説明

電子鍵盤楽器

【課題】モード切換のための特別なスイッチを設けることなく音色等の各種の音楽パラメータの設定が可能な電子鍵盤楽器を提供すること。
【解決手段】鍵盤部10が備える右端3個の鍵盤を同時に押鍵した状態(同時押鍵状態)であることを検出した場合に、発音の音色設定を含む各種の設定が可能な設定モードに移行させる。一方、この同時押鍵状態にあるいずれかの鍵が離鍵された場合に通常の押鍵発音を行う通常演奏モードに復帰させる。そして、設定モードにおいては、鍵盤部10の鍵盤を押鍵操作することによって、音色設定を含む所要の設定操作を行えるようにしたので、モード切換スイッチのような特別なスイッチを設けずに、鍵盤の押鍵操作のみで音色設定等を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鍵を備えた鍵盤部を有して、押鍵に対応する発音動作を行う電子鍵盤楽器の各種音楽パラメータの設定機能(音色設定等の設定)の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通常のピアノ演奏に加えて電子音源による演奏をも可能にした複合ピアノにおいて、鍵盤操作によって音色設定等を行えるようにした鍵盤スイッチ装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。この装置では、音色等の設定モードの場合には、12個の鍵(K1〜K12)を押して、その押された鍵K1〜K12に対応する設定処理が行われる。そして、鍵K1〜K8は音色設定に関するものであり、押された音色に設定される。また、鍵K9を押せば、同じように鍵を押しても音量が大きめに出る「Heavy」が設定可能な一方、鍵K10を押せば、同じように鍵を押しても音量が小さめに出る「Light」が設定可能であり、更に、鍵K11、K12は音の残響音効果の模擬態様の設定が可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−104748号公報(第4−6頁、第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置にあっては、音色等の設定モードに移行する際には、予め設けているモード切換スイッチを操作することによって、通常の演奏モード(即ち、鍵を押せば押したなりの発音動作が行われるモード)、又は、音色等の設定モードのいずれかを選択するようになっていた。このため、ピアノ楽器等の鍵盤が配置された面上にモード切換スイッチを設けなくてはならず、コスト高を招くと共に、スイッチが多くなってしまいピアノの拡大化等を招いていた。
【0005】
本発明は、かかる従来の課題を解決するためになされたもので、モード切換のための特別なスイッチを設けることなく音色等の設定が可能な電子鍵盤楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者等は、鋭意研究の結果、モード切換スイッチのような特別なスイッチを設けずに、鍵盤の押鍵操作のみで音色等の各種の音楽パラメータを設定する設定モードに移行させ、音色設定等を行えるようにした電子鍵盤楽器を提供するに至った。より具体的には、例えば、鍵盤の最上位(右端)又は再下位(左端)の3鍵を同時押鍵状態にすることで音色等の設定モードに移行させ、音色設定を残りの鍵盤で行うことができる電子鍵盤楽器を提供するに至った。これは、通常の演奏では、鍵盤の最上位(右端)又は最下位(左端)の3鍵を同時押鍵状態にすることは殆ど無いことを種々の実験によって確認したからである。
【0007】
しかし、設定モードに移行する際に、上記3鍵を押鍵することによって通常の演奏では発音されない音が出力されることや、設定モードに移行したことをユーザーに報知しないと操作性が良くないことを突きとめ、これらの点を改良して本願発明に至ったのである。
【0008】
即ち、上記目的を達成するために、本発明は、複数の鍵盤を直線状に配列した鍵盤部を有して、押鍵された鍵盤に対応する発音動作を行うように構成された電子鍵盤楽器において、
前記鍵盤部の全鍵盤の内の所定の複数個の鍵盤を同時に押鍵した状態である同時押鍵状態にあることを検出する同時押鍵検出手段と、
