説明

電子部品のリペア方法、リペア装置および配線板ユニット

【課題】リペア装置において、配線基板の一方の面を予備加熱するときに弱耐熱部品までも一緒に加熱し、その品質を劣化させてしまうことを防止する。
【解決手段】製造工程において不良電子部品となったときにリペアされることが予想される特定電子部品(3a)近傍の配線基板(2)の内部に予め被電磁誘導材(12)を埋め込んでおく。当該特定電子部品(3a)が不良であってリペア部品となるとき、その近傍の被電磁誘導部材に電磁波(E)を照射する電磁コイル(11)を設け、その電磁波による当該被電磁誘導部材(12)の発熱により、上記リペア部品を加熱し、配線基板(2)より取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搭載した配線基板より、その電子部品を取り外すためのリペア方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板に複数の電子部品を搭載してなる配線板ユニットにおける配線基板上の電子部品実装密度は、近年、益々高密度化する一方、その電子部品もまたその高密度化に対応すべく、年々進化を続けている。その進化の1つとして、例えばBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)等の大型電子部品が広く使用されるようになっている。かかる大型電子部品は、多ピン部品であり、その多くは部品下面(底面)に多数の端子群を収容する構造を有し、小スペース化に有効であることから、携帯電話やノートPC等に多く使われ始めている。
【0003】
ところで、上記BGA等の大型電子部品は、その内部に、CPU等の回路モジュールを高密度で収容していることから非常に高価なものとなっている。このため、例えば配線板ユニットの実装工程において、上記大型電子部品の配線基板との接続部分に不具合が発見されたような場合、その配線板ユニットを廃棄するのではなく、一旦当該部品を配線基板から取り外し所定の改修後に再度半田接続をし直す、ということが行われている。
【0004】
このように配線基板から電子部品を取外すことを一般に「リペア」と称している。かかる取外し対象の電子部品が、上記の大型電子部品(BGA等)であると、大型かつ多ピンであることからその熱容量が大きくリペアは容易ではない。さらにまた、近年、上記の半田として鉛フリー半田の使用が一般的になっており、従来の鉛入り半田に比べると、リペアは容易でなくなってきている。
【0005】
このように従前よりもリペアが難しい状況の下で、リペア専用のリワークマシンを用いてリペアを行うことが一般的になっている。これがリペア装置である。
【0006】
なお後述の本発明に関連する公知技術としては、下記の〔特許文献1〕〜〔特許文献3〕がある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−135895号公報
【特許文献2】特許第3470953号公報
【特許文献3】特開平9−283915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のリペア装置は後に図15を参照しながら詳しく説明するが、その構成は、配線基板の一方の面(表)上に実装されたリペア対象の電子部品(以下、リペア部品とも称す)の半田接合部を、その配線基板の他方の面(裏)側からボトムヒータで予備加熱する予備加熱装置と、予備加熱されたリペア部品を、上記配線基板の一方の面側から、集中的にトップヒータで加熱する本加熱装置とからなる。このトップヒータによる本加熱により、リペア部品の半田接合部における半田が溶融し、該リペア部品を配線基板から取り外すことができる。
【0009】
このような従来のリペア装置においては、後述の図15で説明するように、2つの問題がある。第1の問題は、リペア部品の搭載面(一方の面)に対し反対側の面(他方の面)に搭載された部品の品質を、上記ボトムヒータによる高温の加熱によって劣化させてしまう、という問題である。
【0010】
また第2の問題は、上記のボトムヒータによる高温の加熱によって配線基板(例えばガラス・エポキシよりなる)のガラス転移温度(Tg)に達し、該配線基板全体に「反り」が生じてしまう、という問題である。これは半田接合部の接合信頼度を低下させる。
【0011】
したがって本発明は、上記問題点に鑑み、上述した電子部品の品質劣化(第1の問題点)を生じさせることのないリペア方法、リペア装置、配線板ユニットおよび配線板ユニット製造方法を提供することを第1の目的とする。
【0012】
また上記の第1の目的に加え、上記の配線基板の反り(第2の問題点)を抑えることのできる配線板ユニットを提供することを第2の目的とする。
