説明

電子機器

【課題】小型化・最適配置の要請に応えつつ、発熱部品の放熱効率の高い構造を実現する。
【解決手段】ベース48bは発熱部品と熱結合される。ベース48b上には、各々がY方向に延びる放熱フィン群48aが、X方向に間隔を隔てて配列される。排気ファン58および隔壁56は、放熱フィン群48aをY方向に挟んで互いに対向するように配置される。放熱フィン群48aの隔壁56側の端部群は、X方向の少なくとも一方の最外位置(X=−4,4)で壁面56から最遠(a)となり、この最外位置とは異なる特定位置(X=0)で壁面56から最近(b)となり、そしてこれら特定位置および最外位置の間では後者に近づくほど壁面56から遠くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器に関し、特にたとえば、発熱部品の熱を放熱するための放熱機構を有する、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の機構としては、特許文献1に開示されたものがある。この従来技術では、発熱部品に取り付けられるベース上に放熱フィンを固着し、放熱フィンの一方から他方に空気を貫流させている。放熱フィンは、空気を取り込む入口側からこれを排出する出口側へと進むに従い、その高さを増していく。放熱フィンに沿って流れる空気の温度は出口に近づくにつれて上昇するため、放熱フィンを出口側ほど高く形成したことで、良好な放熱効率を得ている旨が特許文献1に記載されている。
【0003】
また、特許文献2に開示されたものもある。この従来技術では、発熱部品に取り付けられるベース上に複数の放熱フィンが互いに直列に配置される。複数の放熱フィンを挟んで、ベースとは反対側に壁面が設けられ、壁面とベースの間には風洞が形成されている。この風洞の出口側に排気ファンが設けられ、壁面とベースの間の風洞は、出口側に進むにつれて狭くなっていく。こうして、風洞の入口側を広げることで、入口側の放熱フィンで放熱を受けていない空気が出口側の放熱フィンに供給され、各放熱フィンの冷却性能が均一化される旨が特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開昭60−22398号公報
【特許文献2】特開2004−186702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでゲーム機など電子機器では、小型化・最適配置の要請から、放熱フィンや発熱部品の比較的近くに何らかの部材(壁状の部材や部品等)を配置したい場合がある。この場合、発熱部品の熱に配慮した構造を実現することが課題となる。
【0005】
例えば、放熱フィンの空気の入口側に何らかの壁状の部材(壁面や壁状の部分を持つ部品等)を配置したい場合がある。この場合、上記壁状の部材により、放熱フィンへの空気導入路が相対的に狭くなる恐れがあるが、この場合でも、発熱部品の放熱効率を高くすることが課題となる。
【0006】
また例えば、発熱部品の比較的近くにディスクドライブ等の他の部品を配置したい場合がある。この場合、発熱部品から他の部品への熱の影響を抑えることが課題となる。
【0007】
特許文献1や2には、上記課題を解決するための手段は開示されていない。
【0008】
それゆえに、この発明の目的は、小型化・最適配置の要請に応えつつ、発熱部品の熱に配慮した構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に従う電子機器(10実施例で相当する参照符号。以下同じ)は、次のものを備える:発熱部品(38,40);発熱部品と相対する位置に設けられるベース(48b);各々が第1方向(Y)に延びかつ当該第1方向と交差する第2方向(X)に間隔を隔ててベース上に配列された放熱フィン群(48a);および第1方向に放熱フィン群を挟んで互いに対向する排気ファン(58)および壁面(56)。放熱フィン群の壁面側の
