説明

電子機器保持具

【課題】幅寸法が大きく異なる携帯式情報機器で、かつコネクタ付きの状態で保持しても常にコネクタコードを外部へ最適な状態で導出でき、調整幅が広く汎用性に富む電子機器保持具を提供する。
【解決手段】電子機器を配置するベース1と、ベース1に対して少なくとも一方を他方に対して移動して電子機器を両側より挟み込む一対の抱持部11,21と、ベース1上に突出されて電子機器を受け止める載置部15とを備えている電子機器保持具において、載置部15は、複数(11a、12a、26)に分割形成され、かつ、分割された少なくとも1つが前記一対の抱持部のうち前記他方に対して移動される一方を構成している可動抱持部21の移動と連動される可動載置部26として設けられ、可動載置部26の移動により当該可動載置部と他の載置部11a(又は12a)との間に形成される開口部の幅寸法Lが可変されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電話機などの情報端末、音楽プレーヤー、画像プレーヤーなど、幅寸法の異なる各種の電子機器を車室内で使用したり、一時的保持しておく場合に好適な電子機器保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
対象の電子機器保持具は、特許文献1や2に例示されるごとく電子機器を配置するベースと、ベースに対して少なくとも一方を他方に対して移動して電子機器を両側より挟み込む一対の抱持部と、ベース上に突出されて電子機器を滑り落ちないよう受け止める載置部とを備えたタイプである。
【0003】
ここで、特許文献1の構造特徴は、非使用時はベース1に組み込まれて抱持部を有したスライダー2,3が付勢力により間の挟持幅を最も拡大しており、不図示の係止手段によりその状態に保持されている。電子機器は、下側が載置部1aに受け止められるとともに、抱持部同士の間に配置された状態から、スライダー同士を付勢力に抗し互いに接近する方向へ摺動操作することで保持される。また、電子機器の保持を解放するには、操作用ボタン4を付勢力に抗して押すと、保持が解除されて各スライダー2,3が付勢力により挟持幅を最も拡大した位置まで摺動される。
【0004】
特許文献2の構造特徴は、電子機器の頭部を抱持するフック状の抱持部20はホルダー裏蓋60の下からビスを緩めることにより上下にスライド可能となる。電子機器の両側部を保持する可動側板A30,可動側板B40も同様にビスを緩めることにより、左右にスライド可能となる。そして、電子機器は、下側が載置部10aに受け止められるとともに、可動側板同士の間に挟まれた状態で保持される。また、電子機器を取り出すときには、ボタン50を押し込むように操作すると、可動側板A30が外方向にスライドして取り外し可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第19542720号公報
【特許文献2】特開平10−315874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した保持構造では、電子機器がベース上において、載置部に受け止められ、かつ一対の抱持部により挟持されるため安定した保持状態が得られるが、次のような点から各種の電子機器に対する汎用性に乏しかった。すなわち、最近の電子機器では、使用態様として、例えば車室内などにおいて、電子機器がコネクタを装着した状態で保持されることが多くなった。これは、電子機器がコネクタを介してたんに充電されるだけではなく、パソコンとの同期、更にはスピーカーやボイスレコーダなどの他の機器とコネクタを介して接続される機会が増したためである。
【0007】
ところが、従来の保持構造では、電子機器をコネクタ付きの状態で保持したときにコネクタから延びるコード(以下、これをコネクタコードと称する)を外部へ導出するための開口ないしは孔位置に欠けたり、幅寸法の異なる電子機器を保持した場合にコネクタコードが開口ないしは孔位置からずれて外部へ導出し難くなったりする。
【0008】
