電子部品及びインクジェット記録ヘッド
【課題】実装基板の基板端子と半導体チップのバンプとの接続状態の信頼性の向上を図る。
【解決手段】実装面に複数の基板端子が形成されたヒーターボード30と、複数の基板端子にそれぞれ接合される複数のバンプを有するヒーター駆動用IC50と、複数の基板端子と複数のバンプとの間に介在させて基板端子とバンプとを電気的かつ機械的に接合するACF54と、を備える。複数の基板端子の接合面の各面積と、複数のバンプの接合面の各面積は、ヒーターボード30にヒーター駆動用IC50を実装する際に複数の基板端子にそれぞれ作用する荷重、及び複数のバンプにそれぞれ作用する荷重が等しくなるように規定されている。
【解決手段】実装面に複数の基板端子が形成されたヒーターボード30と、複数の基板端子にそれぞれ接合される複数のバンプを有するヒーター駆動用IC50と、複数の基板端子と複数のバンプとの間に介在させて基板端子とバンプとを電気的かつ機械的に接合するACF54と、を備える。複数の基板端子の接合面の各面積と、複数のバンプの接合面の各面積は、ヒーターボード30にヒーター駆動用IC50を実装する際に複数の基板端子にそれぞれ作用する荷重、及び複数のバンプにそれぞれ作用する荷重が等しくなるように規定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板に半導体チップが実装された電子部品に関し、特に熱硬化型有機材料を用いてフリップチップ実装された電子部品に関する。また、記録紙等の被記録材にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙等の被記録材にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出するための熱エネルギを発生するヒーターが設けられた記録ヘッド用のヒーターボードと、ヒーターを駆動するためのヒーター駆動用IC(集積回路)とを備えている。
【0003】
ヒーター駆動用ICは、ヒータボートにヒーター駆動用ICを実装する際に、ヒーター駆動用ICの圧着による変形、熱分布や線膨張率の差による変形、熱硬化型有機材料の硬化収縮に伴う変形がそれぞれ発生する。このため、これらの変形に伴って、ヒーターボードの基板端子と、ヒーター駆動用ICのバンプとの接合部分の接続信頼性を低下させるおそれがある。
【0004】
この対策としては、ヒーター駆動用ICの変形を低減する構成として、接続バンプが少ない部分にダミーバンプが形成された構成が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
図11及び図12は、従来のヒーター駆動用IC50が備えるバンプ配列を示す平面図である。図11に示す構成では、入力側バンプ列53がまばらであり、入力側バンプ53a,53bの間に間隔があいている。図12に示す構成例では、入力側バンプ列53がまばらな部分である、各バンプ53aとバンプ53bとの間に、複数のダミーバンプ53cが配列されて設けられている。
【0006】
また、バンプを有するICの他の構成としては、IC(半導体チップ)の中央部にダミーバンプが形成された構成が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−68715号公報
【特許文献2】特開2000−195900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ヒーターボード(実装基板)上に設けられる基板端子、及びヒーター駆動用ICに設けられるバンプの配置は、ヒーター駆動用ICの内部配線や、ヒーター駆動用ICの配列(半導体素子の配列)等によって制限される。このため、回路の構成上、必ずしも必要な位置にダミーバンプを形成することは困難であり、ヒーター駆動用ICの変形を防止するための構成が必ずしも十分ではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決し、実装基板の基板端子と半導体チップのバンプとの接続状態の信頼性の向上を図ることができる電子部品、インクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る電子部品は、実装面に複数の基板端子が形成された実装基板と、複数の基板端子にそれぞれ接合される複数のバンプを有する半導体チップと、複数の基板端子と複数のバンプとの間に介在させて基板端子とバンプとを電気的かつ機械的に接合する熱硬化型有機材料と、を備える。そして、複数の基板端子の接合面の各面積と、複数のバンプの接合面の各面積は、実装基板に半導体チップを実装する際に複数の基板端子にそれぞれ作用する荷重、及び複数のバンプにそれぞれ作用する荷重が等しくなるように規定されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体チップと実装基板と間の、複数のバンプ及び複数の基板端子に作用する荷重の均一化が図られるので、半導体チップと実装基板との接続状態の信頼性を効用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
本発明に係る電子部品を備える、実施形態のインクジェット記録ヘッドについて説明する。実施形態のインクジェット記録ヘッドが備える実施形態の電子部品は、実装基板としてのインクジェット記録ヘッド用のヒーターボードに、半導体チップとしてのヒーター駆動用ICが実装されて構成されている。
【0013】
図1は、実施形態のインクジェット記録ヘッドの概略を示す斜視図、図2は、実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。これら図1及び図2を参照して、インクジェット記録ヘッドの構成を説明する。
【0014】
実施形態のインクジェット記録ヘッドは、図1及び図2に示すように、インクを吐出するための熱エネルギを発生するヒーターが設けられたヒーターボードに、ヒーターを駆動するためのヒーター駆動用ICが実装された電子部品を備えている。
【0015】
図1及び図2に示すように、基台10上には、ベースプレート20が配置されており、ベースプレート20上には、ヒーターボード30が配置されている。ヒーターボード30上には、複数のヒーター35、複数の吐出口41が形成されたノズル部材40、複数のヒーター駆動用IC50が配置されている。
【0016】