前記同時押鍵状態とするのに関与した、前記所定の複数個の鍵盤の押鍵に対する発音が行われないようにする発音阻止手段と、
前記同時押鍵検出手段が前記同時押鍵状態を検出した場合に、発音の音色設定を含む各種の音楽パラメータの設定が可能な設定モードに移行したことを音で通知する通知手段と、を備え、
前記同時押鍵検出手段が前記同時押鍵状態を検出した場合に前記設定モードに移行させる一方、この同時押鍵状態にあるいずれかの鍵が離鍵された場合に通常の押鍵発音動作を行う通常演奏モードに復帰させ、
前記設定モードにおいては、前記鍵盤部の鍵盤を押鍵操作することによって、前記音色設定を含む各種の音楽パラメータの設定操作を行えるように構成したことを特徴とするようにした。
【0009】
この発明によれば、同時押鍵検出手段が同時押鍵状態を検出した場合に、発音の音色設定を含む各種の音楽パラメータの設定が可能な設定モードに移行させる。一方、この同時押鍵状態にあるいずれかの鍵が離鍵された場合に通常の押鍵発音を行う通常演奏モードに復帰させる。そして、設定モードにおいては、鍵盤部の鍵盤を押鍵操作することによって、音色設定を含む所要の設定操作を行えるようにしたので、モード切換スイッチのような特別なスイッチを設けずに、鍵盤の押鍵操作のみで音色等の各種の音楽パラメータを設定する設定モードに移行させ、音色設定等を行えるようになる。
【0010】
また、前記通知手段を、前記同時押鍵検出手段が前記同時押鍵状態を検出した場合に、各種の音楽パラメータの設定が可能な設定モードに移行したことを、いずれの鍵の押鍵操作によって発音される音とも異なる音での発音で通知する構成とすることで、ユーザーは違和感無く設定モードに移行したことを把握することが可能となる。
【0011】
また、上記電子鍵盤楽器において、前記同時押鍵検出手段を、前記鍵盤部の端の3個の鍵盤の内のいずれか1つが押鍵された後、第1の期間内(好ましくは10(msec))に、前記端3個の鍵盤の残りの2鍵の内のいずれか1つが押鍵され、更に、この押鍵から第2の期間内(好ましくは10(msec))に、前記端3個の鍵盤の残りの1鍵の押鍵を検出すると、前記同時押鍵状態にあることを検出したとする構成とすることできる。
【0012】
さらに、上記電子鍵盤楽器において、前記鍵盤部の鍵を押鍵すると、少なくともベロシティが前記鍵盤部から出力されるように構成され、更に、ベロシティと待ち時間とを対応付けて記憶した記憶手段を備え、前記同時押鍵検出手段を、前記鍵盤部の前記所定の複数個の鍵盤の内のいずれか1つが押鍵された後、この押鍵によって前記鍵盤部から出力されたベロシティに対応する待ち時間を前記記憶手段を参照して求め、この求めた待ち時間内に、前記所定の複数個の鍵盤の残りの鍵の内のいずれか1つが押鍵され、更に、この押鍵によって前記鍵盤部から出力されたベロシティに対応する待ち時間を前記記憶手段を参照して求め、この求めた第2の待ち時間内に、前記所定の複数個の鍵盤の残りの「所定の複数個−2個」の鍵の押鍵を検出し、という処理を前記所定の複数個の鍵盤の残りの鍵が1個になるまで繰り返して行って、前記同時押鍵状態にあることを検出したとする構成とすることができる。具体的には、上記電子鍵盤楽器において、前記鍵盤部の鍵を押鍵すると、少なくともベロシティが前記鍵盤部から出力されるように構成され、更に、ベロシティと待ち時間とを対応付けて記憶した記憶手段を備えて、前記同時押鍵検出手段を、前記鍵盤部の端の3個の鍵盤の内のいずれか1つが押鍵された後、この押鍵によって前記鍵盤部から出力されたベロシティに対応する待ち時間を前記記憶手段を参照して求め、この求めた待ち時間内に、前記端3個の鍵盤の残りの2鍵の内のいずれか1つが押鍵され、更に、この押鍵によって前記鍵盤部から出力されたベロシティに対応する待ち時間を前記記憶手段を参照して求め、この求めた第2の待ち時間内に、前記端3個の鍵盤の残りの1鍵の押鍵を検出すると、前記同時押鍵状態にあることを検出したとする構成とすることで、端3鍵の押鍵速度が遅くても、設定モードに移行させることができる。即ち、ゆっくり押鍵してもモード移行できるように考慮した電子鍵盤楽器を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モード切換のための特別なスイッチを設けることなく音色等の設定が可能な電子鍵盤楽器を提供することが可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電子鍵盤楽器1の構成図である。
