電子機器
【課題】FPCの断線の発生を抑制する。
【解決手段】 第1筐体11と、第1筐体と重なり合った状態でスライド及び回転が可能な第2筐体12と、第1筐体と第2筐体とを電気的に接続する、少なくとも2箇所の折り返し部分を有するFPC200と、を備え、FPCの一の折り返し部分は、スライド方向に垂直な方向に沿った折れ目78を有するとともに、当該折れ目が第2筐体のスライド時にスライド方向に移動し、FPCの他の折り返し部分は、回転方向に垂直な方向に沿った折れ目79を有するとともに、当該折れ目が第2筐体の回転時に回転軸回りに移動する。
【解決手段】 第1筐体11と、第1筐体と重なり合った状態でスライド及び回転が可能な第2筐体12と、第1筐体と第2筐体とを電気的に接続する、少なくとも2箇所の折り返し部分を有するFPC200と、を備え、FPCの一の折り返し部分は、スライド方向に垂直な方向に沿った折れ目78を有するとともに、当該折れ目が第2筐体のスライド時にスライド方向に移動し、FPCの他の折り返し部分は、回転方向に垂直な方向に沿った折れ目79を有するとともに、当該折れ目が第2筐体の回転時に回転軸回りに移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の情報端末(電子機器)は、高機能化の一途をたどっている。このような情報端末では、携帯性、操作性、表示の見やすさなどを理由に、キーボード部等を有する第1筐体に対し、ディスプレイ等を有する第2筐体をスライド、回転等できる機構が採用されてきている。
【0003】
また、このような情報端末では、相対的に位置が変化する2つの筐体間を電気的に接続する配線として、細い複数本の電線や、フレキシブルプリント基板(FPC)などが採用される。このうち、フレキシブルプリント基板は、構造がシンプルで機器の組立てが容易になるというメリットがあるが、動き方向の自由度が少ないため、第1、第2筐体が複雑な動きをすると、断線するおそれがある。特許文献1には、スライド式携帯電話において、フレキシブルプリント基板の断線を有効に防止することを目的とした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−187154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、フレキシブルプリント基板を長手方向途中において巻回等することにより、携帯電話のスライドによっても断線が生じないような構成を採用している。
【0006】
しかるに、上述したように、最近では、スライドと回転を行うことが可能な情報端末も出現してきているため、これらの動きにも対応できる、自由度の高いフレキシブルプリント基板も必要となると考えられる。
【0007】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、スライド、回転動作時の断線の発生を抑制することが可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載の電子機器は、第1面を有する第1筐体と、前記第1筐体の第1面と対向する第2面を有し、前記第2面の少なくとも一部を前記第1面に重なり合わせた状態でのスライド及び前記第1、第2面に垂直な回転軸回りの回転が可能な第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを電気的に接続する、少なくとも2箇所の折り返し部分を有するフレキシブルプリント基板と、を備えており、前記フレキシブルプリント基板の一の折り返し部分が、前記スライド方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体のスライド時に前記スライド方向に移動し、前記フレキシブルプリント基板の他の折り返し部分が、前記回転方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体の回転時に前記回転軸回りに移動する電子機器である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に記載の電子機器は、スライド、回転動作時の断線の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、一実施形態に係る携帯電話の第1状態を示し、図1(b)は、携帯電話の第2状態を示す図である。
【図2】携帯電話の第3状態を示す図である。
【図3】図3(a)は、一実施形態に係る携帯電話機の分解図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A線断面図である。
【図4】図4(a)は、ベースプレートとスイングプレートを+Z側から見た状態を示す斜視図であり、図4(b)は、スイングプレートを−Z側から見た状態を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は、ベースプレートとスイングプレートとが組みつけられた状態を示す図であり、図5(b)、図5(c)は、ベースプレートとスイングプレートとが組みつけられた状態を−Z側から見た状態を示す図である。
【図6】図6(a)〜図6(d)は、スイングプレートのY軸方向への移動を伴う回転を説明するための図(その1)である。
【図7】図7(a)〜図7(d)は、スイングプレートのY軸方向への移動を伴う回転を説明するための図(その2)である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、スライドプレートの動きを説明するための図(その1)である。
【図9】図9(a)、図9(b)は、スライドプレートの動きを説明するための図(その2)である。
【図10】スライドプレートの動きを説明するための図(その3)である。
【図11】図11(a)はFPCを示す図であり、図11(b)は、FPCが携帯電話に実装される際の状態を示す斜視図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)は、図8(a)〜図8(c)の動きを行ったときのFPCの状態を示す図である。
【図13】図13(a)、図13(b)は、図9(a)、図9(b)の動きを行ったときのFPCの状態を示す図である。
【図14】図10の状態における、FPCの状態を示す図である。
【図15】スライドプレートに設けられた凹部を示す図である。
【図16】図16(a)、図16(b)は、変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、電子機器の一実施形態について、図1〜図15に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は、電子機器としての携帯電話100を示す平面図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1(a)に示す携帯電話100の表示画面16の長手方向(縦方向)をY軸方向、短手方向(横方向)をX軸方向、表示画面16に直交する方向(厚さ方向)をZ軸方向として説明するものとする。
