説明

電子機器冷却装置

【課題】電力供給停止状態が発生した場合でも電子機器の冷却を行うこと。
【解決手段】コンピュータールーム内を空調する第1の空気調和機およびキャビネット内を空調する第2の空気調和機の一方を、電動機で圧縮機を駆動する電気式空気調和機で構成し、他方をガスエンジンで圧縮機と発電機を駆動し、発電電力で空気調和機の補機を駆動するガスエンジン式空気調和機で構成し、電気式空気調和機は電動機および補機に供給する電力を、ガスエンジンで駆動される発電機の発電電力および商用電源からの電力のいずれか一方から選択する選択手段(切換スイッチ90)を備え、商用電源から電気式空気調和機への電力供給停止状態の発生を検出する検出手段(集中コントローラ200)を備え、電力供給停止状態の発生時には、選択手段により発電電力を選択し、電気式空気調和機の圧縮機および補機を発電機の発電電力により駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器が収容されるためのキャビネットの空気出口側に空気−水熱交換器を配置し、キャビネットに収容された電子機器に付設したファンで送風される空気を上記空気−水熱交換器で冷却して室内に戻す電子機器冷却装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の電子機器冷却装置はコンピュータールームに設置され、コンピュータールームに設置されるサーバーやネットワーク機器等の電子機器を冷却する。また、一般に、コンピュータールームには空調装置が配設されており、このため、空調装置と電子機器冷却装置との双方によってコンピュータールーム(被調和室)が空調される。
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0232945号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した技術では、例えば、停電等に起因する電力供給停止状態が発生した場合には、電子機器の冷却を行うことができないという問題点がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電力供給停止状態が発生した場合でも、電子機器の冷却を行うことが可能な電子機器冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、コンピュータールーム内を空調する第1の空気調和機と、コンピュータールーム内に設置したキャビネット内を空調する第2の空気調和機とを備え、これら空気調和機により前記キャビネットに収納された電子機器を冷却する電子機器冷却装置において、第1,第2の空気調和機の一方を、電動機で圧縮機を駆動する電気式空気調和機で構成するとともに、他方を、ガスエンジンで圧縮機と発電機を駆動し、該発電機の発電電力で該空気調和機の補機を駆動するガスエンジン式空気調和機で構成し、前記電気式空気調和機は、前記電動機および補機に供給する電力を、前記ガスエンジンで駆動される前記発電機の発電電力、および、商用電源からの電力のいずれか一方から選択する選択手段を備え、前記商用電源から前記電気式空気調和機への電力供給停止状態の発生を検出する検出手段を備え、前記電力供給停止状態の発生時には、前記選択手段により前記発電電力を選択し、前記電気式空気調和機の前記圧縮機および前記補機を、前記発電機の発電電力により駆動することを特徴とする。
この構成によれば、電力供給停止状態が発生した場合でも、電子機器の冷却を行うことが可能となる。
【0006】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記第1の空気調和機と前記第2の空気調和機の運転能力比率を、冷凍負荷と運転能力比率を対応付けて格納したテーブルとを参照して設定する設定手段を有し、前記設定手段は、電力供給停止状態とそれ以外の場合において、異なるテーブルを参照して運転能力比率を設定することを特徴とする。
この構成によれば、電力供給停止状態とそれ以外の場合でテーブルを変更することにより、それぞれの場合において最適な制御を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力供給停止状態が発生した場合でも、電子機器の冷却を行うことが可能な電子機器冷却装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。
