説明

電子線処理装置

【課題】切れた長尺被処理物をつなぐ修理及び電子線照射装置内の点検を容易にする電子線照射装置を提供する。
【解決手段】電子線照射対象の長尺被処理物Sを巻き掛けて走行させるキャプスタン装置3に長尺被処理物Sを新たに巻き掛け走行させる電子線照射装置2において、キャプスタン装置3及び電子ビームキャッチャー6を電子線照射室1に対して出し入れすることができ、電子ビームキャッチャー6は電子線照射室1から引き出されたキャプスタン装置3に対して出し入れ可能とすることから、電子線照射装置の修理及び点検作業が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子線による処理装置、特に、例えば合成樹脂等で被覆した電線のような長尺被処理物をキャプスタンプーリ群に巻き掛けて走行させつつ該長尺被処理物に電子線を照射して目的とする処理を施す電子線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線処理装置は、電線被覆材料、各種チューブ(電線ジョイント部のカバー等に用いるチューブ等)などの高分子材料を電子線照射により架橋させて該被覆材料やチューブ類等の特性、例えば耐熱性、熱収縮性などを向上させることや、塗膜等のキュアリング、医療品の殺菌等に使用されている。
【0003】
これら被照射物のうちチューブ類や、被覆材料で被覆された電線などの長尺被処理物に電子線を照射する場合、それらの表面各部にできるだけ均一に電子線を照射するために、例えば特開2003−157736号公報に記載されているような、キャプスタンと称されている巻き掛け装置が広く採用されている。
【0004】
また、キャプスタン装置における長尺被処理物の走行路を間にして電子線照射装置に臨む電子線吸収用の電子ビームキャッチャーも採用されている。
【0005】
すなわち、被覆電線のような長尺被処理物に電子線処理を施す電子線処理装置は、一般的には、電子線照射室と、前記電子線照射室に設けられた電子線照射装置と、前記電子線照射装置の電子線照射窓に臨むように配置されて用いられるキャプスタン装置及び電子ビームキャッチャーとを含んでいる。
【0006】
前記キャプスタン装置は、一般的には、第1及び第2のプーリ群を含んでおり、電子線照射対象の長尺被処理物を該第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させることができ、電子ビームキャッチャーは該第1及び第2のプーリ群間の長尺被処理物走行路を間にして前記電子線照射窓に臨むように配置される。
【0007】
このような電子線処理装置には、電子線照射室が大きく形成されていて、キャプスタン装置のプーリ群に長尺被処理物を新たに巻き掛けたり、途中で切れた長尺被処理物を繋ぐ等の作業を行うときには、作業者が電子線照射室内へ入って、これら作業を行えるものががある。
【0008】
一方、電子線照射室が電子線照射装置を設けるとともにキャプスタン装置及び電子ビームキャッチャー程度の限られた機器類を設置できる程度の大きさにしか形成されておらず、キャプスタン装置のプーリ群に長尺被処理物を新たに巻き掛けたり、途中で切れた長尺被処理物を繋ぐ等の作業を行うときには、キャプスタン装置を電子線照射室外へ引き出してこれら作業を行うようにしたものもある。
【0009】
前者の電子線処理装置では、電子線照射装置について例えば電子線照射窓の点検、清掃作業を行うときに、電子ビームキャッチャーが長尺被処理物の電子線処理時と同じ位置にあるのでは、邪魔になって作業が困難になる。
また、キャプスタン装置に長尺被処理物を新たに巻き掛けたり、途中で切れた長尺被処理物を繋ぐ等の作業を行うときにも電子ビームキャッチャーが邪魔になり、これら作業を行い難い。
【0010】
そこで前者タイプの電子線処理装置については、例えば、実開平4−131815号公報に記載されているように、電子線照射処理のための長尺被処理物(同公報では「ケーブル」)の配置位置は電子線照射室内の定位置であるが、電子ビームキャッチャーについては、電子線照射室内で、電子線照射窓やプーリ群から退避した位置へ回動できるようにしたものがある。
【0011】
キャプスタン装置を電子線照射室外へ引き出すことができる後者タイプの電子線処理装置でも、キャプスタン装置を電子線照射室外へ引き出すことで、電子線照射室内の電子線照射窓等についての点検、清掃、部品交換等は行い易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−157736号公報