【0012】
携帯電話100は、図1(a)に示すような第1状態と、図1(b)に示すような第2状態と、図2に示すような第3状態との間で遷移可能である。このうち、図1(a)の第1状態は、第1筺体11(図1(b)参照)と第2筺体12(表示画面16を有する筺体)とが重なった状態である。この第1状態は、携帯電話100のY軸方向(縦方向)に関する全長が最も短くなる。図1(b)の第2状態は、第1状態から第2筺体12が上方(+Y方向)にスライド移動して、携帯電話100の全長が最大まで延びた状態である。この第2状態では、第1筺体11の操作部14が露出した状態となる。図2の第3状態は、第2状態から第2筺体12が第1筺体11に対して90°回転した状態である。
【0013】
以下、携帯電話100の構成各部について、携帯電話100の分解図を示す図3(a)等に基づいて、具体的に説明する。携帯電話100は、上記第1筐体11と、第2筐体12と、第1筐体11と第2筐体12との間を電気的に接続するフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)(以下、単に「FPC」と呼ぶ)200と、を有する。
【0014】
第1筺体11は、図3(a)に示すように、扁平な略直方体形状を有する第1筐体本体110と、ベースプレート20と、スイングプレート30と、を有する。第1筐体本体110には、操作部14が設けられている。この操作部14は、テンキーや通話開始キー、通話終了キー、方向キーなどを含んでいる。
【0015】
ベースプレート20は、略矩形の板状部材から成り、第1筐体11の+Z側面の+Y側端部にネジ止め等により固定されている。ベースプレート20の略中央には、長円状のガイド孔25が貫通形成されている。なお、ベースプレート20の−Z側の面におけるガイド孔25の近傍と、第1筐体11の+Z側の面との間には隙間が形成されている。また、ベースプレート20の+Z側の面には、第1カムピン26と、第2カムピン28とが突設されている。これら第1カムピン26及び第2カムピン28は、X軸方向に関し、ベースプレート20の中央部に位置している。
【0016】
スイングプレート30は、板状の本体部32と、本体部32の−X側端部及び+X側端部に設けられたXZ断面L字状(図4(a)の斜視図参照)のスライド脚部34a、34bとを有する。本体部32の略中央部には、軸部35が固定されている。この軸部35は、スイングプレート30を−Z側から見た状態を示す図4(b)から分かるように、−Z方向に突出している。また、スイングプレート30には、本体部32の軸部35近傍に、X軸及びY軸に交差する方向に延びる略直線状の第1カム溝36と、略U字状の第2カム溝38とが、貫通形成されている。
【0017】
図5(a)には、スイングプレート30がベースプレート20に組み付けられた状態が平面図にて示されている。この図5(a)に示すように、スイングプレート30がベースプレート20に組み付けられた状態では、ベースプレート20に設けられた第1カムピン26が、第1カム溝36に係合する。また、ベースプレート20に設けられた第2カムピン28が、第2カム溝38に係合する。更に、スイングプレート30の軸部35がベースプレート20のガイド孔25に係合する。
【0018】
また、ベースプレート20の裏面(−Z面)には、図5(a)の状態をベースプレート20の裏面側(−Z側)から見た図5(b)から分かるように、付勢部材としての捻りバネ23が設けられている。この捻りバネ23の一端23aは、ベースプレート20に固定され、他端23b側は、軸部35に接触している。この捻りバネ23は、図5(c)に示すように、軸部35に対して−Y方向の付勢力Faを常時付与している。
【0019】
次に、図6及び図7に基づいて、ベースプレート20に対するスイングプレート30の動作(動き)について説明する。
【0020】
図6(a)には、ベースプレート20(実線)と、回転前(携帯電話100が第2状態(図1(b))にあるとき)のスイングプレート30(破線)の状態が示されている。この状態では、軸部35は、ガイド孔25の−Y側端部に位置している。この図6(a)の状態から、図6(b)に示すように回転方向(Rz方向)の力Fbがスイングプレート30に作用すると、スイングプレート30は、Rz方向に回転するととともに、+Y方向に移動する。このスイングプレート30の+Y方向への移動は、第1カム機構66と第2カム機構68によるガイドを受けて、軸部35がガイド孔25内をスライドすることで実現されている。
【0021】
そして、図6(c)の状態を経て、図6(d)のように45°回転するまで、スイングプレート30は、Rz方向に回転しつつ、+Y方向に移動する。このようにスイングプレート30が45°回転した図6(d)の状態では、軸部35が、ガイド孔25の+Y側端部に位置するようになっている。これら図6(a)〜図6(d)の動作の間は、軸部35には、捻りバネ23からの付勢力Fa(−Y方向の力)が作用しているので(図5(c)参照)、スイングプレート30は、当該付勢力Faを受けながら、+Y方向にスライド移動する。
【0022】
その後、図7(a)に示すように、回転角度が45°を超えると、スイングプレート30は、Rz方向に回転しつつ、−Y方向に移動する。そして、図7(b)、図7(c)に示す状態を経て、図7(d)に示すようにスイングプレート30が90°回転すると、軸部35は、ガイド孔25の−Y側端部に戻る。なお、図7(d)は、携帯電話100が第3状態(図2)にあるときのベースプレート20及びスイングプレート30の状態を示している。これら図7(a)〜図7(d)の動作の間も、軸部35には捻りバネ23の付勢力Fa(−Y方向の力)が作用している(図5(c)参照)。したがって、これら図7(a)〜図7(d)の間においては、付勢力Faの作用により、スイングプレート30がスムーズに−Y方向にスライド移動するようになっている。
【0023】
以上のように、本実施形態では、スイングプレート30がベースプレート20に対して回転する際には、スイングプレート30がベースプレート20に対して+Y方向及び−Y方向に移動するようになっている。
【0024】
なお、図7(d)の状態から図6(a)の状態に戻る際にも、上記と全く逆の動作が行われる。
【0025】
図3(a)に戻り、第2筺体12は、第1筐体11の+Z側の面(第1面)と重なり合う−Z側の面(第2面)を有し、当該−Z側の面の少なくとも一部を第1筐体11の+Z側の面に重なり合わせた状態で、スライド及び回転するものである。この第2筐体12は、扁平な略直方体形状を有する第2筐体本体120と、第2筐体本体120の−Z側の面に設けられたスライドプレート40と、を有する。
【0026】
