説明

電子部品の製造装置、及び電子部品の製造方法

【課題】電極中に空気溜まりが生じることもなく、所望形状の電極を高効率で製造する装置と方法を提供する。
【解決手段】電極形成処理部は、導電性ペースト2が貯留されたペースト槽3と、矢印A方向に回転駆動する2個のガイドローラ4a、4bと、ガイドローラ4aとガイドローラ4bとの間に掛け回されて矢印B方向に循環走行する塗布ベルト5と、一方のガイドローラ4aの近傍に配された層厚調整部材6とを備えている。塗布ベルト5の上面にはペースト層7が形成されている。第1の保持部材8に保持された部品素体1は、塗布ベルト5の走行速度に同期しながら、矢印C方向に搬送される。部品素体1の端部1aが、ペースト層7に接触してペースト層7中に浸漬され、これにより該端部1aに導電性ペーストが塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の製造装置、及び電子部品の製造方法に関し、より詳しくは部品素体の端部に電極が形成された積層セラミック電子部品等の電子部品の製造装置、及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品等の電子部品では、通常、セラミック焼結体である部品素体の両端部に外部電極が形成されている。そしてこの外部電極の形成方法については、従来より、種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ベルトを駆動ローラ等にエンドレスに掛け回わし循環動するように備え、該ベルトをその循環動の途中で電極用のペーストを入れたペーストタンク中を通過せしめてその表面側にペーストを塗布して設定厚のペースト層を形成し、そのペースト層を形成したベルトの水平位置で、素材バーの一側面をペースト層に押圧浸漬して、該素材バーの一側面に設定幅にペーストを塗布するように備え、素材バーへのペースト塗布を終えたベルトをペーストタンクの上方でストレーナー中を通過せしめて、ベルト表面のペーストを掻き取ると共に掻き取ったペースト中の異物を漉して、ペーストタンクへ戻すようにしたチップ型電子部品の電極塗布手段が提案されている。
【0004】
この特許文献1では、ベルトを駆動ローラにエンドレスに掛け回し、そのベルト表面にペースト層を形成し、そのペースト層を形成したベルトの水平位置で、部品本体の一端面をペースト層に押圧浸漬し、該端面にペーストを塗布している。また、この特許文献1では、ベルトをペーストタンク中を通過させると共に、スキージでペーストの層厚を調節することにより、ベルト表面に均一な厚みのペースト層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−283311号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、導電性ペーストを部品素体の端部に塗布する際に、ベルトに対し前記端部を垂直方向からペースト層に浸漬させているため、下記(1)〜(3)に示すような問題点があった。すなわち、
(1)例えば、積層型セラミックコンデンサの場合、ペースト層が形成されたセラミックグリーンシートを積層し、これをペースト層の形成されていないセラミックグリーンシートで挟持し圧着し、これによりチップ成形品を作製し、このチップ成形品を焼成し、内部電極が埋設された部品素体を形成している。この場合、内部電極となるペースト層とセラミック層となるセラミックグリーンシートとでは焼成時の収縮率が異なることから、図7(a)に示すように、部品素体101の端面101aが凹形形状となる。
【0007】
そして、特許文献1では、図7(b)に示すように、部品素体101は、端面101aが、矢印a方向に走行するベルト102上のペースト層103に対し、矢印bで示すように垂直方向から浸漬させているため、凹形形状の端面101aの内部に空気104がトラップして空気溜まりが生じ易くなる。このため図7(c)に示すように、部品素体101を矢印c方向に引き上げる際には、空気104は下方に押し下げられ、その結果、図7(d)に示すように、電極105中に空気104が残存し、後工程で乾燥処理を行った場合、空気の破裂等を招き、品質が劣化するおそれがある。
【0008】
(2)特許文献1では、図8(a)の矢印bに示すように、部品素体111をペースト層103に対して垂直方向から浸漬させ、図8(b)の矢印cに示すように、該部品素体111を垂直方向に引き上げていることから、部品素体111の端面111aとペースト層103との界面が真空状態となるおそれがあり、このためペースト層103を端面111aの全域に付着させるのが困難となる。