そこで、本発明の目的は、以上の課題を解決して、特に、幅寸法が大きく異なる携帯式情報機器で、かつコネクタ付きの状態で保持しても常にコネクタコードを外部へ最適な状態で導出でき、調整幅が広く汎用性に富む電子機器保持具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、形態例を参考にして特定すると、電子機器を配置するベース1と、前記ベースに対して少なくとも一方を他方に対して移動して電子機器を両側より挟み込む一対の抱持部(11,21)と、前記ベース上に突出されて前記電子機器を受け止める載置部15とを備えている電子機器保持具において、前記載置部15は、複数(11a、12a、26)に分割形成され、かつ、分割された少なくとも1つが前記一対の抱持部のうち前記他方に対して移動される一方を構成している可動抱持部21の移動と連動される可動載置部26として設けられ、前記可動載置部26の移動により当該可動載置部と他の載置部11a(又は12a)との間に形成される開口部の幅寸法Lが可変されることを特徴としている。
【0010】
以上の本発明は、請求項2〜6のごとく具体化されることがより好ましい。すなわち、(イ)前記開口部を前記載置部の外側より閉塞する閉位置と開放する開位置とに切換可能に設けられたカバー3又は3Aを有している構成である(請求項2)。
(ロ)前記カバー3は、付勢手段S2により前記開口部を閉塞する方向に付勢されている構成である(請求項3)。
(ハ)前記ベース1は箱形のケース5に収納可能に設けられているとともに、前記カバー3は前記ベース1に枢支されてそのベースを前記ケースに収納する際の押圧操作部となる構成である(請求項4)。
【0011】
(ニ)前記ベース1は箱形のケース5に収納可能に設けられているとともに、前記カバー3は前記ケースの開口付近に枢支されている構成である(請求項5)。
(ホ)前記ケース1に摺動可能に設けられて前記ベース3を角度調整可能に支持しているスライダー2、及び前記スライダーに設けられて電子機器を差し込んだ状態で支持可能なポケット部29を有している構成である(請求項6)。
(へ)前記抱持部34,5は先端側が内側に屈曲形成されている構成である(請求項7)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、ベースに配置した電子機器を一対の抱持部により両側から挟み込むと同時に載置部により落下を防ぐタイプであることから、特許文献1,2と同じく調整幅が広く各種の電子機器を安定して保持できる。本発明では、その安定保持性に加え、載置部が分割形成されそのうちの少なくとも1つが可動抱持部の移動と連動される可動載置部となっており、可動載置部と他の載置部との間に形成される開口部の幅寸法が可動載置部の移動量に応じて可変されるため、例えば幅寸法の異なる電子機器をコネクタ付きの状態で保持した場合、図2(a)や(b)のごとくコネクタコードを前記開口部から外へ最適な状態で導出でき、それによりコネクタ付きで使い勝手を向上できる。
【0013】
請求項2の発明では、前記開口部を載置部の外側より閉塞する閉位置と開放する開位置とに切換可能に設けられたカバーを有しているため、電子機器がコネクタ付きで保持されるときはカバーを開位置にしてコネクタコードの邪魔にならないようにし、電子機器がコネクタを外して保持されるときはカバーにより外観特性なども良好に維持できる。
【0014】
請求項3の発明では、電子機器がコネクタを外して保持されるときは、カバーが付勢手段により開口部を閉塞する閉位置に自動で切り換えられるため使い勝手を向上できる。
【0015】
請求項4の発明では、カバーがベースに枢支されてベースをケース内へ収納する際の押圧操作部となるため、図1(a)から推察されるごとくケースに対するベースの収納操作性を良好にしたり、ベースのケース収納状態での外観特性を向上できる。
【0016】