第2筐体本体120の+Z側面のほぼ中央部には、液晶パネルや有機ELディスプレイなどから成る表示画面16が設けられている。この表示画面16は、図1(a)の状態でも、表示画面16上での作業を可能にするために、タッチパネルとしての機能を有していても良い。
【0027】
スライドプレート40は、全体的に見て長方形状の略板状部材である。このスライドプレート40には、略L字形状を左右反転した形状を有するスライドガイド孔42が貫通形成されている。スライドガイド孔42は、Y軸方向に延びる第1孔部42aと、第1孔部42aの−Y側端部からX軸及びY軸に交差する方向に延びる第2孔部42bとを有する。第2孔部42bの第1孔部42aとは反対側の端部は、スライドプレート40の長手方向(Y軸方向)に関し、ほぼ中央部に位置している。
【0028】
また、スライドプレート40は、図3(a)のA−A線断面図である図3(b)に示すように、−X側の端部及び+X側の端部が断面コ字状(U字状)に折り曲げられ、一対のスライドガイド44a、44bを形成している。
【0029】
このスライドプレート40には、図8(a)に示すように、スイングプレート30がスライド可能に係合している。具体的には、スライドプレート40のスライドガイド44a、44bが、スイングプレート30のスライド脚部34a、34bにそれぞれ係合し、かつ、スライドガイド孔42内に第1カムピン26の先端(+Z側の先端)が挿入されている。
【0030】
次に、図8〜図10に基づいて、スライドプレート40の動作(動き)について詳細に説明する。なお、図8〜図10では、第2筐体12の図示を省略している。
【0031】
図8(a)は、携帯電話100が第1状態にある場合(図1(a))を示している。この第1状態では、第1カムピン26が、スライドガイド孔42の+Y側端部に位置しており、スライドプレート40は、これ以上−Y側には移動できないようになっている。
【0032】
図8(b)には、図8(a)の状態から、スライドプレート40に+Y方向の力Fcが加わることで、スライドプレート40が+Y方向に移動した状態が示されている。この状態では、スライドガイド孔42の第1孔部42a内に、第1カムピン26が位置している。したがって、たとえ、スライドプレート40に対してZ軸回りの力が作用しても、第1カムピン26とスライドガイド孔42との接触により、スライドプレート40及びスライドプレート40に係合するスイングプレート30は、回転しない。
【0033】
図8(c)には、図8(b)の状態から更にスライドプレート40が+Y方向に移動した状態(第2状態(図1(b)参照))が示されている。この状態では、第1カムピン26が、スライドガイド孔42の第1孔部42aと第2孔部42bとが交差する部分に位置する。すなわち、スライドプレート40は、これ以上+Y方向には移動することができない。
【0034】
図9(a)には、図8(c)の状態から、スライドプレート40にZ軸回りの回転方向の力Fdが付与された状態が示されている。この図9(a)に示すようにスライドプレート40に回転力Fdが作用すると、スライドプレート40及びスイングプレート30が回転を開始する。この場合、スイングプレート30は、図6(a)〜図7(d)のように、+Y、−Y方向に往復移動しつつ回転するが、スライドプレート40は、第2孔部42bが第1カムピン26に沿うことで、図9(a)、図9(b)のように、矢印S方向にスライドしながら回転する。
【0035】
本実施形態では、上記動作を経ることで、図10に示すように、スライドプレート40が90°回転し、かつ第1筐体11の短手方向中央部とスライドプレート40の長手方向中央部とが略一致する位置に位置決めされる(第3状態)。なお、スライドプレート40が、図10の位置に位置決めされるのは、第1カムピン26がベースプレート20のX軸方向中央に位置し、かつ第2孔部42bの第1孔部42aとは反対側の端部がスライドプレート40の長手方向中央部に位置していることに起因する。なお、第1筐体11と第2筐体12との間には、実際には、上記スライド及び回転動作を円滑に行うとともにユーザの操作感を高めるための弾性部材が設けられているが、当該弾性部材についての説明及び図示については省略するものとする。
【0036】
図3(a)に戻り、FPC200は、2箇所において折り返された状態で、第1筐体11と第2筐体12との間に配置され、第1、第2筐体11、12間を電気的に接続する。具体的には、FPC200の一端部200aは、第1筐体11に設けられた接続端子29を介して第1筐体11内に設けられた回路基板などの電気部品と接続される。また、FPC200の他端部200bは、スライドプレート40に形成された矩形開口43を介して、第2筐体12内に設けられた回路基板などの電気部品と接続される。
【0037】
FPC200は、折り返さない状態では、図11(a)に示すような形状を有している。具体的には、FPC200は、直線部72と、曲線部74と、直線部72及び曲線部74を連結する連結部76と、を有している。直線部72は、図11(a)のA軸方向に延びている。曲線部74は、A軸方向に延びる第1部分74aと、A軸に直交するB軸方向に延びる第2部分74bと、これら第1、第2部分74a、74bを連結する円弧状部分74cと、を含む。連結部76は、B軸方向に延びている。
【0038】
また、FPC200は、携帯電話100に実装される状態では、図11(b)に示すように、直線部72と、曲線部74の両方に折り返し部分が設けられる。直線部72の折り返し部分は、折れ目78を有しており、曲線部74の折り返し部分は、折れ目79を有している。なお、本明細書で「折れ目」とは、FPCが破断しない程度に適度な湾曲を有するように折り返した部分の端部(図11(b)では+A側の端部)を意味している。なお、適度な湾曲としては、例えば湾曲半径0.5mm程度以上とすることができる。
【0039】
図12(a)〜図12(c)には、携帯電話100が図8(a)〜図8(c)の動作を行ったときのFPC200の動きが示されている。また、図13(a)、図13(b)には、携帯電話100が図9(a)、図9(b)の動作を行ったときのFPC200の動きが示されている。更に、図14には、携帯電話が図10の状態になったときのFPC200の状態が示されている。
【0040】
図12(a)に示すように、携帯電話100が第1状態にあるときには、折れ目78はX軸方向に沿って延びており、(1)で示す位置に位置している。また、折れ目79もX軸方向に沿って延びており、(2)で示す位置に位置している。次いで、図12(b)、図12(c)に示すように、スライドプレート40(第2筐体12)が+Y方向にスライドすると、X軸方向に沿って延びる折れ目78が、+Y方向に移動する((1)→(1)’→(1)”)。この場合の、折れ目78の移動量は、第2筐体12のスライド量の1/2である。なお、折れ目79については、第2筐体12がスライド移動する間は、図12(a)〜図12(c)に示すように、(2)の位置で維持されるようになっている。
【0041】