図1は本発明の一実施形態に係る被調和室としてのサーバールーム(コンピュータールーム)2のサーバーラック冷却装置(電子機器冷却装置)100を示す図である。このサーバールーム2は、電動機で圧縮機を駆動する電気式空気調和機としての第2の空気調和機(以下、「空気調和機」を「空調機」という)1と、ガスエンジンで圧縮機と発電機を駆動するガスエンジン式空気調和機としての第1の空調機110とを備え、これらによって室内が空調される。第1の空調機110は、室外に設置される室外ユニット120と、サーバールーム2に設置される室内ユニット130とを備え、これらがユニット配管140で接続されることによって冷凍サイクルを行う冷凍回路を構成している。
【0009】
各ユニット120、130を説明すると、室外ユニット120には、圧縮機121、四方弁122、室外熱交換器123、膨張弁124、室外ファン125、室外ファンモータ126、ガスエンジン127、発電機128、および、制御ユニット85等が収容され、室内ユニット130には、室内熱交換器131および室内ファン132等が収容される。そして、ガスエンジン127によって駆動される圧縮機121が冷凍回路に充填された冷媒を圧縮して吐出することにより、室外熱交換器123と室内熱交換器131との間で冷媒を循環して冷凍サイクル運転を行う。ガスエンジン127の回転数を制御することにより、冷凍能力を調整することができる。また、ガスエンジン127は、圧縮機121とともに発電機128を駆動する。発電機128によって発生された電力は、図示せぬインバータ等によって周波数および電圧が調整された後、第1の空調機110の各部に供給されるとともに、停電等が発生した場合には、第2の空調機1にも供給される。
【0010】
四方弁122は、冷房運転と暖房運転とを切り換えるための切換弁であり、図1では冷房運転の状態を示している。この場合、圧縮機121から吐出された冷媒は、四方弁122を経由して室外熱交換器123へ流れた後に室内熱交換器131へと流れ、室外熱交換器123が凝縮器、室内熱交換器131が蒸発器として機能して冷房運転状態となり、室内ファン132により室内空気が室内熱交換器131で熱交換されて室内を冷房する。
また、四方弁122を暖房側に切り換えたときには、図示は省略するが、圧縮機121から吐出された冷媒が四方弁122を経由して室内熱交換器131へ流れた後に室外熱交換器123へと流れ、室内熱交換器131が凝縮器、室外熱交換器123が蒸発器として機能して暖房運転状態となり、室内を暖房する。
【0011】
図1では室内ユニット130をビルトイン型に構成した場合を示している。すなわち、室内ユニット130は、天井空間内に設置され、天井に設けられた複数(本例では3つ)の吸込口142と室内ユニット130とを連結するダクト144を備え、室内ファン132が発生する負圧により吸込口142から室内空気を吸い込んで室内熱交換器131を通過させ、熱交換後の調和空気を、ダクト145を介して床下空間146に導く。床下空間146に導かれた調和空気は、床に設けられた吹出口147から室内に吹き出す。吹出口147から吹き出した調和空気は、サーバールーム2を冷却した後、吸込口142から吸い込まれて、前述の場合と同様の経路を循環する。
なお、本実施形態では、第1の空調機110をビルトイン型に構成する場合を示したが、これに限らず、天井埋込型、天井吊り型、壁掛け型、床置き型などの公知の空気調和機を広く適用することが可能である。
【0012】
第2の空調機1は、図2に示すように、サーバールーム2の床の上に設置されるサーバーラック(キャビネット)10と、室外に設置される熱源機30とによって構成される。本実施形態では、図2に示すように、サーバールーム2に12台のサーバーラック10を配置し、3台のサーバーラック10内のサーバー冷却ユニット20を一台の熱源機30に各々配管接続した構成を4系統配設した場合を例示している。なお、図2の例では、図1に示す吹出口147を図示していないが、床面には複数の吹出口147が設けられている。
【0013】
図3はサーバーラック10を示す図である。サーバーラック10は、前面および後面が開口したキャビネット本体11を備え、このキャビネット本体11内に複数のサーバー(電子機器)3がその背面をキャビネット本体11後面に向けて上下に段積み配置される。このキャビネット本体11後面には、後面開口65を閉塞自在に片開きで開閉するリアドア12が設けられ、このリアドア12は、通気自在に構成されるとともに、その内部にサーバー冷却ユニット20が配設される。また、サーバーラック10の底にはキャスタ13が設けられ、サーバーラック10を容易に移動可能にしている。
