電子部品の製造方法
【課題】 精密な電子部品の製造に適した電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 水平姿勢で位置決めされるワークピース2に上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版1を重ね合わせて前記ワークピース2に前記孔版1の下面を近接させるステップと、前記孔版1の通孔パターンに可塑性材料mを加圧供給することにより、前記ワークピース2に前記可塑性材料mを押込充填するステップと、前記孔版1の上面側の気圧が前記下面側より高くなるように、前記孔版1を隔てて差圧を発生させるステップとを含む。
【解決手段】 水平姿勢で位置決めされるワークピース2に上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版1を重ね合わせて前記ワークピース2に前記孔版1の下面を近接させるステップと、前記孔版1の通孔パターンに可塑性材料mを加圧供給することにより、前記ワークピース2に前記可塑性材料mを押込充填するステップと、前記孔版1の上面側の気圧が前記下面側より高くなるように、前記孔版1を隔てて差圧を発生させるステップとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品のボイドレスで精密形状を有する樹脂封止、半田バンプ形成、基板の穴埋め、又はディスペンス等を行う電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術は下記の文献に開示されている。例えば、従来のパッケージング技術としてワークピース上に形成した集積回路を封止(パッケージ化)することが周知である。その主流は、トランスファモールド法であるが、液状の合成樹脂から成る可塑性材料を用いる方法として、ディスペンサー法や印刷法が周知である。印刷法には、大気印刷して脱泡する方法や、真空差圧印刷法がある。セラミック基板では、主に真空差圧印刷法が採用されている。可塑性材料基板についても、これが一部採用され、次第に拡大しつつあるが、色々な課題があり未だ主流にはなっていない。また、ウェハレベルのCSP製造工程、又はその封止にも適用されている。今後は、電子部品の複合化、3次元化、又は基板の内蔵化が進むことから、ボイドレスで精密形状を有する封止方法が求められている。
【0003】
半田バンプ形成にも従来の転写法に対して、印刷法が最近注目されるようになつた。高粘度半田ペーストを狭ピッチ化に対応してアスペクト比の高い孔版にいかに定量にボイドなく充填するかが重要な技術で、色々な手法が提案されている。大気印刷機を用いて印刷機のヘッドは、開放型スキージ、密閉型スキージ、圧入型スキージ、密閉型スキージ、ローラ圧入式スキージで印刷や充填される方式が紹介されている。また、ウェハのバンプ形成で感光性ドライフィルムをラミネートしてビアを形成し、印刷法で半田ペーストを埋め、リフローしてバンプを形成し、フィルムを剥離する方法もある。
【0004】
プリント基板やウェハ基板のビア、及びスルーホールの穴埋めは、導電ペースト及び非導電ペーストを用い、スキージを用いた大気印刷又は真空差圧印刷法で充填する方法がある。一括積層法でより簡単で低コストを求めたプロセスの開発が進行している。導電ペーストの印刷法は電気特性と信頼性の向上を目指しペーストの開発が進められている。それをボイドレスで、簡単に各種のビアに充填する真空印刷方法が実用段階に入りつつあるが、装置がおおがかりになり、生産性も低い等の欠点があり改良が求められている。また、スルーホールの穴埋めはマスクと治具を使用して、位置合わせしてワークに樹脂を充填し、更にワークの上面、下面にプラグを形成し、硬化させてワーク両面を研磨して平坦化している。
【特許文献1】特許第3198273号
【特許文献2】特許第3084440号
【特許文献3】特願第2001−33147号
【特許文献4】特許第3113974号
【特許文献5】特許第2873501号
【特許文献6】特開平5−90271号公報
【特許文献7】特開2001−232758号公報
【非特許文献1】Electronic Journal 2003年4月号掲載
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
孔版を使用して、高粘度樹脂を、隙間を持った形状にスキージで平坦に印刷する原理は成り立たない。図15(a)に示すように、スキージ60とワークピース2に付着した樹脂mは、孔版1の開口部103では、上下に間隔があり、スキージ60の移動に対して速度勾配が発生し、後方の樹脂mは引き伸ばされて、規定厚みから数十μ薄く印刷される。これは粘度や隙間に影響されない樹脂供給方法である。
【0006】
孔版1の開口部103の終端では、図15(b)に示すように、スキージ60で押し込められた樹脂mが開口部103の端部で、堰止めされ更にスキージ60が通過時に加圧され開放され、規定厚みより数十μ厚く印刷される。これはスキージの先端部の充填圧力が、マスクやワークピース2の形状に関わらず常に一定を保つ方法である。
【0007】
図15に示す孔版1の開口部103や図示されていないが開口部103内にあるチィップ間の溝部の印刷開始部は、スキージ60の充填圧力が追従できず、未充填になるか又は薄くしか印刷できずボイド発生原因となる。上述の3つの要因で液状樹脂は、精密な形状に印刷ができず、やむなくマスクの形状やスキージ60の無駄な動作、更には信頼性を犠牲にして樹脂を低粘度化することで対処してきたが本質的解決がなされていない。これが印刷部の形状に影響されない強力な充填力のある樹脂供給方法である。
【0008】
積層型等のBGAやCSPの封止で、高密度にワイヤーボンドされ、ネットを張った状態で、高いパーセントでフィラ等が入った高粘度樹脂は、スキージの機能ではとても充填できない。そこで真空下で印刷し真空差圧をかけると充填効果はある程度期待できるが、残留したボイドを排除するメカニズムは無く、ボイドは微小化し分散して残る。基本的には差圧をかける前に樹脂が空洞を充填しエアを押し出す事が必要条件である。ごく薄のパッケージはワイヤが表面近くにあり空洞部と短絡し差圧が発生されずボイドの発生の危険性が高い。又3次元に積層された実装は、高密度にワイヤーボンドされ、更にフリップチィップもされていて、微小隙間にも充填が要求されるので、強力充填機能を有し且つ精密印刷できる方法が不可欠である。更に、電子部品の基板内蔵化では、液状樹脂のボイドレス充填と均一な厚みのコーティングが必要となる。これは粘性の影響を受けない強力な充填方法及びボイドレス充填方法である。
【0009】
ウェハ基板や積層基板のビアに各種の樹脂を充填する場合、強力な印圧を必要とし、スキージの食い込みや樹脂の粘性で、ビアから樹脂がえぐり出され、更にキュアで収縮する。これをカバーするため各種のマスクを用いて、精密位置合わせして充填し補間するが凸状の硬いプラグが形成され、これを研磨でとるのが大変な困難を伴う。これは孔版、精密位置合わせ装置、及びクリーニング装置が一切無くワークピース2に直接充填し、ボイドレスで、凹部や樹脂の収縮をカバーでき、研磨加工を最小限にする穴埋め方法である。
【0010】
詳細に記述するとワークの上面にマスクを位置決めし、下部にはプラグを形成する治具を位置決めして印刷しワークの両面にプラグ(凸状印刷)を形成し、硬化して研磨する。この場合異径穴は選別して印刷し硬化研磨を各穴径ごとに行う。更に、微細化と大型基板化で、マスクのパターンとワークのパターンが、マスクの伸びやワークの研磨伸びで位置が合わず2回に分けて印刷する必要もある。プラグを形成すると研磨が大変でプラグと銅メッキを均一に研磨し厚みや伸びを管理するのが大変な装置を必用とする。ボイドレス化を要求されると真空下での印刷となりマスクがあると位置合わせやクリーニング等を備えた装置となりプラントのような大型で高価となり更に生産性の低い装置となる。ボイドレスで、プラグを治具やマスクを使用しないで形成し、異径穴を同時に充填でき更に加工を最小限にする穴埋め方法が求められている。
【0011】
半田のバンプ形成で、特開2001−232758号、及び特開平10−34878号公報による半田ペースト印刷方法が提案されている。これらの方法の最大の欠点は、ローラの回転とマスクで樹脂を充填し、スクレーパー又はブレードで、マスク上に残留する樹脂をかきとる方式であるから、極めて充填力が弱い。本方法では、ローラ30の半分範囲が充填に寄与し、他半分は樹脂充填の妨げとなっている。これを補う為に特開2001−232758号はエア加圧しているが距離も長く、樹脂量でも変化し高粘度樹脂は均等に反応しない。全体としてはかなり大掛かりな装置となるので真空装置には採用し難い。
【0012】
また、これらの方式は、図16(a)及び(b)を参照しながら述べると、孔版(マスク)1とローラ30が近接し、ローラ30の前後に配置したスキージ601によって樹脂mを供給し、また除去することで充填している。孔版1又はワーク2の広い空間に充填する場合は、樹脂mはローラ30の周りを矢印30x又は矢印30yで表したように循環するだけで、充填には殆ど寄与しない極めて大きな欠陥を有する。
【0013】
特開2001−232765号は、ローラの後部が樹脂mを引き戻す力と樹脂mの全体の加圧の差が内部圧となり圧が高くなるとスクレーパーでは樹脂mを止められず押し出されて厚く印刷される。充填する空間が小さくても大部分は充填に寄与するが途中から樹脂mを引き戻す力も働くので強力な充填が達成されず、印刷形状をコントロールすることができない。
【0014】
特開平10−34878号公報も小空間にはローラ半分の充填力寄与の効果はあるが弱くローラ30の後部で引き戻され後部ブレードと後部のローラ30との間の圧力は不安定で印刷形状をコントロールする事はできない。また、上記のブレードやスクレーパー形状を有する印刷法は、レジストで形成された基板にダイレクトに印刷するとレジストが破壊されてはがれる欠陥を有する。微細化が進むバンプ形成で孔版による方式は限界が来ていて、殆どはレジストでパターン形成された方式に変わりつつある。多様な形状で空間を要するワークにダイレクトに、強力な充填力を持って、平坦にも凸状にも精密に印刷できる基本技術要素が求められている。
【0015】
特開2001−232758号は、ローラの周囲が強固なフレームで包まれ、樹脂換えが極めて困難な事である。当装置を分解して洗浄する必要がある。半田の種類だけでも最近は非常に種類が多くなってきた。また、当装置は樹脂封止にも、各種の穴埋めも行う必要があり樹脂換えが出来るだけ少ない溶剤で簡単に出来るかが実用化のカギを握っている。樹脂に接触する部分はロール1本を残しスキージが簡単に外れ容易に洗浄できる構造でなければならない。
【0016】
更に当方式は、ローラの回りが完全に密閉されているので、マスクとスクレーパーの境界でもエアを噛みこむ。また、特開平10−34878号公報もレジスト等の各種の方法でビアを形成した基板に、半田ペーストを充填するとビア中のエアが樹脂中に取り込まれ、ローラの回りを樹脂が回転を継続し、走行距離に比例して蓄積され多量のボイドを含んだ半田ペーストが供給されることになる。充填しても半田量が少なくなり精密バンプは製造できないし、内部にもボイドが包含される。また、最近の半田はボールが微小化され非常に酸化されやすく後行程での半田の溶解にも大きな問題を生じる。
【0017】
また、上記の真空差圧印刷方法では、可塑性材料mをワークピース2に押込充填する印刷工程において、可塑性材料がワークピース2と孔版1に強く粘着するため、ワークピース2から孔版1を離反する工程で、この可塑性材料を切り離すのが困難である。このように粘着した可塑性材料mは、孔版1に粘着したまま同孔版1から垂れ下がったり、また封止部(パッケージ)の形が崩れるという問題が起こる。
【0018】
詳しくは、図17(a)に示すように、樹脂等の高粘度な可塑性材料mを用いて孔版印刷法を実施する場合に、孔版1とワークピース(回路基板)2とに可塑性材料mが粘着し、孔版1からワークピース2を切り離す際に、封止部を形成する可塑性材料mから成る封止部の周囲が引っ張られることになる。これにより、可塑性材料mから成る封止部の端部が厚くなったり、その近辺が薄くなったりして、厚みムラが発生する。更には、孔版1から垂れ下がった可塑性材料mは切断の反動で孔版1の裏面に付着したり、或いはワークピース2まで落下したりするので、当該印刷法を実施する毎に、孔版1又はワークピース2のクリーニングが不可欠である。また、当該印刷に供する可塑性材料mの分量が変動する要因ともなる。
【0019】
また、同図(b)に示すように、上記の厚みムラを有する封止部を平坦化させるために、これを大気中に一定時間放置することが試みられているが、可塑性材料mが硬化する途中で低粘度化すると、これが流れ出し封止部の形状が崩れるという問題が起こる。この対策として、可塑性材料mが流れるのをキャビティダウン方式で軽減し、或いは、予めディスペンサー等で可塑性材料mの流れを規制するダム状の堰を作ることが試みられているが、製造工程が煩雑になるという問題がある。
【0020】
半田のバンプ形成で、半田ペーストの粘度が極めて高く、色々な充填方法が提案されている。しかし狭ピッチ化ではアスペクト比が大きくなり、ワークピース2に充填した半田ペーストの粘着力と側壁の面積による粘着力の差が少なくなり、非常に転写が不安定で孔版から樹脂が抜ける場合と、一部残して抜ける場合と、更には抜けない場合とがあり、孔版の穴の形状、面粗度の改善及び離型材のコーティングで粘着を低減する対策で補われてきたが、孔版に半田ペーストが残らないことが要求されるようになった。これが孔版の穴に充填された半田ペーストのディスペンス法である。
【0021】
微細化に対応する為、ウェハ基板や樹脂基板に、レジストでマスクを作り、大気印刷でビアに半田を充填し、リフローして、レジストを剥離する方法が実施されているが、ブラインドのビアに大気印刷すると内部に空気が残留し充填量が不足する。更に印刷中の半田にも走行距離に比例した空気が蓄積され半田の量が不足する。更にスキージを使用するので粘性でえぐられ凹状に印刷され半田量が不足し、これらが原因でバンプ精度が低下する問題がある。又バンプの内部にボイド発生の原因にもなる。ボイドレスの半田樹脂で定量充填する方法が望まれている。
【0022】
本発明は、以上の諸問題に鑑みて成されたものであり、精密な電子部品の製造に適した電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、一面を上向きにして水平に位置決めされるワークピースに、可塑性材料を押込充填する電子部品の印刷装置に係るものであって、前記ワークピースの近傍に軸方向の端部が支持され周面を前記ワークピースの一面に近接するローラと、該ローラを前記ワークピースの一面に沿って移動させる移動手段と、該移動手段が前記ローラを移動する移動方向に対して前転する方向に前記ローラを回転させる回転手段と、前記ローラに近接又は接触して、前記ワークピースの一面に押し付けられるスキージとを備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、一面を上向きにして水平に位置決めされるワークピースに、可塑性材料を押込充填する電子部品の印刷装置に係るものであって、前記ワークピースの近傍に軸方向の端部が支持され周面を前記ワークピースの一面に近接するローラと、該ローラを前記ワークピースの一面に沿って移動させる移動手段と、該移動手段が前記ローラを移動する移動方向に対して前転する方向に前記ローラを回転させる回転手段と、前記ローラに近接又は接触して前記ローラの周面に沿って旋回可能に支持されるスキージと、前記回転手段が前記ローラを回転させるトルクの反力により前記スキージを前記ワークピースの一面に押し付ける印圧発生手段とを備えることを特徴とする。前記ワークピースの概念には、少なくともワークピース、及びその一面に形成される集積回路等の表面実装部とが含まれる。
【0025】
更に、前記回転手段は、前記ローラに内装され相対的に回転可能なロータ及びステータを有する回転機と、前記ローラの軸方向に延び前記ローラの端部を貫いて先端を前記ローラの外部へ突出する支軸と、該支軸に前記回転機のロータを接続する減速機と、前記支軸の先端付近から前記ローラの径方向へ延出して前記スキージを支持するリンク部材とを備え、前記ロータが回転駆動する反力を前記スキージが受けると共に、前記ロータの回転を前記減速機で減速しつつ前記支軸へ伝達することを特徴とする。
【0026】
更に、前記ローラが、前記回転機を収納するインナケーシングと、該インナケーシングの周りに配置され且つゴムライニングされた筒状アウタケーシングとを備え、前記インナケーシングと前記筒状アウタケーシングとの間に、空気を誘引するための空隙を設けたことを特徴とする。
【0027】