次いで、図13(a)〜図14に示すように、スライドプレート40(第2筐体12)が回転とスライド移動とを同時に行った場合には、折れ目78が、スライド方向に沿って移動するとともに、折れ目79が回転方向に移動する。この場合、折れ目78は、スライド方向に垂直な方向に延びた状態を維持する。また、折れ目79は、回転方向に垂直な方向(回転軸を中心とする円の半径方向)に延びた状態を維持する。折れ目78は、第2筐体12のスライド量の1/2だけ移動し、折れ目79は、第2筐体12の回転量の1/2だけ移動するようになっている。
【0042】
このように、本実施形態では、FPC200を図11(a)のような形状とし、直線部72と曲線部74を折れ目78、79で折り返して、第1筐体11と第2筐体12とを電気的に接続するので、折れ目78、79がスライド及び回転の方向に垂直な方向に延びた状態を維持したまま、第2筐体12のスライド及び回転方向に移動するようになる。これにより、第2筐体12がスライド及び/又は回転しても、FPC200が無理に折れ曲がったり、縒れたりすることがないので、FPC200の断線を抑制することができる。したがって、携帯電話100の不具合の発生を防止することができる。また、スライド及び回転が可能な携帯電話100であっても、FPC200で第1筐体11と第2筐体12とを電気的に接続することができるので、防水機能の導入を容易に実現することが可能である。
【0043】
ここで、図15に示すように、スライドプレート40の−Y側の面には、凹部42c、42dを設けておくことができる。これら凹部42c、42dは、折れ目78、79が移動する範囲に設けられる。これにより、折れ目78、79が第1筐体11と第2筐体12に挟まれた状態であっても、折れ目78、79に過度に負荷がかかるのを抑制することができる。したがって、凹部42c、42dによれば、折れ目78、79近傍におけるFPC200の断線の発生を抑制することができる。なお、凹部42cや凹部42dは、第2筐体12側のみに設ける場合に限らず、第1筐体11側と第2筐体12側の両方に設けても良いし、第1筐体11側にのみ設けても良い。
【0044】
なお、上記実施形態では、携帯電話100が閉じた第1状態、スライドした第2状態、略T字状の第3状態と遷移する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、携帯電話が、第1状態、第2状態(図16(a))、及び第2状態から、スライドプレート40(第2筐体12)が回転のみして略L字状となる第3状態(図16(b))の間で遷移することとしても良い。このような携帯電話を実現するためには、例えば、図16(a)に示すように、スライドガイド孔42’を、Y軸方向に延びる第1孔部42aと、略円弧状に延びる第2孔部42b’とにより構成し、かつスイングプレートを省略する。
【0045】
この場合においても、上記実施形態と同様のFPC200を採用することで、第1状態から第2状態に遷移する際の第2筐体12のスライド移動に対応できるのは勿論、第2状態から第3状態に遷移する際の第2筐体12の回転にも対応することができる。すなわち、図16(a)の第2状態から、図16(b)の第3状態に遷移する場合でも、折れ目79の延びる方向を、回転方向に垂直な方向に維持しつつ回転方向に移動させることができる。これにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、図16(a)、図16(b)の携帯電話にFPC200を実装する場合には、上記実施形態で用いたFPC200の大きさや寸法等を、適宜調整すれば良い。
【0046】
なお、上記実施形態では、FPC200の形状として、図11(a)のような形状を採用した場合について説明したが、これに限られるものではない。FPCとしては、複数の折り返し部が設けられ、そのうちの一の折り返し部分が、第2筐体12のスライド方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が第2筐体12のスライド時にスライド方向に移動するものであり、他の折り返し部分が、第2筐体12の回転方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体12の回転時に回転軸回りに移動するものであれば良い。すなわち、FPCの形状は、図11(a)のような形状に限定されるものではなく、例えば、折り返し部分(折れ目)は、3つ以上あっても良い。また、第1筐体11と第2筐体12の間の機構(スライド、回転のための機構)との機械的な干渉を避けるために、図11(a)の形状を適宜変更しても良い。
【0047】
なお、上記実施形態では、電子機器として携帯電話が採用された場合について説明したが、これに限らず、第1筐体及び第2筐体を有する電子機器であれば、他の電子機器を採用することも可能である。
【0048】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
11 第1筐体
12 第2筐体
42c、42d 凹部
78 折れ目
79 折れ目
72 直線部(第1部分)
74 曲線部(第2部分)
100 携帯電話(電子機器)
200 フレキシブルプリント基板
【技術分野】
【0001】
本件は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の情報端末(電子機器)は、高機能化の一途をたどっている。このような情報端末では、携帯性、操作性、表示の見やすさなどを理由に、キーボード部等を有する第1筐体に対し、ディスプレイ等を有する第2筐体をスライド、回転等できる機構が採用されてきている。
【0003】
また、このような情報端末では、相対的に位置が変化する2つの筐体間を電気的に接続する配線として、細い複数本の電線や、フレキシブルプリント基板(FPC)などが採用される。このうち、フレキシブルプリント基板は、構造がシンプルで機器の組立てが容易になるというメリットがあるが、動き方向の自由度が少ないため、第1、第2筐体が複雑な動きをすると、断線するおそれがある。特許文献1には、スライド式携帯電話において、フレキシブルプリント基板の断線を有効に防止することを目的とした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−187154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、フレキシブルプリント基板を長手方向途中において巻回等することにより、携帯電話のスライドによっても断線が生じないような構成を採用している。
【0006】
しかるに、上述したように、最近では、スライドと回転を行うことが可能な情報端末も出現してきているため、これらの動きにも対応できる、自由度の高いフレキシブルプリント基板も必要となると考えられる。
