説明

電子機器

【課題】自動的な制御パラメータの設定は、特にシステムが複雑な電子機器ほど設定すべき制御パラメータが増えて、わずかな条件の違いで使用者の意思とは大きく異なる制御結果を招くことも多く、かえって操作性を損ない、適切な出力を提供することができなくなることがあった。
【解決手段】上記課題を解決するために、電子機器は、処理を行う処理部と、処理部の処理に起因した使用者の生体情報の変化を入力した時に、処理部による処理を変更する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影者の生体情報を検出して撮影者の感情を推定し、推定された感情に基づいて撮影操作を支援する撮像装置が知られている。例えば、感情の高ぶりに応じて手振れ補正ゲインを調整し、補正レンズの追従特性を改善している。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2009−210992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば携帯して持ち運ばれる電子機器が使用される環境は、一般的に時々刻々変化することが想定される。本来であれば、電子機器は使用される環境に応じて自動的に制御パラメータを設定し、使用者に快適な操作性、適切な出力を提供することが望ましい。しかしながら、制御パラメータの自動的な設定は、使用者の希望に即さない場合も多かった。自動的な制御パラメータの設定は、特にシステムが複雑な電子機器ほど設定すべき制御パラメータが増えて、わずかな条件の違いで使用者の意思とは大きく異なる制御結果を招くことも多く、かえって操作性を損ない、適切な出力を提供することができなくなることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様における電子機器は、処理を行う処理部と、処理部の処理に起因した使用者の生体情報の変化を入力した時に、処理部による処理を変更する制御部とを備える。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】カメラシステムの要部断面図である。
【図2】カメラシステムの上部概観図である。
【図3】撮影レンズを左手により把持した第1の状態を示す図である。
【図4】撮影レンズを左手により把持した第2の状態を示す図である。
【図5】カメラ本体に設けられたカメラ本体側生体センサ部を示す図である。
【図6】心拍数検出装置と脈波検出装置の構成を示す図である。
【図7】カメラシステムのブロック図である。
【図8】オートフォーカス制御のフロー図である。
【図9】撮像制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係るカメラシステム1の要部断面図である。本実施形態では、携帯装置の一例として、カメラシステム1について説明する。カメラシステム1は、カメラ本体2と交換可能な撮影レンズ3を組み合わせて撮像装置として機能する、レンズ交換式一眼レフカメラである。
【0009】
撮影レンズ3は、フォーカスレンズ、ズームレンズおよび防振レンズを含むレンズ群4、絞り5、カメラシステム1の振れを検出する角速度センサ6、レンズ群4を駆動する不図示の駆動装置等を備える。角速度センサ6は、少なくとも光軸に直交する2軸周りの角速度を検出する。駆動装置は、例えば振動波モータ、VCMにより構成される複数のモータを有し、フォーカスレンズを光軸方向に駆動し、防振レンズを光軸方向とは異なる方向に駆動する。
【0010】
また、撮影レンズ3は、撮影レンズ3の全体を制御すると共に、カメラ本体2と協働するレンズCPU7を有し、撮影者の心拍数、血流量、血圧、発汗量、体温および撮影レンズ3を把持する圧力等を検出するレンズ側生体センサ部8を有する。
【0011】
カメラ本体2は、撮影レンズ3からの光束を反射してファインダー光学系26に導く反射位置と、撮影レンズ3からの光束がCCDまたはCMOSなどから構成される撮像素子27に入射するように退避する退避位置とで揺動するメインミラー28を備える。メインミラー28の一部の領域は半透過領域となっており、カメラ本体2は、この半透過領域を透過した光束を焦点検出センサ29へ反射するサブミラー30を備える。サブミラー30は、メインミラー28に連動して揺動し、メインミラー28が退避位置をとるときには、サブミラー30も光束から退避する。なお、焦点検出センサ29は、位相差方式により入射する光束の焦点状態を検出する。
【0012】
反射位置にあるメインミラー28で反射された光束は、焦点板31、ペンタプリズム32を介してファインダー光学系26へ導かれる。ファインダー光学系26は、複数のレンズから構成されており、撮影者はファインダー光学系26により被写界を確認することができる。
【0013】
ペンタプリズム32を透過する光束の一部は測光センサ40に導かれる。測光センサ40は、撮影レンズ3へ入射する光束を複数の領域ごとに測光することにより、被写界の輝度分布を計測する。また、ペンタプリズム32の上方にはGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)モジュール41を備えており、GPS衛星からの信号を受信して、カメラシステム1が存在している位置情報を取得する。さらに、カメラ本体2は、撮影レンズ3のマウント部近傍で撮影レンズ3と干渉しない位置に、被写界の音を取り込むマイク42と、ファインダー光学系26の近傍にスピーカ43を備える。
【0014】
メインミラー28が退避位置にあるときには、撮影レンズ3からの光束は、ローパスフィルタ33を介して撮像素子27に入射する。撮像素子27の近傍には撮像基板34が設けられており、撮像基板34の後方には外部に面して背面モニタ37が設けられている。
【0015】
カメラ本体2には、撮影者の右の手指が触れる位置に、撮影者の心拍数、血流量、血圧、発汗量、体温およびカメラ本体2を把持する圧力などを検出するカメラ本体側生体センサ部16を有している。カメラ本体側生体センサ部16の具体的な構成および配置につては後述する。
【0016】
図2は、本実施形態に係るカメラシステム1の上部概観図である。具体的には、操作者が右手でカメラ本体2を把持すると共に左手で撮影レンズ3を把持している状態を示す図である。撮影レンズ3は、上述のように、撮影者の心拍数、血流量、血圧、発汗量、体温および撮影レンズ3を把持する圧力等を検出するレンズ側生体センサ部8を有するが、レンズ側生体センサ部8は、撮影者の左手の指または掌が触れる位置に配設されている。