更に、前記支軸が、一端を真空引きされ他端を前記ローラ内に連通した中空軸から成り、前記ローラ内の空気を前記支軸を介して真空引きすることにより、前記ローラを強制冷却することを特徴とする。
【0028】
更に、前記印圧発生手段は、前記ローラの回転を制動するブレーキ装置を備え、前記回転機が前記ローラを前記ブレーキ装置の制動に抗して回転させるトルクの反力にて、前記リンク部材を、前記ローラの回転する方向と反対方向へ旋回させることにより、前記スキージを前記ワークピースの一面に押し付けることを特徴とする。
【0029】
更に、前記移動手段は、前記ローラの端部に結合したローラ径以下の直径を有するピニオンと、前記ワークピースの側方に敷設され前記移動方向へ延びるラックと、前記ローラの内部で回転可能なロータを有する回転機とを備え、前記ラックを前記ピニオンに噛み合わせ、前記回転機のロータの回転に従わせて前記ローラと共に前記ピニオンを回転することにより、前記ローラを前記移動方向へ移動させることを特徴とする。
【0030】
更に、前記移動手段は、前記ローラを回転自在に支持するブラケットを、前記ローラの外部に設けられた駆動源により、前記移動方向へ移動させることを特徴とする。
【0031】
更に、本発明は、前記可塑性材料が通過可能な通孔パターンを有する孔版を、前記ワークピースの一面に重ね合わせたことを特徴とする。
【0032】
本発明は、一面を有するワークピースに可塑性材料を押込充填する印刷装置、及び前記ワークピースの一面に重なり前記可塑性材料が通過可能な通孔パターンを有する孔版を、収納する上部密封室と、前記孔版を隔てて前記上部密封室内に画定され、前記ワークピースを高さ調整可能に前記一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするアライメントテーブルを収納する下部密封室と、前記上部密封室と前記下部密封室との間に差圧を発生させる差圧発生手段とを備えることを特徴とする。
【0033】
更に、前記差圧発生手段は、前記上部密封室と前記下部密封室とに接続した真空ポンプと、前記上部密封室と前記下部密封室にそれぞれ接続した2つのリーク弁と、前記上部密封室及び前記下部密封室と前記真空ポンプとの間を開閉するストップ弁とを備え、前記真空ポンプが、前記上部密封室と前記下部密封室を真空引きし、印刷後に、前記2つのリーク弁及びストップ弁の操作の組合せで、前記上部密封室と前記下部密封室に大気が流入するのを個別に許容又は封止することを特徴とする。
【0034】
また、本発明は、水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する電子部品の製造方法に係るものであって、一面を有するワークピースを、該一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするステップと、回転機に接続されたローラを、前記ワークピースの近傍に水平姿勢で待機させるステップと、前記回転機により前記ローラを回転させ、該ローラの周面に前記可塑性材料を供給するステップと、前記ローラの周面を前記ワークピースの一面に近接しつつ、前記ローラを前記ワークピースの一面に沿って移動させると同時に、前記ローラが移動する移動方向に対して前転する方向に、前記ローラを前記回転機により回転させるステップと、前記ローラに近接又は接触して前記ローラの周面に沿って支持されるスキージを、前記ワークピースの一面に押し付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【0035】
また、本発明は、水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する電子部品の製造方法に係るものであって、一面を有するワークピースを該一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするステップと、前記ワークピースの一面に、前記可塑性材料が通過可能な通孔パターンを有する孔版を重ね合わせるステップと、回転機に接続されたローラを、前記孔版の近傍に水平姿勢で待機させるステップと、前記ローラを前記回転機により回転させ、該ローラの周面に前記可塑性材料を供給するステップと、前記ローラの周面を前記孔版の上面に近接しつつ、前記ローラを前記孔版の上面に沿って移動させると同時に、前記ローラが移動する移動方向に対して前転する方向に、前記ローラを前記回転機により回転させるステップと、前記ローラに近接又は接触して前記ローラの周面に沿って支持されるスキージを、前記孔版に押し付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【0036】
また、本発明は、水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する電子部品の製造方法に係るものであって、一面を有するワークピースを該一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするステップと、ステータの周りをロータが回転する回転機を内装したローラを、前記ワークピースの近傍に水平姿勢で待機させるステップと、前記ローラを前記回転機により回転させ、該ローラの周面に前記可塑性材料を供給するステップと、余剰の可塑性材料をローラ周面に戻し真空中であれば強力な脱法を可能とし、前記ローラの周面を前記ワークピースの一面に近接しつつ、前記ローラを前記ワークピースの一面に沿って移動させると同時に、前記ローラが移動する移動方向に対して前転する方向に、前記ローラを前記回転機により回転させるステップと、前記ローラに近接し前記ローラの周面に沿って旋回可能に支持されるスキージを、前記回転機が前記ローラを回転させるトルクの反力により、前記ワークピースの一面に押し付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【0037】
また、本発明は、水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する電子部品の製造方法に係るものであって、一面を有するワークピースを該一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするステップと、前記ワークピースの一面に、前記可塑性材料が通過可能な通孔パターンを有する孔版を重ね合わせるステップと、ステータの周りをロータが回転する回転機を内装したローラを、前記孔版の近傍に水平姿勢で待機させるステップと、前記ローラを前記回転機により回転させ、該ローラの周面に前記可塑性材料を供給するステップ(真空中であればローラ周面の可塑性材料は強力に脱法される。)と、前記ローラの周面を前記孔版の上面に近接しつつ、前記ローラを前記孔版の上面に沿って移動させると同時に、前記ローラが移動する移動方向に対して前転する方向に、前記ローラを前記回転機により回転させるステップと、前記ローラに近接又は接触して前記ローラの周面に沿って旋回可能に支持されるスキージを、前記回転機が前記ローラを回転させるトルクの反力により、前記孔版に押し付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【0038】
更に、本発明は、前記ワークピースを大気圧中に位置決めするステップを含むことを特徴とする。前記ワークピースを真空中に位置決めするステップを含むことを特徴とする。この場合、前記ローラに余剰の可塑性材料が付着して真空に触れながら循環し強力な脱泡が行なわれるようにしても良い。或いは、前記ワークピースを大気圧中に位置決めするステップと、前記ワークピースを真空中に位置決めするステップとを連続的に組み合わせたことを特徴とする。
【0039】
また、本発明は、水平姿勢で位置決めされるワークピースに、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を重ね合わせて、前記ワークピースに前記孔版の下面を近接させるステップと、前記孔版の通孔パターンに可塑性材料を加圧供給することにより、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するステップと、前記孔版の上面側の気圧が前記下面側より高くなるように、前記孔版を隔てて差圧を発生させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0040】
また、本発明は、ワークピースを高さ調整可能なアライメントテーブルに水平姿勢で位置決めするステップと、前記アライメントテーブルに位置決めされた前ワークピースの上方に、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を水平姿勢で支持するステップと、前記アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、前記ワークピースに前記孔版の下面を近接させるステップと、前記孔版の通孔パターンに可塑性材料を加圧供給することにより、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するステップと、前記孔版の下面側の気圧が前記上面側より高くなるように、前記孔版を隔てて差圧を発生させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0041】
更に、本発明は、前記アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、前記ワークピースを前記孔版の下方へ離反させるステップを含むことを特徴とする。また、前記孔版の上面側の気圧、又は前記下面側の気圧の少なくとも一方を、大気圧又は真空圧に設定することを特徴とする。また、前記可塑性材料が、前記ワークピースを絶縁封止する樹脂であることを特徴とする。前記可塑性材料が、半田バンプを形成する半田ペーストであることを特徴とする。或いは、前記可塑性材料が、ウエハ及び樹脂基板を穴埋めする導電性ペースト又は非導電性ペーストであり、スルーホールは裏面に粘着フィルムをラミネートしてブラインド化して、同径又は異径穴も一度で真空充填し、凸状にプラグを形成して硬化又は半硬化し、裏面のフィルムを剥離することを特徴とする。
【0042】
更に、本発明は、上記に記載の方法において、前記可塑性材料がウェハ及び樹脂基板を穴埋めする導電ペースト又は非導電ペーストであり、前記可塑性材料を真空下で押込充填するステップと、前記可塑性材料が硬化後に前記可塑性材料を真空下又は大気下で充填又は真空充填後大気充填するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、以下の効果を達成できる。即ち、回転機によりローラを回転させつつ、ローラの周面に可塑性材料を供給し、ローラを回転させつつ、回路基板及び表面実装(以下で「ワークピース」と記す。)の一面に沿って同ローラを直線的に移動させると、可塑性材料はローラの周面に付着しつつ、ローラとワークピースとの間に押し込まれる。一方、ローラが回転しながらワークピースの一面に沿って移動する過程で、スキージがワークピースの一面に押し付けられる。この状態で、ローラとワークピースとの間に押し込まれた可塑性材料は、ローラの移動する向きに対して後方へ逃げることが充填に適した角度と長さを有するスキージによって規制される、同時にローラとスキージ間の樹脂もシールされる。
【0044】
従って、可塑性材料は、ローラとワークピースとの間でローラの自転と移動で樹脂が送り込まれ、スキージの充填力とローラによる充填力の合力で強力に加圧されながら、マスクされた基板やマスク無しの基板にダイレクトに押込充填され、スキージの角度と接触長さ及びローラの回転速度や移動速度の調整で充填力を目的に合せて最適化して、スキージ先端の圧力をコントロールして、平坦にも凸状にも形状や面積に左右されず印刷できる、スキージの先端で充填力がゼロで有れば平坦に樹脂は切断され、充填力がプラスで有れば凸状に印刷される(図2を参照)。隙間を有する部材に充填し印刷する基本的な要素技術の画期的な発明である。
【0045】
また、スキージとローラ間に若干の隙間を持たせば、過剰な樹脂はローラの回りを循環する、これを利用して例えば、真空と組み合わせると、ローラの表面に付着し循環して真空にさらされ、完全に脱泡された可塑性材料(図11の符号235を参照)が供給され、従来の真空差圧法より高いボイドレスを達成できる。スキージ印圧、ローラ回転、及び移動速度を単独駆動としそれぞれ調整可能にすれば、広範囲な用途に最適化して容易に適合さす事ができる。
【0046】
また、装置を極限まで小型化しシンプル化する為に、ロータが回転駆動する反力をスキージが受けると共に、ロータの回転が減速機で減速されつつ支軸へ伝達されるように、当該印刷装置を構成すれば、次の効果を達成することができる。即ち、可塑性材料の粘度等に応じて、上記の反力を調整、言い換えればローラに加わる負荷を調整するだけで、スキージをワークピースに押し付ける力を増減することができる。また、ローラの端部に結合したピニオンを、ワークピースの側方に敷設され移動方向へ延びるラックに噛み合わせ、回転機によりローラを回転させるので、当該装置の全体を極限まで小型化できる。制御も正転、逆転、停止のみで操作が簡単でどのようなプロセスも即座に実現できる。
【0047】
従って、可塑性材料からボイドを完全に排除することを企図して当該装置を真空中に配置する場合に、このような真空を形成する例えば密封室の容積を大幅に縮小でき、エア機器等のアクチュエータを使用せずエアリークもなく、密封室を真空引きするための真空ポンプ等の小型化が図れ、密封室の強度を小さくでき軽量化でき、更にタクト短縮でき生産性を向上できる。或いは、ローラを回転自在に支持するブラケットを、ローラの外部に設けられた駆動源により、移動方向へ移動させるよう構成した場合、可塑性材料の送り込み量を自由に調整できる利点があるが、装置は多少複雑になる。
【0048】
更に、上記のローラが、回転機を収納するインナケーシングと、インナケーシングの周りに空隙を設けて配置される筒状アウタケーシングとを備える場合、回転機のロータを回転させると、筒状アウタケーシングと共にインナケーシングとが回転する。これらの回転方向は、ローラ全体が孔版の上面に沿って移動する移動方向に対して前転する方向に一致する。
【0049】
また、ローラのインナケーシングと筒状アウタケーシングとの間に空隙を設けることにより、回転機の発生する熱が、ローラの周面に付着した可塑性材料まで伝導するのを阻止し、可塑性材料の粘度が温度の影響を受けて変化するのを抑えることができる。更に、ローラのインナケーシングと筒状アウタケーシングを支える、両端のフランジに通穴を設け、本発明の一部である真空印刷コーターや真空印刷機に適用した場合は、真空引き繰り返すので、回転機を積極的に冷却できるので、熱可塑性材料の粘度を確実に安定させることができる。更に強制冷却をするには、両端の支軸を中空にして真空ポンプに連結する。又ローラは常に樹脂と接しスキージで研摩される状態で消耗品となるので、筒状アウタケーシングが容易に取り替える必要がある、その為にも筒状アウタケーシングは有効である。
【0050】
更に、本発明によれば、可塑性材料を通過させる通孔パターンを有する孔版を、ワークピースの一面に重ね合わせても、上記の効果を奏することができるので、CSP,BGA等の電子部品を表面実装した基板の従来の真空差圧印刷法より、ローラの回転による脱泡効果と充填力強化効果で、一層ボイドレスで平坦度が高く精密な封止が可能である。
【0051】
また、本発明によれば、水平姿勢で位置決めされるワークピースに、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を重ね合わせて、ワークピースに孔版の下面を近接させボイドレスにするには、上下密封室を真空にして、上記の方法によってワークピースに孔版の通孔パターンを介して可塑性材料を押込充填し、2つのリーク弁とストップ弁との操作の組合せで、上部密封室と下部密封室に大気が流入するのを個別に許容又は封止できるので、個々のリーク弁とストップ弁を操作して、孔版の上面側の気圧が下面側より高くなるように、孔版を隔てて差圧を発生させる。
【0052】
これにより、可塑性材料が孔版の通孔パターンから下方へ押し出されようとするので、可塑性材料は良好にワークピースに転写することになる。これをバンプ形成に適用すれば高アスペクトの通孔に充填された半田ペーストが粘着力と差圧で転写され、狭ピッチで高精度のバンプ形成ができる。
【0053】