【図2】鍵盤部10の右端部分の説明図である。
【図3】動作を説明するフローチャートである。
【図4】電子鍵盤楽器2の構成図である。
【図5】テーブル記憶部70に記憶されるテーブルの説明図である。
【図6】動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(構成)
図1は本発明の実施形態の電子鍵盤楽器1のブロック構成図である。この電子鍵盤楽器1は、鍵盤部10と、制御部20と、音源部30と、アンプ部40と、スピーカー部50とを有して構成される。鍵盤部10は、複数個(例えば88個)の鍵盤を直線上に横方向に配列したものであり、それぞれの鍵を押鍵することによって、対応するノート番号(音程情報)が制御部20に出力されるようになっている。制御部20は、与えられたノート番号に対応する発音動作が行われるように音源部30を駆動制御する。そして、音源部30から出力された楽音信号はアンプ部40によって増幅され、スピーカー50を介して放音される構成となっている。かくして、この電子鍵盤楽器1は、複数の鍵盤を直線状に配列した鍵盤部10を有して押鍵された鍵盤に対応する発音動作を行うように、つまり通常演奏可能に構成されている。なお、制御部20は、例えばCPUがROM等の記録媒体に記録されたプログラムをRAMをワークエリアとして使用しながら実行することによって一連の動作が行えるようになっている。
【0017】
図2は鍵盤部10の右端(RE)の部分の模式的平面図である。右端から、白鍵、黒鍵の区別なく右端(RE)から3個の鍵を符号K1、K2、K3で示している。そして、この電子鍵盤楽器1にあっては、この3鍵(図中では鍵を「Key」とも記す)K1、K2、K3を同時に押鍵した状態が検出されると、通常の演奏モードから音色設定モードに移行する。逆に、同時押鍵状態にある3鍵K1、K2、K3の内のいずれかが離鍵状態となると、音色設定モードから通常演奏モードに復帰する。なお、この3鍵を不図示の左端(下位)3鍵とすることもできるし、片手操作を想定すると、鍵数は2個以上5個までであれば良い。但し、各種の実験結果から3鍵とすれば確実、かつ、操作性良くモード移行操作を行えることを確認している。また、設定モードにおいては、音色設定の他、残響音の残響時間設定や発音音量等の各種の音楽パラメータの設定を行うようにすることも可能である。
【0018】
音色設定において、右端3鍵K1、K2、K3を設定モード移行操作に用いた構成とする場合、例えば、左手で1番左端の鍵盤を押鍵操作すると「ギターの音色設定」、次に右側に隣接している鍵を(左端から2番目の鍵)押鍵操作すると「バイオリンの音色設定」、次に右側に隣接している鍵を(左端から3番目の鍵)押鍵操作すると「ドラムの音色設定」…、として押鍵操作のみで音色設定が可能にすることができる。
【0019】
(動作)
次に図3を参照して全体動作を説明する。なお、通常演奏の場合には、押鍵した鍵に対応する発音動作が行われるのは上述した通りである。今、図2の鍵K1、K2、K3の順番で押鍵する場合を想定して説明する。先ず、ステップS300において、通常演奏モードにおいて、右端3鍵の内の1つ目の鍵K1(以下、図中では「Key」とも記す)が押鍵(「打鍵」とも記す)されたことを制御部20が検出すると、制御部20は、ステップS305において、この1つ目の鍵K1に対しての発音動作を行わせないようにする。なお、鍵K1は押鍵された状態を維持している。次いで、ステップS310において、制御部20が、1つ目の押鍵(鍵K1の押鍵)から10(msec)が経過したか否かを判定する。経過したと判定した場合(Yes)、1つ目の押鍵からかなり時間が経過し同時押鍵状態となり得ないとして、ステップS315において、右端の3鍵の内の押鍵された1つ目の鍵K1に対応する音がスピーカー50から放音されるように、制御部20は音源部30を駆動制御する。一方、ステップS310において、10(msec)経過していないと判定された場合(No)には、同時押鍵状態となる可能性があるため、ステップS320において、次に押鍵されたのは右端の3鍵の内の2つ目(鍵K2)であるか否かを判定する。