【0014】
サーバー3は、例えば、ブレードサーバー等によって構成され、冷却用のファン(内蔵ファン)4を有し、サーバー3内の温度が所定温度を超えるとファン4を駆動し、サーバー3内に外気を導入して機器背面から排出する強制空冷機能を備えている。このため、サーバー3をその背面をキャビネット本体11背面に向けて配置することで、図3に冷却風の流れを破線矢印で示すように、サーバー3に付設したファン4により室内空気がキャビネット前面開口から吸い込まれ、サーバー3を冷却してリアドア12を通過して室内に戻る。また、このリアドア12を開けることによって、キャビネット本体11内のサーバー3にアクセス可能となる。なお、サーバー3には、図示せぬUPS(Uninterrptible Power Supply)から電源電力が供給されていることから、商用電源からの電力供給停止状態が発生した場合であっても、サーバー3およびファン4は動作を継続する。
【0015】
サーバー冷却ユニット20は、サーバーラック10のリアドア12に一体的に構成され、図1に示すように、熱源機30から延びるメイン冷媒配管31(メイン液管31Aおよびメインガス管31B)にフレキシブル配管(フレキシブル液管25およびフレキシブルガス管26)を介して並列に接続され、熱源機30と配管接続されることによって冷凍サイクルを行う冷凍回路を構成する。
このサーバー冷却ユニット20は、図3に示すように、蒸発器21、膨張弁(不図示)等を収容し、熱源機30は、図1に示すように、能力可変型の圧縮機32、圧縮機モータ(電動機)33、室外ファンモータ34、凝縮器35、膨張弁36、室外ファン37、および、制御ユニット80等を収容する。そして、圧縮機32が冷凍回路に充填された冷媒を圧縮して吐出することにより、凝縮器35と蒸発器21との間で冷媒を循環して冷凍サイクル運転を行う。この冷凍サイクル運転は、冷房運転を行う冷凍サイクルであり、本構成では、サーバー3から排出された空気がリアドア12内の蒸発器21を流通するよう構成されるため、この際に蒸発器21によって排出空気が冷却されて室内に排出される。
【0016】
図3に示すように、蒸発器21は、リアドア12の略上下に渡って延在し、上下略中間部を境に上側蒸発部22と下側蒸発部23とに分割され、キャビネット本体11上半分のサーバー3の冷却を上側蒸発部22が受け持ち、下半分のサーバー3の冷却を下側蒸発部23が受け持つように構成される。本構成のサーバー冷却ユニット20は送風ファンを具備しない構成とされ、サーバー3の内蔵ファン4によってサーバー3の排熱で暖められた空気が蒸発器21を流通する。このため、リアドア12内に送風ファンを内蔵した構成に比して、リアドア12の奥行き寸法が短くなり、サーバーラック10の奥行き寸法を短くすることができる。なお、リアドア12内に送風ファンを配置し、この送風ファンによって室内空気をキャビネット本体11内に導入し、サーバー3を通った空気を蒸発器21に流通させるようにしてもよい。
【0017】
ここで、従来のサーバー冷却装置は空気−水熱交換器を備えるため、この空気−水熱交換器にチラー水を循環する経路の一部からでも水漏れが生じると、この水によってサーバーが損傷するおそれがある。本構成では、上述したように、サーバー冷却ユニット20の蒸発器21には、冷凍サイクルを循環する冷媒が供給されるため、万一冷媒が循環する経路から冷媒の漏れが生じたとしても、この冷媒は即座に蒸発し、サーバー3のショートもしくは漏電が生じることはない。
【0018】
図2に示すように、メイン冷媒配管31は、サーバールーム2の上床2Aと下床2Bとの間の床下空間内を引き回され、このメイン冷媒配管31につながるフレキシブル液管25およびフレキシブルガス管26は、上床2Aの開口穴2C(図2および図3参照)を通ってリアドア12内の蒸発器21につながる。このため、図3に示すように、フレキシブル液管25およびフレキシブルガス管26が蒸発器21から下方に延びた後に床下空間内で緩やかに曲がるように引き回され、これらフレキシブル配管25、26の長さに余裕を持たせておくことによってリアドア12開閉時にフレキシブル配管25、26だけがリアドア12の動きに合わせて移動する。従って、リアドア12開閉時に他の配管に力が作用することがなく、他の配管、例えば、メイン液管31Aおよびメインガス管31Bに鋼管を適用することが可能である。