【0013】
なお上記の〔特許文献1〕〜〔特許文献3〕は、いずれも、配線基板に電子部品を「半田接合」するための技術について開示しており、本発明のように、配線基板から半田接合済みの電子部品を、リペア部品として「取り外す」ための技術ではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書で開示するリペア方法は、リペア部品近傍の配線基板内部に予め被電磁誘導材を埋め込んでおき、リペア時に、電磁コイルからの電磁波を照射することにより該被電磁誘導材を発熱させ、上記リペア部品を加熱する。
【0015】
本明細書で開示するリペア装置は、上部リペア部品近傍の配線基板内部に埋め込まれた被電磁誘導材に電磁波を照射してこれを発熱させる電磁コイルと、その電磁コイルに所定の高周波電流を通電する加熱制御部とを備える。
【0016】
また本明細書で開示する配線板ユニットは、リペア部品近傍の配線基板内部に被電磁誘導材を有する。
【0017】
さらにまた、本明細書で開示する配線板ユニット製造方法においては、配線基板上にリペア部品を含む複数の電子部品を実装する工程と、実装後の各電子部品に対して外観上ならびに電気特性上の検査を行う工程と、その検査で異常のあるリペア部品についてこれを上記配線基板から取り外すリペア工程とからなり、ここに該リペア工程における該リペア部品に対する加熱は、該リペア部品近傍の上記配線基板内部に埋め込まれた被電磁誘導材に、電磁コイルからの電磁波を照射してこれを発熱させることにより行うようにする。
【発明の効果】
【0018】
本明細書において開示するリペア方法によれば、配線基板の一方の面(表)に半田固定されたリペア部品を、その他方の面(裏)側から予備加熱する際に、従来のようにその他方の面(裏)側全面をかなりの高温に晒すことはない。従来は、その予備加熱をボトムヒータを用いて行っていたので、裏面側の全面を高温に晒すことになった。
【0019】
一方、開示したリペア方法によれば、リペア部品に向って電磁波を照射することを熱源とするから上記のように裏面側の全面を高温に晒すことはあり得ない。このとき局所的に高温に加熱されるのは、被電磁誘導材近傍に配置されたリペア部品のみである。
【0020】
したがって従来のように、上記の裏面側に実装された弱耐熱部品(例えば電解コンデンサ等)の品質を劣化させることはない。
【0021】
さらにまた、本明細書で開示するリペア方法によれば、従来のように、予備加熱時に上記の裏面側を全面に亘り高温に晒すといったことがないので、既述した配線基板の「反り」を生じさせることがない。被電磁誘導材での局所的な発熱のみだからである。この場合、後述するように、その被電磁誘導材の周囲に熱拡散部材を一体に付加すれば、発熱部分と非発熱部分との間の急激な温度変化が緩和され、上記の「反り」を一層効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
ここに開示するリペア装置による効果をより明確にするために、まず、従来のリペア装置について説明しておく。
【0023】
図15は従来のリペア装置1を示す図である。本図において、配線基板2の一方の面(表)には、複数の電子部品3a,3b(簡略のため3つのみ示す)が搭載される。このうち3aは、リペアの対象となる大型電子部品(リペア部品)の一例である前述のBGAを示す。一方、3bは通常の一般的なリペアの対象とならない電子部品(IC)を示す。
【0024】
配線基板2の他方の面(裏)には、複数の電子部品3c,3d(簡略のため7つを示す)が搭載される。このうち3cは、特に弱耐熱部品でかつリペアの対象とならない部品の一例である電解コンデンサを示し、3dは、通常の一般的な部品でかつリペアの対象とならない部品の一例である抵抗を示す。以上の部材2,3a〜3dにより、配線板ユニット4が形成される。この配線板ユニット4は、支持台5により略水平に支持され固定される。
【0025】
配線基板2の他方の側(下側)にはボトムヒータ6が配置され、その一方の側(上側)にはトップヒータ7が配置される。トップヒータ7にはリペア部品3aを集中的に加熱するための専用カバー8が取り付けられる。
【0026】
上記ボトムヒータ6およびトップヒータ7のパワー制御を行うのは、加熱制御部9である。
【0027】
さらに詳細に説明すると、予備加熱のためのボトムヒータ6と本加熱のためのトップヒータ7とを備えたいわゆるリワークマシンの中に、配線板ユニット4を固定し、先ずはボトムヒータ6でリペア部品3aの反対面から、半田接合部Sを70〜100℃程度の温度で予備加熱する。この予備加熱は、本加熱時に熱が基板2から逃げていかないように、短時間で確実に加熱させるための必要な熱源となっている。