【0017】
図においては、レンズ側生体センサ部8の一部として、心拍数検出装置9と脈波検出装置12が設けられている様子を示す。心拍数検出装置9は、基準電極9aと検出電極9bから構成される互いに分離した複数の電極部を有し、撮影者の心拍数を検出する。脈波検出装置12は、複数の発光部12a(12a1〜12a4)とこれらに対応する受光部12b(12b1〜12b4)が交互に配置されて構成され、撮影者の脈派を検出する。脈波検出装置12は、後述するように撮影者の血流量、血圧を測定するために用いられる。
【0018】
上述のように、カメラ本体2は、撮影者の右の手指が触れる位置にカメラ本体側生体センサ部16を有している。撮影者がカメラ本体2を把持するとき、右手の親指がカメラ本体2の背面に位置し、人差し指がレリーズSW24の近傍に位置するので、グリップ部に位置する他の3本の指と離れてしまう。このため、カメラ本体側生体センサ部16は、右手の親指に対応するカメラ背面位置と、人差し指に対応するレリーズSW24の近傍位置と、他の3本の指に対応するグリップ部近傍のカメラ前面位置とに離間して設けられている。なお、人差し指に対応するカメラ本体側生体センサ部16は、レリーズSW24の表面に設けられていても良い。
【0019】
なお、カメラ本体2においては、右手の親指と人差し指以外の3本の指がカメラ本体2を把持するカメラ前面位置と、右手の親指に対応したカメラ背面位置との少なくとも一方が、カメラ本体2を把持する把持部である。また、カメラ本体2の背面には、いくつかの操作SWが設けられており、これらの操作SWは右手親指で操作される。また、カメラ本体2の上面には撮影モードを設定する撮影モードSW25が設けられている。
【0020】
図3は、撮影レンズ3を左手により把持した第1の状態を示す図である。第1の状態は、左手の甲が下側に位置して撮影レンズ3を把持した状態である。図4は、撮影レンズ3を左手により把持した第2の状態を示す図である。第2の状態は、左手の甲が左側に位置して撮影レンズ3を把持した状態である。
【0021】
撮影者が撮影レンズ3を把持しつつズーム操作、マニュアルフォーカス操作を行う場合においては、左手の親指が他の指とは離れてしまう。また、異なる撮影者、異なる撮影状況(例えば、横位置撮影および縦位置撮影)によっても撮影レンズの把持の仕方は変化する。そこで、撮影レンズ3の円周上には、複数のレンズ側生体センサ部8(8A〜8D)が設けられている。
【0022】
具体的には、レンズ側生体センサ部8は、ズーム操作位置とマニュアルフォーカス操作位置との少なくとも一方の位置で、かつ、左手の親指に対応する位置と、親指以外の指に対応する位置とに離間して設けられる。より具体的には、レンズ側生体センサ部8は、ズーム操作用ゴム、フォーカス操作用ゴムが設けられた位置であって、左手に接触するように、または、左手と対向するように設けられている。
【0023】
レンズ側生体センサ部8Aは、上述の心拍数検出装置9、脈波検出装置12の他に、撮影者の発汗量を検出する発汗センサ13、撮影者の体温を検出する温度センサ14、および撮影者が撮影レンズ3を把持する圧力を検出する圧力センサ15を備える。
【0024】
レンズ側生体センサ部8B〜8Dは、レンズ側生体センサ部8Aと同様に、心拍数検出装置9、脈波検出装置12、発汗センサ13、温度センサ14および圧力センサ15をそれぞれ備える。このように、撮影レンズ3の円周上に複数のレンズ側生体センサ部8(8A〜8D)を設けることにより左手の掌からも生体情報を検出することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、ズーム操作位置、マニュアルフォーカス操作位置等に応じて複数のレンズ側生体センサ部8(8A〜8D)を設けているが、撮影者、撮影状態等に応じて撮影レンズ3の把持の仕方が変った場合においても生体情報を検出できる位置であれば、複数のレンズ側生体センサ部8を上述の位置以外の位置に設けてもよい。また、左手の親指が撮影レンズ3を把持する力はあまり大きくないので、レンズ側生体センサ部8B、8Cにおいては、左手の親指に対応する圧力センサ15を省略してもよい。同様に、レンズ側生体センサ部8に高い検出精度が要求されない場合には、左手の親指に対応する位置のセンサを適宜省略することにより、撮影レンズ3の部品点数を抑えることができる。また、レンズCPU7は、脈波検出装置12の発光部12aに手指がかかっているときだけ発光するように制御してもよい。
【0026】
図5は、カメラ本体2のレリーズSW24の近傍に設けられたカメラ本体側生体センサ部16を示す図である。図示すように、カメラ本体側生体センサ部16は、心拍数検出装置9と同様の構成を有する心拍数検出装置17と、脈波検出装置12と同様の構成を有する脈波検出装置20とを有している。また、カメラ本体側生体センサ部16は、撮影者の発汗量を検出する発汗センサ21、撮影者の体温を検出する温度センサ22、および撮影者がカメラ本体2を把持する圧力を検出する圧力センサ23を備えている。なお、上述のように、カメラ本体側生体センサ部16は、図示する右手人差し指に対応する位置以外に、親指に対応するカメラ背面位置と、他の3本の指に対応するカメラ前面位置にも設けられているが、それぞれ同様の構成を有する。
【0027】
図6は、カメラ本体側生体センサ部16が備える心拍数検出装置17と脈波検出装置20の構成を示す図である。図6(a)に示すように、心拍数検出装置17は、基準電極17aと検出電極17bから構成される互いに分離した複数の電極部を有し、撮影者の心拍数を検出する。また、図6(b)に示すように、脈波検出装置20は、複数の発光部20a(20a1〜20a4)とこれらに対応する受光部20b(20b1〜20b4)が交互に配置されて構成され、撮影者の脈派を検出する。
【0028】
図7は、本実施形態に係るカメラシステム1のブロック図である。撮像基板34は、撮像素子27を駆動する駆動回路10、撮像素子27の出力をデジタル信号に変換するA/D変換回路11、ASICで構成される画像処理制御回路18および撮像素子27からの信号の高周波成分を抽出するコントラストAF回路19などを有している。
【0029】
画像処理制御回路18は、デジタル信号に変換された画像信号に対してホワイトバランス調整、シャープネス調整、ガンマ補正、階調調整などの画像処理を施すと共に、JPEGなどの画像圧縮を行って画像ファイルを生成する。生成された画像ファイルは、画像記録媒体35に記憶される。画像記録媒体35は、カメラ本体2に対して着脱可能なフラッシュメモリなどの記録媒体であっても良いし、カメラ本体2に内蔵されるSSD(Solid State Drive)などの記録媒体であっても良い。