請求項5の発明では、カバーがケースの開口付近に枢支されているため、図7から推察されるごとく電子機器がコネクタ付きのときにも、ベースをケースから引き出すだけで最も保持操作し易い態様が得られる。なお、請求項4及び5の発明のように、ケースに対しベースを出し入れする構造では、ベース及びケースの大きさなどを工夫するだけで、コネクタの有無にかかわらず電子機器をベースに保持した状態でケースに収容可能となるため、例えば、コネクタを外した電子機器をケースに収容可能にすると盗難防止対策としても有効となる。勿論、この場合はベースをケースから引き出すと、ベースに保持されている電子機器を直ちに使用できることになる。
【0017】
請求項6の発明では、ケースに摺動可能に設けられてベースを角度調整可能に支持しているスライダーを有し、そのスライダーに電子機器を差し込んだ状態で支持可能なポケット部を設けているため、図8に例示されるごとく収納式にする構造においてポケット部にも電子機器を支持でき、その結果、複数の電子機器を保持可能となって使い勝手を向上できる。
【0018】
請求項7の発明では、抱持部が先端側を内側に屈曲形成していると、電子機器が両側の各抱持部の屈曲部、つまり先端がハ形の内側に拘束されるため、形状設定という簡易構成により安定保持性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1形態の電子機器保持具を示し、(a)はベースを収納状態から引き出す際の斜視図、(b)はベースを引き出して角度調整した使用状態の斜視図である。
【図2】(a),(b)は上記電子機器保持具に幅寸法の異なる電子機器をコネクタ付きの態様で保持した状態を示す斜視図である。
【図3】上記電子機器保持具のメイン部を分解して示す構成図である。
【図4】(a),(b)は図3のメイン部をスライダーとの関係を示す分解図と、メイン部をスライダーに角度調整可能に連結した組立図である。
【図5】図4のスライダーとケースとの関係を示す分解図である。
【図6】(a),(b)は上記電子機器保持具の取付状態において、ベースのケース収納状態と、ベースをケースから引き出した状態とを示す模式断面図である。
【図7】第2形態の電子機器保持具を示し、(a)はベースを収納状態で示す斜視図、(b)はベースを引き出して角度調整した使用状態の斜視図である。
【図8】第3形態の電子機器保持具を示し、(a)はベースを引き出して角度調整した使用状態での斜視図、(b)は電子機器を保持した状態での斜視図である。
【図9】特許文献1と2の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な形態について図面を参照しながら説明する。この説明では、図1から図6に示した第1形態の保持構造、収納支持構造、作動、図7に示した第2形態の変更点、図8に示した第3形態の変更点の順に詳述する。なお、以下の説明では電子機器保持具を単に保持具と称する。
【0021】
(第1形態の保持構造)この保持具は、幅寸法の異なる電子機器を保持する構造として、電子機器9A〜9Cなどを配置するベース1と、ベース1に配置された電子機器を滑らないよう受け止める載置部15と、ベース1に対して移動可能に組み込まれて可動抱持部21を形成している可動部材2と、可動部材2を付勢している付勢部材S1と、ベース1の手前側に揺動可能に設けられているカバー3とを備えている。主な工夫点は、載置部15が複数に分割形成され、かつ、その分割されたもののうち少なくとも1つが可動部材2の移動と連動される可動載置部26として設けられている。そして、この構造では、可動載置部26の移動によりその可動載置部26と他の載置部11a(又は12a)との間に形成される開口部の幅寸法Lが可変される。
【0022】
ここで、ベース1は、図1及び図3に示されるごとく、電子機器を配置する平板部10と、平板部10の一側に沿って立設された固定側の抱持部11と、平板部10の他側にあって手前側(引き出し方向にある側)に立設されている側壁部12と、載置部15の一部を構成して抱持部11又は側壁部12に連続して設けられている固定側の載置部11a,12aと、平板部10の前両側にそれぞれ設けられている切欠部17及び切欠部に設けられた軸部17aと、平板部10の後側(収納方向にある側)の中間部に突設されて後述するスライダー4に角度調整可能に取り付けられる連結部14,14とを有している。なお、両連結部14,14は、逃げ溝14bを介して区分けされているとともに、同軸線上の横孔14aを形成している。