或いは、アライメントテーブルに上記のように水平姿勢で位置決めされたワークピースの上方に、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を水平姿勢で支持し、アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、ワークピースに孔版の下面を近接させ、可塑性材料を供給して、真空ポンプを起動して、上部密封室と下部密封室を真空引きすることにより上部密封室と下部密封室を真空にした状態で、上記の方法によってワークピースに孔版の通孔パターンを介して可塑性材料を押込充填することができる。更に、個々のリーク弁、及びストップ弁を操作して、孔版の下面側の気圧が上面側より高くなるように、孔版を隔てて差圧を発生させる。
【0054】
これにより、可塑性材料と通孔パターンの周縁との間を、下部密封室の僅かな空気が上方へ通り抜けようとするので、可塑性材料が通孔パターンの周縁から良好に切断されると、同時に周辺の可塑性材料を内部に押しやり硬化途中での粘度低下で周辺への流れ出しを防止できる。主として樹脂封止に適用され精密形状を達成できる革新的方法である。
【0055】
特に、孔版の剛性が高く孔版とワークピースの間に空気が進入するのが阻止される場合には、アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、ワークピースを孔版の下方へ離反させれば良い。これにより、ワークピースを孔版との間の隙間を積極的に広げられるので、両者の間を下部密封室の空気が容易に通り抜けられることになり、孔版の材質や厚み等に係わらず上記の効果を達成するこができる。更に、孔版の上面側の気圧、又は下面側の気圧の少なくとも一方を、大気圧又は真空圧に設定すれば、大気印刷法にも適用できる。
【0056】
更に、上記の真空印刷コーターを封止に使用した場合、スキージとローラの充填力の合力が働き非常に複雑な形状で凹凸や多重のワイヤを樹脂が強力に充填され、残留空気は圧縮されてワークと基板やチップの壁面より押し出される、その後に大気圧に戻され差圧で隅々まで含浸され、表面はスキージの先端で樹脂圧がゼロに近く設定され平坦に切断されて印刷される。従来の真空印刷機はスキージで樹脂を被せるように供給し、真空差圧で充填し真空で仕上げ印刷されるが、ワイヤの上部に樹脂が薄く被された状態で、差圧をかけると未充填部と外部の圧とが短絡し充填できない問題や、残留空気ぶんがマイクロボイドとして残留する事が避けられない問題がある。
【0057】
更に、基板の穴埋めに使用した場合、スルホールの穴埋には、基板の裏面に粘着フィルムをラミネートし、ブラインドビアを形成しマスクレスで真空印刷コーターを使用して、真空で充填印刷し、大気圧で含浸さし更にスキージ先端部で充填力をプラスサイドに設定し、印刷すると上面はプラグが(凸状印刷)形成され、下部は基板と同一面に充填される。これを半硬化又は硬化してフィルムを除去する。この方法異径穴を同時に充填でき、マスクも不要で位置合わせも必要なく、研摩行程を大幅に簡略化できる、従来の装置はプラントであったが簡略な装置となり、革新的な穴埋め法を達成した。更にアスペクトの高いワークは1回充填した後硬化して再度充填硬化すれば、充填ミスも、無く完璧な穴埋めできる。又ダイレクト印刷は例え未充填部が在っても再充填することができ不良品がでない利点がある。
【0058】
更に、バンプ形成に適用する場合は、基板にレジストでバンプ形成に必用なビアを形成し、マスクレスで、真空で印刷コーターで充填し、大気圧に戻し含浸さしてスキージ先端の充填圧をゼロ近辺に設定して平坦に切断し、リフローしてレジストを剥離して達成した。試作では、SnAgCuで10μサイズの粒子を持つ半田ペーストで60μのバンプを形成し、1μ以下の誤差で容易に形成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下に、図1乃至図5に基づき、孔版1を重ね合わされ一面21を上向きにしたワークピース2に、適量の可塑性材料を押込充填する電子部品の印刷装置E1について、印刷ヘッドを例に説明する。また、図中に矢印X,Y,Zでそれぞれ指した方向は、以下の軸方向、移動方向、及び高さ方向に各々対応している。ボルト、ナット、キー、キー溝、及びベアリング等の自明の機械要素については、その図示又は説明を省略する。印刷装置E1の動作を制御するための制御機器、及び動作/停止を検出するセンサー等についても、同様に省略する
【0060】
先ずは、印刷装置E1の印刷ヘッドの原理を説明する。図1は、ワークピース2の一面21に周面を近接するローラ3と、ローラ3をワークピース2の一面21に沿って矢印Yで指した方向に移動させる移動手段4と、移動手段4がローラ3を移動する移動方向に対して前転する方向にローラ3を回転させる回転手段5と、ローラ3に近接又は接触してワークピース2の一面21に押し付けられるスキージ6とを表している。
【0061】
移動手段4としては、ローラ3を支持するブラケット(図示せず)にボールナット40を取付ける一方、ボールナット40に螺合する送りネジ41を、ローラ3の外部に配置したモータ等の駆動源で回転させることにより、ローラ3を移動させるものを適用しても良い。回転手段5としては、ローラ3の外部に配置した回転機50の出力軸に、タイミングプーリ501を取付け、ローラ3の支軸34にタイミングプーリ502を設け、回転機50の出力軸の回転力を、タイミングプーリ501,502に巻掛したタイミングベルト503を介してローラ3に伝達するものを適用しても良い。
【0062】
スキージ6は、ローラ3の周面に沿って旋回できるよう図に表れていない支持体で支持されていれば良く、例えば、エアシリンダ等のアクチュエータを主体とする印圧発生手段7によってワークピース2の一面21に適度に押付けられるようにしても良い。印圧発生手段7は、ローラ3の近傍に設けた滑節70に、直立姿勢又は傾斜姿勢になるよう回動自在に取付けられ、その作動ロッド71をスキージ6に滑節72を介して回動自在に接続している。
【0063】
また、図1に表した一対のスキージ6は、その一方が印圧発生手段7によってワークピース2の一面21に押付けられ、他方がワークピース2の一面21から浮き上がっている。これは、ローラ3の移動方向Yに対して前途に位置するスキージ6の下側に、適量の可塑性材料mを溜めつつ、可塑性材料mが、ローラ3の回転に伴ってその下側に徐々に引き込まれ、更にはローラ3の移動方向Yに対して後方に位置するスキージ6によって圧縮されることを企図している。
【0064】
詳しくは、図2(a)及び(b)に示すように、ローラ3の周面に付着するよう供給された可塑性材料mは、ローラ3が回転しながら移動するに従って、ローラ3の下側に徐々に引き込まれ、ワークピース2の一面21とローラ3との間で圧縮される。このときの可塑性材料mに加わる圧力は、可塑性材料mがローラ3の真下を略過ぎた位置P1でピーク値に達する。この後、同圧力は、スキージ6がワークピース2の一面21に接する接点位置P2に至るまでに降下するが、接点位置P2において尚も所期の圧力を維持できるように設定する。これにより、ワークピース2(例えば、プリント基板又はウェハ基板)のビア又はスルーホールの穴埋を行う場合に、ビア又はスルーホールに詰め込まれる可塑性材料mに適度な圧力を蓄積できるため、図示のように、スキージ6が通過した後で、ビア又はスルーホールから可塑性材料mが凸状に盛り上がることになる。
【0065】
或いは、図2(c)及び(d)に示すように、ローラ3の周面に付着するよう供給された可塑性材料mは、既述の通りワークピース2の一面21とローラ3との間で圧縮される。そして、可塑性材料mに加わる圧力は、ローラ3の真下を略過ぎた位置P3でピーク値に達するが、この後、同圧力が、接点位置P4に至るまでにゼロになるように設定する。これにより、ワークピース2の一面21の凹所に充填された可塑性材料mに圧力が残存しないので、図示のように、スキージ6が通過した後でも、可塑性材料mは平坦な形状を保つことになる。多様な用途に適するためには、ローラ3の回転、移動、及び上記の圧力が単独に調整できることば好ましい。以上の原理を具現化するための最良の形態を以下で詳しく述べる。
【実施例1】
【0066】
図3は印刷装置E1の正面図である。図4(a)は印刷装置E1の側面図、(b)は図3のA−A断面図である。図5は印刷装置E1の要部の構成を概念的に表している。これらの図面に示されるように、印刷装置E1は、水平姿勢で位置決めされる回路基板、及びその表面実装部から成るワークピース2(以下で単に「回路基板2」と記す。)の両側近傍に軸方向Xの両端部31が各々支持され孔版1を介して回路基板2の一面21に周面32を近接するローラ3と、ローラ3を回路基板2の一面21に沿って矢印Y方向に移動させる移動手段4と、移動手段4がローラ3を移動させる過程でローラ3を回転させる回転手段5と、ローラ3に近接しローラ3の周面32に沿って旋回可能に支持されたスキージ6と、回転手段5がローラ3を回転させるトルクの反力によりスキージ6を回路基板2の一面21に重ねられた孔版1に押し付ける印圧発生手段7とを備える。
【0067】
移動手段4と回転手段5とは、それぞれの駆動源として、ローラ3に内装された回転機50を共用している。詳しくは次の通りである。即ち、移動手段4は、ローラ3の両端部31に各々結合した一対のピニオン10と、回路基板2をその両側から挟むように配置され図に表れていない基盤等に固定された一対のラック11と、上記の回転機50とから構成される。一対のラック11は、互いに平行に移動方向Yに沿って延びており、それぞれがピニオン10に噛み合っている。この状態で、ローラ3の周面32は孔版1から僅かに浮き上がり、孔版1とローラ3との間に適当な間隙が保たれている。回転機50は、そのステータ51とロータ52とが相対的に回転可能であり、軸方向Xに延びる筒状のステータ51の内側をロータ52が回転駆動する。
【0068】
ロータ52が上記のように回転駆動すると、これに従ってローラ3と共にピニオン10が回転する。ローラ3とピニオン10の回転の反力は、印圧発生手段7に伝達され、印圧発生手段7がスキージ6を孔版1に押し付けることにより力の釣合いが保たれる。この原理は後述する。ピニオン10が回転すれば、ローラ3全体が移動方向Yに沿って図中を右側又は左側へ移動(以下で「往動」又は「復動」と記す。)することになる。同時に、ローラ3は、これ自体が往動又は復動する方向に対して、前転する方向に回転する。
【0069】
つまり、ローラ3は、往動するとき図4中を時計回りに回転し、復動するとき反時計回りに回転する。このように「前転」するローラ3の周面32の速度(周速度)は、ピニオン10のピッチ円とローラ3の周面32の直径の比率により概ね決定する。図示の例では、ローラ3の周速度は、ローラ3が矢印Y方向へ移動する移動速度の1.2〜1.5倍程度の速さに設定されている。
【0070】
回転手段5は、ローラ3の軸方向Xに延び上記のピニオン10を各々貫いてそれぞれの先端33をローラ3の外部へ突出する一対の支軸34と、回転機50のロータ52に発生するトルクを一方(図3右側)の支軸34へ伝達する減速機8と、一対の支軸34のそれぞれの先端33付近からローラ3の径方向へ延出する一対のリンク部材9を備える。一対のリンク部材9は、スキージ6の中央をピン94にて軸支するスキージ支持バー95の両端を各々支持し、スキージ6はピン94を支点として僅かに揺動できる。また、個々の支軸34は、ローラ3及び個々のピニオン10に対して自由に回転できる。
【0071】
一対の支軸34のそれぞれの先端33付近は、一対の支持片35に各々軸受されている。一対の支持片35は、一対の直動案内軸受36に各々固定されている。更に、一対の直動案内軸受36は、移動方向Yへ延びる一対のガイドレール37にスライド自在に各々係合している。これらの部材は、ローラ3を移動方向Yにスライド自在に支持するブラケット38を構成し、ピニオン10がラック11から離脱することのないよう、ローラ3を真っ直ぐに案内する役割を果たしている。
【0072】
印圧発生手段7は、ローラ3の回転を適度に制動、言い換えればローラ3に負荷を与えるバンドブレーキ17を一対の支持片35の一方に取付けたものである。減速機8、及びバンドブレーキ17は自明の技術であるため詳細な図示を省略し、印圧発生手段7が上記回転の反力を受ける原理のみを説明する。以下に述べる減速機8は、ロータ52に直結したセクタギア91と、このセクタギア91の周囲に配置した複数のプラネタリギア92と、以上のギア91,92を収納するケーシングとから概ね構成されている。
【0073】
即ち、回転機50を起動してロータ52が回転すると、この回転が減速機8にて減速されつつローラ3に伝達される。これによりローラ3が図4中で時計回りに正転する過程で、この反力は上記のプラネタリギア92を介して一方(図3右側)の支軸34に伝達され、同支軸34に反時計回りのトルクが発生する。この結果、図4(b)に実線で表したスキージ6が、回路基板2の一面21に重ねられた孔版1に押し付けられる。或いは、ローラ3を図4中で反時計回りに逆転させると、ローラ3の回転の反力として、ロータ52が正転していた時とは逆の時計回りのトルクが一方の支軸34に発生する。この結果、一方のリンク部材9と共にスキージ6が時計回りに旋回する。そして、スキージ6は、図中に仮想線で表した右側の位置まで達したところで、孔版1に突き当たって静止する。
【0074】
このような回転機50が正転/逆転を繰り返す毎に、スキージ6が以上の旋回動作を繰り返すことになる。また、印圧発生手段7がローラ3に負荷を与えること、言い換えれば、バンドブレーキ17がローラ3の両端部31の何れか一方を締め付けることで得られる摩擦力でローラ3の回転に抵抗を与えることにより、回転機50の反力を積極的に増大し、スキージ6が回路基板2の一面21に押し付けられる力(以下で「印圧」と記す。)を所望に調整することができる。
【0075】
尚、以上のスキージ6の動作は一方のリンク部材9にのみ着目して述べたが、実際には、スキージ6は軸方向Xの全長が30〜90cm以上に及ぶ長尺な形状であるため、印圧を実用的な強さに調節するには、スキージ6に撓みや捩じれが生じないように、スキージ支持バー95の両端に均等な力が加わらなければならない。そこで、一対のリンク部材9を機械的に接続することが望ましい。
【0076】
例えば、一対のセクタギア91を、ブラケット38の一対の支持片35に各々固定し、個々のセクタギア91に噛み合うプラネタリギア92を、個々のリンク部材9の適所に対にして回転自在に各々取付け、これら一対のプラネタリギア92を連結軸93で連結して成る連動機構を付加する。これにより、一方のリンク部材9を一方の支軸34の周りに旋回させる力は、一方のリンク部材9側の各ギア91,92にて、連結軸93を回転されるトルクに変換され、同トルクが、他方のリンク部材9側の各ギア91,92にて、他方のリンク部材9を他方の支軸34の周りに旋回させる力に変換される。
【0077】
また、1個のローラ3に1個の回転機50を内装する例を図示したが、1個のローラ3に2個の回転機50とそれぞれのロータ52に接続する2機の減速機8を内装し、一対の支軸34を個別に駆動しても良い。この場合、2機の回転機50は、それぞれを駆動するためのドライブ回路を電気的に同期させることができるので、上記の連動機構は不要となる。また、回転機50のロータ52の両端から出力を取り出せるようにし、ロータ52の両端にそれぞれ減速機8を個別に接続し、これら2機の減速機にそれぞれ一対の支軸34を接続しても良い。
【0078】
また、移動手段4が、既述のように、ボールナット40をブラケット38に取付ける一方、ボールナット40に螺合する送りネジ41を、ローラ3の外部に配置したモータ等の駆動源で回転させる装置である場合、上記のピニオン10とラック11は省略できる。また、孔版1は、印刷装置E1の構成、及び使用に際して必須の要素ではないので、省略しても良い。
【実施例2】
【0079】
次に、図6乃至図9に基づき、上記の印刷装置E1(印刷ヘッド)を組み込んだ電子部品の製造装置E2を説明する。また、上記の印刷装置E1の移動手段4は、ローラ3に内装された回転機50を主体とする構成に限定されず、ローラ3の外部に設けた駆動源により回転するボールナット等を用いてローラ3を移動させても良い点は、既述の通りである。図6(a)は製造装置E2の正面図であり、図7はその要部の正面である。図8及び図9はそれぞれ製造装置E2の側面図及び平面図である。これらの図面に示されるように、製造装置E2は、印刷装置E1及び孔版1を収納する上部密封室13と、アライメントテーブル12を収納する下部密封室14と、後述の差圧発生手段15とを備える。
【0080】
アライメントテーブル12は、ワークピース2をこの一面101を上向きにして水平姿勢で位置決めできる。具体的には、ワークピース2を水平姿勢で水平面に沿ってスライドさせ、且つワークピース2を水平姿勢のまま回転させられる。更に、このように位置決めしたワークピース2の位置を、アライメントテーブル12は矢印Zで指した高さ方向に変位させることができる。これを以下で「高さ調整」と記す。
