説明

電子機器

【課題】省電力モードからの復帰処理を高速化した電子機器を提供する。
【解決手段】複合機10は、メイン基板11と、サブ基板12と、を備える。メイン基板11は、通電が制限又は遮断される省電力モードと、通電が制限されない通常モードと、を切り替え可能である。サブ基板12は、データ保存部21と、データ加工部23と、送信用データ保存部24と、データ送信部25と、を備える。データ保存部21は、所定のデータを保存する。データ加工部23は、データを加工する。送信用データ保存部24は、データ加工部23が加工したデータを保存する。データ送信部25は、メイン基板11が省電力モードから通常モードへと切り替わる際、送信用データ保存部24に保存されている加工済データをメイン基板11に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、メイン基板とサブ基板を備え、省電力モード移行時にメイン基板への通電を遮断する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器の節電対策が種々提案されている。例えば特許文献1は、メイン基板とサブ基板とを備え、必要に応じて通常モードと省電力モードを切り替えることができる画像形成装置を開示している。なお、特許文献1において、通常モードとは、メイン基板及びサブ基板に対して通電するモードを指している。また省電力モードとは、消費電力を低減するために、メイン基板に対する通電を遮断するモードを指している。なお、特許文献1は、省電力モードにおいてもサブ基板に対する通電は継続する構成としている。
【0003】
特許文献1は、省電力モードにおいて、外部機器からのデータ更新要求をサブ基板が受け付ける構成を開示している。そしてこのサブ基板は、省電力モードから通常モードに復帰したときに、前記更新要求をメイン基板に出力するように構成されている。特許文献1は、これにより、外部機器からデータの更新要求を受け付けた場合に、メイン基板を即座に復帰させる必要がないため、省電力モードを維持することができ、省電力効果が一層向上するとしている。
【0004】
ところで特許文献1の構成は、メイン基板が設定データ格納部を有しており、この設定データ格納部に各種設定データが記憶されている。また、特許文献1において、メイン基板は、設定データ格納部に格納されている設定データを更新する設定データ更新部を備えている。即ち、特許文献1において、処理の対象となるデータはメイン基板が管理しているといえる。
【0005】
特許文献1の構成においては、省電力モードへ移行する際に、メイン基板は、閲覧可否データが「可」のデータを含む省電力モード用UIデータを生成して、サブ基板に送信している。一方、省電力モードから通常モードに復帰する際には、サブ基板は、更新データを保持している場合に当該更新データをメイン基板に送信する。そしてメイン基板においては、受信した更新データに基づいて、設定データを更新している。
【0006】
以上のように、特許文献1の構成では、省電力モードに移行する際に、メイン基板からサブ基板へデータの送信が必要となり、データ処理工程が多くなるという問題がある。これは、メイン基板がデータを管理しているため、当該メイン基板への通電が遮断される省電力モード中では、サブ基板が前記データに対して直接アクセスすることができないためである。また、特許文献1の構成は、データの更新処理に関する処理が、メイン基板とサブ基板に分散されているため、基板構成が複雑になるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−251433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、サブ基板側でデータを管理する構成が提案されている。サブ基板でデータを管理していれば、省電力モードであっても、サブ基板は自身が管理しているデータを直接操作することができる。従って、メイン基板からサブ基板に対して省電力モード用のデータを送信する必要がなく、省電力モード移行時のデータ処理工程を少なくすることができる。
【0009】
ただしこの構成の場合、メイン基板は、サブ基板が管理しているデータに直接アクセスすることができない。そこで、サブ基板は、自身が管理しているデータが更新された際に、当該更新されたデータをメイン基板へと送信するように構成される。これにより、メイン基板においても、サブ基板が管理しているデータを利用することができる。
【0010】
この構成において、サブ基板は、自身が管理しているデータをメイン基板へと送る際に、当該データをそのまま(生データのまま)送信するのではなく、所定の加工を行ったうえで送信する場合がある。一例を挙げると、サブ基板がアドレス帳のデータを管理している場合において、50音順(又はアルファベット順)に並べ替えたデータをメイン基板に送信するような場合である。