端部群(T2)は、第2方向の少なくとも一方の最外位置で当該壁面から最遠となり、かつ第2方向の当該一方の最外位置とは異なる特定位置で当該壁面から最近となり、そして当該特定位置と当該一方の最外位置との間では当該一方の最外位置に近づくほど当該壁面から遠くなる。
【0010】
第1の発明では、発熱部品と相対する位置に設けられるベース上に、各々が第1方向に延びる放熱フィン群が、第2方向に間隔を隔てて配列される。なお、「発熱部品と相対する位置に設けられるベース」には、発熱部品の一部だけとベースの一部だけが相対する構造も含まれる。排気ファンおよび壁面は、放熱フィン群を第1方向に挟んで互いに対向するように配置される。
【0011】
放熱フィン群の壁面側の端部群は、第2方向の少なくとも一方の最外位置で壁面から最遠となり、この最外位置とは異なる特定位置で壁面から最近となる。そして、これら特定位置および最外位置の間では、後者に近づくほど壁面から遠くなる。
【0012】
第1の発明によれば、放熱フィン群の壁面側の端部群と壁面とで、1つまたは2つの吸気路(QL,QR)が形成される。この(これらの)吸気路は、大きな開口部を有するため大量の外気を取り込むことができ、また、奥に進むにつれてその幅が狭まるので、取り込まれた空気を放熱フィン群にまんべんなく供給できる。この場合、吸気路を通る空気の量も徐々に少なくなるので、吸気路の奥がボトルネックとなることもない。こうして、壁面の近傍に配置された放熱部品に対して高い放熱効果が得られる。
【0013】
これにより、小型化・最適配置の要請に応えつつ、発熱部品の放熱効率を高くすることができる。
【0014】
第2の発明に従う電子機器は、第1の発明に従属し、壁面側の端部群は、第2方向の両方の最外において当該壁面から最遠となり、かつ第2方向の最内において当該壁面から最近となる。
【0015】
第2の発明では、同じ大きさの開口部を有する2つの吸気路が形成される。
【0016】
第2の発明によれば、開口部の総面積が大きくなるので、多量の空気を放熱フィン群に供給することができ、より高い放熱効果が得られる。
【0017】
第3の発明に従う電子機器は、第2の発明に従属し、壁面側の端部群は、第2方向の一方の最外において当該壁面から最遠となり、かつ第2方向の他方の最外において当該壁面から最近となる。
【0018】
第3の発明では、緩やかな傾斜を有する(すなわち壁面側の端部群の段差が小さい)1つの吸気路が形成される。
【0019】
第3の発明によれば、吸気路の通風抵抗が小さくなるので、多量の空気を取込むことができ、より高い放熱効果が得られる。
【0020】
第4の発明に従う電子機器は、第2の発明に従属し、排気ファンは第2方向の最内と相対する位置にある。
【0021】
第4の発明によれば、放熱フィン群から空気を効率よく引き抜くことができるので、放熱効果が高まる。
【0022】
第5の発明に従う電子機器は、第1ないし第4のいずれかの発明に従属し、放熱フィン群の排気ファン側の端部群(T1)は壁面から等距離にある。
【0023】
第5の発明では、放熱フィンの長さは、少なくとも一方の最外位置にあり、壁面から最遠の端部を持つ放熱フィンにおいて最短となる一方、上記最外位置より内側に行くにつれて、放熱フィン群が徐々に長くなり、壁面から最近の端部を持つ放熱フィンにおいて最長となる。
【0024】
このため、上記最外位置において空気を放熱フィンに取込みやすい構造でありながら、上記最外位置より内側に行くにつれて、放熱フィン群が徐々に長くなるので、放熱フィンにより効果的に放熱させることができる。従って、発熱部品の放熱効率をより高くすることができる。
【0025】
第6の発明に従う電子機器は、第1の発明に従属し、他の部品(54)およびハウジング(12)をさらに備える。壁面は放熱フィン群を他の部品から隔離する隔壁の面であり、ハウジングは発熱部品,ベース,放熱フィン群,排気ファン,隔壁および他の部品を収納する。
【0026】
第6の発明では、発熱部品,ベース,放熱フィン群,排気ファン,隔壁および他の部品がハウジングに収納される。放熱フィン群は、隔壁によって他の部品から隔離される。
【0027】
第6の発明によれば、放熱フィン群から放たれた熱が他の部品に影響を与えることを防止できる。
