムとキャリアフィルムとで挟んでなる接着フィルムを得た。
この接着フィルムを、外形寸法が10mm角、内径寸法が8mm角の四角形枠からなる電子機器を模擬した寸法形状に型抜きして、前記キャリアフィルムに2次元的に配設されてなる、実施例1の接着フィルム積層体を作成した。
また、実施例1の接着フィルム積層体に用いたエポキシ接着剤について、下記の半硬化状態での貯蔵弾性率の測定、完全硬化状態での貯蔵弾性率の測定、及び折り曲げ評価試験を行った。
また、得られた実施例1の接着フィルム積層体について、剥離フィルムおよびキャリアフィルムを剥離して接着フィルムのエポキシ接着剤層に触れたところ、エポキシ接着剤層は、25℃では可撓性を有した固体状であり手指で接着剤の表面に触れてもまったくベタ付きのない指触乾燥状態にあり、タック性を示さないことを確認した。
また、得られた実施例1の接着フィルム積層体は、接着剤層が25℃では可撓性を有した固体状であることから、電子機器を模擬した寸法に接着フィルムを型抜きする作業を、容易に行うことができた。
【0048】
(エポキシ接着剤の熱重量測定)
本実施例1の接着フィルム積層体の製造方法で用いたエポキシ接着剤の熱重量測定(TG)によりTG曲線を求めた。得られたTG曲線は、332℃に開始温度が認められ、そのときの重量変化率が−13.5%であったことから、このエポキシ接着剤の分解開始温度は332℃と求められた。
【0049】
(エポキシ接着剤のアウトガス評価)
また、本実施例1の接着フィルム積層体の製造方法で用いたエポキシ接着剤を完全に硬化後、熱分解ガスクロマトグラフ測定により、260℃での耐熱性を評価した。250℃から毎分10℃で温度を上昇させて260℃に到達後、260℃で10分間保持したが、その間のアウトガスの発生がないことを確認した。
【0050】
(仮固定時の180°剥離強度)
本実施例1の接着フィルム積層体を、光学ガラス板の仮固定に使用した時の性能を評価するため、次の方法により、仮固定時の180°剥離強度を測定した。
本実施例1の接着フィルム積層体より剥離フィルムとキャリアフィルムとを除去した接着フィルムから、幅10mmの試験片を5つ作製し、100℃に予備加熱した光学ガラス板に対して、100℃、500gf/cm、1秒間の条件で各試験片の一端部を圧着し、仮固定のサンプルを作製した。各試験片の他端部(自由端)を剥離速度300mm/minで引っ張りながら180°剥離強度を測定したところ、n=5で平均した剥離強度は、927gfであった。
【0051】
(最終固定時のずりせん断強度)
本実施例1の接着フィルム積層体を、光学ガラス板とシリコン基板に最終固定した時の性能を評価するため、次の方法により、ずりせん断強度(引張せん断接着強さ)を測定した。
サンプルは、細長形状の光学ガラス板およびシリコン基板が一端部のみで重なり合い、本実施例1の接着フィルムを介して接着され、光学ガラス板の他端部とシリコン基板の他端部とが接着部分を介して長さ方向の反対側に配置された構造である。
サンプルの作製方法は、まず幅10mmの光学ガラス板の一端部に、10mm(幅)×10mm(引張方向長さ)に加工して作製した接着フィルムを配置し、100℃、500gf/cm、1秒間の条件で圧着して仮固定した後、接着フィルムを介して幅10mmのシリコン基板の一端部を重ね合わせ、100℃、500gf/cm、1秒間の条件で圧着して仮固定した後、150℃、1分間の条件で加熱硬化処理をして最終固定する方法とした。
光学ガラス板の他端部を治具で保持して固定し、シリコン基板の他端部をつかみ部として20kgfの引っ張り荷重を加えたところ、サンプル数5の毎回、接着部分は破壊されなかった。このことから、n=5で平均したずりせん断強度は、20kgf以上であることが分かった。
【0052】
<実施例2>
本発明の電子機器モジュールの製造方法に係わる、実施例2の接着フィルム積層体の製造方法としては、エポキシ接着剤として、DIC株式会社の柔軟性エポキシ樹脂(商品名EPICLON(登録商標)EXA−4850−150)を使用した以外は、実施例1と同様の作成方法により、型抜きされた接着フィルムが、キャリアフィルムに2次元的に配設されてなる、実施例2の接着フィルム積層体を得た。
実施例2の接着フィルム積層体に用いたエポキシ接着剤について、実施例1と同様に、半硬化状態での貯蔵弾性率の測定、完全硬化状態での貯蔵弾性率の測定、及び折り曲げ評価試験を行った。
また、得られた実施例2の接着フィルム積層体に用いたエポキシ接着剤層は、25℃では可撓性を有した固体状であった。