【0007】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、スライド、回転動作時の断線の発生を抑制することが可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載の電子機器は、第1面を有する第1筐体と、前記第1筐体の第1面と対向する第2面を有し、前記第2面の少なくとも一部を前記第1面に重なり合わせた状態でのスライド及び前記第1、第2面に垂直な回転軸回りの回転が可能な第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを電気的に接続する、少なくとも2箇所の折り返し部分を有するフレキシブルプリント基板と、を備えており、前記フレキシブルプリント基板の一の折り返し部分が、前記スライド方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体のスライド時に前記スライド方向に移動し、前記フレキシブルプリント基板の他の折り返し部分が、前記回転方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体の回転時に前記回転軸回りに移動する電子機器である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に記載の電子機器は、スライド、回転動作時の断線の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、一実施形態に係る携帯電話の第1状態を示し、図1(b)は、携帯電話の第2状態を示す図である。
【図2】携帯電話の第3状態を示す図である。
【図3】図3(a)は、一実施形態に係る携帯電話機の分解図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A線断面図である。
【図4】図4(a)は、ベースプレートとスイングプレートを+Z側から見た状態を示す斜視図であり、図4(b)は、スイングプレートを−Z側から見た状態を示す斜視図である。
【図5】図5(a)は、ベースプレートとスイングプレートとが組みつけられた状態を示す図であり、図5(b)、図5(c)は、ベースプレートとスイングプレートとが組みつけられた状態を−Z側から見た状態を示す図である。
【図6】図6(a)〜図6(d)は、スイングプレートのY軸方向への移動を伴う回転を説明するための図(その1)である。
【図7】図7(a)〜図7(d)は、スイングプレートのY軸方向への移動を伴う回転を説明するための図(その2)である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、スライドプレートの動きを説明するための図(その1)である。
【図9】図9(a)、図9(b)は、スライドプレートの動きを説明するための図(その2)である。
【図10】スライドプレートの動きを説明するための図(その3)である。
【図11】図11(a)はFPCを示す図であり、図11(b)は、FPCが携帯電話に実装される際の状態を示す斜視図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)は、図8(a)〜図8(c)の動きを行ったときのFPCの状態を示す図である。
【図13】図13(a)、図13(b)は、図9(a)、図9(b)の動きを行ったときのFPCの状態を示す図である。
【図14】図10の状態における、FPCの状態を示す図である。
【図15】スライドプレートに設けられた凹部を示す図である。
【図16】図16(a)、図16(b)は、変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、電子機器の一実施形態について、図1〜図15に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は、電子機器としての携帯電話100を示す平面図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1(a)に示す携帯電話100の表示画面16の長手方向(縦方向)をY軸方向、短手方向(横方向)をX軸方向、表示画面16に直交する方向(厚さ方向)をZ軸方向として説明するものとする。
【0012】
携帯電話100は、図1(a)に示すような第1状態と、図1(b)に示すような第2状態と、図2に示すような第3状態との間で遷移可能である。このうち、図1(a)の第1状態は、第1筺体11(図1(b)参照)と第2筺体12(表示画面16を有する筺体)とが重なった状態である。この第1状態は、携帯電話100のY軸方向(縦方向)に関する全長が最も短くなる。図1(b)の第2状態は、第1状態から第2筺体12が上方(+Y方向)にスライド移動して、携帯電話100の全長が最大まで延びた状態である。この第2状態では、第1筺体11の操作部14が露出した状態となる。図2の第3状態は、第2状態から第2筺体12が第1筺体11に対して90°回転した状態である。
【0013】
以下、携帯電話100の構成各部について、携帯電話100の分解図を示す図3(a)等に基づいて、具体的に説明する。携帯電話100は、上記第1筐体11と、第2筐体12と、第1筐体11と第2筐体12との間を電気的に接続するフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)(以下、単に「FPC」と呼ぶ)200と、を有する。
【0014】
第1筺体11は、図3(a)に示すように、扁平な略直方体形状を有する第1筐体本体110と、ベースプレート20と、スイングプレート30と、を有する。第1筐体本体110には、操作部14が設けられている。この操作部14は、テンキーや通話開始キー、通話終了キー、方向キーなどを含んでいる。
【0015】
ベースプレート20は、略矩形の板状部材から成り、第1筐体11の+Z側面の+Y側端部にネジ止め等により固定されている。ベースプレート20の略中央には、長円状のガイド孔25が貫通形成されている。なお、ベースプレート20の−Z側の面におけるガイド孔25の近傍と、第1筐体11の+Z側の面との間には隙間が形成されている。また、ベースプレート20の+Z側の面には、第1カムピン26と、第2カムピン28とが突設されている。これら第1カムピン26及び第2カムピン28は、X軸方向に関し、ベースプレート20の中央部に位置している。
【0016】
スイングプレート30は、板状の本体部32と、本体部32の−X側端部及び+X側端部に設けられたXZ断面L字状(図4(a)の斜視図参照)のスライド脚部34a、34bとを有する。本体部32の略中央部には、軸部35が固定されている。この軸部35は、スイングプレート30を−Z側から見た状態を示す図4(b)から分かるように、−Z方向に突出している。また、スイングプレート30には、本体部32の軸部35近傍に、X軸及びY軸に交差する方向に延びる略直線状の第1カム溝36と、略U字状の第2カム溝38とが、貫通形成されている。