【0081】
上部密封室13は、アルミニウム又は鋼製の方形塊から成る基盤230の上面を彫り込んで上記の印刷装置E1及び孔版1が動作可能な凹部231及び下部密封室14を形成し、下部密封室14の上に開閉できる枠体18に取付けられる孔版1(図13を参照)が設けられる。凹部231の底面に、上記一対のガイドレール37を敷設し、同底面から浮き上がらせた位置に、上記一対のラック11を架設している。また、凹部231の底面には挿通孔234が形成されており、下部密封室14内のアライメントテーブル12に、挿通孔234を経て、基盤230の下方に配置された調整機構121が接続している。
【0082】
調整機構121は、アライメントテーブル12の高さ調整に加え、アライメントテーブル12の位置を水平方向に微調整するものである。基盤230は、調整機構121や差圧発生手段15を内側に収納する架台232に支持されている。アライメントテーブル12と挿通孔234との間は、オーリング等により封止されている。基盤230の上面には、アクリル樹脂製の蓋体233が開閉可能に取り付けられ上部密封室13を形成する。蓋体233は、この内部の真空到達度が50Pas〜100Pasに達しても耐えうる剛性を有する。
【0083】
差圧発生手段15は、後述の孔版1によって上部密封室13と下部密封室14とが互いに隔てられた状態で、上部密封室13と下部密封室14との間に差圧を発生させるものである。例えば、差圧発生手段15は、上部密封室13と下部密封室14との両方に接続した1機の真空ポンプ151と、上部密封室13と下部密封室14にそれぞれ接続した2つのリーク弁152,153と備えるものである。更に、上部密封室13及び下部密封室14と、真空ポンプ151との間を、図6(b)の配管系統図に示すように、上部密封室13にはリーク弁152及びストップ弁155が設けられ、下部密封室14にはリーク弁153及びストップ弁154が接続され、これらの弁の操作を組み合わせることで、上部密封室13及び/又は下部密封室14に自由に真空を発生でき、可塑性材料の切断やディスペンスを行なうことができる。
【実施例3】
【0084】
次に、上記のアライメントテーブル12に位置決めされる回路基板2に、適量の可塑性材料mを押込充填するようにした電子部品の製造方法について説明する。また、当該方法で取り扱える可塑性材料には、フィラーを混入したエポキシ樹脂等の液状樹脂(封止用)、エポキシ樹脂をバインダーとして銅又は銀の含有率が80パーセント以上の電導性ペースト/エポキシ樹脂に銅又はシリカゲル等のフィラーを混入した非電導性ペースト(穴埋め用)、半田ペースト(バンプ形成用)、及びポリイミド樹脂/液状レジスト(ワークピースの絶縁用)が少なくとも含まれる。
【0085】
先ずは、図10及び図11に示すように、アライメントテーブル12上に回路基板2を位置決めする。回路基板2の位置決めは、アライメントテーブル12に設けられた図に表示されていない位置決めピンで行なう。この状態で、回路基板2が置かれる雰囲気が大気圧であるか、真空であるかは特に問わない。また、孔版1を回路基板2に重ね合わせても良い。孔版1は、回路基板2の一面21の適所がフィルム等にて予めラミネート(被覆)されている場合には不要であるが、以下では、一面101及び他面102を貫く通孔パターン(開口部)103を有する孔版1を適用した例を説明する。
【0086】
続いて、ローラ3を、例えば図10に表したように、孔版1の近傍に待機させる。この状態で、図11(a)に示すように、ローラ3の周面32又は孔版1の一面101に可塑性材料mを供給する。そして、ローラ3の周面32を孔版1の一面101に近接しつつ、ローラ3を孔版1の一面101に沿って往動させると同時に、ローラ3が移動する移動方向Yに対して前転する方向に、ローラ3を回転機50により回転させる。これにより、ローラ3の周面32に付着した可塑性材料mは、往動するローラ3と孔版1との間に押し込まれる。
【0087】
この過程で、ローラ3に内装した回転機50の発生する熱が、ローラ3の周面32に付着した可塑性材料mまで伝導すると、可塑性材料mの粘度が温度の影響を受けて変化するという不都合がある。そこで、図12(a)に示すように、ローラ3を、回転機50のロータ52(同図で省略)を収納するインナケーシング53と、インナケーシング53の周りに約2mmの空隙54を設けて配置される筒状アウタケーシング55とを備える2重構造としても良い。これにより、回転機50の発生する熱が、ローラ3の周面32を経て可塑性材料mまで伝導するのを阻止できる。また、回転機50のロータ52を回転させると、インナケーシング53と共に筒状アウタケーシング55が回転する。この回転方向は、ローラ3の全体が孔版1の上面に沿って移動する移動方向に対して前転する方向である。
【0088】
更に、真空ポンプ151によって空隙54へ空気を誘引するよう構成しても良い。この場合、図12(b)に示すように、ローラ3の両端部31に、空隙54に通じる複数の通気孔57を形成すると共に、ローラ3の一対の支軸34に中空軸をそれぞれ適用し、これらの中空軸の内孔58を経て空隙54を既述の真空ポンプ151に接続する。真空ポンプ151を起動すると、複数の通気孔57からローラ3の内部へ空気が導入され、更に、この空気が真空ポンプ151によってローラ3の外へ排出される。これにより、ローラ3と回転機50を積極的に冷却できるので、熱可塑性材料mの粘度を確実に安定させられる。また、ローラ3を回転させない時には、回転機50が余計な熱を放出しないように、回転機50に供給される電力を完全に遮断することが好ましい。
【0089】
また、ローラ3の周面32に付着した可塑性材料mが、ローラ3と孔版1との間に良好に押し込まれるように、ローラ3の周面32にゴム製のライニング(被覆材)を設ける等して、可塑性材料mのローラ3への粘着を促進しても良い。また、ゴム製品はその磨耗が比較的早いので、同ライニングを交換するに際して、ローラ3から筒状アウタケーシング55だけを取り外せるという観点からも、ローラ3を上記のような2重構造にすることが好ましい。
【0090】
続いて、ローラ3が回転しながら孔版1の上方を通過する過程で、スキージ6が、回転機50がローラ3を回転させるトルクの反力により、孔版1の一面101に押し付けられる。このため、上記のように往動するローラ3と孔版1との間に押し込まれた可塑性材料mは、ローラ3の往動する向きに対して後方へ逃げようとすることがスキージ6によって規制される。従って、往動するローラ3と孔版1との間で適度に加圧されながら、通孔パターン103内へ供給される(加圧供給)。これにより、可塑性材料mは、回路基板2の一面21に確実に押込充填されることになる。上記のように可塑性材料mが加圧される程度は、可塑性材料mの粘度等を勘案して上記の印圧の調整、並びに、スキージ6の移動速度、スキージ6の角度、樹脂の接触長さ、及びローラ3の回転速度の設定/調整を行なうことにより所望に設定することができる。
【0091】
尚、孔版1を省略する場合、回路基板2の一面21にスキージ6を直接に接触させても良いが、上記の押え板又は押え枠に印刷エリアを広く開口し、基板上の樹脂を残さず受け渡す役割を担わせる。また、スキージ6はローラ3の往動又は復動に関係なく、所定の均し効果を達成できるように、図11に例示したような上下に対称な形状として良いが、両縁部(図中で上下部)の形状を非対称にしても良い。この場合、ローラ3が往動又は復動するときに可塑性材料mを往動側では、押込充填用で、スキージ6の角度と接触長さを設定し、復動側は、表面を平坦にするか凸状にするかで角度と長さを決める。
【実施例4】
【0092】
次に、電子部品の他の製造方法について説明する。先ずは、図13に示すように、基盤230におけるアライメントテーブル12の真上に対応する位置に、枠体18が設けられており、枠体18に孔版1を水平姿勢で位置決めする。一方、上記の要領にてアライメントテーブル12に回路基板2を水平姿勢で位置決めする。この回路基板2を適切に高さ調整することによりに、孔版1の他面102に回路基板2の一面21を近接させる。
【0093】
続いて、実施例3として述べた方法を適用して、真空ポンプ151により上部密封室13と下部密封室14とを同時に真空にする。この過程で、可塑性材料mに大気圧下で潜在していたボイドを完全に排出(脱泡)できる。可塑性材料mを孔版1の通孔パターン103に加圧供給することにより、回路基板2に可塑性材料mを押込充填する。更に、孔版1によって隔てられた上部密封室13と下部密封室14との間に、上記の差圧発生手段15を起動させて差圧を発生させる。
【0094】
そして、図6(b)の配管系統図で示すストップ弁155を閉じ、リーク弁152を開ければ上部密封室13の圧力が上昇する。これにより、可塑性材料mが孔版1の通孔パターン103から下方へ押し出されようとする。更に、アライメントテーブル12を僅かに下降させれば、図13に示すように、可塑性材料mは、通孔パターン103に残ることなく、回路基板2へ良好に転写する。この後、上部密封室13と下部密封室14とを大気圧に戻し、図8に示すように蓋体233を開き、更に枠体18及び孔版1を開き、回路基板2を製造装置E2から取り外せば一連の製造工程は終了する。
【実施例5】
【0095】
次に、電子部品の更に他の製造方法について説明する。図14に示すように、枠体18に孔版1を位置決めし、アライメントテーブル12に回路基板2を位置決めする点は実施例4と同様である。更に、回路基板2を適切に高さ調整することによりに、孔版1の他面102に回路基板2の一面21を近接させ、真空ポンプ151により上部密封室13と下部密封室14とを同時に真空にした状態で、回路基板2に可塑性材料mを押込充填する点も実施例4と同様である。
【0096】
続いて、孔版1を隔てて差圧を発生させる。図6(b)の配管系統図で示すストップ弁154を閉じ、リーク弁153を僅かに開放すれば、下部密封室14の内圧が上昇するので、孔版1の他面102側の気圧が一面101側より高くなる。これにより、可塑性材料mと通孔パターン103の周縁との間を、下部密封室14の僅かな空気が上方へ通り抜けようとするので、可塑性材料mが通孔パターン103の周縁から良好に切断される。孔版1の剛性が高く孔版1と回路基板2の間に空気が進入するのが阻止される場合には、アライメントテーブル12の高さ調整を行うことにより、回路基板2を孔版1の下方へ離反させることで、回路基板2を孔版1との間の隙間を広げても良い。
【0097】
尚、実施例4,5に記した上部密封室13と下部密封室14とは、必ずしも真空にする必要はなく、孔版1の一面101側の気圧、又は他面102側の気圧の少なくとも一方を、大気圧であっても良い。また、可塑性材料mは、回路基板2を絶縁封止する合成樹脂であっても良い。或いは、可塑性材料mは、半田バンプを形成する半田ペーストであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、ワークピース上に表面実装された電子部品の樹脂封止、ワークピースへの半田バンプの形成、回路基板の穴埋め、回路基板の樹脂コーティング、ディスプレー分野の各種製造工程等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態に係る電子部品の印刷装置の原理を説明する概念図。
【図2】(a)本発明の実施形態に係る電子部品の印刷装置の作動の一例を説明する概念図、(b)はその圧力を充填力として縦軸に表し、ローラ及びスキージのそれぞれ位置に対応する距離を横軸に表したグラフであり、(c)は作動の他例を説明する概念図、(d)はその圧力を充填力として縦軸に表し、ローラ及びスキージのそれぞれ位置に対応する距離を横軸に表したグラフ。
【図3】本発明の実施例1の電子部品の印刷装置の一部を破断した正面図。
【図4】(a)は本発明の実施例1の電子部品の印刷装置の側面図、(b)は図3のA−A断面図。
【図5】本発明の実施例1の電子部品の印刷装置の要部を示す概念図。
【図6】(a)は本発明の実施例2の電子部品の製造装置の正面図、(b)はその配管系統図。
【図7】本発明の実施例2の電子部品の製造装置の要部の正面図。
【図8】本発明の実施例2の電子部品の製造装置の側面図。
【図9】本発明の実施例2の電子部品の製造装置の平面図。
【図10】本発明の実施例3の電子部品の製造方法の工程を表した概念図。
【図11】(a)は本発明の実施例3の電子部品の製造方法の原理を表した概念図、(b)はその他の例を表した概念図。
【図12】(a)は本発明の実施例3の電子部品の製造方法に適用したローラの変形例を示す断面図、(b)はその端面図。
【図13】本発明の実施例4の電子部品の製造方法の工程を表した概念図。
【図14】本発明の実施例5の電子部品の製造方法の工程を表した概念図。
【図15】(a)は従来例のスキージによる電子部品の製造工程を表した概念図、(b)はその仕上がりを表した概念図。
【図16】(a)は、従来例の装置による電子部品の製造工程の一例を表した概念図(b)はその他例を表した概念図。
【図17】(a)は従来例の孔版による電子部品の製造工程を表した概念図、(b)はその他の例を表した概念図。
【符号の説明】
【0100】
1:孔版
101:一面
102:他面
103:通孔パターン(開口部)
2:ワークピース(回路基板、表面実装部)
21:一面
3:ローラ
31:両端部
32:周面
33:先端
34:支軸
35:支持片
36:直動案内軸受
37:ガイドレール
38:ブラケット
4:移動手段
40:ボールナット
41:送りネジ
5:回転手段
50:回転機
501,502:タイミングプーリ
503:タイミングベルト
51:ステータ
52:ロータ
53:インナケーシング
54:空隙
55:アウタケーシング
57:通気孔
58:内孔
6:スキージ
7:印圧発生手段
70,72:滑節
71:作動ロッド
8:減速機
9:リンク部材
91:セクタギア
92:プラネタリギア
93:連結軸
94:ピン
95:スキージ支持バー
10:ピニオン
11:ラック
12:アライメントテーブル
121:調整機構
13:上部密封室
14:下部密封室
15:差圧発生手段
151:真空ポンプ
152,153:リーク弁
154,155:ストップ弁
17:バンドブレーキ
18:枠体
230:基盤
231:凹部
232:架台
233:蓋体
234:挿通孔
E1:印刷装置
E2:製造装置
m:可塑性材料
P1,P3:位置
P2,P4:接点位置
X:軸方向
Y,Z:矢印、移動方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品のボイドレスで精密形状を有する樹脂封止、半田バンプ形成、基板の穴埋め、又はディスペンス等を行う電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術は下記の文献に開示されている。例えば、従来のパッケージング技術としてワークピース上に形成した集積回路を封止(パッケージ化)することが周知である。その主流は、トランスファモールド法であるが、液状の合成樹脂から成る可塑性材料を用いる方法として、ディスペンサー法や印刷法が周知である。印刷法には、大気印刷して脱泡する方法や、真空差圧印刷法がある。セラミック基板では、主に真空差圧印刷法が採用されている。可塑性材料基板についても、これが一部採用され、次第に拡大しつつあるが、色々な課題があり未だ主流にはなっていない。また、ウェハレベルのCSP製造工程、又はその封止にも適用されている。今後は、電子部品の複合化、3次元化、又は基板の内蔵化が進むことから、ボイドレスで精密形状を有する封止方法が求められている。
【0003】
半田バンプ形成にも従来の転写法に対して、印刷法が最近注目されるようになつた。高粘度半田ペーストを狭ピッチ化に対応してアスペクト比の高い孔版にいかに定量にボイドなく充填するかが重要な技術で、色々な手法が提案されている。大気印刷機を用いて印刷機のヘッドは、開放型スキージ、密閉型スキージ、圧入型スキージ、密閉型スキージ、ローラ圧入式スキージで印刷や充填される方式が紹介されている。また、ウェハのバンプ形成で感光性ドライフィルムをラミネートしてビアを形成し、印刷法で半田ペーストを埋め、リフローしてバンプを形成し、フィルムを剥離する方法もある。
【0004】
プリント基板やウェハ基板のビア、及びスルーホールの穴埋めは、導電ペースト及び非導電ペーストを用い、スキージを用いた大気印刷又は真空差圧印刷法で充填する方法がある。一括積層法でより簡単で低コストを求めたプロセスの開発が進行している。導電ペーストの印刷法は電気特性と信頼性の向上を目指しペーストの開発が進められている。それをボイドレスで、簡単に各種のビアに充填する真空印刷方法が実用段階に入りつつあるが、装置がおおがかりになり、生産性も低い等の欠点があり改良が求められている。また、スルーホールの穴埋めはマスクと治具を使用して、位置合わせしてワークに樹脂を充填し、更にワークの上面、下面にプラグを形成し、硬化させてワーク両面を研磨して平坦化している。