【特許文献2】実開平4−131815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、キャプスタン装置を電子線照射室外へ引き出すことができる後者タイプの電子線処理装置では、電子ビームキャッチャーを電子線照射室内に残したままキャプスタン装置だけを室外へ引き出したのでは、残された電子ビームキャッチャーが邪魔になって電子線照射室内の電子線照射窓等についての点検、清掃、部品交換等を行い難い。
【0014】
かといって、電子ビームキャッチャーをキャプスタン装置に組み合わせて、キャプスタン装置とともに室外へ引き出せるようにするだけでは、引き出したキャプスタン装置に長尺被処理物を新たに巻き掛けたり、途中で切れた長尺被処理物を繋ぐ等の作業を行うとき、電子ビームキャッチャーが邪魔になり、これら作業を行い難い。
【0015】
そこで本発明は、電子線照射室と、前記電子線照射室に設けられた電子線照射装置と、前記電子線照射装置の電子線照射窓に臨むように配置されて用いられるキャプスタン装置及び電子ビームキャッチャーとを含んでおり、前記キャプスタン装置は第1及び第2のプーリ群を含んでおり、電子線照射対象の長尺被処理物を該第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させることができ、前記電子ビームキャッチャーは前記第1及び第2のプーリ群間の長尺被処理物走行路を間にして前記電子線照射窓に臨むように配置されるものであり、前記電子線照射室内で、前記キャプスタン装置の第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させた電子線照射対象の長尺被処理物に前記電子線照射装置から電子線を照射して目的とする処理を施す電子線処理装置であって、キャプスタン装置に長尺被処理物を巻き掛ける作業、キャプスタン装置に巻き掛けられた長尺被処理物が途中で切れたときの繋ぎ作業等のキャプスタン装置及び長尺被処理物に関係する作業並びに電子線照射装置の点検、清掃、修理、部品交換等の電子線照射装置に関係する作業のいずれも行い易い電子線処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は前記課題を解決するため、
電子線照射室と、前記電子線照射室に設けられた電子線照射装置と、前記電子線照射装置の電子線照射窓に臨むように配置されて用いられるキャプスタン装置及び電子ビームキャッチャーとを含んでおり、前記キャプスタン装置は第1及び第2のプーリ群を含んでおり、電子線照射対象の長尺被処理物を該第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させることができ、前記電子ビームキャッチャーは前記第1及び第2のプーリ群間の長尺被処理物走行路を間にして前記電子線照射窓に臨むように配置されるものであり、前記電子線照射室内で、前記キャプスタン装置の第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させた電子線照射対象の長尺被処理物に前記電子線照射装置から電子線を照射して目的とする処理を施す電子線処理装置であり、前記キャプスタン装置及び前記電子ビームキャッチャーは前記電子線照射室に対して出し入れ可能であり、前記電子ビームキャッチャーは前記電子線照射室から引き出された前記キャプスタン装置に対して出し入れ可能である電子線照射装置を提供する。
【0017】
本発明に係る電子線処理装置によると、前記キャプスタン装置及び前記電子ビームキャッチャーは前記電子線照射室に対して出し入れ可能であるから、それらを電子線照射室から引き出すことで電子線照射室内にできる空間を利用して、電子線照射室に設けられている電子線照射装置の点検、清掃、修理、部品交換等の電子線照射装置に関係する作業を容易に行える。
【0018】
また、キャプスタン装置及び電子ビームキャチャーを共に電子線照射室外へ引き出し、さらに電子ビームキャッチャーをキャプスタン装置から引き出すことができ、そうすることで、電子ビームキャチャーに邪魔されることなく、キャプスタン装置に長尺被処理物を巻き掛ける作業、キャプスタン装置に巻き掛けられた長尺被処理物が途中で切れたときの繋ぎ作業等のキャプスタン装置及び長尺被処理物に関係する作業を容易に、作業効率よく行える。また、電子ビームキャッチャーの点検等も容易に行える。