【0020】
押鍵されたのが鍵K2でないと判定された場合(No)には、ステップS325において、1つ目の鍵K1と今回押鍵された鍵K2とに対応する音がスピーカー50から放音されるように、制御部20が音源部30を駆動制御する。一方、押鍵されたのが鍵K2であると判定された場合(Yes)には、ステップS330に移行して、いまだ同時押鍵状態となる可能性があるため、制御部20は、この2つ目の鍵K2に対しての発音動作を行わせないようにする。なお、鍵K2は押鍵された状態を維持している。次に、ステップS335において、制御部20が、2つ目の押鍵から10(msec)が経過したか否かを判定する。経過したと判定した場合(Yes)、両押鍵(鍵K1鍵k2の押鍵)の時間がかなり経過し同時押鍵状態ではないとして、ステップS350に移行し、右端の3鍵の内の押鍵された1つ目の鍵K1と2つ目の鍵K2とに対応する音がスピーカー50から放音されるように、制御部20が音源部30を駆動制御する。一方、ステップS335において、10(msec)経過していないと判定された場合(No)には、いまだ同時押鍵状態となる可能性があるため、ステップS340において、次に押鍵されたのは右端の3鍵の内の3つ目(鍵K3)であるか否かを判定する。
【0021】
ステップS340において、今回押鍵されたのが3つ目の鍵K3でないと判定した場合(No)、ステップS350において、右端3鍵以外に3つ目に押鍵された鍵(ステップS340において押鍵された鍵)に対する発音動作も行い、その後、ステップS300の「右端3鍵のうちの1つ目の鍵の押鍵検出」が行われるのを待つウエイト状態とする。一方、ステップS340において、今回押鍵されたのが3つ目の鍵K3であると判定した場合(Yes)には、制御部20は、ステップS345において、この鍵3に対する発音動作を行わないようにする。そして、ステップS355に進み、制御部20は、モードを通常演奏モードから音色設定モード(ファンクションモード)に移行させる。つまり、鍵K3は押鍵された状態を維持しているため、鍵K1、鍵K2、鍵K3の3鍵が同時押鍵状態となっており、この状態になった場合に音色設定モードに移行する。
【0022】
そして、制御部20は、音色設定モードに移行したことをいずれの鍵の押鍵操作によって発音される音とも異なる音(例えば「ピッ」という電子音)での発音でユーザーに通知する(確認音発音)ように、音源部30に対して「確認音発音指示信号」を供給して駆動制御するので、ユーザーは違和感無く設定モードに移行したことを把握することが可能となる。そして、図3には図示しないが、制御部20は、同時押鍵状態にある右端3鍵K1、K2、K3のいずれかの鍵が離鍵状態となると、モードを設定モードから通常演奏モードに復帰させるように動作制御を行う。このように、本実施形態においては、鍵盤部10の右端の3個の鍵盤の内のいずれか1つが押鍵された後、10(msec)(第1の期間)内に、右端3個の鍵盤の残りの2鍵の内のいずれか1つが押鍵され、更に、この押鍵から10(msec)(第2の期間)内に、右端3個の鍵盤の残りの1鍵の押鍵を検出することで、3個の鍵が同時押鍵状態にあると判断しているが、実際の実験結果においてもこのアルゴリズムの適格性は確認している。
【0023】
以上のように、鍵盤部10が備える右端3個の鍵盤を同時に押鍵した状態、つまり、同時押鍵状態にあることを検出した場合に、発音の音色設定を含む各種の音楽パラメータの設定が可能な設定モードに移行させる一方、この同時押鍵状態にあるいずれかの鍵が離鍵された場合に通常の押鍵発音を行う通常演奏モードに復帰させる。そして設定モードにおいては、鍵盤部10の鍵盤を押鍵操作することによって、音色設定等の設定操作を行えるようにしたので、モード切換スイッチのような特別なスイッチを設けずに、鍵盤の押鍵操作のみで音色等の各種のパラメータを設定する設定モードに移行させ、音色設定等を行えるようになる。また、ステップS305、ステップS330、ステップS345における不発音処理によって、同時押鍵状態とすることに関与した右端3鍵の押鍵操作によって通常の演奏では発音されない音が出力されることがある違和感を解消させることができる。なお、上記の動作説明においては鍵K1、K2、K3の順番で押鍵することを想定しているが、この3鍵が同時押鍵状態にあることを検出できればモード移行が行われるので、この3鍵K1、K2、K3における押鍵順番には限定は無い。