【0017】
図5(a)には、スイングプレート30がベースプレート20に組み付けられた状態が平面図にて示されている。この図5(a)に示すように、スイングプレート30がベースプレート20に組み付けられた状態では、ベースプレート20に設けられた第1カムピン26が、第1カム溝36に係合する。また、ベースプレート20に設けられた第2カムピン28が、第2カム溝38に係合する。更に、スイングプレート30の軸部35がベースプレート20のガイド孔25に係合する。
【0018】
また、ベースプレート20の裏面(−Z面)には、図5(a)の状態をベースプレート20の裏面側(−Z側)から見た図5(b)から分かるように、付勢部材としての捻りバネ23が設けられている。この捻りバネ23の一端23aは、ベースプレート20に固定され、他端23b側は、軸部35に接触している。この捻りバネ23は、図5(c)に示すように、軸部35に対して−Y方向の付勢力Faを常時付与している。
【0019】
次に、図6及び図7に基づいて、ベースプレート20に対するスイングプレート30の動作(動き)について説明する。
【0020】
図6(a)には、ベースプレート20(実線)と、回転前(携帯電話100が第2状態(図1(b))にあるとき)のスイングプレート30(破線)の状態が示されている。この状態では、軸部35は、ガイド孔25の−Y側端部に位置している。この図6(a)の状態から、図6(b)に示すように回転方向(Rz方向)の力Fbがスイングプレート30に作用すると、スイングプレート30は、Rz方向に回転するととともに、+Y方向に移動する。このスイングプレート30の+Y方向への移動は、第1カム機構66と第2カム機構68によるガイドを受けて、軸部35がガイド孔25内をスライドすることで実現されている。
【0021】
そして、図6(c)の状態を経て、図6(d)のように45°回転するまで、スイングプレート30は、Rz方向に回転しつつ、+Y方向に移動する。このようにスイングプレート30が45°回転した図6(d)の状態では、軸部35が、ガイド孔25の+Y側端部に位置するようになっている。これら図6(a)〜図6(d)の動作の間は、軸部35には、捻りバネ23からの付勢力Fa(−Y方向の力)が作用しているので(図5(c)参照)、スイングプレート30は、当該付勢力Faを受けながら、+Y方向にスライド移動する。
【0022】
その後、図7(a)に示すように、回転角度が45°を超えると、スイングプレート30は、Rz方向に回転しつつ、−Y方向に移動する。そして、図7(b)、図7(c)に示す状態を経て、図7(d)に示すようにスイングプレート30が90°回転すると、軸部35は、ガイド孔25の−Y側端部に戻る。なお、図7(d)は、携帯電話100が第3状態(図2)にあるときのベースプレート20及びスイングプレート30の状態を示している。これら図7(a)〜図7(d)の動作の間も、軸部35には捻りバネ23の付勢力Fa(−Y方向の力)が作用している(図5(c)参照)。したがって、これら図7(a)〜図7(d)の間においては、付勢力Faの作用により、スイングプレート30がスムーズに−Y方向にスライド移動するようになっている。
【0023】
以上のように、本実施形態では、スイングプレート30がベースプレート20に対して回転する際には、スイングプレート30がベースプレート20に対して+Y方向及び−Y方向に移動するようになっている。
【0024】
なお、図7(d)の状態から図6(a)の状態に戻る際にも、上記と全く逆の動作が行われる。
【0025】
図3(a)に戻り、第2筺体12は、第1筐体11の+Z側の面(第1面)と重なり合う−Z側の面(第2面)を有し、当該−Z側の面の少なくとも一部を第1筐体11の+Z側の面に重なり合わせた状態で、スライド及び回転するものである。この第2筐体12は、扁平な略直方体形状を有する第2筐体本体120と、第2筐体本体120の−Z側の面に設けられたスライドプレート40と、を有する。
【0026】
第2筐体本体120の+Z側面のほぼ中央部には、液晶パネルや有機ELディスプレイなどから成る表示画面16が設けられている。この表示画面16は、図1(a)の状態でも、表示画面16上での作業を可能にするために、タッチパネルとしての機能を有していても良い。
【0027】
スライドプレート40は、全体的に見て長方形状の略板状部材である。このスライドプレート40には、略L字形状を左右反転した形状を有するスライドガイド孔42が貫通形成されている。スライドガイド孔42は、Y軸方向に延びる第1孔部42aと、第1孔部42aの−Y側端部からX軸及びY軸に交差する方向に延びる第2孔部42bとを有する。第2孔部42bの第1孔部42aとは反対側の端部は、スライドプレート40の長手方向(Y軸方向)に関し、ほぼ中央部に位置している。
【0028】
また、スライドプレート40は、図3(a)のA−A線断面図である図3(b)に示すように、−X側の端部及び+X側の端部が断面コ字状(U字状)に折り曲げられ、一対のスライドガイド44a、44bを形成している。
【0029】
このスライドプレート40には、図8(a)に示すように、スイングプレート30がスライド可能に係合している。具体的には、スライドプレート40のスライドガイド44a、44bが、スイングプレート30のスライド脚部34a、34bにそれぞれ係合し、かつ、スライドガイド孔42内に第1カムピン26の先端(+Z側の先端)が挿入されている。
【0030】
次に、図8〜図10に基づいて、スライドプレート40の動作(動き)について詳細に説明する。なお、図8〜図10では、第2筐体12の図示を省略している。
【0031】
図8(a)は、携帯電話100が第1状態にある場合(図1(a))を示している。この第1状態では、第1カムピン26が、スライドガイド孔42の+Y側端部に位置しており、スライドプレート40は、これ以上−Y側には移動できないようになっている。
【0032】
図8(b)には、図8(a)の状態から、スライドプレート40に+Y方向の力Fcが加わることで、スライドプレート40が+Y方向に移動した状態が示されている。この状態では、スライドガイド孔42の第1孔部42a内に、第1カムピン26が位置している。したがって、たとえ、スライドプレート40に対してZ軸回りの力が作用しても、第1カムピン26とスライドガイド孔42との接触により、スライドプレート40及びスライドプレート40に係合するスイングプレート30は、回転しない。
【0033】
図8(c)には、図8(b)の状態から更にスライドプレート40が+Y方向に移動した状態(第2状態(図1(b)参照))が示されている。この状態では、第1カムピン26が、スライドガイド孔42の第1孔部42aと第2孔部42bとが交差する部分に位置する。すなわち、スライドプレート40は、これ以上+Y方向には移動することができない。
【0034】
