説明

電子錠

【課題】本発明は、電子錠の車内への閉じ込め、ユーザの車外への閉め出しを確実に防止することができる電子錠を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、車載機器10からリクエスト信号を受信するLF受信回路22と、LF受信回路22が受信したリクエスト信号に対する応答信号を車載機器10に送信するRF送信回路24と、電子錠20の移動を検出する移動検出手段27と、RF送信回路24が車載機器10に送信する応答信号に移動検出手段27の検出結果を付加する電子錠側制御手段27とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器と電子錠とを用いて、ドアの施錠又は解錠を遠隔制御するドア遠隔制御装置の技術にする。特に、車両に搭載された車載機器と電子錠、あるいは、住宅に設置される電子機器と電子錠とを用いて、車両または住宅のドアの施錠または解錠を遠隔制御するドア遠隔制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが所持する電子錠が車両から所定範囲内に近づいたときにユーザがドアノブ等のタッチセンサを触ると、ユーザが電子錠を操作することなく車両のドアを解錠し、ユーザが所持する電子錠が車両から所定範囲外に離れると、ユーザが電子錠を操作することなく車両のドアを施錠する車載機器を用いた制御装置が検討されている。このような制御装置は一般に車両ドア遠隔制御装置と呼ばれている。図5は、従来の車両ドア遠隔制御装置の動作を説明する図である。この装置では、車載機器は、図5に点線のサーチ範囲51で示す範囲に、サーチ信号を送信することによってユーザが所持する電子錠が車内にあるか否かサーチする。同様に、図5に点線のサーチ範囲52で示す範囲に、サーチ信号を送信することによって車両近傍の車外エリアAにあるか否かサーチする。サーチ結果が衝突する場合、車内にあるとのサーチ結果を優先する。いずれのサーチ信号について電子錠から応答信号がない場合、車載機器は、電子錠が車外エリアAよりも外側の車外エリアBにあると判定する。このサーチを所定周期で繰り返し、車載機器は、電子錠が車外エリアAから車外エリアBに移動したときに車両のドアを施錠し、車外エリアBから車外エリアAに移動してユーザがドアノブ等のタッチセンサを触ったときに車両のドアを施錠する。電子錠が車内にあるとき、車載機器はドアの施錠を行わない。
【0003】
このような従来の車両ドア遠隔制御装置では、車載機器と電子錠との間で電波を用いた無線通信を行うため、サーチ範囲51とサーチ範囲52の境界での誤検出や、車両に搭載された他の車載機器からの外来ノイズや障害物等の影響が重なると、実際には電子錠が車内にあるにもかかわらず車外エリアAにあると誤検出するおそれがある。この誤検出を行った際に、さらに電池切れや通信不良等により、電子錠が車外エリアBにあると誤検出すると、車載機器が車両のドアを施錠してしまい、電子錠を車両に閉じ込める誤作動が発生するおそれがある。特に、ユーザが電子錠を車内に残して車外に出ていた場合、この誤作動によりユーザが車外に閉め出されてしまうおそれがある。
【0004】
これに対し、車両のドアの施錠と解錠を確実に遠隔制御するため、電子錠の相対位置の変化を検知して、その変化に基づいて車両を遠隔制御する技術が検討されている。
(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2007−146396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような従来の技術では、遠隔制御の確実性を上げることはできるが、電波を使用する以上、誤作動を起こす可能性が残るという問題があった。また、年々車両の電子化が進んでいるため車内からのノイズ源が増加しており、通信不良を引き起こして誤作動を起こす可能性も増大しているという問題があった。そして、このような誤作動により、電子錠が車内に閉じ込められ、ユーザが車外へ閉め出されるといった問題が生じていた。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を考慮し、電子錠の車内への閉じ込めや、ユーザの車外