【0009】
したがって部品素体111を高速で引き上げた場合、図8(c)に示すように、ペーストが端面全域に塗付されず、端面111a中に電極112が形成されない部分が生じるおそれがある。このため特許文献1では、電極112が端面全域に回り込むように部品素体111を低速で引き上げる必要があり、生産性に劣る。
【0010】
(3)特許文献1では、図9(a)に示すように、表面にペースト層103が形成されたベルト101を矢印a方向に循環走行させた状態で、部品素体121を矢印bに示す垂直方向からペースト層103に押圧浸漬させている。このため部品素体101のペースト層103への押圧浸漬によってペースト層103が堰き止められることとなり、図9(b)に示すように、電極122の厚みが不均一になるおそれがある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、電極中に空気溜まりが生じることもなく、所望形状の電極を高効率で製造することができる電子部品の製造装置、及び電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係る電子部品の製造装置は、略直方体形状に形成された部品素体の端部に導電性ペーストを塗布して電極を形成する電極塗布処理部を備えた電子部品の製造装置であって、該電極形成処理部が、回転駆動する複数のガイドローラと、導電性粉末を含有したペースト層が表面に形成され、前記複数のガイドローラ間に掛け回されて該ガイドローラ間を循環走行する塗布ベルトと、前記部品素体を保持して前記ペースト層の走行方向と同一方向に搬送する保持部材とを有し、前記保持部材に保持された前記部品素体の端部が、前記保持部材の搬送中に前記ペースト層に接触し、前記部品素体の端部に電極が形成されることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の電子部品の製造装置は、前記電極形成処理部が、前記導電性ペーストを貯留するペースト槽と、前記塗布ベルトに形成されるペースト層の層厚を調整する層厚調整部材とを有し、前記塗布ベルトは、前記ペースト槽に貯留された前記導電性ペーストに浸漬して該導電性ペーストが付着され、前記ペースト層は、前記塗布ベルトに付着した前記導電性ペーストが前記層厚調整部材で層厚調整されるのが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の電子部品の製造装置は、前記電極形成処理部で電極形成された前記電極の形状仕上げを行う電極仕上げ処理部を備え、前記電極仕上げ処理部は、前記保持部材の搬送方向と同一方向に回転する掻き取りローラを有し、前記電極の端面に付着したペーストの一部が、前記掻き取りローラで掻き取られるのが好ましい。
【0015】
また、本発明の電子部品の製造装置は、前記保持部材が、前記塗布ベルトの走行速度に同期しながら前記ペースト層の走行方向と同一方向に搬送されるのが好ましい。
【0016】
また、本発明の電子部品の製造装置は、前記電極形成処理部が、前記塗布ベルトを昇降させる昇降手段を有するのも好ましい。
【0017】
また、本発明の電子部品の製造装置は、前記昇降手段が、複数設けられるのも好ましい。
【0018】
また、本発明に係る電子部品の製造方法は、略直方体形状に形成された部品素体の端部に導電性ペーストを塗布して電極を形成するペースト塗布工程を含む電子部品の製造方法であって、前記ペースト塗布工程は、導電性ペーストからなるペースト層を塗布ベルトの表面に形成し、該塗布ベルトを所定方向に走行させると共に、前記部品素体を前記塗布ベルトと同一方向に前記塗布ベルトの走行速度に同期させて搬送させ、前記部品素体の端部を前記搬送中に前記ペースト層に接触させ、前記部品素体の端部に前記導電性ペーストを塗布して電極を形成することを特徴としている。
【0019】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記電極の端面に付着したペーストの一部を、掻き取りローラで掻き取る電極仕上げ工程を含んでいるのが好ましい。