【0019】
本発明に係る電子線処理装置においては、前記キャプスタン装置における前記第1及び第2のプーリ群はそれぞれの回転軸の両端部を軸受け装置を介して該キャプスタン装置の台フレームに回転可能に支持することができる。その場合、前記第1、第2のプーリ群の回転軸のそれぞれの一端部を支持する軸受け装置は、該回転軸を該回転軸他端部を支持する軸受け装置に片持ち支持させた状態で分解組み立て可能としてもよい。
【0020】
このように片側の軸受け装置を分解組み立て可能とすることで、分解して、軸受け装置のあるべき箇所を空間として、そこを長尺被処理物が通過可能として、それだけ、キャプスタン装置の第1、第2のプーリ群に対する長尺被処理物の巻き掛け作業等をより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によると、電子線照射室と、前記電子線照射室に設けられた電子線照射装置と、前記電子線照射装置の電子線照射窓に臨むように配置されて用いられるキャプスタン装置及び電子ビームキャッチャーとを含んでおり、前記キャプスタン装置は第1及び第2のプーリ群を含んでおり、電子線照射対象の長尺被処理物を該第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させることができ、前記電子ビームキャッチャーは前記第1及び第2のプーリ群間の長尺被処理物走行路を間にして前記電子線照射窓に臨むように配置されるものであり、前記電子線照射室内で、前記キャプスタン装置の第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させた電子線照射対象の長尺被処理物に前記電子線照射装置から電子線を照射して目的とする処理を施す電子線処理装置であって、キャプスタン装置に長尺被処理物を巻き掛ける作業、キャプスタン装置に巻き掛けられた長尺被処理物が途中で切れたときの繋ぎ作業等のキャプスタン装置及び長尺被処理物に関係する作業並びに電子線照射装置の点検、清掃、修理、部品交換等の電子線照射装置に関係する作業のいずれも行い易い電子線処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る電子線処理装置の1例の正面図である。
【図2】キャプスタン装置及び電子ビームキャッチャーの平面図である。
【図3】図3(A)は冷却装置の平面図であり、図3(B)は冷却装置における上下樋とそれを通過する長尺被処理物の一部の斜視図である。
【図4】キャプスタン装置及び電子ビームキャッチャーを電子線照射室から引き出し、さらにキャプスタン装置から電子ビームキャッチャーを引き出した状態の側面図である。
【図5】第1、第2のプーリ群の手前側軸受け装置を分解し、長尺被処理物を巻き掛けたのち再び組み立てる様子を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明に係る電子線処理装置の1例を示している。図1の電子線処理装置10は電子線照射室1と、電子線照射室1の上部に設けられた電子線照射装置2と、電子線照射装置2の電子線照射窓21に臨むように、その下方に配置されて用いられるキャプスタン装置3及び電子ビームキャッチャー6とを含んでいる。
【0024】
電子線照射室1は鎖線で簡略化して示しているが、電子線漏洩防止壁体で形成されており、図1に示す正面側の開口11を図示省略の電子線漏洩防止扉で開閉できる。
電子線照射装置2は、それ自体既に知られているものである。
【0025】
キャプスタン装置3は台フレーム30にキャプスタンプーリ群を搭載したものである。 キャプスタンプーリ群は図1、図2において右側の第1プーリ群31及び左側の第2プーリ群32を含んでいる。
【0026】
第1プーリ群31は、共通の回転軸310上に若干の間隔をあけて支持された手前側プーリ群311とその奥側のプーリ群312とからなっている。プーリ群311、312のそれぞれは、複数のプーリを順次隣り合わせて軸310上に配置した如き形態のもので、全体が一体的に形成されたドラム型のものである。
【0027】
第2プーリ群32は、共通の回転軸320上に若干の間隔をあけて支持された手前側プーリ群321とその奥側のプーリ群322とからなっている。プーリ群321、322のそれぞれも、複数のプーリを順次隣り合わせて軸320上に配置した如き形態のもので、全体が一体的に形成されたドラム型のものである。
【0028】