【0019】
図4は、サーバーラック冷却装置100の制御系の構成例を示すブロック図である。この図において、実線の細線は通信線を示し、破線は電力線を示し、実線の太線(ガスエンジン127と発電機128を結ぶ線分)は駆動軸を示している。集中コントローラ(検出手段および設定手段)200は、図1に示すように、床下空間の下床2B上に配置されており、制御ユニット80、85を集中制御するための制御回路である。また、集中コントローラ200は、後述するように切換スイッチ90を制御する。制御ユニット80は、図1に示すように熱源機30内に配設され、サーバー温度センサ29E、29Fから出力される温度信号と、集中コントローラ200から供給される制御信号に基づいて、圧縮機モータ33、室外ファンモータ34、および、膨張弁36を制御する。なお、第2の空調機1において圧縮機モータ33以外の構成部分であって、電力を消費する部分は「補機」とされる。制御ユニット85は、室外ユニット120内に設けられ、室内温度センサ129から出力されるサーバールーム2内の室温を示す信号と、集中コントローラ200からの制御信号に基づいてガスエンジン127、四方弁122、膨張弁124、室外ファンモータ126、および、室内ファン132を駆動するための室内ファンモータ132Aを制御する。なお、第1の空調機110において、発電機128から電力を供給される部分は「補機」とされる。
【0020】
切換スイッチ(選択手段)90は、集中コントローラ200によって制御され、商用電源300からの電力供給が正常である場合には、商用電源300を選択し、商用電源300からの電力供給が正常でない場合(例えば、停電が発生した場合または第2の空調機1への給電遮断装置が動作した場合)には、発電機128から出力される電力を選択し、圧縮機モータ33、室外ファンモータ34、膨張弁36、および、制御ユニット80に対して電源電力を供給する。発電機128は、例えば、都市ガス等によって動作するガスエンジン127によって駆動され、発生した電力を、集中コントローラ200、制御ユニット85、四方弁122、膨張弁124、室外ファンモータ126、室内ファンモータ132A、および、切換スイッチ90に供給する。なお、図4では、制御ユニット80には切換スイッチ90から電力が供給されているが、発電機128から電力を直接供給するようにしてもよい。また、図4では、発電機128によって発生された電力が各部へ直接供給されるようになっているが、例えば、インバータ等によって周波数および電圧を調整した後に供給するようにしてもよい。
【0021】
次に、本実施形態の動作を説明する。以下では、先ず、商用電源300からの電力供給が正常である場合の動作(通常動作)について説明した後、図5を参照して商用電源300からの電力供給が正常でない場合(電力供給停止状態の場合)の動作について説明する。
【0022】
商用電源300からの電力供給が正常である場合、集中コントローラ200は、切換スイッチ90に商用電源300側を選択させる。この結果、第2の空調機1は、商用電源300から供給される電力によって動作する。具体的には、第2の空調機1を構成する圧縮機モータ33、室外ファンモータ34、膨張弁36、および、制御ユニット80は、商用電源300から供給される電力によって動作する。一方、第1の空調機110は、例えば、都市ガスを燃料として動作するガスエンジン127によって圧縮機121が駆動され、冷凍サイクル運転を実行する。ガスエンジン127は、発電機128を駆動しており、当該発電機128によって発生された電力は、四方弁122、膨張弁124、室外ファンモータ126、室内ファンモータ132A、制御ユニット85、および、集中コントローラ200に供給されているので、これらは商用電源300からの電力の供給がなくても動作可能である。
【0023】
ところで、商用電源300からの電力供給が正常である場合、システム全体としての運転効率を高めることが要求される。そこで、集中コントローラ200は、第2の空調機1の負荷(サーバー3の冷却負荷)を特定する情報(負荷特定情報)を取得するとともに、第1の空調機110から負荷(空調負荷)を特定する情報(負荷特定情報)を取得する。具体的には、集中コントローラ200は、第2の空調機1からサーバー温度センサ29E、29Fが検出した排熱温度および設定された目標温度を取得し、また、第1の空調機110から負荷(空調負荷)を特定する情報(負荷特定情報)として、室内温度と目標温度とを取得する。続いて、集中コントローラ200は、第2の空調機1の目標温度と排熱温度との差温に基づいて第2の空調機1の負荷を算出するとともに、第1の空調機110の目標温度と室内温度との差温に基づいて第1の空調機110の負荷を算出し、これらの算出結果を加算することにより、サーバーラック冷却装置100全体の負荷(以下、冷凍負荷という)を取得する。なお、この負荷の算出処理は各空調機1、110の制御ユニット80、85が行い、集中コントローラ200が各制御ユニット80、85が算出した負荷を取得し、サーバーラック冷却装置100全体の冷凍負荷を取得するようにしてもよい。