【0020】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記ペースト塗布工程が、前記塗布ベルトを昇降させて前記部品素体の端部と前記ペースト層とを接触させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電子部品の製造装置によれば、電極形成処理部が、回転駆動する複数のガイドローラと、導電性粉末を含有したペースト層が表面に形成され、前記複数のガイドローラ間に掛け回されて該ガイドローラ間を循環走行する塗布ベルトと、前記部品素体を保持して前記ペースト層の走行方向と同一方向に搬送する保持部材とを有し、前記保持部材に保持された前記部品素体の端部が、前記保持部材の搬送中に前記ペースト層に接触し、前記部品素体の端部に電極が形成されるので、部品素体と塗布ベルトとは同一方向に走行し、部品素体の端部が塗布ベルトに接触する。すなわち、部品素体の端部は、部品素体の側面側から徐々にペースト層に接触してゆくことから、部品素体の端面に形成される空気溜まりは押し出され、電極中に空気溜まりが生じるのを抑制することができる。また、部品素体がペースト層から離れるときも、保持部材を塗布ベルトの走行方向に搬送させながら離反させることができ、これにより端面全域に略均一にペーストを塗布することができ、所望の電極を形成することが可能となる。
【0022】
また、前記電極形成処理部は、前記導電性ペーストを貯留するペースト槽と、前記塗布ベルトに形成されるペースト層の膜厚を調整する膜厚調整部材とを有し、前記塗布ベルトは、前記ペースト槽に貯留された前記導電性ペーストに浸漬されて前記導電性ペーストが付着され、前記ペースト層は、前記塗布ベルトに付着した前記導電性ペーストが前記層厚調整部材で層厚調整されることにより、所望厚みのペースト層を形成することができ、これにより部品素体の側面側のいわゆる折り返し寸法も所望寸法となるように電極を形成することができる。
【0023】
さらに、前記電極形成処理部で電極形成された前記電極の形状仕上げを行う電極仕上げ処理部を備え、前記電極仕上げ処理部は、前記保持部材の搬送方向と同一方向に回転する掻き取りローラを有し、前記電極の端面に付着したペーストの一部が、前記掻き取りローラで掻き取られることにより、所望の電極厚みに仕上げられた電子部品を容易に得ることができる。
【0024】
また、前記保持部材が、前記塗布ベルトの走行速度に同期しながら前記ペースト層の走行方向と同一方向に搬送されることにより、塗布ベルトと保持部材とが同期しつつ水平方向から部品素体の端部がペースト層に浸漬する。したがって、部品素体がガイドローラ間を搬送される間が塗布時間となるため、塗布時間を十分に確保することが可能となる。また、一つの保持部材がガイドローラ間を搬送される間、別の保持部材を順次、電極形成処理部に投入できるので、塗布速度を低下させることなく導電性ペーストを高速で塗布することが可能となり、生産性向上を図ることができる。
【0025】
さらに、前記電極形成処理部が、前記塗布ベルトを昇降させる昇降手段を有している場合は、部品素体の端部を浸漬させた状態で、ペースト層と部品素体の端部とを走行させることができ、保持部材及び塗布ベルトの移動速度で調整することなく上述と同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
また、前記昇降手段が、複数設けられることにより、ペースト層と部品素体の端部との接触時間を容易に調整することができ、所望寸法の電極形成を容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明の電子部品の製造方法によれば、ペースト塗布工程は、導電性ペーストからなるペースト層を塗布ベルトの表面に形成し、該塗布ベルトを所定方向に走行させると共に、前記部品素体を前記塗布ベルトと同一方向に前記塗布ベルトの走行速度に同期させて搬送させ、前記部品素体の端部を前記搬送中に前記ペースト層に接触させ、前記部品素体の端部に前記導電性ペーストを塗布して電極を形成するので、部品素体の端部は、部品素体の側面側から徐々にペースト層に接触してゆく。したがって、部品素体の端面に形成される空気溜まりは押し出され、電極中に空気溜まりが生じるのを抑制することができる。また、部品素体がペースト層から離れるときも、塗布ベルトの走行方向に搬送させながら離反させることができ、したがって、端面全域に略均一にペーストを塗布することができ、所望の電極を形成することが可能となる。しかも、部品素体は塗布ベルトから離反するまでペースト層と接触させてペーストを塗布することができるので、塗布速度を低下させることもなく、電極形成を行うことができ、生産性を低下させることもない。
【0028】
また、前記電極の端面に付着したペーストの一部を、掻き取りローラで掻き取る電極仕上げ工程を含むことにより、所望の電極厚みに仕上げられた電子部品を容易に得ることができる。