基台10とベースプレート20は接着材23によって接合されており、ベースプレート20とヒーターボード30は接着剤22によって接合されている。
【0017】
ヒーターボード30の実装面には、半導体プロセスによって、複数のヒーターと複数のヒーター駆動用IC50の接合部との間及び、複数のヒーター駆動用IC50の接合部とFPC60の接合部61との間をそれぞれ結ぶ、配線がそれぞれ形成されている。
【0018】
また、ヒーターボード30上には、インクを吐出する複数の吐出口41を有するノズル部材40が、ヒーター35の部分を覆うように、任意の製造プロセスによって形成されている。
【0019】
また、ヒーターボード30の複数の基板端子と、ヒーター駆動用IC50の複数のバンプとの間には、熱硬化型有機材料が介在されており、この熱硬化型有機材料によって基板端子とバンプとが電気的かつ機械的に接合されている。本実施形態では、熱硬化型有機材料としてACF(異方性導電フィルム)54によって、複数のヒーター駆動用IC50の接合部とヒーターボード30の接合部とが接合されている。なお、熱硬化型有機材料としては、ACF、ACP(Anisotropic Conductive Paste)、NCF(Non Conductive Film)、NCP(Non Conductive Paste)が用いられてもよい。また同様に、熱硬化型有機材料としては、導電性ペースト、導電性樹脂材料のいずれかが用いられてもよい。
【0020】
ヒーターボード30への電源系統、信号系統は、ヒーターボード30上のFPC60の接合部61から、ACF62によって接合されたFPC60を介し、ACF62によって外部基板65に接続されている。
【0021】
ヒーターボード30上に実装された、ヒーター駆動用IC50及び接合部をインクなどから保護するために、ヒーター駆動用IC50が封止部材55によって封止されている。
【0022】
インク(不図示)は、基台10の内部に設けられたインクタンク(不図示)から、ベースプレート20に貫通して設けられた供給溝21、ヒーターボード30に貫通して設けられた供給溝34、を経由して、ノズル部材40の液室42に充填される。
【0023】
外部から記録指令信号が入力されたとき、指令信号に基づいて、ヒーター駆動用IC50が動作し、指令信号を受けた任意のヒーター35を昇温させることによって、液室42内のインクを発泡させて、吐出口41からインクが吐出される。このようにインクジェット記録ヘッドは、記録紙等の被記録材にインクを吐出することで記録を行う。
【0024】
次に、ヒーターボード30とヒーター駆動用IC50との接合方法について説明する。
【0025】
図3は、実施形態のヒーター駆動用IC50が有するバンプ配列を示す平面図である。図4は、実施形態のヒーターボード30上のヒーター駆動用IC50の接続部分を示す図である。図5は、実施形態のヒーター駆動用IC50のバンプ(破線で示す)の接合面の外形形状(面積)と、バンプに対応するヒーターボード30の基板端子(実線で示す)の接合面の外形形状(面積)との関係を示す平面図である。
【0026】
図4に示すように、ヒーターボード30の実装面には、任意の位置に複数個の基板端子31,32,33が精度良く設けられている。基板端子32,32,33は、例えば銅等の導電性材料によって形成されている。
【0027】
複数の基板端子31は、複数列(本実施形態では3列)の出力側基板端子列31(ヒーターボード30の外周側の列から順に31a、31b、31cとする)から構成されている。また、複数の基板端子32は、GND(グランド)側基板端子列32から構成されている。また、複数の基板端子33は、複数列(本実施形態では2列)の入力側基板端子列33(ヒーターボード30の内周側の列から順に32a、31bとする)から構成されている。
【0028】
各基板端子の接合面の面積は、個々の基板端子が受け持つヒーター駆動用IC50の面積に対応して設定されている。つまり、基板端子列において、隣接する基板端子間の距離が短い位置では、基板端子の面積が小さくされており、隣接する基板端子間の距離が長い位置では、基板端子の面積が大きくされている。
【0029】
図3に示すように、ヒーター駆動用IC50の裏面側には、複数のバンプ51,52,53が精度良く形成されている。これらバンプ51,52,53は、例えば金等の導電性材料によって形成されている。
【0030】
上述した基板端子31,32,33と同様に、複数のバンプ51は、複数列(本実施形態では3列)の出力側バンプ列51(ヒーター駆動用IC50の外周側の列から順に51a,51b,51cとする)から構成されている。また、複数のバンプ52は、GND(グランド)側バンプ列52から構成されている。また、複数のバンプ53は、複数列(本実施形態では2列)の入力側バンプ列53(ヒーター駆動用IC50の内周側の列から順に53a,53bとする)から構成されている。
【0031】
図5に示すように、バンプ51,52,53の接合面の面積は、個々のバンプが受け持つヒーター駆動用IC50の面積に対応して設定されている。つまり、隣接するバンプ間の距離が短い位置では、バンプの接合面の面積が小さくされており、隣接するバンプ間の距離が長い位置では、バンプの接合面の面積が大きくされている。
【0032】
基板端子とバンプとは、配列方向に対してそれぞれ同じピッチで配置されており、個々に一対一で接続されるように構成されている。
【0033】
次に、ヒーター駆動用IC50の実装工程における変形(反り)発生のメカニズムと、ヒーター駆動用IC50に発生する変形を低減するための構成としての、本実施形態における基板端子の接合面の面積及びバンプの接合面の面積について説明する。
【0034】
ヒーター駆動用IC50の実装工程における変形(反り)の原因は、(a)治具による押圧、(b)各部材の線膨張率の差、(c)ACFの硬化収縮の要因が挙げられる。これらの要因が、ヒーター駆動用IC50に等分布荷重として作用することによって、ヒーター駆動用IC50には、基板端子及びバンプが配置されていない部分で、変形(反り)が生じる。
【0035】
ヒーター駆動用IC50に発生する変形によって、GND側バンプ52、入力側バンプ53及び出力側バンプ51における内側のバンプ列や、バンプの個数が比較的少ない部分に配置されているバンプに相対的に大きな応力が加わることになる。その結果、バンプの個数が比較的少ない部分に配置されているバンプは、他の位置に配置されているバンプよりも塑性変形による変形量(潰れる量)が相対的に大きくなる。