【0024】
サーバーラック冷却装置100全体の冷凍負荷が取得されると、集中コントローラ200は、当該冷凍負荷に対する各空調機の運転能力比率を、テーブル201から取得し、それぞれの空調機の能力を設定する。例えば、仮に第1および第2の空調機の冷凍能力が等しいとした場合において、各空調機の最大能力を100%としたとき、テーブル201には所定の冷凍負荷に対応するための必要能力(例えば、0〜200%で表される)と、当該必要能力における各空調機の運転能力の比率が対応付けされて格納されている。具体的な例を挙げると、例えば、所定の冷凍負荷に対する必要能力が90%である場合、当該90%の運転能力を発揮するための最適な運転比率は、第2の空調機1が60%で、第1の空調機110が30%としてテーブル201に格納されている。集中コントローラ200は、このようにして取得された運転能力比率を、制御ユニット80、85にそれぞれ供給する。制御ユニット80、85は、供給された運転能力比率に応じて、例えば、圧縮機モータ33およびガスエンジン127の回転数を制御することにより、運転能力を設定する。なお、このような運転能力比率については、実測によって求めるか、または、シミュレーション等に基づいて求めることができる。あるいは、運転状況と電力またはガスの消費状況を履歴として格納しておき、当該履歴に基づく学習処理によって、運転能力比率を求めるようにしてもよい。
【0025】
次に、図5を参照して、商用電源300からの電力供給停止状態が発生した場合における動作について説明する。なお、電力供給停止状態が発生した場合には、第2の空調機1は動作を停止し、第1の空調機110のみの運転となり、状況によっては運転能力が不足する事態も想定されることから、サーバー3の温度が上昇しないことが最優先される。
【0026】
例えば、落雷等に起因して商用電源300に停電が発生したり、商用電源300から第2の空調機1までの間に配設されている安全装置(遮断装置)が動作したりして、商用電源300から第2の空調機1への電力の供給が停止した状態になった場合、集中コントローラ200はこれを検出し、ステップS10において電力供給停止状態が発生したと判定し(ステップS10;Yes)、ステップS11に進む。なお、通常の動作時(電力供給停止状態でない場合)においては、切換スイッチ90は商用電源300側を選択しているので、電力供給停止状態になると、圧縮機モータ33、室外ファンモータ34、膨張弁36、および、制御ユニット80には電力が供給されない状態となり、これらは動作を停止する。
【0027】
ステップS11では、集中コントローラ200は、制御ユニット85を制御して、ガスエンジン127の出力を増加させる。すなわち、後述するステップS12において切換スイッチ90を切り換え、第1の空調機110から第2の空調機1への電力の供給開始に先立って、ガスエンジン127の回転数を増加し、発電機128によって発生される電力を予め増大させておく。
【0028】
ステップS12では、集中コントローラ200は、切換スイッチ90を制御し、商用電源300から、発電機128へ選択を切り換える。この結果、発電機128によって発生された電力は、切換スイッチ90を介して、圧縮機モータ33、室外ファンモータ34、膨張弁36、および、制御ユニット80に供給され、これらは動作可能な状態となる。
【0029】