【0030】
画像処理を施された画像信号は、背面モニタ制御回路36の制御により、背面モニタ37に表示される。撮影直後に撮影された画像信号を所定時間表示すれば、画像記録媒体35に記録された画像ファイルに対応する画像を撮影者に視認させるレックレビュー表示を実現できる。また、撮像素子27が連続的に光電変換する被写界像を、画像記録媒体35に記録することなく背面モニタ37に逐次表示すればライブビュー表示を実現できる。さらに、撮像素子27が連続的に光電変換する被写界像を、例えばMPEG、H.264などの動画圧縮処理を画像処理制御回路18で施して画像記録媒体35に記録すれば、動画撮影を実現することができる。このとき、マイク42で収集した被写界の音声も圧縮処理して、動画データに同期させて記録する。生成される動画像のフレームレートは、例えば30fpsなど、複数のフレームレートから選択されて設定される。
【0031】
コントラストAF回路19は、撮像素子27からの撮像信号の高周波成分を抽出してAF評価値信号を生成し、これが最大になるフォーカスレンズ位置を検出する。具体的には、画像処理制御回路18から入力される画像信号から、バンドパスフィルタを用いて所定の高周波成分を抽出し、ピークホールド、積分等の検波処理を行ってAF評価値信号を生成する。生成したAF評価値信号は、カメラ本体CPU46に出力する。
【0032】
レンズCPU7は、角速度センサ6で検出した手振れをキャンセルするように、撮影レンズ3内の防振レンズを光軸方向とは異なる方向に駆動して光学式手振れ補正を実現している。手振れ補正はこのような光学式手振れ補正に限らず、撮像素子27に駆動機構を付与して、光軸方向とは異なる方向に駆動して手振れをキャンセルする撮像素子駆動式手振れ補正を採用することもできる。さらには、画像処理制御回路18から出力された複数枚の画像間の動きベクトルを算出し、算出した画像間の動きベクトルをキャンセルするように画像読み出し位置を制御して手振れをキャンセルする電子式手振れ補正を採用することもできる。光学式手振れ補正および撮像素子駆動式手振れ補正は特に静止画撮影に好適であり、動画撮影にも適用される。電子式手振れ補正は動画撮影に好適である。これらの方式は、選択的、追加的に採用され得る。
【0033】
測光センサ40は、上述のように、撮影レンズ3へ入射する光束を複数の領域ごとに測光することにより被写界の輝度分布を計測するが、計測結果はカメラ本体CPU46に出力する。カメラ本体CPU46では、選択された測光モードに応じて露出値を算出する。測光モードとしては、明るい部分と暗い部分のバランスを取る分割測光モード、画面中央を適正露出とする中央重点測光モード、選択したフォーカスポイントの狭領域を適正露出とするスポット測光モードなどが選択され得る。
【0034】
カレンダー部38は、水晶発振子、計時用集積回路等を有しており、年月日時分秒といったカレンダー情報を保持する。カメラ本体CPU46は、カレンダー部38から時間に関する情報を適宜検出することができる。GPSモジュール41は、GPS衛星からの信号を受信してカメラ本体2が存在している緯度、経度、高度情報を取得する。カメラ本体CPU46は、GPSモジュール41からカメラ本体2が存在している位置に関する情報を適宜検出することができる。
【0035】
フラッシュROM39は、EEPROM(登録商標)であり、カメラシステム1を動作させるプログラムのほか、各種調整値、設定値を記憶する記憶装置である。具体的には、AF調整データ、AE調整データ、製造時の年月日時間データ、設定SWの設定履歴などを記憶している。また、フラッシュROM39には、撮影者の平常時の生体情報値も記憶されている。本実施形態においては、フラッシュROM39は生体情報値として心拍数、血流量、血圧、体温、カメラ本体2を把持する圧力、撮影レンズ3を把持する圧力を記憶している。
【0036】
RAM44は、フラッシュROM39に記憶されたプログラムが展開され、カメラ本体CPU46が高速にアクセスできるDRAMなどの高速RAMである。特に頻繁に参照される各種調整値、設定値などもフラッシュROM39からコピーされ、カメラ本体CPU46からのアクセスを容易にする。
【0037】
顔認識部45は、画像処理制御回路18によって処理された撮影画像に対し、人物の顔が被写体像として含まれるか否かを認識する。顔が含まれていれば、その位置と大きさを検出してカメラ本体CPU46へ出力する。撮影画像に複数の顔が含まれる場合であっても、所定の数だけ認識することができる。例えばライブビュー表示が実行されている時にレリーズSW24が半押しされると、顔認識部45は、そのとき取り込まれているライブビュー画像に対して顔認識を行う。カメラ本体CPU46は、検出された顔の位置と大きさに基づいて、背面モニタ制御回路36に、認識された顔を取り囲むようにライブビュー画像にスーパーインポーズを表示させる。
【0038】
レリーズSW24は、2段式のスイッチである。撮影者がレリーズSW24を半押しすると、カメラ本体CPU46は、レンズ側生体センサ部8およびカメラ本体側生体センサ部16を用いて撮影者の生体情報の検出を開始すると共にオートフォーカス、測光などの撮影準備動作を行う。さらに撮影者がレリーズSW24を全押しすると、カメラ本体CPU46は、静止画、動画の撮影動作を開始する。
【0039】
カメラ本体CPU46は、レンズCPU7と協働してカメラシステム1の全体を制御する。本実施形態においては、レンズ側生体センサ部8およびカメラ本体側生体センサ部16の出力に基づいて撮影者の生体情報を取得して、カメラシステム1のアシストなどの制御を行う。ここで、レンズ側生体センサ部8およびカメラ本体側生体センサ部16による撮影者の生体情報の取得について説明する。
【0040】
まず、心拍数測定について説明する。上述のように、撮影者が左手で撮影レンズ3を把持する位置には心拍数検出装置9の基準電極9aおよび検出電極9bが設けられており、撮影者が右手でカメラ本体を把持する位置には心拍数検出装置17の基準電極17aおよび検出電極17bが設けられている。検出電極9b、16bからの検出電位は、不図示の差動増幅器で電位差が増幅されてカメラ本体CPU46へ出力される。カメラ本体CPU46は、検出電極9b、16bの電位差に基づいて、撮影者の心拍数を演算する。
【0041】