への閉め出しを確実に防止することができる電子錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一局面である電子錠は、電子錠の移動を検出する移動検出手段と、送信手段が車載機器に送信する応答信号に移動検出手段の検出結果を付加する制御手段とを備えたことを特徴とする構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子錠の車内への閉じ込めやユーザの車外への閉め出しを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本実施形態に係る車載機器と電子錠とを用いた車両ドア遠隔制御装置について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の車載機器と電子錠とを用いた車両ドア遠隔制御装置のブロック図である。図1に示すように、車両ドア遠隔制御装置は、車両に搭載されたECU(Electric Control Unit)などの車載機器10と、携帯可能な電子錠20とを備える。
【0011】
車載機器10は、車載機器側制御手段11と、第1LF送信回路12aおよび第2LF送信回路からなるLF送信回路12と、第1LF送信アンテナ13aおよび第2LF送信アンテナ13bからなるLF送信アンテナ13と、RF受信回路14と、RF受信アンテナ15と、施解錠駆動装置16と、ドアノブセンサ17と、出力手段18とを備える。
【0012】
車載機器側制御手段11は、図示しないCPUやメモリやタイマを具備して演算処理を行い、車載機器10の各部を制御する。LF送信回路12は、それぞれ電子錠20のサーチ範囲が異なる第1LF送信回路12aと第2LF送信回路12bとを備える。第1LF送信回路12aは、車載機器側制御手段11と接続し、車載機器側制御手段11からの命令に従って、電子錠20が車外エリアAにあるか否かをサーチするためのLF(Low Frequency)信号によるリクエスト信号を送信する。第1LF送信アンテナ13aは、少なくとも1本のアンテナを有するが、好ましくは車両の右ドア側と車両の左ドア側と車両のトランク側に配置した3本のアンテナを有する。第1LF送信回路12は、第1LF送信アンテナ13aと接続し、第1LF送信アンテナ13aを介して電子錠20側にリクエスト信号を送信する。第2LF送信回路12bは、車載機器側制御手段11と接続し、車載機器側制御手段11からの命令に従って、電子錠20がリクエスト信号に応答することを禁止する待機信号をLF信号により送信する。第2LF送信アンテナ13bは、少なくとも1本のアンテナを有するが、好ましくは車両の前席側と後席側に配置した2本のアンテナを有する。第1LF送信回路12は、第2LF送信アンテナ13bと接続し、第2LF送信アンテナ13bを介して電子錠20側に待機信号を送信する。RF(Radio Frequency)受信回路14は、車載機器側制御手段11と接続し、電子錠20側からリクエスト信号に対する応答信号を受信し、この応答信号に含まれる情報を車載機器側制御手段11に送る電子回路である。このRF受信回路14は、RF受信アンテナ15と接続し、RF受信アンテナ15を介して電子錠20から応答信号を受信する。施解錠駆動装置16は、車載機器側制御手段11と接続し、車載機器側制御手段11からの施錠または解錠の命令に従ってドアの施錠または解錠を行うアクチュエータである。このアクチュエータは、例えば、モータやソレノイドで構成される。ドアノブセンサ17は、車載機器側制御手段11と接続し、自車両のドアノブに設けたタッチセンサである。このドアノブセンサ17は、ユーザがドアノブに触れたことを検出して、この検出結果を車載機器側制御手段11に送る。出力手段18は、車載機器側制御手段11と接続し、車載
機器側制御手段11の命令に従って、警告のための音、光および振動の少なくとも一つを発する。例えば、出力手段18は、音を出力するスピーカ、光を発するハザードランプなどの車載ライトおよび振動を行うモータの少なくとも一つで構成される。
【0013】
電子錠20は、電子錠側制御手段21と、LF信号受信回路22と、LF信号受信アンテナ23と、RF送信回路24と、RF送信アンテナ25と、電界強度検出手段26と、移動検出手段27とを備える。
【0014】
電子錠側制御手段21は、図示しないCPUやメモリやタイマを具備して演算処理を行い、電子錠20の各部を制御する。LF信号受信回路22は、電子錠側制御手段21と接続し、車載機器10のLF送信回路12が送信したリクエスト信号を受信し、この受信信号に含まれる情報を電子錠側制御手段21に送る電子回路である。このLF信号受信回路22は、LF受信アンテナ23と接続し、LF受信アンテナ23を介して車載機器10からリクエスト信号を受信する。RF送信回路24は、電子錠側制御手段21と接続し、電子錠側制御手段21からの命令に従って車載機器10側へリクエスト信号に対する応答信号を送信する電子回路である。このRF送信回路24は、RF送信アンテナ25と接続し、RF送信アンテナ25を介して車載機器10のRF受信回路14にリクエスト信号に対する応答信号を送信する。このRF信号の送信可能範囲は、LF信号の送信可能範囲よりも長い。電界強度検出手段26は、電子錠側制御手段21と接続し、電子錠側制御手段21の命令により、LF受信回路22がLF送信回路12から受信した信号の電界強度を検出し、この検出結果を電子錠側制御手段21に送る。移動検出手段27は、加速度センサや、モーションセンサなどの移動を検出するセンサを少なくとも一つ含んだセンサである。移動検出手段27は、電子錠側制御手段21と接続し、電子錠側制御手段21の命令により、電子錠20が動いたか否かを検出して検出結果を電子錠側制御手段21に送る。