【0011】
しかしながら、サブ基板が管理しているデータの容量が大きい場合などは、当該サブ基板におけるデータの加工にかかる時間が長くなる場合がある。このため、サブ基板からメイン基板へ加工済みデータを送信するまでにかかる時間が長くなるという問題があった。
【0012】
ところで、メイン基板は、省電力モード中においては通電が遮断されるため、当該メイン基板の揮発性メモリに記憶されているデータは消失してしまう。従って、省電力モードから通常モードへと復帰する際には、前記加工済データを、サブ基板からメイン基板へと再送しなければならない。ところが、上記のようにデータの加工に時間がかかり、加工済みデータの再送にかかる時間が長くなるため、結果として、省電力モードから通常モードへの復帰にかかる時間が長くなっていた。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、省電力モードからの復帰処理を高速化した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の観点によれば、以下の構成の電子機器が提供される。即ち、この電子機器は、第1処理部と、第2処理部と、を備える。前記第1処理部は、通電が制限又は遮断される省電力モードと、通電が制限されない通常モードと、を切り替え可能である。前記第2処理部は、データ保存部と、データ加工部と、送信用データ保存部と、データ送信部と、を備える。前記データ保存部は、所定のデータを保存する。前記データ加工部は、前記データを加工する。前記送信用データ保存部は、前記データ加工部が加工したデータを保存する。前記データ送信部は、前記第1処理部が前記省電力モードから前記通常モードへと切り替わる際、前記送信用データ保存部に保存されている加工済データを前記第1処理部に送信する。
【0016】
このように、第2処理部において、加工されたデータを予め保存しておくことにより、第1処理部が通常モードに復帰する際には、第2処理部は、保存しておいた加工済データを第1処理部へと送信すれば良い。即ち、通常モードへの復帰の際に、データの加工を行う必要がないので、当該復帰にかかる時間を短縮することができる。
【0017】
前記の電子機器は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第2処理部は、前記データを更新するデータ更新部を備える。前記データ加工部は、前記データが更新されるたびに当該データを加工する。
【0018】
このように、データが更新されるたびにデータを加工する構成とすることで、送信用データ保存部には常に最新の加工済データを保持しておくことができる。
【0019】
前記の電子機器においては、前記第1処理部が前記省電力モードである場合であっても、前記データ更新部は、前記データを更新することが可能であることが好ましい。
【0020】
即ち、本発明の電子機器は、第2処理部がデータの管理を行っているので、第1処理部が省電力モードであっても、当該データの更新処理を行うことができる。
【0021】
前記の電子機器は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第1処理部は、前記第2処理部から送信されてきた加工済データを記憶する加工済データ保存部を備える。当該第1処理部が前記省電力モードに移行した際に、前記加工済データ保存部の記憶内容が消失する。
【0022】
即ち、第1処理部において加工済データを記憶しておくことにより、それ以降第1処理部は、記憶した加工済データを参照すればよいので、第2処理部におけるデータ加工の負担を低減することができる。また、加工済データ保存部が揮発性メモリである場合、省電力モードに移行した際に加工済データ保存部の記憶内容は消失してしまう。従って、通常モードに復帰する際に第2処理部から加工済データを送信する必要があるが、本発明の構成によれば、当該加工済データを、第2処理部から第1処理部へと素早く送信できるので、通常モードへ素早く復帰することができる。
【0023】
前記の電子機器は、以下のように構成することもできる。即ち、前記第1処理部は、前記第2処理部から送信されてきた加工済データを記憶する加工済データ保存部を備える。当該第1処理部が前記省電力モードに移行した場合であっても、前記加工済データ保存部の記憶内容は保持される。
【0024】