ステップS13では、集中コントローラ200は、第2の空調機1と第1の空調機110の運転能力比率を設定する運転能力比率設定処理を実行する。具体的には、前述した正常動作時と同様に、集中コントローラ200は、第2の空調機1の目標温度と排熱温度との差温に基づいて第2の空調機1の負荷を算出するとともに、第1の空調機110の目標温度と室内温度との差温に基づいて第1の空調機110の負荷を算出し、これらの算出結果を加算することにより、サーバーラック冷却装置100全体の冷凍負荷を取得する。そして、算出した冷凍負荷に対応する運転能力比率を、前述したテーブル201とは異なる他のテーブル202(以下「電力供給停止時テーブル」と称する)に基づいて運転能力比率を取得し、各空調機を制御する。ここで、電力供給停止状態は、異常な状態であることから、前述のように運転効率を高めることではなく、当該異常な状態においてサーバー3が温度異常を起こさないようにすることが最優先される。具体的な例を挙げると、例えば、所定の冷凍負荷に対する必要能力が90%である場合、当該90%の運転能力を発揮するとともに、温度異常がより発生しにくい最適な運転比率(例えば、サーバー3の温度をより低下できる運転比率)として、第2の空調機1が40%で、第1の空調機110が50%として電力供給停止時テーブル202に格納されている。集中コントローラ200は、このようにして取得された運転能力比率を、制御ユニット80、85にそれぞれ供給する。制御ユニット80、85は、供給された運転能力比率に応じて、例えば、圧縮機モータ33およびガスエンジン127の回転数を制御することにより、運転能力を設定する。なお、このような運転能力比率については、前述の場合と同様に、実測によって求めるか、または、シミュレーション等に基づいて求めることができる。なお、第2の空調機1の運転能力を上昇させるためには、発電機128から出力される電力を増加させる必要があり、そのためにはガスエンジン127の回転数を増加させる必要が生じる。ガスエンジン127の回転数を増加させると、それに応じて第1の空調機110の出力も必然的に上昇してしまうことから、例えば、ガスエンジン127と発電機128との間に回転力の伝達をオンまたはオフするクラッチを設け、当該クラッチをオンまたはオフの状態にして、サーモオンオフ制御をすることで、第1の空調機110の運転能力を制御するようにしてもよい。
【0030】
ステップS14では、集中コントローラ200は、電力供給停止状態が解消したか否かを判定し、解消したと判定した場合(ステップS14;Yes)にはステップS15に進み、それ以外の場合(ステップS14;No)にはステップS13に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。例えば、商用電源300の停電が解消した場合にはYesと判定されてステップS15に進む。
【0031】
ステップS15では、集中コントローラ200は、切換スイッチ90を制御し、その接続を発電機128側から、商用電源300側に変更する。これにより、商用電源300から供給される電力が、圧縮機モータ33、室外ファンモータ34、膨張弁36、および、制御ユニット80に供給され、これらが動作可能な状態となる。
【0032】
ステップS16では、集中コントローラ200は、制御ユニット85を制御してガスエンジン127の回転数を低下させる。すなわち、電力供給停止状態が発生した場合には、第1の空調機110から第2の空調機1に対して電力を供給してこれを駆動するために、ガスエンジン127の回転数が増加されているが、電力供給停止状態が解消した場合には、これを元の状態(例えば、電力供給停止状態発生前の状態)に復元する。
【0033】
ステップS17では、集中コントローラ200は、空調運転を電力供給停止状態が発生する前の状態に復元する。すなわち、集中コントローラ200は、前述した通常運転時のテーブル201に基づいて、空調運転を実行する。
【0034】
以上の実施形態によれば、電力供給停止状態が発生した場合には、第1の空調機110の発電機128によって発電される電力を、第2の空調機1に供給するようにしたので、電力供給停止時においても、第2の空調機1と第1の空調機110の双方により、サーバーを効率よく冷却することができる。
【0035】
また、以上の実施形態によれば、電力供給停止時と、通常時における運転能力比率を異なるテーブル201、202に格納するようにしたので、通常時は運転効率を優先してシステムを稼働し、電力供給停止時にはサーバー3の温度異常が発生しないことを優先してシステムを稼働することができる。
【0036】