図9(a)には、図8(c)の状態から、スライドプレート40にZ軸回りの回転方向の力Fdが付与された状態が示されている。この図9(a)に示すようにスライドプレート40に回転力Fdが作用すると、スライドプレート40及びスイングプレート30が回転を開始する。この場合、スイングプレート30は、図6(a)〜図7(d)のように、+Y、−Y方向に往復移動しつつ回転するが、スライドプレート40は、第2孔部42bが第1カムピン26に沿うことで、図9(a)、図9(b)のように、矢印S方向にスライドしながら回転する。
【0035】
本実施形態では、上記動作を経ることで、図10に示すように、スライドプレート40が90°回転し、かつ第1筐体11の短手方向中央部とスライドプレート40の長手方向中央部とが略一致する位置に位置決めされる(第3状態)。なお、スライドプレート40が、図10の位置に位置決めされるのは、第1カムピン26がベースプレート20のX軸方向中央に位置し、かつ第2孔部42bの第1孔部42aとは反対側の端部がスライドプレート40の長手方向中央部に位置していることに起因する。なお、第1筐体11と第2筐体12との間には、実際には、上記スライド及び回転動作を円滑に行うとともにユーザの操作感を高めるための弾性部材が設けられているが、当該弾性部材についての説明及び図示については省略するものとする。
【0036】
図3(a)に戻り、FPC200は、2箇所において折り返された状態で、第1筐体11と第2筐体12との間に配置され、第1、第2筐体11、12間を電気的に接続する。具体的には、FPC200の一端部200aは、第1筐体11に設けられた接続端子29を介して第1筐体11内に設けられた回路基板などの電気部品と接続される。また、FPC200の他端部200bは、スライドプレート40に形成された矩形開口43を介して、第2筐体12内に設けられた回路基板などの電気部品と接続される。
【0037】
FPC200は、折り返さない状態では、図11(a)に示すような形状を有している。具体的には、FPC200は、直線部72と、曲線部74と、直線部72及び曲線部74を連結する連結部76と、を有している。直線部72は、図11(a)のA軸方向に延びている。曲線部74は、A軸方向に延びる第1部分74aと、A軸に直交するB軸方向に延びる第2部分74bと、これら第1、第2部分74a、74bを連結する円弧状部分74cと、を含む。連結部76は、B軸方向に延びている。
【0038】
また、FPC200は、携帯電話100に実装される状態では、図11(b)に示すように、直線部72と、曲線部74の両方に折り返し部分が設けられる。直線部72の折り返し部分は、折れ目78を有しており、曲線部74の折り返し部分は、折れ目79を有している。なお、本明細書で「折れ目」とは、FPCが破断しない程度に適度な湾曲を有するように折り返した部分の端部(図11(b)では+A側の端部)を意味している。なお、適度な湾曲としては、例えば湾曲半径0.5mm程度以上とすることができる。
【0039】
図12(a)〜図12(c)には、携帯電話100が図8(a)〜図8(c)の動作を行ったときのFPC200の動きが示されている。また、図13(a)、図13(b)には、携帯電話100が図9(a)、図9(b)の動作を行ったときのFPC200の動きが示されている。更に、図14には、携帯電話が図10の状態になったときのFPC200の状態が示されている。
【0040】
図12(a)に示すように、携帯電話100が第1状態にあるときには、折れ目78はX軸方向に沿って延びており、(1)で示す位置に位置している。また、折れ目79もX軸方向に沿って延びており、(2)で示す位置に位置している。次いで、図12(b)、図12(c)に示すように、スライドプレート40(第2筐体12)が+Y方向にスライドすると、X軸方向に沿って延びる折れ目78が、+Y方向に移動する((1)→(1)’→(1)”)。この場合の、折れ目78の移動量は、第2筐体12のスライド量の1/2である。なお、折れ目79については、第2筐体12がスライド移動する間は、図12(a)〜図12(c)に示すように、(2)の位置で維持されるようになっている。
【0041】
次いで、図13(a)〜図14に示すように、スライドプレート40(第2筐体12)が回転とスライド移動とを同時に行った場合には、折れ目78が、スライド方向に沿って移動するとともに、折れ目79が回転方向に移動する。この場合、折れ目78は、スライド方向に垂直な方向に延びた状態を維持する。また、折れ目79は、回転方向に垂直な方向(回転軸を中心とする円の半径方向)に延びた状態を維持する。折れ目78は、第2筐体12のスライド量の1/2だけ移動し、折れ目79は、第2筐体12の回転量の1/2だけ移動するようになっている。
【0042】
このように、本実施形態では、FPC200を図11(a)のような形状とし、直線部72と曲線部74を折れ目78、79で折り返して、第1筐体11と第2筐体12とを電気的に接続するので、折れ目78、79がスライド及び回転の方向に垂直な方向に延びた状態を維持したまま、第2筐体12のスライド及び回転方向に移動するようになる。これにより、第2筐体12がスライド及び/又は回転しても、FPC200が無理に折れ曲がったり、縒れたりすることがないので、FPC200の断線を抑制することができる。したがって、携帯電話100の不具合の発生を防止することができる。また、スライド及び回転が可能な携帯電話100であっても、FPC200で第1筐体11と第2筐体12とを電気的に接続することができるので、防水機能の導入を容易に実現することが可能である。
【0043】
ここで、図15に示すように、スライドプレート40の−Y側の面には、凹部42c、42dを設けておくことができる。これら凹部42c、42dは、折れ目78、79が移動する範囲に設けられる。これにより、折れ目78、79が第1筐体11と第2筐体12に挟まれた状態であっても、折れ目78、79に過度に負荷がかかるのを抑制することができる。したがって、凹部42c、42dによれば、折れ目78、79近傍におけるFPC200の断線の発生を抑制することができる。なお、凹部42cや凹部42dは、第2筐体12側のみに設ける場合に限らず、第1筐体11側と第2筐体12側の両方に設けても良いし、第1筐体11側にのみ設けても良い。
【0044】
なお、上記実施形態では、携帯電話100が閉じた第1状態、スライドした第2状態、略T字状の第3状態と遷移する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、携帯電話が、第1状態、第2状態(図16(a))、及び第2状態から、スライドプレート40(第2筐体12)が回転のみして略L字状となる第3状態(図16(b))の間で遷移することとしても良い。このような携帯電話を実現するためには、例えば、図16(a)に示すように、スライドガイド孔42’を、Y軸方向に延びる第1孔部42aと、略円弧状に延びる第2孔部42b’とにより構成し、かつスイングプレートを省略する。
【0045】