即ち、加工済データ保存部が不揮発性メモリ等である場合であっても、省電力モード中に第2処理部のデータが更新されている場合には、通常モードに復帰した際に、加工済データ保存部の記憶内容を最新の加工済データで上書きする必要がある。この点、本発明の構成によれば、通常モードへの復帰時に、最新の加工済データを、第2処理部から第1処理部へと素早く送信できるので、通常モードへ素早く復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の機能を示すブロック図。
【図2】データの更新操作が行われたときのサブ基板の処理を示すフローチャート。
【図3】通常モードへの復帰時におけるサブ基板の処理を示すフローチャート。
【図4】第2実施形態のサブ基板の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電子機器としてのコピーファクシミリ複合機10は、メイン基板(第1処理部)11、サブ基板(第2処理部)12、液晶ディスプレイ13、操作パネル14、画像読取部15、画像形成部16、ファクシミリ送受信部17、及びネットワークインタフェース18等を備えている。
【0028】
液晶ディスプレイ13は、複合機10の現在の状態に関するデータ、複合機10が保持している各種のデータなどを表示できるように構成される。操作パネル14は複数の操作ボタン等を有しており、これをユーザが操作して複合機10に対する指示を行うためのものである。画像読取部15は、ユーザによってセットされた原稿の画像の読み取りを行うことができるように構成される。画像形成部16は用紙への画像の印刷を行う。ファクシミリ送受信部17は、公衆回線91を介したファクシミリ送受信を行う。これら液晶ディスプレイ13、操作パネル14、画像読取部15、画像形成部16、ファクシミリ送受信部17等の各構成は公知なので、詳細な説明は省略する。
【0029】
メイン基板11は、図略のCPU、RAM、ROM等のハードウェアを備えている。このメイン基板は、内部バス19を介して、液晶ディスプレイ13、操作パネル14、画像読取部15、画像形成部16、ファクシミリ送受信部17、サブ基板12等の各構成と通信を行うことができるように構成されている。また前記ROMには、前記各構成を制御するための制御プログラム等のソフトウェアが保存されている。そしてメイン基板11は、前記ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、複合機10の各構成を制御するようになっている。
【0030】
サブ基板12は、メイン基板11とは独立してCPU、RAM、ROM等のハードウェアを備えている。このサブ基板12にはネットワークインタフェース18が接続されている。サブ基板12は、ネットワーク92を介してネットワークインタフェース18に接続されているクライアント端末90と、複合機10と、の間の通信を制御するネットワーク処理部20として機能するように構成されている。これにより、複合機10は、ネットワーク92に接続されたクライアント端末90と通信可能になっている。
【0031】
ユーザは、クライアント端末90を操作することにより、複合機10に対して、印刷、スキャン等のリクエストを送信することができる。即ち、本実施形態の複合機10は、ネットワークプリンタ、ネットワークスキャナ等として機能するように構成されている。また、各クライアント端末90は、ネットワーク92を介して、複合機10から各種のデータを取得することができる。
【0032】
またサブ基板12は、特定のデータを管理するためのデータ管理基板としても機能するように構成されている。実施形態では、具体的に、サブ基板12がアドレス帳のデータを管理しているものとして説明する。なお、ここでいうアドレス帳とは、例えば、ファクシミリ送付先の名称と、当該送付先のファクシミリ番号と、を関連付けて保存したデータベースである。
【0033】
サブ基板12は、前記アドレス帳のデータを管理するために、データ保存部21、データ更新部22、データ加工部23、送信用データ保存部24、データ送信部25等として機能するように構成されている。
【0034】
データ保存部21は、サブ基板12が管理しているデータ(本実施形態では前記アドレス帳のデータ)を保存している。なお、本実施形態において、データ保存部21には、アドレス帳のデータが、登録された順に記憶されている。
【0035】
データ更新部22は、ユーザの操作に応じて、データ保存部21に保存されているデータの更新処理(具体的には、ファクシミリ送付先の追加、削除、又は内容の修正など)を行う。このデータ更新の操作は、ユーザが複合機10の操作パネル14を操作することによって行うことができる。また、この更新操作は、ユーザがクライアント端末90を適宜操作することにより、ネットワーク92を介して行うこともできる。具体的に説明すると以下の通りである。ユーザは、クライアント端末90を操作することにより、ネットワーク92を介して、アドレス帳のデータ更新のリクエストを送信することができる。当該リクエストを受信した場合、データ更新部22は、前記リクエストの内容に応じて、データ保存部21に保存されているデータの更新を行う。