なお、上述した各実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。例えば、以上の実施形態では、図1に示すように、第2の空調機1を電気式空気調和機とし、第1の空調機110をガスエンジン式空気調和機としたが、これらを逆の構成としてもよい。図6および図7は、第2の空調機1Aをガスエンジン式空気調和機とし、第1の空調機110Aを電気式空気調和機とした場合の構成例を示している。なお、図6および図7において図1および図4と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。図6に示すように、この実施形態では、第2の空調機1Aは、熱源機30Aがガスエンジン40および発電機41を有しており、ガスエンジン40が発電機41と圧縮機32を駆動する。また、第1の空調機110Aは、室外ユニット120Aが圧縮機モータ(電動機)150を有しており、圧縮機モータ150が圧縮機121を駆動する。また、図7に示すように、この実施形態では、発電機41によって発電された電力は、集中コントローラ200、制御ユニット80、室外ファンモータ34、膨張弁36、および、切換スイッチ90に供給される。切換スイッチ90は、商用電源300が正常である場合には商用電源300から供給される電力を選択して四方弁122、膨張弁124、室外ファンモータ126、室内ファンモータ132A、および、圧縮機モータ150に供給し、商用電源300が正常でない場合には発電機41によって発電される電力を選択して前述した各部に供給する。
【0037】
次に、以上の実施形態の動作について説明する。通常動作時は、集中コントローラ200は、切換スイッチ90に商用電源300側を選択させ、商用電源300からの電力を、四方弁122その他に対して供給する。また、集中コントローラ200は、前述した場合と同様に、サーバーラック冷却装置100全体の冷凍負荷を取得するとともに、通常動作時のテーブル203を参照し、第2の空調機1Aと第1の空調機110Aの運転能力比率を取得し、取得した運転能力比率に基づいて、例えば、ガスエンジン40と圧縮機モータ150の回転数を制御する。これにより、システム全体の効率を優先した運転を実行することができる。
【0038】
一方、電力供給停止状態が発生した場合には、図5と同様の処理に基づいて制御が実行される。すなわち、電力供給停止状態が発生すると(ステップS10;Yes)、ガスエンジン40の出力が増加され(ステップS11)、切換スイッチ90の接続が商用電源300側から発電機41側に切り換えられる(ステップS12)。そして、ステップS13では、前述した場合と同様に、サーバーの温度異常を生じないことを優先して設定された電力供給停止時テーブル204に基づいて、運転能力比率が決定される。そして、電力供給停止状態が解消した場合(ステップS14;Yes)にはステップS15に進み、切換スイッチ90の接続が商用電源300側に切り換えられ、ガスエンジン40の出力が低下され(ステップS16)、空調運転を電力供給停止状態が発生する前の状態に復元し(ステップS17)、処理を終了する。
【0039】
以上の実施形態によれば、前述の場合と同様に、電力供給停止時においても、第2の空調機1Aと第1の空調機110Aの双方により、サーバー3を効率よく冷却することができるとともに、通常時は運転効率を優先してシステムを稼働し、電力供給停止時にはサーバー3の温度異常が発生しないことを優先してシステムを稼働することができる。
【0040】
なお、以上の各実施形態では、通常時と電力供給停止時の双方において、室内温度センサ129と、サーバー温度センサ29E、29Fの双方に基づいて制御を行うようにしたが、例えば、通常時と電力供給停止時の双方において、サーバー温度センサ29E、29Fのみに基づいて制御を行うようにしたり、例えば、電力供給停止時には、サーバー温度センサ29E、29Fのみに基づいて制御を行うようにしたりしてもよい。また、電力供給停止状態においては、ガスエンジンの動力のみによって動作することから、運転能力が十分でなく、通常時の目標温度まで温度を下げることができないことが想定される。そこで、電力供給停止状態においては、目標温度よりも高い「許容温度」を設定し、当該許容温度を超えないように制御をしてもよい。すなわち、サーバー3等の周囲温度の適温範囲は、一般的には17〜26℃とされている。これ以上温度が上昇すると、サーバー3を構成する半導体や電子部品の寿命が短縮するとともに、故障率が増加する。例えば、半導体の場合、40℃における故障率を1とすると、60℃で10倍、80℃で100倍となる。また、電解コンデンサの場合には、温度が10℃上昇すると寿命が半分になってしまう。そこで、通常時には、空調の目標温度として前述した17〜26℃の範囲に属する、例えば、20℃が設定され、サーバー温度センサ29E、29Fの目標温度として、前述した20℃にサーバー3における温度上昇(例えば、5℃)を加えた25℃が設定される。これにより、温度上昇によるサーバー3の熱暴走を防ぐだけでなく、サーバー3を構成する電子部品の故障率を下げるとともに、寿命を延ばすことができる。一方、電力供給停止状態においては、サーバー3に温度異常が発生する(例えば、サーバー3が熱暴走する)ことを防止することが最重要課題であることから、サーバー3が熱暴走する温度である、例えば、35℃を許容温度として設定し、サーバー温度センサ29E、29Fの検出値がこれを上回らないように制御を行うことができる。