【0024】
(他の構成例)
図4は他の構成の電子鍵盤楽器2の構成図であり、この構成においては、たとえ押鍵操作がゆっくりであっても、この3回の押鍵が予め設定した所定期間内に入らないとして設定モードへの移行を行わないのではなく、このような場合にあっても、設定モードへの移行が可能なように考慮している点に特徴がある。この電子鍵盤楽器2は、鍵盤部10と、同時押し検出部60と、制御部20と、音源部30と、アンプ部40と、スピーカー50と、テーブル記憶部70とを有して構成されている。なお、図1と同一符号のものの機能等は基本的に同じものである。但し、鍵盤部10からは、押鍵に応じたノート番号に加えてそのベロシティ(MIDI規格で「1」から「127」までの数値)が出力されるようになっている。ベロシティとは鍵を押す時の速さである押鍵速度である。
【0025】
また、テーブル記憶部70にはテーブルが格納されており、図5はそのテーブルの説明図である。横軸の「ベロシティ」(数値「1」から「127」)に対して縦軸に「待ち時間」が対応して設定されている。この例では、ベロシティが「1」から「64」までは、待ち時間が「30(msec)」であり、また、ベロシティ「64」を超えると、待ち時間は「10(msec)」となる例である。このように、ベロシティが小さな程「待ち時間」が大きくなるように、換言すれば、ベロシティが大きな程「待ち時間」が小さくなるように、ベロシティと待ち時間との対応付けを行う。
【0026】
今、図6(横軸「t」は時間軸を示す)に示すように第1の押鍵(鍵K1の押鍵)があって、そのベロシティが「70」であると、同時押し検出部60が判定すると、テーブル記憶部70のテーブルを参照して、このベロシティ「70」に対応する待ち時間を「10(msec)」と求める。そして、同時押し検出部60は、第2の押鍵(鍵K2の押鍵)までの時間T1が、この求めた待ち時間「10(msec)」以内であれば、2鍵K1、K2が同時押鍵状態にあると判定する。次いで、同時押し検出部60は、第2の押鍵(鍵K2の押鍵)があって、そのベロシティが「60」であることを把握すると、テーブル記憶部70のテーブルを参照して、このベロシティ「60」に対応する待ち時間を「30(msec)」と求める。そして、同時押し検出部60は、第2の押鍵から第3の押鍵(鍵K3の押鍵)までの時間T2が、この求めた待ち時間「30(msec)」以内であれば、3鍵K1、K2、K3が同時押鍵状態にあると判定する。なお、同時押し検出部30は、音色設定モードに移行したことをいずれの鍵の押鍵操作によって発音される音とも異なる音での発音でユーザーに通知する(確認音発音)ように、音源部30に対して「確認音発音指示信号」を供給して駆動制御するので、ユーザーは違和感無く設定モードに移行したことを把握することが可能となる。
【0027】
かくして、鍵盤部10の右端の3個の鍵盤の内のいずれか1つが押鍵された後、この押鍵によって鍵盤部10から出力されたベロシティに対応する待ち時間をテーブル記憶部70(記憶手段)を参照して求め、この求めた待ち時間内に、右端3個の鍵盤の残りの2鍵の内のいずれか1つが押鍵され、更に、この押鍵によって鍵盤部10から出力されたベロシティに対応する待ち時間をテーブル記憶部70を参照して求め、この求めた第2の待ち時間内に、右端3個の鍵盤の残りの1鍵の押鍵を検出すると、鍵盤部10の右端3個の鍵が同時押鍵状態にあることを検出したとするので、右端3鍵の押鍵速度が遅くても、これを無視せずに、設定モードに移行させることができる。即ち、ベロシティが小さな程、待ち時間を大きくとっているので、ゆっくり押鍵してもモード移行できるように考慮した電子鍵盤楽器を実現することができる。もちろん、右端3鍵ではなく左端3鍵を対象としても良い。
【0028】