【0036】
この状態で、低温から高温に繰り返し曝される耐久試験を行ったとき、入出力側バンプにおける内側のバンプ列で、基板端子とバンプとの接合状態が外れる、いわゆるオープン状態が発生し易くなる。勿論、実際の使用条件においても、長時間使用したときに、このような現象が発生する可能性がある。
【0037】
この現象は、バンプの塑性変形に伴ってヒーター駆動用ICが変形し、基板端子に接合されていたバンプが、耐久試験を行った結果、ACFが何らかの原因(膨潤等)によって緩み、ヒーター駆動用ICの変形が解放され、オープン状態が発生したと考えられる。
【0038】
各基板端子及び各バンプには、可能な限り均一な荷重、つまり等しい荷重が作用するように、互いに接合する必要がある。なお、各基板端子及び各バンプに作用する荷重とは、ヒーターボード30にヒーター駆動用IC50を実装する際に、ヒーターボード30に対してヒーター駆動用IC50を押圧したときに複数の基板端子及び複数のバンプに発生する圧力である。
【0039】
そのため、本実施形態のように、基板端子及びバンプの接合面の面積を、個々の基板端子及びバンプがそれぞれ受け持つヒーター駆動用IC50の面積に比例させるように規定する。つまり、隣接する基板端子間、及び隣接するバンプ間の距離が短い位置では、基板端子及びバンプの接合面の面積を小さく形成する。一方、隣接する基板端子間、及び隣接するバンプ間の距離が長い位置では、基板端子及びバンプの接合面の面積を大きく形成する。
【0040】
図6は、本実施形態において、ヒーターボード30とヒーター駆動用IC50とが熱硬化型有機材料によって接合された状態を示す断面図である。
【0041】
本実施形態では、ヒーターボード30とヒーター駆動用IC50との接合するために、熱硬化型有機材料が用いられており、この熱硬化型有機材料として、ACFが用いられている。
【0042】
図7(a)から図7(d)は、実施形態のヒーターボード30上にヒーター駆動用IC50を実装する工程を説明するための断面図である。
【0043】
図8は、実施形態のヒーターボード30にヒーター駆動用IC50を実装する工程を説明するためのフローチャートである。
【0044】
図8に示すように、ヒーターボード30をACF貼付け治具100の上に位置決めする(ステップS1)。
【0045】
ACF貼付け装置(不図示)は、例えば、供給部から供給されたテープ状のACF54を任意の長さに切断し、切断されたACF54を吸着により保持する(ステップS2)。そして、このACF54をヒーターボード30上のヒーター駆動用IC50の接続部に精度良く仮圧着する(ステップS3)。
【0046】
図7(b)に示すように、ACF54を吸着保持するACF貼付け治具110には、ヒーター111が内蔵されており、ACF54を任意の温度で仮圧着可能な構造となっている。
【0047】
次に、ヒーターボード30上に所定の個数のACF54が貼り付けられたかが判断される(ステップS4)。所定の個数のACF54が(図7に示す構成例では7ヶ所に)貼り付けられた後、ヒーターボード30が駆動用IC貼付け治具120に載せ換えられて(装置によっては、載せ換えが不要)、位置決めする。
【0048】
駆動用IC貼付け装置(不図示)は、ヒーター駆動用IC50が載せられたトレーなどからヒーター駆動用IC50を吸着して保持し(ステップS5)、ヒーター駆動用IC50が予熱される(ステップS6)。続いて、ヒーター駆動用IC50は駆動用IC貼付け治具101に位置決めされ(ステップS7)、その後、ヒーター駆動用IC50は先に貼付けられたACF54上に精度良く圧着される(ステップS8)。
【0049】
図7(c)に示すように、ヒーター駆動用IC50を吸着して保持する保持治具120には、ヒーター121が内蔵されており、ヒーター駆動用IC50を任意の温度で圧着可能な構造となっている。一般的に加熱温度は、ACF54のTg点以上に設定されている。
【0050】
ヒーター駆動用IC貼付け治具101には、ヒーターボード30全体又は、ヒーター駆動用IC50の接合部分を包括する範囲を予熱するヒーター(不図示)が埋め込まれており、ヒーターボード30を任意の温度で予熱できる構造となっている。
【0051】
ヒーターボード30の予熱温度は、ヒーターボード30に予め貼付けられたACF54が熱硬化を起こさない温度、つまりTg点以下に設定されることが望ましい。
【0052】
次に、ヒーターボード30上に所定の個数のヒーター駆動用IC50が貼り付けられたかが判断される(ステップS9)。所定の個数のヒーター駆動用IC50が(図7に示す構成例では7ヶ所に)が貼り付けられた後、次のプロセス(不図示)へ移行する。
【0053】
上述した説明では、ACF54の接合及びヒーター駆動用IC50の圧着を1ヶ所ずつ行うように説明したが、複数個の圧着を同時に行ってもよい。なお、上述した工程は、いわゆるクリーンな環境で行われることは、言うまでもない。
【0054】
図9は、他の実施形態のヒーター駆動用IC50が有するバンプ配列を示す平面図である。
【0055】
本実施形態では、ヒーター駆動用IC50の複数のバンプのうちで、ヒーターボード30にヒーター駆動用IC50を実装する際に相対的に最も大きな荷重がかかるGND側バンプ列52のみの接合面の面積が大きく形成された構造である。
【0056】
同様に、ヒーターボード30の複数の基板端子のうち、ヒーター駆動用IC50をヒーターボード30に実装する際に相対的に大きな荷重が作用する位置に配置されている基板端子だけが、小さな荷重が作用する基板端子よりも接合面の面積が大きくされている。
【0057】
以上のように説明した構成を実現することが回路構成上、難しい場合には、最も大きな荷重が加わる基板端子及びバンプの接合面の面積だけを大型化する構成が採られてもよい。この構成によって、ヒーター駆動用IC50の変形を最小限に抑えることができ、各バンプに作用する荷重の大きさのバラツキも最小限に抑えることができる。
【0058】
図9では、一列に配列された複数のバンプの全てが大きく形成される構成が採られたが、一列に配列されたバンプのうち、特に相対的に大きな荷重が加わる任意のバンプのみを選択的に大きく形成されてもよい。さらに、図9に示した構成では、入力側バンプ列53(53a,53b)の入力側バンプ間に必要以上の隙間をあけずに、各入力側バンプが均等な間隔で並べられた構成にされたが、入力側バンプ間の間隔がそれぞれ異なっていてもよい。