【0015】
次に、本実施形態の車両ドア遠隔制御装置における車載機器10と電子錠20による自車両のドアの施錠および解錠の処理について説明する。
【0016】
まず、本実施形態の車載機器10の第1電子錠20のLF受信回路22がリクエスト信号を受信可能な範囲を図5を用いて説明する。図5に示すように、車載機器10の第1LF送信回路12aは、図5に点線で示すサーチ範囲51でリクエスト信号を送信する。また、第2LF送信回路12bは、図5に点線で示すサーチ範囲52でリクエスト信号を送信する。電子錠20が自車両近傍の車外エリアAにあるとき、LF受信回路22は、第1LF送信回路12aから送信されたリクエスト信号を受信することができる。また、電子錠20が自車両の車内にあるとき、LF受信回路22は、第2LF送信回路12bから送信された待機信号を受信することができる。一方、車外エリアAよりも自車両の外側の車外エリアBに電子錠20があるとき、電子錠20のLF受信回路22は、車載機器10の第1LF送信回路12aによるリクエスト信号および第2LF送信回路12bによる待機信号を受信することができない。なお、図5では、ユーザが自車両の右側のドアから近づくあるいはドアから離れる場合を説明するため、車載機器10の第1LF送信回路12aがリクエスト信号を送信可能な範囲を自車両の右側に示しているが、実際には、自車両の左側やテールゲートであるトランク周辺にも同様に送信可能な範囲が存在する。
【0017】
図2は、本実施形態の車両ドア遠隔制御装置による自車両のドアの施錠および解錠の処理のフローチャート図である。まず、図2のステップS31に示すように、車載機器10は、電子錠20が車外エリアAにあるか否かサーチする。すなわち、車載機器側制御手段11は、図示しないメモリに記憶されたIDコードを図示しないタイマによる所定の周期で第1LF送信回路12aが送信するリクエスト信号および第2LF送信回路12bが送信する待機信号に付加する。第1LF送信回路12aおよび第2LF送信回路12bは、それぞれこのIDコードが付加されたリクエスト信号および待機信号を車載機器側制御手
段11の命令により所定の周期で周囲に送信する。ここで、第1LF送信回路12aと第2LF送信回路12bの周期は同じであるが、送信タイミングは第1LF送信回路12aよりも第2LF送信回路12bの方が早い。なお、車載機器側制御手段11は、ドアノブセンサ17からユーザが自車両のドアノブに触れたことを示す信号を得た場合、図示しないタイマによる所定の周期によらず、第1LF送信回路12aから電子錠20にIDコードを付加したリクエスト信号を送信する。
【0018】
次に、ステップS32に示すように、車載機器側制御手段11は、第1LF送信回路12aによるリクエスト信号に対する応答信号が電子錠20側からあるか否かを判定する。第1LF送信回路12aによるリクエスト信号に対する応答信号がある場合、車載機器10の車載機器側制御手段11は、電子錠20が車外エリアAに存在することを判定することができる。電子錠20側では、LF受信回路22が第2LF送信回路12bから送信された待機信号を受信しなかった場合、電子錠側制御手段21の命令により、第1LF送信回路12aから送信されたリクエスト信号を受信することができる。一方、LF受信回路22が第2LF送信回路12bから送信された待機信号を受信した場合、電子錠側制御手段21の命令により、LF受信回路22は、第1LF送信回路12aから送信されたリクエスト信号を受信しない、または受信してもリクエスト信号に対する応答信号を返信しない。
【0019】
ステップS32の判定にあたって、電子錠側制御手段21は、電界強度判定手段26の検出結果が所定の値以上である場合にLF受信回路22がリクエスト信号または待機信号を受信したと判定し、電界強度判定手段26の検出結果が所定の値より小さい場合にLF受信回路22がリクエスト信号または待機信号を受信していないと判定する。LF受信回路22が第1LF送信回路12aから送信されたリクエスト信号を受信した場合、電子錠側制御手段21は、受信したリクエスト信号に含まれるIDコードと、移動検出手段27によって検出された電子錠20の移動に関する移動情報とを応答信号に付加する。RF送信回路24は、LF受信回路22が受信したリクエスト信号に含まれるIDコードと移動検出手段27が検出した電子錠20の移動情報とを付加した応答信号を電子錠側制御手段21の命令により所定の周期で周囲に送信する。