【0029】
また、前記ペースト塗布工程が、前記塗布ベルトを昇降させて前記部品素体の端部と前記ペースト層とを接触させることにより、部品素体の端部を浸漬させた状態で上述と同様、ペースト層と部品素体の端部を同期させて走行させることができ、上述と同様の作用効果を得ることができる。また、ペースト層と部品素体の端部との接触時間を容易に調整すること可能となり、所望寸法の電極形成を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】部品素体の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る電子部品の製造装置の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す要部断面図である。
【図3】上記第1の実施の形態の他の要部断面図である。
【図4】本発明に係る電子部品の製造装置で製造された電子部品の一例を示す斜視図である。
【図5】電子部品の製造工程を示す製造工程図である。
【図6】本発明に係る電子部品の製造装置の第2の実施の形態の要部断面図である。
【図7】特許文献1の課題(その1)を説明するための図である。
【図8】特許文献1の課題(その2)を説明するための図である。
【図9】特許文献1の課題(その3)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0032】
図1は、本発明の製造装置に供される積層セラミックコンデンサ用の部品素体の一例を示す斜視図である。
【0033】
この部品素体1は、BaTiO等を主成分とするセラミック層とAg等を含有した内部電極層(不図示)が交互に複数積層された積層体を焼成した焼結体からなり、略直方体形状に形成されている。また、前記複数の内部電極層は、外部電極と電気的に接続可能となるように、一方の端面又は他方の端面に互い違いに表面露出されている。
【0034】
そして、本発明の製造装置を使用し、部品素体1の両端部1a、1b、すなわち端面21a、21b、及びこれら端面21a、21b近傍の四側面(以下、「側面折り返し部」という。)22a、22bに外部電極が形成される。
【0035】
図2は、本発明に係る電子部品の製造装置の要部である電極形成処理部の一実施の形態(第1の実施の形態)を示す構造断面図である。
【0036】
本製造装置の電極形成処理部は、導電性ペースト2が貯留されたペースト槽3と、矢印A方向に回転駆動する2個のガイドローラ4a、4bと、ガイドローラ4aとガイドローラ4bとの間に掛け回されて矢印B方向に循環走行する塗布ベルト5と、一方のガイドローラ4aの近傍に配されたブレード6とを備えている。
【0037】
本実施の形態では、塗布ベルト5は、ガラス繊維やアラミド繊維等の素材をクロス状にフッ素樹脂を含浸させて形成されており、これにより耐久性が良好で、ガイドローラ4a、4b間に十分なテンションを負荷することができ、これにより搬送時の振動を抑制している。
【0038】
そして、塗布ベルト5は、導電性ペースト2に浸漬されて該導電性ペースト2が付着され、導電性ペースト2の層厚はブレード6で調整されて前記塗布ベルト5の上面にペースト層7が形成される。外部電極は、上述したように部品素体1の端部1a、1b、すなわち端面21a、21b、及び側面折り返し部22a、22bに形成されることから、側面折り返し部22a、22bに塗布される塗布長が所定寸法となるように、ペースト層7の厚みはブレード6によって調整される。
【0039】
導電性ペースト2は、導電性粉末の他、バインダ樹脂や有機溶剤を含有している。導電性粉末としては、特に限定されるものではなく、例えば、Cu、Ni等の卑金属材料が好んで使用することができる。
【0040】
また、本製造装置は、矢印B方向に循環走行する塗布ベルト5と同期して水平方向に走行する第1の保持部材8を有している。
【0041】
第1の保持部材8は、粘着面8aを有し、該粘着面8aに電極形成用の部品素体1の端面21bが貼着される。すなわち、粘着面8aは、部品素体1を貼着させるためのものであり、したがって粘着性を有していれば、その構成は特に限定されるものではない。例えば、両面テープを貼着させてもよいし、シリコン性の弾性体に粘着剤を含侵させても良い。また、発泡性の粘着テープでもよく、このような発泡性の粘着テープを使用した場合は、熱により発泡させることで部品素体1の第1の保持部材8からの離脱を容易に行うことができる。
【0042】