【特許文献1】特許第3198273号
【特許文献2】特許第3084440号
【特許文献3】特願第2001−33147号
【特許文献4】特許第3113974号
【特許文献5】特許第2873501号
【特許文献6】特開平5−90271号公報
【特許文献7】特開2001−232758号公報
【非特許文献1】Electronic Journal 2003年4月号掲載
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
孔版を使用して、高粘度樹脂を、隙間を持った形状にスキージで平坦に印刷する原理は成り立たない。図15(a)に示すように、スキージ60とワークピース2に付着した樹脂mは、孔版1の開口部103では、上下に間隔があり、スキージ60の移動に対して速度勾配が発生し、後方の樹脂mは引き伸ばされて、規定厚みから数十μ薄く印刷される。これは粘度や隙間に影響されない樹脂供給方法である。
【0006】
孔版1の開口部103の終端では、図15(b)に示すように、スキージ60で押し込められた樹脂mが開口部103の端部で、堰止めされ更にスキージ60が通過時に加圧され開放され、規定厚みより数十μ厚く印刷される。これはスキージの先端部の充填圧力が、マスクやワークピース2の形状に関わらず常に一定を保つ方法である。
【0007】
図15に示す孔版1の開口部103や図示されていないが開口部103内にあるチィップ間の溝部の印刷開始部は、スキージ60の充填圧力が追従できず、未充填になるか又は薄くしか印刷できずボイド発生原因となる。上述の3つの要因で液状樹脂は、精密な形状に印刷ができず、やむなくマスクの形状やスキージ60の無駄な動作、更には信頼性を犠牲にして樹脂を低粘度化することで対処してきたが本質的解決がなされていない。これが印刷部の形状に影響されない強力な充填力のある樹脂供給方法である。
【0008】
積層型等のBGAやCSPの封止で、高密度にワイヤーボンドされ、ネットを張った状態で、高いパーセントでフィラ等が入った高粘度樹脂は、スキージの機能ではとても充填できない。そこで真空下で印刷し真空差圧をかけると充填効果はある程度期待できるが、残留したボイドを排除するメカニズムは無く、ボイドは微小化し分散して残る。基本的には差圧をかける前に樹脂が空洞を充填しエアを押し出す事が必要条件である。ごく薄のパッケージはワイヤが表面近くにあり空洞部と短絡し差圧が発生されずボイドの発生の危険性が高い。又3次元に積層された実装は、高密度にワイヤーボンドされ、更にフリップチィップもされていて、微小隙間にも充填が要求されるので、強力充填機能を有し且つ精密印刷できる方法が不可欠である。更に、電子部品の基板内蔵化では、液状樹脂のボイドレス充填と均一な厚みのコーティングが必要となる。これは粘性の影響を受けない強力な充填方法及びボイドレス充填方法である。
【0009】
ウェハ基板や積層基板のビアに各種の樹脂を充填する場合、強力な印圧を必要とし、スキージの食い込みや樹脂の粘性で、ビアから樹脂がえぐり出され、更にキュアで収縮する。これをカバーするため各種のマスクを用いて、精密位置合わせして充填し補間するが凸状の硬いプラグが形成され、これを研磨でとるのが大変な困難を伴う。これは孔版、精密位置合わせ装置、及びクリーニング装置が一切無くワークピース2に直接充填し、ボイドレスで、凹部や樹脂の収縮をカバーでき、研磨加工を最小限にする穴埋め方法である。
【0010】
詳細に記述するとワークの上面にマスクを位置決めし、下部にはプラグを形成する治具を位置決めして印刷しワークの両面にプラグ(凸状印刷)を形成し、硬化して研磨する。この場合異径穴は選別して印刷し硬化研磨を各穴径ごとに行う。更に、微細化と大型基板化で、マスクのパターンとワークのパターンが、マスクの伸びやワークの研磨伸びで位置が合わず2回に分けて印刷する必要もある。プラグを形成すると研磨が大変でプラグと銅メッキを均一に研磨し厚みや伸びを管理するのが大変な装置を必用とする。ボイドレス化を要求されると真空下での印刷となりマスクがあると位置合わせやクリーニング等を備えた装置となりプラントのような大型で高価となり更に生産性の低い装置となる。ボイドレスで、プラグを治具やマスクを使用しないで形成し、異径穴を同時に充填でき更に加工を最小限にする穴埋め方法が求められている。
【0011】
半田のバンプ形成で、特開2001−232758号、及び特開平10−34878号公報による半田ペースト印刷方法が提案されている。これらの方法の最大の欠点は、ローラの回転とマスクで樹脂を充填し、スクレーパー又はブレードで、マスク上に残留する樹脂をかきとる方式であるから、極めて充填力が弱い。本方法では、ローラ30の半分範囲が充填に寄与し、他半分は樹脂充填の妨げとなっている。これを補う為に特開2001−232758号はエア加圧しているが距離も長く、樹脂量でも変化し高粘度樹脂は均等に反応しない。全体としてはかなり大掛かりな装置となるので真空装置には採用し難い。
【0012】
また、これらの方式は、図16(a)及び(b)を参照しながら述べると、孔版(マスク)1とローラ30が近接し、ローラ30の前後に配置したスキージ601によって樹脂mを供給し、また除去することで充填している。孔版1又はワーク2の広い空間に充填する場合は、樹脂mはローラ30の周りを矢印30x又は矢印30yで表したように循環するだけで、充填には殆ど寄与しない極めて大きな欠陥を有する。
【0013】
特開2001−232765号は、ローラの後部が樹脂mを引き戻す力と樹脂mの全体の加圧の差が内部圧となり圧が高くなるとスクレーパーでは樹脂mを止められず押し出されて厚く印刷される。充填する空間が小さくても大部分は充填に寄与するが途中から樹脂mを引き戻す力も働くので強力な充填が達成されず、印刷形状をコントロールすることができない。
【0014】
特開平10−34878号公報も小空間にはローラ半分の充填力寄与の効果はあるが弱くローラ30の後部で引き戻され後部ブレードと後部のローラ30との間の圧力は不安定で印刷形状をコントロールする事はできない。また、上記のブレードやスクレーパー形状を有する印刷法は、レジストで形成された基板にダイレクトに印刷するとレジストが破壊されてはがれる欠陥を有する。微細化が進むバンプ形成で孔版による方式は限界が来ていて、殆どはレジストでパターン形成された方式に変わりつつある。多様な形状で空間を要するワークにダイレクトに、強力な充填力を持って、平坦にも凸状にも精密に印刷できる基本技術要素が求められている。
【0015】
特開2001−232758号は、ローラの周囲が強固なフレームで包まれ、樹脂換えが極めて困難な事である。当装置を分解して洗浄する必要がある。半田の種類だけでも最近は非常に種類が多くなってきた。また、当装置は樹脂封止にも、各種の穴埋めも行う必要があり樹脂換えが出来るだけ少ない溶剤で簡単に出来るかが実用化のカギを握っている。樹脂に接触する部分はロール1本を残しスキージが簡単に外れ容易に洗浄できる構造でなければならない。
【0016】
更に当方式は、ローラの回りが完全に密閉されているので、マスクとスクレーパーの境界でもエアを噛みこむ。また、特開平10−34878号公報もレジスト等の各種の方法でビアを形成した基板に、半田ペーストを充填するとビア中のエアが樹脂中に取り込まれ、ローラの回りを樹脂が回転を継続し、走行距離に比例して蓄積され多量のボイドを含んだ半田ペーストが供給されることになる。充填しても半田量が少なくなり精密バンプは製造できないし、内部にもボイドが包含される。また、最近の半田はボールが微小化され非常に酸化されやすく後行程での半田の溶解にも大きな問題を生じる。
【0017】
また、上記の真空差圧印刷方法では、可塑性材料mをワークピース2に押込充填する印刷工程において、可塑性材料がワークピース2と孔版1に強く粘着するため、ワークピース2から孔版1を離反する工程で、この可塑性材料を切り離すのが困難である。このように粘着した可塑性材料mは、孔版1に粘着したまま同孔版1から垂れ下がったり、また封止部(パッケージ)の形が崩れるという問題が起こる。
【0018】
詳しくは、図17(a)に示すように、樹脂等の高粘度な可塑性材料mを用いて孔版印刷法を実施する場合に、孔版1とワークピース(回路基板)2とに可塑性材料mが粘着し、孔版1からワークピース2を切り離す際に、封止部を形成する可塑性材料mから成る封止部の周囲が引っ張られることになる。これにより、可塑性材料mから成る封止部の端部が厚くなったり、その近辺が薄くなったりして、厚みムラが発生する。更には、孔版1から垂れ下がった可塑性材料mは切断の反動で孔版1の裏面に付着したり、或いはワークピース2まで落下したりするので、当該印刷法を実施する毎に、孔版1又はワークピース2のクリーニングが不可欠である。また、当該印刷に供する可塑性材料mの分量が変動する要因ともなる。
【0019】
また、同図(b)に示すように、上記の厚みムラを有する封止部を平坦化させるために、これを大気中に一定時間放置することが試みられているが、可塑性材料mが硬化する途中で低粘度化すると、これが流れ出し封止部の形状が崩れるという問題が起こる。この対策として、可塑性材料mが流れるのをキャビティダウン方式で軽減し、或いは、予めディスペンサー等で可塑性材料mの流れを規制するダム状の堰を作ることが試みられているが、製造工程が煩雑になるという問題がある。
【0020】
半田のバンプ形成で、半田ペーストの粘度が極めて高く、色々な充填方法が提案されている。しかし狭ピッチ化ではアスペクト比が大きくなり、ワークピース2に充填した半田ペーストの粘着力と側壁の面積による粘着力の差が少なくなり、非常に転写が不安定で孔版から樹脂が抜ける場合と、一部残して抜ける場合と、更には抜けない場合とがあり、孔版の穴の形状、面粗度の改善及び離型材のコーティングで粘着を低減する対策で補われてきたが、孔版に半田ペーストが残らないことが要求されるようになった。これが孔版の穴に充填された半田ペーストのディスペンス法である。
【0021】
微細化に対応する為、ウェハ基板や樹脂基板に、レジストでマスクを作り、大気印刷でビアに半田を充填し、リフローして、レジストを剥離する方法が実施されているが、ブラインドのビアに大気印刷すると内部に空気が残留し充填量が不足する。更に印刷中の半田にも走行距離に比例した空気が蓄積され半田の量が不足する。更にスキージを使用するので粘性でえぐられ凹状に印刷され半田量が不足し、これらが原因でバンプ精度が低下する問題がある。又バンプの内部にボイド発生の原因にもなる。ボイドレスの半田樹脂で定量充填する方法が望まれている。
【0022】
本発明は、以上の諸問題に鑑みて成されたものであり、精密な電子部品の製造に適した電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、一面を上向きにして水平に位置決めされるワークピースに、可塑性材料を押込充填する電子部品の印刷装置に係るものであって、前記ワークピースの近傍に軸方向の端部が支持され周面を前記ワークピースの一面に近接するローラと、該ローラを前記ワークピースの一面に沿って移動させる移動手段と、該移動手段が前記ローラを移動する移動方向に対して前転する方向に前記ローラを回転させる回転手段と、前記ローラに近接又は接触して、前記ワークピースの一面に押し付けられるスキージとを備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、一面を上向きにして水平に位置決めされるワークピースに、可塑性材料を押込充填する電子部品の印刷装置に係るものであって、前記ワークピースの近傍に軸方向の端部が支持され周面を前記ワークピースの一面に近接するローラと、該ローラを前記ワークピースの一面に沿って移動させる移動手段と、該移動手段が前記ローラを移動する移動方向に対して前転する方向に前記ローラを回転させる回転手段と、前記ローラに近接又は接触して前記ローラの周面に沿って旋回可能に支持されるスキージと、前記回転手段が前記ローラを回転させるトルクの反力により前記スキージを前記ワークピースの一面に押し付ける印圧発生手段とを備えることを特徴とする。前記ワークピースの概念には、少なくともワークピース、及びその一面に形成される集積回路等の表面実装部とが含まれる。
【0025】
更に、前記回転手段は、前記ローラに内装され相対的に回転可能なロータ及びステータを有する回転機と、前記ローラの軸方向に延び前記ローラの端部を貫いて先端を前記ローラの外部へ突出する支軸と、該支軸に前記回転機のロータを接続する減速機と、前記支軸の先端付近から前記ローラの径方向へ延出して前記スキージを支持するリンク部材とを備え、前記ロータが回転駆動する反力を前記スキージが受けると共に、前記ロータの回転を前記減速機で減速しつつ前記支軸へ伝達することを特徴とする。
【0026】
更に、前記ローラが、前記回転機を収納するインナケーシングと、該インナケーシングの周りに配置され且つゴムライニングされた筒状アウタケーシングとを備え、前記インナケーシングと前記筒状アウタケーシングとの間に、空気を誘引するための空隙を設けたことを特徴とする。
【0027】
更に、前記支軸が、一端を真空引きされ他端を前記ローラ内に連通した中空軸から成り、前記ローラ内の空気を前記支軸を介して真空引きすることにより、前記ローラを強制冷却することを特徴とする。
【0028】
更に、前記印圧発生手段は、前記ローラの回転を制動するブレーキ装置を備え、前記回転機が前記ローラを前記ブレーキ装置の制動に抗して回転させるトルクの反力にて、前記リンク部材を、前記ローラの回転する方向と反対方向へ旋回させることにより、前記スキージを前記ワークピースの一面に押し付けることを特徴とする。
【0029】
更に、前記移動手段は、前記ローラの端部に結合したローラ径以下の直径を有するピニオンと、前記ワークピースの側方に敷設され前記移動方向へ延びるラックと、前記ローラの内部で回転可能なロータを有する回転機とを備え、前記ラックを前記ピニオンに噛み合わせ、前記回転機のロータの回転に従わせて前記ローラと共に前記ピニオンを回転することにより、前記ローラを前記移動方向へ移動させることを特徴とする。
【0030】
更に、前記移動手段は、前記ローラを回転自在に支持するブラケットを、前記ローラの外部に設けられた駆動源により、前記移動方向へ移動させることを特徴とする。
【0031】
更に、本発明は、前記可塑性材料が通過可能な通孔パターンを有する孔版を、前記ワークピースの一面に重ね合わせたことを特徴とする。
【0032】
本発明は、一面を有するワークピースに可塑性材料を押込充填する印刷装置、及び前記ワークピースの一面に重なり前記可塑性材料が通過可能な通孔パターンを有する孔版を、収納する上部密封室と、前記孔版を隔てて前記上部密封室内に画定され、前記ワークピースを高さ調整可能に前記一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするアライメントテーブルを収納する下部密封室と、前記上部密封室と前記下部密封室との間に差圧を発生させる差圧発生手段とを備えることを特徴とする。
【0033】
更に、前記差圧発生手段は、前記上部密封室と前記下部密封室とに接続した真空ポンプと、前記上部密封室と前記下部密封室にそれぞれ接続した2つのリーク弁と、前記上部密封室及び前記下部密封室と前記真空ポンプとの間を開閉するストップ弁とを備え、前記真空ポンプが、前記上部密封室と前記下部密封室を真空引きし、印刷後に、前記2つのリーク弁及びストップ弁の操作の組合せで、前記上部密封室と前記下部密封室に大気が流入するのを個別に許容又は封止することを特徴とする。
【0034】
また、本発明は、水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する電子部品の製造方法に係るものであって、一面を有するワークピースを、該一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするステップと、回転機に接続されたローラを、前記ワークピースの近傍に水平姿勢で待機させるステップと、前記回転機により前記ローラを回転させ、該ローラの周面に前記可塑性材料を供給するステップと、前記ローラの周面を前記ワークピースの一面に近接しつつ、前記ローラを前記ワークピースの一面に沿って移動させると同時に、前記ローラが移動する移動方向に対して前転する方向に、前記ローラを前記回転機により回転させるステップと、前記ローラに近接又は接触して前記ローラの周面に沿って支持されるスキージを、前記ワークピースの一面に押し付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【0035】