【0028】
第7の発明に従う電子機器は、第6の発明に従属し、放熱フィン群はベース上の一部の領域にのみ配列され、ベース上の放熱フィン群が配列されていない領域には他の部品の少なくとも一部分が配置されている。
【0029】
第7の発明では、ベース上に放熱フィン群が配列されていない領域があり、他の部品の少なくとも一部分はこの領域に配置される。
【0030】
第7の発明によれば、放熱部品の熱が直接他の部品に伝わることを防止しつつ、省スペース化を図ることができる。
【0031】
第8の発明に従う電子機器は、第7の発明に従属し、各々がハウジングに設けられた排気孔(28)および吸気孔(24)をさらに備え、排気孔は排気ファンを挟んで放熱フィン群と相対する位置にあり、吸気孔は放熱フィン群の壁面側の端部群と当該壁面とで形成される吸気路(QL,QR)の開口部と相対する位置にある。
【0032】
第8の発明では、排気ファンによって放熱フィン群から引き抜かれた空気は、排気孔からハウジングの外部に排出される。この結果、ハウジング内の気圧が低下し、外部の空気が吸気孔からハウジングの内部に取り込まれる。取り込まれた外気は、吸気路を経て放熱フィン群に供給される。
【0033】
第8の発明によれば、排気孔は排気ファンを挟んで放熱フィン群と相対し、吸気孔は吸気路の開口部と相対しているので、スムーズな吸排気が実現され、放熱効果が高まる。
【0034】
第9の発明に従う電子機器は次のものを備える:発熱部品(38,40);発熱部品と熱結合されるベース(48b);ベース上に配列された放熱フィン群(48a);および他の部品(54)。放熱フィン群はベースの一部領域にのみ配列され、他の部品の少なく
とも一部分はベースの放熱フィン群が存在しない領域に配置される。
【0035】
第9の発明では、発熱部品と相対する位置に設けられるベース上に放熱フィン群が配列される。そしてこのベース上に放熱フィン群が配列されていない領域があり、他の部品の少なくとも一部分はこの領域に配置される。
【0036】
第9の発明によれば、小型化・最適配置の要請に応えつつ、発熱部品から他の部品への熱の影響を抑えることができる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、小型化・最適配置の要請に応えつつ、発熱部品の熱に配慮した構造を実現することができる。
【0038】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施例を前方上側から見た斜視図である。
【図2】図1実施例を後方上側から見た斜視図である。
【図3】図1実施例を前方下側から見た斜視図である。
【図4】図1実施例の右側面のカバーに隠れた部分を示す図解図である。
【図5】図1実施例の組立工程の一部を示す図解図である。
【図6】図5工程の結果(シールド完成前)を示す斜視図である。
【図7】図5工程に続く工程を示す図解図である。
【図8】図7工程の結果(シールド完成後)を示す斜視図である。
【図9】図7工程の後さらにドライブユニット,隔壁および排気ファンが装着された状態を示す図解図である。
【図10】(A)は図1実施例に適用される放熱部材の構造を示す上面図であり、(B)は同放熱部材の構造を示す側面図であり、(C)は同放熱部材の構造を示す側面図である。
【図11】(A)〜(C)は図1実施例に適用される放熱部材の製造工程の一部を示す図解図である。
【図12】図1実施例の放熱部材における空気の流れを示す図解図である。
【図13】別の実施例の放熱部材における空気の流れを示す図解図である。
【図14】(A)は他の実施例の放熱部材を示す上面図であり、(B)はその他の実施例の放熱部材を示す上面図であり、(C)はさらにその他の実施例の放熱部材を示す上面図である。
【図15】他の実施例の放熱部材を示す上面図である。
【図16】その他の実施例の放熱部材を示す上面図である。
【図17】さらにその他の実施例の放熱部材を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