なお、上記の各プーリ群は、それぞれが独立形成されているプーリを軸上に複数個、順次隣り合わせて配列した形態のもの等でもよい。
【0029】
第1、第2のプーリ群31、32の軸310、320のそれぞれは、図1、図2において手前側端部が手前側の軸受け装置41にて台フレーム30に回転可能に支持されているとともに奥側端部が奥側軸受け装置42にて台フレーム30に回転可能に支持されている。
【0030】
第1、第2のプーリ群31、32の軸310、320を支持している手前側の各軸受け装置41は、図1、図2のほか後述する図5の下側部分にも示すように、軸310(320)の手前側端部に嵌められた軸受け(ベアリング)411を上下部材412、413で上下から挟着して台フレーム30に固定するものである。さらに言えば、下部材413を台フレーム30にボルトb1で取り外し可能に固定し、この下部材413に軸受け411の下半部を嵌め、その軸受けの上半部に上部材412を嵌め被せて該上部材412を下部材413にボルトb2で取り外し可能に固定するものである。
【0031】
第1、第2のプーリ群31、32の軸310、320の奥側端部を回転可能に支持している奥側の各軸受け装置42も手前側軸受け装置41と実質上同構造のものである。
【0032】
第1プーリ群31の軸310の奥側の端部は上記のとおり軸受け装置42で回転可能に支持されているのであるが、さらに、該軸端部はチエーン伝動装置C1を介して電動モータM1に連結されており、モータM1にてチエーン伝動装置C1を介して軸310の奥側の端部を回転駆動することができ、それにより第1プーリ群31を図1において時計方向に回転駆動することができる。
【0033】
第2プーリ群32の軸320の奥側の端部も上記のとおり軸受け装置42で回転可能に支持されているのであるが、さらに、該軸端部はチエーン伝動装置C2を介して電動モータM2に連結されており、モータM2にてチエーン伝動装置C2を介して軸320の奥側の端部を回転駆動することができ、それにより第2プーリ群32を図1において反時計方向に第1プーリ群31と同周速で回転駆動することができる。
なお、第1、第2のプーリ群はいずれかをモータ駆動可能とし、他方を伝動機構を介して所定方向に従動するようにしてもよい。
【0034】
キャプスタン装置3によると、電子線照射処理対象である、例えば合成樹脂被覆電線のような長尺被処理物であって、図示省略の繰出しリールから繰り出される長尺被処理物Sを第1プーリ群31の奥側のプーリ群312の奥側のプーリ相当部分の下面に掛け、そこから第2プーリ群32の奥側のプーリ群322の奥側のプーリ相当部分の上面から下面に巻き掛け、さらに、第1プーリ群31へ戻して奥側プーリ群312の最初に使用したプーリ相当部分から2番目のプーリ相当部分に上面から下面に巻き掛けるというようにして、長尺被処理物Sを第1プーリ群31の奥側プーリ群312と第2プーリ群32の奥側プーリ群322との間に8の字状に順次巻き掛け、さらに、第1プーリ群31の手前側プーリ群311と第2プーリ群32の手前側プーリ群321との間に8の字状に順次巻き掛け、最終的には第1プーリ群31の手前側プーリ群311の手前側のプーリ相当部分の上面を経て図示省略の巻き取りリールに送りだすことができる。
【0035】
そして、モータM1、M2にて第1、第2のプーリ群31、32をそれぞれ回転駆動することで、第1、第2のプーリ群31、32間に長尺被処理物Sを走行させることができる。
【0036】
このキャプスタン装置3では、第1、第2のプーリ群31、32間に巻き掛けられて走行する長尺被処理物Sは、途中で、プーリ群31、32の下方で台フレーム30に設けた冷却装置5に通過せしめられるようになっている。冷却装置5は本例では水冷による冷却装置である。
【0037】
冷却装置5は、第1、第2のプーリ群31、32の奥側プーリ群312、322間に巻き掛けられ、次いで手前側プーリ群311、321間に巻き掛けられる長尺被処理物Sを手前側プーリ群311、321に巻き掛けるに前に、台フレーム30の天板301に形成した被処理物通し孔301aに上から下へ通して冷却するものである。さらに言えば、図3にも示すように、被処理物通し孔301aに上から下へ通された長尺被処理物Sを回転自在の左側プーリ群51と回転自在の右側プーリ群52とに順次数ターン巻き掛け、且つ、その走行において長尺被処理物Sを図3(B)に示すように上段樋53及び下段樋54にはった冷却水中に通過させるものである。
【0038】