なお、例えば撮影者が撮影レンズ3を把持していない場合には、撮影者の左手が基準電極9a、検出電極9bに触れていないので、基準電極9aと検出電極9bとの間がオープンとなる。レンズCPU7は、基準電極9aと検出電極9bとの間がオープンの場合には、撮影者が撮影レンズ3を把持していないと判断する。同様に、カメラ本体CPU46は、心拍数検出装置の基準電極17aと検出電極17bとの間がオープンの場合には、撮影者がカメラ本体2を把持していないと判断する。
【0042】
次に、血圧測定について説明する。脈波検出装置12および20は、撮影者の血圧を測定する。なお、脈波検出装置12と脈波検出装置20は同様の構成を有するので、脈波検出装置12を例に説明する。脈波検出装置12は、発光部12aから例えば赤外線を射出し、この赤外線が指の動脈で反射され、反射された赤外線を赤外線センサである受光部12bで受光することにより手の指部の脈波を検出する。つまり、末梢血管の血流量を検出する。カメラ本体CPU46は、脈波検出装置12からの脈波に基づいて撮影者の血圧を演算する。レンズCPU7は、心拍数検出装置9の基準電極9aと検出電極9bとの出力から、例えば小指など撮影者のある指が撮影レンズ3に触れていないと判断した場合に、その指に対応して配置された発光部12aの発光を禁止するようにすれば、無駄な発光を防止すると共に、被写界に迷光を射出することもない。同様に、カメラ本体CPU46は、心拍数検出装置17の基準電極17aと検出電極17bとの出力に基づいて、例えば撮影者の親指がカメラ本体2に触れていないときに、脈波検出装置20の発光部20aの発光を禁止してもよい。
【0043】
次に、発汗測定について説明する。発汗は手のインピーダンスを測定することにより検出できる。発汗センサ13、21は、複数の電極を有して発汗を検出する。なお、複数の電極の一部として基準電極9a、基準電極17aを兼用してもよい。発汗センサ13は、レンズ側生体センサ部8A〜8Dのそれぞれに設けられているが、感動、興奮、緊張といったような精神性発汗は、発汗量が少なく、発汗時間も短いので、指よりも発汗量が多い中手の掌側に位置するレンズ側生体センサ部8B、Cだけに設けてもよい。
【0044】
次に、温度測定について説明する。温度センサ14、22は、熱により抵抗値が変化するサーミスタ方式を用いている。発汗には上述の精神性発汗と、体温調節のための温熱性発汗とがあり、精神性発汗と温熱性発汗とは相互干渉している。このため、カメラ本体CPU46は発汗センサ13、21の出力と、温度センサ14、22の出力とに基づいて撮影者の発汗が精神性発汗か温熱性発汗かを判断することができる。例えば、カメラ本体CPU46は、温度センサ22により検出した温度が高く、発汗センサ21からの発汗信号が常時検出される場合には温熱性発汗と判断することができる。また、カメラ本体CPU46は、発汗センサ21からの発汗信号が不規則に出力される場合に精神性発汗と判断して、撮影者が感動、興奮、緊張といった状態であることを検出できる。なお、温度センサ14、22を省略した場合には、本体CPU44は、GPSモジュール41の位置情報、カレンダー部38からの時間情報などに基づいて、発汗センサ13、21からの発汗信号が精神性発汗か温熱性発汗かを判断してもよい。更に、レンズCPU7が発汗センサ13、温度センサ14の出力に基づいて、左手の汗が精神性発汗か温熱性発汗かを判断することもできる。
【0045】
次に、圧力測定について説明する。圧力センサ15は、静電容量型のセンサであり、撮影者が撮影レンズ3を把持したときの押圧力による変形量を測定する。本実施形態において圧力センサ15は、操作ゴムの下方に設けられている。圧力センサ23も同様の静電容量型のセンサであり、撮影者がカメラ本体2を把持したときの押圧力による変形量を測定する。なお、圧力センサ15、23として歪ゲージ、電歪素子などを用いてもよい。
【0046】
上述のように、カメラ本体CPU46は、レンズCPU7と協働して、レンズ側生体センサ部8およびカメラ本体側生体センサ部16の出力に基づいて撮影者の生体情報を取得し、カメラシステム1のアシストなどの制御を行う。以下に、撮影者の生体情報を用いた制御について具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
図8は、本実施形態に係る実施例1としてのオートフォーカス制御のフロー図である。本実施例においては、静止画撮影の撮影動作を行う。撮影者は、例えば、カメラシステム1の電源をONにして、背面モニタ37によるライブビュー表示の実行を指示することにより、撮影動作フローを開始させる。カメラ本体CPU46は、背面モニタ制御回路36を用いて背面モニタ37に、露出が調整されたライブビュー画像を表示する。露出の調整は、ライブビュー表示の開始時に得られる撮像素子27からの画像信号を複数用い、例えば一画像全体の平均輝度値が所定の範囲内に収まるように行う。または、ライブビュー表示の開始前に一旦メインミラー28を反射位置とし、測光センサ40からの出力を得てカメラ本体CPU46が測光モードに応じた適正露出を算出しても良い。カメラ本体CPU46は、撮影者がレリーズSW24の半押しにより撮影準備指示を行うまで待機する。
【0048】
レリーズSW24の半押しにより撮影準備指示がなされると、ステップS101へ進み、顔認識部45は、逐次入力されるライブビュー画像を用い、人物の顔が被写体像として含まれるか否かを認識する。顔認識部45は、被写体像の顔を認識すると認識した顔の位置と大きさを検出してカメラ本体CPU46へ出力する。カメラ本体CPU46は、認識した顔の位置と大きさによって定められる領域を焦点検出領域と定める。なお、顔認識部45が複数の顔を認識した場合は、カメラ本体CPU46はこれらの中から、より画角の中心付近に位置する、カメラとの距離がより近い、予め登録されているなどの条件に従って、任意の1つを選択して焦点検出領域と定める。カメラ本体CPU46はこの時点で、ライブビュー画像に重畳して、検出された顔領域を例えば黄色の矩形で取り囲むスーパーインポーズ表示を行っても良い。特に、焦点検出領域として選択された顔領域は二重線で取り囲むなどして、撮影者に視認できるように表示することが好ましい。
【0049】
カメラ本体CPU46は、焦点検出領域が決定されると、ステップS102へ進み、決定された焦点検出領域で合焦するようにフォーカスレンズの駆動が開始される。カメラ本体CPU46は、本実施例において上述のコントラストAFを行う。ここでコントラストAFの駆動制御を説明する。
【0050】