【0028】
また、ボトムヒータ6は、様々な配線板ユニット4に対し、様々な位置に実装された部品を共通に加熱できるようにするために、配線板ユニット4全域が加熱できる程度の大きさになっている。
【0029】
ボトムヒータ6により予備加熱をした後、その加熱を続けながら次に、トップヒータ7を用いてリペア部品3aの搭載面上から、半田接合部Sを230〜240℃の半田溶融温度まで本加熱し、部品を取り外している。
【0030】
本加熱は、リペア対象部品3aの半田を溶融させるための熱源であり、より集中的に該部品3aを加熱するために、パッケージ別に専用カバー8を取り付けて本加熱を行う。
【0031】
リペア部品3aの半田接合部Sを予備加熱する際、リペア部品3aの反対側からボトムヒータ6によって徐々に加熱しており、半田接合部Sを70〜100℃まで加熱するには、ボトムヒータ6自身を300℃近いパワーで加熱する必要がある。
【0032】
またその際、リペア部品3aの搭載面の反対側における基板表面や搭載部品3c,3dを200℃近い温度に晒すことになり、特に弱耐熱部品の品質を犠牲にしてしまうということがあった。
【0033】
さらにTg温度を超える熱で配線基板2の全域を加熱することになるため、配線基板全体が反ってくるという問題があり、部品接合部Sの信頼性を損なう恐れがあった。
【0034】
以上のことから部品リペアの際、対象部品3a以外の部品3c,3dまで熱が伝わってしまい、その熱による部品不良、基板反りによる接合信頼性の低下等の問題を招く恐れがあった。
【0035】
さらにまた、鉛フリー半田が一般化している中、半田溶融に必要な加熱温度は一層高くなる傾向にあるため、短時間で確実に効率良く加熱する必要がある。
【0036】
上述した背景より、本明細書で開示するリペア方法は、局所的な加熱を可能とし、周辺部品に対する熱ストレスを抑制することができる。このために電磁誘導コイルを備えたリペア装置(10)と、リペア部品3a直下の配線基板2内に被電磁誘導材を部分的に(局所的に)内蔵した配線板ユニットと、の組合せで、予備加熱を実現する。
【0037】
図1は本明細書により開示するリペア装置10の第1実施形態を示す図である。なお全図を通じて同様の構成要素には同一の参照番号または記号を付して示す。
【0038】
本図において、本実施形態によるリペア装置10は、配線基板2の一方の面(上側)上に搭載された複数の電子部品3a,3a′〜3dのうち少なくとも1つの特定電子部品3a(3a′)を、配線基板2から取り外すためのリペア装置であって、配線基板2に半田固定された特定電子部品3a,3a′を配線基板2から取り外すための熱源としての電磁誘導コイル11と、この電磁誘導コイル11に通電する高周波電流Iを制御する加熱制御部19と、を備えて構成される。ここに、リペアの対象となる特定電子部品を含む配線板ユニット4は、配線基板2と、この配線基板2に搭載され、リペア時に取り外しの対象となる少なくとも1つの特定電子部品3a(3a′)を含む複数の電子部品と、その特定電子部品近傍の配線基板2内部に埋め込まれる被電磁誘導材12(12′)と、からなり、特に従来と異なるのは、その被電磁誘導材12(12′)が基板2の内部に予め埋め込まれることである。
【0039】
被電磁誘導材12,12′と対をなす電磁誘導コイル11は、特定電子部品3a,3a′近傍の配線基板内部に埋め込まれた被電磁誘導材12,12′に電磁波を照射する位置に、矢印Mで示すように移動可能であり、そのために例えば、該コイル11と加熱制御部19とを、可撓性ケーブルCで接続する。
【0040】
かくして、(i)電磁誘導コイル11と、加熱制御部19とにより特定電子部品3a(3a′)を予備加熱する予備加熱装置13と、(ii)その予備加熱された特定電子部品をさらに集中的に加熱するヒータ7と、このヒータ7の通電電流を制御する加熱制御部9とにより特定電子部品3a(3a′)を本加熱する本加熱装置14と、からなるリペア装置が実現される。上記の加熱制御部19は、前述の高周波電流Iの電流値及び/又は周波数を制御するように構成することができる。これは、高周波電流Iによる被電磁誘導材12,12′の発熱量を、その高周波電流の電流値の大きさによって可変とすることができるのみならず、その周波数の高低によっても可変とすることができるからである。
【0041】
このように本明細書において新規なリペア方法が提供される。すなわち、配線基板2の一方の面(上側)上に搭載された複数の電子部品のうち少なくとも1つの特定電子部品3a(3a′)を、その配線基板2から取り外すためのリペア方法であって、(i)その特定電子部品近傍の配線基板2の内部に、被電磁誘導材12(12′)を埋め込む第1ステップと、(ii)この被電磁誘導材12(12′)に電磁誘導コイル11からの電磁波Eを照射する第2ステップと、を含むリペア方法である。