この発明の一実施例であるゲーム装置10の外観を図1〜図3に示す。図1はゲーム装置10を前方上側から見た斜視図であり、図2はゲーム装置10を後方上側から見た斜視図であり、そして図3はゲーム装置10を前方下側から見た斜視図である。
【0041】
図1〜図3に示すように、ゲーム装置10は、略直方体のハウジング12を含む。ハウジング12の前面12fには、ディスクスロット14a、SDカードスロットカバー14b、電源ボタン16a、リセットボタン16b、およびディスクイジェクトボタン16cなどが設けられる。
【0042】
ハウジング12の右側面12Rには、ゴム足22および吸気孔24などが設けられる。背面12bには、USBコネクタ26、排気孔28、周辺機器用コネクタ30、AVコネクタ32、DCコネクタ34などが設けられる。底面12uには、ゴム足15および吸気孔25などが設けられる。左側面12Lには、開閉可能なカバー18a,18bが設けられる。
【0043】
左側面12Lのカバー18a,18bに隠れた部分を図4に示す。図4を参照して、左側面12Lには、各種コントローラ(図示せず)用のコネクタ20a、メモリーカードスロット20bおよび吸気孔27等が設けられる。
【0044】
図5にはゲーム装置10の組立工程の一部が、図6には図5工程の結果がそれぞれ示される。図5および図6を参照して、上記のように構成されたハウジング12の内部には、CPU38およびGPU40などの電子部品や前述のコネクタ類(20a,20b,30,32および34)を実装した基板36が収納される。基板36は、金属製の下シールド材44Bを介して底板46(ハウジング12の底面12uに相当)に固着される。
【0045】
発熱性の電子部品であるCPU38およびGPU40は、概ね同一の厚みを有し、基板36の中央奥手寄りに配置される。そして、CPU38およびGPU40の上面に、金属(たとえばアルミ)製の放熱部材48が配置される。放熱部材48は、複数の放熱フィン48aと、これらを支持するベース48bとを有する。ベース48bは、長方形状を有し、CPU38およびGPU40を過不足なく覆う程度の大きさである。ベース48bの四隅の各々には、円柱形状を有する下向きの突起48cと、ベース自身およびこの突起48cを貫通するネジ孔48dとが形成される。突起48cの高さは、CPU38およびGPU40の厚みよりをわずかに上回る。つまり突起48cは、放熱部材48をCPU38お
よびGPU40の上面位置に保持するための脚である。
【0046】
ここで、放熱部材48の構造を詳しく説明する。複数の放熱フィン48aは、図10(A)に示すように、ベース48bの短辺と平行に、概ね等間隔で配置される。ただし、ネジ孔48dを挟む2つの放熱フィンの間だけは、ネジ54を装着するべく他よりも広い間隔が確保されている。
【0047】
複数の放熱フィン48aの一方(上側)の端部群T1は、ベース48bの一方の長辺(上辺)L1の上に並んでいる。複数の放熱フィン48aの他方(下側)の端部群T2は、ベース48bの他方の長辺(下辺)L2に対して、中央のものが最も近く、かつ左右両端のものが最も遠くなるように、V字線(C1)に沿って並ぶ。下側端部群T2のうち、V字の左側の直線に沿うものを下側左端部群T2lと呼び、V字の右側の直線に沿うものを下側右端部群T2rと呼ぶ。
【0048】
このため、図10(B)に示すように、放熱部材48の左側面(または右側面)からは、下側右端部群T2r(または下側左端部群T2l)の全体を見通すことができる。また、複数の放熱フィン48aは、図10(C)に示すように、互いに等しい高さを有する。なお、複数の放熱フィン48aの高さを互いに異ならせたり、1枚の放熱フィン内で位置により高さを変えたりしてもよい。
【0049】
このような放熱部材48は、次のような手順で製造される。まず、ベース48Abおよびこれと同じ長さの複数の放熱フィン48Aaを有する原部材48A(図11(A)参照)を押し出し型(図示せず)で押し出し成形する。次に、押し出し形成された原部材48Aに対し、その複数の放熱フィン48Aaの各々から一部分をプレスブロック(B1およびB2)で順次切り欠いていくプレス加工を施す。