【0023】
まず、抱持部11は、図3の拡大図から推察されるごとく平板部10から垂直に起立された固定抱持部であり、上側11bが内側に屈曲形成されている。平板部10には、上面の一部を一段低く形成した配置部16が設けられている。符号C1は、平板部10の上面にあって、抱持部11と配置部16との間に添着された緩衝用クッション材である。この配置部16は、平板部10にあって、他側から左右略中間部までを略矩形凹状に形成し、かつ、凹状の奥側を切り欠いた窓16a及び、窓16aの前後辺と平行な端面を切り欠いたガイド用横溝16bとが形成されている。各横溝16bは、窓16aに近い側が外へ貫通され、他側に近い側がレール状の溝となっている。図3において、手前側の横溝は図示されてない。また、下面10aは、手前側の中央部を除いて周囲壁部で縁取りされ、底蓋18がその周囲壁部にねじMにより取り付けられる。すると、下面10aと底蓋18との間には、可動部材2の対応部及び付勢部材S1を配置する空洞部が形成される。符号10bは、下面10aの後側に設けられて付勢部材S1の対応端部を支持する軸部である。
【0024】
以上の配置部16には、可動部材2が横溝16bに沿って板幅方向へ移動可能に配置される。この可動部材2は、平板部10の上面と面一となる本体20と、本体20の一側に起立されて抱持部11と対向される可動抱持部21と、本体20の前後側面に突設されて横溝16bから前記空洞部に配置される片部23,25と、一方片部23に設けられた軸部24と、他方片部25に立設された可動載置部26とを有している。このうち、可動抱持部21は、前記固定側の抱持部11との間に電子機器を挟持する箇所であり、図1(b)の拡大図から推察されるごとく本体20から垂直に起立され、上側21bが抱持部11と同じく内側に屈曲形成されている。符号C2は、抱持部11と可動抱持部21との対向内面にそれぞれ添着された緩衝用クッション材である。
【0025】
そして、以上の可動部材2は、本体20が配置部16に対し、可動抱持部21と反対側を各片部23,25と共に前記した窓16a及び横溝16bの貫通部を通って下面10a側へ移動可能となるよう組み付けられる。この場合、可動部材2は、軸部24と平板部側の軸部10bとの間に介在される付勢部材S1であるコイルスプリングの付勢力により、図1(b)のごとく固定側の抱持部11に最も近づいた初期位置に移動される。すなわち、初期位置では抱持部11と可動抱持部21との間が最小寸法となる。底蓋18は、以上のごとく可動部材2を組み込んだベース1の下側にねじMにより装着される。
【0026】
また、ベース1には、載置部15(固定載置部11a,12a及び可動載置部26)を外側より覆うカバー3が枢支される。このカバー3は、前面が本体30の操作面に設定され、内面両下側に設けられた軸孔31がベース側の対応軸部17aに嵌合されることで、載置部5を外側より覆う閉位置と開放する開位置とに切換可能に枢支される。また、カバー3は、付勢部材S2の付勢力により、載置部5を覆う方向、つまり固定載置部11aと可動載置部26との間に形成される開口部を閉塞する方向に付勢されている。
【0027】
以上の保持構造において、図2のごとく電子機器を保持するときは、可動部材2を付勢部材S1の付勢力に抗して抱持部11から離れる方向へ一旦移動し、その状態で電子機器9Aや9Bを配置した後、可動部材2が付勢部材S1の付勢力で移動されるようにして、抱持部11と可動抱持部21との間に保持することになる。
【0028】
また、幅寸法の小さい電子機器9Aでは図2(a)のごとく可動載置部26が固定側載置部11aに近づいた態様となり、幅寸法の大きい電子機器9Bでは図2(b)のごとく可動載置部26が固定側載置部11aから大きく離れた態様となる。これにより、この保持構造では、電子機器9Aや9BがコネクタKを装着していると、幅寸法の小さい電子機器9AではコネクタKが間隔を狭くした固定側載置部11aと可動載置部26とに受け止められ、幅寸法の大きい電子機器9Bでは電子機器9Bの下端が間隔を広めた固定側載置部11aと可動載置部26とに受け止められる。その結果、コネクタコードCは、何れの場合でも固定側載置部11aと可動載置部26との間から外へ良好に引き出される。