この第1の保持部材8は、レール状部材に摺動自在に取り付けられ、前記塗布ベルト5の走行速度に同期しながら部品素体1を保持して第1のペースト層7の走行方向(矢印B方向)と同一方向に搬送される。
【0043】
そして、以下のようにして部品素体1の端部1aに第1の外部電極9aが形成される。
【0044】
すなわち、第1の保持部材8に保持された部品素体1は、塗布ベルト5の走行速度に同期しながら、矢印C方向に搬送される。そして、部品素体1の一方の端部1aが、ペースト層7に接触してペースト層7中に浸漬され、これにより該端部1aに導電性ペーストが塗布される。この場合、部品素体1の端部1aは、部品素体1の側面側から徐々にペースト層7に接触してゆく。したがって、部品素体1の端面21aに形成される空気溜まりは押し出され、空気溜まりが生じるのを抑制することができる。
【0045】
部品素体1は、矢印Cに示すように、塗布ベルト5の走行方向と同一方向に搬送されながら離反する。そしてこれにより、導電性ペーストが端面21a全域に略均一に塗布され、第1の外部電極9aが形成される。
【0046】
しかも、ペースト層7は、ブレード6によって所望厚みに形成されていることから、部品素体1の側面折り返し部22aが所望寸法となるように第1の外部電極9aを形成することができる。
【0047】
尚、塗布ベルト5は、部品素体1の端面21aが押し付けられており、このように塗布ベルト5が端面21aを押し付けることにより、塗布ベルト5の稼動中に生じ得る振動の影響を極力回避している。
【0048】
このように本電極形成処理部では、塗布ベルト5の走行速度と第1の保持部材8の搬送速度とを同期させながら、部品素体1は水平方向から端部1aがペースト層に浸漬し、塗布ベルト5から離反するまでペースト層7と接触し、導電性ペーストは端部1aに塗布される。したがって、塗布時間を十分に確保することが可能となり、塗布速度を低下させることなく端面21aに万遍なく導電性ペーストを高速で塗布することが可能となり、生産性向上を図ることができる。
【0049】
このようにして部品素体1の端部1aに第1の外部電極9aが形成された後、該第1の外部電極9aには電極仕上げ処理が施され、第1の外部電極9aの端面形状が整備される。
【0050】
図3は本発明の製造装置の電極仕上げ処理部における構造断面図である。
【0051】
すなわち、本製造装置の電極仕上げ処理部は、矢印D方向に回転駆動する掻き取りローラ10と、該掻き取りローラ10により掻き取られたペーストの一部を収容する第2のペースト槽11と、掻き取りローラ10に付着したペーストをクリーニングするスキージ12とを有している。掻き取りローラ10の材質は、特に限定されるものではないが、部品素体1が損傷しないように軟性の樹脂や、掻き取り精度の良好な金属で形成するのが好ましい。
【0052】
このように形成された電極仕上げ処理部では、第1の保持部材8を矢印E方向に示すように、掻き取りローラ10の回転方向と同一方向に搬送させ、第1の外部電極9aの底面を掻き取りローラ10と接触させ、余分に付着しているペーストの一部を掻き落とし、そのまま矢印E方向に搬送させて掻き取りローラ10から離反さし、第1の外部電極9aの端面膜厚を所定厚みに整備する。
【0053】
尚、掻き取りローラ10に付着したペーストの一部は、スキージ12で掻き落とされクリーンニングされる。
【0054】
その後、部品素体1を反転させて上述と同様に他方の端部1bにも電極形成処理及び電極仕上げ処理を行う。
【0055】
図4は上述のようにして作製されたに積層セラミックコンデンサの斜視図であって、該積層セラミックコンデンサ13は、部品素体1の両端部1a、1b(端面21a、21b及び側面折り返し部22a、22b)に第1及び第2の外部電極9a、9bが形成される。
【0056】
図5は本発明に係る電子部品の製造装置の全体を示す全製造工程を示す製造工程図である。
【0057】
すなわち、部品素体供給工程では、図5(a)に示すように、レール状部材に摺動自在に取り付けられた第1の保持部材8の粘着面8aに複数の部品素体1の端面21bが保持され、これにより複数の部品素体1を整列させ、第1の保持部材8を、図5(b)に示す第1のペースト塗布工程に搬送する。
【0058】
一方、第1のペースト塗布工程は、上述した電極形成処理部を有しており、第1の保持部材8と対向する塗布ベルト5の上面にはペースト層7が予め形成されている。すなわち、矢印B方向に走行している塗布ベルト5を導電性ペースト2に浸漬させて該塗布ベルト7に導電性ペースト2を付着させ、ブレード6で塗布ベルト7に付着している導電性ペースト2の厚みを調整し、これにより塗布ベルト7の上面にはペースト層7が形成されている。