コントラストAFは、まず、コントラストAF回路19が、入力される画像信号からステップS101で決定された焦点検出領域を切り出し、この領域における高周波成分を抽出してAF評価値信号を生成する。カメラ本体CPU46は、コントラストAF回路19からAF評価値信号を受け取る。そして、カメラ本体CPU46は、既に取得しているAF評価値信号と比較することにより、AF評価値信号が大きくなると予測されるフォーカスレンズの駆動方向を決定し、その方向へフォーカスレンズを駆動するようにレンズCPU7へ制御信号を送信する。レンズCPU7は、カメラ本体CPU46から制御信号を受信して、決定された方向へフォーカスレンズを駆動する。カメラ本体CPU46は、コントラストAF回路19から連続して受け取るAF評価値信号が、ある時点において所定の条件の下に極値であると判断したらその時点を合焦と判断する。合焦と判断したら、レンズCPU7にフォーカスレンズの駆動完了信号を送信し、レンズCPU7はこれに応じてフォーカスレンズの駆動を停止する。
【0051】
ステップS102でフォーカスレンズの駆動を開始したら、ステップS103で、カメラ本体CPU46は上述のようにAF評価値信号を取得する。そして、カメラ本体CPU46は、取得したAF評価値信号を評価してレンズCPU7と協働しフォーカスレンズの駆動を継続する。
【0052】
ステップS104では、カメラ本体CPU46は、カメラ本体側生体センサ部16およびレンズ側生体センサ部8の少なくとも一方から撮影者の生体情報を取得する。そして、カメラ本体CPU46は、ステップS105で、以前取得した生体情報と比較して、変化が生じたか否かを判断する。特に、カメラ本体CPU46は、撮影者の精神状態が通常状態からイライラ状態(精神的に不安定な状態)に変化したか否かを検出する。
【0053】
撮影者の平常状態における生体情報は、フラッシュROM39に蓄積されている。カメラ本体CPU46は、撮影者がカメラシステム1を使用しているときに、定期的、継続的に撮影者の生体情報を取得し、センサの出力として安定している一定の範囲の生体情報を平常状態における生体情報として蓄積している。したがって、カメラ本体CPU46は、取得した生体情報と、フラッシュROM39に蓄積されている平常状態における生体情報を比較することにより、撮影者の現在の状態が平常状態であるか否かを推測することができる。また、カメラ本体CPU46は、イライラ状態であるか否かも、フラッシュROM39に蓄積されている平常状態における生体情報と比較して判断することができる。例えば、カメラ本体CPU46は、平常状態に対して、心拍数が高く発汗量が不規則に変化するなどの出力が得られれば、イライラ状態であると判断できる。
【0054】
ステップS105で変化が無いと判断されると、ステップS106へ進み、カメラ本体CPU46は、合焦状態に達し、フォーカスレンズの駆動を完了しても良いかを判断する。カメラ本体CPU46は、まだ合焦に達しておらず、フォーカスレンズの駆動を継続すると判断したら、ステップS102へ戻って合焦動作を続行する。
【0055】
なお、ステップS105において生体情報に変化が無いことは、ライブビュー画像を視認しつつ合焦動作を確認する撮影者が、その合焦動作に満足していることを意味すると推定している。合焦動作に対して満足していることを積極的に判断する場合は、生体情報から特定の感情の推定を行っても良い。
【0056】
上述のように、レンズ側生体センサ部8およびカメラ本体側生体センサ部16は、さまざまなセンサの集合体として構成されており、それぞれのセンサが異なる種類の生体情報を出力する。これらの出力を単独で、あるいは組み合わせて判断することにより、撮影者の特定の感情を推定することができる。例えば、高い心拍数および精神性発汗が検出されるときには、撮影者は「焦り」を感じていると推定できる。センサの出力と感情の対応関係は検証的に求められており、対応関係を示すテーブルをフラッシュROM39に記憶させておくことができる。そこで、感情推定においては、取得された生体情報が、テーブルに記述された特定の感情パターンと一致するかを判断すれば良い。
【0057】
カメラ本体CPU46は、ステップS106で、合焦状態に達してフォーカスレンズの駆動が完了したら、ステップS107へ進む。ステップS107では、合焦が完了したことを撮影者に視認させるべく、カメラ本体CPU46は、ライブビュー画像に重畳して焦点検出領域を例えば緑色の矩形で取り囲むスーパーインポーズ表示を行う。
【0058】
カメラ本体CPU46は、ステップS107で合焦状態を撮影者に視認させた後に、ステップS108では、さらに生体情報検出を行う。そして、カメラ本体CPU46は、ステップS109で再度生体情報に変化が無いかを確認する。つまり、カメラ本体CPU46は、合焦状態に対して撮影者がイライラを感じたか否かを検出する。
【0059】
カメラ本体CPU46は、ステップS109で生体情報に変化が無いと判断されると、一連のオートフォーカス制御を終了する。カメラシステム1は、オートフォーカス制御後に、レリーズSW24の全押し操作を待って、被写体画像を生成する撮影動作を開始する。
【0060】
カメラ本体CPU46は、ステップS105で、変化があるとステップS110へ進む。ここで、生体情報に変化があることは、ライブビュー画像を視認しつつ合焦動作を確認する撮影者が、その合焦動作に満足していないことを意味すると推定している。例えば、撮影者はより近景の被写体に焦点を合わせたいと考えているにも関わらず、連続して表示されるライブビュー画像が徐々に遠景の被写体に合焦する様子を示せば、撮影者はイライラ感等を抱く。カメラ本体CPU46は、レンズ側生体センサ部8およびカメラ本体側生体センサ部16の少なくとも一方から、この精神状態の変化を捉える。なお、カメラ本体CPU46は、ステップS105において撮影者がイライラを感じていることを、感情の推定からより積極的に判断しても良い。
【0061】
ステップS110からステップS115は、フォーカスレンズの駆動中に撮影者がイライラを感じたと判断した時の処理動作である。まず、カメラ本体CPU46は、ステップS110では、フォーカスレンズの駆動動作を変更する。変更されるフォーカスレンズの駆動動作は様々な動作が設定され得る。例えば、撮影者はより近景の被写体に焦点を合わせたいと考えているにも関わらず、より遠景の被写体が合焦するようにフォーカスレンズを駆動していたのであれば、カメラ本体CPU46は、近景の被写体に合焦させるべく、駆動方向を反転させることが望ましい。
【0062】