【0029】
(収納支持構造)以上の保持具は、図1と図4及び図5に示されるごとく、ベース1がケース5に対しスライダー4を介して出し入れされて収納位置と引出位置とに切り換えられるとともに、ベース1が引出位置においてスライダー4に対して下方へ角度調整可能に支持される。
【0030】
このうち、ケース5は、図6に示したごとく車両のインストルメントパネル8などに設けられた空間8aに埋設状態に配置されるもので、全体が上面50、下面51、両側面52、背面53で区画されて長手方向の一端を開口した細長い矩形状となっている。上面50には、前から後方に向かって設けられた細長い貫通溝54と、貫通溝54の溝内端面に設けられて長手方向に延びて後述する回転式ダンパ35のギア37に噛み合うラック部55と、後端側にあって左右中間に位置して貫通されている支持孔50aとが設けられている。ケース5の前開口は矩形枠部57により縁取りされている。枠部57の両側には取付部56が突設されている。
【0031】
支持孔50aには、ラッチ手段7を構成している揺動部材70が回動可能に枢支されている。揺動部材70は、後述するスライダー側のハートカム溝73と共にラッチ手段7のプッシュ・プッシュ係止機構を構成している。この例では、揺動部材70の一端上面に突設されて支持孔50aに嵌合される取付用軸部71と、揺動部材70の他端下面に突設されたピン72とからなっている。以上の揺動部材70は、軸部71の両側を不図示のコ形バネ板にて軽く挟み込まれた状態で支持され、該バネ板の弾性に抗して揺動される。一方、両側面52には、スライダー4の摺動案内用として、内前後方向へ延びているガイド溝57aが設けられている。下面51にはばね用係止部57bが枠部57を含む開口側に設けられている。
【0032】
スライダー4は、ケース5に対応した小ブロック状をなし、前側がベース1との連結部、後側がケース5との間に設けられるダンパー機構、引き込み機構、係止機構用の配置部となっている。また、スライダー4とベース1とは角度調整機構を介して連結されている。すなわち、スライダー4の前側は傾斜した前端面41に形成されている。符号C3は前端面に添着された緩衝用クッション材である。前端面41の下側には、仕切壁45の両側に設けられた凹部44、及び凹部44の両側に同軸線上に設けられた中心孔42、並びに中心孔42の入り口側縁部に設けられた固定歯部42aを有し、ベース1の連結部14がそれらに対しカムピン6及び付勢部材S3などを介して角度調整可能に連結されている。図6(b)の拡大図はその角度調整部を示している。
【0033】
図4及び図6において、ベースの各連結部14の横孔14aには、付勢部材S3を介してカムピン6が配置される。このカムピン6は、回り止め用の角軸60及び円柱状の先端部61と、先端部61の端面中心に突出されて連結部14の中心孔42と嵌合する半球突起62と、半球突起62の周囲に放射状に広がるよう設けられて固定側歯部42aと噛み合う可動歯部62aとを有している。そして、この構造では、カムピン6を付勢部材S3と共に、連結部14の横孔14aに挿通した状態で、可動歯部62aが固定歯部42aに噛み合い、かつ、半球突起62が中心孔42の内周に圧接する。これにより、ベース1は、図1及び図6(b)の拡大図に示すごとく水平から下向きに角度調整される。つまり、ベース1は、スライダー4の前端面41に沿った最大前傾角度に達するまで、歯同士の1ピッチ毎にクリック音を伴って角度変更され、かつ、任意の角度位置に保持される。
【0034】
なお、この構造では、ベース1が図1(b)の最大前傾角度を超えるような過大に回動操作されると、付勢部材S3の付勢力に抗してカムピン6が後退して、半球突起62が中心孔42から外れることにより破損の虞を防止可能にする。脱落した場合には再セット操作を行えばよい。