冷却装置5を通過した長尺被処理物Sは台フレーム30の天板301に形成されたもう一つの通し孔301bに下から上へ通され、台フレーム30上に設けられた案内プーリ33の上面に掛けまわされて、第1プーリ群31の手前側プーリ群311の一つのプーリ相当部分の下面に巻き掛けられ、以後、前記のとおり第1、第2のプーリ群31、32の手前側のプーリ群311、321間に巻き掛けられ、最終的に巻取りリールに巻き取られる。
【0039】
このキャプスタン装置3は、図4等に示すように、台フレーム30に設けた車輪3wによりレールR1上を移動することができる。レールR1は電子線照射室1の内外にわたって延設されており、従って、キャプスタン装置3は電子線照射室1に対し出し入れ可能である。
【0040】
キャプスタン装置3の第1、第2のプーリ群31、32の間には電子ビームキャッチャー6が配置されている。
電子ビームキャッチャー6は、プーリ群31、32間に巻き掛けられ、走行する長尺被処理物Sに照射された電子線のうち、長尺被処理物の走行路を通過してくるものを吸収するためのものであり、本例では水冷可能に形成されている。
【0041】
さらに説明すると、電子ビームキャッチャー6は、図1、図2に示すように、正面側からみて右側のパイプ群61と左側のパイプ群62とからなっている。パイプ群61、62のそれぞれは、ステンレススチール製パイプを並行に並べた板状のものであり、左右のパイプ群61、62は正面側からみると、図1に示すように屋根状に配置されている。
【0042】
冷却水は図示省略のポンプで送られ、図2に示すように冷却水入口P1から供給され、それに続くパイプでパイプ群62の下を通って奥側パイプp’からパイプ群62に入り、各パイプをジクザグ状に流れながら、ジョイントJPへ至り、そこから右側のパイプ群61へ入り、各パイプをジクザグ状に流れながら奥側のパイプp”及び右側のパイプ群61下のパイプを経て出口P2から流出し、図示省略の廃棄タンクへ放出されるか、或いは循環使用される。
【0043】
左右のパイプ群61、62は正面側からみると、図1に示すように屋根状に配置されている。そうすることで、第1、第2のプーリ群31、32間に8の字状に巻き掛けられ、走行する長尺被処理物Sに接近し、それにより、電子ビームをできるだけ空気に触れさせないでオゾン発生を抑制するとともにエネルギーロスも抑制している。
【0044】
電子ビームキャッチャー6は図1、図4に示すように、車輪6wを有しているとともにキャッチャー6の奥側の部分から、且つ、キャプスタン装置3の台フレーム30よりさらに奥側で、下方へ延びる車輪支持脚60を有しており、その支持脚下端部にも車輪6w’を有している。
【0045】
車輪6wは台フレーム30の天板301に設けたレールR2に乗っており、従って、電子ビームキャッチャー6は車輪6wを介して台フレーム30上に搭載されているとともにレールR2に沿って移動できる。また、車輪6w’は前記レールR1と並行に設けたレールR3に沿って移動できる。
【0046】
かくして、電子ビームキャッチャー6は、図4に示すように、キャプスタン装置3とともに電子線照射室1に対して出し入れ可能であり、電子線照射室1外へ引き出したキャプスタン装置3に対しても出し入れ可能である。図4は電子線照射室1外へ引き出したキャプスタン装置3から電子ビームキャッチャー6を引き出した状態を示している。
【0047】
なお、キャッチャー6が台フレーム30から脱落しないように、装置3からのキャッチャー6の引き出し量はストッパSTで制限してある。ストッパSTは台フレーム30上の、車輪6wの移動の邪魔にならない部位に設けてあり、キャッチャー6に設けた図示省略の係合部材がストッパSTに当接することで装置3からのキャッチャー6の引き出し量が制限される。
【0048】
以上説明した電子線処理装置10によると、電子ビームキャッチャー6をキャプスタン装置3に入れた状態で、これら両者を電子線照射室1内に配置し、且つ、第1、第2のプーリ群31、32間に、長尺被処理物Sを巻き掛け、且つ、途中で冷却装置5に通過させつつ走行させることで、電子線照射装置2から電子線を照射して、目的とする電子線処理(例えば、電線被覆樹脂の架橋処理等)を行える。
【0049】
キャプスタン装置3及び電子ビームキャッチャー6は電子線照射室1に対して出し入れ可能であるから、それらを電子線照射室1から引き出すことで、電子線照射室1内に開いた空間を利用して、電子線照射室1に設けられている電子線照射装置2の点検、清掃、修理、部品交換等の電子線照射装置に関係する作業を容易に行える。