また、本発明は、水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する電子部品の製造方法に係るものであって、一面を有するワークピースを該一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするステップと、前記ワークピースの一面に、前記可塑性材料が通過可能な通孔パターンを有する孔版を重ね合わせるステップと、回転機に接続されたローラを、前記孔版の近傍に水平姿勢で待機させるステップと、前記ローラを前記回転機により回転させ、該ローラの周面に前記可塑性材料を供給するステップと、前記ローラの周面を前記孔版の上面に近接しつつ、前記ローラを前記孔版の上面に沿って移動させると同時に、前記ローラが移動する移動方向に対して前転する方向に、前記ローラを前記回転機により回転させるステップと、前記ローラに近接又は接触して前記ローラの周面に沿って支持されるスキージを、前記孔版に押し付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【0036】
また、本発明は、水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する電子部品の製造方法に係るものであって、一面を有するワークピースを該一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするステップと、ステータの周りをロータが回転する回転機を内装したローラを、前記ワークピースの近傍に水平姿勢で待機させるステップと、前記ローラを前記回転機により回転させ、該ローラの周面に前記可塑性材料を供給するステップと、余剰の可塑性材料をローラ周面に戻し真空中であれば強力な脱法を可能とし、前記ローラの周面を前記ワークピースの一面に近接しつつ、前記ローラを前記ワークピースの一面に沿って移動させると同時に、前記ローラが移動する移動方向に対して前転する方向に、前記ローラを前記回転機により回転させるステップと、前記ローラに近接し前記ローラの周面に沿って旋回可能に支持されるスキージを、前記回転機が前記ローラを回転させるトルクの反力により、前記ワークピースの一面に押し付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【0037】
また、本発明は、水平に位置決めされるワークピースに可塑性材料を押込充填する電子部品の製造方法に係るものであって、一面を有するワークピースを該一面を上向きにして水平姿勢で位置決めするステップと、前記ワークピースの一面に、前記可塑性材料が通過可能な通孔パターンを有する孔版を重ね合わせるステップと、ステータの周りをロータが回転する回転機を内装したローラを、前記孔版の近傍に水平姿勢で待機させるステップと、前記ローラを前記回転機により回転させ、該ローラの周面に前記可塑性材料を供給するステップ(真空中であればローラ周面の可塑性材料は強力に脱法される。)と、前記ローラの周面を前記孔版の上面に近接しつつ、前記ローラを前記孔版の上面に沿って移動させると同時に、前記ローラが移動する移動方向に対して前転する方向に、前記ローラを前記回転機により回転させるステップと、前記ローラに近接又は接触して前記ローラの周面に沿って旋回可能に支持されるスキージを、前記回転機が前記ローラを回転させるトルクの反力により、前記孔版に押し付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【0038】
更に、本発明は、前記ワークピースを大気圧中に位置決めするステップを含むことを特徴とする。前記ワークピースを真空中に位置決めするステップを含むことを特徴とする。この場合、前記ローラに余剰の可塑性材料が付着して真空に触れながら循環し強力な脱泡が行なわれるようにしても良い。或いは、前記ワークピースを大気圧中に位置決めするステップと、前記ワークピースを真空中に位置決めするステップとを連続的に組み合わせたことを特徴とする。
【0039】
また、本発明は、水平姿勢で位置決めされるワークピースに、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を重ね合わせて、前記ワークピースに前記孔版の下面を近接させるステップと、前記孔版の通孔パターンに可塑性材料を加圧供給することにより、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するステップと、前記孔版の上面側の気圧が前記下面側より高くなるように、前記孔版を隔てて差圧を発生させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0040】
また、本発明は、ワークピースを高さ調整可能なアライメントテーブルに水平姿勢で位置決めするステップと、前記アライメントテーブルに位置決めされた前ワークピースの上方に、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を水平姿勢で支持するステップと、前記アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、前記ワークピースに前記孔版の下面を近接させるステップと、前記孔版の通孔パターンに可塑性材料を加圧供給することにより、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するステップと、前記孔版の下面側の気圧が前記上面側より高くなるように、前記孔版を隔てて差圧を発生させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0041】
更に、本発明は、前記アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、前記ワークピースを前記孔版の下方へ離反させるステップを含むことを特徴とする。また、前記孔版の上面側の気圧、又は前記下面側の気圧の少なくとも一方を、大気圧又は真空圧に設定することを特徴とする。また、前記可塑性材料が、前記ワークピースを絶縁封止する樹脂であることを特徴とする。前記可塑性材料が、半田バンプを形成する半田ペーストであることを特徴とする。或いは、前記可塑性材料が、ウエハ及び樹脂基板を穴埋めする導電性ペースト又は非導電性ペーストであり、スルーホールは裏面に粘着フィルムをラミネートしてブラインド化して、同径又は異径穴も一度で真空充填し、凸状にプラグを形成して硬化又は半硬化し、裏面のフィルムを剥離することを特徴とする。
【0042】
更に、本発明は、上記に記載の方法において、前記可塑性材料がウェハ及び樹脂基板を穴埋めする導電ペースト又は非導電ペーストであり、前記可塑性材料を真空下で押込充填するステップと、前記可塑性材料が硬化後に前記可塑性材料を真空下又は大気下で充填又は真空充填後大気充填するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、以下の効果を達成できる。即ち、回転機によりローラを回転させつつ、ローラの周面に可塑性材料を供給し、ローラを回転させつつ、回路基板及び表面実装(以下で「ワークピース」と記す。)の一面に沿って同ローラを直線的に移動させると、可塑性材料はローラの周面に付着しつつ、ローラとワークピースとの間に押し込まれる。一方、ローラが回転しながらワークピースの一面に沿って移動する過程で、スキージがワークピースの一面に押し付けられる。この状態で、ローラとワークピースとの間に押し込まれた可塑性材料は、ローラの移動する向きに対して後方へ逃げることが充填に適した角度と長さを有するスキージによって規制される、同時にローラとスキージ間の樹脂もシールされる。
【0044】
従って、可塑性材料は、ローラとワークピースとの間でローラの自転と移動で樹脂が送り込まれ、スキージの充填力とローラによる充填力の合力で強力に加圧されながら、マスクされた基板やマスク無しの基板にダイレクトに押込充填され、スキージの角度と接触長さ及びローラの回転速度や移動速度の調整で充填力を目的に合せて最適化して、スキージ先端の圧力をコントロールして、平坦にも凸状にも形状や面積に左右されず印刷できる、スキージの先端で充填力がゼロで有れば平坦に樹脂は切断され、充填力がプラスで有れば凸状に印刷される(図2を参照)。隙間を有する部材に充填し印刷する基本的な要素技術の画期的な発明である。
【0045】
また、スキージとローラ間に若干の隙間を持たせば、過剰な樹脂はローラの回りを循環する、これを利用して例えば、真空と組み合わせると、ローラの表面に付着し循環して真空にさらされ、完全に脱泡された可塑性材料(図11の符号235を参照)が供給され、従来の真空差圧法より高いボイドレスを達成できる。スキージ印圧、ローラ回転、及び移動速度を単独駆動としそれぞれ調整可能にすれば、広範囲な用途に最適化して容易に適合さす事ができる。
【0046】
また、装置を極限まで小型化しシンプル化する為に、ロータが回転駆動する反力をスキージが受けると共に、ロータの回転が減速機で減速されつつ支軸へ伝達されるように、当該印刷装置を構成すれば、次の効果を達成することができる。即ち、可塑性材料の粘度等に応じて、上記の反力を調整、言い換えればローラに加わる負荷を調整するだけで、スキージをワークピースに押し付ける力を増減することができる。また、ローラの端部に結合したピニオンを、ワークピースの側方に敷設され移動方向へ延びるラックに噛み合わせ、回転機によりローラを回転させるので、当該装置の全体を極限まで小型化できる。制御も正転、逆転、停止のみで操作が簡単でどのようなプロセスも即座に実現できる。
【0047】
従って、可塑性材料からボイドを完全に排除することを企図して当該装置を真空中に配置する場合に、このような真空を形成する例えば密封室の容積を大幅に縮小でき、エア機器等のアクチュエータを使用せずエアリークもなく、密封室を真空引きするための真空ポンプ等の小型化が図れ、密封室の強度を小さくでき軽量化でき、更にタクト短縮でき生産性を向上できる。或いは、ローラを回転自在に支持するブラケットを、ローラの外部に設けられた駆動源により、移動方向へ移動させるよう構成した場合、可塑性材料の送り込み量を自由に調整できる利点があるが、装置は多少複雑になる。
【0048】
更に、上記のローラが、回転機を収納するインナケーシングと、インナケーシングの周りに空隙を設けて配置される筒状アウタケーシングとを備える場合、回転機のロータを回転させると、筒状アウタケーシングと共にインナケーシングとが回転する。これらの回転方向は、ローラ全体が孔版の上面に沿って移動する移動方向に対して前転する方向に一致する。
【0049】
また、ローラのインナケーシングと筒状アウタケーシングとの間に空隙を設けることにより、回転機の発生する熱が、ローラの周面に付着した可塑性材料まで伝導するのを阻止し、可塑性材料の粘度が温度の影響を受けて変化するのを抑えることができる。更に、ローラのインナケーシングと筒状アウタケーシングを支える、両端のフランジに通穴を設け、本発明の一部である真空印刷コーターや真空印刷機に適用した場合は、真空引き繰り返すので、回転機を積極的に冷却できるので、熱可塑性材料の粘度を確実に安定させることができる。更に強制冷却をするには、両端の支軸を中空にして真空ポンプに連結する。又ローラは常に樹脂と接しスキージで研摩される状態で消耗品となるので、筒状アウタケーシングが容易に取り替える必要がある、その為にも筒状アウタケーシングは有効である。
【0050】
更に、本発明によれば、可塑性材料を通過させる通孔パターンを有する孔版を、ワークピースの一面に重ね合わせても、上記の効果を奏することができるので、CSP,BGA等の電子部品を表面実装した基板の従来の真空差圧印刷法より、ローラの回転による脱泡効果と充填力強化効果で、一層ボイドレスで平坦度が高く精密な封止が可能である。
【0051】
また、本発明によれば、水平姿勢で位置決めされるワークピースに、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を重ね合わせて、ワークピースに孔版の下面を近接させボイドレスにするには、上下密封室を真空にして、上記の方法によってワークピースに孔版の通孔パターンを介して可塑性材料を押込充填し、2つのリーク弁とストップ弁との操作の組合せで、上部密封室と下部密封室に大気が流入するのを個別に許容又は封止できるので、個々のリーク弁とストップ弁を操作して、孔版の上面側の気圧が下面側より高くなるように、孔版を隔てて差圧を発生させる。
【0052】
これにより、可塑性材料が孔版の通孔パターンから下方へ押し出されようとするので、可塑性材料は良好にワークピースに転写することになる。これをバンプ形成に適用すれば高アスペクトの通孔に充填された半田ペーストが粘着力と差圧で転写され、狭ピッチで高精度のバンプ形成ができる。
【0053】
或いは、アライメントテーブルに上記のように水平姿勢で位置決めされたワークピースの上方に、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を水平姿勢で支持し、アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、ワークピースに孔版の下面を近接させ、可塑性材料を供給して、真空ポンプを起動して、上部密封室と下部密封室を真空引きすることにより上部密封室と下部密封室を真空にした状態で、上記の方法によってワークピースに孔版の通孔パターンを介して可塑性材料を押込充填することができる。更に、個々のリーク弁、及びストップ弁を操作して、孔版の下面側の気圧が上面側より高くなるように、孔版を隔てて差圧を発生させる。
【0054】
これにより、可塑性材料と通孔パターンの周縁との間を、下部密封室の僅かな空気が上方へ通り抜けようとするので、可塑性材料が通孔パターンの周縁から良好に切断されると、同時に周辺の可塑性材料を内部に押しやり硬化途中での粘度低下で周辺への流れ出しを防止できる。主として樹脂封止に適用され精密形状を達成できる革新的方法である。
【0055】
特に、孔版の剛性が高く孔版とワークピースの間に空気が進入するのが阻止される場合には、アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、ワークピースを孔版の下方へ離反させれば良い。これにより、ワークピースを孔版との間の隙間を積極的に広げられるので、両者の間を下部密封室の空気が容易に通り抜けられることになり、孔版の材質や厚み等に係わらず上記の効果を達成するこができる。更に、孔版の上面側の気圧、又は下面側の気圧の少なくとも一方を、大気圧又は真空圧に設定すれば、大気印刷法にも適用できる。
【0056】
更に、上記の真空印刷コーターを封止に使用した場合、スキージとローラの充填力の合力が働き非常に複雑な形状で凹凸や多重のワイヤを樹脂が強力に充填され、残留空気は圧縮されてワークと基板やチップの壁面より押し出される、その後に大気圧に戻され差圧で隅々まで含浸され、表面はスキージの先端で樹脂圧がゼロに近く設定され平坦に切断されて印刷される。従来の真空印刷機はスキージで樹脂を被せるように供給し、真空差圧で充填し真空で仕上げ印刷されるが、ワイヤの上部に樹脂が薄く被された状態で、差圧をかけると未充填部と外部の圧とが短絡し充填できない問題や、残留空気ぶんがマイクロボイドとして残留する事が避けられない問題がある。
【0057】
更に、基板の穴埋めに使用した場合、スルホールの穴埋には、基板の裏面に粘着フィルムをラミネートし、ブラインドビアを形成しマスクレスで真空印刷コーターを使用して、真空で充填印刷し、大気圧で含浸さし更にスキージ先端部で充填力をプラスサイドに設定し、印刷すると上面はプラグが(凸状印刷)形成され、下部は基板と同一面に充填される。これを半硬化又は硬化してフィルムを除去する。この方法異径穴を同時に充填でき、マスクも不要で位置合わせも必要なく、研摩行程を大幅に簡略化できる、従来の装置はプラントであったが簡略な装置となり、革新的な穴埋め法を達成した。更にアスペクトの高いワークは1回充填した後硬化して再度充填硬化すれば、充填ミスも、無く完璧な穴埋めできる。又ダイレクト印刷は例え未充填部が在っても再充填することができ不良品がでない利点がある。
【0058】
更に、バンプ形成に適用する場合は、基板にレジストでバンプ形成に必用なビアを形成し、マスクレスで、真空で印刷コーターで充填し、大気圧に戻し含浸さしてスキージ先端の充填圧をゼロ近辺に設定して平坦に切断し、リフローしてレジストを剥離して達成した。試作では、SnAgCuで10μサイズの粒子を持つ半田ペーストで60μのバンプを形成し、1μ以下の誤差で容易に形成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下に、図1乃至図5に基づき、孔版1を重ね合わされ一面21を上向きにしたワークピース2に、適量の可塑性材料を押込充填する電子部品の印刷装置E1について、印刷ヘッドを例に説明する。また、図中に矢印X,Y,Zでそれぞれ指した方向は、以下の軸方向、移動方向、及び高さ方向に各々対応している。ボルト、ナット、キー、キー溝、及びベアリング等の自明の機械要素については、その図示又は説明を省略する。印刷装置E1の動作を制御するための制御機器、及び動作/停止を検出するセンサー等についても、同様に省略する