【0035】
スライダー4の後側は、左右の中間部40を上凹部にしそこに設けられたハートカム溝73と、左側を上凹部46にしそこに設けられたダンパ用取付穴46aと、右側を上下貫通しかつ巻バネ75を回転可能に支持する穴部47と、左右側面に設けられて対応するケース側ガイド溝57aに嵌合されるガイドリブ43とを一体に有している。
【0036】
取付穴46aには回転式ダンパ35が装着され、穴部47には巻バネ75が支持される。ダンパ35は、本体36に設けられた複数の取付用爪36a、本体36内の流体で制動されるギア37を有し、本体36が取付穴46aに爪36aを介して取り付けられた状態で、ギア37が上凹部46から突出されてケース側ギア55と噛み合う。巻バネ75は、本体76が対応部に巻き上げた帯状のバネ77を有し、両側の軸部76aを穴部47の対応凹部47aに嵌合した状態で回動可能に支持される。また、巻バネ75は、バネ77の引出端77aがケース側係止部57bに係止された状態で、スライダー4がケース5の奥部まで移動される過程でバネ77を引き出して付勢力を蓄え、それを動力としてベース1及びスライダー4をケース5の前方に突出移動する。
【0037】
ハートカム溝73は、ピン72が凸形島の周囲に設けられた係止用凹部に係合することで、図6(a)のごとく巻バネ75の付勢力に抗しスライダー4をケース2の収納位置に係止する。この状態から、スライダー4がカバー3を介し押されると僅かに後退し、ピン72が前記係止用凹部から係止解除される。このプッシュ・プッシュ係止機構では、ピン72及びハートカム溝73の作用により、保持具(ベース1)をスライダー4を介して巻バネ75の付勢力に抗してケース内に押し込んだ収納位置で係止し、次に保持具をカバー3を介し押して手を離すと、前記係止を解除して保持具をスライダー4を介して巻バネ75の付勢力により引出し位置まで前進可能にする。
【0038】
(作動)次に、以上の保持具をケース5を介して車両のインストルメントパネル8に装備した場合を想定して、その作動特徴を説明する。
(ア)図1(a)は保持具をケース5内に収納した収納位置、つまりベース1及びスライダー4が収納位置に切り換えられた状態で示している。この状態において、スライダー4は、ピン72及びハートカム溝73の作用により巻バネ75の付勢力に抗してケース5内の正規位置で係止されている。そして、同図の想像線は、保持具を収納位置から、操作者の指でカバー3を一旦押して離すと、上記したピン72及びハートカム溝73の作用により係止解除して、スライダー4と共に巻バネ75の付勢力により引き出されて引出位置(この引出位置ではスライダー4に設けられた不図示の係止爪が上記したケース側の不図示の開口前内端に当接する)まで前進する。同図の想像線は、そのようにして保持具(ベース1)が引出位置まで引出された状態を示している。このときは、保持具及びスライダー4の前進動がダンパー35を介して制動される。
【0039】
(イ)図1(b)〜図2(a)と(b)は、保持具を以上の引出し状態から、上記した角度調整部を介してその傾動角度を調整して操作者の最も都合のよい姿勢で使用できるようにする。すなわち、以上の保持具は、非使用状態において、図1(b)に示されるごとく可動部材2が可動抱持部21を固定抱持部11に最も近づき、両抱持部の間の距離、つまり挟持幅を最も縮小している。この状態から、電子機器9Aや9Bを保持するには、例えば、電子機器の一側を可動抱持部21(のクッション材C2)に当て外側へ押して可動部材2を動かしながら、電子機器の他側を固定抱持部11(のクッション材C2)の内側に押し込むようにする。すると、電子機器9Aや9Bは、可動抱持部21と固定抱持部11との間に挟持され、その状態が付勢部材S1により挟持方向へ付勢されている可動部材2を介して所定の挟持力で保持される。この保持構造では、各抱持部11,21が先端がハ形に屈曲されていること、内側のクッション材C2により弾性保持されることから保持特性に優れている。
【0040】