【0059】
そして、第1のペースト塗布工程では、第1の保持部材8を、塗布ベルト7の循環走行に同期させて第1の保持部材8を矢印C方向に搬送させ、ペースト層7と部品素体1の一方の端部1aとを接触させてペースト層7に接触させる。すなわち、端部1aをペースト層7に接触させて水平方向から浸漬させ、これにより第1の外部電極9aを形成する。
【0060】
そして、第1の保持部材8を矢印C方向に搬送し、塗布ベルト7から離反させ、第1の保持部材8を第1の電極仕上げ工程に搬送する。
【0061】
第1の電極仕上げ工程では、図5(c)に示すように、第1の保持部材8を矢印E方向に搬送させ、第1の外部電極9aの底面を掻き取りローラ10と接触させ、余分に付着しているペーストの一部を掻き落とし、所定膜厚を有するように第1の外部電極9aの形状整備を行い、第1の保持部材8を矢印E方向に搬送する。尚、掻き取りローラ10に付着したペーストの一部は、スキージ12で掻き落とされクリーンニングされる。
【0062】
次いで、第1の乾燥工程では、図5(d)に示すように、遠赤外線ヒータ、熱風加熱装置等の加熱手段を使用して加熱し、第1の外部電極9aに含有された有機溶剤を揮散させて乾燥させる。
【0063】
続く部品素体反転工程では、図5(e)に示すように、部品素体1を保持している第1の保持部材8を適宜の方法で反転させる。
【0064】
そして、部品素体移替工程では、図5(f)に示すように、部品素体1を第2の保持部材8′に移し替える。第2の保持部材8′は、第1の保持部材8と同様、粘着面8a′を有してレール状部材に摺動自在に取り付けられており、部品素体1を第1の保持部材8から第2の保持部材8′に移し替える。すなわち、部品本体1を第1の保持部材8から離脱させ、第1の外部電極9aを第2の保持部材8′の粘着面8a′に貼着し、部品素体1を第2の保持部材8′に保持させる。そして、第2の保持部材8′を駆動させ、部品素体1を第2のペースト塗布工程に搬送する。
【0065】
第2のペースト塗布工程は、図5(g)に示すように、第1の電極形成処理部と略同様、第2の電極形成処理部を有している。
【0066】
すなわち、第2の電極形成処理部は、矢印A′方向に同期して回転駆動する複数のガイドローラ4a′、4b′と、ガイドローラ4a′とガイドローラ4b′との間に掛け回されて矢印B′方向に循環走行する塗布ベルト5′と、導電性ペースト2′が貯留された第2のペースト槽3′と、一方のガイドローラ4a′の近傍に配されたブレード6′とを備え、塗布ベルト5′の上面には第1のペースト層7′が形成されている。
【0067】
そして、ペースト層7′が形成された塗布ベルト5′の循環走行に同期させて第2の保持部材8′を矢印C′方向に搬送させ、ペースト層7′と部品本体1の他方の端面1bとを接触させる。そして、端部1bに第2の外部電極9bを形成し、これにより部品素体1の両端部1a、1bには外部電極9a、9bが形成される。次いで、第2の保持部材8′を矢印C′方向に搬送させ、塗布ベルト5′から離反させ、第2の保持部材8′を第2の電極仕上げ工程に搬送する。
【0068】
第2の電極仕上げ工程は、図5(h)に示すように、第1の電極仕上げ処理部と略同様、第2の電極仕上げ処理部を有している。
【0069】
すなわち、第2の電極仕上げ処理部は、矢印D′方向に回転駆動する掻き取りローラ10′と、該掻き取りローラ10′により掻き取られたペーストの一部を受け取る第2のペースト槽11′と、掻き取りローラ10′に付着したペーストの一部をクリーニングするスキージ12′とを有している。
【0070】
そして、第2の保持部材8′を矢印E′方向に搬送させ、第2の外部電極9bの端面を掻き取りローラ10′と接触させ、余分に付着しているペーストの一部を掻き落とし、第2の外部電極9bの端面を所定膜厚に形状整備する。また、掻き取りローラ10′に付着したペーストの一部は、スキージ12′で掻き落とされクリーンニングされる。
【0071】
次に、第2の保持部材8′は、第2の乾燥工程に搬送され、図5(i)に示すように、遠赤外線ヒータ、熱風加熱装置等の加熱手段を使用して加熱し、第2の外部電極9bに含有される有機溶剤を揮散させて乾燥させる。
【0072】
そして、電子部品排出工程では、図5(j)に示すように、第2の保持部材8′に保持されている積層セラミックコンデンサ13を該第2の保持部材8′から離脱させてタンク14に収容する。
【0073】