また、得られた実施例2の接着フィルム積層体は、電子機器を模擬した寸法に接着フィルムを型抜きする作業を、容易に行うことができた。
【0053】
<比較例1>
本発明の電子機器モジュールの製造方法に係わる、比較例1の接着フィルム積層体の製造方法としては、エポキシ接着剤として、DIC株式会社のBPA型液状エポキシ樹脂(商品名EPICLON(登録商標)840−S)を使用した以外は、実施例1と同様の作成方法により、型抜きされた接着フィルムが、キャリアフィルムに2次元的に配設されてなる、比較例1の接着フィルム積層体を得た。
比較例1の接着フィルム積層体に用いたエポキシ接着剤について、実施例1と同様に、半硬化状態での貯蔵弾性率の測定、完全硬化状態での貯蔵弾性率の測定、及び折り曲げ評価試験を行った。
また、得られた比較例1の接着フィルム積層体に用いたエポキシ接着剤層は、25℃では固体状であった。
また、得られた比較例1の接着フィルム積層体は、実施例1,2と比較して、半硬化状態の25℃における接着剤層がやや硬かったが、電子機器を模擬した寸法に接着フィルムを型抜きする作業を、比較的に容易に行うことができた。
【0054】
(完全に硬化した状態でのエポキシ系接着剤層の貯蔵弾性率の測定方法)
TA Instrument社製の動的粘弾性自動測定装置(型式:RSA−3)を用い、厚み約0.5mm、幅約5mm、長さ約3mmの、完全に硬化した状態でのエポキシ系接着剤層のサンプルについて、ひずみ依存性の測定を行い、25℃の大気圧下において、周波数1Hzを印加した際の貯蔵弾性率(E’)の線形領域内の値を求めた。
【0055】
(半硬化状態でのエポキシ系接着剤層の貯蔵弾性率の測定方法)
Anton Paar社製の動的粘弾性自動測定装置(型式:MCR‐301)を用い、直径25mmのフラットプレート、線形領域内のひずみを付加、周波数1Hz、30℃から昇温して200℃まで昇温速度5℃/minの条件で加熱しながら、未硬化の液状エポキシ接着剤を経時測定する。エポキシ接着剤の硬化の進行によって貯蔵弾性率は上昇して完全硬化することで一定となる。エポキシ系接着剤層の未硬化時の貯蔵弾性率と、完全に硬化時の貯蔵弾性率の中点を半硬化状態(例えば、硬化率50%)の貯蔵弾性率として求めた。
【0056】
(エポキシ接着剤の折り曲げ評価試験)
熱硬化性のエポキシ系接着剤層が、完全に硬化した状態において可撓性を有するかどうかを判定するため、次の方法によりエポキシ接着剤の折り曲げ評価試験を行った。
エポキシ接着剤の厚みが1mm、幅15mm、長さ100mmの完全に硬化した状態の、折り曲げ評価試験用のサンプルを作成した。当該サンプルを垂直に吊り下げて固定して、荷重1kgを当該サンプルの下端に吊り下げて鉛直方向に荷重を付加し、当該サンプルの表裏(当該サンプルの鉛直線から左右)に各々135°、180往復/1minの条件にて折り曲げて、破断するまでの折り曲げ操作の回数を求めた。
【0057】
実施例1、実施例2及び比較例1について、半硬化状態での貯蔵弾性率、完全硬化状態での貯蔵弾性率、折り曲げ評価試験をそれぞれ行なった。測定結果を、表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示した接着フィルムに用いたエポキシ接着剤の折り曲げ評価試験の結果において、実施例1、実施例2のエポキシ接着剤は、折り曲げ試験用のサンプルが破壊するまでの折り曲げ操作回数が、それぞれ10回、520回であり、複数回の折り曲げ操作によっても破壊しない充分な可撓性を有していた。
一方、比較例1においては、エポキシ接着剤の折り曲げ評価試験において、折り曲げ操作の1回目にて破壊したため、可撓性を有しておらず、本発明の接着フィルムに係わるエポキシ接着剤には適用できないものであった。
以上の結果から、本発明に係わる実施例1,2の接着フィルムが、電子機器モジュールの製造に必要な、半硬化状態に熱処理されてなり25℃において可撓性を有した固体状であり、さらに、完全に硬化した状態においても可撓性を有していることから、可撓性と、スペーサとしての形状保持性を兼ね備えていることを確認することができた。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B…接着フィルム積層体、2…接着フィルム、2a…接着フィルムの基材、2b…第1の接着剤層、2c…第2の接着剤層、3…剥離フィルム、3a…剥離フィルムの基材、3b…第1の粘着剤層または剥離剤層、4…キャリアフィルム、4a…キャリアフィルムの基材、4b…第2の粘着剤層、4c…穴、5…型抜きされた接着フィルム(型抜き形状)、6…空間、7…光学ガラス板(基板)、8…素子基板(電子機器)、9…デバイス、10,10A…電子機器モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器と基板とを貼合して電子機器モジュールを製造する方法であって、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする電子機器モジュールの製造方法。