以上の説明では、右端(又は左端)3鍵をモード移行操作の対象としたが、片手の場合5鍵以内であれば3鍵にこだわる必要は無く、また、連続した鍵ではなく、1個以上鍵を飛ばす事なども理論上可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上説明してきたように、本発明は、複数の鍵を備えた鍵盤部を有して押鍵に対応する発音動作を行う電子鍵盤楽器の音色設定等に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 電子鍵盤楽器
2 電子鍵盤楽器
10 鍵盤部
20 制御部
30 音源部
40 アンプ部
50 スピーカー
60 同時押し検出部
70 テーブル記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵盤を直線状に配列した鍵盤部を有して、押鍵された鍵盤に対応する発音動作を行うように構成された電子鍵盤楽器において、
前記鍵盤部の全鍵盤の内の所定の複数個の鍵盤を同時に押鍵した状態である同時押鍵状態にあることを検出する同時押鍵検出手段と、
前記同時押鍵状態とするのに関与した、前記所定の複数個の鍵盤の押鍵に対する発音が行われないようにする発音阻止手段と、
前記同時押鍵検出手段が前記同時押鍵状態を検出した場合に、前記所定の複数個の鍵盤の押鍵が行われたにも関わらず、これに対する発音が行われないようにする発音阻止手段と、
前記同時押鍵検出手段が前記同時押鍵状態を検出した場合に、発音の音色設定を含む各種の音楽パラメータの設定が可能な設定モードに移行したことを音で通知する通知手段と、を備え、
前記同時押鍵検出手段が前記同時押鍵状態を検出した場合に前記設定モードに移行させる一方、この同時押鍵状態にあるいずれかの鍵が離鍵された場合に通常の押鍵発音動作を行う通常演奏モードに復帰させ、
前記設定モードにおいては、前記鍵盤部の鍵盤を押鍵操作することによって、前記音色設定を含む各種の音楽パラメータの設定操作を行えるように構成したことを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、
前記通知手段は、
前記同時押鍵検出手段が前記同時押鍵状態を検出した場合に、各種の音楽パラメータの設定が可能な設定モードに移行したことを、いずれの鍵の押鍵操作によって発音される音とも異なる音での発音で通知することを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項3】
請求項1および2の内のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器において、
前記同時押鍵検出手段は、
前記鍵盤部の端の3個の鍵盤の内のいずれか1つが押鍵された後、第1の期間内に、前記端3個の鍵盤の残りの2鍵の内のいずれか1つが押鍵され、更に、この押鍵から第2の期間内に、前記端3個の鍵盤の残りの1鍵の押鍵を検出すると、前記同時押鍵状態にあることを検出したとすることを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項4】
請求項1および2の内のいずれか一項に記載の電子鍵盤楽器において、
前記鍵盤部の鍵を押鍵すると、少なくともベロシティが前記鍵盤部から出力されるように構成され、更に、ベロシティと待ち時間とを対応付けて記憶した記憶手段を備え、
前記同時押鍵検出手段は、
前記鍵盤部の端の3個の鍵盤の内のいずれか1つが押鍵された後、この押鍵によって前記鍵盤部から出力されたベロシティに対応する待ち時間を前記記憶手段を参照して求め、この求めた待ち時間内に、前記端3個の鍵盤の残りの2鍵の内のいずれか1つが押鍵され、更に、この押鍵によって前記鍵盤部から出力されたベロシティに対応する待ち時間を前記記憶手段を参照して求め、この求めた第2の待ち時間内に、前記端3個の鍵盤の残りの1鍵の押鍵を検出すると、前記同時押鍵状態にあることを検出したとすることを特徴とする電子鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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