カメラシステム1の背面側(例えば背面モニタ37の近傍)に撮影者の声を拾うマイクを設けるとともに、いくつかのキーワードを記録した辞書(ROM)を設け、キーワードとして、遅い、遅すぎる、速い、速すぎるという操作スピードに関連したキーワードを登録しておく。撮影者がいち早く合焦させたいと考えて遅いという言葉を発生したときに、カメラ本体CPU46は、フォーカスレンズの駆動速度を上げるように制御を変更する。逆に、フォーカスレンズの駆動が速すぎて撮影者が被写体を速いということばを発生したときに、駆動速度を下げるように制御を変更したり、場合によっては、一旦停止させても良い。本実施の形態において、カメラ本体CPU46は、カメラ本体側生体センサ部16およびレンズ側生体センサ部8の少なくとも一方に基づいて撮影者が通常の状態とは異なる状態(例えば、イライラ状態)を検出するとともに、撮影者の声を拾うマイクから操作スピードに関連したキーワードを入力したときに、駆動装置の駆動速度を変更する制御を行うので、撮影者の状態に応じて駆動装置の駆動速度を変更することができる。
【0063】
また、カメラ本体CPU46は、カメラ本体2を把持する圧力を検出する圧力センサ23の出力の変化を利用するようにしてもよい。一例を示すと、圧力センサ23の出力から撮影者がカメラ本体2を通常よりも強く把持しているときに、カメラ本体CPU46は駆動装置の駆動速度を上げ、撮影者がカメラ本体2を通常よりも弱く把持しているときに駆動装置の駆動速度を下げるようにしてもよい。この場合は、上述のマイクの出力を利用してもよいし、利用しなくてもよい。
【0064】
さらには、例えばフォーカスレンズの駆動が被写体となる人物の鼻へ合焦しつつあるときに、撮影者は鼻ではなく目に合焦させたいと考えれば、焦点検出領域を鼻から目へ変更すべきである。このとき、カメラ本体CPU46は、どこへ焦点検出領域を変更するかを焦点検出領域およびその周辺の色情報を加味して判断することができる。また、カメラ本体CPU46は、被写体の状況によっては、マイク42から入力される音声の入力方向に基づいて焦点検出領域を変更することもできる。例えば、カメラ本体CPU46は、より大きな音声が聞こえる方向に焦点検出領域を再設定することができる。
【0065】
また、カメラシステム1は、複数の焦点調整モードを備えているが、カメラ本体CPU46は設定されている焦点調整モードに応じてフォーカスレンズの駆動動作を変更することもできる。例えば、被写体の動きに合わせて焦点を合わせ続けるコンティニュアスAFモードが設定されているときに、撮影者は動いている被写体Aに焦点を合わせたいと考えているにも関わらず、動いていない被写体Bが合焦するようにフォーカスレンズを駆動しているのであれば、焦点検出領域を被写体Aの領域に変更することが望ましい。カメラ本体CPU46は、動きのある被写体に焦点検出領域を変更するときも、被写体の色情報を参照することができる。
【0066】
ステップS110で、フォーカスレンズの駆動動作をどのように変更するかは、予め定められた優先順位に従って順次試行するように構成されている。このとき、ステップS104で取得した生体情報から推定される撮影者の感情に基づいて優先順位を変更しても良い。また、いずれのフォーカスレンズ駆動の変更を実行させるか、撮影者が予め設定できるように構成しても良い。
【0067】
ステップS110で変更されたフォーカスレンズ駆動動作に従って、カメラ本体CPU46は、ステップS111で、レンズCPU7を介してフォーカスレンズを駆動する。そして、ステップS112へ進み、カメラ本体CPU46は、合焦状態に達し、フォーカスレンズの駆動を完了しても良いかを判断する。カメラ本体CPU46は、合焦状態に達したと判断したらフォーカスレンズの駆動を完了し、ステップS107へ進む。カメラ本体CPU46はまだ合焦に達しておらず、フォーカスレンズの駆動を継続すると判断したら、ステップS113へ進む。
【0068】
カメラ本体CPU46は、ステップS113では、ステップS110でフォーカスレンズ駆動動作を変更してから所定時間が経過したか否かを判断する。ここでの所定時間は、撮影者の感情が変化し得る程度の時間が定められる。例えば、イライラ状態が通常状態に戻る時間である。カメラ本体CPU46は、所定時間が経過していなければ、ステップS111へ戻ってフォーカスレンズの駆動を継続する。
【0069】
所定時間が経過していれば、ステップS114で、カメラ本体CPU46は、カメラ本体側生体センサ部16およびレンズ側生体センサ部8の少なくとも一方から撮影者の生体情報を再度取得する。そして、ステップS115で、カメラ本体CPU46は、撮影者のイライラ状態が解消されたか否かを判断する。撮影者のイライラ状態が解消されたと判断したら、ステップS106へ進む。なお、カメラ本体CPU46は、ステップS106でフォーカスレンズの駆動が完了していないと判断された場合に、ステップS110で変更されたフォーカスレンズ駆動動作により合焦動作を継続する。カメラ本体CPU46は、撮影者のイライラ状態が解消されていないと判断したら、ステップS110へ戻る。なお、ステップS110では別のフォーカスレンズ駆動動作に変更される。
【0070】
カメラ本体CPU46は、ステップS109で生体情報に変化があると判断されると、ステップS116へ進む。ステップS109で生体情報に変化があるということは、撮影者がスーパーインポーズ表示を視認した結果、合焦状態に対して撮影者がイライラを感じたからと推定できる。そこで、カメラ本体CPU46は、ステップS116では、焦点検出領域の変更を行う。このとき、カメラ本体CPU46は、ステップS101ですでに焦点検出領域として選択した顔領域とは異なる顔領域を新たな焦点検出領域と定める。カメラ本体CPU46は、新たな焦点検出領域を設定したらステップS102へ戻って合焦動作を継続する。
【0071】
なお、上記フローにおいては、例として顔認識部45による被写体像の顔の認識に基づいて焦点検出領域を決定したが、焦点検出領域の決定はこれに限らない。撮影者が任意の領域を選択しても良いし、画角の中心付近に位置する被写体、カメラとの距離がより近い被写体を認識して、これらに対応する領域を焦点検出領域としても良い。
【0072】