【0020】
なお、電子錠制御手段21は、LF受信回路22がリクエスト信号を受信したとき移動検出手段27による電子錠20の移動に関する移動情報の検出を開始させてもよい。これにより消費電力の低減を図ることができる。また、電子錠制御手段21は、LF受信回路22がリクエスト信号を受信したとき、電子錠制御手段21の図示しないメモリに記憶された移動検出手段27の検出結果をRF送信回路24に送信させて、その後に、次回の応答信号の返信に備えて、移動検出手段27にあらためて電子錠20の移動を検出させて検出結果をメモリに記憶してもよい。これにより、LF受信回路22がリクエスト信号を受信したとき、電子錠側制御手段21は、1周期前にあらかじめ検出されている電子錠20の移動状態をRF送信回路24に送信させるので、LF受信回路22がリクエスト信号を受信してからRF送信回路24が応答信号を返信するまでの時間を短縮化できる。
【0021】
ステップS32でYESの場合、すなわち、車載機器10のRF受信回路14がRF送信回路24から送信された応答信号を所定の時間内に受信した場合、車載機器側制御手段11は、電子錠20側から応答信号があり、車外エリアA内に電子錠20が存在すると判定する。具体的には、車載機器側制御手段11は、RF受信回路14が受信した応答信号に含まれるIDコードと車載機器側制御手段11内のメモリに記憶されたIDコードとを比較して一致したとき電子錠20から応答信号があったと判定する。このとき、車載機器側制御手段11は、この応答信号に含まれるIDコードと電子錠20の移動に関する移動情報を図示しないメモリに記憶して再度ステップS31の処理に戻る。
【0022】
一方、ステップS32でNOの場合、すなわち、車載機器10のRF受信回路14がRF送信回路24から応答信号を所定の時間内に受信しなかった場合、ステップS33に示すように、車載機器側制御手段11は、電子錠20が車外エリアAにまだ存在するか否かサーチする。具体的には、車載機器側制御手段11は、ステップS31と同様の処理を行う。そして、ステップS34に示すように、車載機器側制御手段11は、第1LF送信回路12aによるリクエスト信号に対する応答信号が電子錠20側からあるか否かを判定する。具体的には車載機器側制御手段11は、ステップS31と同様の処理を行う。ステップS31からステップS34までの処理によって、車載機器側制御手段11は、RF受信回路14が電子錠20から応答信号を受信している状態から受信していない状態に変化したか否かを判定することができる。
【0023】
ステップS34でYESの場合、すなわち、車載機器10のRF受信回路14がRF送信回路24から送信された応答信号を所定の時間内に受信した場合、車載機器側制御手段11は、電子錠20側から応答信号があり、車外エリアA内にまだ電子錠20が存在すると判定し、ステップS33に戻る。
【0024】
一方、ステップS34でNOの場合、すなわち、車載機器10のRF受信回路14がRF送信回路24から応答信号を所定の時間内に受信しなかった場合、車載機器側制御手段11は、RF受信回路14が電子錠20から応答信号を受信している状態から受信していない状態に変化したと判定する。そして、ステップS35に示すように、車載機器側制御手段10は、ステップS31からステップS34までの間に車両のドアが開けられたか否かを図示しないドア開閉判定手段の検出結果から判定する。具体的には、車載機器側制御手段10は、ドア開閉判定手段からドアが開いたか否かの情報をCAN(Controller Area Network)によって得る。なお、このドア開閉判定手段は、車載機器10の内部に設けられてもよいし、外部の別な外部機器に設けられてもよい。
【0025】
ステップS35でYESの場合、すなわち、車載機器側制御手段11は、ドアが開けられたと判定した場合、ユーザが電子錠20を持って車外エリアAから車内に乗り込んだと判定して、施解錠駆動装置16に自車両のドアを施錠させず、解錠した状態のまま維持させたままステップS31の処理に戻る。
【0026】
ステップS35でNOの場合、すなわち、車載機器側制御手段11は、ドアが開けられていないと判定した場合、ステップS36に示すように、電子錠20が移動して車外エリアAから車外エリアBに出た正常な状態を示すのか、故障や電波不良などにより受信できなかった異常な状態を示すのかを判断するために、電子錠20に動きがあったか否かを判定する。