【0050】
プレス加工では、最初、図11(A)に示すように、左側から1枚目の放熱フィンF1と2枚目の放熱フィンF2との間に保持部材B2を挿入し、刃部材B1の先端をV字線C1の左端位置に配置し、そして両部材B1およびB2で放熱フィンF1を切り欠く。
【0051】
次に、図11(B)に示すように、左側から2枚目の放熱フィンF2と3枚目の放熱フィンF3との間に保持部材B2を挿入し、刃部材B1をV字線C1に沿って放熱フィンF2の位置まで移動させ、そして両部材B1およびB2で放熱フィンF2を切り欠く。このとき、放熱フィンF2の切り欠き位置は、放熱フィンF1のそれよりも下方にあるので、切り欠き後の放熱フィンF1が刃部材B1に接触することはない。
【0052】
以降、同様にして、放熱フィンF3,F4…をV字線C1に沿って順次切り欠いていく。中央の放熱フィンF5の切り欠きを終えると、図11(C)に示すように、刃部材B1の向きを反転させ、今度は右側から、放熱フィンF9〜F6の端部をV字線C1に沿って順番に切り欠いていく。こうして、押し出し成形された原部材48Aの複数の放熱フィン48AaをV字線C1に沿って切り欠くようにすれば、放熱部材48を直にダイカスト成形する場合と比べ、より単純な形状の押し出し型を用いることができ、製造コストの抑制が可能となる。
【0053】
なお、上記のように、まず左側から放熱フィンF1〜F5をカットし、次に右側から放熱フィンF9〜F6をカットする代わりに、左側からのカットと右側からのカットとを同時に行ってもよい。すなわち、最初F1およびF9をカットし、次にF2およびF8をカットし、次にF3およびF7をカットし、次にF4およびF6をカットし、そしてF5をカットする。これにより、製造時間を短縮できる。
【0054】
図5および図6に戻って、好ましくは、放熱部材48とCPU38およびGPU40との間に熱伝導シート50が挿入される。熱伝導シート50は、柔軟性および熱伝導性に富む素材(シリコーンなど)で形成されており、その上面は放熱部材48の下面と密着し、その下面はCPU38およびGPU40の上面と密着する。CPU38およびGPU40の熱は、熱伝導シート50を通じて効率よく放熱部材48に伝わり、放熱部材48から放射される。このように、熱伝導シート50を設けたことで放熱部材48の放熱効果が高まる。
【0055】
放熱部材48の4つのネジ孔48dに対応して、基板36には4つのスルーホール36aが形成され、下シールド材44Bには4つのネジ孔44Baが形成され、底板46には4つのネジ受け46aが形成され、そして放熱部材48と基板36との間に4個のフェライトリング52が配される。フェライトリング52は、放熱部材48の突起48c等と協働してインダクタを構成し、これによって、静電気放電などによるパルス状の電荷のシールド44内への侵入が阻止される。
【0056】
放熱部材48,基板36,下シールド材44Bおよび底板46を一体化するための4本の金属ネジ54は、それぞれ対応するネジ孔48dからフェライトリング52,スルーホール36aおよびネジ孔44Baを貫通してネジ受け46aへと繋合される。これによって、放熱部材48は、図6に示すように、CPU38およびGPU40の上面と接触ないしは十分接近する位置に固定される。
【0057】
図7には図5工程に続く工程が、図8には図7工程の結果がそれぞれ示される。図7に示すように、前述のような一体化工程の後、基板36の上面側から上シールド材44Aが複数の金属ネジ56で取り付けられる。この結果、図8に示すように、上シールド材44Aおよび下シールド材44Bでシールド44が構成され、その内部が電磁的に遮蔽される。
【0058】
上シールド材44Aには、放熱部材48に対応する位置に凸部44Aaが形成される。凸部44Aaは、放熱部材48のベース48bに相当する高さを有し、その上面に複数の放熱フィン48a用のスリット44Abが形成されている。ベース48bはシールド内でCPU38等と直に(もしくは熱伝導シート50を介して)接触し、複数の放熱フィン48aはスリット44Abからシールド外に露出する。このため、CPU38等が発する熱は、効率よくベース48bへと伝わり、複数の放熱フィン48aからシールド外に放熱される。すなわち、シールド内に熱が篭らず、高い放熱効果が得られる。