【0036】
データ保存部21に記憶されているデータは、ユーザがクライアント端末90を適宜操作することにより、クライアント端末90の画面に表示させることができる。具体的に説明すると以下の通りである。ユーザは、クライアント端末90を操作することにより、ネットワーク92を介して、アドレス帳のデータ閲覧のリクエストを送信することができる。サブ基板12は、当該リクエストを受信した場合、前記リクエストを発行したクライアント端末90に対して、データ保存部21に保存されているアドレス帳のデータを送信する。これにより、ユーザは、ネットワーク92を介して、クライアント端末90の画面でアドレス帳の内容を閲覧することができる。
【0037】
また、データ保存部21に記憶されているデータは、複合機10が備える液晶ディスプレイ13に表示させることもできる。なお、複合機10の液晶ディスプレイ13でアドレス帳のデータを閲覧する際には、例えば、ファクシミリ送付先の名称を50音順(又はアルファベット順)に並べて表示できればユーザにとって便利である。ところが、前述のように、データ保存部21が記憶しているアドレス帳のデータは、登録順に記憶されている。従って、アドレス帳を50音順(又はアルファベット順)に表示するためには、データ保存部21に記憶されているデータの加工(具体的には、アドレス帳のデータの並べ替え処理)が必要となる。
【0038】
そこでサブ基板12は、データ保存部21が保存しているデータを加工するためのデータ加工部23としても機能する。本実施形態の場合、データ加工部23は、データ保存部21に記憶されているアドレス帳のデータを読み出して、読み出したデータをファクシミリ送付先の名称の50音順(又はアルファベット順)で並べ替える加工を行う。
【0039】
サブ基板12のデータ送信部25は、このようにして加工したデータ(以下、加工済データ)を、メイン基板11へと送信する。メイン基板11においては、サブ基板12から受信した加工済データを、液晶ディスプレイ13に表示させる。これにより、ユーザは、50音順(又はアルファベット順)に並べられたアドレス帳を、液晶ディスプレイ13で確認することができる。
【0040】
なお、液晶ディスプレイ13にアドレス帳を表示するたびにデータの加工を行うようでは、処理の効率が悪いと考えられる。そこでメイン基板11は、サブ基板12のデータ送信部25から送られてきた加工済データを保存する加工済データ保存部30を備えている。従って、アドレス帳のデータを液晶ディスプレイ13に表示させる際には、メイン基板11は、加工済データ保存部30に保存されている加工済データを参照すれば良い。これによれば、サブ基板12におけるデータの加工処理を、アドレス帳を液晶ディスプレイ13に表示させるたびに行う必要が無いので、サブ基板12の処理負荷を低減することができる。なお、本実施形態においては、加工済データ保存部30は、揮発性のメモリにより構成されている。
【0041】
次に、本実施形態の複合機10における節電対策について簡単に説明する。
【0042】
本実施形態の複合機10は、通常モードと、消費電力を抑えた省電力モードとに切り換えることができるように構成されている。
【0043】
通常モードにおいては、メイン基板11とサブ基板12の両方に通電を行う。この場合、メイン基板11によって複合機10の各構成の制御を行うことができるため、当該複合機10は、ユーザの求めに応じて、画像の読取、印刷、ファクシミリ送信などを即座に行うことができる。ただし、通常モードにおいては、メイン基板11とサブ基板12の両方に通電されているため、複合機10の消費電力は大きくなる。
【0044】
一方、省電力モードにおいては、メイン基板11への通電が遮断されるように構成されている。これにより、複合機10の消費電力を削減することができる。ただし、このようにメイン基板11への通電が遮断されるため、省電力モードにおいては、メイン基板11の機能を利用した処理(例えば、画像読取部15による画像の読み取り、画像形成部16による印刷、ファクシミリ送受信部17によるファクシミリ通信など)を利用することができない。これらの機能を利用しようとする場合、ユーザは、所定の操作を行うことにより、複合機10を省電力モードから通常モードに復帰させる。
【0045】