【0027】
ステップS36でYESの場合、すなわち、電子錠20が動いていると車載機器側制御手段11が判定した場合、車載機器側制御手段11は、LF受信回路22のリクエスト信号や待機信号の受信状況が正常であると判定する。ステップS36でYESになるケースは、電子錠20を保持したユーザが車外エリアAから車外エリアBに移動するケースである。そして、車載機器側制御手段11は、ステップS36でYESの場合、ステップS37に示すように、電子錠20が動いて車外エリアAから車外エリアBに移動したと判定し、施解錠駆動装置16に自車両のドアを正常に解錠させる。
【0028】
一方、ステップS36でNOの場合、すなわち、電子錠20が動いていないと車載機器側制御手段11が判定した場合、ステップS38に示すように、車載機器側制御手段11は、LF受信回路22のリクエスト信号や待機信号の受信状況が異常であり、実際には電子錠20が車内に閉じ込められているのに車外エリアAにあると誤判定したと判断して、施解錠駆動装置16に自車両のドアを施錠させず、解錠した状態のまま維持させる。そし
て、出力手段18は、車載機器側制御手段11の命令により警告を発する。
【0029】
これにより、実際には電子錠20が車内にあるのに車外エリアAにあると誤判定して電子錠20を車内に閉じ込めたまま施錠してしまう2つのケースを防止することができる。
【0030】
まず、1つ目のケースは、ステップS32において、LF受信回路22が、電波不良などの原因により、第2LF送信回路12bから送信された待機信号を受信できず、その結果、第1LF送信回路12aから送信されたリクエスト信号を受信して、電子錠側制御手段21の誤判定によりRF送信回路24から送信された応答信号をRF受信回路14が受信して、電子錠20が車外エリアAに存在すると車載機器側制御手段11が誤判定するケースである。このケースでは、ステップS34において、通信不良が回復してLF受信回路22が待機信号を受信可能になり、リクエスト信号に対する応答信号をRF受信回路14が受信しなくなっても、車載機器側制御手段11は、電子錠20が動いているか否かを判定することによって、電子錠20が車外エリアAから車外エリアBに移動したと誤判定せずに、電子錠20の車内への閉じ込め、ユーザの車外への閉め出しを防止することができる。
【0031】
2つ目のケースとしては、上記1つ目のケースと同様にステップS32において電子錠20が車外エリアAに存在すると車載機器側制御手段11が誤判定して、ステップS34で、通信不良がさらに悪化してLF受信回路22がリクエスト信号を受信不可能になったケースである。このケースで、電子錠側制御手段21がRF送信回路24による応答信号の送信を行わず、リクエスト信号に対する応答信号をRF受信回路14が受信しなくなっても、車載機器側制御手段11は、電子錠20が動いているか否かを判定することによって、電子錠20が車外エリアAから車外エリアBに移動したと誤判定せずに、電子錠20の車内への閉じ込め、ユーザの車外への閉め出しを防止することができる
次に、図2のステップS37に示すように自車両のドアを正常に施錠する場合を例にとって、本実施形態の車両ドア遠隔制御装置の動作例を説明する。図3は、自車両のドアを正常に施錠する場合における本実施形態の車両ドア遠隔制御装置の動作を説明する図である。
【0032】
図3に示すように、車載機器側制御手段11は、第1LF送信回路12aに、所定の周期で、電子錠20が車外エリアAにあるか否かを検出するためのリクエスト信号を周囲に送信させる。電子錠側制御手段21は、移動検出手段27に、所定の周期で、電子錠20が動いているか否かを出力させる。図3に示すように、移動検出手段27は、電子錠20が動いていると判定してこの判定結果を電子錠側制御手段21に出力する。電子錠側制御手段21は、LF受信回路22が受信したリクエスト信号に移動検出手段27の検出結果を付加した応答信号をRF送信回路24に送信させる。車載機器側制御手段11は、この応答信号に含まれる移動検出手段27の検出結果を車載機器側制御手段11のメモリ内に記憶する。車載機器側制御手段11は、所定の周期ごとに、RF受信回路14による応答信号の受信状態を判定する。車載機器側制御手段11は、RF受信回路14が1周期前に応答信号を受信していた状態から受信していない状態に変化したことを判定したとき、1周期前の応答信号に含まれる電子錠20の移動情報を車載機器側制御手段11内のメモリから読み出して、電子錠20が動いているか否かを判定する。図3に示すように、車載機器側制御手段11は、1周期前の応答信号に含まれる電子錠20の移動情報から、電子錠20が動いていると判定する。そして、車載機器側制御手段11は、電子錠20が動いており、電子錠20が動いて車外エリアAから車外エリアBに出たと判定して、施解錠駆動装置16に、自車両のドアの施錠を命令する制御信号を送信する。この制御信号によって、施解錠駆動装置16は、自車両のドアを施錠する。なお、車載機器側制御手段11は、電子錠20が車外エリアBから車外エリアAに入ったことを判定したとき、施解錠駆動装置16に、自車両のドアの解錠を命令する処理を行う。また、車載機器側制御手段11は