【0059】
そして、図9に示すように、シールド44の上面の複数の放熱フィン48aの手前、すなわちハウジング前面12fのディスクスロット14aに対応する位置(図1参照)には、ドライブユニット54が配置される。ディスクスロット14aから挿入されたディスク(図示せず)は、ドライブユニット54によって収納および駆動される。
【0060】
また、ドライブユニット54は、複数の放熱フィン48aと近接しているため、ドライブユニット54と複数の放熱フィン48aとの間に隔壁56が設けられる。複数の放熱フィン48aで暖められた空気のドライブユニット54側への移動は、この隔壁56によって妨げられ、これによりドライブユニット54のオーバーヒートが抑制される。
【0061】
また、シールド44の奥手のUSBコネクタ26と周辺機器用コネクタ30との間、すなわちハウジング背面12bの排気孔28に対応する位置(図2参照)には、排気ファン58が設けられる。放熱部材48で暖められた空気は、排気ファン58によって排気孔28からハウジング12の外部へと排気される。この排気に伴い、ハウジング12内の気圧は低下し、右側面12Rの吸気孔24および底面12uの吸気孔25の各々からハウジン
グ12の内部に、外の冷たい空気が供給される。なお、左側面12Lのカバー18a,18bが開かれている場合には、吸気孔27からも外気が取り込まれる。
【0062】
このとき、複数の放熱フィン48aの近傍では、図12のような空気の流れが生じる。図12を参照して、複数の放熱フィン48aは、その最も長い放熱フィンF5が排気ファン58の回転軸と重なるように配置される隔壁56は、この回転軸に対して垂直に、放熱フィンF5の下端部から所定距離bだけ離れた位置に配置される。
【0063】
なお、複数の放熱フィン48aと排気ファン58との位置関係は、図12に示すものに限らず、他の構成要素の配置も加味して適宜変更される。
【0064】
ここで、排気ファン58の回転軸に沿って上向きにY軸を定義し、隔壁56に沿って右向きにX軸を定義すると、最も長い放熱フィンF5の下端部の高さは“Y=b”と記述され、最も短い放熱フィンF1(またはF9)の下端部の高さは“Y=a”と記述される。また、放熱フィンF1〜F9の横方向の位置は、X=−4,X=−3,…,X=0,…,X=4のように表記できる。
【0065】
複数の放熱フィン48aと隔壁56との間には、下側左端部群T2lと隔壁56とでX軸に沿う吸気路QLが形成され、また、下側右端部群T2rと隔壁56とでX軸に沿う吸気路QRが形成される。なお、これら2つの吸気路QLおよびQRで、単一のM字型経路が構成される。一方、放熱フィンF1〜F9は、Y軸に沿う8個の放熱路P1〜P8を形成する。
【0066】
外気は、放熱フィンF1と隔壁56との間(左開口部)、および放熱フィンF9と隔壁56との間(右開口部)の2箇所から、放熱部材48に入り込む。左開口部から入り込んだ空気は吸気路QLを右向き(X方向)に進み、右開口部から入り込んだ空気は吸気路QRを左向き(−X方向)に進む。
【0067】
吸気路QLは右にいくほど幅が狭まるので、吸気路QLの各位置(X=−4,−3,…,0)を流れる空気の量は右に進むにつれて少なくなる。これは、左開口部から入り込んだ空気が放熱路P1〜P4に概ね均等に流れ込むことを意味する。同様に、吸気路QRは左にいくほど幅が狭まるので、吸気路QRの各位置(X=4,3,…,0)を流れる空気の量は左に進むにつれて少なくなる。これは、右開口部から入り込んだ空気が放熱路P8〜P5に概ね均等に流れ込むことを意味する。
【0068】