【0050】
また、キャプスタン装置3及び電子ビームキャチャー6を共に電子線照射室1外へ引き出し、さらに電子ビームキャッチャー6をキャプスタン装置3から引き出すことができ、そうすることで、電子ビームキャチャー6に邪魔されることなく、キャプスタン装置3に長尺被処理物Sを巻き掛ける作業、キャプスタン装置3に巻き掛けられた長尺被処理物Sが途中で切れたときの繋ぎ作業等のキャプスタン装置3及び長尺被処理物Sに関係する作業を容易に、作業効率よく行える。また、電子ビームキャッチャー6の点検等も容易に行える。
【0051】
また、この作業にあたっては、図6を参照して説明したように、第1及び第2のプーリ群31、32の軸310、320を支持している手前側の軸受け装置41、41を、奥側の軸受け装置42、42に軸310、320を片持ち支持させた状態で分解して、手前側から第1及び第2のプーリ群31、32の下方域へのアクセスを可能とでき、それにより、キャプスタン装置3に長尺被処理物Sを巻き掛ける作業、キャプスタン装置3に巻き掛けられた長尺被処理物Sが途中で切れたときの繋ぎ作業等のキャプスタン装置3及び長尺被処理物Sに関係する作業を一層容易に、作業効率よく行える。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、合成樹脂等で被覆した電線のような長尺被処理物をキャプスタンプーリ群に巻き掛けて走行させつつ該長尺被処理物に電子線を照射することに利用できる。
【符号の説明】
【0053】
10 電子線処理装置
1 電子線照射室
11 室1の正面側開口
2 電子線照射装置
21 電子線照射窓
3 キャプスタン装置
30 台フレーム
301 天板
301a、301b 孔
31 第1プーリ群
310 回転軸
311 手前側プーリ群
312 奥側プーリ群
32 第2プーリ群
320 回転軸
321 手前側プーリ群
322 奥側プーリ群
41、42 軸受け装置
411 軸受け
412 上部材
413 下部材
b1、b2 ボルト
C1、C2 チエーン伝動装置
M1、M2 モータ
3w、6w、6w’ 車輪
R1、R2、R3 レール
5 冷却装置
51、52 プーリ群
53、54 樋
6 電子ビームキャッチャー
61、62 パイプ群
P1 冷却水入口
P2 冷却水出口
S 長尺被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線照射室と、前記電子線照射室に設けられた電子線照射装置と、前記電子線照射装置の電子線照射窓に臨むように配置されて用いられるキャプスタン装置及び電子ビームキャッチャーとを含んでおり、前記キャプスタン装置は第1及び第2のプーリ群を含んでおり、電子線照射対象の長尺被処理物を該第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させることができ、前記電子ビームキャッチャーは前記第1及び第2のプーリ群間の長尺被処理物走行路を間にして前記電子線照射窓に臨むように配置されるものであり、前記電子線照射室内で、前記キャプスタン装置の第1及び第2のプーリ群に巻き掛け走行させた電子線照射対象の長尺被処理物に前記電子線照射装置から電子線を照射して目的とする処理を施す電子線処理装置であり、前記キャプスタン装置及び前記電子ビームキャッチャーは前記電子線照射室に対して出し入れ可能であり、前記電子ビームキャッチャーは前記電子線照射室から引き出された前記キャプスタン装置に対して出し入れ可能であることを特徴とする電子線照射装置。
【請求項2】
前記キャプスタン装置における前記第1及び第2のプーリ群はそれぞれの回転軸の両端部が軸受け装置を介して該キャプスタン装置の台フレームに回転可能に支持されており、前記第1、第2のプーリ群の回転軸のそれぞれの一端部を支持する軸受け装置は、該回転軸を該回転軸他端部を支持する軸受け装置に片持ち支持させた状態で分解組み立て可能である請求項1記載の電子線処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−78261(P2012−78261A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225263(P2010−225263)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(503237806)株式会社NHVコーポレーション (37)
【Fターム(参考)】