(1)耐熱性樹脂フィルムからなる基材の両面に、それぞれ熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる第1の接着剤層および第2の接着剤層が形成された3層構造からなる接着フィルムと、前記第1の接着剤層に貼合された粘着剤層または剥離剤層を有する剥離フィルムと、前記第2の接着剤層に貼合された粘着剤層を有するキャリアフィルムとを備え、前記接着フィルムの基材は、厚みが20〜500μmであり、第1の接着剤層および第2の接着剤層は、それぞれ厚みが5〜50μmであって完全に硬化した状態においても可撓性を有し、前記エポキシ系接着剤が半硬化状態に熱処理されてなり25℃において可撓性を有した固体状であり、前記接着フィルムが、電子機器の寸法パターンに合わせて型抜きされ、前記キャリアフィルムの上に2次元的に配設されてなる接着フィルム積層体を準備する工程、
(2)前記接着フィルム積層体から前記剥離フィルムを剥がした後、前記キャリアフィルム上の前記型抜きされた接着フィルムを基板の上に重ね合わせ、加熱処理により前記第1の接着剤層の接着力を発現して前記基板に固定し、さらに前記キャリアフィルムを剥離することにより、前記型抜きされた接着フィルムを前記基板上に転写する工程、
(3)前記型抜きされた接着フィルムが転写された前記基板を、電子機器の寸法パターンに合わせて小片にダイシングする工程、
(4)前記小片に転写されている前記型抜きされた接着フィルムの前記第2の接着剤層の上に電子機器を重ね合わせ、加熱処理により前記第2の接着剤層の接着力を発現して前記電子機器に固定し、前記基板の小片と前記電子機器とを前記型抜きされた接着フィルムを介して接着し、電子機器モジュールに組み立てる工程。
【請求項2】
電子機器と基板とを貼合して電子機器モジュールを製造する方法であって、下記(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする電子機器モジュールの製造方法。
(1)耐熱性樹脂フィルムからなる基材の両面に、それぞれ熱硬化性のエポキシ系接着剤からなる第1の接着剤層および第2の接着剤層が形成された3層構造からなる接着フィルムと、前記第1の接着剤層に貼合された粘着剤層または剥離剤層を有する剥離フィルムと、前記第2の接着剤層に貼合された粘着剤層を有するキャリアフィルムとを備え、前記接着フィルムの基材は、厚みが20〜500μmであり、前記エポキシ系接着剤が半硬化状態に熱処理されてなり25℃において可撓性を有した固体状であり、前記接着フィルムが、電子機器の寸法パターンに合わせて型抜きされ、前記キャリアフィルムの上に2次元的に配設されてなる接着フィルム積層体を準備する工程、
(2)前記接着フィルム積層体から前記剥離フィルムを剥がした後、前記キャリアフィルム上の前記型抜きされた接着フィルムを基板の上に重ね合わせ、加熱処理により前記第1の接着剤層の接着力を発現して前記基板に固定し、さらに前記キャリアフィルムを剥離することにより、前記型抜きされた接着フィルムを前記基板上に転写する工程、
(3)前記基板に転写されている前記型抜きされた接着フィルムの前記第2の接着剤層の上に電子機器を重ね合わせ、加熱処理により前記第2の接着剤層の接着力を発現して前記電子機器に固定し、前記基板と前記電子機器とを前記型抜きされた接着フィルムを介して接着する工程、
(4)前記型抜きされた接着フィルムを介して前記電子機器が接着された前記基板を、電子機器の寸法パターンに合わせて小片にダイシングし、電子機器モジュールに組み立てる工程。
【請求項3】
前記電子機器が発光素子または表示素子であり、前記基板が光学ガラス板であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−30658(P2013−30658A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166534(P2011−166534)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】