なお、本実施形態の複合機10は、省電力モードであっても、サブ基板12への通電は継続するように構成されている。従って、省電力モードにおいても、サブ基板12の機能を利用した処理(ネットワーク処理、及びデータの管理)は行うことができる。例えば、省電力モード中であっても、ユーザは、クライアント端末90を適宜操作してネットワークを介して複合機10にアクセスすることにより、サブ基板12が管理しているデータ(本実施形態の場合はアドレス帳)を閲覧することができる。このようにアドレス帳のデータを閲覧するだけであれば、メイン基板11の機能を利用しないので、複合機10を省電力モードから通常モードへと復帰させる必要がない。従って、省電力モードを維持することができるので、消費電力を抑えることができる。
【0046】
ただし、省電力モードにおいて、サブ基板12の機能が全て利用可能である必要はなく、一部の機能が制限されていても良い。例えば本実施形態の複合機10では、省電力モードにおいて、サブ基板12が管理しているデータ(本実施形態の場合はアドレス帳のデータ)の更新は行えないようになっている。即ち、本実施形態の複合機10の省電力モードにおいて、サブ基板12が管理しているアドレス帳のデータに関しては、ネットワーク92を介した閲覧のみが可能である。
【0047】
ところで、省電力モードにおいては、メイン基板11への通電が遮断されるため、当該メイン基板11の揮発性メモリに記憶されていた内容は消失してしまう。そこで、メイン基板11が省電力モードから通常モードへと復帰する際には、失われたデータを、前記揮発性メモリに再度読み込む必要がある。
【0048】
本実施形態では、前述のように、加工済データ保存部30は揮発性メモリとして構成されている。即ち、省電力モードに移行する際に、加工済データ保存部30に記憶されていた加工済データの情報は消失してしまう。従って、省電力モードから通常モードへと復帰する際には、サブ基板12からメイン基板11に対して、加工済データの再送が必要となる。
【0049】
ところが、データ保存部21に保存されているデータの容量が大きい場合などは、データ加工部23によるデータの加工(本実施形態の場合はアドレス帳の並べ替え)に時間がかかってしまう。従って、省電力モードから通常モードへと復帰する際に上記加工を行うと、サブ基板12からメイン基板11にデータを送るまでに時間がかかってしまい、結果として、通常モードに復帰するまでに時間がかかるという問題があった。
【0050】
そこで本実施形態の複合機10は、以下のように構成されている。
【0051】
即ち、本実施形態の複合機10は、データ加工部23が加工した加工済データを保存する送信用データ保存部24を備えている。サブ基板12のデータ加工部23は、データ保存部21に記憶されているデータが更新されるたびに、当該更新されたデータを加工して、送信用データ保存部24に保存するように構成されている。
【0052】
以下、具体的に図2のフローチャートを参照して説明する。
【0053】
図2に示すのは、ユーザによって更新操作が行われた際の、サブ基板12の処理を示すフローチャートである。なお前述のように、本実施形態の複合機10では、省電力モード中において、サブ基板12が管理しているデータの更新は行うことができないように構成されている。従って、図2のフローチャートは、通常モードにおけるサブ基板12の処理を示している。
【0054】
ユーザが、サブ基板12が管理しているデータ(本実施形態の場合アドレス帳のデータ)を更新する操作を行うと、データ更新部22は、当該更新操作に応じて、データ保存部21に保存されているデータを更新する(ステップS101)。
【0055】
次に、データ加工部23は、更新されたデータ保存部21の内容を読み出し、当該読み出したデータに対して所定の加工(本実施形態の場合は、アドレス帳のデータの並べ替え)を行って、加工済データを生成する(ステップS102)。なお、このようにして生成された加工済データは、サブ基板12からメイン基板11へと送信するためのものである。従って、サブ基板12からみると、前記加工済データは、送信用データであるといえる。
【0056】
続いて、上記のようにして生成された加工済データ(送信用データ)が、送信用データ保存部24に保存される(ステップS103)。
【0057】
そしてデータ送信部25は、以上のようにして生成された加工済データ(送信用データ)を、メイン基板11に対して送信(ステップS104)して、処理を終了する。
【0058】
このように、本実施形態の複合機10では、サブ基板12が管理しているデータが更新されるたびに、当該データを加工して加工済データ(送信用データ)を生成し、送信用データ保存部24に記憶するように構成されている。従って、常に最新の加工済データが送信用データ保存部24に保存されているようにすることができる。
【0059】