【0059】
図10は、他の実施形態であるヒーター駆動用IC50のバンプ配列を示す平面図である。ヒーター駆動用IC50のバンプのうちで、最も大きな荷重がかかるGND側バンプ列に加えて、他のバンプ列が選択的に大きく形成されてもよい。図10に示すように、GND側バンプ列に加えて、出力側バンプ列における内側のバンプ列51cや、入力側バンプ列53の内側のバンプ列53aのように比較的大きな荷重がかかるバンプ列が、GND側バンプ列と同様に接合面の面積を大きく形成されている。この構成によって、上述した実施形態と同様にバンプに作用する荷重が分散されて、各バンプに作用する荷重の均一化が図られている。
【0060】
上述したように、本実施形態によれば、ヒーター駆動用ICとヒーターボードと間の、複数のバンプ及び複数の基板端子の全てに均一な荷重をかけることが可能になる。このため、ヒーターボードの基板端子とヒーター駆動用ICのバンプとの接続状態の信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
また、ヒーター駆動用ICが熱硬化型有機材料としてのACF54を用いてヒーターボード上に実装された電子部品において、ヒーター駆動用ICとヒーターボードと間の、全てのバンプ及び基板端子に均一な荷重をかけることが可能になる。したがって、本実施形態は、電子部品の接続状態の信頼性の向上を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドによれば、ヒーター駆動用ICの接続状態の信頼性が向上するので、記録動作の安定化を図ることができる。
【0063】
以上、実施形態の構成について具体的に説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す斜視図である。
【図2】実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【図3】実施形態のヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す平面図である。
【図4】実施形態のヒーターボード上のヒーター駆動用ICの接続部分である基板端子を示す平面図である。
【図5】実施形態における、ヒーター駆動用ICのバンプの面積と、バンプに対応するヒーターボードの基板端子の面積の関係を説明するための平面図である。
【図6】実施形態において、ヒーターボードとヒーター駆動用ICとが熱硬化型有機材料によって接合された状態を示す断面図である。
【図7】実施形態において、ヒーターボードにヒーター駆動用ICを実装する工程を説明するための断面図である。
【図8】実施形態において、ヒーターボードにヒーター駆動用ICを実装する工程を説明するためのフローチャートである。
【図9】他の実施形態のヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す平面図である。
【図10】他の実施形態のヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す平面図である。
【図11】従来の構成例におけるヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す図である。
【図12】従来の構成例におけるヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
30 ヒーターボード(実装基板)
31(31a,32a,33a) 出力側基板端子列
32 GND側基板端子列
33(33a,33b) 入力側基板端子列
50 ヒーター駆動用IC(半導体チップ)
51(5a,51b,51c) 出力側バンプ列
52 GND側バンプ列
53(53a,53b) 入力側バンプ列
54 ACF(熱硬化型有機材料)
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板に半導体チップが実装された電子部品に関し、特に熱硬化型有機材料を用いてフリップチップ実装された電子部品に関する。また、記録紙等の被記録材にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙等の被記録材にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出するための熱エネルギを発生するヒーターが設けられた記録ヘッド用のヒーターボードと、ヒーターを駆動するためのヒーター駆動用IC(集積回路)とを備えている。
【0003】
ヒーター駆動用ICは、ヒータボートにヒーター駆動用ICを実装する際に、ヒーター駆動用ICの圧着による変形、熱分布や線膨張率の差による変形、熱硬化型有機材料の硬化収縮に伴う変形がそれぞれ発生する。このため、これらの変形に伴って、ヒーターボードの基板端子と、ヒーター駆動用ICのバンプとの接合部分の接続信頼性を低下させるおそれがある。
【0004】
この対策としては、ヒーター駆動用ICの変形を低減する構成として、接続バンプが少ない部分にダミーバンプが形成された構成が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
図11及び図12は、従来のヒーター駆動用IC50が備えるバンプ配列を示す平面図である。図11に示す構成では、入力側バンプ列53がまばらであり、入力側バンプ53a,53bの間に間隔があいている。図12に示す構成例では、入力側バンプ列53がまばらな部分である、各バンプ53aとバンプ53bとの間に、複数のダミーバンプ53cが配列されて設けられている。
【0006】
また、バンプを有するICの他の構成としては、IC(半導体チップ)の中央部にダミーバンプが形成された構成が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−68715号公報