【0042】
また上記第2ステップ(ii)による特定電子部品に対する予備加熱工程の後、(iii)この予備加熱された特定電子部品をさらに集中的に加熱する本加熱工程としての第3ステップを有する。この場合、第2ステップ(ii)を、配線基板2の他方の面側(下側)において行い、第3ステップ(iii)を、配線基板の一方の面側(上側)において行うようにする。
【0043】
図2はリペア装置10の第2実施形態を示す図である。図1に示すように、1枚の配線板ユニット4に搭載される特定電子部品は1つとは限らず、2つ以上搭載されることもある。しかもこれらの特定電子部品の形状や大きさがそれぞれ異なる場合がある。このような場合、例えば上述したリペア方法を参照すると、特定電子部品が複数(3a,3a′)あるとき、前述の第1ステップ(i)において被電磁誘導材を、各特定電子部品対応に設け(12,12′)、かつ、各特定電子部品毎に異なる発熱量を生じさせる。
【0044】
このように特定電子部品毎に、被電磁誘導材と電磁誘導コイルの対を使い分けることにより、リペア装置の加熱効率を一層向上させることができる。
【0045】
このためにまず、配線板ユニット4の被電磁誘導材12,12′としては、各特定電子部品3a,3a′と同等の大きさを有するようにし、一方電磁誘導コイル11,11′は、各被電磁誘導材12,12′の面積をカバーする広がりを有する電磁波E,E′を放射する外形を有するように構成する。したがって、上記の電磁誘導コイル11,11′としては、被電磁誘導材12,12′の種々の面積を、各該面積毎にカバーする広がりを有する複数種の電磁波E,E′を放射する電磁誘導コイルとする。
【0046】
図3はリペア装置10の第3実施形態を示す図である。ただし、電磁誘導コイル11と被電磁誘導材12のみを抽出して示す。本実施形態の配線板ユニット4内の被電磁誘導材12は、複数の小電磁誘導コイル11(a1〜g8)にそれぞれに対応させた複数の小片からなり、少なくとも特定電子部品とその近傍を含む配線基板2内の所定の領域に配列される。
【0047】
一般に、配線板ユニット4の設計段階において、リペア部品となることが予想される特定電子部品(3a,3a′)の配線基板2上の配置位置とその大きさや形状は分かっている。したがって、被電磁誘導材12の大きさや形状とその配置位置も予め決めることができ、これら被電磁誘導材12に適した大きさ等も予め決めることができる。
【0048】
ところが、配線基板2の製造時の段階でどのような電子部品がどの位置に配置されるか不明の場合もある。このような場合に、被電磁誘導材12の多数の小片を予め配線基板2内に埋め込んでおく。他方、電磁誘導コイル11の方も、それら小片にそれぞれ対応させた小コイル群を用意しておく。その後、配線板ユニット4の製造時において、すなわちリペア対象となり得る部品の位置が確定した段階で、かつ、当該部品のリペアが必要になったとき、そのリペア部品に対向する小コイル群(a1〜g8のいずれか)を選択的に励磁するようにする。
【0049】
図4は小コイル群の選択励磁を表す図であり、一例として図3に示す2つの小被電磁誘導材12を選択励磁する場合を示す。本図において、リペア時に、加熱制御部19内の電源PWのメインスイッチSW0をオンにし、さらに、上記2つの小片の被電磁誘導材12に対向する小コイルd4およびd5のみを励磁すべく、対応するスイッチSW4とSW5をオンにする。リペア部品が2以上、別々のところにあるときも、それぞれに対応する小コイルのスイッチ(SW)をオンにすればよい。
【0050】
局所加熱を可能とする上記の実施形態により、従来のようにボトムヒータ6による予備加熱において弱耐熱部品まで一緒に加熱してしまうといった弊害を解消することができるが、さらに加えて、既述した配線基板2の加熱による「反り」の発生を極力抑えることができれば好都合である。
【0051】
そこで以下の実施形態においては、前述したリペア方法を例にとると、その第2ステップ(ii)において、電磁波E,E′により発熱した被電磁誘導材12,12′からの熱を、各被電磁誘導材の中央から外側に向かって徐々に放熱させて、基板の「反り」を抑えるようにする。
【0052】
図5は配線板ユニット4特に被電磁誘導材12の第1実施形態を示す図である。本図に示すように、被電磁誘導材12は、この被電磁誘導材12を包囲するようにこの被電磁誘導材12と一体に配置される熱拡散部材21を有する。なお本図の例では、熱拡散部材21を被電磁誘導材12と同一の部材(例えば鉄系薄板)で形成し、さらに両者間にスリット22を入れて、中央(12)の熱が徐々に外側に逃げるようにしている。
