説明

電子部品保護パッケージのシール用キャップの製造方法

【課題】 シール用キャップの製造を量産化でき、しかも殆んど自動化できて、人手と時間を削減し、且つ工数を減少し、さらに製品のばらつきを無くして安定した精度の高いものにでき、その上ダウンサイジング化が可能な電子部品保護パッケージのシール用キャップの製造方法を提供する。
【解決手段】 FeNi合金の長尺テープを下地処理した後、スパッタリング装置に一定速度で送給してスパッタリング法によりAuSn膜を形成し、次いで熱処理し、みがき処理した後、所定寸法にプレス抜きしてシール用キャップを得ることを特徴とする電子部品保護パッケージのシール用キャップの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は回路素子などの電子部品を保護するセラミックス等より成るパッケージのシール用キャップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記シール用キャップを製造するには、図7の(a)に示すように厚さ0.2mm、縦2.0mm、横2.5mmのFeNi合金の矩形板1の表面に図7の(b)に示すように厚さ30μm、外径寸法2.0mm×2.5mm、内径寸法1.2mm×1.7mmのAuSn20wt%の矩形枠2を、図7の(c)に示すように加熱融着してシール用キャップ3を作っていた。
【0003】ところで、かかるシール用キャップの製造方法は、手作業によるので、量産できず、少量でも多くの人手と時間のかかるものであった。しかも、製品にばらつきがあって、安定しなかった。さらに、AuSn20wt%の矩形枠2は加工が非常に難しく、シール用キャップのダンウサイジング化への対応は不可能であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、シール用キャップの製造を量産化でき、しかも殆んど自動化できて、人手と時間を削減し、且つ工数を減少し、さらに製品のばらつきを無くして安定化でき、その上ダンウサイジング化が可能なシール用キャップの製造方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための、本発明のシール用キャップの製造方法は、FeNi合金の長尺テープを下地処理した後、スパッタリング装置に一定速度で送給して、スパッタリング法によりAuSn膜を形成し、次いで熱処理し、みがき処理した後所定寸法にプレス抜きしてシール用キャップを得ることを特徴とするものである。
【0006】このように本発明のシール用キャップの製造方法では、長尺のFeNi合金テープにスパッタリング法によりAuSn膜を形成するので、シール用キャップの量産化が可能となり、人手と時間が削減され、工数も減少する。また、スパッタリングの前にはFeNi合金のテープに下地処理を行い、スパッタリングの後には、熱処理、みがき処理が行われ、最終段階でプレス抜きされるので、得られるシール用キャップはばらつきの無い精度の高い安定したものとなる。さらに、プレス抜きの型を選定することにより、シール用キャップのサイズを変更でき、従ってダウンサイジング化に対応することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の電子部品保護パッケージのシール用キャップの製造方法の実施例を図によって説明すると、先ず、図1に示す厚さ0.2mm、幅3.0mmのFeNi10wt%合金(またはコバール)の長尺テープ10を下地処理し、即ち、両面にNiめっきを0.1μm施し、さらに片面にAuメッキを0.1〜0.3μm施した。次に図2に示すAr分圧2.0〜3.0×10-3Torrのスパッタリング装置11内に、下地処理した長尺テープ10を繰り出しロール12により2m/分の一定速度で送給し、AuSn26.5wt%ターゲット材13を9.6kwパワーでスパッタリングして、Auめっき側の片面に図3に示すようにAuSn20wt%膜14を20μm形成し、この長尺クラッドテープ15を図2に示される巻き取りロール16で巻き取った。次いで、この長尺クラッドテープ15を図4に示すコンベア炉(N2 +H2 F雰囲気)17に通して熱処理し、AuSn20wt%膜14を溶融してArガス抜きを行い、さらに図5に示すようにFeNi10wt%合金の長尺テープ10側にまわり込んだAuSn20wt%膜14をみがき処理により除去した。然る後、図6に示すように長尺クラッドテープ15を順次縦2.0mm、横2.5mm、の矩形にプレス抜きしてシール用キャップを得た。
【0008】この実施例によると、500mの長尺クラッドテープ15で、シール用キャップ18が17万個程製造されて、量産化が達成された。また、スパッタリングによるAuSn20wt%膜14の形成と長尺クラッドテープ15のプレス抜きによって殆んど自動化されて、人手と時間が大幅に削減された上、工数も減少した。さらに、スパッタリングの前にFeNi10wt%合金のテープに下地処理として両面にNiめっきを、さらに片面にAuめっきを行っているので、スパッタリング時Auめっき面へのAuSn20wt%膜の密着度が高いものとなり、スパッタリング後は熱処理によってAuSn20wt%膜からArガスが抜けるので、使用時AuSn20wt%の飛散が防止され、また、みがき処理によって不要なAuSn20wt%膜が除去されるので、長尺クラッドテープの品質が高く、従ってこれをプレスして得たシール用キャップ18はばらつきの無い安定した精度の高いものとなった。
【0009】
【発明の効果】以上の説明で判るように本発明の電子部品保護パッケージ用シール用キャップの製造方法によれば、シール用キャップの製造を量産化でき、しかも殆んど自動化できて、人手と時間を削減し且つ工数も減少でき、さらにばらつきの無い安定した精度の高いシール用キャップを製造でき、その上プレス抜きのサイズを変更できるので、シール用キャップのダウンサイジング化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】FeNi10wt%合金(またはコバール)の長尺テープを示す斜視図である。
【図2】図1の長尺テープの片面にAuSn20wt%膜を形成するスパッタリング方法を示す図である。
【図3】図1の長尺テープの片面にAuSn20wt%膜を形成して得た長尺クラッドテープを示す斜視図である。
【図4】図3の長尺クラッドテープを熱処理する状態を示す図である。
【図5】熱処理した後の長尺クラッドテープをみがき処理する前の状態を示す断面図である。
【図6】みがき処理した後の長尺クラッドテープをプレス抜きしてシール用キャップを得た状態を示す斜視図である。
【図7】(a),(b),(c)は従来のシール用キャップの製造方法の工程を示す図である。
【符号の説明】
10 FeNi10wt%合金の長尺テープ
11 スパッタリング装置
13 AuSn26.5wt%ターゲット材
14 AuSn20wt%膜
15 長尺クラッドテープ
17 熱処理用のコンベア炉
18 シール用キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 FeNi合金の長尺テープを下地処理した後、スパッタリング装置に一定速度で送給して、スパッタリング法によりAuSn膜を形成し、次いで熱処理し、みがき処理した後所定寸法にプレス抜きしてシール用キャップを得ることを特徴とする電子部品保護パッケージのシール用キャップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2000−58690(P2000−58690A)
【公開日】平成12年2月25日(2000.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−221413
【出願日】平成10年8月5日(1998.8.5)
【出願人】(000217228)田中貴金属工業株式会社 (146)
【Fターム(参考)】