【特許文献2】特開2000−195900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ヒーターボード(実装基板)上に設けられる基板端子、及びヒーター駆動用ICに設けられるバンプの配置は、ヒーター駆動用ICの内部配線や、ヒーター駆動用ICの配列(半導体素子の配列)等によって制限される。このため、回路の構成上、必ずしも必要な位置にダミーバンプを形成することは困難であり、ヒーター駆動用ICの変形を防止するための構成が必ずしも十分ではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決し、実装基板の基板端子と半導体チップのバンプとの接続状態の信頼性の向上を図ることができる電子部品、インクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る電子部品は、実装面に複数の基板端子が形成された実装基板と、複数の基板端子にそれぞれ接合される複数のバンプを有する半導体チップと、複数の基板端子と複数のバンプとの間に介在させて基板端子とバンプとを電気的かつ機械的に接合する熱硬化型有機材料と、を備える。そして、複数の基板端子の接合面の各面積と、複数のバンプの接合面の各面積は、実装基板に半導体チップを実装する際に複数の基板端子にそれぞれ作用する荷重、及び複数のバンプにそれぞれ作用する荷重が等しくなるように規定されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体チップと実装基板と間の、複数のバンプ及び複数の基板端子に作用する荷重の均一化が図られるので、半導体チップと実装基板との接続状態の信頼性を効用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
本発明に係る電子部品を備える、実施形態のインクジェット記録ヘッドについて説明する。実施形態のインクジェット記録ヘッドが備える実施形態の電子部品は、実装基板としてのインクジェット記録ヘッド用のヒーターボードに、半導体チップとしてのヒーター駆動用ICが実装されて構成されている。
【0013】
図1は、実施形態のインクジェット記録ヘッドの概略を示す斜視図、図2は、実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。これら図1及び図2を参照して、インクジェット記録ヘッドの構成を説明する。
【0014】
実施形態のインクジェット記録ヘッドは、図1及び図2に示すように、インクを吐出するための熱エネルギを発生するヒーターが設けられたヒーターボードに、ヒーターを駆動するためのヒーター駆動用ICが実装された電子部品を備えている。
【0015】
図1及び図2に示すように、基台10上には、ベースプレート20が配置されており、ベースプレート20上には、ヒーターボード30が配置されている。ヒーターボード30上には、複数のヒーター35、複数の吐出口41が形成されたノズル部材40、複数のヒーター駆動用IC50が配置されている。
【0016】
基台10とベースプレート20は接着材23によって接合されており、ベースプレート20とヒーターボード30は接着剤22によって接合されている。
【0017】
ヒーターボード30の実装面には、半導体プロセスによって、複数のヒーターと複数のヒーター駆動用IC50の接合部との間及び、複数のヒーター駆動用IC50の接合部とFPC60の接合部61との間をそれぞれ結ぶ、配線がそれぞれ形成されている。
【0018】
また、ヒーターボード30上には、インクを吐出する複数の吐出口41を有するノズル部材40が、ヒーター35の部分を覆うように、任意の製造プロセスによって形成されている。
【0019】
また、ヒーターボード30の複数の基板端子と、ヒーター駆動用IC50の複数のバンプとの間には、熱硬化型有機材料が介在されており、この熱硬化型有機材料によって基板端子とバンプとが電気的かつ機械的に接合されている。本実施形態では、熱硬化型有機材料としてACF(異方性導電フィルム)54によって、複数のヒーター駆動用IC50の接合部とヒーターボード30の接合部とが接合されている。なお、熱硬化型有機材料としては、ACF、ACP(Anisotropic Conductive Paste)、NCF(Non Conductive Film)、NCP(Non Conductive Paste)が用いられてもよい。また同様に、熱硬化型有機材料としては、導電性ペースト、導電性樹脂材料のいずれかが用いられてもよい。
【0020】
ヒーターボード30への電源系統、信号系統は、ヒーターボード30上のFPC60の接合部61から、ACF62によって接合されたFPC60を介し、ACF62によって外部基板65に接続されている。
【0021】
ヒーターボード30上に実装された、ヒーター駆動用IC50及び接合部をインクなどから保護するために、ヒーター駆動用IC50が封止部材55によって封止されている。
【0022】
インク(不図示)は、基台10の内部に設けられたインクタンク(不図示)から、ベースプレート20に貫通して設けられた供給溝21、ヒーターボード30に貫通して設けられた供給溝34、を経由して、ノズル部材40の液室42に充填される。
【0023】
外部から記録指令信号が入力されたとき、指令信号に基づいて、ヒーター駆動用IC50が動作し、指令信号を受けた任意のヒーター35を昇温させることによって、液室42内のインクを発泡させて、吐出口41からインクが吐出される。このようにインクジェット記録ヘッドは、記録紙等の被記録材にインクを吐出することで記録を行う。
【0024】
次に、ヒーターボード30とヒーター駆動用IC50との接合方法について説明する。
【0025】
図3は、実施形態のヒーター駆動用IC50が有するバンプ配列を示す平面図である。図4は、実施形態のヒーターボード30上のヒーター駆動用IC50の接続部分を示す図である。図5は、実施形態のヒーター駆動用IC50のバンプ(破線で示す)の接合面の外形形状(面積)と、バンプに対応するヒーターボード30の基板端子(実線で示す)の接合面の外形形状(面積)との関係を示す平面図である。
【0026】
図4に示すように、ヒーターボード30の実装面には、任意の位置に複数個の基板端子31,32,33が精度良く設けられている。基板端子32,32,33は、例えば銅等の導電性材料によって形成されている。
【0027】
複数の基板端子31は、複数列(本実施形態では3列)の出力側基板端子列31(ヒーターボード30の外周側の列から順に31a、31b、31cとする)から構成されている。また、複数の基板端子32は、GND(グランド)側基板端子列32から構成されている。また、複数の基板端子33は、複数列(本実施形態では2列)の入力側基板端子列33(ヒーターボード30の内周側の列から順に32a、31bとする)から構成されている。