また、本実施形態では上記のように、通常モードにおいて、サブ基板12が管理しているデータが更新されるたびに、加工済データ(送信用データ)をメイン基板11へと送信している。そして、メイン基板11は、受信した加工済データを、加工済データ保存部30に記憶する。従って、通常モードにおいては、メイン基板11の加工済データ保存部30には、常に最新の加工済データが保存されている。
【0060】
次に、複合機10が省電力モードに移行したときの動作について説明する。
【0061】
本実施形態の複合機10が省電力モードに移行することにより、メイン基板11への通電が遮断される結果、揮発性メモリである加工済データ保存部30の記憶内容は消失する。一方、サブ基板12への通電は維持されるので、データ保存部21、送信用データ保存部24等の記憶内容は維持される。なお、前述のように、省電力モードにおいては、サブ基板12が管理しているデータの更新を行うことができない。即ち、本実施形態では、省電力モード中に、データ保存部21及び送信用データ保存部24の記憶内容が新しくなることはない。
【0062】
続いて、省電力モードから通常モードへと復帰するときのサブ基板12の動作について、図3を参照して説明する。
【0063】
メイン基板11が省電力モードから通常モードへと復帰する際、サブ基板12のデータ送信部25は、送信用データ保存部24に記憶されている加工済データ(送信用データ)を、前記メイン基板11に対して送信する(ステップS201)。メイン基板11においては、サブ基板12から送信されてきた加工済データを、加工済データ保存部30に記憶する。これにより、省電力モードへと移行する際に消失してしまったメイン基板11の加工済データ保存部30の記憶内容を回復させることができ、通常モードへと復帰することができる。
【0064】
以上の構成によれば、省電力モードから通常モードへの復帰する際に、サブ基板12の送信用データ保存部24に保存していた加工済データを送信するだけであるから、サブ基板12のデータ加工部23においてデータの加工を行う必要がない。従って、省電力モードから通常モードへ復帰するまでの時間を短縮することができる。
【0065】
以上で説明したように、本実施形態の複合機10は、メイン基板11と、サブ基板12と、を備える。メイン基板11は、通電が制限又は遮断される省電力モードと、通電が制限されない通常モードと、を切り替え可能である。サブ基板12は、データ保存部21と、データ加工部23と、送信用データ保存部24と、データ送信部25と、を備える。データ保存部21は、所定のデータを保存する。データ加工部23は、データを加工する。送信用データ保存部24は、データ加工部23が加工したデータを保存する。データ送信部25は、メイン基板11が省電力モードから通常モードへと切り替わる際、送信用データ保存部24に保存されている加工済データをメイン基板11に送信する。
【0066】
このように、サブ基板12において、加工されたデータを予め保存しておくことにより、メイン基板11が通常モードに復帰する際には、サブ基板12は、保存しておいた加工済データをメイン基板11へと送信すれば良い。即ち、通常モードへの復帰の際に、データの加工を行う必要がないので、当該復帰にかかる時間を短縮することができる。
【0067】
また本実施形態の複合機10において、サブ基板12は、データを更新するデータ更新部22を備える。データ加工部23は、データが更新されるたびに当該データを加工する。
【0068】
このように、データが更新されるたびにデータを加工する構成とすることで、送信用データ保存部24には常に最新の加工済データを保持しておくことができる。
【0069】
また本実施形態の複合機10は、以下のように構成されている。即ち、メイン基板11は、サブ基板12から送信されてきた加工済データを記憶する加工済データ保存部30を備える。当該メイン基板11が省電力モードに移行した際に、加工済データ保存部30の記憶内容が消失する。
【0070】
即ち、メイン基板11において加工済データを記憶しておくことにより、それ以降、メイン基板11は、記憶した加工済データを参照すればよいので、サブ基板12におけるデータ加工の負担を低減することができる。また、加工済データ保存部30が揮発性メモリである場合、省電力モードに移行した際に加工済データ保存部30の記憶内容は消失してしまう。従って、通常モードに復帰する際にサブ基板12から加工済データを送信する必要があるが、本発明の構成によれば、当該加工済データを、サブ基板12からメイン基板11へと素早く送信できるので、通常モードへ素早く復帰することができる。