【0060】
先ずは、印刷装置E1の印刷ヘッドの原理を説明する。図1は、ワークピース2の一面21に周面を近接するローラ3と、ローラ3をワークピース2の一面21に沿って矢印Yで指した方向に移動させる移動手段4と、移動手段4がローラ3を移動する移動方向に対して前転する方向にローラ3を回転させる回転手段5と、ローラ3に近接又は接触してワークピース2の一面21に押し付けられるスキージ6とを表している。
【0061】
移動手段4としては、ローラ3を支持するブラケット(図示せず)にボールナット40を取付ける一方、ボールナット40に螺合する送りネジ41を、ローラ3の外部に配置したモータ等の駆動源で回転させることにより、ローラ3を移動させるものを適用しても良い。回転手段5としては、ローラ3の外部に配置した回転機50の出力軸に、タイミングプーリ501を取付け、ローラ3の支軸34にタイミングプーリ502を設け、回転機50の出力軸の回転力を、タイミングプーリ501,502に巻掛したタイミングベルト503を介してローラ3に伝達するものを適用しても良い。
【0062】
スキージ6は、ローラ3の周面に沿って旋回できるよう図に表れていない支持体で支持されていれば良く、例えば、エアシリンダ等のアクチュエータを主体とする印圧発生手段7によってワークピース2の一面21に適度に押付けられるようにしても良い。印圧発生手段7は、ローラ3の近傍に設けた滑節70に、直立姿勢又は傾斜姿勢になるよう回動自在に取付けられ、その作動ロッド71をスキージ6に滑節72を介して回動自在に接続している。
【0063】
また、図1に表した一対のスキージ6は、その一方が印圧発生手段7によってワークピース2の一面21に押付けられ、他方がワークピース2の一面21から浮き上がっている。これは、ローラ3の移動方向Yに対して前途に位置するスキージ6の下側に、適量の可塑性材料mを溜めつつ、可塑性材料mが、ローラ3の回転に伴ってその下側に徐々に引き込まれ、更にはローラ3の移動方向Yに対して後方に位置するスキージ6によって圧縮されることを企図している。
【0064】
詳しくは、図2(a)及び(b)に示すように、ローラ3の周面に付着するよう供給された可塑性材料mは、ローラ3が回転しながら移動するに従って、ローラ3の下側に徐々に引き込まれ、ワークピース2の一面21とローラ3との間で圧縮される。このときの可塑性材料mに加わる圧力は、可塑性材料mがローラ3の真下を略過ぎた位置P1でピーク値に達する。この後、同圧力は、スキージ6がワークピース2の一面21に接する接点位置P2に至るまでに降下するが、接点位置P2において尚も所期の圧力を維持できるように設定する。これにより、ワークピース2(例えば、プリント基板又はウェハ基板)のビア又はスルーホールの穴埋を行う場合に、ビア又はスルーホールに詰め込まれる可塑性材料mに適度な圧力を蓄積できるため、図示のように、スキージ6が通過した後で、ビア又はスルーホールから可塑性材料mが凸状に盛り上がることになる。
【0065】
或いは、図2(c)及び(d)に示すように、ローラ3の周面に付着するよう供給された可塑性材料mは、既述の通りワークピース2の一面21とローラ3との間で圧縮される。そして、可塑性材料mに加わる圧力は、ローラ3の真下を略過ぎた位置P3でピーク値に達するが、この後、同圧力が、接点位置P4に至るまでにゼロになるように設定する。これにより、ワークピース2の一面21の凹所に充填された可塑性材料mに圧力が残存しないので、図示のように、スキージ6が通過した後でも、可塑性材料mは平坦な形状を保つことになる。多様な用途に適するためには、ローラ3の回転、移動、及び上記の圧力が単独に調整できることば好ましい。以上の原理を具現化するための最良の形態を以下で詳しく述べる。
【実施例1】
【0066】
図3は印刷装置E1の正面図である。図4(a)は印刷装置E1の側面図、(b)は図3のA−A断面図である。図5は印刷装置E1の要部の構成を概念的に表している。これらの図面に示されるように、印刷装置E1は、水平姿勢で位置決めされる回路基板、及びその表面実装部から成るワークピース2(以下で単に「回路基板2」と記す。)の両側近傍に軸方向Xの両端部31が各々支持され孔版1を介して回路基板2の一面21に周面32を近接するローラ3と、ローラ3を回路基板2の一面21に沿って矢印Y方向に移動させる移動手段4と、移動手段4がローラ3を移動させる過程でローラ3を回転させる回転手段5と、ローラ3に近接しローラ3の周面32に沿って旋回可能に支持されたスキージ6と、回転手段5がローラ3を回転させるトルクの反力によりスキージ6を回路基板2の一面21に重ねられた孔版1に押し付ける印圧発生手段7とを備える。
【0067】
移動手段4と回転手段5とは、それぞれの駆動源として、ローラ3に内装された回転機50を共用している。詳しくは次の通りである。即ち、移動手段4は、ローラ3の両端部31に各々結合した一対のピニオン10と、回路基板2をその両側から挟むように配置され図に表れていない基盤等に固定された一対のラック11と、上記の回転機50とから構成される。一対のラック11は、互いに平行に移動方向Yに沿って延びており、それぞれがピニオン10に噛み合っている。この状態で、ローラ3の周面32は孔版1から僅かに浮き上がり、孔版1とローラ3との間に適当な間隙が保たれている。回転機50は、そのステータ51とロータ52とが相対的に回転可能であり、軸方向Xに延びる筒状のステータ51の内側をロータ52が回転駆動する。
【0068】
ロータ52が上記のように回転駆動すると、これに従ってローラ3と共にピニオン10が回転する。ローラ3とピニオン10の回転の反力は、印圧発生手段7に伝達され、印圧発生手段7がスキージ6を孔版1に押し付けることにより力の釣合いが保たれる。この原理は後述する。ピニオン10が回転すれば、ローラ3全体が移動方向Yに沿って図中を右側又は左側へ移動(以下で「往動」又は「復動」と記す。)することになる。同時に、ローラ3は、これ自体が往動又は復動する方向に対して、前転する方向に回転する。
【0069】
つまり、ローラ3は、往動するとき図4中を時計回りに回転し、復動するとき反時計回りに回転する。このように「前転」するローラ3の周面32の速度(周速度)は、ピニオン10のピッチ円とローラ3の周面32の直径の比率により概ね決定する。図示の例では、ローラ3の周速度は、ローラ3が矢印Y方向へ移動する移動速度の1.2〜1.5倍程度の速さに設定されている。
【0070】
回転手段5は、ローラ3の軸方向Xに延び上記のピニオン10を各々貫いてそれぞれの先端33をローラ3の外部へ突出する一対の支軸34と、回転機50のロータ52に発生するトルクを一方(図3右側)の支軸34へ伝達する減速機8と、一対の支軸34のそれぞれの先端33付近からローラ3の径方向へ延出する一対のリンク部材9を備える。一対のリンク部材9は、スキージ6の中央をピン94にて軸支するスキージ支持バー95の両端を各々支持し、スキージ6はピン94を支点として僅かに揺動できる。また、個々の支軸34は、ローラ3及び個々のピニオン10に対して自由に回転できる。
【0071】
一対の支軸34のそれぞれの先端33付近は、一対の支持片35に各々軸受されている。一対の支持片35は、一対の直動案内軸受36に各々固定されている。更に、一対の直動案内軸受36は、移動方向Yへ延びる一対のガイドレール37にスライド自在に各々係合している。これらの部材は、ローラ3を移動方向Yにスライド自在に支持するブラケット38を構成し、ピニオン10がラック11から離脱することのないよう、ローラ3を真っ直ぐに案内する役割を果たしている。
【0072】
印圧発生手段7は、ローラ3の回転を適度に制動、言い換えればローラ3に負荷を与えるバンドブレーキ17を一対の支持片35の一方に取付けたものである。減速機8、及びバンドブレーキ17は自明の技術であるため詳細な図示を省略し、印圧発生手段7が上記回転の反力を受ける原理のみを説明する。以下に述べる減速機8は、ロータ52に直結したセクタギア91と、このセクタギア91の周囲に配置した複数のプラネタリギア92と、以上のギア91,92を収納するケーシングとから概ね構成されている。
【0073】
即ち、回転機50を起動してロータ52が回転すると、この回転が減速機8にて減速されつつローラ3に伝達される。これによりローラ3が図4中で時計回りに正転する過程で、この反力は上記のプラネタリギア92を介して一方(図3右側)の支軸34に伝達され、同支軸34に反時計回りのトルクが発生する。この結果、図4(b)に実線で表したスキージ6が、回路基板2の一面21に重ねられた孔版1に押し付けられる。或いは、ローラ3を図4中で反時計回りに逆転させると、ローラ3の回転の反力として、ロータ52が正転していた時とは逆の時計回りのトルクが一方の支軸34に発生する。この結果、一方のリンク部材9と共にスキージ6が時計回りに旋回する。そして、スキージ6は、図中に仮想線で表した右側の位置まで達したところで、孔版1に突き当たって静止する。
【0074】
このような回転機50が正転/逆転を繰り返す毎に、スキージ6が以上の旋回動作を繰り返すことになる。また、印圧発生手段7がローラ3に負荷を与えること、言い換えれば、バンドブレーキ17がローラ3の両端部31の何れか一方を締め付けることで得られる摩擦力でローラ3の回転に抵抗を与えることにより、回転機50の反力を積極的に増大し、スキージ6が回路基板2の一面21に押し付けられる力(以下で「印圧」と記す。)を所望に調整することができる。
【0075】
尚、以上のスキージ6の動作は一方のリンク部材9にのみ着目して述べたが、実際には、スキージ6は軸方向Xの全長が30〜90cm以上に及ぶ長尺な形状であるため、印圧を実用的な強さに調節するには、スキージ6に撓みや捩じれが生じないように、スキージ支持バー95の両端に均等な力が加わらなければならない。そこで、一対のリンク部材9を機械的に接続することが望ましい。
【0076】
例えば、一対のセクタギア91を、ブラケット38の一対の支持片35に各々固定し、個々のセクタギア91に噛み合うプラネタリギア92を、個々のリンク部材9の適所に対にして回転自在に各々取付け、これら一対のプラネタリギア92を連結軸93で連結して成る連動機構を付加する。これにより、一方のリンク部材9を一方の支軸34の周りに旋回させる力は、一方のリンク部材9側の各ギア91,92にて、連結軸93を回転されるトルクに変換され、同トルクが、他方のリンク部材9側の各ギア91,92にて、他方のリンク部材9を他方の支軸34の周りに旋回させる力に変換される。
【0077】
また、1個のローラ3に1個の回転機50を内装する例を図示したが、1個のローラ3に2個の回転機50とそれぞれのロータ52に接続する2機の減速機8を内装し、一対の支軸34を個別に駆動しても良い。この場合、2機の回転機50は、それぞれを駆動するためのドライブ回路を電気的に同期させることができるので、上記の連動機構は不要となる。また、回転機50のロータ52の両端から出力を取り出せるようにし、ロータ52の両端にそれぞれ減速機8を個別に接続し、これら2機の減速機にそれぞれ一対の支軸34を接続しても良い。
【0078】
また、移動手段4が、既述のように、ボールナット40をブラケット38に取付ける一方、ボールナット40に螺合する送りネジ41を、ローラ3の外部に配置したモータ等の駆動源で回転させる装置である場合、上記のピニオン10とラック11は省略できる。また、孔版1は、印刷装置E1の構成、及び使用に際して必須の要素ではないので、省略しても良い。
【実施例2】
【0079】
次に、図6乃至図9に基づき、上記の印刷装置E1(印刷ヘッド)を組み込んだ電子部品の製造装置E2を説明する。また、上記の印刷装置E1の移動手段4は、ローラ3に内装された回転機50を主体とする構成に限定されず、ローラ3の外部に設けた駆動源により回転するボールナット等を用いてローラ3を移動させても良い点は、既述の通りである。図6(a)は製造装置E2の正面図であり、図7はその要部の正面である。図8及び図9はそれぞれ製造装置E2の側面図及び平面図である。これらの図面に示されるように、製造装置E2は、印刷装置E1及び孔版1を収納する上部密封室13と、アライメントテーブル12を収納する下部密封室14と、後述の差圧発生手段15とを備える。
【0080】
アライメントテーブル12は、ワークピース2をこの一面101を上向きにして水平姿勢で位置決めできる。具体的には、ワークピース2を水平姿勢で水平面に沿ってスライドさせ、且つワークピース2を水平姿勢のまま回転させられる。更に、このように位置決めしたワークピース2の位置を、アライメントテーブル12は矢印Zで指した高さ方向に変位させることができる。これを以下で「高さ調整」と記す。
【0081】
上部密封室13は、アルミニウム又は鋼製の方形塊から成る基盤230の上面を彫り込んで上記の印刷装置E1及び孔版1が動作可能な凹部231及び下部密封室14を形成し、下部密封室14の上に開閉できる枠体18に取付けられる孔版1(図13を参照)が設けられる。凹部231の底面に、上記一対のガイドレール37を敷設し、同底面から浮き上がらせた位置に、上記一対のラック11を架設している。また、凹部231の底面には挿通孔234が形成されており、下部密封室14内のアライメントテーブル12に、挿通孔234を経て、基盤230の下方に配置された調整機構121が接続している。
【0082】
調整機構121は、アライメントテーブル12の高さ調整に加え、アライメントテーブル12の位置を水平方向に微調整するものである。基盤230は、調整機構121や差圧発生手段15を内側に収納する架台232に支持されている。アライメントテーブル12と挿通孔234との間は、オーリング等により封止されている。基盤230の上面には、アクリル樹脂製の蓋体233が開閉可能に取り付けられ上部密封室13を形成する。蓋体233は、この内部の真空到達度が50Pas〜100Pasに達しても耐えうる剛性を有する。
【0083】
差圧発生手段15は、後述の孔版1によって上部密封室13と下部密封室14とが互いに隔てられた状態で、上部密封室13と下部密封室14との間に差圧を発生させるものである。例えば、差圧発生手段15は、上部密封室13と下部密封室14との両方に接続した1機の真空ポンプ151と、上部密封室13と下部密封室14にそれぞれ接続した2つのリーク弁152,153と備えるものである。更に、上部密封室13及び下部密封室14と、真空ポンプ151との間を、図6(b)の配管系統図に示すように、上部密封室13にはリーク弁152及びストップ弁155が設けられ、下部密封室14にはリーク弁153及びストップ弁154が接続され、これらの弁の操作を組み合わせることで、上部密封室13及び/又は下部密封室14に自由に真空を発生でき、可塑性材料の切断やディスペンスを行なうことができる。
【実施例3】
【0084】
次に、上記のアライメントテーブル12に位置決めされる回路基板2に、適量の可塑性材料mを押込充填するようにした電子部品の製造方法について説明する。また、当該方法で取り扱える可塑性材料には、フィラーを混入したエポキシ樹脂等の液状樹脂(封止用)、エポキシ樹脂をバインダーとして銅又は銀の含有率が80パーセント以上の電導性ペースト/エポキシ樹脂に銅又はシリカゲル等のフィラーを混入した非電導性ペースト(穴埋め用)、半田ペースト(バンプ形成用)、及びポリイミド樹脂/液状レジスト(ワークピースの絶縁用)が少なくとも含まれる。
【0085】
先ずは、図10及び図11に示すように、アライメントテーブル12上に回路基板2を位置決めする。回路基板2の位置決めは、アライメントテーブル12に設けられた図に表示されていない位置決めピンで行なう。この状態で、回路基板2が置かれる雰囲気が大気圧であるか、真空であるかは特に問わない。また、孔版1を回路基板2に重ね合わせても良い。孔版1は、回路基板2の一面21の適所がフィルム等にて予めラミネート(被覆)されている場合には不要であるが、以下では、一面101及び他面102を貫く通孔パターン(開口部)103を有する孔版1を適用した例を説明する。
【0086】
続いて、ローラ3を、例えば図10に表したように、孔版1の近傍に待機させる。この状態で、図11(a)に示すように、ローラ3の周面32又は孔版1の一面101に可塑性材料mを供給する。そして、ローラ3の周面32を孔版1の一面101に近接しつつ、ローラ3を孔版1の一面101に沿って往動させると同時に、ローラ3が移動する移動方向Yに対して前転する方向に、ローラ3を回転機50により回転させる。これにより、ローラ3の周面32に付着した可塑性材料mは、往動するローラ3と孔版1との間に押し込まれる。