【0028】
各基板端子の接合面の面積は、個々の基板端子が受け持つヒーター駆動用IC50の面積に対応して設定されている。つまり、基板端子列において、隣接する基板端子間の距離が短い位置では、基板端子の面積が小さくされており、隣接する基板端子間の距離が長い位置では、基板端子の面積が大きくされている。
【0029】
図3に示すように、ヒーター駆動用IC50の裏面側には、複数のバンプ51,52,53が精度良く形成されている。これらバンプ51,52,53は、例えば金等の導電性材料によって形成されている。
【0030】
上述した基板端子31,32,33と同様に、複数のバンプ51は、複数列(本実施形態では3列)の出力側バンプ列51(ヒーター駆動用IC50の外周側の列から順に51a,51b,51cとする)から構成されている。また、複数のバンプ52は、GND(グランド)側バンプ列52から構成されている。また、複数のバンプ53は、複数列(本実施形態では2列)の入力側バンプ列53(ヒーター駆動用IC50の内周側の列から順に53a,53bとする)から構成されている。
【0031】
図5に示すように、バンプ51,52,53の接合面の面積は、個々のバンプが受け持つヒーター駆動用IC50の面積に対応して設定されている。つまり、隣接するバンプ間の距離が短い位置では、バンプの接合面の面積が小さくされており、隣接するバンプ間の距離が長い位置では、バンプの接合面の面積が大きくされている。
【0032】
基板端子とバンプとは、配列方向に対してそれぞれ同じピッチで配置されており、個々に一対一で接続されるように構成されている。
【0033】
次に、ヒーター駆動用IC50の実装工程における変形(反り)発生のメカニズムと、ヒーター駆動用IC50に発生する変形を低減するための構成としての、本実施形態における基板端子の接合面の面積及びバンプの接合面の面積について説明する。
【0034】
ヒーター駆動用IC50の実装工程における変形(反り)の原因は、(a)治具による押圧、(b)各部材の線膨張率の差、(c)ACFの硬化収縮の要因が挙げられる。これらの要因が、ヒーター駆動用IC50に等分布荷重として作用することによって、ヒーター駆動用IC50には、基板端子及びバンプが配置されていない部分で、変形(反り)が生じる。
【0035】
ヒーター駆動用IC50に発生する変形によって、GND側バンプ52、入力側バンプ53及び出力側バンプ51における内側のバンプ列や、バンプの個数が比較的少ない部分に配置されているバンプに相対的に大きな応力が加わることになる。その結果、バンプの個数が比較的少ない部分に配置されているバンプは、他の位置に配置されているバンプよりも塑性変形による変形量(潰れる量)が相対的に大きくなる。
【0036】
この状態で、低温から高温に繰り返し曝される耐久試験を行ったとき、入出力側バンプにおける内側のバンプ列で、基板端子とバンプとの接合状態が外れる、いわゆるオープン状態が発生し易くなる。勿論、実際の使用条件においても、長時間使用したときに、このような現象が発生する可能性がある。
【0037】
この現象は、バンプの塑性変形に伴ってヒーター駆動用ICが変形し、基板端子に接合されていたバンプが、耐久試験を行った結果、ACFが何らかの原因(膨潤等)によって緩み、ヒーター駆動用ICの変形が解放され、オープン状態が発生したと考えられる。
【0038】
各基板端子及び各バンプには、可能な限り均一な荷重、つまり等しい荷重が作用するように、互いに接合する必要がある。なお、各基板端子及び各バンプに作用する荷重とは、ヒーターボード30にヒーター駆動用IC50を実装する際に、ヒーターボード30に対してヒーター駆動用IC50を押圧したときに複数の基板端子及び複数のバンプに発生する圧力である。
【0039】
そのため、本実施形態のように、基板端子及びバンプの接合面の面積を、個々の基板端子及びバンプがそれぞれ受け持つヒーター駆動用IC50の面積に比例させるように規定する。つまり、隣接する基板端子間、及び隣接するバンプ間の距離が短い位置では、基板端子及びバンプの接合面の面積を小さく形成する。一方、隣接する基板端子間、及び隣接するバンプ間の距離が長い位置では、基板端子及びバンプの接合面の面積を大きく形成する。
【0040】
図6は、本実施形態において、ヒーターボード30とヒーター駆動用IC50とが熱硬化型有機材料によって接合された状態を示す断面図である。
【0041】
本実施形態では、ヒーターボード30とヒーター駆動用IC50との接合するために、熱硬化型有機材料が用いられており、この熱硬化型有機材料として、ACFが用いられている。
【0042】
図7(a)から図7(d)は、実施形態のヒーターボード30上にヒーター駆動用IC50を実装する工程を説明するための断面図である。
【0043】
図8は、実施形態のヒーターボード30にヒーター駆動用IC50を実装する工程を説明するためのフローチャートである。
【0044】
図8に示すように、ヒーターボード30をACF貼付け治具100の上に位置決めする(ステップS1)。
【0045】
ACF貼付け装置(不図示)は、例えば、供給部から供給されたテープ状のACF54を任意の長さに切断し、切断されたACF54を吸着により保持する(ステップS2)。そして、このACF54をヒーターボード30上のヒーター駆動用IC50の接続部に精度良く仮圧着する(ステップS3)。
【0046】
図7(b)に示すように、ACF54を吸着保持するACF貼付け治具110には、ヒーター111が内蔵されており、ACF54を任意の温度で仮圧着可能な構造となっている。
【0047】
次に、ヒーターボード30上に所定の個数のACF54が貼り付けられたかが判断される(ステップS4)。所定の個数のACF54が(図7に示す構成例では7ヶ所に)貼り付けられた後、ヒーターボード30が駆動用IC貼付け治具120に載せ換えられて(装置によっては、載せ換えが不要)、位置決めする。
【0048】
駆動用IC貼付け装置(不図示)は、ヒーター駆動用IC50が載せられたトレーなどからヒーター駆動用IC50を吸着して保持し(ステップS5)、ヒーター駆動用IC50が予熱される(ステップS6)。続いて、ヒーター駆動用IC50は駆動用IC貼付け治具101に位置決めされ(ステップS7)、その後、ヒーター駆動用IC50は先に貼付けられたACF54上に精度良く圧着される(ステップS8)。