また、上記フローにおいてはコントラストAFにより合焦動作を行ったが、焦点検出センサ29を用いた位相差AFを適用することもできる。撮影レンズ3が望遠レンズであり、焦点が大きくずれている場合に合焦位置を探すために所定の一方向にフォーカスレンズを繰り出すスキャン動作を行うときに、所定の一方向が合焦方向とは反対方向で、撮影者に不快感を与える場合がある。このような場合、カメラ本体CPU46は、撮影者の生体情報の変化(イライラなどの不快感)を検出して、フォーカスレンズのスキャン動作の方向を反対方向にしてもよい。この場合、カメラ本体CPU46は、焦点検出領域の選択、フォーカスレンズの駆動動作等は、位相差AFに適合するように制御する。例えば、フォーカスレンズの駆動動作に被写体の色情報を用いる場合は、測光センサ40の出力を利用することができる。
【0073】
また、特開2007−233032号(米国公開20070206937号)には、位相差AFとして、撮像素子にAF検出用の画素を設けて位相差式AFを行う撮像素子AFが提案されている。上述の第1実施例においても、この撮像素子AFを適用してもよい。
【0074】
(第2実施例)
図9は、本実施形態に係る実施例2としての撮像制御のフロー図である。本実施例においては、静止画撮影の撮影動作を行う。カメラ本体CPU46は、撮影者によりレリーズSW24の半押しであるSW1がONにされて測光、オートフォーカス等の撮影準備動作を実行し、レリーズSW24の全押しであるSW2がONにされてステップS201の撮影動作を開始する。撮影動作では、決定された露出値に従って、レンズCPU7は絞り5を動作させ、カメラ本体CPU46はフォーカルプレーンシャッタを走行させて、被写体光束を撮像素子27に導く。さらにカメラ本体CPU46は、決定された撮像感度に従って撮像素子27の出力に所定のゲインを掛けて電荷読み出しを行う。ステップS202では、画像処理制御回路18は、このように生成された画像信号に、画像処理および圧縮処理を施して画像ファイルを生成する。
【0075】
ステップS202で生成された画像ファイルは、ステップS203で、画像記録媒体35に記録される。そして、画像処理された画像データは、ステップS204で、例えば3秒程度の設定された所定時間の間、背面モニタ制御回路36により背面モニタ37に表示される。撮影者は、撮影直後の画像をレックレビューとして視認することができる。
【0076】
撮影者のレックレビューの視認を受けて、ステップS205で、カメラ本体CPU46は、カメラ本体側生体センサ部16およびレンズ側生体センサ部8の少なくとも一方から撮影者の生体情報を取得する。そして、カメラ本体CPU46は、ステップS206で、取得した生体情報が以前取得した生体情報と比較して、変化が生じたか否かを判断する。特に、撮影者の精神状態が通常状態からイライラ状態や落胆した状態に変化したか否かを検出する。
【0077】
ステップS206で変化が無いと判断されると、カメラ本体CPU46は、撮影者が撮影結果に満足したものと判断して一連の撮影動作を終了する。一方、撮影者の生体情報が変化したら、カメラ本体CPU46は、撮影者が撮影結果に満足していないと判断し、ステップS207へ進む。
【0078】
カメラ本体CPU46は、ステップS207では再度撮影を実行すべく、撮影条件を変更する。本実施の形態では、撮影条件の変更として、露出値の変更を採用し得る。露出値は、撮像素子27を被写体光束に露光する露光時間、被写体光束を制限する絞り5の絞り値、および撮像素子27の出力ゲインに相当する撮像感度の3つの数値で規定されるが、これらの値を、前回の撮影時に適用した露出値に対して変更する。または、測光センサ40の出力から算出された露出値に対して所定の段数分だけアンダーまたはオーバーに露出値を変更し、得られた画像に対して階調補正処理を施すことで、階調性の維持と全体的な適正露出を実現するアクティブD−ライティングを適用するように設定を変更しても良い。さらに、上述の手振れ補正を自動的に設定しても良い。また、撮影モードを変更することもできる。カメラ本体CPU46は、例えば絞り優先モードからシャッタ速度優先モードへ切替えることもできるし、クローズアップモードから風景モードに切替えることもできる。カメラ本体CPU46は、ステップS207で撮影条件を変更したら、ステップS201へ戻り、再び撮影動作を開始する。
【0079】
なお、上記フローによれば、ステップS204でレックレビュー表示を行った後にステップS205へ進み、自動的に生体情報を取得したが、生体情報の取得を、レックレビュー表示後の所定時間内に撮影者の指示により実行される撮影画像の削除を条件としても良い。カメラ本体CPU46は、撮影者の操作SWの操作により、画像記録媒体35に記録された画像ファイルを削除することができるが、撮影後の所定時間内に撮影画像ファイルが削除されたなら、撮影者はその撮影にイライラを感じている可能性が高い(特に、所定時間内に複数の画像ファイルが削除された場合)。そこで、カメラ本体CPU46は、撮影後の所定時間内に撮影画像ファイルが削除されたなら、撮影者の生体情報を取得し、生体情報が変化してイライラを感じていると推定される場合に、自動的に再度撮影動作を開始するように構成する。
【0080】
また、操作SWの操作を誤って画像ファイルを削除してしまう場合がある。このような場合に、カメラ本体CPU46は、撮影者(もしくは操作者)の生体情報が大きく変化した場合に画像ファイルの削除をキャンセルするようにしている。この場合、一時削除ホルダを容易しておき、カメラ本体CPU46は、削除指定のあった画像ファイルを一時的にこの一時削除ホルダで保管して、所定時間(例えば、2〜3秒)経過後に撮影者(もしくは操作者)の生体情報が大きく変化しないことを確認してから削除するようにしてもよい。これに加え、第1実施例の撮影者の声を拾うマイクを利用するとともに、 "あっ"や"しまった"というような操作を誤ったときに発生する語句をキーワードとして辞書(ROM)に登録しておいてもよい。カメラ本体CPU46は、このマイクから操作を誤ったときの音声を入力したときに、直前に撮影者が行った操作が誤操作と判断して、この操作を取り消しまたは中断するようにすればよい。この場合も、カメラ本体CPU46は、撮影者(もしくは操作者)の生体情報の変化を検出して、誤操作を判断してもよい。
【0081】
上述の第1実施例および第2実施例では、静止画撮影の撮影動作の例を示した。しかし、動画撮影においても、生体情報の検出結果により撮影制御を変更することもできる。例えば、動画撮影中にもコントラストAFが実行されるので、第1実施例と同様に、生体情報の変化によりフォーカスレンズの駆動動作を変更することができる。
【0082】