(ウ)また、電子機器9Aや9BはコネクタKを装着していることもある。その場合は、図2(a)のごとく電子機器9Aの幅寸法が細めのタイプだと、コネクタKが固定載置部11aと可動載置部26とに受け止められ、コネクタコードCが固定載置部11aと可動載置部26との間に形成される開口部から外へ引き出される。図2(b)のごとく電子機器9Bの幅寸法が広めのタイプだと、コネクタKが固定載置部11aと可動載置部26との間に形成される開口部に落ち込んだ状態となり、コネクタコードCも抵抗を受けることなく外へ引き出される。すなわち、以上の保持構造では、載置部15のうち、可動載置部26と固定載置部11aとの間に形成される開口部の幅寸法が可動載置部26の移動量に応じて自動的に可変されるため、電子機器をコネクタ付きの状態で保持しても、コネクタコードCを前記開口部を通って外部へ最適な状態で導出できる。なお、コネクタKは、万能タイプに限られず、トランスミッターや録画用コネクタというような専用タイプでもよい。また、以上の構造では、ベース1及びケース5の大きさなどを工夫するだけで、コネクタKの有無にかかわらず電子機器をベース1に保持した状態でケース5に収容可能となる。このため、利点としては、例えば、コネクタKを外した電子機器をケース5に収容可能にすると盗難防止対策としても有効となる。また、コネクタがある場合だと、ベース1をケース5に収納する際、載置部15のうち載置部11aや12aなどを押圧操作部として利用することになる。
【0041】
(エ)電子機器を再び取り出すときは、例えば、電子機器9Aや9Bを図2の各保持状態から真上方向へ持ち上げると、可動部材2(可動抱持部21)が付勢部材S1の付勢力に抗して外側へ動くためワンタッチで外すことができる。その際、電子機器9Aや9Bは、両側のクッション材C2及び背面側のクッション材C1,C3により擦り傷など生じないよう保護される。そして、保持具(ベース1)は、上記した角度調整部を介してスライダー4に対して水平状態となるようにした後、巻きバネ75の付勢力に抗して前方へ押し操作してケース5内に収納する。図1(a)の収納状態では、ピン72がハートカム溝73の凹状係止部に係止されることによって、スライダー4がベース1と共にケース5内に収納された状態でロックされ、ケース5の開口が閉方向に付勢されているカバー3にて閉じられる。
【0042】
(第2形態の変更点、)図7に示された第2形態は上記カバー3の取付構造を変更した一例である。この説明では第1形態と同一又は類似する箇所には同じ符号を付し、極力変更した構成に絞って述べる。
【0043】
第2形態のカバー3Aは、ケース5に対して枢支され、かつ、不図示の付勢部材の付勢力によりケース5の開口を閉じる方向に付勢されている。すなわち、この構造では、ケース5の前開口を縁取りしている矩形枠部57の下両側に片部58を設けるとともに、各片部58にカバー枢支用の軸孔33付きの支持部59を突出している。また、カバー3Aは、ケース5の前開口に対応した矩形の本体32からなり、両側面の下側に設けられた軸部33が対応する軸孔33に嵌合枢支されている。
【0044】
以上のカバー3Aは、不図示の付勢部材の付勢力によりケース5の前開口を閉じる方向に付勢されて図7(a)の閉位置に保持されている。上記した保持具(ベース1)を使用するときはカバー3Aを前方へ一旦押して離す。すると、保持具(ベース1)は、上記したピン72及びハートカム溝73の作用により係止解除して、スライダー4と共に巻バネ75の付勢力により引き出される。そのとき、カバー3Aは、ベース1に押されて付勢部材の付勢力に抗して逆時計回りへ回動され、更に、ベース1をスライダー4に対して角度調整したときに受ける応力で図7(b)のごとく所定の回動位置、つまり開位置に切り換えられることになる。
【0045】
(第3形態の変更点、)図8に示された第3形態は上記したスライダー4に電子機器用のポケット部48を追加した一例である。この説明でも、第1形態と同一又は類似する箇所には同じ符号を付し、極力変更した構成に絞って述べる。
【0046】