【0053】
図5の実施形態およびこれ以降の実施形態では、中央(12)の熱が外側へ逃げる構造にしているから、中央(12)部分での発熱量はできる限り大きくしたい。その一例を図に示す。
【0054】
図6はリペア部品の中央部分における発熱量をさらに大きくするための一例を示す図である。すなわち本図に示すように配線基板2内の貫通バイア(Via)23に被電磁誘導材12を埋め込む。バイア23は、配線層を切り替える際や電源・GND層に内層接続する際に用いられる。そのため、特に電源ピンが多く、配線の引き出しが難しいBGAやCSP部品等はその部品直下にバイア23が多く設けられている。その特徴を利用し、バイア23に埋め込んで体積を一層大きくした被電磁誘導材8を加熱することで、さらに大きい発熱量を得ることができる。また、バイア23に埋め込む被電磁誘導材12は電気的導通性があるため、バイアの一部として導通体積を増やすこともでき、直流的な電流容量を増やすことにもつながる。
【0055】
図7は被電磁誘導材12の第2実施形態を示す図である。本図の熱拡散部材21は、リペア時に加熱される高温の被電磁誘導材12側から遠ざかるにつれて徐々に低温となる温度勾配を呈するように形成される。
【0056】
具体的には、リペア部品(3a)直下の被電磁誘導材12の接合端子領域をベタ形状とし、その周囲の熱拡散領域(21)をメッシュ形状とすることで基板と接する表面積が増え、熱の拡散効率が良くなる。さらにこのメッシュ領域は、外側に向かうほど形状を粗くすることにより、基板に伝導させる加熱温度を下げて、リペア部品の周囲の基板温度に対し緩やかな温度勾配をつけることができ、熱応力を弱めることができる。
【0057】
図8は被電磁誘導材12の第3実施形態を示す図である。本図において、熱拡散領域21を円抜きスリット22とし、外側に向かうほど円抜きスリットの径を大きくする(22(小)→22(中)→22(大))。メッシュ形状による熱拡散の場合(図7)と同様に、外周に向かうほど基板に伝導させる加熱温度を下げることができ、緩やかな温度勾配をもたせることができる。また、熱拡散領域をメッシュ形状から円抜き形状にすることで鋭角な部分が無くなり、スリットの製造性を良くすることができる。
【0058】
図9は被電磁誘導材12の第4実施形態を示す図である。特定電子部品の近辺に弱耐熱部品を実装しているケースにおいて、発熱部分(21,21′)が弱耐熱部品(3c)にかかる場合、円抜き部24を予め形成しておく。弱耐熱部品(3c)の一つとしてアルミ電解コンデンサ等があるが、熱を過剰に与えると部品内部の電解液が変質し、部品特性の劣化を招いてしまう。このため、円抜き部分24により弱耐熱部品への熱を最小限に抑えながら、特定電子部品3aへの局所的な予備加熱を行うことができる。
【0059】
図10は被電磁誘導材12の第5実施形態を示す図である。特定電子部品(3a)の直下に内蔵する被電磁誘導材12の周囲にさらに、発熱温度の低い被電磁誘導材12A,12Cを口の字状に設ける。これは被電磁誘導材の材料毎に生じる発熱温度の違いを利用したもので、これにより、リペア部品の周囲に緩やかな温度勾配をもたせることができ、局所的な加熱による配線基板2の局部反りを抑えることができる。
【0060】
図11は被電磁誘導材12の第6実施形態を示す図である。本図のように、異なる材料の被電磁誘導材12,12′を特定電子部品3a,3a′別に使い分ける。被電磁誘導材から生じる発熱温度は材料の違いにより異なることを利用する。熱容量の大きい部品3aには発熱温度の高い被電磁誘導材12、一方、熱容量の小さい部品3a′には発熱温度の低い被電磁誘導材12′というように、パッケージ別に使い分け、部品タイプに適した予備加熱を局所的に行うことができる。
【0061】
図12は被電磁誘導材12を配線基板2に埋め込んでおくことの効果を表す図であり、この被電磁誘導材12の存在によりシールド効果も期待することができる。本図中、Npは電子部品(3a,3a′)から発生するノイズを表し、Nwは配線パターン25からのノイズを表す。
【0062】
部品リペアする際の予備加熱として用いる電磁誘導材12は、シールドとしての効果ももたらす。部品(3a,3a′)から放射される電磁波ノイズNpは空中へ飛び出して配線パターンに悪影響を及ぼすことがあり、またその逆のこともある。さらには層間における配線パターン同士のクロストークで回路誤動作を招くこともある。これらの放射ノイズによる互いの干渉を、電磁誘導材12,12′のシールド効果で抑制させることができ、特にBGAやCSP等、高速動作で消費電力の大きい部品のシールド対策として有効である。
【0063】
図13は既述したリペア方法を含む配線板ユニット4の製造方法を表すフローチャートであり、