【0087】
この過程で、ローラ3に内装した回転機50の発生する熱が、ローラ3の周面32に付着した可塑性材料mまで伝導すると、可塑性材料mの粘度が温度の影響を受けて変化するという不都合がある。そこで、図12(a)に示すように、ローラ3を、回転機50のロータ52(同図で省略)を収納するインナケーシング53と、インナケーシング53の周りに約2mmの空隙54を設けて配置される筒状アウタケーシング55とを備える2重構造としても良い。これにより、回転機50の発生する熱が、ローラ3の周面32を経て可塑性材料mまで伝導するのを阻止できる。また、回転機50のロータ52を回転させると、インナケーシング53と共に筒状アウタケーシング55が回転する。この回転方向は、ローラ3の全体が孔版1の上面に沿って移動する移動方向に対して前転する方向である。
【0088】
更に、真空ポンプ151によって空隙54へ空気を誘引するよう構成しても良い。この場合、図12(b)に示すように、ローラ3の両端部31に、空隙54に通じる複数の通気孔57を形成すると共に、ローラ3の一対の支軸34に中空軸をそれぞれ適用し、これらの中空軸の内孔58を経て空隙54を既述の真空ポンプ151に接続する。真空ポンプ151を起動すると、複数の通気孔57からローラ3の内部へ空気が導入され、更に、この空気が真空ポンプ151によってローラ3の外へ排出される。これにより、ローラ3と回転機50を積極的に冷却できるので、熱可塑性材料mの粘度を確実に安定させられる。また、ローラ3を回転させない時には、回転機50が余計な熱を放出しないように、回転機50に供給される電力を完全に遮断することが好ましい。
【0089】
また、ローラ3の周面32に付着した可塑性材料mが、ローラ3と孔版1との間に良好に押し込まれるように、ローラ3の周面32にゴム製のライニング(被覆材)を設ける等して、可塑性材料mのローラ3への粘着を促進しても良い。また、ゴム製品はその磨耗が比較的早いので、同ライニングを交換するに際して、ローラ3から筒状アウタケーシング55だけを取り外せるという観点からも、ローラ3を上記のような2重構造にすることが好ましい。
【0090】
続いて、ローラ3が回転しながら孔版1の上方を通過する過程で、スキージ6が、回転機50がローラ3を回転させるトルクの反力により、孔版1の一面101に押し付けられる。このため、上記のように往動するローラ3と孔版1との間に押し込まれた可塑性材料mは、ローラ3の往動する向きに対して後方へ逃げようとすることがスキージ6によって規制される。従って、往動するローラ3と孔版1との間で適度に加圧されながら、通孔パターン103内へ供給される(加圧供給)。これにより、可塑性材料mは、回路基板2の一面21に確実に押込充填されることになる。上記のように可塑性材料mが加圧される程度は、可塑性材料mの粘度等を勘案して上記の印圧の調整、並びに、スキージ6の移動速度、スキージ6の角度、樹脂の接触長さ、及びローラ3の回転速度の設定/調整を行なうことにより所望に設定することができる。
【0091】
尚、孔版1を省略する場合、回路基板2の一面21にスキージ6を直接に接触させても良いが、上記の押え板又は押え枠に印刷エリアを広く開口し、基板上の樹脂を残さず受け渡す役割を担わせる。また、スキージ6はローラ3の往動又は復動に関係なく、所定の均し効果を達成できるように、図11に例示したような上下に対称な形状として良いが、両縁部(図中で上下部)の形状を非対称にしても良い。この場合、ローラ3が往動又は復動するときに可塑性材料mを往動側では、押込充填用で、スキージ6の角度と接触長さを設定し、復動側は、表面を平坦にするか凸状にするかで角度と長さを決める。
【実施例4】
【0092】
次に、電子部品の他の製造方法について説明する。先ずは、図13に示すように、基盤230におけるアライメントテーブル12の真上に対応する位置に、枠体18が設けられており、枠体18に孔版1を水平姿勢で位置決めする。一方、上記の要領にてアライメントテーブル12に回路基板2を水平姿勢で位置決めする。この回路基板2を適切に高さ調整することによりに、孔版1の他面102に回路基板2の一面21を近接させる。
【0093】
続いて、実施例3として述べた方法を適用して、真空ポンプ151により上部密封室13と下部密封室14とを同時に真空にする。この過程で、可塑性材料mに大気圧下で潜在していたボイドを完全に排出(脱泡)できる。可塑性材料mを孔版1の通孔パターン103に加圧供給することにより、回路基板2に可塑性材料mを押込充填する。更に、孔版1によって隔てられた上部密封室13と下部密封室14との間に、上記の差圧発生手段15を起動させて差圧を発生させる。
【0094】
そして、図6(b)の配管系統図で示すストップ弁155を閉じ、リーク弁152を開ければ上部密封室13の圧力が上昇する。これにより、可塑性材料mが孔版1の通孔パターン103から下方へ押し出されようとする。更に、アライメントテーブル12を僅かに下降させれば、図13に示すように、可塑性材料mは、通孔パターン103に残ることなく、回路基板2へ良好に転写する。この後、上部密封室13と下部密封室14とを大気圧に戻し、図8に示すように蓋体233を開き、更に枠体18及び孔版1を開き、回路基板2を製造装置E2から取り外せば一連の製造工程は終了する。
【実施例5】
【0095】
次に、電子部品の更に他の製造方法について説明する。図14に示すように、枠体18に孔版1を位置決めし、アライメントテーブル12に回路基板2を位置決めする点は実施例4と同様である。更に、回路基板2を適切に高さ調整することによりに、孔版1の他面102に回路基板2の一面21を近接させ、真空ポンプ151により上部密封室13と下部密封室14とを同時に真空にした状態で、回路基板2に可塑性材料mを押込充填する点も実施例4と同様である。
【0096】
続いて、孔版1を隔てて差圧を発生させる。図6(b)の配管系統図で示すストップ弁154を閉じ、リーク弁153を僅かに開放すれば、下部密封室14の内圧が上昇するので、孔版1の他面102側の気圧が一面101側より高くなる。これにより、可塑性材料mと通孔パターン103の周縁との間を、下部密封室14の僅かな空気が上方へ通り抜けようとするので、可塑性材料mが通孔パターン103の周縁から良好に切断される。孔版1の剛性が高く孔版1と回路基板2の間に空気が進入するのが阻止される場合には、アライメントテーブル12の高さ調整を行うことにより、回路基板2を孔版1の下方へ離反させることで、回路基板2を孔版1との間の隙間を広げても良い。
【0097】
尚、実施例4,5に記した上部密封室13と下部密封室14とは、必ずしも真空にする必要はなく、孔版1の一面101側の気圧、又は他面102側の気圧の少なくとも一方を、大気圧であっても良い。また、可塑性材料mは、回路基板2を絶縁封止する合成樹脂であっても良い。或いは、可塑性材料mは、半田バンプを形成する半田ペーストであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、ワークピース上に表面実装された電子部品の樹脂封止、ワークピースへの半田バンプの形成、回路基板の穴埋め、回路基板の樹脂コーティング、ディスプレー分野の各種製造工程等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態に係る電子部品の印刷装置の原理を説明する概念図。
【図2】(a)本発明の実施形態に係る電子部品の印刷装置の作動の一例を説明する概念図、(b)はその圧力を充填力として縦軸に表し、ローラ及びスキージのそれぞれ位置に対応する距離を横軸に表したグラフであり、(c)は作動の他例を説明する概念図、(d)はその圧力を充填力として縦軸に表し、ローラ及びスキージのそれぞれ位置に対応する距離を横軸に表したグラフ。
【図3】本発明の実施例1の電子部品の印刷装置の一部を破断した正面図。
【図4】(a)は本発明の実施例1の電子部品の印刷装置の側面図、(b)は図3のA−A断面図。
【図5】本発明の実施例1の電子部品の印刷装置の要部を示す概念図。
【図6】(a)は本発明の実施例2の電子部品の製造装置の正面図、(b)はその配管系統図。
【図7】本発明の実施例2の電子部品の製造装置の要部の正面図。
【図8】本発明の実施例2の電子部品の製造装置の側面図。
【図9】本発明の実施例2の電子部品の製造装置の平面図。
【図10】本発明の実施例3の電子部品の製造方法の工程を表した概念図。
【図11】(a)は本発明の実施例3の電子部品の製造方法の原理を表した概念図、(b)はその他の例を表した概念図。
【図12】(a)は本発明の実施例3の電子部品の製造方法に適用したローラの変形例を示す断面図、(b)はその端面図。
【図13】本発明の実施例4の電子部品の製造方法の工程を表した概念図。
【図14】本発明の実施例5の電子部品の製造方法の工程を表した概念図。
【図15】(a)は従来例のスキージによる電子部品の製造工程を表した概念図、(b)はその仕上がりを表した概念図。
【図16】(a)は、従来例の装置による電子部品の製造工程の一例を表した概念図(b)はその他例を表した概念図。
【図17】(a)は従来例の孔版による電子部品の製造工程を表した概念図、(b)はその他の例を表した概念図。
【符号の説明】
【0100】
1:孔版
101:一面
102:他面
103:通孔パターン(開口部)
2:ワークピース(回路基板、表面実装部)
21:一面
3:ローラ
31:両端部
32:周面
33:先端
34:支軸
35:支持片
36:直動案内軸受
37:ガイドレール
38:ブラケット
4:移動手段
40:ボールナット
41:送りネジ
5:回転手段
50:回転機
501,502:タイミングプーリ
503:タイミングベルト
51:ステータ
52:ロータ
53:インナケーシング
54:空隙
55:アウタケーシング
57:通気孔
58:内孔
6:スキージ
7:印圧発生手段
70,72:滑節
71:作動ロッド
8:減速機
9:リンク部材
91:セクタギア
92:プラネタリギア
93:連結軸
94:ピン
95:スキージ支持バー
10:ピニオン
11:ラック
12:アライメントテーブル
121:調整機構
13:上部密封室
14:下部密封室
15:差圧発生手段
151:真空ポンプ
152,153:リーク弁
154,155:ストップ弁
17:バンドブレーキ
18:枠体
230:基盤
231:凹部
232:架台
233:蓋体
234:挿通孔
E1:印刷装置
E2:製造装置
m:可塑性材料
P1,P3:位置
P2,P4:接点位置
X:軸方向
Y,Z:矢印、移動方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平姿勢で位置決めされるワークピースに上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を重ね合わせて前記ワークピースに前記孔版の下面を近接させるステップと、
前記孔版の通孔パターンに可塑性材料を加圧供給することにより、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するステップと、
前記孔版の上面側の気圧が前記下面側より高くなるように、前記孔版を隔てて差圧を発生させるステップと、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
ワークピースを高さ調整可能なアライメントテーブルに水平姿勢で位置決めするステップと、
前記アライメントテーブルに位置決めされた前記ワークピースの上方に、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を水平姿勢で支持するステップと、
前記アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、前記ワークピースに前記孔版の下面を近接させるステップと、
前記孔版の通孔パターンに可塑性材料を加圧供給することにより、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するステップと、
前記孔版の下面側の気圧が前記上面側より高くなるように、前記孔版を隔てて差圧を発生させるステップと、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、前記ワークピースを前記孔版の下方へ離反させるステップを含む請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記孔版の上面側の気圧又は前記下面側の気圧の少なくとも一方を大気圧又は真空圧に設定する請求項1乃至3の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記可塑性材料が前記ワークピースを絶縁封止する樹脂である請求項1乃至4の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記可塑性材料が半田バンプを形成する半田ペーストである請求項1乃至5の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項1】
水平姿勢で位置決めされるワークピースに上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を重ね合わせて前記ワークピースに前記孔版の下面を近接させるステップと、
前記孔版の通孔パターンに可塑性材料を加圧供給することにより、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するステップと、
前記孔版の上面側の気圧が前記下面側より高くなるように、前記孔版を隔てて差圧を発生させるステップと、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
ワークピースを高さ調整可能なアライメントテーブルに水平姿勢で位置決めするステップと、
前記アライメントテーブルに位置決めされた前記ワークピースの上方に、上面及び下面を貫く通孔パターンを有する孔版を水平姿勢で支持するステップと、
前記アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、前記ワークピースに前記孔版の下面を近接させるステップと、
前記孔版の通孔パターンに可塑性材料を加圧供給することにより、前記ワークピースに前記可塑性材料を押込充填するステップと、
前記孔版の下面側の気圧が前記上面側より高くなるように、前記孔版を隔てて差圧を発生させるステップと、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記アライメントテーブルの高さ調整を行うことにより、前記ワークピースを前記孔版の下方へ離反させるステップを含む請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記孔版の上面側の気圧又は前記下面側の気圧の少なくとも一方を大気圧又は真空圧に設定する請求項1乃至3の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記可塑性材料が前記ワークピースを絶縁封止する樹脂である請求項1乃至4の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記可塑性材料が半田バンプを形成する半田ペーストである請求項1乃至5の何れかに記載の電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−205489(P2008−205489A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74937(P2008−74937)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【分割の表示】特願2004−329980(P2004−329980)の分割
【原出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000219772)東海商事株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【分割の表示】特願2004−329980(P2004−329980)の分割
【原出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000219772)東海商事株式会社 (21)
【Fターム(参考)】
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