以上から明らかなように、この実施例の放熱部材48では、複数の放熱フィン48a(F1〜F9)の下端部がV字線C1に沿って切り欠かれているので、複数の放熱フィン48aと隔壁56との間にM字型経路(吸気路QLおよびQR)が形成され、その左右の大きな開口部から多量の空気を取り込むことができる。また、このM字型経路の左半分(吸気路QL)は右にいくほど幅が狭くなり、右半分(吸気路QR)は左にいくほど幅が狭くなるので、取り込まれた空気は、複数の放熱フィン48aの全体(放熱路P1〜P8)にまんべんなく行き渡る。このため、高い放熱効果が得られる。
【0069】
なお、この実施例の放熱部材48では、複数の放熱フィン48aの下端部(T2)は、図12のようにV字線C1に沿って切り欠かれているが、図13のように、隔壁56に対して傾斜した単一の直線C2に沿って切り欠かれてもよい。この場合も、主として左側の大きな開口部(放熱フィンF1と隔壁56との間)から吸気路QL内に多量の空気を取り込み、これを放熱フィン48aの全体(放熱路P1〜P8)にまんべんなく行き渡らせることができる。
【0070】
図12の場合と比べると、開口部の総面積は少ないものの、複数の放熱フィン48aの下端部の段差が小さいので、吸気路QL内の空気の流れがスムーズである(すなわち通風抵抗が小さい)。このため、空気の供給量において遜色はなく、高い放熱効果が得られる。
【0071】
このほか、複数の放熱フィン48a(F1〜F9)の下端部を切り欠く際のV字線C1は、図14(A)のように、左右非対称でもよい。また、切り欠きのパターンは、V字状に限らず、図14(B)のようなU字状(ないしは円弧状)でもよい。曲線を用いる場合、図14(C)のように、位置により曲率が変化していてもよい。
【0072】
一般には、最小値に対して左側の区間では単調に減少し、右側の区間では単調に増加するような曲線ないしは直線に沿って、複数の放熱フィン48aの下端部を切り欠けば、左および/または右の大きな開口部から多量の空気を取り込み、これを複数の放熱フィン48aの全体にまんべんなく行き渡らせることができるので、高い放熱効果が得られる。
【0073】
また、この実施例では、複数の放熱フィン48aの間隔(放熱路P1〜P8の各々の幅)を一定としたが、これをX方向の位置によって変化させてもよい。一例を図15に示す。図15を参照して、放熱路P1〜P8にそれぞれ対応する幅d1〜d8は、最も長い放熱フィンF5に隣接する放熱路P4およびP5が最も広く、放熱フィンF5から遠ざかるにつれて狭くなる(すなわちd1<d2<d3<d4,d5>d6>d7>d8)。
【0074】
一般に、空気などの流体は、同じ幅であれば長い経路ほど流れ難い。そこで放熱路P1〜P8に、その長さに応じた幅を持たせることで、空気の流れを一層均一化できるとも考えられる。ただし、放熱路の幅を広げれば放熱面積が小さくなるため、必ずしも放熱効果が高まるとは限らない。
【0075】
また、放熱部材48のベース48bには、切り欠きの結果として、放熱フィン48aの配置されていない領域があるが、このような余白領域は、図16に示すように除去されてよい。ただし、この実施例では、余白領域の直下にもCPU38やGPU40が存在しており、余白領域もCPU38等の熱を複数の放熱フィン48aに伝える働きをしている。また、ドライブユニット54の一部分が余白領域の上方にあって(図10(A)参照)、余白領域はCPU38等の熱が直接ドライブユニット54に伝わること防ぐ働きをしている。このような場合には、余白領域を除去しないほうが好ましい。
【0076】
なお、上記のような余白領域の働きは、切り欠きパターンの形状(ひいては複数の放熱フィン48aの配列)とは無関係である。このため、例えば図17に示すように、複数の放熱フィン48aの下側端部群を単にベース48bの下辺L2と平行に切り欠いてもよい。余白領域にドライブユニット54等の部品の一部を配置したことで、省スペース化も実現される。
【0077】
また、この実施例では、複数の放熱フィン48aの排気ファン58側の端部群T1は、複数の放熱フィン48aとは垂直な直線(ベース48bの上辺L1)に沿って並んでいるが(図10(A)参照)、複数の放熱フィン48aに対して傾斜した直線や曲線に沿って並んでいてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 …ゲーム装置