また、上述の第1実施例および第2実施例では、カメラ本体CPU46が取得した生体情報と以前取得した生体情報と比較して変化が生じたか否かを判断していたが、これに代えて、生体情報が大きな変化(例えば10%以上の変化)を示したときに撮影者に変化が生じたと判断するようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態においては、カメラ本体2と撮影レンズ3に、それぞれレンズ側生体センサ部8とカメラ本体側生体センサ部16を備えるように構成した。しかし、生体センサは、より直接的に撮影者の身体に取り付けるように独立させて構成しても良い。例えば、特開2005-270543号公報(米国特許第7538890号)に開示されているような腕時計型の生体センサを用いてもよい。この場合、カメラシステム1は、有線または無線による生体情報取得部を備えることになる。
【0084】
また、上記実施形態においては、レンズ交換式一眼レフカメラであるカメラシステム1を電子機器の例として説明したが、当然カメラシステム1への適用に限らない。コンパクトデジタルカメラ、ミラーレス一眼カメラ、携帯電話およびビデオカメラはもちろん、使用者の生体情報の変化によって動作処理を変更し得る電子機器であれば、上述の概念はいずれも適用できる。
【0085】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。また、第1実施例と第2実施例とを適宜組み合わせることも可能である。更に、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0086】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0087】
1 カメラシステム、2 カメラ本体、3 撮影レンズ、4 レンズ群、5 絞り、6 角速度センサ、7 レンズCPU、8 レンズ側生体センサ部、9 心拍数検出装置、10 駆動回路、11 A/D変換回路、12 脈波検出装置、13 発汗センサ、14 温度センサ、15 圧力センサ、16 カメラ本体側生体センサ部、17 心拍数検出装置、18 画像処理制御回路、19 コントラストAF回路、20 脈波検出装置、21 発汗センサ、22 温度センサ、23 圧力センサ、24 レリーズSW、25 撮影モードSW、26 ファインダー光学系、27 撮像素子、28 メインミラー、29 焦点検出センサ、30 サブミラー、31 焦点板、32 ペンタプリズム、33 ローパスフィルタ、34 撮像基板、35 画像記録媒体、36 背面モニタ制御回路、37 背面モニタ、38 カレンダー部、39 フラッシュROM、40 測光センサ、41 GPSモジュール、42 マイク、43 スピーカ、44 RAM、45 顔認識部、46 カメラ本体CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理を行う処理部と、
前記処理部の処理に起因した使用者の生体情報の変化を入力した時に、前記処理部による処理を変更する制御部と
を備える電子機器。
【請求項2】
前記使用者の生体情報の変化を入力する入力部を備えた請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記処理部は、フォーカスレンズを有した光学系を介して撮像を行う撮像部と、前記光学系の焦点を検出する焦点検出部とを有し、
前記制御部は、前記焦点検出部の検出結果に基づいて前記フォーカスレンズを駆動している時に、前記使用者の生体情報の変化に応じて、前記フォーカスレンズの駆動制御を変更する請求項1または2記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記フォーカスレンズの駆動を停止させる、または駆動方向を反転させる請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記フォーカスレンズの駆動速度を変更する請求項3または4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、前記焦点を調整する調整領域の色情報を加味して、前記フォーカスレンズの駆動制御を変更する請求項3から5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記処理部は、音声を入力する音声入力部を備え、
前記制御部は、前記音声入力部に入力する音声の方向に基づいて、前記フォーカスレンズの駆動制御を変更する請求項3から6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、設定されている焦点調整モードに応じて、前記フォーカスレンズの駆動制御を変更する請求項3から7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記処理部は、複数の被写体人物の顔を認識する顔認識部を備え、
前記制御部は、前記顔認識部によって検出された複数の顔に対して、焦点調整を行う顔を変更する請求項3から7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記処理部は、フォーカスレンズを有した光学系を介して撮像を行う撮像部と、前記撮像部の撮像条件を設定する設定部と、撮像した画像を表示する表示部とを有し、
前記制御部は、前記表示部に前記画像を表示している時に、前記使用者の生体情報の変化に応じて、前記設定部で設定された前記撮像条件を変更する請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項11】
前記処理部は、前記撮像した画像を削除する削除部を有し、
前記制御部は、前記削除部が前記画像を削除する時の前記使用者の前記生体情報の変化に応じて、前記設定部で設定された前記撮像条件を変更する請求項10記載の電子機器。
【請求項12】
前記制御部は、露光時間、絞り値、撮像感度および撮像モードの少なくとも一つを変更する請求項10または11記載の電子機器。
【請求項13】
前記処理部に行わせる処理を設定する処理設定部を有し、
前記制御部は、前記処理設定部の設定後に前記使用者の生体情報の変化を入力した時に、前記処理部による処理を少なくとも一時的に中断することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−193278(P2011−193278A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58268(P2010−58268)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】