このように本実施の形態によれば、第1及び第2のペースト塗布工程(図5(b)、(g))で、導電性ペースト2、2′からなるペースト層7a、7a′を塗布ベルト5、5′の表面に形成し、該塗布ベルト5、5′を矢印B、B′方向に走行させると共に、部品素体1を塗布ベルト5、5′と同一方向に前記塗布ベルト5、5′の走行速度に同期させて搬送させ、部品素体1の端部1a、1bを搬送中にペースト層7、7′に接触させ、前記部品素体1の端部1a、1bに導電性ペースト2、2′を塗布して電極を形成するので、部品素体1の端部1a、1bは、部品素体1、1aの側面側から徐々にペースト層7、7′に接触してゆく。したがって、部品素体1の端面21a、21bに形成される空気溜まりは押し出され、第1及び第2の外部電極9a、9b中に空気溜まりが生じるのを抑制することができる。また、部品素体1は、塗布ベルト5、5′の走行方向に搬送させながらペースト層7、7′から離反させることができ、したがって、端面21a、21b全域に略均一にペーストを塗布することができ、所望の第1及び第2の外部電極9a、9bを形成することが可能となる。しかも、部品素体1は塗布ベルト5、5′から離反するまでペースト層7、7′と接触させてペーストを塗布することができるので、塗布速度を低下させることもなく、電極形成を行うことができ、生産性を低下させることもない。
【0074】
また、電極仕上げ工程(図5(c)、(h))では、第1及び第2の外部電極9a、9bの外表面に付着したペーストの一部を、掻き取りローラ10、10′で掻き取るので、端面を所望の電極厚みに仕上げられた積層セラミックコンデンサ13を容易に得ることができる。
【0075】
図6は、本発明の電子部品の製造装置における電極形成処理部の第2の実施の形態を示す構造断面図である。
【0076】
すなわち、この第2の実施の形態では、塗布ベルト5のペースト層7の形成面の裏面側に画成される空洞部に3個の昇降ステージ15a、15b、15cが設けられている。
【0077】
この第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様、第1の保持部材8に保持された部品素体1は、塗布ベルト5の走行速度に同期しながら、矢印C方向に搬送される。そして、第1の保持部材8が塗布ベルト5の上方に達すると、例えば、昇降部材15bは不図示の駆動装置により上方に昇降して部品素体1に接触し、部品素体1はペースト層7に浸漬しながら矢印C方向に搬送し、部品素体1は塗布ベルト5から離反する。したがって、第1の実施の形態と同様、部品素体1の端面21aに形成される空気溜まりは押し出され、空気溜まりが生じるのを抑制することができる。そして、部品素体1は、塗布ベルト5の走行方向に搬送させながら離反させることができることから、端面21a全域に略均一にペーストが塗布され、これにより第1の外部電極9aが形成される。また、部品素体1は塗布ベルト5から離反するまでペースト層7と接触してペーストを塗布することができるので、塗布時間を十分に確保することが可能となり、塗布速度を低下させることなく端面21aに万遍なく導電性ペーストを高速で塗布することが可能となり、生産性を低下させることもない。
【0078】
また、第2の実施の形態では、上記昇降部材15a〜15cの昇降時間及び昇降状態を制御することにより、部品素体1のペースト層7への接触時間を制御することができるので、部品素体1とペースト層7との接触時間を保持部材の搬送速度及び塗布ベルトの走行速度で調整する必要がなく、生産性を低下させることなく所望寸法の第1及び第2の外部電極9a、9bを形成することが可能となる。
【0079】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、第1及び第2の保持部材8、8′は、表面に粘着面8a、8a′を有するようにしているが、長尺状テープで形成してもよく、該長尺状テープを第1及び第2の電極形成処理部の塗付ベルト5、5′と同期させて駆動させることにより、より一層の生産性向上を図ることが可能となる。
【0080】
また、上記実施の形態では、電子部品として積層セラミックコンデンサについて例示的に説明したが、外部電極を有する電子部品に広範に適用可能であり、例えば、単板型のセラミックコンデンサ、コイル部品、LC複合部品、圧電部品等にも同様に適用できるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