図14は図13におけるさらに具体的な製造方法を表すフローチャートである。
【0064】
まず図13を参照すると、この製造方法は、配線基板2と、この配線基板2上に搭載されリペア時に取り外しの対象となる少なくとも1つの特定電子部品3a(3a′)を含む複数の電子部品と、からなる配線板ユニット4を製造するための配線板ユニット製造方法である。そしてこの配線基板2の一方の面(表)および他方の面(裏)の少なくとも一方の面において、
(i)各電子部品を配線基板2上のそれぞれの所定位置に配置し、その各位置に半田により各電子部品を固定する電子部品の実装工程(S11)と、(ii)その配線基板2上に実装された各電子部品の外観上の欠陥の有無を検査する外観検査工程(S12)と、(iii)その配線基板2上に実装された各電子部品が所定の電気特性を有するか否かを試験する試験工程(S13)と、(iv)外観検査工程(S12)及び/又は試験工程(S13)において異常ありとされた特定電子部品3aを、配線基板2より取り外すリペア工程(S14)と、を有していて、さらに
そのリペア工程(S14)は、特定電子部品3a近傍の配線基板2の内部に予め埋め込まれた被電磁誘導材12に対し電磁誘導コイル11による電磁波を照射する工程(S15)を含むことを特徴とする。
【0065】
また上記のリペア工程(S14)は、電磁波Eの照射による特定電子部品3aの予備加熱工程(13)と、予備加熱された特定電子部品3aをさらに集中的に加熱する本加熱工程(14)と、からなる。
【0066】
次に、さらに具体的な図14を参照すると、本図の左側のフロー(S21→S24)は、配線基板2の一方の面(表面)でのプロセスであり、右側のフロー(S31→S36)は、配線基板2の他方の面(裏面)でのプロセスである。ただし、印刷工程(S21,S31)、マウント工程(S22,S32)、リフロー工程(S23,S33)および外観検査工程(S24,S34)は、表面と裏面とで両者全く同じである。なお、右側の工程S34,S35およびS36はそれぞれ、図13の工程S12,S13およびS14+S15と同じである。
【0067】
さらに詳しくは、配線基板2に半田クリームを塗布する印刷工程(S21,S31)と、配線基板2に部品を搭載するマウンタ工程(S22,S32)と、半田クリームを溶融し部品接合するリフロー工程(S23,S33)と、半田の接合部を確認する外観検査工程(S24,S34)と、実装完了後の配線板ユニット4全体の電気特性試験を行う工程(S35)と、不良部品の取り外し(および再取り付け)を行うリペア工程(S36)により、配線板ユニット4が製造される。
【0068】
現状の配線板ユニット4は、配線基板2の両面に部品が実装される両面実装のものが多く、リフロー工程による基板2の加熱を2回(S23とS33)に渡って行う必要がある。また、不良部品が発生した場合はリペア工程S36でさらに加熱を行い、部品の取り外し(および再取り付け)を行っているため、熱による部品品質の劣化、接合信頼性の低下、基板品質の劣化を招く恐れがある。このような多重の加熱工程による損傷を軽減するためには、既述した電磁誘導コイル11を備えたリペア装置10と、被電磁誘導材12を内蔵した配線基板2との組合せでリペアする工程を採用することが効果的である。
【0069】
以上の各実施形態に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
配線基板の一方の面上に搭載された複数の電子部品のうち少なくとも1つの特定電子部品を、該配線基板から取り外すためのリペア方法であって、
前記特定電子部品近傍の前記配線基板内部に、被電磁誘導材を埋め込む第1ステップと、
前記被電磁誘導材に電磁誘導コイルからの電磁波を照射する第2ステップと、
を含む電子部品のリペア方法。
【0070】
(付記2)
前記第2ステップにおいて、前記電磁波により発熱した前記被電磁誘導材からの熱を、該被電磁誘導材の中央から外側に向かって徐々に放熱させる付記1に記載の電子部品のリペア方法。
【0071】
(付記3)
前記第2ステップによる前記特定電子部品に対する予備加熱工程の後、
該予備加熱された特定電子部品をさらに集中的に加熱する本加熱工程としての第3ステップを有する付記1に記載の電子部品のリペア方法。
【0072】
(付記4)
前記第2ステップを、前記配線基板の他方の面側において行い、
前記第3ステップを、前記配線基板の前記一方の面側において行う
付記3に記載の電子部品のリペア方法。
【0073】
(付記5)
前記特定電子部品が複数あるとき、前記第1ステップにおいて前記被電磁誘導材を、各該特定電子部品対応に設け、かつ、各該特定電子部品毎に異なる発熱量を生じさせる付記1に記載の電子部品のリペア方法。