11 …放熱機構
12 …ハウジング
24,25,27 …吸気孔
28 …排気孔
38 …CPU
40 …GPU
48 …放熱部材
48a,F1〜F9 …放熱フィン
48b …ベース
54 …ドライブユニット
56 …隔壁
58 …排気ファン
P1〜P8 …放熱路
QL …左吸気路
QR …右吸気路
T1 …上側端部群
T2 …下側端部群
Y …排気方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品、
前記発熱部品と相対する位置に設けられるベース、
各々が第1方向に延びかつ当該第1方向と交差する第2方向に間隔を隔てて前記ベース上に配列された放熱フィン群、および
前記第1方向に前記放熱フィン群を挟んで互いに対向する排気ファンおよび壁面を備え、
前記放熱フィン群の前記壁面側の端部群が、前記第2方向の少なくとも一方の最外位置で当該壁面から最遠となり、かつ前記第2方向の当該一方の最外位置とは異なる特定位置で当該壁面から最近となり、そして当該特定位置と当該一方の最外位置との間では当該一方の最外位置に近づくほど当該壁面から遠くなる、電子機器。
【請求項2】
前記壁面側の端部群は、前記第2方向の両方の最外において当該壁面から最遠となり、かつ前記第2方向の最内において当該壁面から最近となる、請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記壁面側の端部群は、前記第2方向の一方の最外において当該壁面から最遠となり、かつ前記第2方向の他方の最外において当該壁面から最近となる、請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記排気ファンは前記第2方向の最内と相対する位置にある、請求項2記載の電子機器。
【請求項5】
前記放熱フィン群の前記排気ファン側の端部群は前記壁面から等距離にある、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
他の部品およびハウジングをさらに備え、
前記壁面は前記放熱フィン群を前記他の部品から隔離する隔壁の面であり、
前記ハウジングは前記発熱部品,前記ベース,前記放熱フィン群,前記排気ファン,前記隔壁および前記他の部品を収納する、請求項1記載の電子機器。
【請求項7】
前記放熱フィン群は前記ベース上の一部の領域にのみ配列され、
前記ベース上の前記放熱フィン群が配列されていない領域には前記他の部品の少なくとも一部分が配置されている、請求項6記載の電子機器。
【請求項8】
各々が前記ハウジングに設けられた排気孔および吸気孔をさらに備え、
前記排気孔は前記排気ファンを挟んで前記放熱フィン群と相対する位置にあり、
前記吸気孔は前記放熱フィン群の前記壁面側の端部群と当該壁面とで形成される吸気路の開口部と相対する位置にある、請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
発熱部品、
前記発熱部品と相対する位置に設けられるベース、
前記ベース上に配列された放熱フィン群、および
他の部品を備え、
前記放熱フィン群は前記ベースの一部領域にのみ配列され、
前記他の部品の少なくとも一部分は前記ベースの前記放熱フィン群が存在しない領域に配置される、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−178612(P2012−178612A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129494(P2012−129494)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【分割の表示】特願2006−302508(P2006−302508)の分割
【原出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000233778)任天堂株式会社 (1,115)
【Fターム(参考)】