【0071】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と同一又は類似の構成については、要素名に同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施形態と上記第1実施形態との違いは、本実施形態の複合機10は、省電力モード中であっても、サブ基板12が管理しているデータの更新を行える点である。
【0073】
即ち、省電力モード中であっても、サブ基板12のネットワーク処理部20としての機能は有効であるから、ユーザは、ネットワーク92を介して、サブ基板12が管理しているデータ(本実施形態の場合はアドレス帳のデータ)を更新するように指示を送信することができる。また、サブ基板12は、メイン基板11とは独立してデータを管理しているので、メイン基板11への通電が遮断されている省電力モード中であっても、当該データ(アドレス帳のデータ)の更新処理を行うことができる。このように、省電力モード中にデータの更新が行えるように構成することができる。
【0074】
以下、図4のフローチャートを参照して説明する。このフローチャートは、ユーザによって更新操作が行われた際の、サブ基板12の処理を示している。なおこのフローチャートは、通常モード及び省電力モードの両方に対応している。
【0075】
ユーザが、サブ基板12が管理しているデータ(本実施形態の場合はアドレス帳のデータ)を更新する操作を行うと、データ更新部22は、当該更新操作に応じて、データ保存部21に保存されているデータを更新する(ステップS301)。なお前述のように、本実施形態では、通常モード及び省電力モードの何れにおいても前記更新操作を行うことが可能である。
【0076】
次に、データ加工部23は、更新されたデータ保存部21の内容を読み出し、当該読み出したデータに対して所定の加工(本実施形態の場合は、アドレス帳のデータの並べ替え)を行って、加工済データ(送信用データ)を生成する(ステップS302)。
【0077】
続いて、上記のようにして生成された加工済データ(送信用データ)が、送信用データ保存部24に保存される(ステップS303)。
【0078】
次に、サブ基板12は、メイン基板11が現在省電力モードか否かを判定する(ステップS304)。メイン基板11が省電力モードであった場合、当該メイン基板11には通電されていないので、サブ基板12からメイン基板11に対して加工済データを送信したとしても、メイン基板11は当該加工済データを受け付けることができない。従って、サブ基板12は、メイン基板11が省電力モードであった場合、加工済データの送信を行わずに処理を終了する。一方、メイン基板11が省電力モードでなかった場合(通常モードの場合)、サブ基板12のデータ送信部25は、加工済データ(送信用データ)を、メイン基板11に対して送信(ステップS305)して、処理を終了する。
【0079】
なお、メイン基板11が省電力モードから通常モードへと復帰する際のサブ基板12の処理は、上記第1実施形態と同様(図3のフローチャート)である。
【0080】
以上のように、本実施形態の複合機10においては、メイン基板11が省電力モードである場合であっても、サブ基板12のデータ更新部22は、前記データを更新することが可能である。
【0081】
即ち、本実施形態の複合機10は、サブ基板12がデータの管理を行っているので、メイン基板11が省電力モードであっても、当該データの更新処理を行うことができるのである。
【0082】
次に、上記第2実施形態の変形例について説明する。
【0083】
この変形例は、メイン基板11の加工済データ保存部30を、不揮発性のメモリにより構成したものである。このように構成した場合、省電力モードに移行してメイン基板11への通電が遮断されたとしても、加工済データ保存部30の記憶内容は消失しない。従って、例えば第1実施形態のように省電力モード中にデータの更新が行われない場合には、省電力モードから通常モードへと復帰する際に、サブ基板12からメイン基板11へと加工済データを送信する必要はなくなる。
【0084】
ところが、上記第2実施形態の場合、省電力モード中においても、サブ基板12においてデータの更新を行うことができるため、当該省電力モードの間に、メイン基板11の加工済データ保存部30に保存されている加工済データが古くなる場合がある。従って、本変形例のように加工済データ保存部30が不揮発性のメモリとして構成されている場合であっても、省電力モード中にサブ基板12においてデータの更新を行える場合は、通常モード復帰時に、最新の加工済データをサブ基板12からメイン基板11に送信して、加工済データ保存部30の記憶内容を最新のデータに更新する必要がある。
【0085】
この点、本発明の構成によれば、通常モードへの復帰時に、最新の加工済データを、サブ基板12からメイン基板11へと素早く送信できるので、通常モードへ素早く復帰することができる。