【0074】
(付記6)
配線基板の一方の面上に搭載された複数の電子部品のうち少なくとも1つの特定電子部品を、該配線基板から取り外すためのリペア装置であって、
前記配線基板に半田固定された前記特定電子部品を該配線基板から取り外すための熱源としての電磁誘導コイルと、
前記電磁誘導コイルに通電する高周波電流を制御する加熱制御部と、
を備えるリペア装置。
【0075】
(付記7)
前記電磁誘導コイルは、前記特定電子部品近傍の前記配線基板内部に埋め込まれた被電磁誘導材に電磁波を照射する位置に移動可能である付記6に記載のリペア装置。
【0076】
(付記8)
前記電磁誘導コイルは、前記被電磁誘導材の面積をカバーする広がりを有する電磁波を放射する外形を有する付記6に記載のリペア装置。
【0077】
(付記9)
前記電磁誘導コイルは、前記被電磁誘導材の種々の面積を、各該面積毎にカバーする広がりを有する複数種の電磁波を放射する電磁誘導コイルからなる付記8に記載のリペア装置。
【0078】
(付記10)
前記電磁誘導コイルと、前記加熱制御部とにより前記特定電子部品を予備加熱する予備加熱装置と、
予備加熱された前記特定電子部品をさらに集中的に加熱するヒータと、該ヒータの通電電流を制御する加熱制御部とにより前記特定電子部品を本加熱する本加熱装置と、
を備える付記6に記載のリペア装置。
【0079】
(付記11)
前記加熱制御部は、前記高周波電流の電流値及び/又は周波数を制御する付記10に記載のリペア装置。
【0080】
(付記12)
配線基板と、
前記配線基板に搭載され、リペア時に取り外しの対象となる少なくとも1つの特定電子部品を含む複数の電子部品と、
前記特定電子部品近傍の前記配線基板内部に埋め込まれる被電磁誘導材と、
からなる配線板ユニット。
【0081】
(付記13)
前記被電磁誘導材は、前記特定電子部品と同等の大きさを有する付記12に記載の配線板ユニット。
【0082】
(付記14)
前記被電磁誘導材は、複数の小電磁誘導コイルにそれぞれ対応させた複数の小片からなり、少なくとも前記特定電子部品とその近傍を含む前記配線基板内の所定の領域に配列される付記12に記載の配線板ユニット。
【0083】
(付記15)
前記被電磁誘導材は、該被電磁誘導材を包囲するように該被電磁誘導材と一体に配置される熱拡散部材を有する付記12に記載の配線板ユニット。
【0084】
(付記16)
前記熱拡散部材は、リペア時に加熱される高温の前記被電磁誘導材側から遠ざかるにつれて徐々に低温となる温度勾配を呈するように形成される付記1に記載の配線板ユニット。
【0085】
(付記17)
配線基板と、前記配線基板上に搭載されリペア時に取り外しの対象となる少なくとも1つの特定電子部品を含む複数の電子部品と、からなる配線板ユニットを製造するための配線板ユニット製造方法であって、前記配線基板の一方の面および他方の面の少なくとも一方の面において、
各前記電子部品を前記配線基板上のそれぞれの所定位置に配置し、その各位置に半田により各該電子部品を固定する電子部品の実装工程と、
前記配線基板上に実装された各前記電子部品の外観上の欠陥の有無を検査する外観検査工程と、
前記配線基板上に実装された各前記電子部品が所定の電気特性を有するか否かを試験する試験工程と、
前記外観検査工程及び/又は前記試験工程において異常ありとされた前記特定電子部品を、前記配線基板より取り外すリペア工程と、を有し、ここに
前記リペア工程は、前記特定電子部品近傍の前記配線基板内部に予め埋め込まれた被電磁誘導材に対し電磁誘導コイルによる電磁波を照射する工程を含む配線板ユニット製造方法。
【0086】
(付記18)
前記リペア工程は、前記電磁波の照射による前記特定電子部品の予備加熱工程と、該予備加熱された特定電子部品をさらに集中的に加熱する本加熱工程と、からなる付記17に記載の配線板ユニット製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本明細書により開示するリペア装置10の第1実施形態を示す図である。
【図2】リペア装置10の第2実施形態を示す図である。
【図3】リペア装置10の第3実施形態を示す図である。
【図4】小コイル群の選択励磁を表す図である。
【図5】配線板ユニット4、特に被電磁誘導材12の第1実施形態を示す図である。
【図6】リペア部品の中央部分における発熱量をさらに大きくするための一例を示す図である。
【図7】被電磁誘導材12の第2実施形態を示す図である。
【図8】被電磁誘導材12の第3実施形態を示す図である。
【図9】被電磁誘導材12の第4実施形態を示す図である。
【図10】被電磁誘導材12の第5実施形態を示す図である。
【図11】被電磁誘導材12の第6実施形態を示す図である。