、ドアノブセンサ17からユーザが自車両のドアノブに触れたことを示す信号を得たとき、第1LF送信回路12aにリクエスト信号を送信させ、RF受信回路14が受信した応答信号に含まれるIDコードと車載機器側制御手段11内のメモリに記憶されたIDコードとを比較し、一致したときに、施解錠駆動装置16に、自車両のドアの解錠を命令する処理を行う。
【0033】
次に、図2のステップS38に示すように自車両に電子錠20が閉じ込められている場合について、本実施形態の車両ドア遠隔制御装置の動作例を説明する。図4は、自車両に電子錠20が閉じ込められている場合における本実施形態の車両ドア遠隔制御装置の動作を説明する図である。
【0034】
図4に示すように、車載機器側制御手段11は、第1LF送信回路12aに、所定の周期で、電子錠20が車外エリアAにあるか否かを検出するためのリクエスト信号を周囲に送信させる。電子錠側制御手段21は、移動検出手段27に、所定の周期で、電子錠20が動いているか否かを出力させる。図4に示すように、移動検出手段27は、電子錠20が動いていないと判定してその判定結果を電子錠側制御手段21に出力する。電子錠側制御手段21は、LF受信回路22が受信したリクエスト信号に移動検出手段27の検出結果である1の値を付加した応答信号をRF送信回路24に送信させる。車載機器側制御手段11は、この応答信号に含まれる移動検出手段27の検出結果を車載機器側制御手段11のメモリ内に記憶する。車載機器側制御手段11は、所定の周期ごとに、RF受信回路14による応答信号の受信状態を判定する。車載機器側制御手段11は、RF受信回路14が1周期前に応答信号を受信していた状態から受信していない状態に変化したことを判定したとき、1周期前の応答信号に含まれる電子錠20の移動情報を車載機器側制御手段11内のメモリから読み出して、電子錠20が動いているか否かを判定する。図4に示すように、車載機器側制御手段11は、1周期前の応答信号に含まれる電子錠20の移動情報により、電子錠20が動いていないと判定する。そして、車載機器側制御手段11は、電子錠20が動いておらず、電子錠20が車外エリアAから車外エリアBに出たのが妨害電波や電池切れ等による誤検出であり、電子錠20が自車両内に閉じ込められていると判定して、施解錠駆動装置16に、自車両のドアの施錠を命令する制御信号を送信しない。これにより、施解錠駆動装置16は、自車両のドアを解錠状態のまま維持する。さらに、車載機器側制御手段11は、この制御信号によって、出力手段18に、警告を出力する処理を行わせる。これにより、ユーザに注意喚起して電子錠20に異常が発生していることを知らせ、自車両への閉じ込めを防止することができる。なお、車載機器側制御手段11は、電子錠20が自車両内に閉じ込められていると判定した場合に、自車両のドアの施錠を命令する制御信号を施解錠駆動装置16に送信しないことに替えて、施解錠駆動装置16に自車両のドアの解錠状態を維持する命令を行わせる制御信号を送信してもよい。
【0035】
なお、本実施形態では、移動検出手段27が検出する電子錠20の移動情報は、位置データなどによる数値データを想定しているが、動いているか否かの2値データであってもよい。また、本実施形態では、車載機器側制御手段11は、図2のステップS35で電子錠20が動いているか否かを判定するにあたって、車載機器側制御手段11内のメモリに記憶されている1周期前の応答信号に含まれる移動情報を用いたが、所定周期前から1周期前の応答信号に含まれる移動情報の平均値を用いてもよい。この平均値を用いることでさらに自車両のドアの施錠と解錠の誤作動を防止することができる。
【0036】
本実施形態の車載機器10と電子錠20を用いた車両ドア遠隔制御装置によれば、電子錠20が車載機器10からのリクエスト信号に対する応答信号に電子錠20の移動情報を付加することで、車載機器側制御手段11が、電子錠20が車外エリアAから車外エリアBに移動したと判定した場合に、この判定が正しいのか誤りであるのかをさらに判定することができる。すなわち、第1LF送信回路12aおよび第2LF送信回路12bとLF