【0049】
図7(c)に示すように、ヒーター駆動用IC50を吸着して保持する保持治具120には、ヒーター121が内蔵されており、ヒーター駆動用IC50を任意の温度で圧着可能な構造となっている。一般的に加熱温度は、ACF54のTg点以上に設定されている。
【0050】
ヒーター駆動用IC貼付け治具101には、ヒーターボード30全体又は、ヒーター駆動用IC50の接合部分を包括する範囲を予熱するヒーター(不図示)が埋め込まれており、ヒーターボード30を任意の温度で予熱できる構造となっている。
【0051】
ヒーターボード30の予熱温度は、ヒーターボード30に予め貼付けられたACF54が熱硬化を起こさない温度、つまりTg点以下に設定されることが望ましい。
【0052】
次に、ヒーターボード30上に所定の個数のヒーター駆動用IC50が貼り付けられたかが判断される(ステップS9)。所定の個数のヒーター駆動用IC50が(図7に示す構成例では7ヶ所に)が貼り付けられた後、次のプロセス(不図示)へ移行する。
【0053】
上述した説明では、ACF54の接合及びヒーター駆動用IC50の圧着を1ヶ所ずつ行うように説明したが、複数個の圧着を同時に行ってもよい。なお、上述した工程は、いわゆるクリーンな環境で行われることは、言うまでもない。
【0054】
図9は、他の実施形態のヒーター駆動用IC50が有するバンプ配列を示す平面図である。
【0055】
本実施形態では、ヒーター駆動用IC50の複数のバンプのうちで、ヒーターボード30にヒーター駆動用IC50を実装する際に相対的に最も大きな荷重がかかるGND側バンプ列52のみの接合面の面積が大きく形成された構造である。
【0056】
同様に、ヒーターボード30の複数の基板端子のうち、ヒーター駆動用IC50をヒーターボード30に実装する際に相対的に大きな荷重が作用する位置に配置されている基板端子だけが、小さな荷重が作用する基板端子よりも接合面の面積が大きくされている。
【0057】
以上のように説明した構成を実現することが回路構成上、難しい場合には、最も大きな荷重が加わる基板端子及びバンプの接合面の面積だけを大型化する構成が採られてもよい。この構成によって、ヒーター駆動用IC50の変形を最小限に抑えることができ、各バンプに作用する荷重の大きさのバラツキも最小限に抑えることができる。
【0058】
図9では、一列に配列された複数のバンプの全てが大きく形成される構成が採られたが、一列に配列されたバンプのうち、特に相対的に大きな荷重が加わる任意のバンプのみを選択的に大きく形成されてもよい。さらに、図9に示した構成では、入力側バンプ列53(53a,53b)の入力側バンプ間に必要以上の隙間をあけずに、各入力側バンプが均等な間隔で並べられた構成にされたが、入力側バンプ間の間隔がそれぞれ異なっていてもよい。
【0059】
図10は、他の実施形態であるヒーター駆動用IC50のバンプ配列を示す平面図である。ヒーター駆動用IC50のバンプのうちで、最も大きな荷重がかかるGND側バンプ列に加えて、他のバンプ列が選択的に大きく形成されてもよい。図10に示すように、GND側バンプ列に加えて、出力側バンプ列における内側のバンプ列51cや、入力側バンプ列53の内側のバンプ列53aのように比較的大きな荷重がかかるバンプ列が、GND側バンプ列と同様に接合面の面積を大きく形成されている。この構成によって、上述した実施形態と同様にバンプに作用する荷重が分散されて、各バンプに作用する荷重の均一化が図られている。
【0060】
上述したように、本実施形態によれば、ヒーター駆動用ICとヒーターボードと間の、複数のバンプ及び複数の基板端子の全てに均一な荷重をかけることが可能になる。このため、ヒーターボードの基板端子とヒーター駆動用ICのバンプとの接続状態の信頼性の向上を図ることができる。
【0061】
また、ヒーター駆動用ICが熱硬化型有機材料としてのACF54を用いてヒーターボード上に実装された電子部品において、ヒーター駆動用ICとヒーターボードと間の、全てのバンプ及び基板端子に均一な荷重をかけることが可能になる。したがって、本実施形態は、電子部品の接続状態の信頼性の向上を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッドによれば、ヒーター駆動用ICの接続状態の信頼性が向上するので、記録動作の安定化を図ることができる。
【0063】
以上、実施形態の構成について具体的に説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す斜視図である。
【図2】実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【図3】実施形態のヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す平面図である。
【図4】実施形態のヒーターボード上のヒーター駆動用ICの接続部分である基板端子を示す平面図である。
【図5】実施形態における、ヒーター駆動用ICのバンプの面積と、バンプに対応するヒーターボードの基板端子の面積の関係を説明するための平面図である。
【図6】実施形態において、ヒーターボードとヒーター駆動用ICとが熱硬化型有機材料によって接合された状態を示す断面図である。
【図7】実施形態において、ヒーターボードにヒーター駆動用ICを実装する工程を説明するための断面図である。
【図8】実施形態において、ヒーターボードにヒーター駆動用ICを実装する工程を説明するためのフローチャートである。
【図9】他の実施形態のヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す平面図である。
【図10】他の実施形態のヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す平面図である。
【図11】従来の構成例におけるヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す図である。
【図12】従来の構成例におけるヒーター駆動用ICのバンプ配列を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
30 ヒーターボード(実装基板)
31(31a,32a,33a) 出力側基板端子列
32 GND側基板端子列