【図12】被電磁誘導材12を配線基板2に埋め込んでおくことの効果を表す図である。
【図13】既述したリペア方法を含む、配線板ユニット4の製造方法を表すフローチャートである。
【図14】図3におけるさらに具体的な製造方法を表すフローチャートである。
【図15】従来のリペア装置1を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
2 配線基板
3a,3a′ 特定電子部品(リペア部品)
4 配線板ユニット
6 ボトムヒータ
7 トップヒータ
9 加熱制御部
10 リペア装置
11,11′ 電磁誘導コイル
12,12′ 被電磁誘導材
13 予熱装置
14 本加熱装置
19 加熱制御部
21,21′ 熱拡散部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の一方の面上に搭載された複数の電子部品のうち少なくとも1つの特定電子部品を、該配線基板から取り外すためのリペア方法であって、
前記特定電子部品近傍の前記配線基板内部に、被電磁誘導材を埋め込む第1ステップと、
前記被電磁誘導材に電磁誘導コイルからの電磁波を照射する第2ステップと、
を含む電子部品のリペア方法。
【請求項2】
前記第2ステップにおいて、前記電磁波により発熱した前記被電磁誘導材からの熱を、該被電磁誘導材の中央から外側に向かって徐々に放熱させる請求項1に記載の電子部品のリペア方法。
【請求項3】
前記第2ステップによる前記特定電子部品に対する予備加熱工程の後、
該予備加熱された特定電子部品をさらに集中的に加熱する本加熱工程としての第3ステップを有する請求項1に記載の電子部品のリペア方法。
【請求項4】
配線基板の一方の面上に搭載された複数の電子部品のうち少なくとも1つの特定電子部品を、該配線基板から取り外すためのリペア装置であって、
前記配線基板に半田固定された前記特定電子部品を該配線基板から取り外すための熱源としての電磁誘導コイルと、
前記電磁誘導コイルに通電する高周波電流を制御する加熱制御部と、
を備えるリペア装置。
【請求項5】
前記電磁誘導コイルは、前記特定電子部品近傍の前記配線基板内部に埋め込まれた被電磁誘導材に電磁波を照射する位置に移動可能である請求項4に記載のリペア装置。
【請求項6】
前記電磁誘導コイルと、前記加熱制御部とにより前記特定電子部品を予備加熱する予備加熱装置と、
予備加熱された前記特定電子部品をさらに集中的に加熱するヒータと、該ヒータの通電電流を制御する加熱制御部とにより前記特定電子部品を本加熱する本加熱装置と、
を備える請求項4に記載のリペア装置。
【請求項7】
配線基板と、
前記配線基板に搭載され、リペア時に取り外しの対象となる少なくとも1つの特定電子部品を含む複数の電子部品と、
前記特定電子部品近傍の前記配線基板内部に埋め込まれる被電磁誘導材と、
からなる配線板ユニット。
【請求項8】
前記被電磁誘導材は、該被電磁誘導材を包囲するように該被電磁誘導材と一体に配置される熱拡散部材を有する請求項7に記載の配線板ユニット。
【請求項9】
配線基板と、前記配線基板上に搭載されリペア時に取り外しの対象となる少なくとも1つの特定電子部品を含む複数の電子部品と、からなる配線板ユニットを製造するための配線板ユニット製造方法であって、前記配線基板の一方の面および他方の面の少なくとも一方の面において、
各前記電子部品を前記配線基板上のそれぞれの所定位置に配置し、その各位置に半田により各該電子部品を固定する電子部品の実装工程と、
前記配線基板上に実装された各前記電子部品の外観上の欠陥の有無を検査する外観検査工程と、
前記配線基板上に実装された各前記電子部品が所定の電気特性を有するか否かを試験する試験工程と、
前記外観検査工程及び/又は前記試験工程において異常ありとされた前記特定電子部品を、前記配線基板より取り外すリペア工程と、を有し、ここに
前記リペア工程は、前記特定電子部品近傍の前記配線基板内部に予め埋め込まれた被電磁誘導材に対し電磁誘導コイルによる電磁波を照射する工程を含む配線板ユニット製造方法。
【請求項10】
前記リペア工程は、前記電磁波の照射による前記特定電子部品の予備加熱工程と、該予備加熱された特定電子部品をさらに集中的に加熱する本加熱工程と、からなる請求項9に記載の配線板ユニット製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−164404(P2009−164404A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1402(P2008−1402)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】