受信回路22との通信状態が正常であり、実際に電子錠20が動いて車外エリアAから車外エリアBに出たとの判定が正しいのか、それとも、第1LF送信回路12aおよび第2LF送信回路12bとLF受信回路22との通信状態が異常で、実際には電子錠20が車内にあるにもかかわらず通信不良等により車外エリアAから車外エリアBに出たと誤判定したのかを判定することができる。そして、車載機器側制御手段11は、実際には電子錠20が車内にあるにもかかわらず通信不良等により車外エリアAから車外エリアBに出たと誤判定した場合であっても、電子錠20が移動していないことを判定した場合、誤判定したことを認識することができる。これにより、車載機器側制御手段11は、施解錠駆動装置16に自車両のドアを施錠させずに解錠したまま維持させるので、施解錠駆動装置16による電子錠20の車内への閉じ込めやユーザの車外への閉め出しを確実に防止することができる。したがって、車両ドア遠隔制御装置の信頼性を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、移動検出手段27の検出結果に基づいて、車載機器側制御手段11が電子錠20の移動状態を判定しているが、電子錠側制御手段21が電子錠20の移動状態を判定して、RF送信回路24に施解錠駆動装置16や出力手段18への命令信号を送信させてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、車外エリアAよりも自車両の外側の車外エリアBに電子錠20があるとき、電子錠20のLF受信回路22は、車載機器10の第1LF送信回路12aによるリクエスト信号を受信することができないものとしたが、電子錠側制御手段21は、LF受信回路22がリクエスト信号を受信することはできるが、このリクエスト信号について、電界強度判定手段26による検出結果が所定の値より小さい場合にRF送信回路24に応答信号を送信させないように制御してもよい。
【0039】
なお、本実施形態では、電子機器と電子錠を車載用として用いてドア遠隔制御装置としたが、住宅用に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る電子機器と電子錠は、ユーザによる操作を必要としない車載用や住宅用のドア遠隔制御装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態の車載機器と電子錠とを用いた車両ドア遠隔制御装置のブロック図
【図2】本実施形態の車両ドア遠隔制御装置による自車両のドアの施錠および解錠の処理のフローチャート図
【図3】自車両のドアを正常に施錠する場合における本実施形態の車両ドア遠隔制御装置の動作を説明する図
【図4】自車両に電子錠20が閉じ込められている場合における本実施形態の車両ドア遠隔制御装置の動作を説明する図
【図5】従来の車両ドア遠隔制御装置の動作を説明する図
【符号の説明】
【0042】
10 車載機器
11 車載機器側制御手段
12a 第1LF送信回路
12b 第2LF送信回路
13a 第1LF送信アンテナ
13b 第2LF送信アンテナ
14 RF受信回路
15 RF受信アンテナ
16 施解錠駆動装置
17 ドアノブセンサ
18 出力手段
20 電子錠
21 電子錠側制御手段
22 LF受信回路
23 LF受信アンテナ
24 RF送信回路
25 RF送信アンテナ
26 電界強度検出手段
27 移動検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクエスト信号を受信する受信手段と、
この受信手段が受信したリクエスト信号に対する応答信号を送信する送信手段と、
前記受信手段がリクエスト信号を受信したときに前記送信手段に応答信号を送信させる制御手段とを備えた電子錠であって、
この電子錠は、
さらに、前記電子錠の移動を検出する移動検出手段を備え、
前記制御手段は前記移動検出手段の検出結果を前記送信手段が送信する応答信号に付加することを特徴とする電子錠。
【請求項2】
前記制御手段は、前記受信手段がリクエスト信号を受信している状態から受信していない状態へ変化したと判定した場合、前記移動検出手段が前記電子錠の移動を検出してドアの施錠処理の命令を前記送信手段に送信させ、前記移動検出手段が前記電子錠の移動を検出せずドアの施錠処理の命令を前記送信手段に送信させないことを特徴とする請求項1に記載の電子錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−117203(P2012−117203A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75558(P2009−75558)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】