【0041】
また、以上の各実施形態では、室内ユニット130において熱交換がされた調和空気を、床面の吹出口147から吹き出し、天井面の吸込口142から回収するようにしたが、天井面から吹き出して天井面で回収するようにしたり、天井面から吹き出して床面で回収したりするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調システムを示す図である。
【図2】第2の空調機を示す図である。
【図3】サーバーラックを示す図である。
【図4】図1に示す空調システムの制御系を示すブロック図である。
【図5】電力供給停止時に実行される処理の一例である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る空調システムを示す図である。
【図7】図6に示す空調システムの制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1 第2の空調機(電気式空調機)
1A 第2の空調機(ガスエンジン式空調機)
2 サーバールーム(コンピュータールーム)
3 サーバー(電子機器)
4 ファン
10 サーバーラック(キャビネット)
11 キャビネット
12 リアドア
20 サーバー冷却ユニット
21 蒸発器
30 熱源機
32 圧縮機
33 圧縮機モータ(電動機)
80 制御ユニット
85 制御ユニット
90 切換スイッチ(選択手段)
100 サーバーラック冷却装置(電子機器冷却装置)
110 第1の空調機(ガスエンジン式空調機)
110A 第1の空調機(電気式空調機)
120 室外ユニット
121 圧縮機
130 室内ユニット
150 圧縮機モータ(電動機)
200 集中コントローラ(検出手段、設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータールーム内を空調する第1の空気調和機と、前記コンピュータールーム内に設置したキャビネット内を空調する第2の空気調和機とを備え、これら空気調和機により前記キャビネットに収納された電子機器を冷却する電子機器冷却装置において、
第1,第2の空気調和機の一方を、電動機で圧縮機を駆動する電気式空気調和機で構成するとともに、他方を、ガスエンジンで圧縮機と発電機を駆動し、該発電機の発電電力で該空気調和機の補機を駆動するガスエンジン式空気調和機で構成し、
前記電気式空気調和機は、前記電動機および補機に供給する電力を、前記ガスエンジンで駆動される前記発電機の発電電力、および、商用電源からの電力のいずれか一方から選択する選択手段を備え、
前記商用電源から前記電気式空気調和機への電力供給停止状態の発生を検出する検出手段を備え、
前記電力供給停止状態の発生時には、前記選択手段により前記発電電力を選択し、前記電気式空気調和機の前記圧縮機および前記補機を、前記発電機の発電電力により駆動することを特徴とする電子機器冷却装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器冷却装置において、
前記第1の空気調和機と前記第2の空気調和機の運転能力比率を、冷凍負荷と運転能力比率を対応付けて格納したテーブルとを参照して設定する設定手段を有し、
前記設定手段は、電力供給停止状態とそれ以外の場合において、異なるテーブルを参照して運転能力比率を設定することを特徴とする電子機器冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−190484(P2010−190484A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35139(P2009−35139)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】