【0086】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0087】
メイン基板11及びサブ基板12は、ハードウェア及びソフトウェアからなる構成に限らず、その機能の一部又は全部を、専用のハードウェアによって実現しても良い。
【0088】
また上記実施形態では、第1処理部をメイン基板11、第2処理部をサブ基板12としたが、必ずしも第1処理部と第2処理部を別々の基板とする必要はない。
【0089】
省電力モードにおいて、第1処理部に対する通電が完全に遮断される構成に限らず、当該通電が一部制限されるだけの構成であっても良い。
【0090】
また、第2処理部は複数存在していても良い。この場合、それぞれの第2処理部で異なるデータを管理するように構成することができる。
【0091】
なお、複合機10のサブ基板12のデータ保存部21に保存されるアドレス帳のデータとしては、ファクシミリ番号の他にも、e−mailアドレス、電話番号などが含まれていても良い。また、サブ基板12のデータ保存部21に保存されるデータとしては、アドレス帳の他にも、ファクシミリ通信履歴、ファクシミリ又はe−mailの配信設定などが考えられる。その他、ネットワーク92上に共有フォルダが存在している場合には、当該共有フォルダのショートカット(共有フォルダのアドレスのデータ)を保存できるようにしても良い。
【0092】
この他、第2処理部のデータ保存部に保存されるデータは、上記の例に限らない。即ち、第2処理部がいかなるデータを管理している場合であっても本願発明の構成を適用することができる。当然、データ加工部によるデータ加工処理の内容も、上記実施形態のようなデータの並べ替え処理に限定されることはなく、いかなるデータの加工処理であっても本願発明の本質には影響がない。
【0093】
また上記実施形態では、メイン基板11とサブ基板12の機能を具体的に説明したが、これに限定されることはない。そもそも、本願発明の構成は、コピーファクシミリ複合機に限定されることなく、通常モードと省電力モードを切り替え可能な電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
10 複合機(電子機器)
11 メイン基板(第1処理部)
12 サブ基板(第2処理部)
21 データ保存部
22 データ更新部
23 データ加工部
24 送信用データ保存部
25 データ送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電が制限又は遮断される省電力モードと、通電が制限されない通常モードと、を切り替え可能な第1処理部、
及び、
所定のデータを保存するデータ保存部と、
前記データを加工するデータ加工部と、
前記データ加工部が加工したデータを保存する送信用データ保存部と、
前記第1処理部が前記省電力モードから前記通常モードへと切り替わる際、前記送信用データ保存部に保存されている加工済データを前記第1処理部に送信するデータ送信部と、を備える第2処理部、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第2処理部は、前記データを更新するデータ更新部を備え、
前記データ加工部は、前記データが更新されるたびに当該データを加工することを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記第1処理部が前記省電力モードである場合であっても、前記データ更新部は、前記データを更新することが可能であることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の電子機器であって、
前記第1処理部は、前記第2処理部から送信されてきた加工済データを記憶する加工済データ保存部を備え、
当該第1処理部が前記省電力モードに移行した際に、前記加工済データ保存部の記憶内容が消失することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記第1処理部は、前記第2処理部から送信されてきた加工済データを記憶する加工済データ保存部を備え、
当該第1処理部が前記省電力モードに移行した場合であっても、前記加工済データ保存部の記憶内容は保持されることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−42467(P2013−42467A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179994(P2011−179994)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】