この場合においても、上記実施形態と同様のFPC200を採用することで、第1状態から第2状態に遷移する際の第2筐体12のスライド移動に対応できるのは勿論、第2状態から第3状態に遷移する際の第2筐体12の回転にも対応することができる。すなわち、図16(a)の第2状態から、図16(b)の第3状態に遷移する場合でも、折れ目79の延びる方向を、回転方向に垂直な方向に維持しつつ回転方向に移動させることができる。これにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、図16(a)、図16(b)の携帯電話にFPC200を実装する場合には、上記実施形態で用いたFPC200の大きさや寸法等を、適宜調整すれば良い。
【0046】
なお、上記実施形態では、FPC200の形状として、図11(a)のような形状を採用した場合について説明したが、これに限られるものではない。FPCとしては、複数の折り返し部が設けられ、そのうちの一の折り返し部分が、第2筐体12のスライド方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が第2筐体12のスライド時にスライド方向に移動するものであり、他の折り返し部分が、第2筐体12の回転方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体12の回転時に回転軸回りに移動するものであれば良い。すなわち、FPCの形状は、図11(a)のような形状に限定されるものではなく、例えば、折り返し部分(折れ目)は、3つ以上あっても良い。また、第1筐体11と第2筐体12の間の機構(スライド、回転のための機構)との機械的な干渉を避けるために、図11(a)の形状を適宜変更しても良い。
【0047】
なお、上記実施形態では、電子機器として携帯電話が採用された場合について説明したが、これに限らず、第1筐体及び第2筐体を有する電子機器であれば、他の電子機器を採用することも可能である。
【0048】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
11 第1筐体
12 第2筐体
42c、42d 凹部
78 折れ目
79 折れ目
72 直線部(第1部分)
74 曲線部(第2部分)
100 携帯電話(電子機器)
200 フレキシブルプリント基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する第1筐体と、
前記第1筐体の第1面と対向する第2面を有し、前記第2面の少なくとも一部を前記第1面に重なり合わせた状態でのスライド及び前記第1、第2面に垂直な回転軸回りの回転が可能な第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを電気的に接続する、少なくとも2箇所の折り返し部分を有するフレキシブルプリント基板と、を備え、
前記フレキシブルプリント基板の一の折り返し部分は、前記スライド方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体のスライド時に前記スライド方向に移動し、
前記フレキシブルプリント基板の他の折り返し部分は、前記回転方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体の回転時に前記回転軸回りに移動する、ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板は、直線状に延びる第1部分と、円弧状に延びる第2部分と、を有し、
前記一の折り返し部分は、前記第1部分に設けられ、前記他の折り返し部分は、前記第2部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1筐体の第1面及び前記第2筐体の第2面の少なくとも一方には、前記一の折り返し部分の折れ目、及び前記他の折り返し部分の折れ目の少なくとも一方との機械的な干渉を抑制する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2筐体の前記第1筐体に対する回転と同時に、前記第2筐体が前記第1筐体に対してスライド移動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第2筐体は、前記第1筐体に対するスライド移動と回転とを、別個独立して行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項1】
第1面を有する第1筐体と、
前記第1筐体の第1面と対向する第2面を有し、前記第2面の少なくとも一部を前記第1面に重なり合わせた状態でのスライド及び前記第1、第2面に垂直な回転軸回りの回転が可能な第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを電気的に接続する、少なくとも2箇所の折り返し部分を有するフレキシブルプリント基板と、を備え、
前記フレキシブルプリント基板の一の折り返し部分は、前記スライド方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体のスライド時に前記スライド方向に移動し、
前記フレキシブルプリント基板の他の折り返し部分は、前記回転方向に垂直な方向に沿った折れ目を有するとともに、当該折れ目が前記第2筐体の回転時に前記回転軸回りに移動する、ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板は、直線状に延びる第1部分と、円弧状に延びる第2部分と、を有し、
前記一の折り返し部分は、前記第1部分に設けられ、前記他の折り返し部分は、前記第2部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1筐体の第1面及び前記第2筐体の第2面の少なくとも一方には、前記一の折り返し部分の折れ目、及び前記他の折り返し部分の折れ目の少なくとも一方との機械的な干渉を抑制する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2筐体の前記第1筐体に対する回転と同時に、前記第2筐体が前記第1筐体に対してスライド移動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第2筐体は、前記第1筐体に対するスライド移動と回転とを、別個独立して行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−142396(P2011−142396A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−691(P2010−691)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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