部品素体の端部に電極を形成しても、内部に空気溜りが生じることもなく、端面に万遍なく均一略均一に所望の電極形成を行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
1 部品素体
1a、1b 端部
2、2′ 導電性ペースト
4a、4b、4a′、4b′ ガイドローラ
5、5′塗布ベルト
6、6′ ブレード(層厚調整部材)
7、7′ペースト層
8 第1の保持部材(保持部材)
8′ 第2の保持部材(保持部材)
9a 第1の外部電極(電極)
9b 第2の外部電極(電極)
10、10′掻き取りローラ
11、11′ 第1のペースト槽(ペースト槽)
15 昇降ステージ(昇降部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状に形成された部品素体の端部に導電性ペーストを塗布して電極を形成する電極形成処理部を備えた電子部品の製造装置であって、
該電極形成処理部が、回転駆動する複数のガイドローラと、
導電性粉末を含有したペースト層が表面に形成され、前記複数のガイドローラ間に掛け回されて該ガイドローラ間を循環走行する塗布ベルトと、
前記部品素体を保持して前記ペースト層の走行方向と同一方向に搬送する保持部材とを有し、
前記保持部材に保持された前記部品素体の端部が、前記保持部材の搬送中に前記ペースト層に接触し、前記部品素体の端部に電極が形成されることを特徴とする電子部品の製造装置。
【請求項2】
前記電極形成処理部は、前記導電性ペーストを貯留するペースト槽と、前記塗布ベルトに形成される前記ペースト層の層厚を調整する層厚調整部材とを有し、
前記塗布ベルトは、前記ペースト槽に貯留された前記導電性ペーストに浸漬して該導電性ペーストが付着されると共に、前記ペースト層は、前記塗布ベルトに付着した前記導電性ペーストが前記層厚調整部材で層厚調整されていることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造装置。
【請求項3】
前記電極形成処理部で電極形成された前記電極の形状仕上げを行う電極仕上げ処理部を備え、
前記電極仕上げ処理部は、前記保持部材の搬送方向と同一方向に回転する掻き取りローラを有し、前記電極の端面に付着したペーストの一部が、前記掻き取りローラで掻き取られることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品の製造装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記塗布ベルトの走行速度に同期しながら前記ペースト層の走行方向と同一方向に搬送されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品の製造装置。
【請求項5】
前記電極形成処理部は、前記塗布ベルトを昇降させる昇降手段を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品の製造装置。
【請求項6】
前記昇降手段は、複数設けられていることを特徴とする請求項4記載の電子部品の製造装置。
【請求項7】
略直方体形状に形成された部品素体の端部に導電性ペーストを塗布し、電極を形成するペースト塗布工程を含む電子部品の製造方法であって、
前記ペースト塗布工程は、前記導電性ペーストからなるペースト層を塗布ベルトの表面に形成し、該塗布ベルトを所定方向に走行させると共に、前記部品素体を前記塗布ベルトと同一方向に前記塗布ベルトの走行速度に同期させて搬送させ、前記部品素体の端部を前記搬送中に前記ペースト層に接触させ、前記部品素体の端部に前記導電性ペーストを塗布して電極を形成することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記電極の外表面に付着したペーストの一部を、掻き取りローラで掻き取る電極仕上げ工程を含んでいることを特徴とする請求項7記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記ペースト塗布工程は、前記塗布ベルトを昇降させて前記部品素体の端部と前記ペースト層とを接触させることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−42080(P2013−42080A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179636(P2011−179636)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】