スライダー4は、手前側にあって、上面に開口した凹状のポケット部48を有している。このポケット部48は、スライダー4の幅方向に長くなっていて、図8(b)のごとく保持具(ベース1)の使用状態で、更に他の電子機器9Cを収容保持できる。勿論、ポケット部48には、電子機器以外にシガレットケース、ライダー、その他の薄形部材を差込式に保持してもよい。
【0047】
なお、本発明は、以上の各形態に制約されるものではなく、請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部についてはこれをベースにして展開可能なものである。その一例として、上記可動載置部26は、可動部材2に一体に形成した例を挙げたが、専用部材で形成して可動部材2に連結するようにしてもよい、
【符号の説明】
【0048】
1・・・ベース(10は平板部、11は固定側の抱持部、16は配置部)
2・・・可動部材(20は本体、21は可動抱持部、23,24は片部、24は軸部)
3,3A・・・カバー(30,32は本体、31は取付孔、33は軸部)
4・・・スライダー(40は凹部、42aは固定歯部、48はポケット部)
5・・・ケース(55はラック部、57aはガイド溝、57bは係止部)
6・・・カムピン(調整機構:61は先端部、62は可動歯部、63は突起)
7・・・ラッチ手段(70は揺動部材、72はピン、73はハート形カム溝)
8・・・インストルメントパネル(8aは配置空間)
15・・・載置部(11aと12aは固定された載置部、26は可動載置部)
9A〜9C・・・電子機器(携帯機器、Kはコネクタ、Cはコネクタコード)
S1,S2,S3・・・付勢部材(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を配置するベースと、前記ベースに対して少なくとも一方を他方に対して移動して電子機器を両側より挟み込む一対の抱持部と、前記ベース上に突出されて前記電子機器を受け止める載置部とを備えている電子機器保持具において、
前記載置部は、複数に分割形成され、かつ、分割された少なくとも1つが前記一対の抱持部のうち前記他方に対して移動される一方を構成している可動抱持部の移動と連動される可動載置部として設けられ、前記可動載置部の移動により該可動載置部と他の載置部との間に形成される開口部の幅寸法が可変されることを特徴とする電子機器保持具。
【請求項2】
前記開口部を前記載置部の外側より閉塞する閉位置と開放する開位置とに切換可能に設けられたカバーを有していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器保持具。
【請求項3】
前記カバーは、付勢手段により前記開口部を閉塞する方向に付勢されていることを特徴とする請求項2に記載の電子機器保持具。
【請求項4】
前記ベースは箱形のケースに収納可能に設けられているとともに、前記カバーは前記ベースに枢支されてそのベースを前記ケースに収納する際の押圧操作部となる請求項2又は3に記載の電子機器保持具。
【請求項5】
前記ベースは箱形のケースに収納可能に設けられているとともに、前記カバーは前記ケースの開口付近に枢支されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子機器保持具。
【請求項6】
前記ケースに摺動可能に設けられて前記ベースを角度調整可能に支持しているスライダー、及び前記スライダーに設けられて電子機器を差し込んだ状態で支持可能なポケット部を有していることを特徴とする請求項4又は5に記載の電子機器保持具。
【請求項7】
前記抱持部は先端側が内側に屈曲形成されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の電子機器保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−121541(P2012−121541A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34704(P2011−34704)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】