33(33a,33b) 入力側基板端子列
50 ヒーター駆動用IC(半導体チップ)
51(5a,51b,51c) 出力側バンプ列
52 GND側バンプ列
53(53a,53b) 入力側バンプ列
54 ACF(熱硬化型有機材料)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面に複数の基板端子が形成された実装基板と、前記複数の基板端子にそれぞれ接合される複数のバンプを有する半導体チップと、前記複数の基板端子と前記複数のバンプとの間に介在させて前記基板端子と前記バンプとを電気的かつ機械的に接合する熱硬化型有機材料と、を備える電子部品において、
前記複数の基板端子の接合面の各面積と、前記複数のバンプの接合面の各面積は、前記実装基板に前記半導体チップを実装する際に前記複数の基板端子にそれぞれ作用する荷重、及び前記複数のバンプにそれぞれ作用する荷重が等しくなるように規定されていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
実装面に複数の基板端子が形成された実装基板と、前記複数の基板端子にそれぞれ接合される複数のバンプを有する半導体チップと、前記複数の基板端子と前記複数のバンプとの間に介在させて前記基板端子と前記バンプとを電気的かつ機械的に接合する熱硬化型有機材料と、を備える電子部品において、
前記複数の基板端子及び前記複数のバンプのうち、前記実装基板に前記半導体チップを実装する際に相対的に大きな荷重が作用する位置に配置されている前記基板端子及び前記バンプだけが、相対的に小さな荷重が作用する位置に配置されている前記基板端子及び前記バンプよりも前記接合面の面積が大きくされていることを特徴とする電子部品。
【請求項3】
前記熱硬化型有機材料は、ACF、ACP、NCF、NCP、導電性ペースト、導電性樹脂材料のいずれかである、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記荷重は、前記実装基板に前記半導体チップを実装する際に、前記実装基板に対して前記半導体チップを押圧したときに前記複数の基板端子及び前記複数のバンプの前記接合面に発生する圧力である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記荷重は、前記実装基板に前記半導体チップを実装する際に、前記熱硬化型有機材料が硬化収縮するときに前記複数の基板端子及び前記複数のバンプの前記接合面に発生する圧力である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記実装基板は、インクを吐出するための熱エネルギを発生するヒーターが設けられたインクジェット記録ヘッド用のヒーターボードであり、
前記半導体チップは、前記ヒーターを駆動するためのヒーター駆動用ICである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
請求項6に記載の電子部品を備え、被記録材にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッド。
【請求項1】
実装面に複数の基板端子が形成された実装基板と、前記複数の基板端子にそれぞれ接合される複数のバンプを有する半導体チップと、前記複数の基板端子と前記複数のバンプとの間に介在させて前記基板端子と前記バンプとを電気的かつ機械的に接合する熱硬化型有機材料と、を備える電子部品において、
前記複数の基板端子の接合面の各面積と、前記複数のバンプの接合面の各面積は、前記実装基板に前記半導体チップを実装する際に前記複数の基板端子にそれぞれ作用する荷重、及び前記複数のバンプにそれぞれ作用する荷重が等しくなるように規定されていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
実装面に複数の基板端子が形成された実装基板と、前記複数の基板端子にそれぞれ接合される複数のバンプを有する半導体チップと、前記複数の基板端子と前記複数のバンプとの間に介在させて前記基板端子と前記バンプとを電気的かつ機械的に接合する熱硬化型有機材料と、を備える電子部品において、
前記複数の基板端子及び前記複数のバンプのうち、前記実装基板に前記半導体チップを実装する際に相対的に大きな荷重が作用する位置に配置されている前記基板端子及び前記バンプだけが、相対的に小さな荷重が作用する位置に配置されている前記基板端子及び前記バンプよりも前記接合面の面積が大きくされていることを特徴とする電子部品。
【請求項3】
前記熱硬化型有機材料は、ACF、ACP、NCF、NCP、導電性ペースト、導電性樹脂材料のいずれかである、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記荷重は、前記実装基板に前記半導体チップを実装する際に、前記実装基板に対して前記半導体チップを押圧したときに前記複数の基板端子及び前記複数のバンプの前記接合面に発生する圧力である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記荷重は、前記実装基板に前記半導体チップを実装する際に、前記熱硬化型有機材料が硬化収縮するときに前記複数の基板端子及び前記複数のバンプの前記接合面に発生する圧力である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記実装基板は、インクを吐出するための熱エネルギを発生するヒーターが設けられたインクジェット記録ヘッド用のヒーターボードであり、
前記半導体チップは、前記ヒーターを駆動するためのヒーター駆動用ICである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
請求項6に記載の電子部品を備え、被記録材にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−147141(P2010−147141A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320821(P2008−320821)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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